日本原子力学会 2010 年春の年会茨城大学計算科学技術部会企画セッション シミュレーションの信頼性確保の あり方とは? (2) 海外における熱流動解析の信頼性評価の取り組み 平成 22 年 3 月 28 日東芝中田耕太郎 JNES 笠原文雄
調査対象 OECD/NEA CFD ガイドライン NEA/CSNI/R(2007)5 単相 CFD の使用に関する体系的なベストプラクティスガイドライン 原子炉安全解析に対する単相 CFD の適用に関する実用的な手引き書を提供 ASME 20-2009 計算機シミュレーションの精度を評価 1 次元の定常流れから 3 次元の非定常乱流化学反応流れまでの広範囲な工学的かつ科学的な問題に対処 1
OECD/NEA CFD ガイドライン Best Practice Guidelines for the Use of CFD in Nuclear Reactor Safety Applications NEA/CSNI/R(2007)5 CFDは工学分野で設計 解析の有力ツールとして認知 CFDによる計算結果の信頼性はコードの使用法に依存 既存のCFD 使用ガイドラインを調査整理 原子炉安全解析に対する単相 CFDの実用的な手引書 2
OECD/NEA CFD ガイドラインの内容 1. 原子炉安全解析でのCFDの歴史 2. 専門用語 erification と alidation 3. 問題定義 4. 解析ツールの選択古典的熱水力システムコードコンポーネントコード CFDコード 5. 物理モデルの選択乱流 浮力 熱伝達自由液面モデル流体構造相互作用 6. 数値モデルの制御過渡および定常モデルグリッド 離散化スキーム収束の制御 7. 評価方針能力のデモンストレーション結果の解釈 8. 計算及び数値モデルの検証 9. 結果の評価目的の変数とメトリック不確定性の扱い 10. 文書化 11. 評価例 3
の用語の定義 誤差 (error) AIAA での定義を使用 知識の欠乏によるものではないモデル化とシミュレーションのあらゆるフェーズまたは活動における認識可能な欠陥 不確かさ (uncertainty) 知識の欠乏によるモデル化プロセスのあらゆるフェーズまたは活動における潜在的な欠陥 erification 根底にある数学モデルとその解を計算モデルが正確に表現できていることを示すプロセス alidation モデルの意図した利用法を考慮したうえで, 現実をどの程度正確に表現できているかを示すプロセス 4
物理モデルの選択 乱流モデルの選択 時間平均モデル (RANS;k-ε, k-ω 等 ) 直接モデル (DNS LES) ハイブリッドモデル (DES 等 ) 選択の基準 対象とする流況の分析 k-ε がまず最初の選択 非等方性が強い場合は他のモデルの選択 精度と計算コスト DNS は研究対象 LES ハイブリッド RANS/LES カップリング RANS 実績や検証 5
数値モデルの制御 定常 or 過渡の選択 計算格子 幾何形状 格子形状 格子品質 ( 角度 アスペクト比 ) 離散化手法 収束制御 格子分割の粗さ 収束回数の十分性 6
評価の方法 使用された解析コードが許容可能な信頼度で対象を模擬すること 1. 使用する予定のアプリケーションの同定と仕様 2. erification とalidationの計画 3. erificationの実行 文書化 4. alidation 実験の設計と実行 5. 効果的なメトリックの策定と定義 6. alidationメトリックの評価 7. 解析コードの予測精度の評価 使用するアプリケーションの同定 実験実験 (experiments) 妥当性確認 (validation) 検証検証 (verification) 結果の評価 (assessment) テ モンストレーション計算 (demonstration) 7
計算及び数値モデルの erification コード開発者の導入した物理モデルと数値解法の精度を具現していることを示す過程 入力データの品質管理 反復計算の収束性の確認 質量や運動量 エネルキ ー保存則の確認 空間格子の収束性の確認 誤差評価 丸め誤差 反復計算の打切り誤差 空間 時間離散化による誤差 8
結果の妥当性検証 (alidation) モデルが実現象の正確な表現となっている程度を示す過程 段階的評価 Complete system, Subsystem, Benchmark, Unit Problem 実験の不確かさ ISO AIAA ASME PTC による評価 シミュレーション結果の不確かさ CFD 解析の不確かさ評価は 現状では簡易 着目したパラメータの感度解析程度 入口あるいは出口境界の位置と状態の影響の感度 統計的不確かさ解析 ( 計算機資源が活用でき 大規模な並列計算が可能となれば実施されるであろう ) 9
解析のためのチェックリスト OECD/NEA CFD 使用ガイドラインでは CFD 解析の準備からモデリング 格子生成 検証と妥当性確認の各段階のチェックリストが添付されている 10
ASME 20 の目的 数値計算力学と熱伝達解析の の標準 単純な集中質点系の 1 次元の定常流れから 3 次元の非定常乱流化学反応流れまでの広範囲な工学的かつ科学的な問題に対処 での工学的究極のゴールは 妥当性確認 (validation) 11
ASME 20 の基本的な考え方 評価対象の真の値 モデリングの誤差 試験データの誤差 入力データの誤差 数学モデル 数値解法の誤差 試験データ D 予測誤差 E = S --D 妥当性確認の不確かさ u val val ASME 20での妥当性確認の概念 予測結果 S 12
解析コードの検証と解の検証 解析コードの検証 code verification 解析コードの正しさと 特に既知の解に対する誤差の評価 (evaluation) 解の検証 solution verification ある特定の問題に対する正確な解がわからないので 誤差の見積もり (estimation) を行なう 解析コードの検証も解の検証も数学的な作業 解析コードの検証 解の検証 妥当性確認は 計算された解の精度を評価するといった一連の統合されたプロセスの中で実施される 13
検証の評価手順 解析コードの検証の手順 1. 解析コードの説明 2. 検証問題の説明 妥当性確認の試験データと同スケールの試験 3. 解析解の導出 MMS() を使用 4. 解析コードによる解 4 つの解析格子を使用して 格子依存性を評価 解の誤差とグリッドの細分化との相関を把握 代表格子サイズと誤差の関係 5. 結果の評価 解析コードでは 局所的な温度や表面の熱流束に対して 少なくとも 2 次の精度を与えることを検証 14
妥当性確認の評価手順 解析コードの解の妥当性確認 1. 評価対象 2. 試験データ 妥当性確認には必ず試験データが必要 不確かさ評価 3. シミュレーション シミュレーションモデルの説明 解析コードによる解 不確かさ評価 試験データをシミュレーションに使用する場合は 試験 d- 宝の不確かさの伝播を考慮 4. 妥当性確認の不確かさ評価 シミュレーション予測誤差と不確かさの比較 5. 結果の評価 シミュレーション予測誤差が不確かさの範囲内にない場合はシミュレーションモデルの見直しを行う 15
まとめ ASME 20 は 熱流体解析を対象とした 手法の標準としてまとめられたものである 解析コードの検証に関しては 熱流体解析が離散化手法に基づいていることから 計算格子 (grid) の収束性を評価することで 解析コードの正しさを評価する 妥当性確認に関しては 試験と解析の予測誤差と妥当性の不確かさを定義し 試験データの不確かさ評価 シミュレーションのモデル化及び入力データの不確かさ評価 誤差伝播による不確かさ評価のプロセスを提示している 16
結言 OECD や ASME などの海外の機関 学会では CFD の信頼性を評価することを目的として 体系的なガイドラインや の標準の策定が行なわれている 原子力の様々な技術分野においては 計算機能力の向上に伴い モデルの大規模化 解析の物理モデルの巧緻性が高くなり CFD を初めとする熱流動解析の高度化が進むものと考える シミュレーション解析手法 計算結果に対する信頼性について その合理的な手法や評価に関する検討が行われていくものと考える 17
課題 大規模解析 計算格子の依存性 マルチフィジックス ( 連成解析 ) への適用 スケーリング 試験データの存在の有無 Code-to-code の比較 18
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