税調第20回総会 資料2-2

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3. 改正の内容 法人税における収益認識等について 収益認識時の価額及び収益の認識時期について法令上明確化される 返品調整引当金制度及び延払基準 ( 長期割賦販売等 ) が廃止となる 内容改正前改正後 収益認識時の価額をそれぞれ以下とする ( 資産の販売若しくは譲渡時の価額 ) 原則として資産の引渡

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税が課税される所得を生み出す事業活動に使われているか否かを基準に損金算入規制を設けていると考えられます 株式などの出資の取得のために資金を使った場合, 株式から生じる配当やキャピタルゲインは資本参加免税により非課税となります このケースでは, オランダでの課税所得を生じないことが想定されるため, 出

法人による完全支配関係下の寄附金 1.100% グループ内の法人間の寄附 ( 法法 372) 現行税制上では 寄附金は支出法人では損金計上限度額を超える部分が損金不算入 受領法人では益金算入です 平成 22 年度税制改正により 100% グループ内での支出法人では寄附金全額を損金不算入とし 受領法人

平成 29 年度税制改正解説国際課税 ~ 外国子会社合算税制の改正 2 4. 外国子会社合算税制の適用フローチャート 改正前 合算課税の適用対象となる内国法人等の判定 用語解説 丸数字は左のフローチャートと対応 合算対象法人における判定 1 外国法人の株式を 10% 以上保有しているか? 合算所得な

IFRS基礎講座 IAS第11号/18号 収益

1 検査の背景 (1) 租税特別措置の趣旨及び租税特別措置を取り巻く状況租税特別措置 ( 以下 特別措置 という ) は 租税特別措置法 ( 昭和 32 年法律第 26 号 ) に基づき 特定の個人や企業の税負担を軽減することなどにより 国による特定の政策目的を実現するための特別な政策手段であるとさ

6 課税上の取扱い日本の居住者又は日本法人である投資主及び投資法人に関する課税上の一般的な取扱いは 下記のとおりです なお 税法等の改正 税務当局等による解釈 運用の変更により 以下の内容は変更されることがあります また 個々の投資主の固有の事情によっては異なる取扱いが行われることがあります (1)

第7回国際課税DG 際D7-3

1. のれんを資産として認識し その後の期間にわたり償却するという要求事項を設けるべきであることに同意するか 同意する場合 次のどの理由で償却を支持するのか (a) 取得日時点で存在しているのれんは 時の経過に応じて消費され 自己創設のれんに置き換わる したがって のれんは 企業を取得するコストの一

【問】適格現物分配に係る会計処理と税務処理の相違

日本基準でいう 法人税等 に相当するものです 繰延税金負債 将来加算一時差異に関連して将来の期に課される税額をいいます 繰延税金資産 将来減算一時差異 税務上の欠損金の繰越し 税額控除の繰越し に関連して将来の期に 回収されることとなる税額をいいます 一時差異 ある資産または負債の財政状態計算書上の

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海運関係事項

平成23年度税制改正の主要項目

官報 2009 年第 150 号 インドネシア共和国官報補足第 5069 号 ) にて改定された商品 サービスに対する付加価値税および奢侈品販売税に関する 1983 年法第 8 号 ( インドネシア共和国官報 1983 年第 51 号 インドネシア共和国官報補足第 3264 号 ) 決定事項 : 制

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第3回国際課税ディスカッショングループ 際D3-5

1. 世界における日 経済 人口 (216 年 ) GDP(216 年 ) 貿易 ( 輸出 + 輸入 )(216 年 ) +=8.6% +=28.4% +=36.8% 1.7% 6.9% 6.6% 4.% 68.6% 中国 18.5% 米国 4.3% 32.1% 中国 14.9% 米国 24.7%

目 次 問 1 法人税法における当初申告要件及び適用額の制限に関する改正の概要 1 問 2 租税特別措置法における当初申告要件及び適用額の制限に関する改正の概要 3 問 3 法人税法における当初申告要件 ( 所得税額控除の例 ) 5 問 4 法人税法における適用額の制限 ( 所得税額控除の例 ) 6

日本基準基礎講座 収益

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

投資法人の資本の払戻 し直前の税務上の資本 金等の額 投資法人の資本の払戻し 直前の発行済投資口総数 投資法人の資本の払戻し総額 * 一定割合 = 投資法人の税務上の前期末純資産価額 ( 注 3) ( 小数第 3 位未満を切上げ ) ( 注 2) 譲渡収入の金額 = 資本の払戻し額 -みなし配当金額

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取引に係る資産が国外関連取引に係る資産と同 法人及び国外関連者がともに業として金銭の 等であり かつ 比較対象取引に係る貸借時 貸付け又は出資を行っていない場合において 期 貸借期間 貸借期間中の資産の維持費用等 その法人が国外関連者との間で行う金銭の貸付 の負担関係 転貸の可否等貸借の条件が国外関

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スポンサー企業 増減資により 再生会社をスポンサー企業の子会社としたうえで 継続事業を新設分割により切り分ける 100% 新株発行 承継会社 ( 新設会社 ) 整理予定の事業 (A 事業 ) 継続事業 会社分割 移転事業 以下 分社型分割により事業再生を行う場合の具体的な仕組みを解説する の株主 整

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税制改正大綱―外国子会社合算税制の見直し

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03-08_会計監査(収益認識に関するインダストリー別③)小売業-ポイント制度、商品券

PE 帰属所得計算の実務と課題 平成 28 年 7 月 4 日公開草案事例を検討する 平成 29 年 7 月 11 日 ユナイテッド パートナーズ会計事務所代表取締役西村善朗 1. 平成 28 年 4 月 1 日以後開始事業年度に 報告対象となるもの (3 月決算法人である内国法人については 平成

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おカネはどこから来てどこに行くのか―資金循環統計の読み方― 第4回 表情が変わる保険会社のお金

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24年度税制改正(案)の解説

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証する 本稿の構成は 以下の通りである 第 2 章では まず ロイヤルティの概況とその重要性について 述べる また ロイヤルティの価格算定の難しさ と所得移転に関する税制について整理し 外国子 会社配当益金不算入制度がロイヤルティ支払いに 及ぼす影響について述べる 第 3 章では 実証分 析で用いる

別冊 移転価格税制の適用に当たっての参考事例集

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1 1. 課税の非対称性 問題 1 年をまたぐ同一の金融商品 ( 区分 ) 内の譲渡損益を通算できない問題 問題 2 同一商品で 異なる所得区分から損失を控除できない問題 問題 3 異なる金融商品間 および他の所得間で損失を控除できない問題

1. 国際的二重課税の発生理由と態様 3 税を行っていますが 諸外国においても 一般に 我が国の場合と同様に 国だけでなく地方公共団体も独自に課税権を有していますので 国の段階と地方公共団体の段階とで重複して 国際的二重課税 が生ずることとなっています 国際的二重課税 とは 基本的には このように捉

企業会計の利益 法人税法上の所得金額 売上原価販売費一般管理費営業外費用特別損失 売上 営業外収益特別利益 損金の額原価費用損失の額 益金の額 ( 収益の額 ) 当期純利益所得の金額 2 益金の額に算入すべき金額とは何か益金の額に算入すべき金額とは 法人税法の規定や他の法令で 益金の額に算入する 又

(1) 相続税の納税猶予制度の概要 項目 納税猶予対象資産 ( 特定事業用資産 ) 納税猶予額 被相続人の要件 内容 被相続人の事業 ( 不動産貸付事業等を除く ) の用に供されていた次の資産 1 土地 ( 面積 400 m2までの部分に限る ) 2 建物 ( 床面積 800 m2までの部分に限る

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できる 105. 前項の取扱いを適用する場合には 次の事項を注記する (1) その旨及び決算月に実施した計量の日から決算日までに生じた収益の見積りが極めて困難と認められる理由 (2) 当連結会計年度及び当事業年度の決算月の翌月に実施した計量により確認した使用量に基づく収益の額 ( この収益の額が 決

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き一 修正申告 1 から同 ( 四 ) まで又は同 2 から同 ( 四 ) までの事由が生じた場合には 当該居住者 ( その相続人を含む ) は それぞれ次の 及び に定める日から4 月以内に 当該譲渡の日の属する年分の所得税についての修正申告書を提出し かつ 当該期限内に当該申告書の提出により納付

完全子会社同士の無対価合併 1. 会社法の規制 100% 子会社同士が合併する場合は 兄弟合併とも言われます 実務上は新設合併はマイナーで 法律上の許認可の関係で一方が存続する吸収合併が一般的です また 同一企業グループ内での組織再編成の場合は 無対価合併が一般的です 簡易合併に該当する場合は 存続

第 298 回企業会計基準委員会 資料番号 日付 審議事項 (2)-4 DT 年 10 月 23 日 プロジェクト 項目 税効果会計 今後の検討の進め方 本資料の目的 1. 本資料は 繰延税金資産の回収可能性に関わるグループ 2 の検討状況を踏まえ 今 後の検討の進め方につ

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1 繰越控除適用事業年度の申告書提出の時点で判定して 連続して 提出していることが要件である その時点で提出されていない事業年度があれば事後的に提出しても要件は満たさない 2 確定申告書を提出 とは白色申告でも可 4. 欠損金の繰越控除期間に誤りはないか青色欠損金の繰越期間は 最近でも図表 1 のよ

図 4-1 総額 と 純計 の違い ( 平成 30 年度当初予算 ) 総額ベース で見た場合 純計ベース で見た場合 国の財政 兆円兆 国の財政 兆円兆 A 特会 A 特会 一般会計 B 特会 X 勘定 Y 勘定 一般会計 B 特会 X 勘定 Y 勘定

一般会計 特別会計を含めた国全体の財政規模 (1) 国全体の財政規模の様々な見方国の会計には 一般会計と特別会計がありますが これらの会計は相互に完全に独立しているわけではなく 一般会計から特別会計へ財源が繰り入れられているなど その歳出と歳入の多くが重複して計上されています また 各特別会計それぞ

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iii. 源泉徴収選択口座への受入れ源泉徴収ありを選択した特定口座 ( 以下 源泉徴収選択口座 といいます ) が開設されている金融商品取引業者等 ( 証券会社等 ) に対して 源泉徴収選択口座内配当等受入開始届出書 を提出することにより 上場株式等の配当等を源泉徴収選択口座に受け入れることができま

平成 22 年 4 月 1 日現在の法令等に準拠 UP!Consulting Up Newsletter 無対価での会社分割 バックナンバーは 当事務所のホームページで参照できます 1

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1 各調整方式の比較 前提 : 法人実効税率 % 金融所得の税率 20% ( 配当軽課の場合の配当分の法人税率は 30%) 比較のポイント 適用税率 法人税率か所得税率か 金融所得課税一元化にマッチするか( 税率 損益通算 ) 簡素な制度か 特定口座への対応はか 法人の税負担は軽減されるか

Giới thiệu tóm tắt CÔNG TY CỔ PHẦN PHÁT TRIỂN ĐẦU TƯ CÔNG NGHỆ - FPT TRUNG TÂM GIẢI PHÁP PHẦN MỀM FPT SOFTWARE SOLUTIONS

コニカミノルタ ( 株 ) (4902) 2019 年 3 月期決算短 4. 連結財務諸表及び主な注記 (1) 連結財政状態計算書 資産 流動資産 前連結会計年度 (2018 年 3 月 31 日 ) ( 単位 : 百万円 ) 当連結会計年度 (2019 年 3 月 31 日 ) 現金及び現金同等物

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に相当する金額を反映して分割対価が低くなっているはずですが 分割法人において移転する資産及び負債の譲渡損益は計上されませんので 分割法人において この退職給付債務に相当する金額を損金の額とする余地はないこととなります (2) 分割承継法人適格分割によって退職給付債務を移転する場合には 分割法人の負債

債券税制の見直し(金融所得課税の一体化)に伴う国債振替決済制度の主な変更点について

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ならないとされている (IFRS 第 15 号第 8 項 ) 4. 顧客との契約の一部が IFRS 第 15 号の範囲に含まれ 一部が他の基準の範囲に含まれる場合については 取引価格の測定に関する要求事項を設けている (IFRS 第 15 号第 7 項 ) ( 意見募集文書に寄せられた意見 ) 5.

085 貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準 新株予約権 少数株主持分を株主資本に計上しない理由重要度 新株予約権を株主資本に計上しない理由 非支配株主持分を株主資本に計上しない理由 Keyword 株主とは異なる新株予約権者 返済義務 新株予約権は 返済義務のある負債ではない したがって

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(訂正・数値データ訂正)「平成25年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」の一部訂正について

2. 基準差調整表 当行は 日本基準に準拠した財務諸表に加えて IFRS 財務諸表を参考情報として開示しております 日本基準と IFRS では重要な会計方針が異なることから 以下のとおり当行の資産 負債及び資本に対する調整表並びに当期利益の調整表を記載しております (1) 資産 負債及び資本に対する

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留意事項 本事例集は 移転価格事務運営要領 ( 事務運営指針 ) の適用上のポイントを示す観点から 一定の前提条件を置いた事例の下での移転価格税制上の取扱いを取りまとめたものである 事例については 第一章においては 独立企業間価格の算定方法の選定に関する事例 第二章においては 独立企業間価格の算定方

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第1回 オリエンテーション

下では特別償却と対比するため 特別控除については 特に断らない限り特定の機械や設備等の資産を取得した場合を前提として説明することとします 特別控除 内容 個別の制度例 特定の機械や設備等の資産を取得して事業の用に供したときや 特定の費用を支出したときなどに 取得価額や支出した費用の額等 一定割合 の

無断複写 転用 転記を禁じます 国際財務報告基準 (IFRS) 連結財務諸表シリーズ シリーズ <5>IAS 第 31 号 ジョイント ベンチャーに対する持分 ( 平成 22 年 7 月 31 日現在 ) 1. ジョイント ベンチャーの対する持分 ( 総論 ) 本シリーズでは ジョイント ベンチャー

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A. 受贈者に一定の債務を負担させることを条件に 財産を贈与することを 負担付贈与 といいます 本ケースでは 夫は1 妻の住宅ローン債務を引き受ける代わりに 2 妻の自宅の所有権持分を取得する ( 持分の贈与を受ける 以下持分と記載 ) ことになります したがって 夫は1と2を合わせ 妻から負担付贈

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役員の債務保証料 1. 概要オーナー社長の場合は 自社の銀行借入金に代表者個人が連帯債務保証をしている場合があります このような場合は 法人からオーナー個人に債務保証料 ( 信用保証料 ) を支払うことが出来ます 当然 会社では法人税の計算上で損金計上することが出来ます 2. 注意点 (1) 債務保

Transcription:

参考 我が国における利子を用いた BEPS 事例 2( 負債による資金調達と非課税所得 ) 実際の事例を抽象化したもの BEPS 行動 4 は 支払利子を用いた BEPS が生ずる場合として 関連者からの融資を用いて実際の第三者支払利子を超える利子の損金算入を生じさせること 負債による資金調達を行い非課税所得を生じさせることを指摘 日本における実際の事例としては 相対的に税率の高い日本法人を経由して 関連者からの借入と関連者への出資を組み合わせて資金を動かすことにより 日本からの利益移転を行い グループ全体の税負担の圧縮を図っていると考えられるケースが見受けられた * また 高課税国の関連会社における第三者借入利子の損金算入や 出資先の外国子会社から国外関連者への貸付と組み合わせれば グループ内で 同一の借入に係る支払利子を複数回損金算入することが可能 ( ダブル ディップ ) 高税率国 ダブル ディップ? 第三者からの資金調達? 貸付? 利子? 第三者負債 損金算入? 関連会社 低税率国 日本 出資? 低税率国における益金算入? 4 利子 100 関連会社 1 貸付 1000 損金算入 関連者負債 親会社 内国法人 内国法人の固定比率の計算 純支払利子 +4 利子 100 EBITDA+3 配当 100 日本の現行の過大支払利子税制上 国外関連者に対する支払利子が分子にカウントされる一方で 益金不算入となる外国子会社からの受取配当も分母にカウントされる 益金不算入 低税率国 3 配当 100 2 出資 1000 子会社

参考 国際収支統計における 直接投資 ( 負債 ) 及び その他投資 の状況 日本に対する 直接投資 ( 負債 ) 残高 ( 親子会社間融資等 ) ( 1) 及び 日本からの その他投資 に係る所得支払額 ( 非関連者間融資に係る利子の支払額等 ) ( 2) の国 地域別の割合を見た場合 上位に 経済規模との比較 ( ) でみて多額の残高 支払額となっている国 地域が見受けられる 日本に対する 直接投資 ( 負債 ) 残高及び その他投資 残高 ( 2) は 拡大傾向 1 直接投資 ( 負債 ) 残高には 金融会社間 ( 銀行業 保険業 金融商品取引業等 ) を除く 直接投資関係にある当事者間の貸付 借入利子や債券利子に係る債務が計上されており 直接の出資関係にある者のほか 祖父 孫会社 兄弟会社等との取引が含まれている 2 日本に対する直接投資 証券投資以外の投資残高 そのうち 負債性のものが約 9 割を占める (2017 年 ) なお 国 地域別の分析に際しては その他投資 については ストック ( 残高 ) に係る国 地域別の内訳が非公表であるため これらの投資に係る所得支払額 ( フローベース ) の内訳を用いている 直接投資 ( 負債 ) 残高の国 地域別割合 その他投資 に係る所得支払額の国 地域別割合 0.36% 0.16% スウェーデン 4% オーストラリア 4% その他 34% シンガポール 6% 2017 年約 5 兆 7 千億円 オランダ 30% アメリカ 22% 1.04% 1.90% 0.06% 0.23% 0.32% 香港 6% シンガポール 8% 0.06% その他 19% イギリス 11% アメリカ 2017 年 40% 約 1 兆 5 千億円 ( フロー ) ケイマン 16% 54.60%( 注 ) 0.03% ( 注 ) ケイマンのの計算は 2017 年の GDP が未公表であることから 2016 年のデータを使用している 直接投資 ( 負債 ) 残高の推移 2017 年約 5 兆 7 千億円 1997 年約 8 千億円 その他投資 残高の推移 2017 年 1997 年約 244 兆円約 141 兆円 出典 : 国際収支統計 IMF World Economic Outlook UN National Accounts Main Aggregates Database

2. 移転価格税制

外関連取引比較対象取移転価格税制の概要 移転価格税制は 法人と海外の関連企業 ( 国外関連者 ) との取引価格 ( 移転価格 ) が通常の取引価格 ( 独立企業間価格 ) と異なる場合には その国外関連者との取引が独立企業間価格で行われたものとみなして所得計算し課税することにより 海外への所得移転を防止する制度 ( 昭和 61 年に創設 ) 日本における独立企業間価格の算定方法 ( 移転価格算定方法 ) は OECDの 移転価格ガイドライン に沿った規定が整備されており 具体的には 1 独立価格比準法 2 再販売価格基準法 3 原価基準法 4 取引単位営業利益法 5 利益分割法 ( 及び各算定方法に準ずる方法 同等の方法 ) が整備されている 移転価格税制については 取引内容 取引条件の分析や国外関連者からの情報収集など その税務調査に長期間を要することから 移転価格税制に係る更正等の期間制限は6 年 ( 通常 :5 年 ) とされている 移転価格算定方法 ( 独立価格比準法の例 ) 国< 日本 > <X 国 > 売手 ( 対象法人 ) 国外関連者 ( 利益 =40 円 ) 対価の額 (90 円 ) ( 原価 =50 円 ) ( 利益 =50 円 ) 独立企業間価格 (100 円 ) 非関連者 対価の額 (100 円 ) 非関連者

BEPS 行動 8 の勧告のポイント 多額の研究開発費を投下 特許等を開発 適切な対価を収受しなければ課税機会を喪失するおそれ 知の海外流出のおそれ知財収支への影響 特許ノウハウ 無形資産の移転 特許ノウハウ A 社 < 課題 1> < 課題 2> 無形資産はその独自性により税務当局は 納税者との情報 A 社 比較対象取引を特定することが の非対称性により 移転価格の ( 日本 ) 難しく 移転価格算定が困難な 適切性の検証に関して困難を伴 (X 国 ) 場合が多い う場合が多い BEPS 勧告 1 DCF 法による価格算定 BEPS 勧告 2 HTVI アプローチ 課題 対応策 ポイント 1 無形資産はその独自性により比較対象取引を特定することが難しく 適切な移転価格の算定が困難な場合が多い 比較対象取引が特定できない場合 無形資産の使用から得られる予測キャッシュフロー等の割引現在価値を用いた評価テクニック ( テ ィスカウンティト キャッシュフロー法 :DCF 法 ) により移転価格を算定 ポイント 2 税務当局は 納税者との情報の非対称性により 移転価格の適切性の検証に関して困難を伴う場合が多い 一定の評価困難な無形資産 (Hard-To-Value Intangibles:HTVI) 取引に関し 当初の価格算定に用いた予測と結果が大きく乖離した場合 税務当局は価格が適切に算定されていなかったと推定し 事後の結果を勘案して価格を再評価 (HTVI アプローチ ) ( 注 1) 上記の BEPS 勧告の内容は移転価格税制に係る国際スタンダードである OECD の移転価格ガイドライン (TPG) に反映済 (2017 年 7 月改訂 ) ( 注 2)TPG における無形資産の定義 : 有形資産や金融資産ではなく 商業活動で使用するに当たり所有又は支配することができ 比較可能な状況での非関連者間取引においては その使用又は移転によって対価が生じるもの なお 現行の移転価格法令上 無形資産の定義は置かれていない

BEPS 行動 8: 移転価格算定方法の整備 (DCF 法 ) < 日本の現行移転価格税制 > 転価格算定方法BEPSプロジェクトにおいて DCF 5 取引単位利益分割法 <BEPS 最終報告書 移転価格ガイドライン> 移転価格ガイドラインでは 従来から 5つの 我が国の移転価格税制は 昭和 61 年の制度創設 基本的な移転価格算定方法によることが不適切又は困難な場合に 独立企業原則を充足する範囲に 以降 OECDの移転価格ガイドラインに概ね則した制度整備を進めてきたところ おいて その他の方法 を用いることを容認 他方 DCF 法については 法令上の取扱いが明ら 無形資産取引については その独自性により 比較対象取引を見出すことが容易でないことから BEPSプロジェクトでは 信頼し得る比較対象取引が把握できない場合 DCF 法 ( 注 ) が有用となり得るとして DCF 法に関する記載を拡充 移転価格ガイドラインに反映 かではなく 通達等の整備も行われていないことから 納税者 税務当局双方にとって 不確実性が高い状況 現時点においては 無形資産取引一般にDCF 法が広く用いられている状況は認められないが 納税者がDCF 法を用いて無形資産譲渡対価を算定している事案は一定数存在 ( 注 ) テ ィスカウンティト キャッシュフロー法 無形資産の使用から得られる 予測キャッシュフロー等の割引現在価値を用いた評価テクニック 上記の見直しは 既存の各移転価格算定方法が最適法となる 範囲を変更するものではない ( 参考 ) 移転価格ガイドラインにおける各移転価格算定方法と比較対象取引の参照要否 6 その他の方法 1 独立価格比準法 2 再販売価格基準法比較対象取引を参照する移転価格算定方法比較対象取引がない場合 利用できない 3 原価基準法法に関する移転価格ガイドラインの記載を拡充移4 取引単位営業利益法

BEPS 行動 8: 評価困難な無形資産 (Hard-To-Value Intangibles:HTVI) への対応 <BEPSプロジェクトにおけるHTVIへの問題意識及び対応策 > 無形資産取引に係る価格設定の適切性の検証に関しては 納税者は広範な情報を有しているのに対し 税務当局は納税者が提供する情報に依存せざるを得ないという情報の非対称性が課題 そのため 一定の評価困難な無形資産 (HTVI) 取引については 価格算定に用いた予測と結果が大きく乖離した場合 当初の移転価格が適切に算定されていなかったと推定し 税務当局が事後の結果を勘案して当初の移転価格算定を評価することを認める 評価困難な無形資産アプローチ (HTVIアプローチ) の導入を勧告 <HTVIアプローチの適用対象等 > HTVIアプローチの適用対象は 取引時点において1 信頼できる比較対象取引が存在せず 2 移転された無形資産から生じる将来キャッシュ フロー等についての予測や評価の前提が非常に不確かな無形資産取引 但し 当初の価格設定に用いた予測と事後の結果の乖離が取引時点で予見不可能な事象によるものであることを納税者が証明した場合など一定の適用免除要件を満たす場合には HTVIアプローチは適用しない 参考 1:HTVI アプローチに係る補足ガイダンス (2018 年 6 月公表 ) の指摘 税務当局は 更正期間制限等により HTVI アプローチの適用に関し困難に直面する場合がある 本ガイダンスは その対策の一案 として 各国が HTVI 取引の早期把握のための報告義務の導入や更正期間制限の延長等の措置を検討することを妨げない 参考 2: 国際的な動向 HTVI アプローチは 2017 年 7 月の改訂で OECD の移転価格ガイドラインに反映済 BEPS プロジェクト以前から類似の事後的調整制度 を導入済の米 独に加え 現在 HTVI アプローチは英 蘭 豪 ニュージーランド等においても適用可能となっている

参考 評価困難な無形資産 (HTVI) アプローチに係る移転価格ガイドライン等の関連規定 ( 抄 仮訳 ) <HTVI アプローチの適用要件 > 評価困難な無形資産 (HTVI) は 関連者間での取引時点における次の無形資産を対象とする [ パラ 6.189] 信頼できる比較対象取引が存在しない かつ 取引開始時点において 移転された無形資産から生じる将来のキャッシュ フロー若しくは収益についての予測 又は無形資産の評価で使用した前提が非常に不確かで 移転時点で当該無形資産の最終的な成功の水準に係る予測が難しいもの <HTVIアプローチの適用免除要件 > 上記に当てはまるHTVIの譲渡又は使用に関する取引について 以下の適用免除規定のうち一つでも当てはまる場合には この措置は適用されない [ パラ6.193] ⑴ 納税者が次の証拠を提出する場合 1 価格設定のためにどのようにリスクを計算したか ( 例えば可能性のウェイト付 ) 合理的に予見可能な事象又は他のリスク及びその発生の可能性に関する検討の適切性を含む 価格設定取決めを決定するために 移転時点で使用された事前の予測の詳細 及び 2 財務上の予測と実際の結果の大きな乖離が (a) 価格設定後に生じた予見不可能な進展又は事象であって 取引時点では関連者が予想することはできなかったもの 又は (b) 予見可能な結果の発生可能性が実現し その可能性が取引時点で著しく過大評価でも過少評価でもなかったことによるものであるという信頼性のある証拠 ⑵ 当該 HTVIの移転に係る関連者間取引が 二国間又は多国間のAPAによってカバーされている場合 ⑶ 取引時点における財務上の予測と実際の結果の大きな乖離が 当該 HTVIの対価を 取引時点で設定した対価の20% を超えて減少又は増加させる効果を持たない場合 ⑷ 取引時点における財務上の予測と実際の結果の大きな乖離が 予測の20% を超えず 当該 HTVIに係る第三者からの収入が初めて生み出された年から5 年の商業期間が経過した場合 <HTVI アプローチに係る補足ガイダンスの指摘 > HTVI アプローチの性質上 必然的に タイミングの問題についてある程度考慮する必要がある この問題は 長期のインキュベーション期間 ( すなわち 移転後の期間 及び無形資産が商業的に利用可能となり 収益が発生し得る前の期間 ) を有する無形資産に関する取引において HTVI アプローチに基づく調整が適切である場合に一層深刻となる ( パラグラフ 6.190 参照 ) [ 補足ガイダンスパラ 11] 一部の国では HTVI アプローチを適用する際 例えば 短い監査サイクル又は短い出訴期限のために 困難に直面する場合がある 本ガイダンスは そうした困難の克服を目的とした法律の採用を各国に要求はしていないが 各国が手続き又は法律に対する特定の変更 (HTVI の定義に当てはまる無形資産の移転若しくはライセンスを迅速に知らせるための要件の導入 又は通常の出訴期限法の修正等 ) を検討することを妨げるものではない [ 補足ガイダンスパラ 15]

参考 世界の特許保有件数上位 50 社の国別の状況 日本の知財使用料収支の推移 世界の特許保有件数上位 50 社の国別の状況 日本の知的財産権等使用料収支の推移 ( 企業数 ) 20 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 19 11 6 4 4 2 2 1 1 ( 億円 ) 24,000 19,000 14,000 9,000 4,000 1,491 22,905 1,000-733 ( 出典 ) 欧州委員会 OECD World Corporate Top R&D Investors: Industrial Property strategies in the Digital Economy (2017) ( 注 ) 2014 年の R&D 投資額上位 2,000 社を対象に 2012 年 ~2014 年に 5 主要国 地域 ( 日米欧中韓 ) において出願され保有されている特許件数のシェア上位 50 社をランキングしたもの 子会社分は親会社に含めて集計されている ( 出典 ) 財務省 国際収支統計 ( 暦年 )