資料2(コラム)

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2. 女性の労働力率の上昇要因 М 字カーブがほぼ解消しつつあるものの 3 歳代の女性の労働力率が上昇した主な要因は非正規雇用の増加である 217 年の女性の年齢階級別の労働力率の内訳をみると の労働力率 ( 年齢階級別の人口に占めるの割合 ) は25~29 歳をピークに低下しており 4 歳代以降は

図表 1 人口と高齢化率の推移と見通し ( 億人 ) 歳以上人口 推計 高齢化率 ( 右目盛 ) ~64 歳人口 ~14 歳人口 212 年推計 217 年推計

第 1 子出産前後の女性の継続就業率 及び出産 育児と女性の就業状況について 平成 30 年 11 月 内閣府男女共同参画局

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160 パネリスト講演 1 労働市場における男女格差の現状と政策課題 川口章 同志社大学の川口です どうぞよろしくお願いします 日本の男女平等ランキング世界経済フォーラムの 世界ジェンダー ギャップレポート によると, 経済分野における日本の男女平等度は, 世界 142 か国のうち 102 位です

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このジニ係数は 所得等の格差を示すときに用いられる指標であり 所得等が完全に平等に分配されている場合に比べて どれだけ分配が偏っているかを数値で示す ジニ係数は 0~1の値をとり 0 に近づくほど格差が小さく 1に近づくほど格差が大きいことを表す したがって 年間収入のジニ係数が上昇しているというこ

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参考 1 男女の能力発揮とライフプランに対する意識に関する調査 について 1. 調査の目的これから結婚 子育てといったライフ イベントを経験する層及び現在経験している層として 若年 ~ 中年層を対象に それまでの就業状況や就業経験などが能力発揮やライフプランに関する意識に与える影響を把握するとともに

23 歳までの育児のための短時間勤務制度の制度普及率について 2012 年度実績の 58.4% に対し 2013 年度は 57.7% と普及率は 0.7 ポイント低下し 目標の 65% を達成することができなかった 事業所規模別では 30 人以上規模では8 割を超える措置率となっているものの 5~2

2019 年 3 月 経営 Q&A 回答者 Be Ambitious 社会保険労務士法人代表社員飯野正明 働き方改革のポイントと助成金の活用 ~ 働き方改革における助成金の活用 ~ Question 相談者: 製造業 A 社代表取締役 I 氏 当社における人事上の課題は 人手不足 です 最近は 予定

あおもり働き方改革推進企業認証制度 Q&A 平成 29 年 12 月 14 日 Vol.1 目次 1 あおもり働き方改革推進企業認証制度全般関係 Q1 県外に本社がある場合はどのように申請できるのか P1 2 あおもり働き方改革宣言企業関係 Q2 次世代法に基づく一般事業主行動計画とはどういうものか


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従業員に占める女性の割合 7 割弱の企業が 40% 未満 と回答 一方 60% 以上 と回答した企業も 1 割以上 ある 66.8% 19.1% 14.1% 40% 未満 40~60% 未満 60% 以上 女性管理職比率 7 割の企業が 5% 未満 と回答 一方 30% 以上 と回答した企業も 1

平成30年版 少子化社会対策白書 概要版(PDF版)

参考 男女の能力発揮とライフプランに対する意識に関する調査 について 1. 調査の目的これから結婚 子育てといったライフ イベントを経験する層及び現在経験している層として 若年 ~ 中年層を対象に それまでの就業状況や就業経験などが能力発揮やライフプランに関する意識に与える影響を把握するとともに 家

Ⅱ.1 ワーク ライフ バランス施策の定義と類型 (1) ワーク ライフ バランス施策とは work-life balance 1 (2) ワーク ライフ バランス施策の類型

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13 第2章 基本目標Ⅲ

4 子育てしやすいようにするための制度の導入 仕事内容への配慮子育て中の社員のため以下のような配慮がありますか? 短時間勤務ができる フレックスタイムによる勤務ができる 勤務時間等 始業 終業時刻の繰上げ 繰下げによる勤務ができる 残業などの所定外労働を制限することができる 育児サービスを受けるため

夫婦間でスケジューラーを利用した男性は 家事 育児に取り組む意識 家事 育児を分担する意識 などに対し 利用前から変化が起こることがわかりました 夫婦間でスケジューラーを利用すると 夫婦間のコミュニケーション が改善され 幸福度も向上する 夫婦間でスケジューラーを利用している男女は 非利用と比較して

資料2

1. 職場愛着度 現在働いている勤務先にどの程度愛着を感じているかについて とても愛着がある を 10 点 どちらでもない を 5 点 まったく愛着がない を 0 点とすると 何点くらいになるか尋ねた 回答の分布は 5 点 ( どちらでもない ) と回答した人が 26.9% で最も多かった 次いで

調査結果 1. 働き方改革 と聞いてイメージすること 男女とも 有休取得 残業減 が 2 トップに 次いで 育児と仕事の両立 女性活躍 生産性向上 が上位に 働き方改革 と聞いてイメージすることを聞いたところ 全体では 有給休暇が取りやすくなる (37.6%) が最も多く 次いで 残業が減る (36

調査の概要 少子高齢化が進む中 わが国経済の持続的発展のために今 国をあげて女性の活躍推進の取組が行なわれています このまま女性正社員の継続就業が進むと 今後 男性同様 女性も長年勤めた会社で定年を迎える人が増えることが見込まれます 現状では 60 代前半の離職者のうち 定年 を理由として離職する男

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参考資料1

平成23年9月29日WG後修正

1. 交際や結婚について 4 人に3 人は 恋人がいる または 恋人はいないが 欲しいと思っている と回答している 図表 1 恋人が欲しいと思わない理由は 自分の趣味に力を入れたい 恋愛が面倒 勉強や就職活動に力を入れたい の順に多い 図表 2 結婚について肯定的な考え方 ( 結婚はするべきだ 結婚

第第第ライフスタイルに対する国民の意識と求められるすがた50 また 働いていないが 今後働きたい と回答した人の割合は 男性では 7.4% であるのに対し て 女性は19.1% である さらに 女性の中では 30 代の割合が高く ( 図表 2-1-2) その中でも 特に三大都市圏で高い割合となってい

我が国の女性の活躍推進に向けて

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社会保障給付の規模 伸びと経済との関係 (2) 年金 平成 16 年年金制度改革において 少子化 高齢化の進展や平均寿命の伸び等に応じて給付水準を調整する マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びはの伸びとほぼ同程度に収まる ( ) マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びは 1.6

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今後の雇用均等行政について

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働き方の現状と今後の課題

女性の活躍推進の意義と課題 意 義 課題 少子高齢化で生産年齢人口が減少 労働力人口の増加 海外を含む企業間競争の中で 性別に関わらず優秀な人材の確保が必要 埋もれている優秀な人材の確保 少子化と生産年齢人口の減少が進む中で 女性の活躍の推進は喫緊の課題 女性の労働力率は 第 1 子出産を機に 6

3 調査項目一覧 分類問調査項目 属性 1 男女平等意識 F 基本属性 ( 性別 年齢 雇用形態 未既婚 配偶者の雇用形態 家族構成 居住地 ) 12 年調査 比較分析 17 年調査 22 年調査 (1) 男女の平等感 (2) 男女平等になるために重要なこと (3) 男女の役割分担意

平成 年 2 月 日総務省統計局 労働力調査 ( 詳細集計 ) 平成 24 年 10~12 月期平均 ( 速報 ) 結果の概要 1 Ⅰ 雇用者 ( 役員を除く ) 1 1 雇用形態 2 非正規の職員 従業員の内訳 Ⅱ 完全失業者 3 1 仕事につけない理由 2 失業期間 3 主な求職方法 4 前職の

少子高齢化班後期総括

正社員はピンク色で示されています 未婚や既婚で子どもがいないときは ある程度正社員の割合は高いのですが 子どもが 3 歳以下のときからぐっと減りまして その後子どもの年齢が上がっていっても正社員の割合は上がってきません 子どもが大きくなると 働いている割合は徐々に上がっていきますが パート アルバイ

図 3 世界の GDP 成長率の実績と見通し ( 出所 ) Capital in the 21st century by Thomas Piketty ホームページ 図 4 世界の資本所得比率の実績と見通し ( 出所 ) Capital in the 21st century by Thomas P

<本調査研究の要旨>

01表紙福島

佐藤委員提出資料

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ポイント 〇等価尺度法を用いた日本の子育て費用の計測〇 1993 年 年までの期間から 2003 年 年までの期間にかけて,2 歳以下の子育て費用が大幅に上昇していることを発見〇就学前の子供を持つ世帯に対する手当てを優先的に拡充するべきであるという政策的含意 研究背景 日本に

Ⅲ 働く女性に関する対策の概況(平成15年1月~12月)

女性の活躍促進や仕事と子育て等の両立支援に取り組む企業に対するインセンティブ付与等 役員 管理職等への女性の登用促進 М 字カーブ問題の解消には企業の取組が不可欠 このため 企業の自主的な取組について 経済的に支援する 経営上のメリットにつなぐ 外部から見えるようにし当該取組の市場評価を高めるよう政

長野県の少子化の現状と課題

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女性活躍による中小企業の生産性向上の余地

厚生労働省発表

2018年度の雇用動向に関する道内企業の意識調査

大学卒女性の働き方別生涯所得の推計-標準労働者は育休・時短でも2億円超、出産退職は△2億円。

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米国の給付建て制度の終了と受給権保護の現状

女性が働きやすい環境を整え社会に活力を取り戻す

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4章ICTによるインクルージョン促進52 企業においても労働者の不足が顕在化し始めている 帝国データバンクの調査 *3 によると 27 年時点で 企業の43.9% が正社員不足を感じており 過去 年で最も高い水準を示した 日銀短観でも 近年は雇用 D.I. *4 が負の方向に動いており 雇用人員が不

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電通総研、「女性×働く」調査を実施

ダイバーシティ 年に向けた政策展開のポイント テレワークが当たり前になる社会 の実現に向け 多様な主体と連携した普及啓発や導入支援への取組を強化 地域での就労支援やマッチング強化により 女性や高齢者の就業を推進 働き方改革と併せて時差 Biz の定着に向けた取組を推進 強化した政策

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7 8 O KAYAKU spirit I O K T C % E C O M T O K T T M T I O O T C C C O I T O O M O O

主な論点 資料 4 1. ワーク ライフ バランスの推進 生産性向上等の観点から 働き方とともに休み方を見直すことの必要性 重要性 (1) 有給休暇取得状況と長時間労働の国際比較 (2) 休暇取得と生産性との関係 (3) 仕事と仕事以外の生活の充実 2. 秋の連休の大型化等を実現する上での課題 (1

ふくい経済トピックス ( 就業編 ) 共働き率日本一の福井県 平成 2 2 年 1 0 月の国勢調査結果によると 福井県の共働き率は % と全国の % を 1 1 ポイント上回り 今回も福井県が 共働き率日本一 となりました しかし 2 0 年前の平成 2 年の共働き率は

25~44歳の子育てと仕事の両立

Ⅲ 働く女性に関する対策の概況(平成15年1月~12月)

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第1回「離婚したくなる亭主の仕事」調査

女子大学生就活ガイド 実際に自己分析をしてみよう! 自己分析を行う時は 前ページの 自己分析チェックポイント に対する回答を書き出してみたり 既存のワークシートを使います より効果的な自己分析を行うために 以下の点に注意してみてください 1 本音で書く 自己分析を行う際に重要なのは 自分がどういう人

1. 結婚についての意識 結婚について肯定的な考え方 ( 結婚はするべきだ 結婚はしたほうがよい ) の割合は男性の方が高い一方 自身の結婚に対する考えについて いずれ結婚するつもり と回答した割合は女性の方が高い 図表 1 図表 2 未婚の方の理想の結婚年齢は平均で男性が 29.3 歳 女性は 2

中小企業が見直すべき福利厚生とは

親と同居の壮年未婚者 2014 年

図表 29 非正規労働者の転職状況 前職が非正規労働者であった者のうち 現在約 4 分の 1 が正規の雇用者となっている 非正規労働者の転職希望理由としては 収入が少ない 一時的についた仕事だから が多くなっている 前職が非正規で過去 5 年以内に転職した者の現職の雇用形態別割合 (07 年 現職役

ワークライフバランス 実証と政策提言

第2回「離婚したくなる亭主の仕事」調査

調査研究方法論レポート

Transcription:

コラム 女性の継続就業の動向と課題 < 第 39 回仕事と生活の調和連携推進 評価部会 仕事と生活の調和関係省庁連携推進会議 (H28.11.17) における権丈英子委員説明より> 2016 年 9 月に公表された 第 15 回出生動向基本調査 の結果によれば これまで4 割程度で推移していた第 1 子出産前後の女性の継続就業率は 53.1% へと上昇し政府目標の 2020 年 55% をほぼ達成するに至った ( 資料 1) この結果は様々な取組の成果でもあると考えるが ここでは 女性の継続就業に影響を与える要因や女性労働と少子化の関係を整理した上で今後の主な課題について述べる 資料 1 女性の継続就業に影響を与える要因 ( 資料 2) 女性の継続就業に影響を与える要因は様々ある 労働経済学において用いられる 労働供給に関する所得と余暇の選好モデル ( ) を参考に 既婚女性の就業に影響を与える主な要因について整理した ( 選好 ) 仕事と仕事以外のこと( 家庭など ) に関する時間の価値が関係する 女性の就業については 家事 育児などの家庭内での役割が選好に影響を与える また これに関する意識の影響も大きいが 内閣府の意識調査によると 女性の就業を支持する方向に向かっているという結果となっている ( 家計 ) 家計の所得制約を考えると 働くか否かの意思決定には 夫の所得などの非勤労所得も影響を与える 理論的には 夫の所得が高いと妻は働かない傾向にあるとされる 実際には 夫の所得の大きな伸びは平均的に見て期待できない状況であるので 妻の就業を促す方向にあるとい える ( 職場 : 賃金率 ) 女性自身がどれくらい稼げるか すなわち賃金率も大きく影響する 理論的には 時間当たり賃金が上がることで 必ずしも就労が促進されるとは限らず むしろ豊かになった結果 働くのを控えることも起こり得るとも考えられる だが 実証分析をみると 自らの賃金率の上昇は既婚女性の就業に概ねプラスの影響があるという結果が出ている 女性の活躍の機会が広がり 男女間の賃金格差などが改善してくると 就業率を高める方向に向かうと考えられる ( 職場 : 労働時間の柔軟性 仕事と家庭の両立 ) 理論モデルは 労働者は最適労働時間を選択できるという前提で組み立てられることが多い しかし 現実には 労働者は労働時間をあまり自由に選べるわけではない 労働者は 長時間労働になりがちな正社員 正社員に比べて賃金 163

等労働条件が低い非正規労働 あるいは就業しない という限られた選択肢に直面することが多い こうした選択肢の少なさが労働供給を抑制してしまうこともある 労働時間の柔軟性が高まり 希望する労働時間で働けること 長時間労働が少ないことや短時間勤務ができることは より働きやすい環境づくりに役立ち 仕事 と家庭の両立のしやすさにも関わる ( 制度 政策 ) 育児休業制度や保育サービスなど制度や政策も大きく影響してくる これらについては 全体として女性が就業しやすい方向に進んでいるものと考えられる 資料 2 女性の継続就業に影響を与える主な要因 ~ 所得と余暇の選好モデルを参考に ~ 選好 : 家庭内での役割分担と意識 家計 : 非勤労所得 ( 夫の所得等 ) 職場 : 賃金率 ( 女性の活躍の機会 ) 労働時間の柔軟性 ( 希望する労働時間の実現可能性 ) 仕事と家庭の両立のしやすさ 制度 政策 : 育児休業制度 保育サービス 女性労働と少子化の関係 ( 資料 3~5) (OECD 諸国の女性の労働力率と出生率の関係負の相関から正の相関へ )( 資料 3) OECD 諸国の横断面データを見ると 1970 年代には女性の労働力率が高まると合計特殊出生率が低下するという負の相関関係にあったが 1980 年代にはその関係が弱まり 1990 年代には逆に正の相関関係に変わった なぜ正の相関関係に変わってきたのか 理論的 実証的な研究がなされてきた結果 女性が働くようになっても 仕事と家庭を両立しやすい環境が整備されれば出生率にマイナスに働くとは限らないことが示されている ( 日本の女性就業率と出生率の関係は 2005 年以降 正の相関へ )( 資料 4) ( ) 労働時間は 人が長い労働時間を選択して より多くの賃金を得ようとするか ( 所得選好 ) 短い労働時間を選択して より長い余暇を選ぶか ( 余暇選好 ) のバランスにより決定されるというもの 日本の状況を時系列データで見てみると かつては女性の就業率が高まるにつれ 合計特殊出生率が下がるという負の相関関係にあった ところが 2005 年以降は女性就業率も合計特殊出生率も共に上昇する正の相関関係へと転換しているのが確認できる ( 働く女性の割合が高い県ほど 出生率も高い ) ( 資料 5) 日本の女性有業率と合計特殊出生率を都道府県別にみると 傾向から外れている東京都 沖縄県を除くと 両者には概ね正の相関関係がみられる 島根県 福井県などで女性有業率も合計特殊出生率も高くなっている 資料 3 女性の労働力率と出生率の関係負の相関から正の相関へ 女性労働力率と合計特殊出生率の相関係数の推移 (OECD 諸国の横断面データ 1970~2000 年 ) 資料 4 関係数Correlation coefficient -.8 -.6 -.4 -.2 0.2.4.6.8 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 Year 出所 :Kenjoh (2004), Balancing Work and Family Life in Japan and Four European Countries, p.33. 注 : 労働力率は15~64 歳人 に占める労働力人 の割合 1970 年代までにOECDに加盟した24カ国のうち 労働力率の欠損値が多いトルコとアイスランドを除いた 22 カ国対象 相 仕事と家庭を両立しやすい環境の整備がカギ ワーク ライフ バランス推進の一つの背景 164

資料 5 資料 6 今後の課題 ( 資料 6~13) 今回の調査結果から 女性の継続就業率がこれまでに比べて大きく上昇した 取組の成果が上がってきているといえるだろうが 女性の出産前後の就業を考えるうえで 今後の主な課題 ( 資料 6) を以下のとおり整理した 女性の出産前後の就業に関する主な課題 女性の ( 継続 ) 就業率の水準 非正規労働者の継続就業率 女性の再就業 男性の育児休業 家事分担 ( 女性の ( 継続 ) 就業率の水準 )( 資料 7~10) 1つ目は 継続就業率の水準についてである 女性の継続就業率はたしかに上昇している しかし この水準で十分というわけではなく まだ上昇する余地があると考えられる 資料 7の 25~44 歳の女性就業率の国際比較データをみると 日本は 2015 年に 71.6% と以前に比べて大分上昇してはいるが 国際的には今もあまり高くはない 次に 2015 年の男女の就業率を比べる ( 資料 8) と 日本の男性の就業率は非常に高いので これと比較すると 日本の女性の就業率の低さが目立つ また 総務省 労働力調査 によれば 日本では就業を希望しつつ 就業できていない女性が約 300 万人いる 女性労働や子育て支援についてはスウェーデンやフランスなどの事例が紹介されることが多い一方 オランダについてはあまり知られていないため ここではオランダの事例を紹介する 資料 7 の女性就業率を見ると オランダは 1987 年には 5 割弱と極めて低かった しかし 2015 年には 78.3% とスウェーデンに次いで高くなっている オランダでは 第 1 子出産前後に継続就業する女性の割合が9 割以上に及ぶ ( 資料 9) 同国では 出産前後に労働時間を変更しない者が多い一方で 実は出産前からパートタイムで働く者も多く ( 資料 10) 短時間勤務ができることで 継続就業もしやすい状況になっている様子がうかがえる 165

資料 7 資料 8 資料 9 資料 10 ( 非正規労働者の継続就業率 )( 資料 11) 2つ目は 非正規労働者の継続就業率が正社員に比べて低いことである 第 15 回出生動向基本調査 の結果より 就業形態別の第 1 子出産前後の継続就業率を見ると 正規職員が 69.1% パート等が 25.2% と差が大きい 2017 年 1 月施行の改正育児 介護休業法により 有期契約労働者の育児休業の取得要件緩和等が行われ 以前に比べて非正規労働者も 育児休業を取得し継続就業しやすくなることが期待される 継続就業率については 非正規労働者は正社員に比べて就業継続の希望が少ないというデータもある しかし 現状の働き方を前提にして希望が形成されるという面もあるので この水準で十分という判断ができるわけではない また 不本意で非正規で働いている者もいることにも留意する必要がある 合わせて 継 続就業率のデータは 出産した人に注目したものであるため 職場の状況等によって出産を延期したり諦めたりしている人の情報は捉えていないことも理解しておく必要がある 資料 11 166

( 女性の再就業 )( 資料 12~13) 3つ目は 女性の再就業に関してである 末子年齢別の母親の就業形態について 2005 年の調査結果 ( 資料 12) と 2015 年の調査結果 ( 資料 13) を比べると 全体として就業者の割合が大幅に高まっており 特に未就学児の母親の正規雇用が増 加している しかし 末子の年齢の上昇に伴って 非正規での就業が増加するという傾向は引き続き見られる 従来通り 女性が継続就業しやすい環境づくりに取り組むとともに 一度離職した女性も良好な再就業の機会を得られる環境整備も必要であろう 資料 12 資料 13 ( 男性の育児休業 家事分担 ) 4つ目は 男性の育児休業 家事分担についてである 長時間労働の是正などの働き方改革に取り組んでいるところではあるが 男性の育児休業取得率は 2015 年に 2.65% で 第 4 次男女共同参画基本計画における成果目標である 13% からかい離しており 大きな課題といえる 先ほど取り上 げたオランダは かつては保守的で既婚女性があまり就業していなかった国であり 現在も家族関係社会支出の規模が大きいわけではない それでも 男性の育児休業取得率が今は 25% 程度になっている こうした事例もあることを考えると日本もまだまだやることがあるのではないか 今後のさらなる取組に期待したい 167