最初に事後指導項目規定をお示し致します これらは 陰性スメアに対して行っております まず 取り扱い項目は要医療 要治療の 2 項目あります 要医療扱いの細胞所見は 一つ目に 炎症を伴う強度細胞異型の見られるもの 二つ目として 萎縮像に炎症を伴った強度細胞異型の認められるもの 三つ目として 核異型の伴

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症例4 消化器

方法について教えてください A 妊娠中の接種に関する有効性および安全性が確立されていないため 3 回接種を完了する前に妊娠していることがわかった場合には一旦接種を中断し 出産後に残りの接種を行うようにしてください 接種が中断しても 最初から接種し直す必要はありません 具体的には 1 回目接種後に妊娠

Transcription:

子宮がん検診の細胞診判定は 従来日母分類とその取扱いで行なわれてきましたが 近年ベセスダシステム準拠報告様式で運用されており その中で ASC のカテゴリーが設けられております 当センターの子宮がん検診判定は厚労省の指針と共に 21 年度からベセスダシステムを導入しましたが 以前より 異形成以上と判定する所見とは別に 腫瘍病変か炎症性良性変化か鑑別が必要な症例に対しその変化を明らかにする事が重要と考え 日母分類の他に センター婦人検診運営委員会で申し合わせた事後指導項目規定を制定し 平成 11 年度より事後指導を加え 市町村 医療機関 当センター間で運用 管理してきました 今回 その細胞所見と管理状況から ベセスダシステムの ASC に相当するかを調査し その取扱いについて検討したのでご報告致します 1

最初に事後指導項目規定をお示し致します これらは 陰性スメアに対して行っております まず 取り扱い項目は要医療 要治療の 2 項目あります 要医療扱いの細胞所見は 一つ目に 炎症を伴う強度細胞異型の見られるもの 二つ目として 萎縮像に炎症を伴った強度細胞異型の認められるもの 三つ目として 核異型の伴わない HPV 感染が考えられる症例です 要治療はご覧の様な感染症所見の認められるスメアです 以上の様に陰性標本中においてもホルモン療法及び消炎後の再検や医療機関管理が必要と思われる症例に関して 事後指導項目を置いております 今回対象とした項目は この要医療の取扱いです 2

では この規定が設けられた平成 11 年 ~H20 年度までの検診総数 149,682 件について要医療取扱い状況をお示し致します 要医療総数は 1,140 件で割合的には 規定を組み込んだ当初の 0.2% から 1.86% とやや幅はありますが 平均 0.76% です 3

次は 要医療と判定された後に 先ほどお示ししたように事後指導に伴い 医療機関あるいはそれ以降の検診を受診した状況です 事後の把握が出来たものは 803 件の 70.4% です ここからの要精検は 70 件で 8.7% です 4

では その後管理から要精検に上がった 70 件の精検状況です 組織診において 異常なし 5 件 CIN1 が 9 件 CIN2 が 2 件 CIN3 が 7 件 MIC が 2 件 Koilocytosis4 件です その他の良性病変は 6 件で 組織診をしていないものが 35 件です 組織診において腫瘍病変が確認されたものは 後管理を掌握出来たものの内 2.5% Koilocytosis を含めますと 3% です 5

次に 組織診断が明らかになった 35 症例について細胞所見を見直し その細胞タイプから 3 つのグループに分け 組織診断とを比較して見ました A グループは 中層細胞大化生様核肥大細胞で 11 件 B は 小型 N/C 上昇 異型未熟化生様細胞で 13 件 C グループは 核異型の伴わない HPV 所見細胞で 11 件です それぞれの内訳は A では CIN1 が 5 件 CIN2 が 1 件 CIN3 が 1 件で CIN1 腫瘍病変の方にウエイトがありました B は CIN1 が 1 件 CIN3 が 5 件 MIC が 1 件と高度病変が 6 件と割合も高いですが 異常なしや良性も 6 件あります C は ご覧の様な数字ですが CIN1 が 3 件と Koilocytosis3 件の割合が高かったです 6

では グループ別の細胞像を供覧します まず A グループの中層細胞大化生様核肥大細胞に分類したものです 綿棒採取 直接塗抹法 7

次に B グループの小型 N/C 上昇 異型未熟化生細胞です 上が ややクラスター出現傾向のものと 下が 孤在性に少数出現しているパターンです 綿棒採取 直接塗抹法 8

これも B パターンとした小型 N/C 上昇 異型未熟化生細胞です サーヘ ックスフ ラシ LBC 法 9

次は C グループです HPV 感染を疑わせる細胞所見に分類したものです サーヘ ックスフ ラシ LBC 法 10

では 今回提供しました 9 症例中 5 例を供覧します 全て集検です 症例 8.46 歳綿棒擦過直接塗抹法です 炎症性背景に 深層型核肥大細胞が散見されます N/C 比の上昇は見られますが クロマチン増量度は軽度で消炎後の再検が必要と考えたものです 組織診断は severe dysplasia でした 11

症例 10. 53 歳綿棒採取 直接塗抹法です N/C 比の上昇と核形不整等が見られる小型細胞が クラスターから散在性に出現しておりました クロマチン増量は見られますが 立体感に乏しく 幼若な化生由来細胞との鑑別が必要と判断したものです 生検では 頚管炎でした 12

症例 13. 51 歳サーベックスブラシ採取で Thin layer 法です 全体に atorophic な細胞が多数出現する中に クロマチンの濃染と核肥大を伴った細胞が混在しています Thinlayer 法による細胞は若干収縮するため 染色性も濃染傾向にあります SIL と判断するにはクロマチンの立体増量が足りないと判断し ホルモン療法後の再検が必要としたものです 組織診断は severe dysplasia です 13

症例 14.61 歳サーベックスブラシ採取の Thinlayer 法です これも atorophic な細胞が多数出現する中に 核大小不同を伴った N/C 比の高い細胞が混在しています 炎症性細胞の巻き込み等も見られ 炎症性変化と SIL との鑑別が必要と判断し ホルモン療法後の再検としたものです 組織では 異常なしでした 14

症例 16.46 歳サーベックスブラシ採取で Thinlayer 法です ホルモン活性の見られる背景に 頚管炎由来と思われる細胞集塊が見られました 集塊の辺縁に見られる化生様細胞の N/C 比の上昇とクロマチン増量が見られ また 背景にも核肥大細胞が散見されましたが クロマチンの染色性が 増量と言うより融解状膿染ともとれるため 炎症等による反応性変化か SIL かの鑑別が必要と判断したものです 生検では mild dysplasia でした 15

以上は 再検システムから要精検となり 生検の施行となったものですが 私どもの施設は検診を主に対象としているため 閉経後の細胞診検査も非常に多い施設です 今回の ASC の検討項目の中に 2 に当たる 萎縮及び炎症を伴う強度細胞異型があり その事後指導はホルモン療法及び消炎後再検としています 16

その割合を見ますと 事後管理 803 件の 67% が萎縮を伴った強度細胞異型症例です 17

割合をグラフで示ししたものですが 萎縮を伴った細胞異型を認めたものは ホルモン療法後の細胞診再検で 約 7 割が良性もしくは核異型の乏しい HPV 感染様細胞であり 要精検扱いとならない症例でした では 要医療とした萎縮異型症例の細胞を供覧します 18

58 歳閉経 8 年 サーベックスブラシ採取で Thinlayer 法です Atrophic な細胞集塊が出現する中に 核の大小不同や大型核の混在及びクロマチンの融解濃染が見られ LSIL と断定するにはクロマチンの増量度合い不足しており ホルモン療法後の再検としたものです 19

ホルモン療法 3 週間後の再検細胞像です ご覧の様な核異型の乏しい HPV 感染様所見が見られました 判定は ASC-US とし HPV-DNA 検査では陽性や陰性を繰り返し その後 follow up されています 20

まとめです 要医療扱いからの koilo を含めた腫瘍病変発見が 3% あり ベセスダシステム ASC の腫瘍病変と炎症性所見の区別を必要とする診断困難な異型細胞のカテゴリーに相当すると考えられました その中の 組織診断の照合可能症例において N/C 比上昇した小型異型未熟化生様細胞 (B ハ ターンとした ) 所見は CIN3 以上発見が高率 (46%) でありますが 良性診断率 ( 46%) も同率で ASC-H の概念の一部と考えられます しかし 萎縮性変化を伴った小型異型未熟化生様細胞症例の約 7 割は ホルモン療法等後の再検により 正常又は良性変化所見や HPV 感染所見と確認されております 21

結語としまして 小型異型未熟化生様細胞所見を ASC-H の概念とする事で HSIL の診断精度が向上しますが 萎縮性変化を伴った小型異型細胞を ASC-H にスライドする事は 細胞診の精度の低下に繋がると考えられます 萎縮異型像はホルモン療法後再検等の事後運用と管理が重要であると考えます 22

最後に Web 投票結果です 今回の症例提示症例は 今回検討した細胞グループの B ハ ターンのものです ほとんどの症例で 全ての判定に分散はしていますが ASC-H か NILM かに分かれているようです 23

しかし 直接塗抹法の症例は ASC-H と NILM が半々で LBC 法では ASC-H にウエイトがある様です LBC 法による細胞像変化の認識の差が表れていると思われます 24

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