<4D F736F F D B4988C994BC E88E695578D8289FC92E881698F4390B A>

Similar documents
2_時報120.indd

Microsoft Word - hyokorev_HELP_サイト修正前

Microsoft PowerPoint - ネットワーク型RTK-GPS 利用方法.pptx

<4D F736F F F696E74202D20819B30315F8AEE8F80935F91AA97CA90AC89CA82CC89FC92E85F BE8EA188C B696BD5F CF6955C A>

<4D F736F F D A6D92E894C5817A5F938C966B93FA967B8A4391A490858F808E9E95F1202E646F63>

<4D F736F F F696E74202D2091AA926E90AC89CA C98F808B9282B582BD8AEE8F80935F91AA97CA205B8CDD8AB B83685D>

国土地理院時報124.indb

178 国土地理院時報 2016 No.128 動ベクトル図 ( 水平, 上下 ) を図 -2,3 に示す. なお, 変動量を計算するための固定局は, 三隅 ( 島根県 ) とした. 線解析ソフトウェア GAMIT/GLOBK を用い, 測量成果改定地域周囲の電子基準点の測量成果を固定して基線解析及

indd

測量試補 重要事項

Microsoft Word - 【マルチ&QZSS対応】電子基準点のみ基準点測量マニュアル(平成27年7月22日改)

Microsoft Word - 07_sagyo_unyokijun_beppyo

Microsoft Word - NS-Networkマニュアル_Ver1.5.1_.doc

Microsoft Word - 03基準点成果表

測量士補 重要事項 基準点測量 基準点測量の作業工程

GPS仰角15度

<4D F736F F F696E74202D2089C18CC390EC8E CA48F E D828CA9816A2E B8CDD8AB B83685D>

【資料3-2】光格子時計の測地分野での利用可能性

<936F8B4C8AEE8F80935F90BB967B D2816A E20312E30312E786C73>

A B) km 1 0 0km 50km 50km (A)(B) 2,600 13,100 11,800 2,600 13,100 11,800 ( 2,476) (12,476) (11,238) 9,190 8,260 7,3

南栗橋地区の地震被害における道路復旧後の測量に関する説明会 日時 : 平成 24 年 1 月 28 日 ( 土 ) A 地区 午前 10 時から B 地区 午後 2 時から 平成 24 年 1 月 29 日 ( 日 ) C 地区 午前 10 時から D 地区 午後 2 時から 場所 : 栗橋コミュニ

Microsoft Word - 【改正】GNSS水準測量マニュアル(平成29年2月27日改)(本文・黒)

水準測量観測比高データファイル及び履歴データファイル作成要領

Microsoft Word - 06_基準点成果改定_120116

<4D F736F F F696E74202D F94D191BA976C5F8B5A8F7095F18D9089EF F8091A582CC89FC92E B8CDD8AB B83685D>

高分解能衛星データによる地形図作成手法に関する調査研究 ( 第 2 年次 ) 実施期間平成 18 年度 ~ 測図部測図技術開発室水田良幸小井土今朝巳田中宏明 佐藤壮紀大野裕幸 1. はじめに国土地理院では, 平成 18 年 1 月に打ち上げられた陸域観測技術衛星 ALOS に関して, 宇宙航空研究開

<H22-pm1-A: 問題 > 平成 22 年度測量士試験問題午後 No1: 必須 次の文は 測量法 ( 昭和 24 年法律第 188 号 ) に規定された事項について述べたものである 下線の語句について 正しいものには を 間違っているものには 及び正しい語句を それぞれ 解答欄に記せ 1. こ

01_表紙

精度を有すると認められた基準点とする ( 基準点の精度 ) 準則第 38 条 第 19 条の 4 4 級基準点は 2 次の地籍図根多角点と同等なものとして取り扱う 国土調査法第 19 条第 2 項の規定により認証され 又は同条第 5 項の規定により指定さ れた基準点のうち 4 級基準点に相当するもの

国土籍第 376 号平成 29 年 3 月 23 日 マルチ GNSS 測量マニュアル - 近代化 GPS Galileo 等の活用 - 平成 29 年 4 月 国土交通省土地 建設産業局地籍整備課

1

地籍基本調査成果電子納品要領(案)平成24年10月版対応について

目 次 1. はじめに 動作システム 起動方法 本ツールの機能 計算方法 使用方法 緯度 経度への換算 平面直角座標への変換 一度に計算可能なデータ数と追加方法

測量士補 重要事項「標準偏差」

屋内 3 次元 測位 + 地図 総合技術開発 現状 屋内 3 次元測位統一的な測位手法 情報交換手順がなく 共通の位置情報基盤が効率的に整備されない 技術開発 屋内外のシームレス測位の実用化 (1) 都市部での衛星測位の適用範囲拡大 (2) パブリックタグ 屋内測位の標準仕様策定 効果 3 次元屋内

Microsoft Word - 担当者説明.docx

< F2D303191AA97CA8DEC8BC68B4B92F BD A2E6A746463>

<4D F736F F D CA918A93C190AB8C8892E88DEC8BC CC>

<4D F736F F D2092F188C48F D89BF8F E6919C8D A76312E312E646F63>

<4D F736F F D F8091A58FF095B6208AEE8F80935F B2E646F63>

efit+ for TCU 測量計算

<4D F736F F D2095E28F958AEE8F80935F91AA97CA8DEC8BC68B4B92F A792E82E646F63>

基準点測量. 楕円体の原子及び諸公式. 楕円体の原子 地球の形状及び大きさについて 測量法施行令第 条に定める楕円体の値による 長半径 a = 6787 扁平率 f = 楕円体の諸公式 a(-e ) a M = N = W W R = M N = b W W= -e s φ a-b f=

世界測地系移行のための座標変換ソフトウェア“TKY2JGD”

測量士補 重要事項 基準点測量 基準点の選点

測量試補 重要事項 応用測量

目 次 1. 想定する巨大地震 強震断層モデルと震度分布... 2 (1) 推計の考え方... 2 (2) 震度分布の推計結果 津波断層モデルと津波高 浸水域等... 8 (1) 推計の考え方... 8 (2) 津波高等の推計結果 時間差を持って地震が

<4D F736F F D BD8A DAC8D87816A91AA97CA82C982A882AF82E9918A91CE8CEB8DB E646F6378>

本固有の測地系である 我が国では この日本測地系を明治時代 (1841 年 ) に定めこれまで使用してきた 世界測地系 は世界共通となる測地系で地球を扁平な回転楕円体として その中心が地球の重心と一致するものであることやその短軸が地球の自転軸と一致するものであることなど 国際的に決められた基準を満た

Microsoft Word - マルチGMNSS測量マニュアル(案)解説_確定版(2)

Microsoft Word - NS-Surveyマニュアル_Ver1.2.1_.doc

<4D F736F F D2091E F195AC89CE975C926D D89EF5F97B089A99387>

計算式集 付録 6

測量士補 重要事項 はじめに GNSS測量の基礎

のとする 一地上測量による方式 ( 以下 地上法 という ) 二空中写真測量による方式 ( 以下 航測法 という ) 三前二号の方式を併用する方式 ( 以下 併用法 という ) 2 地籍測量は 座標計算により筆界点の位置を求める方式によって行うものとする くは規格を有するもの又はこれらと同等以上のも

第 2 編基準点測量 改正旧 第 2 編基準点測量 第 2 編基準点測量 第 1 章通 則 第 1 章通 則 第 1 節要 旨 第 1 節要 旨 第 18 条本編は基準点測量の作業方法等を定めるものとする 2 基準点測量 とは 既知点に基づき 基準点の位置又は標高を定める作業をいう 3 基準点 とは

Microsoft Word - 概要版(案)_ docx

Microsoft PowerPoint - 参考資料 各種情報掲載HPの情報共有

Taro10-測地成果2000マニュアル.PDF

風力発電インデックスの算出方法について 1. 風力発電インデックスについて風力発電インデックスは 気象庁 GPV(RSM) 1 局地気象モデル 2 (ANEMOS:LAWEPS-1 次領域モデル ) マスコンモデル 3 により 1km メッシュの地上高 70m における 24 時間の毎時風速を予測し

欠であり 運輸交通分野を中心に膨大なインフラ投資が必要になると見込まれる これらのインフラ整備にあたっては 案件ごとにマスタープランから工事まで段階を踏んで検討 建設が進められるが 対象地の地形などを確認 把握するため 検討段階に応じた精度の地図が必要となる 現在 同国では基本的な測地基準点網が整備

Microsoft PowerPoint - XYBL TOOL 4.ppt [互換モード]

スライド 1

< F2D B8C91CE8FC6955C2E6A7464>

H19年度

黄砂消散係数 (/Km) 黄砂消散係数 (/Km) 黄砂消散係数 (/Km) 黄砂消散係数 (/Km) 日数 8~ 年度において長崎 松江 富山で観測された気象台黄砂日は合計で延べ 53 日である これらの日におけるの頻度分布を図 6- に示している が.4 以下は全体の約 5% であり.6 以上の

indd

<4D F736F F D D325F8EC08FD88EC08CB195F18D C789C18F4390B C63393FC82EA91D682A6816A>

Microsoft Word - ‡c‡d‡lŠŸŠp‡Qnew.doc

付録 6 計算式集 1

<4D F736F F F696E74202D E93788CA48B8694AD955C89EF5F4E6F30325F D AC48E8B8CA48B865F53438FBC

11-4.indd

BTXAV7バージョンアップガイド

<90B38CEB955C81698FF28F91816A2E786C7378>

2019 年1月3日熊本県熊本地方の地震の評価(平成31年2月12日公表)

測量士補試験 重要事項 基準点測量「偏心補正計算」

<4D F736F F D2091E E8FDB C588ECE926E816A2E646F63>

8-2 近畿・四国地方の地殻変動

共同住宅の空き家について分析-平成25年住宅・土地統計調査(速報集計結果)からの推計-

00地籍測量2012.indd

<4D F736F F D BD8A7091AA97CA8AED8B4082CC90AB945C8DB782C982E682E98CEB8DB782C982C282A E646F6378>

橡Ⅰ.企業の天候リスクマネジメントと中長期気象情

第 2 章測量業務標準歩掛 ( 参考資料 ) 第 2 章測量業務標準歩掛 ( 参考資料 ) 測量業務標準歩掛における, 各作業の直接人件費に対する機械経費, 通信運搬費等, 材料費の割合の構成を下表に示す なお, 下表に示す各資機材等の種類, は標準歩掛設定に用いた標準的なものであり, 契約ではない

0 21 カラー反射率 slope aspect 図 2.9: 復元結果例 2.4 画像生成技術としての計算フォトグラフィ 3 次元情報を復元することにより, 画像生成 ( レンダリング ) に応用することが可能である. 近年, コンピュータにより, カメラで直接得られない画像を生成する技術分野が生

0. 新しい地理空間情報活用推進基本計画の概要 2

豪雨・地震による土砂災害の危険度予測と 被害軽減技術の開発に向けて

(決裁版)表紙・目次ver2014

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft PowerPoint - HP公開用 公共の諸手続H28説明資料

は東へ約 12 秒移動します これにより原点周辺の各基準点の座標値は X は約 + 360m Y は約 - 300m 変化します 日本測地系における日本列島の位置は 世界測地系で表し た位置に対して 全体的に北西方向に465m 程ずれていることが明らかになりました 4 日本測地系の歪みについて平成

切断安定分布による資産収益率のファットテイル性のモデル化とVaR・ESの計測手法におけるモデル・リスクの数値的分析

Microsoft Word - TBC(V3.6x)操作ガイドRev,A.doc

Microsoft Word - sokuryou.doc

<4D F736F F F696E74202D2093B CC8BE68AD B B82CC8AD AF95FB96405F88EA94CA ED28CFC82AF82C995D28F575F826C A6D94462E >

九州大学学術情報リポジトリ Kyushu University Institutional Repository 緯度 経度から平面直角座標系への変換について 石井, 大輔九州大学応用力学研究所技術室 出版情報 : 九州大学応用力学研

3-13 相模湾周辺におけるGPS観測(序報)

4-2 伊豆地方の地殻変動

04_テクレポ22_内田様.indd

Microsoft PowerPoint - 対応地図一覧.pptx

武蔵12_体験版操作説明書(トラバース計算)

Transcription:

紀伊半島地域の三角点標高成果改定 63 紀伊半島地域の三角点標高成果改定 The Revision of Altitudes of Triangulation Points in Kii Peninsula 1 中部地方測量部岩田昭雄 Chubu Regional Survey Department Masao Iwata 2 測地部越智久巳一 Geodetic Department Kumikazu Ochi 要旨国土地理院は, 位置の基準となる基準点の確かな測量成果 ( 緯度, 経度, 標高 ) を提供している. 紀伊半島では, 三角点の標高成果に不整合がみられたため, 平成 19 年度に 成果不整合地域における三角点改測 ( 以下, 三角点改測 という.) 作業を実施し, 紀伊半島南部で三角点 57 点を改測した. その結果, 標高の変動量が +50cm を超える地域が広範囲に確認されたため, 紀伊半島地域において三角点の標高成果を改定することとした. これまで三角点と電子基準点との間で測量成果の標高に不整合がみられたが, この成果改定によって, 地殻変動の影響が解消された三角点の標高成果が提供可能となり, 測量作業を効率的に行うことが可能となる. 本稿は, 紀伊半島地域の標高成果改定の計算手法や得られた成果をまとめたものである. 子基準点等の日本のジオイド 2000 に基づいた三角点標高の改算を順次進めていく計画である. 平成 20 年度においては, 平成 19 年度に近畿地方測量部において, 三角点の標高成果に不整合がみられた紀伊半島南部の 57 点を抽出し三角点改測を実施した結果 ( 図 -1),+50cm を超える標高変動量が広範囲に存在していることが確認されたため, 優先的に当該地域の標高成果改定に取り組んだ. 1. はじめに三角点等の経緯度の成果は, 平成 14 年度の測量法の改正時に世界測地系に基づいた 測地成果 2000 に移行したが, 標高成果は改定されていない. 三角点の標高は, 明治から大正にかけて行われた三等三角測量での隣接点間の頂天距離観測 ( 以下, 明治頂天距離観測 という.) と近傍の水準点からの二等水準測量に基づいた値となっている. 一方, 水準点の成果は,1986 年から 1999 年に行われた一等水準測量の観測値を用いた全国同時網平均計算により求めた 2000 年度平均成果 に改定されており, 地殻変動等による影響が解消された値となっている. このため, 三角点と水準点の標高成果の間には地殻変動等の影響による乖離が生じており, 2000 年度平均成果 を基準として求められている電子基準点の標高成果と同様の乖離が存在し, 整合性の高い成果への改定が求められている. これらに対応するためには, 三角点の改測を行うことが最良であるが, 約 10 万点もの三角点を全て改測することは現実的には不可能である. このため, 測地基準課では, これまでに整備された三等三角測量の頂天距離観測データをはじめとして, 高度地域基準点測量及び三角点改測等のデータを用いて, 電 図 -1 成果不整合地域における三角点改測による標高の変動ベクトル図 2. 標高改定の対象地域本稿で標高改定を実施した紀伊半島地域の範囲は, 三重県, 大阪府, 奈良県及び和歌山県の 1 府 3 県である. 地域の選定では, 公共測量等の測量作業が一般的に地方公共団体ごとに計画されることから, 都道府県を単位に作業地域を選定した. 3. 標高改定に使用したデータと計算の手順紀伊半島地域の三角点の標高成果改定の計算手順は, 平成 19 年度に取り組んだ北海道地域の三角点標高成果改定 ( 岩田,2008) の計算手順に準じて行った. 標高成果改定の計算は, 平成 6 年度 ~ 平成 15 年度の高度基準点測量及び平成 19 年度の三角点改測等 現所属 : 1 測地部, 2 九州地方測量部

64 国土地理院時報 2011 121 の電子基準点を既知点とした測量の結果を用いて対象地域の骨格的な三角点の標高値を決定した. さらに, この骨格的な三角点の標高値を基に, 明治頂天距離観測データを用いた改算により骨格的な三角点以外の一等 ~ 三等三角点の標高値を算出した. しかし, 対象地域は, 昭和 21 年 (1946 年 ) 南海地震に伴う復旧測量が広範囲に渡って実施されており, この復旧測量の頂天距離観測 ( 以下, 南海頂天距離観測という.) のデータも同様に計算へ使用して標高値を算出した. この南海頂天距離観測データから標高値が算出された三角点は, 明治頂天距離観測データからも標高値が算出されている. 現在の実用成果は南海頂天距離観測データから算出した標高値であるため, 最終的な改算による標高値は, 南海頂天距離観測データによる標高値とした. 四等三角点及び二等多角点等については,PachJGD ( 標高版 ) を用いて実用成果を補正する改算によって標高値を決定した. 標高補正パラメータの構築は, 算出した一等 ~ 三等三角点の各点の標高値と実用成果との差から,Kriging 法により各 3 次メッシュコード南西角グリッド ( 緯度経度の約 1km 間隔 ) ごとの補正量を推定した. この標高改定の計算手順を図 -2 に示す. 点が該当した. この三角点 36 点に関係する基線ベクトルについては, 三次元網平均計算の結果にある基線ベクトルの各成分の残差において 10cm を超えるものがなかったため, 三次元網平均計算の標高最確値を今回の標高値として採用した. また, 対象地域にある高度地域基準点 36 点のうち,3 点は移転及び再設等の措置が行われているため, 頂天距離観測データの計算には, 高度地域基準点 33 点を既知点とした. 4.2 頂天距離観測データによる標高改算算出された高度地域基準点 33 点の標高値を標高の既知座標として固定し, 明治頂天距離観測データを用いた高低網平均計算によって 2,422 点 ( 対象地域外の三角点を含む.) の標高を算出した. また, 南海頂天距離観測データも同様に高度地域基準点 33 点のうち 12 点を既知点として高低網平均計算を行った. この計算によって, 対象地域の一等 ~ 三等三角点の標高値を算出したことになり, 各計算から算出される三角点の分布を図 -3 に示す. 図 -2 三角点標高成果改定の計算手順 4. 平均計算による計算 4.1 高度基準点測量の結果よる標高改測高度地域基準点 ( 高度地域基準点は, 日本の骨格となる三角点で全国に 2,400 点あり, 電子基準点の補完的な役割を持っている.) の標高の改測は, 北海道地域の標高を改定したときと同様に高度基準点測量全国三次元網平均計算の結果を使用した. この平均計算は, 平成 6 年度 ~ 平成 15 年度までに行われた GPS 測量方式による高度基準点測量の結果を結合して同時に平均計算した結果である. この三次元網平均計算の結果には, 高度地域基準点 1,102 点が含まれており, 今回の対象地域に位置する三角点は,36 図 -3 計算方法別による一等 ~ 三等三角点の分布図 高低網平均計算の精度評価としては, 単位重量当たりの標準偏差と未知点 ( ここでは, 新点扱いとした三角点を示す.) の標準偏差により行った. 明治頂天距離観測データの高低網平均計算において, 単位重量当たりの標準偏差は,4.09 秒と良好な結果であった ( 図 -4). また, 新点扱いとした三角点の標準偏差では,14cm を超える三角点が 34 点あったが, 全て標高改定の地域外に位置する三角点であった. 南海頂天距離観測データの高低網平均計算において

紀伊半島地域の三角点標高成果改定 65 は, 単位重量当たりの標準偏差が 6.87 秒, 新点扱いとした三角点の標準偏差でも 14cm を越える三角点がなく, 良好な結果であった ( 図 -5). 図 -4 明治頂天距離観測データの計算結果本計算には, 南海震災改測範囲を含むとともに 該当府県以外の三角点も含む. 図 -5 南海頂天距離観測データの計算結果 精度評価の結果を踏まえ, 実用上問題のない標高値が得られたと判断された. また, 明治又は南海地震の時に行った三等三角測量以降に行われた移転や改埋等の復旧測量の履歴による高低の履歴変化量を算出した. この履歴変化量は, 三角点の実用成果の標高値から三等三角測量当時の標高値を差し引いて算出したものである. これによって, 高度地域基準点を除く対象地域の一等 ~ 三等三角点の標高値は, 次の計算式となる. H2=H1+dH ただし,H2: 成果となる標高値 H1: 今回の高低網平均計算から算出した標高値 dh: 履歴変化量 {( 実用成果の標高値 )-( 三等三角測量当時の標高値 )} 頂天距離観測データによる計算は, 対象地域よりやや広い範囲を計算しており 2,422 点であるが, 対象地域において最終的に求めた一等 ~ 三等三角点の標高値は,1,726 点であった. 5. 標高補正パラメータの構築 5.1 電子基準点による改測等に伴う標高改定量の利用標高補正パラメータの構築では, 一等 ~ 三等三角点の実用成果の標高値に対する改定量を変動データとし, 実用成果の標高値を電子基準点や水準点に整合させる量となる. 近年の電子基準点を既知点とした測量のうち, 復旧測量の改測及び基準点測量の際に取付既知点とした三角点の改測による標高値は, これまで求めてきた頂天距離観測データによる標高値より信頼性が高い. 従って, これらの電子基準点を既知点とした改測等による標高の改定量は, 標高補正パラメータの変動データとして採用し, パラメータの構築の高精度化へ活用することとした. 対象地域では, これに該当する三角点は, 平成 19 年度までに 444 点であった. 5.2 標高補正パラメータの構築標高補正パラメータのデータとなる一等 ~ 三等三角点は, 高度地域基準点 36 点, 頂天距離観測データから算出された 1,285 点及び 5.1 の電子基準点を既知点とした改測等から求めた三角点 444 点の計 1,765 点の変動データとなった. この変動データを整理し, 隣接する三角点との間で変動量 ( 改定量 ) を比較した. その結果, 明らかに周辺の三角点と様相が異なる三角点が 11 点あったため, これを標高補正パラメータのデータから除外とした. これによって, 標高補正パラメータの構築には,1,754 点の変動データを与件とすることとした. 標高補正パラメータの構築は, 北海道地域で行った方法と同様であり, データ形式変換ソフト (Transform3.4) を用いて標高補正パラメータのデータのデータ変換を行い,Kriging 法により各 3 次メッシュコード南西角グリッド上のパラメータ ( 補正量 ) の推定を行った. 5.3 標高補正パラメータによる改算と検証等対象地域の全てを検証できてはいないが, 平成 20 年度の三角点改測の改測量と構築した標高補正パラメータとを比較して外部評価を行った. この結果, 三重県北部の標高補正パラメータが, 三角点改測の改定量よりマイナス傾向が大きい結果であった. そのため, この平成 20 年度の三角点改測の一等 ~ 三等三角点のうち, 三角点改測の改測量と標高補正パラメータの補正量との較差が 20cm 以上となる三角点 21 点については, 頂天距離観測データから算出した改定量と平成 20 年度の三角点改測の改測量とを差し替えて変動データを再度作成して標高補正パラメータを再構築した. 再構築した標高補正パラメータを検証するために, 変動データとして採用していない三重県北部の四等

66 国土地理院時報 2011 121 三角点 61 点について外部評価を行った. 評価結果は 86% にあたる 53 点が 20cm 以内の較差に収まったため, 再構築したパラメータを採用することとした. 対象地域では, 四等三角点等が総数 3,135 点あるが, 電子基準点や水準点の標高と整合していない四等三角点等は 1,750 点が該当し, これに標高補正パラメータを用いて標高値を改算した. 6. 標高改定量の概観今回の改定で得た改定量を図 -6 に示す. 当該地域の高度基準点測量や三角点改測等の改定量は, 紀伊半島南部で最大 +0.66m, 三重県北部で最大 - 0.85m の範囲となり, 北方沈降, 南方隆起の傾向を示している. 南海地震に伴う復旧測量が行われた地域やその改測の結果を基に改定が行われた地域では, ほぼ隆起を示しており, 沈降との境界線が過去に三角点の標高成果が改定された地域と未改定の地域エリアとの接合域と調和的である. 7.2 三角点改測を実施した三角点の標高成果改定平成 19 年度に近畿地方測量部において実施した 成果不整合地域における三角点改測 を行った 57 点の三角点については, この改測による標高値を用いて標高成果を改定する. 7.3 7.1 及び 7.2 に該当しない一等 ~ 三等三角点の標高成果改定高度基準点測量及び三角点改測等が行われていない一等 ~ 三等三角点は, 復旧測量の GPS 測量方式による再設及び移転や廃点等の措置が行われた三角点を除いたため,1,195 点となった, この一等 ~ 三等三角点については, 明治頂天距離観測データ及び南海頂天距離観測データを用いて, 高度基準点測量による標高値を既知として高低網平均計算により計算された標高値を用いて改定する. 7.4 四等三角点や二等多角点等の標高成果改定 1,750 点の四等三角点や二等多角点等については, 構築した標高補正パラメータを用いて補正した標高値を用いて改定する. なお,1,750 点の点数には, 頂天距離観測データが存在しなかった三等三角点 3 点が含まれている. 7.5 まとめ 7.1~7.4 の改測や改算による標高値への改定と構築した標高補正パラメータの公表を平成 21 年 4 月 1 日に行った. 実用成果の標高を改定した三角点等の総点数は,3,031 点であった ( 表 -1). 表 -1 作業方法別による改定した三角点数 図 -6 紀伊半島地域の三角点標高改定量図この標高改定量図は, 三角点の標高改定量を基に構築した補正パラメータの量を表す. 7. 三角点の標高成果改定のまとめ 7.1 高度地域基準点の標高成果改定高度基準点測量の結果による標高値は,33 点であるが, 三角点改測等ですでに改定されている三角点を除くと,29 点となる. この 29 点の三角点については, 平成 9 年度から平成 15 年度までに行われた測量の観測データを用いて, 電子基準点の実用成果を固定した全国三次元網平均計算結果による標高値を用いて改定する. 実用成果を改定した三角点等の総点数高度基準点測量による改測成果不整合地域における三角点改測による改測頂天距離観測データの計算による改算標高補正パラメータによる改算 3,031 点 29 点 57 点 1,195 点 1,750 点 三角点の標高成果改定に伴い, 公共測量においても標高成果改定が必要となる. 公共測量成果の改定については, 標高補正プログラム PatchJGD( 標高版 ) 及び公共測量成果改定マニュアルを用いて行うよう, 国土地理院の各地方測量部及び沖縄支所で助言及び指導を行っている.

紀伊半島地域の三角点標高成果改定 67 参考文献岩田昭雄 (2008): 北海道地域の三角点標高成果改定について, 国土地理院時報,116,1-8.