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あった AUCtはで ± ng hr/ml で ± ng hr/ml であった 2. バイオアベイラビリティの比較およびの薬物動態パラメータにおける分散分析の結果を Table 4 に示した また 得られた AUCtおよび Cmaxについてとの対数値

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26 氏 名 た田 なか中 せい精 いち一 学位の種類学位記番号学位授与の日付学位授与の要件 博士 ( 医学 ) 乙第 751 号平成 28 年 2 月 22 日学位規則第 4 条第 2 項 学位論文題目 Add-on treatment with teneligliptin ameliorates glucose fluctuations and improves glycemic control index in Japanese patients with type 2 diabetes on insulin therapy ( インスリン療法を受けている日本人 2 型糖尿病患者におけるテネリグリプチン追加療法は血糖変動および血糖コントロール指標を改善する ) 論文審査委員 ( 主査 ) 教授菱沼昭 ( 副査 ) 教授井上晃男 教授杉本博之 論文内容の要旨 背景 DPP-4 (dipeptidyl peptidase-4) 阻害薬は 内因性インクレチンホルモンのglucagon-like peputide-1 (GLP-1) とglucose-dependent insulinotropic peptide(gip) 濃度を生理学レベルで上昇させ 血糖依存性のインスリン分泌促進により食後血糖低下作用を示す経口糖尿病薬である GLP-1は膵 β 細胞への作用のみならず 心 血管系への保護作用などの種々の膵外作用を有することが知られている これまでの基礎研究により 血糖変動幅の増大の方が 持続的な高血糖に比し 血管内皮細胞の酸化ストレスをより強く惹起し アポトーシスを増加させることが示されている GLP-1 受容体作動薬および他のDPP-4 阻害薬 ( シタグリプチンなど ) は血糖変動幅を有意に改善させることが報告されている 目的 今回 我々はインスリン単独療法または経口糖尿病薬を併用したインスリン療法を行っている日本人 2 型糖尿病患者を対象にDPP-4 阻害薬であるテネリグリプチンの血糖変動改善効果について持続式グルコースモニタリング (continuous glucose monitoring : CGM) を用いて検討した 対象と方法 本研究は獨協医科大学倫理委員会の承認のもと対象患者に対しインフォームド コンセントを取得し実施された 血糖コントロール目的に獨協医科大学病院内分泌代謝内科の病棟に入院した2 型糖尿病患者 26 例を対象とした 選択基準は (1) 年齢 20 歳以上 (2) 入院時のHbA1c 7.5% 以上 (3) 経口 - 109 -

糖尿病薬を併用又は単独での基礎インスリン1 日 1 回投与 もしくは混合型インスリン1 日 2 回投与 1 日複数回投与のインスリン投与などのインスリン療法を2 週間以上の期間で施行している (4) インスリンの1 日投与量 60 単位以下 を対象とした 対象患者は入院後 適正な食事療法と共に インスリン単独療法または経口糖尿病薬を併用したインスリン療法を施行して 血糖値を可能な限り正常化に近づけた その後 ( 退院 1 週間前から ) CGMを用いて血糖値を7 日間連日測定した 試験期間中はインスリン用量を変更せず CGM 測定 4 日目にテネリグリプチン20mgの1 日 1 回投与を追加した CGMで得られたデータを用いて 24 時間血糖値の平均値 (mean glucose level) 標準偏差(standard deviation:sd) 平均血糖幅(mean amplitude of glycemic excursions:mage) 1 日に占める適正血糖 高血糖 低血糖の時間 食後 2 時間血糖値を評価した グリコアルブミン (glycated albumin:ga) 1,5アンヒドログルシトール (1,5-anhydroglucitol:1,5-AG) および高感度 C 反応タンパク (high-sensitivity C-reactive protein: hscrp) の血中レベルは第 0 日 4 日 8 日に測定した 全てのデータは平均 ± 標準偏差で表記した 群間比較はWilcoxon signed rank testを用い P<0.05 をもって統計学的に有意差ありと判定した 結果 投与前と投与開始後のCGMの結果から mean glucose level(mg/dl):148.8 ± 25.7 131.3 ± 17.0 SD (mg/dl):32.0 ± 16.2 26.9 ± 10.9 MAGE (mg/dl):90.1 ± 46.7 85.5 ± 34.3とそれぞれ有意な改善を認めた 低血糖の占める時間 (%) は1.0 ± 2.7 1.6 ± 2.6と増加傾向にあったが 有意差は認めなかった 全 26 例とも明らかな重症低血糖は認められなかった 1,5-AG GAは有意に改善し hs-crpは改善傾向であった また テネリグリプチン追加投与直後 (24 時間後 ) から血糖値は24 時間に亘り 投与前と比較し有意な改善を認め その効果は試験終了 ( 投与 72 時間後 ) まで継続していた 考察 最初に臨床使用されたDPP-4 阻害薬であるシタグリプチンは インスリン療法に追加投与することで低血糖を増加させることなく血糖コントロールを改善することが報告され その改善にはシタグリプチンによる食後血糖低下作用が貢献していると推定されている また いくつかの報告により 持効型インスリンによる1 日 1 回のインスリン療法 混合インスリン製剤による1 日 2 回のインスリン療法に対してシタグリプチンを追加投与することで 食後血糖のみでなく食前血糖も低下することが示されている 本研究において テネリグリプチンでも同様の結果を得る事ができたが それだけでなく内服開始直後からその効果が確認され 短期間での食前 食後血糖の改善効果を示すことが明らかにされた 血糖変動幅の増大は持続的な高血糖より酸化ストレスを惹起し 心血管疾患の重要なリスクファクターとなることが報告されている 本研究においてテネリグリプチン投与期間はわずか数日でありながら 短期間の血糖コントロールの指標である1,5AGの上昇に加え 2 週間の平均血糖コントロールの指標であるGAの低下も認めた またCGMの結果においても MAGE SDおよび食後のtotal area - 110 -

under the curveの有意な改善を認めた これらの指標は血糖変動の指標として広くコンセンサスを得ており テネリグリプチンがインスリン加療中の糖尿病患者の血糖変動幅を改善させることが示された 今回 我々のテネリグリプチン追加投与による検討では 血中 hscrpの有意な低下を認めなかったが 既報ではその他のDPP-4 阻害薬 ( シタグリプチンなど ) の投与により2 型糖尿病患者における血中 hscrpの低下作用が示され DPP-4 阻害薬の抗炎症作用について言及されている 我々の検討と既報との結果が乖離した理由として 今回の検討が既報と比べ評価の期間が短期間である点 症例数がやや少ない点 対象患者のテネリグリプチン投与前血糖コントロールが24 時間平均血糖で148.8 ± 25.7mg/dlと良好な血糖コントロールが得られていた点 等いくつかの要因が影響したことが考えられた 血糖変動抑制効果をもつテネリグリプチンは インスリン加療中の2 型糖尿病患者 特に高齢者などの心血管病のハイリスク症例の血糖コントロールに有用であると考えられた 結論 本研究により インスリン治療中の2 型糖尿病にテネリグリプチンを投与する事で治療開始後速やかに血糖改善効果を観察することができた さらに テネリグリプチンが 朝 昼 夕食後の血糖値の上昇を有意に抑制し 24 時間血糖のSDやMAGEを低下させることから血糖変動を改善させる作用を有することが示された 論文審査の結果の要旨 論文概要 既報により 血糖変動幅の増大が 血管内皮細胞の酸化ストレスをより強く惹起し 心血管イベントや動脈硬化促進を惹起することが報告されている Dipeptidyl peptidase-4 (DPP-4) 阻害薬は 血糖依存性のインスリン分泌促進により食後血糖低下作用を示す経口糖尿病薬であり 現在本邦で最も多く使用されている経口糖尿病薬の一つである 申請論文では インスリン療法を行っている2 型糖尿病患者を対象とし DPP-4 阻害薬であるテネリグリプチンを用いて血糖変動改善効果について持続式グルコースモニタリング (continuous glucose monitoring : CGM) を用いて検討している 血糖コントロール目的に入院したインスリン療法中の2 型糖尿病患者 26 例を対象とし 適正な食事療法と共に インスリンを適切な量で使用し またDPP-4 阻害薬を除く経口糖尿病薬も併用して血糖値を可能な限り正常に近づけた その後 テネリグリプチン投与前と投与開始後の血糖変動をCGMにて観察した テネリグリプチン投与により 24 時間血糖値の平均値 (mean glucose level) 標準偏差 (standard deviation:sd) 平均血糖幅(mean amplitude of glycemic excursions:mage) 1 日に占める適正血糖時間 また各食後の血糖上昇曲線下面積 (total area under the curve) は 有意に改善を認めていた また 低血糖の占める時間は増加傾向にあったが 有意差は認めておらず 全 26 例とも明らかな重症低血糖の発生は認めなかった さらに短期間の血糖コントロール状態を示唆する指標である グリコアルブミンや1,5アンヒドログルシトール (1,5-anhydroglucitol:1,5-AG) も短期間で有意な改善を認めていた - 111 -

またテネリグリプチンの効果は 投与直後 (24 時間後 ) から確認できており その効果は試験終了 ( 投与 72 時間後 ) まで継続していた テネリグリプチンは速やかで確実な血糖変動抑制効果を持ち インスリン加療中の2 型糖尿病患者 特に高齢者などの心血管病のハイリスク症例の血糖コントロールに有用であると結論づけている 研究方法の妥当性 本研究では 実際の2 型糖尿病患者において 良好な血糖コントロールが得られた後 テネリグリプチンの効果を検討している また入院中の患者に限定して検討することで 食事等の外的要因の影響を少なくすることで CGMによる適切な血糖変動を評価している 客観的で適切な統計解析を行っており 本研究は妥当なものと判断できる 研究結果の新奇性 独創性 DPP-4 阻害薬であるテネリグリプチンの血糖変動をCGMで解析している 投与前の血糖変動も CGMにて観察されており 投与後と比較することで 詳細に薬剤の効果を評価している インスリン療法中の2 型糖尿病患者を対象としたことで インスリンとテネリグリプチンの併用療法の効果も確認でき 現在までに他の報告がない 独創性の高い研究となっている 結論の妥当性 申請論文では 適切な症例を適切な条件下でCGM 検査でのみ確認できるmean glucose level SD MAGE 食後のtotal area under the curve 等を統計解析にて評価しており そこから導きだした結論は論理上矛盾するものはなく 糖尿病学における知見を踏まえても妥当なものと判断できる 当該分野における位置付け 申請論文は コントロール良好なインスリン療法中の糖尿病患者において テネリグリプチン投与後速やかに効果を発現し 強力な血糖変動幅抑制効果を低血糖の発生を増大することなくもたらす と結論づけており このような報告はこれまでなく 糖尿病治療研究の進歩に寄与する意義深い研究と評価できる 申請者の研究能力 申請者は 糖尿病学 内分泌代謝学の実践と理論を学んだ上で DPP-4 阻害薬の一つであるテネリグリプチンに着目し 血糖変動幅増大のリスクやその抑制方法に興味をもち 本実験の計画作成や患者の選定 さらには研究の遂行に尽力した その研究成果が掲載された雑誌は国際的な学術的価値を有するものと判断でき 充分な研究能力を有していると判断できる 学位授与の可否 申請論文は 独創的で極めて質の高い研究内容を有しており 今後の糖尿病診療における貢献度は高い よって博士 ( 医学 ) 学位授与にふさわしいと判断した ( 主論文公表誌 ) Diabetes Technology & Therapeutics 16:840-845, 2014-112 -