小児におけるCKD活動

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CKD 平成 25 年度厚生労働科学研究費補助金による難治性疾患克服研究事業の成果として, 小児慢性腎臓病 ( 小児 CKD) 診断時の腎機能評価の手引き が完成したことをこころからお慶び申し上げます.CKD という概念ははじめ欧米からわが国の成人の腎臓学に持ち込まれた概念で, 日本腎臓学会にて深化

15 検査 尿検査 画像診断などの腎障害マーカーの異常が3ヶ月以上持続する状態を指すこととしている その病期分類方法は成人と小児では若干異なり 成人では糖尿病性腎障害が多い事からこれによる CKD 患者ではアルブミン尿を用い その他の疾患では蛋白尿を用いてそのリスク分類をしている これに対し小児では

学校検尿システムの現状と問題点

学会名 : 日本小児腎臓病学会 アンケート 1 1. アンケート 2 で回答する疾患名 (1) ネフローゼ症候群 (2) 慢性糸球体腎炎 (IgA 腎症 ) (3) 先天性腎尿路奇形 (4) 慢性腎不全 2. 移行期医療に取り組むしくみ あり : 移行支援 WG を学会内に有する 成人腎臓内科と厚労

1治療 かっていたか, 予想される基礎値よりも 1.5 倍以上の増加があった場合,3 尿量が 6 時間にわたって 0.5 ml/kg 体重 / 時未満に減少した場合のいずれかを満たすと,AKI と診断される. KDIGO 分類の重症度分類は,と類似し 3 ステージに分けられている ( 1). ステー

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16 小児 CKD の診断 本章の対象は乳幼児を含めた 18 歳未満の発育過程にある小児である. 小児 CKD の診断にあたっては, 患児の年齢や体格, さらに成人 CKD への移行 の可能性を考慮し, 成人 CKD のガイドラインを適用する時期について常に念頭におく必要がある. 5

透析無しでの死亡が 5 例で 先行的腎移植が 46 例でなされていた. 発生数の年齢別の経年変化では 2002 年から 歳群に減少傾向が伺われ, 特に男児に強く見られた ( 図 1). 100 万人当たりの発生頻度は米国では 0-14 歳で 10 例 4), 欧州 オーストラリアは約 7

BSA(m 2 )= 体重 (kg) 身長 (cm) =1.27m 2 となり 173.6mL/min/1.73m 2 を 1.27m 2 である患者個人の腎機能に換算 ( で補正を外すと ) すると 127.4mL/min になりますが これでも実測 CCr

を用いる必要があります Du Bois の式を用いて体表面積を計算すると 3) BSA(m 2 )= 体重 (kg) 身長 (cm) =1.27m 2 となり 173.6mL/min/1.73m 2 を 1.27m 2 である患者個人の腎機能に換算 ( で補正

糖尿病性腎症に合併したネフローゼ症候群の治療

日本内科学会雑誌第99巻第9号

尿試験紙を用いたアルブミン・クレアチニン検査の有用性

1041 小児 CKD 患者診療のエッセンス 小児では原則としてたんぱく質制限を行わない. 小児の栄養管理は, 栄養が成長に影 響することを念頭において行うことが重要である. 特に嘔吐などで経口摂取が進まない乳児には, 一時的に強制的な経管栄養および胃瘻管理も考慮する. 8. 小児の

2 CKD 1. 不適当な食事 2. 感染症 : 尿路感染, 肺炎, 敗血症など 3. 急激な循環状態の変動 : 高血圧, 低血圧 4. 水 電解質異常 : 脱水, 溢水, アシドーシス 5. 尿路疾患 : 尿路結石 狭窄 感染 6. 腎毒性薬剤 : 造影剤, 抗生物質,NSAIDs 7. 手術およ

(別紙様式1)

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Microsoft PowerPoint - 資料4 臓器移植後に伴うHTLV-1関連疾患発症の実態について

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はじめに イヌリンクリアランス (GFR) で用いるイヌリンは生体内で代謝されず タンパクと結合せず 完全に糸球体濾過され 尿細管で全く再吸収も分泌もされないため糸球体濾過量の gold standard になります チオ硫酸 Na や造影剤のイオヘキソールなどでもほぼ GFR に近い値が得られます

目次 1. 目的 2 2. 人工透析患者の年齢等の分析 3 性別 被保険者 被扶養者 3. 人工透析患者の傷病等の分析 8 腎臓病 併存傷病 平成 23 年度新規導入患者 4. 人工透析 健診結果 医療費の地域分析 13 二次医療圏別 1

福岡大学薬学部薬学疾患管理学教授

Microsoft Word - ①新旧対照表[国民年金・厚生年金保険障害認定基準(第2節/聴覚の障害)].docx

1. 趣旨 目的 香川県糖尿病性腎症等重症化予防プログラム 香川県医師会香川県糖尿病対策推進会議香川県国民健康保険団体連合会香川県 本県では 糖尿病患者の人口割合が全国上位にあり 糖尿病対策が喫緊 の課題となっている 糖尿病は放置すると網膜症や腎症 歯周病などの合 併症を引き起こし 患者の QOL

地域医療連携における 医師会の役割

第1 総 括 的 事 項

(検8)06資料5 渡辺参考人 厚労省特定健診検討委員会腎臓健診の基準に対する提言 最終版

エビデンスに基づく CKD 診療ガイドライン 2013 CQ とステートメント 推奨グレードのまとめ 1 CKD の診断と意義 CQ 1 CKD は末期腎不全の危険因子か? GFR の低下 (40~69 歳で 50 ml/ 分 /1.73 m 2 未満,70~79 歳で 40 ml/ 分 /1.73

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日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール

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婦人科63巻6号/FUJ07‐01(報告)       M

資料1-1 HTLV-1母子感染対策事業における妊婦健康診査とフォローアップ等の状況について

CKD 診療ガイド 01 刊行にあたって 槇野博史

資 料 臨床現場におけるクレアチニンとシスタチン C から算 出した推算 GFR の乖離 古川 通山 聡子 1) 薫 1) 河口 勝憲 1) 佐々木 環 2) 1) 川崎医科大学附属病院中央検査部 ) 川崎医科大学附属病院腎臓内科 要 岡崎希美恵 1) 辻岡 貴之 1) 岡山県倉

2006 PKDFCJ

院外処方箋の検査値活用法につ??

開始基準 比較的ゆっくり進行する慢性腎不全では ある程度の導入基準に関してコンセンサスが得られている 1) 慢性腎不全の透析導入基準は厚生省の基準が指標となる 1) あまりにも高度の末期腎不全まで保存的な治療を試みると尿毒症の合併症が併発しやすくなるため やや早期に社会復帰を目的として透析に導入され

総論 2 腎不全患者に特徴的な薬物動態の変化 薬効 薬物名 商品名 尿中排泄率 (%) 副作用 リバビリン レベトール 50 骨髄抑制, 意識障害 禁忌 アマンタジン シンメトレル 90 不穏, せん妄, 幻視 禁忌 抗ウイルス薬 オセルタミビル タミフル 70( 活性代謝物 99 悪心, 嘔吐,

3 病床数 施設 ~19 床 床 床以上 284 (3 施設で未回答 ) 4 放射線専門医数 ( 診断 治療を含む ) 施設 ~5 人 226 6~10 人 人

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1 10 年相対生存率に明らかな男女差は見られない わずかではあ

第43号(2013.5)

Microsoft PowerPoint - 2.医療費プロファイル 平成25年度(長野県・・

第 2 回健康塾平成 31 年 1 月 26 日土曜日鹿児島厚生連病院 1 階多目的ホール 慢性腎臓病 (CKD) 対策 気にしたことはありますか? あなたの腎臓 鹿児島厚生連病院腎臓内科部医長 屋万栄

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1

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第 Ⅰ 部 総論 11 第 Ⅰ 部 総論

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歯科中間報告(案)概要

データの取り扱いについて (原則)

標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会

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I. はじめに移植医療はドナーの存在が不可欠である 腎移植には死体腎移植と生体腎移植があるが 死後腎提供が少ない日本では生体腎移植が多く行われてきた 生体腎移植ドナーに医学的なメリットはないため 医療の基本の立場からは健常である生体腎移植ドナーに侵襲を及ぼすような医療行為は望ましくない これを避ける

(6/5 19:00修正)資料3 標準的な健診・保健指導プログラム改定のポイント (2) (2)

腎機能を有効かつ安全な薬物療法に活かす

山梨県生活習慣病実態調査の状況 1 調査目的平成 20 年 4 月に施行される医療制度改革において生活習慣病対策が一つの大きな柱となっている このため 糖尿病等生活習慣病の有病者 予備群の減少を図るために健康増進計画を見直し メタボリックシンドロームの概念を導入した 糖尿病等生活習慣病の有病者や予備

行対象症例の選択方針が内外で異なるためと考えられており ヨーロッパ諸国の中でも腎生検を比較的活 発に行っている地域では本症の発現頻度が高いこととともに 無症候性蛋白尿 血尿の比率が高くなってい る 5. 合併症 高血圧 ネフローゼ症候群を呈する場合は脂質異常症 慢性腎不全に進行した場合は 腎性貧血

資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号

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(Microsoft PowerPoint - ASC-WTQ[\223\307\202\335\216\346\202\350\220\352\227p] [\214\335\212\267\203\202\201[\203h])

亜急性 慢性の区別はあいまいであるが 疾患の期間がわかると鑑別疾患を狭めることができる 臨床経過に関するチェック ( 問診 ) 項目 過去の腎疾患 関連疾患の既往はないか 学校検尿での異常は 保健加入時の尿所見の異常は 職場検診での尿所見の異常は 妊娠 出産時の尿所見の異常は 扁桃炎の既往は ( 急

学校検尿マニュアル ( 改訂版 ) - 診断のすすめ方 - 平成 25 年 5 月 社団法人広島市医師会 学校医部会

系統看護学講座 クイックリファレンス 2012年 母性看護学

腎臓病専門医? 腎臓専門医? のいずれか用語の統一が必要である 回答 : 腎臓専門医で統一しました. 2 頁 2-3 行目専門医の行う薬剤調整 今や RA 系抑制薬やスタチンの開始は 多くの症例で すでになされていると考える それよりも腎性貧血管理 目標血圧の達成ならびに心血管病リスクの評価と専門医

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ROCKY NOTE 多発性嚢胞腎 (060123) 多発性嚢胞腎 (Autosomal-dominant polycystic kidney disease (APKD) ) の頻度は数千人に 1 人と比較的多い疾患である 先日 初診の多発性嚢胞腎を診る期会があったので多発性嚢胞腎のアプローチの仕

肥満者の多くが複数の危険因子を持っている 肥満のみ約 20% いずれか 1 疾患有病約 47% 肥満のみ 糖尿病 いずれか 2 疾患有病約 28% 3 疾患すべて有病約 5% 高脂血症 高血圧症 厚生労働省保健指導における学習教材集 (H14 糖尿病実態調査の再集計 ) より

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慢性腎臓病 chronic kidney disease

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CKD 診療ガイド 2012 刊行にあたって 槇野博史

第 23 回 MGR トピックス :IgA 腎症 ステロイドパルス療法 扁摘 発表 : 長沼司 ( 腎臓内科 ) 解説 : 神宮寺禎巳 ( 腎臓内科 ) 文献 : Corticosteroid in IgA nephropathy: a randomised controlled trial Cla

腎機能を正しく評価するための 10 の鉄則改訂 5 版 熊本大学薬学部附属育薬フロンティアセンター 臨床薬理学分野平田純生 標準化 egfr(ml/min/1.73m 2 ) は CKD 重症度分類に使うためのものであり 薬物投与設計には使わない 薬物投与設

egfr(ml/min/1.73 m2 ) が標準体形に補正してある意義は何か? 小柄な体格の方は体格なりの小さな GFR で十分なのに 体表面積未補正値を用いると腎機能を過小評価して分類されてしまうことを防ぐためです かつては日本人の体表面積は 1.49m 2 が用いられていましたが 国際的に 1

1 疾患別医療費札幌市国保の総医療費に占める入院医療費では 悪性新生物が 21.2% 循環器疾患が 18.6% となっており 循環器疾患では 虚血性心疾患が 4.5% 脳梗塞が 2.8% を占めています 外来医療費では 糖尿病が 7.8% 高血圧症が 6.6% 脂質異常症が 4.3% となっています


2008年10月2日

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高齢者におけるサルコペニアの実態について みやぐち医院 宮口信吾 我が国では 高齢化社会が進行し 脳血管疾患 悪性腫瘍の増加ばかりでなく 骨 筋肉を中心とした運動器疾患と加齢との関係が注目されている 要介護になる疾患の原因として 第 1 位は脳卒中 第 2 位は認知症 第 3 位が老衰 第 4 位に

表 2 解析対象患者の背景因子 ( 解析対象因子 その 1) 透析時間 ( 時間 / 回 ) < 小計 記載なし 合計 患者数 ( 人 ) 14,161 13, ,219 9,977 9,057 1, , ,6

2 本日の説明内容 1 市のプロフィール 2 CKD( 慢性腎臓病 ) とは 3 CKD 対策の背景 4 CKD 対策の取組 (2009~2014) 5 CKD 対策の結果

東京医師アカデミー 1 コース概要 クリニカル フェロー小児科 ( 腎臓内科 ) コース 主たる研修病院 ( 所属病院 ) 東京都立小児総合医療センター 連携して研修する病院 施設 ( 予定 ) 研修時に必要とする知識 技量 ( 応募資格 ) 国立成育医療研究所センター, 東邦大学医療センター大森病

対象疾患名及び ICD-10 コード等 対象疾患名 ( 診療行為 ) ICD-10 等 1 糖尿病 2 脳血管障害 3 虚血性心疾患 4 動脈閉塞 5 高血圧症 6 高尿酸血症 7 高脂血症 8 肝機能障害 9 高血圧性腎臓障害 10 人工透析 E11~E14 I61 I639 I64 I209 I


赤色ボタン 1) データ保存 : ボタンをクリックすれば 保存データ シートに データが保存 2) 入力データクリア : ボタンをクリックすれば 入力されたデータが消去されます 水色ボタン ( 画面移動用 ) 保存データシートへ 成長曲線 6 歳以上 肥満度曲線 成長速度 成長曲線 0~6 歳 BM

2つの大きな病気 『糖尿病』 『慢性腎臓病』

CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

TDM研究 Vol.26 No.2

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平成 28 年度感染症危機管理研修会資料 2016/10/13 平成 28 年度危機管理研修会 疫学調査の基本ステップ 国立感染症研究所 実地疫学専門家養成コース (FETP) 1 実地疫学調査の目的 1. 集団発生の原因究明 2. 集団発生のコントロール 3. 将来の集団発生の予防 2 1

Save Your Kidney Japanes

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小児における CKD 活動 慢性腎臓病 (CKD) シンポジウム ( 厚生労働省 ) 2014 年 3 月 13 日 日本小児腎臓病学会理事長東京都立小児総合医療センター本田雅敬

はじめに - 小児 CKD の特徴 先天性腎尿路奇形が多い 塩類喪失 多尿 泌尿器科特有の合併症がある 長期にわたる罹患 末期腎不全に進行すると, 複数回の移植あるいは超長期 の透析が必要 成長 発達の障害など小児特有の合併症がCKD 早期から起こりうるため その管理は重要である 成人に成ってから末期腎不全に成る方が多く, その早期発見 予防は極めて重要である 思春期 青年期の管理が重要である ( 教育, 就職, ノンアドヒアランスなど )

CKD 活動 ( 小児腎臓病学会 ) 2006 年に小児 CKD 対策委員会を設立 ( 委員長上村治 ) 腎機能の評価 : 日本人の小児の血清クレアチニン, シスタチン C,β2ミクログロブリンの正常値の作成. 推算糸球体濾過量 (egfr) の作成 : 血清クレアチニン及びシスタチンC 疫学調査 : 小児 CKD 患者の原疾患, 頻度の疫学調査及び追跡調査 ( 厚労科研 : 石倉班 )

CKD 活動 ( 小児腎臓病学会 )2 検尿対策 : 学校検尿のすべて - 平成 23 年度改訂 への参画 - 専門医紹介基準, 運動制限の緩和など ( 文科省, 学校保 健会 ) 3 歳児検尿及び先天性腎尿路奇形 (CAKUT) 発見のため の健診のあり方 ( 厚労科研 : 本田班 岡班 ) 各都道府県に小児 CKD 対策代表設置 ARB の腎保護作用のランダム化比較試験 ( 石倉班 )

末期腎不全原因疾患の変化 期間症例数原疾患 糸球体疾患糸球体腎炎 先天性腎尿路疾患 1968-1979 1980-1986 1998-2003 720 81.6% 49.5% 7.5% 710 60.6% 33.1% 14.7% 347 29.1% 2.3% 50.4% 服部新三郎小児慢性腎不全患者の経年変化 Annual Review 腎臓 2006, 136-141 2006 年 1 月, 中外医学社

小児末期腎不全の頻度 日本の小児末期腎不全の導入患者数は世界で一番少ない米国の 3 分の 1 Bradley A. Warady & Vimal Chadha Pediatr Nephrol (2007) 22:1999 2009

CKD の定義 ( 腎機能異常, egfr) が必要

0.6 0.2 0 0.8 0.6 0.4 0.2 0 1 2 1 0 腎機能 ( 体表面積あたりの成人の正常値を 1 として ) 身長 (m): 筋肉量 : 筋肉量は単位無し 血清クレアチニン 新生児期 乳児期早期は生理的に腎機能低下 思春期までは筋肉量と身長は相関 0 0.5 1 4 10 12 14 17 年齢 小児の各年齢の血清クレアチニンの正常値 思春期以降身長に比し 増加

11 歳以下の血清クレアチニン基準値 Age 2.5% 50.0% 97.5% 3 5 months 0.14 0.20 0.26 6 8 months 0.14 0.22 0.31 9 11 months 0.14 0.22 0.34 1 year 0.16 0.23 0.32 2 years 0.17 0.24 0.37 3 years 0.21 0.27 0.37 4 years 0.20 0.30 0.40 5 years 0.25 0.34 0.45 6 years 0.25 0.34 0.48 7 years 0.28 0.37 0.49 8 years 0.29 0.40 0.53 9 years 0.34 0.41 0.51 10 years 0.30 0.41 0.57 11 years 0.35 0.45 0.58 mg/dl

血清クレアチニンと身長 (2 11 歳 ) n = 717 r = 0.732 y = 0.34x 0.044 (broken line) y = 0.30x (solid line) 血清クレアチニン (mg/dl) = 0.30 身長 (m) Uemura O et al. Clin Exp Nephrol. 2009; 13: 585-8

血清クレアチニンと身長 ( 男児 1 ヶ月 18 歳 ). n = 516 r = 0.908 y = -1.259x 5 + 7.815x 4 18.57x 3 + 21.39x 2 11.71x + 2.628 Uemura O et al. Clin Exp Nephrol. 2011; 15: 694-9

小児における推算 GFR egfr(estimated GFR) k 身長 (cm) egfr (ml/min/1.73m2) = 血清 creatinine (mg/dl) creatinine assay Schwartz Jaffe 法 GFR assay 血清クレアチニン ( イヌリンクリアランスで補正 ) age sex k < 2 y.o. m & f 0.45 0.33 (LBWI) 2-12 y.o. 12 y.o. 12 y.o. m & f f m 0.55 0.55 0.70 New Schwartz EIA 法 血清クレアチニン ( イヌリンクリアラ 1-16 歳 m & f 0.413 ンスで補正 )

Uemura O. Eur J Pediatr. 2012;171:1401-4. egfr (new Schwartz: ml/min/1.73 m 2 ) egfr (new Schwartz: ml/min/1.73 m 2 ) New Schwartz は日本人には使用できない 300 250 200 150 100 50 y = 3.49x + 160 R² = 0.321 n=466 0 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0 16.0 18.0 250 200 150 100 50 男子 女子 年齢 ( 歳 ) y = 2.28x + 153 R² = 0.185 n=608 0 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0 16.0 18.0

小児の腎機能を知るための推算式 1) 日本人小児 (2 歳 ~11 歳 ) のクレアチニンを利用した egfr egfr (ml/min/1.73m2) = 0.35 身長 (cm) 血清クレアチニン (mg/dl) Nagai T et al. Clin Exp Nephrol. 2013; 17: 877-881 2) 日本人小児 (2 歳 ~18 歳 ) のクレアチニンを利用した egfr egfr (ml/min/1.73m2) = 110.2 ( 血清 Cr 基準値 / 患者血清 Cr) +2.93 ただし 血清クレアチニン基準値 (y) は 男女に分けて身長 (x) の関数として以下の通りである男児 ; y = 1.259x 5 + 7.815x 4 18.57x 3 + 21.39x 2 11.71x + 2.628 女児 ; y = 4.536x 5 + 27.16x 4 63.47x 3 + 72.43x 2 40.06x + 8.778 Uemura O et al. Clin Exp Nephrol,2013. 2. [Epub ahead of print]

血清シスタチン C と年齢 ( 小児腎臓病学会 CKD 対策委員会 ) 小児 CysC(mg/ 基準値 ) 97.5 パーセンタイル egfr=75-92ml/min egfr = 104.1 1/CysC -7.80 Yata N et al. Clin Exp Nephrol. 2013; 17: 872-876, Uemura O Clin Exp Nephrol,2013. 2. [Epub ahead of print]

ために手引きを作成腎機能障害を理解する

CKD の疫学

3 ヶ月 ~11 歳小児の血清クレアチニン値と CKD ステージ ( 小児の腎機能異常 ) 年齢 ステージ2 ステージ3 ステージ4 ステージ5 3-5か月 0.27~ 0.41~ 0.81~ 1.61~ 6-8か月 0.29~ 0.45~ 0.89~ 1.77~ 9-11か月 0.29~ 0.45~ 0.89~ 1.77~ 1 歳 0.31~ 0.47~ 0.93~ 1.85~ 2 歳 0.32~ 0.49~ 0.97~ 1.93~ 3 歳 0.36~ 0.55~ 1.09~ 2.17~ 4 歳 0.40~ 0.61~ 1.21~ 2.41~ 5 歳 0.45~ 0.69~ 1.37~ 2.73~ 6 歳 0.45~ 0.69~ 1.37~ 2.73~ 7 歳 0.49~ 0.75~ 1.49~ 2.97~ 8 歳 0.53~ 0.81~ 1.61~ 3.21~ 9 歳 0.55~ 0.83~ 1.65~ 3.29~ 10 歳 0.55~ 0.83~ 1.65~ 3.29~ 11 歳 0.60~ 0.91~ 1.81~ 3.61~

CKD3 以上の患者総数と推計 925 施設 (77.7%) から回答 2010 年 4 月 1 日時点で CKD( ステージ 3-5) の患者 447 人の情報を収集 ステージ 3: 315 人, 4: 107 人, 5: 25 人 年齢中央値 8.7 歳 男児 271 人 (60.6%) 有病率 : 小児人口 100 万人あたり 29.5 人 罹患率は 100 万人あたり 5.8 人 / 年 小児での CKD( ステージ 3 以上 ) は約 500 人, 成人は約 1300 万人 Ishikura K et al. Nephrol Dial Transplant. 2013; 28: 2345-2355

CKD3 以上の原疾患 非糸球体性 糸球体性 分類不能 N=407 (91.1%) N=35 (7.8%) N=5 (1.1%) CAKUT 278 (62.0%) - - 周産期 40 - - 多発性嚢胞腎 20 - - ネフロン癆 19 - - Alport 症候群 - 8 - FSGS - 8 - 慢性腎炎 - 8 - 先天性ネフローゼ - 3 - Ishikura K et al. Nephrol Dial Transplant. 2013;28:2345-55.

発見動機 方法 CAKUT 非 CAKUT N=278 N=169 胎児エコー / 新生児期のエコー 88 (31.7%) 21 (12.4%) 偶然行った検査 39 (14.0%) 31 (18.3%) 尿路感染症 38 (13.7%) 5 (3.0%) 学校検尿 28 (10.1%) 13 (7.7%) 3 歳児検尿 10 (3.6%) 9 (5.3%)

腎生存率3 年腎生存率 ステージ 3 90.8% 成人と同様に蛋白尿も独立した危険因子 ステージ 4 48.9% ステージ 5 10.4% 観察期間 ( 年 ) 観察期間 ( 中央値 ):3.12 年

CKD ステージと身長 身長SD p<0.001 CKD ステージ

検尿活動 ( 学校,3 歳児 )

学校検尿のすべて平成 23 年度改訂

専門医紹介基準の作成 1. 早朝尿蛋白および尿中蛋白 / クレアチニン比がそれぞれ 1+ 程度 0.2~0.4 は,6~12 ヶ月程度で紹介 2+ 程度 0.5~0.9 は 3~6 ヶ月程度で紹介 3+ 程度 1.0 以上は 1~3 ヶ月程度で紹介 ただし 上記を満たさない場合も含めて 下記の 2~6 が出現 判明すれば 早期に専門医に相談または紹介する 2. 肉眼的血尿 ( 遠心後肉眼的血尿を含む ) 3. 低蛋白血症 : 血清アルブミン 3.0g/dl 未満 4. 低補体血症 5. 高血圧 ( 白衣高血圧は除外する ) 6. 腎機能障害の存在

80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% % 管理指導表提出者 ( 学校 ) 67.6% 要精検定期的通院管理必要 50.8% 全国 44.8% 25272 校 58.4% 56.1% 東京都 52.8% 983 校 管理指導表を使用している学校 58.8% のうちの回答なので実際の頻度は半数以下

3 歳児検尿と先天性腎尿路奇形 (CAKUT)

CAKUT の尿試験紙陽性率 CKD 分類 試験紙 蛋白 クレアチニン β2 ミクログロブリン / クレアチニン (±) 以上 (+) 以上 <0.15(g/g) <0.3 μg/mg 2 * (27) 37.0% 33.3 44.4 73.9 3 (315) 51.3 34.7 75.6 96.2 4 (107) 71.7 58.3 96.1 97.6 5 (25) 85.7 85.7 86.0 100 *CKDStage2 は都立小児総合医療センター それ以外は全国データを使用 CAKUT 及び 3 歳の尿は希釈尿のため尿蛋白 + は使用できない

CAKUT 早期発見のための研究 ( 岡研究班 ) マニュアル作成とモデル地区での運用 β2ミクログロブリンの濾紙法の検討 蛋白 クレアチニン比, アルブミン クレアチニン比の有用性, 試験紙の検討 タンデムマスによる血清クレアチニンの検討 胎児エコー

今後の課題 小児の検尿体制は学校検尿,3 歳児検尿は確立. CKD 発見及び対策のためのツールの作成はほぼ完了. 検尿異常者を確実に精査, 専門医に紹介するシステムの確立が必要. 検尿後の疫学的検討も不十分 学会に CKD 対策委員都道府県代表を指定 都道府県単位で腎臓病対策委員会の設立 要望書提出 検尿マニュアル の作成中 先天性腎尿路奇形の早期発見が不十分 乳幼児検診システム ( 厚労科研 ) の検討 モデル的運用開始 ( フローチャートの全国配布 ) 早期発見による腎保護のエビデンスが不十分 泌尿器科とも連携 開始