秋季問題サンプル

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2019年度はマクロ経済スライド実施見込み

このジニ係数は 所得等の格差を示すときに用いられる指標であり 所得等が完全に平等に分配されている場合に比べて どれだけ分配が偏っているかを数値で示す ジニ係数は 0~1の値をとり 0 に近づくほど格差が小さく 1に近づくほど格差が大きいことを表す したがって 年間収入のジニ係数が上昇しているというこ

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Microsoft PowerPoint - ★グラフで見るH30年度版(完成版).

日韓比較(10):非正規雇用-その4 なぜ雇用形態により人件費は異なるのか?―賃金水準や社会保険の適用率に差があるのが主な原因―

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別紙2

ふくい経済トピックス ( 就業編 ) 共働き率日本一の福井県 平成 2 2 年 1 0 月の国勢調査結果によると 福井県の共働き率は % と全国の % を 1 1 ポイント上回り 今回も福井県が 共働き率日本一 となりました しかし 2 0 年前の平成 2 年の共働き率は

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図表 1 人口と高齢化率の推移と見通し ( 億人 ) 歳以上人口 推計 高齢化率 ( 右目盛 ) ~64 歳人口 ~14 歳人口 212 年推計 217 年推計

我が国中小企業の課題と対応策

政策課題分析シリーズ16(付注)

長野県の少子化の現状と課題

平成 年 2 月 日総務省統計局 労働力調査 ( 詳細集計 ) 平成 24 年 10~12 月期平均 ( 速報 ) 結果の概要 1 Ⅰ 雇用者 ( 役員を除く ) 1 1 雇用形態 2 非正規の職員 従業員の内訳 Ⅱ 完全失業者 3 1 仕事につけない理由 2 失業期間 3 主な求職方法 4 前職の

ポイント 〇等価尺度法を用いた日本の子育て費用の計測〇 1993 年 年までの期間から 2003 年 年までの期間にかけて,2 歳以下の子育て費用が大幅に上昇していることを発見〇就学前の子供を持つ世帯に対する手当てを優先的に拡充するべきであるという政策的含意 研究背景 日本に

つのシナリオにおける社会保障給付費の超長期見通し ( マクロ ) (GDP 比 %) 年金 医療 介護の社会保障給付費合計 現行制度に即して社会保障給付の将来を推計 生産性 ( 実質賃金 ) 人口の規模や構成によって将来像 (1 人当たりや GDP 比 ) が違ってくる

図表 29 非正規労働者の転職状況 前職が非正規労働者であった者のうち 現在約 4 分の 1 が正規の雇用者となっている 非正規労働者の転職希望理由としては 収入が少ない 一時的についた仕事だから が多くなっている 前職が非正規で過去 5 年以内に転職した者の現職の雇用形態別割合 (07 年 現職役


タイトル

(2) 高齢者の福祉 ア 要支援 要介護認定者数の推移 介護保険制度が始まった平成 12 年度と平成 24 年度と比較すると 65 歳以上の第 1 号被保険者のうち 要介護者又は要支援者と認定された人は 平成 12 年度末では約 247 万 1 千人であったのが 平成 24 年度末には約 545 万

税・社会保障等を通じた受益と負担について


3 調査項目一覧 分類問調査項目 属性 1 男女平等意識 F 基本属性 ( 性別 年齢 雇用形態 未既婚 配偶者の雇用形態 家族構成 居住地 ) 12 年調査 比較分析 17 年調査 22 年調査 (1) 男女の平等感 (2) 男女平等になるために重要なこと (3) 男女の役割分担意

いずれも 賃金上昇率により保険料負担額や年金給付額を65 歳時点の価格に換算し 年金給付総額を保険料負担総額で除した 給付負担倍率 の試算結果である なお 厚生年金保険料は労使折半であるが 以下では 全ての試算で負担額に事業主負担は含んでいない 図表 年財政検証の経済前提 将来の経済状

第 1 子出産前後の女性の継続就業率 及び出産 育児と女性の就業状況について 平成 30 年 11 月 内閣府男女共同参画局

平成27年版高齢社会白書(全体版)

シニア層の健康志向に支えられるフィットネスクラブ


少子高齢化班後期総括

( 図表 1) 平成 28 年度医療法人の事業収益の分布 ( 図表 2) 平成 28 年度医療法人の従事者数の分布 25.4% 27.3% 15.8% 11.2% 5.9% n=961 n=961 n= % 18.6% 18.5% 18.9% 14.4% 11.6% 8.1% 資料出所

野村資本市場研究所|顕著に現れた相続税制改正の影響-課税対象者は8割増、課税割合は過去最高の8%へ-(PDF)

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14 日本 ( 社人研推計 ) 日本 ( 国連推計 ) 韓国中国イタリアドイツ英国フランススウェーデン 米国 図 1. 1 主要国の高齢化率の推移と将来推計 ( 国立社会保障 人口問題研究所 資料による ) 高齢者を支える

米国の給付建て制度の終了と受給権保護の現状

平成28年版高齢社会白書(概要版)

平成29年版高齢社会白書(全体版)

親と同居の壮年未婚者 2014 年

2. 年金額改定の仕組み 年金額はその実質的な価値を維持するため 毎年度 物価や賃金の変動率に応じて改定される 具体的には 既に年金を受給している 既裁定者 は物価変動率に応じて改定され 年金を受給し始める 新規裁定者 は名目手取り賃金変動率に応じて改定される ( 図表 2 上 ) また 現在は 少

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参考 1 男女の能力発揮とライフプランに対する意識に関する調査 について 1. 調査の目的これから結婚 子育てといったライフ イベントを経験する層及び現在経験している層として 若年 ~ 中年層を対象に それまでの就業状況や就業経験などが能力発揮やライフプランに関する意識に与える影響を把握するとともに

平成30年版高齢社会白書(概要版)(PDF版)

第 2 章 産業社会の変化と勤労者生活

各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

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年の家族 2-1 世帯モデル設定本章では 3 つの社会変化をもとに世帯モデルを以下のように設定する 1 専業主婦世帯 ( 標準モデル世帯 ) 平均的な男性賃金で 45 年間厚生年金に加入した夫と 45 年間専業主婦の夫婦 2 生涯単身男性世帯 平均的な男性賃金で 45 年間厚生年金に加

労働力調査(詳細集計)平成29年(2017年)平均(速報)結果の概要

人口 世帯に関する項目 (1) 人口増加率 0.07% 指標の説明 人口増加率 とは ある期間の始めの時点の人口総数に対する 期間中の人口増加数 ( 自然増減 + 社会増減 ) の割合で 人口の変化量を総合的に表す指標として用いられる 指標の算出根拠 基礎データの資料 人口増加率 = 期間中の人口増

親と同居の未婚者の最近の状況(2016 年)

労働力調査(詳細集計)平成24年平均(速報)結果の要約

第 7 章財政運営と世代の視点 unit 26 Check 1 保有する資金が預貯金と財布中身だけだとしよう 今月のフロー ( 収支 ) は今月末のストック ( 資金残高 ) から先月末のストックを差し引いて得られる (305 頁参照 ) したがって, m 月のフロー = 今月末のストック+ 今月末

社会保障給付の規模 伸びと経済との関係 (2) 年金 平成 16 年年金制度改革において 少子化 高齢化の進展や平均寿命の伸び等に応じて給付水準を調整する マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びはの伸びとほぼ同程度に収まる ( ) マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びは 1.6

1. 成長率 可処分所得 社会の満足度 一人当たり成長は先進国でトップクラス 一人当たり可処分所得は着実に増加 社会の満足度は過去最高 生産年齢人口一人当たり実質 GDP 成長率 ( 年平均 ) (%)

女性が働きやすい制度等への見直しについて

160 パネリスト講演 1 労働市場における男女格差の現状と政策課題 川口章 同志社大学の川口です どうぞよろしくお願いします 日本の男女平等ランキング世界経済フォーラムの 世界ジェンダー ギャップレポート によると, 経済分野における日本の男女平等度は, 世界 142 か国のうち 102 位です

テキスト 3 キャリアカウンセリングの理論 Ⅰ キャリアカウンセリングに関するな理論主要 P17 テキスト 4 アセスメント / キャリア情報 目次構成巻末資料 p81 巻末資料 p79 目次 2 米国におけるキャリア情報 71 参考 引用文献 巻末資料 81 索引 ----

スライド 1

資料9

第3回 情報化社会と経済学 その3

 第1節 国における子育て環境の現状と今後の課題         

第14回税制調査会 総14-4

エコノミスト便り

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労災年金のスライド

事業所規模 5 人以上 (1 表 ) 月間現金給与額 産 業 ( 単位 : 円 %) 現金給与総額 きまって支給する給与 所定内給与 特別に支払われた給与 対前月増減差 対前年同月増減差 全国 ( 調査産業計 確報値 ) 262, , ,075

3.HWIS におけるサービスの拡充 HWISにおいては 平成 15 年度のサービス開始以降 主にハローワーク求人情報の提供を行っている 全国のハローワークで受理した求人情報のうち 求人者からインターネット公開希望があったものを HWIS に公開しているが 公開求人割合は年々増加しており 平成 27

平成14年度社会保障給付費(概要)

中小企業のための「育休復帰支援プラン」策定マニュアル

平成 22 年国勢調査産業等基本集計結果 ( 神奈川県の概要 ) 平成 22 年 10 月 1 日現在で実施された 平成 22 年国勢調査 ( 以下 22 年調査 という ) の産業等基本集計結果が平成 24 年 4 月 24 日に総務省統計局から公表されました 産業等基本集計は 人口の労働力状態

事業所規模 5 人以上 (1 表 ) 月間現金給与額 産 業 ( 単位 : 円 %) 現金給与総額 きまって支給する給与 所定内給与 特別に支払われた給与 対前月増減差 対前年同月増減差 全国 ( 調査産業計 確報値 ) 278, , ,036

厚生年金 健康保険の強制適用となる者の推計 粗い推計 民間給与実態統計調査 ( 平成 22 年 ) 国税庁 5,479 万人 ( 年間平均 ) 厚生年金 健康保険の強制被保険者の可能性が高い者の総数は 5,479 万人 - 約 681 万人 - 約 120 万人 = 約 4,678 万人 従業員五人

資料2(コラム)

29 歳以下 3~39 歳 4~49 歳 5~59 歳 6~69 歳 7 歳以上 2 万円未満 2 万円以 22 年度 23 年度 24 年度 25 年度 26 年度 27 年度 28 年度 29 年度 21 年度 211 年度 212 年度 213 年度 214 年度 215 年度 216 年度

表紙

Ⅲ 結果の概要 1. シングル マザー は 108 万人我が国の 2010 年における シングル マザー の総数は 108 万 2 千人となっており 100 万人を大きく超えている これを世帯の区分別にみると 母子世帯 の母が 75 万 6 千人 ( 率にして 69.9%) 及び 他の世帯員がいる世

参考 平成 27 年 11 月 政府税制調査会 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する論点整理 において示された個人所得課税についての考え方 4 平成 28 年 11 月 14 日 政府税制調査会から 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告 が公表され 前記 1 の 配偶

人 ) 195 年 1955 年 196 年 1965 年 197 年 1975 年 198 年 1985 年 199 年 1995 年 2 年 25 年 21 年 215 年 22 年 225 年 23 年 235 年 24 年 第 1 人口の現状分析 過去から現在に至る人口の推移を把握し その背

経済財政モデル の概要 経済財政モデル は マクロ経済だけでなく 国 地方の財政 社会保障を一体かつ整合的に分析を行うためのツールとして開発 人口減少下での財政や社会保障の持続可能性の検証が重要な課題となる中で 政策審議 検討に寄与することを目的とした 5~10 年程度の中長期分析用の計量モデル 短

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テレワーク制度等 とは〇 度テレワーク人口実態調査 において 勤務先にテレワーク制度等があると雇用者が回答した選択枝 1 社員全員を対象に 社内規定などにテレワーク等が規定されている 2 一部の社員を対象に 社内規定などにテレワーク等が規定されている 3 制度はないが会社や上司などがテレワーク等をす

中国:対応が必要とされる所得格差問題

新学習指導要領における数学科 「資料の活用」および「データの分析」 で育む統計的問題解決授業

市場と経済A

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経済成長論

日本経済の現状と見通し ( インフレーションを中心に ) 2017 年 2 月 17 日 関根敏隆日本銀行調査統計局

社会保障 税一体改革大綱(平成24 年2月17 日閣議決定)社会保障 税一体改革における年金制度改革と残された課題 < 一体改革で成立した法律 > 年金機能強化法 ( 平成 24 年 8 月 10 日成立 ) 基礎年金国庫負担 2 分の1の恒久化 : 平成 26 年 4 月 ~ 受給資格期間の短縮

短時間労働者への厚生年金 国民年金の適用について 1 日又は 1 週間の所定労働時間 1 カ月の所定労働日数がそれぞれ当該事業所 において同種の業務に従事する通常の就労者のおおむね 4 分の 3 以上であるか 4 分の 3 以上である 4 分の 3 未満である 被用者年金制度の被保険者の 配偶者であ

資料 4 明石市の人口動向のポイント 平成 27 年中の人口の動きと近年の推移 参考資料 1: 人口の動き ( 平成 27 年中の人口動態 ) 参照 ⑴ 総人口 ( 参考資料 1:P.1 P.12~13) 明石市の総人口は平成 27 年 10 月 1 日現在で 293,509 人 POINT 総人口

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拡大する企業収益景気回復に伴い 企業の経常利益は大幅に改善している 経常利益の増加を受け 当期純利益も増加が続き その分配先である内部留保 ( フロー ) が大きく増 双方の税 社会保険料の負担が増加傾向にあることを踏まえた上で 継続的な賃金上昇によって 可処分所得の増加を実現させて消費を喚起し 成

財政政策の考え方 不況 = モノが売れない仕事がない ( 失業増加 ) が代わりにモノを買う! 仕事をつくる ( 発注する )! = 財政支出拡大 ( がお金を使う ) さらに乗数効果で効果増幅!! 3 近年の経済対策の財政規模 名 称 内閣 事業規模 公共投資 減税 財政規模 日本経

毎月勤労統計調査地方調査の説明 1 調査の目的この調査は 統計法に基づく基幹統計で 常用労働者の給与 出勤日数 労働時間数及び雇用について 東京都における毎月の変動を明らかにすることを目的としています 2 調査の対象本調査の産業分類は 平成 2 年 10 月改定の日本標準産業分類に基づき 鉱業, 採

中国初の家計資産調査が示す収入・資産格差

2 / 6 不安が生じたため 景気は腰折れをしてしまった 確かに 97 年度は消費増税以外の負担増もあったため 消費増税の影響だけで景気が腰折れしたとは判断できない しかし 前回 2014 年の消費税率 3% の引き上げは それだけで8 兆円以上の負担増になり 家計にも相当大きな負担がのしかかった

参考 男女の能力発揮とライフプランに対する意識に関する調査 について 1. 調査の目的これから結婚 子育てといったライフ イベントを経験する層及び現在経験している層として 若年 ~ 中年層を対象に それまでの就業状況や就業経験などが能力発揮やライフプランに関する意識に与える影響を把握するとともに 家

2. 女性の労働力率の上昇要因 М 字カーブがほぼ解消しつつあるものの 3 歳代の女性の労働力率が上昇した主な要因は非正規雇用の増加である 217 年の女性の年齢階級別の労働力率の内訳をみると の労働力率 ( 年齢階級別の人口に占めるの割合 ) は25~29 歳をピークに低下しており 4 歳代以降は

Transcription:

次の文章を読み 以下の問に答えなさい トマ ピケティの 21 世紀の資本 の出版以降 経済格差とそれに関連する問題が改めて議論されるようになった 実際 多くの先進国では 以前と比べると 持てるものと持たざるもの 高所得者と低所得者の格差が次第に広がってきていることが指摘されている 1 所得格差を測る指数であるジニ係数等の指標を見ると 日本のジニ係数は次第に上昇してきていることが見て取れる 日本は かつては一億総中流社会などと呼ばれ 比較的所得分配が平等であり また多くの人は自らをそのような中流層と感じている社会であったと言われる しかし近年では 日本のジニ係数の上昇が示しているように 日本でも 所得格差の拡大が進んでおり また多くの人がそれを実感しているように見える その理由にはさまざまなものが指摘されている 例えば経済の IT 化は 従来人間が行っていた仕事をコンピューターが代替することによって 多くの単純労働に対する需要を消滅させたあるいはその賃金を低下させたと言われる また 2 経済のグローバル化や為替レートの上昇は 企業 特に製造業の生産拠点の海外進出を促すことによって 製造現場の労働者の仕事を失わせたり その 3 賃金を低下させたであろうことは想像に難くない また長引く不況とデフレ下において 企業は人件費を抑制するために 4 正規雇用者の数を減らし 非正規雇用者の割合を増やしてきたことはいまではよく知られた事実である さらに出生率が低下し 人口構成が高齢化していることも ジニ係数が上昇していることの要因の一つであると言われる 高齢者間の所得格差は 勤労者間の所得格差よりはるかに大きいからである このような個人間の所得格差とは別に 日本では年齢階層間の所得格差 特に若年層と老年層の間の社会保障負担 受益における格差の問題も指摘されるようになっている 実際さまざまな推計によれば 現状の社会保障制度と税制が維持されるとすれば 生涯所得で見た社会保証負担と受益の関係は 60 歳以上の老年層では受益が負担を大幅に上回るのに対して 若年層では負担が受益を下回ることになると予想されている このような現状が 若年層が年金の持続可能性に対して疑義を抱く最大の原因になっていることは明らかである ではこのような問題に我々はどのように対応すればよいのだろうか 個人間の所得格差に関しては 高所得者層 富裕層に対する課税を強化すれば良いというのが 冒頭に上げたピケティの考えである もちろんこれは所得格差を縮小する非常にストレートな方法であるが 日本の所得税と地方税を合わせた最高税率は現在 55% に達しており 先進国の中で決して低い方ではないため これ以上の課税強化は難しいという意見もある 若年層と老年層の社会保障負担 受益の格差に関しては 老年層も等しく負担する消費税の税率を上げ 年金や医療などの社会保障給付を削減するという選択肢が考えられるが これを実行するには極めて多くの政治的困難が予想される 多くの政党は 有権者に占める割合 1

が低く投票率も低い若年層の利害よりは 有権者に占める割合が高く投票率も高い老年層の利害を優先しがちであると言われるからである またこの問題に関しては 出生率を上昇させ 人口構成における若年層の割合を増やしていけば自動的に解決されるという意見もあるが 出生率を上昇させるためには 日本の企業における 5 女性の働き方を抜本的に変える必要があり その実現は一朝一夕には達成されそうにない にもかかわらず われわれは このような問題にどのように対応するのかに関して 速やかに国民的コンセンサスを形成し 政策を実行して行かなければならない切迫した状況にあるのである 問 1 下線部 1に関して 表 1のデータ A 群は日本の世帯で 世帯毎の所得を示しているとする データ B 群はアメリカの世帯で 同様に世帯毎の所得を示している 日米両方共 5 世帯であるとする このとき データ A 群とデータ B 群の散らばりの度合い ( ばらつきの度合い ) を計算し データ A 群と B 群の所得格差について簡潔に説明をしなさい なお 小数点以下は四捨五入しなさい (150 字程度 ) 表 1 問 2 下縁部 2に関して 経済のグローバル化とはどのようなことを指すのか また経済のグローバル化は日本を豊かにするか あなたの考えを述べなさい (150 字程度 ) 2

問 3 下線部 3に関して 図 1 は 平成 26 年の 1 人当たり現金給与総額の前年同月比での変化率 (%) を表したものである このグラフから われわれの生活は豊かになったという意見に対して あなたはどのように反論できるか答えなさい (150 字程度 ) 図 1 1 人当たり現金給与総額の推移 ( 前年度比 ) 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0-0.5 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 出所 : 厚生労働省 毎月勤労統計調査平成 27 年 1 月分結果速報 問 4 下線部 4に関して 正規 非正規雇用の現状は表 2のとおりである 表 2の空欄 ( 非正規雇用者の合計と非正規雇用比率 ) を計算し 著者の主張の真偽 ( 正しい あるいは正しくない ) 及びその根拠を簡潔に説明しなさい (100 字程度 ) 表 2 正規 非正規雇用者の現状 出所 : 総務省統計局 労働力調査 注 1: ここでの非正規雇用労働者数の計算は以下の通り 非正規雇用労働者数 = パート アルバイト + その他 3

問 5 下線部 5に関して 日本における女性の労働力率 ( 図 2) は 他の先進国と比べると 結婚出産の時期に一旦落ち込みその後また回復する M 字型の形状をしていることが特徴であるとされる これを他の先進国のようにフラットな形状にするためにはどのような方策がありうるか あなたの考えを述べなさい (150 字程度 ) 100 % 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 図 2 女性の労働力率の国際比較 歳 日本ドイツスウェーデン米国 出所 : 内閣府 平成 23 年版男女共同参画白書 4

解答例 解説 問 1 データ A 群である日本の世帯の所得の平均は 500 標準偏差は 303 変動係数は 0.61 であるのに対して データ B 群であるアメリカの世帯の所得の平均は 3540 標準偏差は 3287 変動係数は 0.93 となる それゆえ アメリカの世帯の所得の散らばりの度合い すなわち所得格差の方が日本の世帯のそれより大きいことがわかる (141 字 ) ( 解説 ) 数学では ばらつきの度合いは分散あるいは標準偏差で測ることになるため いずれかが計算できていれば 部分点は与えられる ただし 少し見比べてみればわかることだが 比較対象の単位が異なるような場合には 分散あるいは標準偏差の単位を調節しなければ 比較することができない そのようなケースでは 標準偏差を平均で割った数値を比較する ( その指標のことを変動係数と呼ぶ ) 平均は データ A 群 500 データ B 群 3540 となる 標準偏差は A 群が 303 B 群が 3287 となる ( 小数第 1 位で四捨五入すると ) 日本の変動係数は 0.61 であるのに対し アメリカの変動係数は 0.93 となっており アメリカの方が散らばりの度合い つまり所得格差が大きいことを示している なお 分散を平均の 2 乗で割って比較した場合も同じような結果となるため 正解となる 問 2 経済のグローバル化とは ヒト モノ カネが国境を超えてできる限り自由に移動できるようになることである 経済のグローバル化は質の良い外国製品が安価に購入できるようになることで われわれの生活を豊かにする一方で 安価な海外製品の流入が国内の産業にダメージを与え 失業を発生させてしまう可能性もあると言える (150 字 ) 問 3 この間の物価上昇率が給与の上昇率を上回っていれば われわれが実質的に使える所得は減ってしまうため 豊かになってはいない可能性がある またこのデータは経済全体に関するデータであるので 所得の格差が大きくなった場合 以前より豊かになった人が増えた一方で より貧しくなった人も大きく増えた可能性がある (146 字 ) 5

問 4 非正規雇用者数と雇用者全体に占める非正規雇用者の比率は下のように 2010 年から 2014 年まで一貫して増加を続け 2014 年平均でそれぞれ 3278 万人 37.5% となっている したがって 著者の主張は正しい (102 字 ) 単位 : 万人 正規雇用者数 非正規雇用者数 非正規雇用比率 合計 合計 パート アルバイト その他 2010 年平均 3374 1763 1196 567 34.3% 2011 年平均 3352 1812 1229 583 35.1% 2012 年平均 3340 1813 1241 572 35.2% 2013 年平均 3294 1906 1320 586 36.7% 2014 年平均 3278 1963 1347 616 37.5% 問 5 女性の労働力率を他の先進国並みにフラットにするためには 女性が結婚 出産に際して仕事を辞めずに済むような方策が必要であり 例えば保育施設のさらなる充実やその利用料金を下げる政策 女性のみならず男性も含め育児休暇を取得する権利の徹底した保護や 長時間労働をなくし一人当り労働時間の低下を促す政策 などが必要である (155 字 ) 6