詳細説明 1 予測精度の具体的な目標設定 (1) 予測精度の具体的な目標設定洪水予測システムの予測精度の目標設定は 防災対策 ( 洪水予警報の発令等 ) に留意して ハイドログラフのどの部分を対象にどの程度の精度が求められるかを明確にする 目標は可能な限り定量的に 困難な場合は定性的に設定する 定量

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土砂災害警戒情報って何? 土砂災害警戒情報とは 大雨警報が発表されている状況でさらに土砂災害の危険性が高まったときに, 市町村長が避難勧告等を発令する際の判断や住民の方々が自主避難をする際の参考となるよう, 宮城県と仙台管区気象台が共同で発表する防災情報です 気象庁 HP より :

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Transcription:

詳細説明 予測精度の具体的な目標設定 () 予測精度の具体的な目標設定洪水予測システムの予測精度の目標設定は 防災対策 ( 洪水予警報の発令等 ) に留意して ハイドログラフのどの部分を対象にどの程度の精度が求められるかを明確にする 目標は可能な限り定量的に 困難な場合は定性的に設定する 定量的な目標値は 過去の実績洪水のハイドログラフ 予警報のタイミングや設定されている基準水位 想定される避難時間等を勘案して設定する なお 精度評価に用いる降雨条件は 降雨予測誤差と水位予測誤差を切り離して考えるため 目標設定の検討は 降雨完全予測による計算結果 ( 降雨予測値を実績降雨で置き換えて降雨予測誤差をなくしたもの ) に対して行うものとする 解説 洪水予測システムの利用形態とハイドログラフの中で特に精度が求められる部分の対応例を示す 水位 [m] 予測水位 3 ピーク生起時刻 はん濫危険水位 2 基準水位 4 ピーク水位 流量 実況水位 避難判断水位 はん濫注意水位 5 低減部を含む波形全体 高水敷の水位 水位が高水敷を超過する時刻 水防団待機水位 時間 [hr] 図 ハイドログラフの着眼点の概念図 表 洪水予測システムの利用形態の例精度が求められる部分洪水予測システムの利用形態 ( 例 ) 2 3 4 5 はん濫常襲地区を抱えている場合 下流の高水敷 ( 河川敷 ) にレクレーショ ン施設がある場合下流に洪水調節施設がある場合

上記 ~5に対する 目標設定の考え方および設定例を次に示す なお ここで記載している目標値はあくまでも例であり 具体的な数字は 過去の実績洪水のハイドログラフ 予警報のタイミングや設定されている基準水位 想定される避難時間等を勘案して設定する必要がある 水位が高水敷を超過する時刻目標 ( 例 ):3 時間先予測値の 水位が高水敷を超過する時刻差 ΔT が 0~-h または 0~+ 0.5h の間におさまっていること T : 高水敷を超過する時刻差 T = T c T o ; T c : 高水敷を超過する時刻 ( 予測 ) T o : 高水敷を超過する時刻 ( 実績 ) 著しくずれていた場合 モデル上の初期損失や有効雨量のパラメータを再度検討する必要がある 2 基準水位基準水位と予警報の発令基準の確認を行い 予測時間とその時の誤差の許容範囲について検討し 目標を設定する 例えば 予警報発令のタイミングが以下のように設定されている場合 ---- 例 ---- 避難準備情報の発令タイミング水位予測において 3 時間以内にはん濫危険水位に到達することが予測されるとき または はん濫危険水位に達したとき 避難勧告発令の発令タイミング水位予測において 2 時間以内にはん濫危険水位に到達することが予測されるとき または避難判断水位に達したとき 次のように目標設定する 目標 ( 例 ): 水防団待機水位以上の範囲において 3 時間先予測値の水位予測誤差が ±30cm 以内 水位予測誤差については ±30cm としているが はん濫危険水位と避難判断水位との水位差が 50cm 未満の場合などは さらに厳しく (±0cm 等 ) 設定する必要がある

水位 [m] 水位差が小さいとき (50cm 未満等 ) 水位誤差の許容範囲は ±30cm よりもさらに小さくなる はん濫危険水位 避難判断水位 はん濫注意水位 Δh Δt (2h) Δt (3h) 水防団待機水位 機待団防水 報情備準難避 告勧難避 示指難避 時間 [hr] 図 2 基準水位と予警報の発令基準の例 3 ピーク生起時刻目標 ( 例 ):3 時間先予測値のピーク出現時刻差 ΔTが 0~-h または 0~+0.5hの間におさまっていること <ピーク出現時刻差 > T = T T ; p cp op T T T cp op p : : : ピーク出現時刻差 予測ピーク時刻 実績ピーク時刻 マイナス方向は 予測ピーク時刻の出現が実績よりも早いことから 治水上は安全側といえる 4 ピーク水位目標 ( 例 ):3 時間先予測値のピーク水位差 ΔHが 0~+30cm または 0~-0cmの間におさまっていること <ピーク水位差 > H = H H ; p cp op H H H cp op p : : : ピーク水位差 予測ピーク水位 実績ピーク水位 プラス方向は過大予測 マイナス方向は過小予測となる 5 低減部も含めた波形全体目標 ( 例 ):3 時間先予測値の誤差評価指標 Eが 0.03 以下誤差評価指標 Eについては 補足説明 予測ハイドログラフの検証 を参照のこと

参考 ) 誤差評価指標として今後使用される見込みがある指標の紹介 ( ハイドロの立ち上がり部分に着目した指標です ) Nash-Sutcliffe 係数 (N.S.) Nash-Sutcliffe 係数は 970 年に (Nash and Sutcliffe, 970 ) により提唱された指標であり 特に欧米で広く用いられている 欧米では値がに近いほどモデルの精度はよいとされ (Ragab et al, 200 2 ) では 複数の流域 降雨イベントでの流出モデルの精度検証を行い NS 0.7 でモデルの再現性が高いとしている この指標においては 予測値に対象期間にわたる実測流量の平均値におきかえて与えた場合 指標値は0となる このことから 指標値 0 より小さい場合 ほぼ予測の効果がないとみなすことができる Nash-Sutcliffe 係数 N i= N { q ( i) q ( i) } NS = ; { qo ( i) qav} i= o c 2 2 N : 計算時間数 qo ( i) : i時の実測流量 qc ( i) : i時の計算流量 qav : 実測流量の平均値 q av = N N i= q ( i) o 取りうる範囲 :.0 以下 的中の値 :.0 単位 : 無し 評価基準 :(NS 0.7: ) (0.0~.0: ) ( マイナス : ) Erich.J.Plate 式 (E.P.) Erick.J.Plateら 3 によって新しく提唱された誤差指標である ここでは Erich.J.Plate 式 ( 以降 EP) と呼ぶ Nash-Sutcliffe 係数と違い m 時間後の実測値と計算開始時刻の流量の差の自乗を分母に取っているところに特徴がある これにより 予測開始時刻 (i) に対するm 時間先の予測値を評価する場合に 観測値がi~i+mの間にどのくらい変化したかについても考慮している Nash, J.E. and Sutcliffe, J.V.( 970): River flow forecasting through conceptual models part I A discussion of principles. Journal of Hydrology, 0, 282 290. 2 Ragab, R., Moidinis, D., Albergel, J., Khouri, J., Drubi,A. and Nasri, S.(200): The HYDROMED model and its application to semi-arid Mediterranean catchments with hill reservoirs 2 : ainfall-runoff model applications to three Mediterranean hill reservoirs.hydrology and Earth System Sciences,,544 562. 3 ERICH J. PLATE AND FALK LINDENMAIER : QUALITY ASSESSMENT OF FORECASTS ;6 th Annual Mekong Flood Forum(AMFF-6)

補足説明 予測ハイドログラフの検証のための誤差評価指標 E 予測ハイドログラフの検証は 降雨予測誤差と水位予測誤差を切り離して考えるため 降雨完全予測による計算結果 ( 降雨予測値を実績降雨で置き換えて降雨予測誤差をなくしたもの ) と観測値とを比較することにより行う まず 流量ハイドログラフの波形全体についての客観的な誤差評価として 河川砂防技術基準 ( 案 ) に示されている誤差評価指標 E を算出する 評価は 時間先 2 時間先 3 時間先の予測値についてそれぞれ行う なお 計算の結果の E が 0.05 より大きい場合 観測データに問題がある可能性があるため 水文資料の総合的照査 を行う 特に問題がなければ 水位予測精度について設定した目標が達成できているかどうか 検証を行う 解説 検証の手順を以下に示す 時間 [hr] 降雨完全予測による計算 出水時の実績雨量 流域平均雨量 出水時のデータを別表に整理し 誤差評価指標を算出 水位または流量 実況値初期値 誤差評価指標 E 0.05 NO 4. 水文資料の総合照査へ 時間先予測値 2 時間先予測値 YES 3 時間先予測値 目標を満たしているか NO 予測システムの改良を検討 YES 時間 [hr] 現状のシステムを継続して利用 図 3 降雨完全予測による精度検証の概略フロー 表 2 別表 - 水文データシートのイメージ 水位 流量観測所 計算開始時刻 年月日 2008.08. 22 時刻 0: 00 0: 0 実況雨量流域平均雨量 実況水位 時間先予測 水位 2 時間先予測 3 時間先予測 実況流量 時間先予測 流量 2 時間先予測 3 時間先予測 3 時間よりさらに先まで予測を行っている場合は 列を追加して記載する 実績降雨の降り始めの 6 時間前から ピーク経過後 十分に水位が低下する前の時間にわたり記載する

) 水文データシートの整理出水時の実況雨量 水位を別表の水文データシート ( 表 2 参照 ) に整理する データは 実績降雨の降り始めの6 時間前から ピーク経過後 十分に水位が低下する前の時間にわたり記載する 2) 誤差評価指標 Eの算出流量ハイドログラフの波形全体についての誤差評価を行うため 以下の誤差評価指標を算出する 基本的に 時間先 2 時間先 3 時間先予測値について行い 必要があれば 6 時間先まで行うこととする ( 図 3 参照 ) < 河川砂防技術基準に記載のある誤差評価指標 E> n A ( ) ( ) o i Ac i E = ; n i= Aop 2 E : 誤差, n : 計算時間数 A o ( i) : i時の実測流量 A c ( i) : i時の計算流量 A op : 実測の最大流量 平均 2 乗誤差を 実測の最大流量で標準化したものである 計算時間数 n の設定方法について : ハイドログラフのどの範囲を対象とするかにより評価値が変化するため注意が必要である ここでは 直接流出高の影響区間として流出ハイドロの勾配変化点以上を目安とする なお 計算の結果 E が 0.05 より大きい場合 観測データに問題がある可能性があるため 水文資料の総合的照査 を行う 3) 水位予測精度について設定した目標への達成度を検証設定した目標について 達成できているかどうか検証を行う

Eが 0.005 より大きい場合 水文資料の総合的照査 予測システムの誤差評価が思わしくない場合 用いている観測データに問題がないか確認する必要がある 検討対象洪水の総雨量と総直接流出高を比較し 流出率などに異常がないか確認する 異常が認められる場合は 予測システムの精度評価対象洪水から除外する また 水系において 複数の流量観測地点がある場合には ハイドログラフを重ね合わせ 縦断的な水収支の整合がとれているか確認する 検証作業の解説 ) 総雨量と総直接流出高の比較による検証 流域平均雨量 r 対象洪水の総雨量と総直接流出高を算出し 総雨量に対する総直接流出高の比 ( 総流出率 ) を算出する 総流出率がを超過する場合 雨量 流量の観測に問題があると考え 検討対象洪水から除外する 時間 [hr] 対象洪水の総雨量 Σr を算出 流出高 q 対象洪水の総直接流出高 Σq d を算出 時間 [hr] 注 : 総雨量に対する総直接流出高の比 ( 総流出率 ) が極端に小さい場合も観測データに問題があることが懸念される しかし 総雨量が小さい場合 ( 飽和雨量に到達しない場合 ) には流出率が 0.3 程度と小さくなることがあり 観測データの問題の有無を簡単に判断できない < 図 4 雨量 流量観測値の比較による検証の概略フロー q d r YES 総雨量 総直接流出高の比較で問題なし NO 検討対象洪水から除外する 前期降雨の影響大 融雪流出の影響有 総雨量の算出流量観測地点における流域平均雨量を洪水期間中で累加し 一洪水イベントの総雨量を求める 予測システムでレーダー雨量データを用いている場合は 流域界に含まれるレーダー雨量グリッドの流域平均値を時刻毎に算出し それを洪水期間中で累加することで求める

2 総直接流出高の算出 流量観測値 Q[m 3 /s] を観測地点における集水域面積 A[km 2 ] で除して 流出高 q[mm/hr] に変 換する 3 Q[ m / s] q[ mm / hr] = 3.6 2 A[ km ] 総直接流出高は 基底流出分を取り除き 流出率を算出する降雨に直接関係のある流出量と考 えられるものである 基底流出量の分離方法には様々あるが 総流出率による流量観測データの確認を目的として いることから 図 5 に示すような水平分離で十分と考えられる つまり 降雨開始時刻の流量を基底 q [ mm / hr] 流量 b と見なし 直接流出高を qd = q qb として求める 総流出高の積算期間については 図 5 に示すように 縦軸に流出高を対数プロットしたハイドロ グラフにおいて 降雨開始時刻より ピーク経過後 2 つめの折れ点となる期間を用いる 一般に 第 2 折れ点までは 降雨と直接関係のある直接流出量と中間流出量が支配的と考えられている ハイドログラフの形状によっては 第 2 折れ点を明確に見いだすことが困難な場合があるが 積算 区間が多少前後しても算出される流出高は大きく異ならない 降雨と直接関係のある流出量を見いだすため 以下のようなケースは 検証対象から除外する必要がある 前期洪水から間がないために 前期洪水の影響が含まれているもの 融雪期の出水であり 検証対象の降雨と関係のない流出が含まれているもの 時間 [hr] 総雨量 Σr(t) 流域平均雨量洪水に対応する降雨 r の累加雨量 ln(q) 流出高を対数変換したもの q: 総流出高 q d: 直接流出高 q b: 基底流出高 総直接流出高 Σq d (t) 総流出高 (q(t)) から基底流出高 (qb(t)) を差し引いたものを積算する 対数プロットしたハイドログラフにおいて ピーク経過後 2 つめの折れ点 時間 [hr] 降雨開始時の流量を基底流量と見なす総直接流出高を積算する期間 : 対応する降雨開始時 ~ 対数プロットしたハイドログラフでの第 2 折れ点の期間まで 図 5 総流出高の積算範囲

3 総流出率の算出と検証 総流出率 f は 一雨降雨の観測総雨量 r t ( ) [mm] と総直接流出高 ( t) q d [mm] の比で 求める f = q r ( t) ( t) d 一般に総流出率は 未満となるはずである 流出率が を超過するような場合には 流域平均雨量が過小となっていること または 水位 - 流量曲線式で流量が過大に評価されていることを疑うべきである 2) 縦断的な水収支の整合性の検証水系において 複数の流量観測地点がある場合 ハイドログラフを重ね合わせ 縦断的な水収支の整合がとれているか確認する 上下流での流量が逆転するような場合には 流量観測に問題がないかを検証すると共に 溢水はん濫を生じていたか または 調節施設があるのかなどメカニズム上の原因を確認する メカニズム上の特徴がある場合 予測システムで適切にモデル化されている必要がある 流域界 河道上流側流量観測地点下流側流量観測地点流域界 上流側観測流量 下流側観測流量 複数の流量観測所がある場合 ハイドログラフを重ね合わせ 縦断的な整合がとれているか確認する 水系で複数の流量観測地点がある場合 それぞれの流量ハイドログラフを重ね合わせる 上 下流のハイドログラフが縦断的に整合しているか? NO 観測所 H-Q 式を確認する 整合しない原因 ( メカニズム ) を把握する 河道 上流側流量観測地点 上流側観測流量 下流側観測流量 YES 把握された原因が予測システムに組み込まれているか? YES NO 下流側流量観測地点 上下流で流量が逆転する理由の例 溢水があった 洪水調節施設がある等 下流側のハイドロが上流側より小さくなっているなど 縦断的な整合に問題がある場合 その理由を把握する必要がある 縦断的な水収支の整合性において 問題なし 観測所 H-Q 式を精査し 見直しを図る 危険水位を超えた以降の溢水時間帯は 予測評価時間から除く 洪水予警報の発令に影響が生じる場合は 今後 溢水等のメカニズムのモデル化を図る必要がある 図 6 縦断的な水収支の整合性の検証

補足説明 2 HQ 式の比較毎年の HQ 式を収集し 予測する段階 ( 出水期の前 ) の HQ 式 ( 多くは前年の最後の適用期間の式 ) と当該年の出水期後の HQ 式を比較して 特に大きな流量時に水位の差がないか確認する 大きな差がある場合は 河床変動や河床形態等の影響が大きな河川と思われるので 洪水予測上の留意事項として整理しておく ( 注 ) 当該年出水期前の適用期間の HQ 式は 翌年に当該年の流量観測結果から作成されたものであるため 実際の洪水予測システム運用時には更新されていない HQ 式であることが多いので 前年度の最後の適用期間の HQ 式と比較することとしている EL(m) 9.00 400m 3 /s 500m 3 /s 600m 3 /s 700m 3 /s 800m 3 /s 8.00 7.38(+0.58) 7.88(+0.78) 7.00 6.85(+0.33) 6.80 7.0 6.00 5.65(+0.3) 5.52 6.27(+0.4) 6.3 6.48 5.00 4.00 200 年のHQ 式 (2000 年のHQ 式との差 ) 2000 年のHQ 式 図 2 洪水前後の HQ 式による同流量時の水位比較 ( 例 ) 図中で 800m 3 /s のときの水位が 2000 年の HQ 式では EL7.m だったが 200 年の HQ 式では EL7.88m と算定される 実際は EL7.88m に近い水位であるのに 前年 ( ここでは 2000 年 ) の HQ 式を用いるため 洪水予測システムでは EL7.m と低く予測されることになる

補足説明 3 河床形態の分類による抵抗則の確認洪水予測地点においてある水理条件で河床波が発生し 粗度係数の割り増しが必要か確認を行う 流量規模別に水理計算 ( 不等流あるいは不定流計算 ) を行い 水理量と河床材料から岸 黒木の式による河床形態の分類を行う このような条件 ( 地点と流量条件 ) については 洪水予測上の留意事項として整理しておくこと 現状では洪水時の河床変化をリアルタイムで計測できないため運用時の対応は難しいが 少なくとも河床波による水位上昇分は前項の検討方法で想定可能である すなわち洪水流量毎の水理量から抵抗則の式を選定して粗度係数の増分を検討する システムの中で粗度係数の増分を考慮した不等流計算を実施し 当該流量時の水位計算を行うことで予測水位として付与すること等が対策として考えられる 解説 4) 河床形態による抵抗則流水下の河床にはその規模により 様々な河床形態が出現する 砂蓮 (ripple) 砂碓 (dune) 等といわれる小規模河床形態 砂州 (bar) 等の中規模河床形態等に分類され 図 のような形で整理されているのが一般的である 出典 : 河村三郎著 土砂水理学 Ⅰ 森北出版株式会社 pp.02 図 3 河床形態の分類

このような河床形態が発生する条件は 河川の洪水流況や河床材料 河川断面等に依存する が たとえば小規模河床波である砂碓 (dune) が発生した場合等 低水路部分のみであっても河床 粗度の大幅な増大が生じていることがこれまでの研究等で報告されている これらは洪水ハイドロにおける洪水流量により変動するため このときの粗度係数は時間とともに推移していくことが想定される これの適切な評価は 水位予測における水位への返還において重要となるが 水理条件から河床形態を推定し さらには抵抗則として付与した岸 黒木の式があり 前述の 土砂水理学 Ⅰ にも記載されている 岸 黒木の式河床形態は無次元掃流力 τ( 実際には河床波等の影響を控除した無次元有効河床せん断力 τ ) と流速定数 φ(v/u) の関係から分類される 砂堆河床 Ⅰ / 6 / 3 φ= 2.4 ( R / d) τ () / 2 τ ' = 0.2τ (2) 2 砂堆河床 Ⅱ φ= 8.9 τ ' =.49 ( R / d) / 4 τ 3 遷移河床 Ⅰ 6 3 / 2 φ=. 0( R / d) 7 τ ' = 6.5 0( R / d) 3 τ 5 / 2 / 2 τ 4 平担河床 (k: カルマン定数を一定とした場合 ) / 6 φ= 6.9 ( R / d) τ ' =τ 5 反砂堆河床 3 /0 / 3 φ= 2.8 ( R / d) τ / 5 / 2 τ ' = 0.264 ( R / d) τ 一方 φは式 () で表される φ= V / u ここで V: 平均流速 u: 摩擦速度は式 (2) で表される 2 / 3 / 2 R ie V = n / 2 u = ( grie) 式 () (2) より 河床形態を考慮したマニングの粗度係数は次式となる 6 R n = φg 2 ( 3) ( 4) ( 5) ( 6) ( 7) (8) ( 9) ( 0) ( ) ( 2) ( 3)