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るため RNA ウイルス遺伝子や mrna などの RNA を検出する場合には予め逆転写酵素 (RNA 依存性 DNA ポリメラーゼ ) により DNA に置換する逆転写反応を行う必要がある これを Reverse Transcription-PCR(RT-PCR) という PCR 法によれば 検査

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要旨161226

本成果は 以下の研究助成金によって得られました JSPS 科研費 ( 井上由紀子 ) JSPS 科研費 , 16H06528( 井上高良 ) 精神 神経疾患研究開発費 24-12, 26-9, 27-

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国際塩基配列データベース n DNA のデータベース GenBank ( アメリカ :Na,onal Center for Biotechnology Informa,on, NCBI が運営 ) EMBL ( ヨーロッパ : 欧州生命情報学研究所が運営 ) DDBJ ( 日本 : 国立遺伝研内の日

れており 世界的にも重要課題とされています それらの中で 非常に高い完全長 cdna のカバー率を誇るマウスエンサイクロペディア計画は極めて重要です ゲノム科学総合研究センター (GSC) 遺伝子構造 機能研究グループでは これまでマウス完全長 cdna100 万クローン以上の末端塩基配列データを

新技術説明会 様式例

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様式 F-19 科学研究費助成事業 ( 学術研究助成基金助成金 ) 研究成果報告書 平成 25 年 5 月 15 日現在 機関番号 :32612 研究種目 : 若手研究 (B) 研究期間 :2011~2012 課題番号 : 研究課題名 ( 和文 ) プリオンタンパクの小胞輸送に関与す

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

CiRA ニュースリリース News Release 2014 年 11 月 20 日京都大学 ips 細胞研究所 (CiRA) 京都大学細胞 物質システム統合拠点 (icems) 科学技術振興機構 (JST) ips 細胞を使った遺伝子修復に成功 デュシェンヌ型筋ジストロフィーの変異遺伝子を修復

乳癌基礎研究 Vol マウス乳癌好発系 C57BL /6MT(+) の樹立 鈴木悠加 1) 平岩典子 2) 螺良愛郎 3) 坂倉照妤 4) 1) 三重大学大学院地域イノベーション学 2) 理研 BRC 験動物開発室 3) 関西医科大学病理学第二講座 4) 三重大学 はじめに マウス

60 秒でわかるプレスリリース 2007 年 1 月 18 日 独立行政法人理化学研究所 植物の形を自由に小さくする新しい酵素を発見 - 植物生長ホルモンの作用を止め ミニ植物を作る - 種無しブドウ と聞いて植物成長ホルモンの ジベレリン を思い浮かべるあなたは知識人といって良いでしょう このジベ

平成 28 年 9 月 16 日 離れた細胞間の物質輸送やシグナル伝達を担う脂質膜ナノチューブの形成を誘導する仕組み 1. 発表のポイント : 離れた細胞間の物質輸送やシグナル伝達を担う脂質膜ナノチューブ (Tunneling nanotube TNT) の形成を誘導するタンパク質 M-Sec の立

cDNA cloning by PCR

研究背景 糖尿病は 現在世界で4 億 2 千万人以上にものぼる患者がいますが その約 90% は 代表的な生活習慣病のひとつでもある 2 型糖尿病です 2 型糖尿病の治療薬の中でも 世界で最もよく処方されている経口投与薬メトホルミン ( 図 1) は 筋肉や脂肪組織への糖 ( グルコース ) の取り

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の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

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2008 年 11 月 6 日新技術説明会 細胞の未知の遺伝子を発見するため のウイルスの開発と応用 群馬大学生体調節研究所細胞構造分野原田彰宏

細胞の未知の遺伝子を発見するためウイルスの開発と応用 ( これまでの歴史 ) 培養細胞に変異を生じさせた後 異常な表現型を持つ細胞から原因遺伝子を同定するという方法によって 数々の重要な遺伝子が同定されてきた しかしその手法は 細胞を化学物質処理して点突然変異を導入した後に 薬剤スクリーニングによって異常な形質をもつ細胞を同定し その細胞に多種の cdna を導入して形質を復帰させることで原因遺伝子を同定するというのが主であった この手法だと 原因遺伝子を同定するのは多大な労力と時間を必要とし 通常の研究室で行うには困難であった そこで申請者はレトロウイルスベクターを用いた gene trap 法のシステムを開発し PC12 細胞においてその応用に成功した

( 例 ) 神経の極性に関わる新規遺伝子の同定 目的 神経細胞内で極性の形成や維持に関与している分子では 現段階では未知のものも多く 新たにそれらの分子を同定する. 方法 培養細胞 (PC12) を用いて遺伝子トラップ法 (gene trap) を行う. PC12:1975 年に clone 化された rat の褐色細胞腫由来で神経の研究ではよく使用される神経伝達物質の分泌機構としては大きい膜の袋 ( 小胞 )(LDCV) と小さい小胞 (SSV) よりドーパミン アセチルコリンを各々合成 貯蔵し カルシウム依存性に放出する

方法 1. ウイルスの受容体を細胞に導入しウイルス感染が可能な細胞株を作製 2. 遺伝子トラップ用 DNA(gene trap vector) をレトロウイルスによって感染させ 抗生物質 (neomycin) にて選別する 3. さらに他の薬剤で選別する. β- ガラクトシダーゼ染色で染色し これらの薬剤に耐性な株を選択 4. 表現型として小胞の分布異常 小胞数 突起伸長の有無 突起の形態等に変化がある細胞を選択 5. これらの細胞に Cre レコンビナーゼを添加して遺伝子トラップ用 DNA を除去し 表現型が元に戻るか 確認 β-gal 染色で青染しなくなり G418 感受性となる 6. これらの細胞株に対して 5 RACE(Rapid Amplification of cdna Ends) や inverse PCR を行い 遺伝子発現に異常を来す遺伝子を同定する 7. 得られた遺伝子に対する解析を行う

スクリーニングのイメージ PC12 10 7 cell/dish Neomycin 1/10 10 6 cell/dish Puromycin 1/100 10 4 cell/dish Aerolysin 1/1000 10cell/dish 目的とする変異株

遺伝子トラップベクターとトラップ後の遺伝子産物 ゲノム DNA Exon1 Exon2 Exon3 mrna Exon1 Exon2 Exon3 遺伝子トラップベクター SA IRES Puro pa PGK β-geo pa イントロンへの挿入 ゲノム DNA Exon1 Exon2 Exon3 トラップされた遺伝子 Exon1 SA IRES Puro pa PGK β-geo pa Exon2 Exon3 トラップ後の mrna 発現無し Exon1 SA IRES Puro pa AAAA β-geo pa AAAA

遺伝子トラップ用ウイルスの作製 空のウイルス粒子を産生する細胞 gag pol env gag pol env 5 LTR 導入遺伝子 3 LTR ψ 5 LTR 導入遺伝子 3 LTR 遺伝子トラップ用ベクター gag: 構造タンパク質 env: 外被タンパク質 pol: ポリメラーゼ Ψ:packaging signal 遺伝子導入 出芽 ウイルス粒子 env pol gag

スクリーニング結果 拾った細胞のコロニー数薬剤感受性を調べたコロニー数薬剤耐性のコロニー数表現型が元に戻ったクローン数 52 38 20 (2) <X-gal 染色 > 導入前 導入後 Cre レコンビナーゼ導入前と後 青染細胞が減少し ゲノムに挿入されたウイルスが無くなった

< 薬剤感受性 > 0 1.0 1.2nM ウイルスを導入した細胞 ウイルスを抜いた細胞 ウイルス導入前導入後ウイルス除去後の細胞 クロモグラニン ( 大きな小胞のマーカー ) 抗体で染色した細胞 シナプトフィシン ( 小さい小胞のマーカー ) 抗体で染色した細胞

方法 1.virus receptor を transfection し virus 感染が可能となる株を作製. 2.loxP-SA-IRES-Puro-polyA-PGK-βgeo-polyA-loxP 配列を retrovirus によって感染させ neomycin にて選別する.virus 感染細胞は生存. 3. さらに 2 種類の薬剤 (AL ConA) にて選別する. β-galacsitodase 染色で青染し AL や ConA に耐性な株を選択. 4. また表現型として transporter や vesicle の分布異常 有無 突起伸長の有無 突起の形態等に変化がある細胞を選択. 5. これらの細胞に cre recombinase を添加して revertant( 復帰細胞 ) となるか確認. β-gal 染色で青染しなくなり G418 感受性となる. 6. これまでに screening された株に対して 5 RACE(Rapid Amplification of cdna Ends) や inverse PCR を行い trap された遺伝子を cloning する 7. 得られた遺伝子に対する解析

5 RACE 法の原理 mrna の配列の一部がわかっている時に 5 上流の未知領域を cloning するための方法. 5 5 未知領域 既知配列 逆転写反応 RNA 分解 GSP1 AAAA AAAA 遺伝子特異的配列を mrna にアニーリング 3 CCCC GGGG 3 CCCC GGGG CCCC GGGG CCCC GSP2 cdna の 3 末端にアンカー配列 (dc ポリマー ) を付加する (TdT) dg ポリマーのついたアダプタープライマーと GSP2 で PCR を行う nested GSP アンカープライマーと nested GSP で PCR を行う 未知の 5 上流を含む産物が増幅される

現在の状況 5 RACE により未知配列が得られ始めた. Inverse PCR 法にても同様に未知領域の確認を進める. 適当な制限酵素で genome DNA を処理し self ligation して環状化する. 既知配列両端に逆向きにデザインした primer で PCR を行い未知領域を増幅する. 増幅した配列を cloning vector に ligation して 塩基配列を得る.

今後の予定 取得したクローンが Cre recombinase で revertant( 復帰細胞 ) となるか確認すると共に 5 RACE を行い trap された遺伝子を cloning する. また inverse PCR 法でも未知領域を cloning する 得られた遺伝子に対しては 組織分布を northern blot で調べる 抗体を作製し western blot immunofluorescence で組織や細胞内分布を調べる 発現量に関して 変異株で低下し revertant で親株レベルに戻るか調べる (northern, westhern) 最終的には 線虫やマウスで欠失個体を作製して個体での機能を観察する

応用の可能性 他のどのような細胞にも応用可能である ウイルスの挿入による表現型か否か すぐに確認できる 遺伝子を同定する時間とコストを節約できる

GPI anchor: Glycosylphosphatidylinositol anchorはフォスファチジルイノシトールにグルコサミン, マンノース, エタノールアミンリン酸が結合した糖脂質の一種である. 細胞表面に発現されるタンパク質の修飾に用いられる.GPI anchor 型蛋白は真核生物に広く存在 基本構造も保存されている.GPI anchor の特性としてmicrodomainあるいはraftに集積し 特有のタンパク質輸送やシグナル伝達に関係している. リン脂質 スフィンゴミエリン コレステロール スフィンゴ糖脂質 Raft GPI アンカー蛋白 脂質修飾蛋白 膜貫通蛋白

GPI アンカー生合成経路 GPI アンカー型タンパク質には生体防御や細胞間の情報伝達に重要な役割を果たしているものが含まれる. またウィルスや毒素の受容体として機能しているものも知られている. GPI アンカーは, 小胞体において約 10 段階の酵素反応を経て合成され 完成した GPI アンカー型タンパク質は, 小胞体からゴルジ体を経由して細胞表面へ運ばれる.

GPI アンカー型タンパク質の輸送経路 raft は細胞表面において特有のシグナル伝達の場として また固有のタンパク質輸送の場としてとして近年注目されている. GPI による修飾はタンパク質の局在 ソーティングシグナルとしての機能を持つと考えられる. 本来 apical への輸送を担っており basilateral へ輸送されるべきタンパク質を結合させるとこのタンパク質は apical へ輸送される.

本技術に関する知的財産権 発明の名称 : レトロウイルス産生用ベクター 出願番号 : 特願 2007-075377 出願人 : 群馬大学 発明者 : 原田彰宏 佐藤隆史 村松一洋 橋本由紀子 植村武文 お問い合わせ先 < 特許の取り扱い等 > 群馬大学研究 知的財産戦略本部群馬大学 TLO TLO 長大澤隆男 TEL 0277-30 -1171 FAX 0277-30 -1178 E-mail rip-admin@eng.gunma-u.ac.jp