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腎臓病治療における基本的な情報 腎臓病治療における最新の情報 - 慢性腎臓病に伴う骨 ミネラル代謝異常の診療ガイドラインの改定 - ( 医 ) 川島会川島病院 薬局長志内敏郎 慢性腎臓病 (chronic kidney disease:ckd) では 腎機能が低下するにつれて P が排泄されなくなり高 P 血症をとなる P と Ca の量は一定であるため P が過剰であると Ca は低下する また Ca の吸収を助けるホルモンである活性型ビタミン D は 腎臓で活性化するため CKD では活性型ビタミン D が不足となり低 Ca 血症となる 高 P 血症 低 Ca 血症から PTH が過剰に分泌され 骨からの Ca を溶かして出したり P の排泄を促します この状態が続くと 二次性副甲状腺機能亢進症となります CKD では 二次性副甲状腺機能亢進症にみられるようにミネラルの代謝異常 骨病変 血管を含む全身の石灰化 特に心血管系の石灰化は長期的に生命予後に影響を及ぼします このことから CKD 患者に対して全身性疾患という概念で 慢性腎臓病における骨ミネラル代謝異常 (CKD-mineral and bone disorder:ckd-mbd) が提唱されました CKD-MBD において重要な病態である二次性副甲状腺機能亢進症は 発症頻度が高く 適切な予防及び管理を必要とするため 2006 年に日本透析医学会は 透析患者における二次性副甲状腺機能亢進症ガイドライン ( 以下 2006 年ガイドラインと略す ) を発表しました 1) 2006 年ガイドラインの最大の特徴は 生命予後の改善を最優先事項としています 生命予後をアウトカムとすると P Ca PTH の順で寄与度が高いため 検査値は P 次に Ca その次に PTH と順に目標達成値を優先させています また P と Ca がそれぞれ管理目標値と比べ 1) 低い 2) コントロールされている 3) 高い に分けて その組み合わせの 9 パターンにおける各々の治療指針を作成しています ( 図 1) 2008 年には維持透析患者に対する二次性副甲状腺機能亢進症治療薬として Ca 受容体作動薬であるシナカルセト塩酸塩 ( シナカルセト ) が使用可能となり 2009 年には新規 P 吸着剤の炭酸ランタンが使用可能となりました 2006 年ガイドライン発表後 6 年が経過し 管理目標を P>Ca>PTH の順に優先することを明記し 2012 年に日本透析医学会は 慢性腎臓病に伴う骨 ミネラル代謝異常の診療ガイドラインの改定 ( 以下 2012 年ガイドラインと略す ) を発表 以前に提示した P Ca PTH 目標値の妥当性の検証や 2006 年以降に使用可能となった薬剤を加え また透析患者に限定していた対象を保存期 移植後 腹膜透析 小児にまでにひろげました 2) 2012 年ガイドラインでは 2006 年 ~2009 年末まで観察できた透析患者のうち 128,125 名のデータを用いて解析が行われ 生命予後をエンドポイントとした P Ca PTH の管理目標値が検討されました P の管理目標値は 3.5~6.0mg/dL Ca の管理目標値は 8.4~10.0mg/dL となり 2006 年ガイドラインと同じ管理目標値です PTH は intactpth60~240pg/ml となり 2006 年ガイドラインの intactpth 60~180pg/mL から変更されました P Ca

を管理したうえで PTH を管理目標値内に保つことが原則です 今回の改訂はこれを否定するものではありません 副甲状腺機能が亢進しないように管理するという診療方針が重視されてきましたが PTH の上限については従来の解析値より高い値まで許容できることが明らかになったものの 高 PTH 血症では P Ca のコントロールを困難にすることや PTH は通常の測定頻度が 3 ヶ月に 1 回であり 持続的上昇に対応するタイムラグも考慮して 上限を 240pg/mL に規定しています 2012 年ガイドラインでは 活性型ビタミン D とシナカルセトの使い分けを下記のように説明しています シナカルセトは主に PTH 抑制を目的としているが 同時に P Ca も低下させる作用があります また PTH コントロールと P Ca コントロールは密接に連動していると考えられることから PTH が高い場合に ( もしくは低い場合に ) という条件付きで 9 分割図に採用しています すなわち PTH が高い場合において P もしくは Ca をコントロールする一つの方法としてシナカルセトの投与を考慮することが望ましいとし PTH が低い場合の減量が示されています 二次性副甲状腺機能亢進症に対する治療として 9 分割図において活性型ビタミン D とシナカルセトの使い分けを図 2 のように表現しています PTH が高値で P もしくは Ca 値が正常もしくは高値の場合にはシナカルセトの投与を P もしくは Ca が正常もしくは低値である場合には活性型ビタミン D の投与を考慮する 近年 活性型ビタミン D の使用が 達成された P Ca PTH 値とは独立して 総死亡 心血管死亡の低リスクと関連することが 透析患者を対象とした多くの観察コホート研究で示されています 3 ~9) また 活性型ビタミン D の前駆ホルモンである 25(OH)D 濃度の低下は 健常人においても死亡の有意なリスクファクターになります 透析患者においては大部分が 25(OH)D および活性型ビタミン D である 1,25(OH)2D3 も欠乏状態であることがわかっており 活性型ビタミン D の投与については P および Ca 値が逸脱しない範囲で投与を考慮してよいと考えられています したがって図 1,2 に示すように 活性型ビタミン D にあえて * を付けないことで PTH 値にかかわらず その投与を考慮するとしています 副甲状腺機能抑制を目的とした場合 活性型ビタミン D とシナカルセトのどちらを優先した方がいいかは まだ決まっていません 活性型ビタミン D には副甲状腺機能抑制以外にも多様な生物学的作用が報告されており この利点に注目して 副甲状腺機能抑制の必要がない症例に対しても積極的な適応があるとの意見もあります 一方で シナカルセトには高 P 血症や高 Ca 血症を併発した二次性副甲状腺機能亢進症には使いやすいという利点もあります 当院でも シナカルセトと炭酸ランタンを使用するようになってからは P Ca PTH 値が 2012 年ガイドラインの管理目標値内でコントロールできる割合が増えています しかし これらの薬剤を使用していて 思わぬ副作用を経験しましたで 次に症例を提示します

症例報告 1 -シナカルセトの副作用( 一過性意識消失 )- 透析歴 20 年の血液透析患者で 二次性副甲状腺機能亢進症治療目的で シナカルセトの服用が開始されました シナカルセト服用後の吐き気などにより コンプライアンス不良となり 投与中止となりましたが 高 PTH 高 P 血症の状態が続き 再度 シナカルセト 25mg を開始しています 段階的に用量をあげていきシナカルセト 75mg を服用後 喉がしびれ 3 度 意識消失したと本人から訴えがありました 以前 シナカルセト 25mg を服用し 喉がしびれ 食事が気管に入ったとの訴えもあったようです シナカルセトの添付文書には 重大な副作用の欄に 低 Ca 血症に基づくと考えられるしびれ (14.7%) などがあります 10) また 意識レベルの低下は 0.2% あり 一過性意識消失は頻度不明と記載されています 今回の症例では シナカルセトが 75mg に増量した際に 意識消失しており シナカルセトのコンプライアンス不良から 75mg を服用し低 Ca 血症になったと考えられました しかし 検査値は 低 Ca 血症 ( 図 3) ではなく シナカルセトによる意識消失がどのような作用機序なのかは説明できませんでした

症例報告 2 - 炭酸ランタンの副作用 ( サブイレウス )- 透析歴 22 年の血液透析患者が 炭酸ランタンを服用していましたが 投与開始 1 年後 (1 回 750mg 1 日 2,250mg に増量 ) に下痢が続くため 医師の診察を受けました 下痢以外には 腹満 グル音があり 嘔気 嘔吐 発熱はありませんでしたし腹部 X-P で ニボー像がありサブイレウスと診断された その場で グリセリン浣腸 50mL を施行したが 不変 患者に入院をすすめるが同意が得られず 絶食での経過観察となりました 発症 5 日後には 腹部膨満はあるがグル音亢進はなく 下痢も少し改善傾向でした 発症 7 日後には 食事を再開しました 徐々に腹部症状もなくなり発症 14 日後には 腹満軽度で 軟便が出てきました 炭酸ランタンの添付文書の重大な副作用には 下記のように記載されています 11) 1) 腸管穿孔 イレウス ( 頻度不明 ): 腸管穿孔 イレウスがあらわれることがあるので 観察を十分に行うこと これらの病態を疑わせる持続する腹痛 嘔吐等の異常が認められた場合には 投与を中止し 腹部の診察や CT 腹部 X 線 超音波等を実施し 適切な処置を行うこと また これらの中には画像検査等により本剤が噛み砕かれていない状態で腸管内に認められた例も報告されている 今回の症例では 炭酸ランタンを粉砕して調剤したにもかかわらず サブイレウスとなりました 今回のサブイレウスは重篤ではなく保存的治療で症状が緩和し徐々に軽快しました 炭酸ランタンのコンプライアンス確認は しっかり噛み砕けているかを確認することはもちろんですが 下痢や腹部膨満感といった症状がある患者には イレウスの可能性もあるので注意する必要があります 炭酸ランタンは分包顆粒が発売され 歯が悪いやしっかり噛み砕けているか疑わしい透析患者にはチュアブル錠から顆粒への剤型変更も一つの方法です

図 1 P,Ca の治療管理法 9 分割図 は開始または増量 は減量または中止を示す * 血清 PTH 濃度が高値 ** もしくは低値の場合に検討する 日本透析医学会 慢性腎臓病に伴う骨 ミネラル代謝異常の診療ガイドライン より

図 2 活性型ビタミン D とシナカルセト塩酸塩の使い分け *PTH 濃度が高値の場合 日本透析医学会 慢性腎臓病に伴う骨 ミネラル代謝異常の診療ガイドライン より

図 3 検査値の推移 12010/12/17 シナカルセト塩酸塩の副作用 ( 一過性意識消失 ) 発生 22011/2/17 PTx 施行 低アルブミン血症 (4.0/dL 未満 ) がある場合には 補正 Ca 濃度 補正 Ca 濃度 = 実測 Ca 濃度 +(4 Alb 濃度 )[Payne の補正式 ]

文献 1) 日本透析医学会 : 透析患者における二次性副甲状腺機能亢進症治療ガイドライン. 透析会誌 39:1435-1455,2006 2) 日本透析医学会 : 慢性腎臓病に伴う骨 ミネラル代謝異常の診療ガイドライン. 透析会誌 45(4):301-356,2012 3) Kalantar-Zadeh K, Kuwae N, Regidor DL, Kovesdy CP, Kilpatrick RD, Shinaberger CS, McAllister CJ, Budoff MJ, Salusky IB, Kopple JD:Survival predictability of time-varying indicators of bone disease in maintenance hemodialysis patients. Kidney Int 70:771-780, 2006 4) Shoji T, Shinohara K, Kimoto E, Emoto M, Tahara H, Koyama H, Inaba M, Fukumoto S, Ishimura E, Miki T, Tabata T, Nishizawa Y:Lowerr isk forcar diovascular mortality in oral 1alpha-hydroxy vitamin D3 users in a haemodialysis population. Nephrol Dial Transplant 19:179-184, 2004 5) Teng M, Wolf M, Ofsthun MN, Lazarus JM, Hernán MA, Camargo CA Jr, Thadhani R:Activated injectable vitamin D and hemodialysis survival:a historical cohort study. J Am Soc Nephrol 16:1115-1125, 2005 6) Melamed ML, Eustace JA, Plantinga L, JaarBG, Fink NE, Coresh J, Klag MJ, Powe NR:Changes in serum calcium, phosphate, and PTH and the risk of death in incident dialysis patients:a longitudinal study. Kidney Int 70:351-357, 2006 7) Tentori F, Hunt WC, Stidley CA, Rohrscheib MR, Bedrick EJ, MeyerKB, Johnson HK, ZagerPG;Medical Directors of Dialysis Clinic Inc:Mortality risk among hemodialysis patients receiving different vitamin D analogs. Kidney Int 70:1858-1865, 2006 8) Kovesdy CP, Ahmadzadeh S, Anderson JE, Kalantar-Zadeh K: Association of activated vitamin D treatment and mortality in chronic kidney disease. Arch Intern Med 168:397-403, 2008 9) Naves-Diaz M, Alvarez-Hernandez D, Passlick-Deetjen J, Guinsburg A, Marelli C, Rodriguez-Puyol D, Cannata-Andía JB:Oral active vitamin D is associated with improved survival in hemodialysis patients. Kidney Int 74:1070-1078, 2008 10) レグパラ 錠 25mg, レグパラ 錠 75mg( 協和発酵キリン株式会社 ) 医薬品添付文書 11) ホスレノール チュアブル錠 250mg, ホスレノール チュアブル錠 500mg( バイエル薬品株式会社 ) 医薬品添付文書