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Transcription:

宮城県保健環境センター 課題評価結果対応方針 平成 29 年 3 月 31 日 宮城県

目 次 事前評価 整理番号 1 市中における薬剤耐性腸内細菌科細菌の実態調査 1 ( 参考資料 ) 1 平成 28 年度課題評価調書 2 2 平成 28 年度宮城県保健環境センター課題評価結果報告書 10

整理番号 1 研究区分経常研究研究期間平成 29~30 年度 研究課題名市中における薬剤耐性腸内細菌科細菌の実態調査 Ⅰ 項目別評価 評価項目 評価 5 4 3 2 1 平均 課題の重要性 必要性 4 3 5 計画の妥当性 5 2 4 成果及びその波及効果 5 2 4 評価結果 項目別評価評価基準 5: 高い 4: やや高い 3: 普通 2: やや低い 1: 低い Ⅱ 総合評価 評価 AA A B C D 平均 総合評価 6 1 A 総合評価評価基準 AA: 計画は極めて優れている A: 計画は優れている B: 計画は妥当である C: 計画の一部に課題がある D: 計画の見直しが必要である 意見 対応方針 調査項目への健常者検便提供者の居住地, 入院歴, 渡航歴 ( 渡航先 ) 等の追加について検討すること 匿名性が確保できる範囲で地域分布や年齢による違いなどが分かる解析を行うこと 仙台市との共同研究等により仙台市を含めた県全体を対象とした調査とすること 県内の医療機関等において検出された薬剤耐性菌の種類及び検出率の変動等についての情報を入手し, 本調査結果と比較し考察すること 調査結果がもたらす緊要性によっては, 詳細調査に移行することも念頭に入れ, 個人情報取扱とその手続きに係る調整 検討を本研究と併行して進めること 県民に対し, 正しい理解につながる分かりやすい説明をすること 本調査において, 検体入手時に提供者の年代, 性別及び居住地域を把握し, 薬剤耐性菌の検出結果と併せた解析を行うこととします 仙台市との共同研究等については, 本調査結果を踏まえその必要性を検討することとします 県内の医療機関等における薬剤耐性菌に係る情報の把握に努めることとします 個人情報の取扱いに係る手続き等について検討してまいります 調査結果は, 保健環境センターにおけるホームページ及び年報への掲載, 研究発表会での発表等により公表する他, 地域保健機関及び医療機関等に積極的に情報提供を行うこととします また, 公表にあたっては, 薬剤耐性菌対策に係る正しい知識の普及につながるよう, 県民視点を意識するとともに, 分かりやすい表現による情報発信に努めます 1

( 参考資料 1) 平成 28 年度課題評価調書 宮城県保健環境センター 2

平成 28 年度保健環境センター課題評価対象課題 整理番号研究区分担当部名研究課題名研究期間 1 経常研究微生物部 市中における薬剤耐性腸内細菌科細菌の実態調査 H 2 9-30 3

別紙様式 6 の (1) 評価の種類 事前評価 課題評価調書 ( 事前評価 ) 平成 28 年 9 月 9 日 整理番号 1 研究課題名市中における薬剤耐性腸内細菌科細菌の実態調査 研究分野 2 感染症予防対策に関する研究 担当部名微生物部 計画立案課室 公所名 保健環境センター 研究区分経常研究 研究代表者氏名 山口友美 共同研究機関 協力機関なし研究期間平成 29~30 年度 研究経費総額 773 千円 ( 参考資料 ) 研究経費概要書 1 研究目的 計画等 (1) 研究目的 背景 1980 年代以降, 医療機関を中心に薬剤耐性菌や多剤耐性菌が増加しており,2015 年の世界保健機関総会では薬剤耐性に関する国際行動計画が採択され, 国内においても, 薬剤耐性対策アクションプランが策定されるなど, 薬剤耐性菌対策は国際社会の重要な課題となっている これまで院内感染で問題視されてきた薬剤耐性菌は, 多剤耐性緑膿菌や多剤耐性アシネトバクター等で, これらの細菌は一般に病原性が弱く, 健常者にとってはほぼ無害な菌であった しかし, 近年世界各地に急激に広がりつつあるカルバペネム耐性腸内細菌科細菌 (CRE) や基質特異性拡張型 β-ラクタマーゼ (ESBL) 産生菌は主に病原性細菌であり, 胃腸炎や肺炎, 膀胱炎などの直接の原因となりうる さらに,CRE や ESBL 産生菌が保有する薬剤耐性遺伝子はプラスミド上に存在し, 腸内細菌科内で容易に伝達可能で, 今後我々の身近な環境においても急速な広がりが危惧されている 微生物部では, 感染症法第 15 条に基づく感染症発生対策事業として, 患者及び患者接触者等の検便を日常的に行っているが, その原因菌検索の過程において使用する抗生剤含有分離培地に発育する目的外の腸内細菌科細菌がしばし存在することを把握していた このような薬剤耐性能を有する菌が一般的に存在することは明らかであるが, 菌の種類, 薬剤耐性遺伝子保有の有無に関する詳細な調査は今まで行われていない そこで, 本研究では検便由来の菌を対象として, 抗生剤 ( 特にセファロスポリン系, カルバペネム系 ) 耐性腸内細菌科細菌の実態を調査する さらに, 分離株の薬剤耐性遺伝子を型別することにより薬剤耐性菌の種類を把握することを目的とする (2) 研究計画 平成 29 年度 成人検便検体( 約 500 件 / 年を予定 ) からの薬剤耐性菌の分離 ( 注 ) 4

分離株の菌種同定 分離株の薬剤耐性表現型スクリーニング 平成 30 年度 成人検便検体( 約 500 件 / 年を予定 ) からの薬剤耐性菌の分離 ( 注 ) 分離株の薬剤耐性遺伝子型別を行い ESBL,CRE などに分類 ( 注 ) 検体提供者からの同意取得と併せて連結不可能匿名化処理を実施 (3) 期待される成果と波及効果院内感染対策としての薬剤耐性菌の調査は厚生労働省主導の事業である JANIS 等で行われているが, 市中における調査は数が少ないため, 薬剤耐性菌対策を講じる上で貴重な資料となる さらに, 薬剤耐性遺伝子の型別を実施することにより, 耐性菌の感染経路 ( 海外型 or 国内型 ) を推定する手がかりとなる (4) 使用する主な分析機器 PCR 装置および電気泳動装置 DNA シーケンサー 2 県の施策体系と研究課題との関連 (1) 施策体系 宮城県感染症予防計画第 6 感染症及び病原体等に関する調査及び研究 2 調査及び研究の推進第 7 感染症の病原体等の検査の実施体制及び検査能力の向上 2 感染症の病原体等の検査の推進 (2) 施策と研究課題との関連市中における薬剤耐性菌の検出頻度やその種類を把握し, これらの情報を県民及び医療機関等に還元することにより, 薬剤耐性菌に関する知識の普及 啓発に役立つ また,2014 年に新たに五類全数把握疾患として指定されたカルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症の発生及び蔓延防止対策として必要となる知識や検査技術を習得し, 検査体制の構築を図ることができる (3) 担当課名疾病 感染症対策室 5

3 従事時間割合 業務全体に占める当該研究の従事割合 ( 従事日数 ( 日 / 年 )) 研究代表者微生物部山口友美 15 %( 38 日 / 年 ) 微生物部畠山敬 10 %( 25 日 / 年 ) 共同研究者 微生物部吉川弓林 10 %( 25 日 / 年 ) 微生物部有田富和 10 %( 25 日 / 年 ) %( 日 / 年 ) 当該研究に必要な延べ従事日数 ( 人 日 / 年 ) 113 人 日 / 年 4 関係文献 資料名 薬剤耐性(AMR) 対策アクションプラン (2016-2020) 国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議, 平成 28 年 4 月 5 日 荒川宣親, カルバペネム耐性腸内細菌科細菌等新型多剤耐性菌のグローバル化と臨床的留意点日本化学療法学会雑誌 63,187-197,2015 山口友美他, 基質特異性拡張型 β-ラクタマーゼを産生する腸管出血性大腸菌 O15 の遺伝子解析宮城県保健環境センター年報 30,27-30,2012 5 添付資料 別添のとおり 6

市中における薬剤耐性腸内細菌科細菌の実態調査 感染症発生対策事業 患者接触者便の検査依頼 結果報告 本調査に同意を示した成人の患者接触者便を検体とする 検査終了便の保管 連結不可能匿名化処理 検体容器に付された個人名等が記載されたラベルの削除 便に本調査用の検体番号を新たに付与 分離菌株に菌株番号 ( 本調査用の通し番号 ) を別に付与 ( 本調査の 1 選択培地によるスクリーニング時 に実施 ) 本調査 薬剤耐性菌の分離 対象 成人健常者便 方法 1 選択培地によるスクリーニング 2ディスク法による型別 3 菌種の同定 薬剤耐性菌の発現率 薬剤耐性菌の菌種の把握 薬剤 A 薬剤 B 薬剤耐性遺伝子の解析 プラスミド性 or 染色体性 海外型(KPC 型,NDM 型など ) or 国内型 (IMP 型など ) 結果の分析及び総合的な評価 情報の還元 薬剤耐性菌に関する知識の普及 啓発 薬剤耐性菌対策を講じる上での貴重な資料 7

様式 2 の ( 1 ) 課題評価自己評価票 ( 事前評価 ) 整理番号 1 研究課題名市中における薬剤耐性腸内細菌科細菌実態調査 担当部名微生物部担当部長名渡邉節 研究代表者氏名 山口友美 研究期間平成 2 9 ~ 3 0 年度 Ⅰ 項目別評価 評価項目評価評価内容 1 課題の重要性 必要性 優先的又は緊急な課題として実施すべきか 県が行わなければならない課題か 県が果たす役割は大きいか 2 計画の妥当性 研究目標の設定は明確で具体性があるか また, 目標達成までのプロセスは明確か 最新の知見を踏まえ, 適切な研究方法が執られているか 目標を達成する上で研究期間は適切か 研究費, 研究員の配置及び使用する分析機器等は適切か 計画及び方法に県の研究機関としての先見性 独創性があるか 3 成果及びその波及効果 保健衛生 環境保全の推進への寄与が見込まれるか 保健衛生 環境保全施策に対応できるか 県の検査 研究機関としての責務を遂行する上で必要とする技術 能力が得られるか 3. 6 3. 8 4. 4 国が 2 0 1 6 年 4 月に薬剤耐性対策アクションプランを策定するなど, 薬剤耐性菌対策は喫緊の課題である 院内感染患者由来薬剤耐性菌の遺伝子検査について, 近い将来国からの協力依頼が見込まれることからも, 県として薬剤耐性菌の遺伝子検査体制を整備することは重要である 得られた情報を医師会や医療機関等に積極的に還元し蔓延対策を講じるのは県の役割であり, その意義は大きい 近年拡大し, 問題視されているカルバペネム耐性腸内細菌科細菌 (C R E ) 及び基質特異性拡張型 β - ラクタマーゼ ( E S B L ) 産生菌を主たるターゲットとし, 実態調査を実施する プロセス 手法は, 国立感染症研究所が示すマニュアルを採用するため, 適切であることはもとより, 他自治体 国における調査結果との比較分析が可能である 研究期間は, これまでに行った見極め調査結果 ( E S B L 産生菌の出現率 : 約 10% ) を元に, 必要データ数 ( 1 0 0 0 件 ) を算出し, それらの解析に必要な期間とした 研究費は, 菌分離, 分離菌の遺伝子検査等に必要な試薬等の額とし, 研究員は, 細菌検査担当者をその中心メンバーとして配置した また, 必要な機器等は既存備品を使用する 感染症発生対策事業として健常者便の検査を通常業務として実施している県だからこそ実施可能な研究である 県では, 今まで薬剤耐性菌の本格的な調査を行っておらず, その対策を論ずるためには, その存在実態を把握することを目的とした基礎的研究が必要である 本研究の成果は, 薬剤耐性に関する知識の普及, 薬剤耐性の変化 拡大の予兆把握, 適切な感染予防 管理実践等の保健衛生の施策を構築する際の貴重な提言材料となる 本研究で用いる技術手法は五類感染症に指定の他の薬剤耐性菌検査等に広く応用可能であり, 今後の実務の面からも薬剤耐性菌の拡散, 蔓延の探知及び伝播経路の推定に役立つものである 評価基準 5 : 高い 4 : やや高い 3 : 普通 2 : やや低い 1 : 低い Ⅱ 自己評価国が 2 0 1 6 年 4 月に 薬剤耐性対策アクションプラン を策定するなど, 薬剤耐性菌の拡大は公衆衛生上大きな問題となっている 感染症法では, 院内感染者に係るデータ収集が行われているが, 健常者に係るデータは少ない また, 耐性菌の中にはプラスミド上に薬剤耐性遺伝子を保有するものも多く, 容易に菌種を超えて伝播する可能性がある 本研究では, 健常者の腸内細菌科細菌の薬剤耐性能の有無及びプラスミド上に薬剤耐性遺伝子を保有する菌の割合等の実態を調査する これは, 今後の施策形成のための基礎データとして活用できる 8

参考資料 研究経費概要書 課題名 担当部名 市中における薬剤耐性腸内細菌科細菌の実態調査 微生物部 研究代表者氏名 山口友美 平成 29 年度 平成 30 年度 総額 品目 単価 購入個数 計 品目 単価 購入個数 計 検査試薬費 1. 薬剤耐性菌の分離培養 検査試薬費 1. 薬剤耐性菌の分離培養 滅菌 2 分割シャーレ 10,000 1 箱 10,000 滅菌 2 分割シャーレ 10,000 1 箱 10,000 マッコンキー寒天培地 5,600 2 本 11,200 マッコンキー寒天培地 5,600 2 本 11,200 セフォタキシムナトリウム 5,000 1 本 5,000 簡易同定キット (BBLクリスタル) 19,200 3 本 57,600 セフタジジム 20,000 1 本 20,000 小計 78,800 簡易同定キット (BBLクリスタル) 19,200 3 箱 57,600 2. 薬剤感受性スクリーニング 小計 103,800 滅菌シャーレ 10,000 1 箱 10,000 2. 薬剤感受性スクリーニング ミュラーヒントン寒天培地 15,400 1 本 15,400 滅菌シャーレ 10,000 1 箱 10,000 薬剤感受性ディスク 2,000 10 箱 20,000 ミュラーヒントン寒天培地 15,400 1 本 15,400 小計 45,400 薬剤感受性ディスク 2,000 10 箱 20,000 3. 遺伝子検査 3-アミノフェニルボロン酸 5,800 1 本 5,800 Taqポリメラーゼ 97,000 1 箱 97,000 Lysis Buffer 53,500 1 本 53,500 プライマー 7,000 10 種 70,000 イミペネムn 水和物 45,000 1 本 45,000 アガロースS 13,200 1 本 13,200 小計 149,700 小計 180,200 学会発表費 情報収集 学会発表 研修受講経費 学会発表費 情報収集 学会発表 研修受講経費 ( 仮 ) 臨床微生物学会参加費 78,200 ( 仮 ) 臨床微生物学会参加費 78,200 合計 税抜 331,700 合計 税抜 382,600 714,300 税込 358,236 税込 413,208 771,444 予算額 359 千円 予算額 414 千円 773 千円 9

宮城県保健環境センター課題評価結果報告書 平成 29 年 3 月 15 日 宮城県保健環境センター評価委員会 10

1 宮城県保健環境センター評価委員会開催状況 (1) 平成 28 年度第 1 回評価委員会平成 29 年 1 月 6 日 ( 金 ) 午後 1 時 30 分から午後 3 時 30 分まで宮城県保健環境センター大会議室 (2) 平成 28 年度第 2 回評価委員会平成 29 年 2 月 27 日 ( 月 ) 午後 1 時 30 分から午後 3 時まで宮城県保健環境センター大会議室 2 評価委員 氏 名 所 属 職 名 1 加藤徹 NPO 法人あぐりねっと21 理事長 2 齋藤紀行 東北生活文化大学短期大学部生活文化学科教授 3 白川愛子 宮城大学食産業学部フードビジネス学科准教授 〇 4 多田千佳 東北大学農学研究科環境システム生物学分野准教授 5 福島美智子 石巻専修大学理工学部食環境学科教授 6 村田功 東北大学大学院環境科学研究科准教授 7 山田一裕 東北工業大学工学部環境エネルギー学科教授 50 音順 印は委員長 印は副委員長 3 評価対象課題 ( 事前評価 ) 整理番号 研究区分担当部名研究課題名研究期間 1 経常研究微生物部市中における薬剤耐性腸内細菌科細菌の実態調査 H29-30 11

4 評価方法平成 28 年度第 1 回評価委員会では, 事前配布された課題評価調書等に基づき, 保健環境センターから課題に関する説明を受け, 質疑応答を行った上で各評価委員が評価を行いました 第 2 回評価委員会では, 各評価委員の評価結果を元にとりまとめた課題評価結果報告書案の内容について審議しました なお, 評価項目と総合評価基準は以下のとおりです 評価項目 事前評価 課題の重要性 必要性 計画の妥当性 成果及びその波及効果 項目別評価基準 評価 事前評価 5 高い 4 やや高い 3 普通 2 やや低い 1 低い 総合評価基準 評価 AA A B C D 事前評価計画は極めて優れている計画は優れている計画は妥当である計画の一部に課題がある計画の見直しが必要である 12

5 評価結果 整理番号 1 研究区分経常研究研究期間平成 29~30 年度 研究課題名市中における薬剤耐性腸内細菌科細菌の実態調査 Ⅰ 項目別評価 評価項目 評価 5 4 3 2 1 平均 課題の重要性 必要性 4 3 5 計画の妥当性 5 2 4 成果及びその波及効果 5 2 4 項目別評価評価基準 5: 高い 4: やや高い 3: 普通 2: やや低い 1: 低い Ⅱ 総合評価 評価 AA A B C D 平均 評価結果 総合評価 6 1 A 総合評価評価基準 AA: 計画は極めて優れている A: 計画は優れている B: 計画は妥当である C: 計画の一部に課題がある D: 計画の見直しが必要である Ⅲ 意見等 調査項目への健常者検便提供者の居住地, 入院歴, 渡航歴 ( 渡航先 ) 等の追加について検討すること 匿名性が確保できる範囲で地域分布や年齢による違いなどが分かる解析を行うこと 仙台市との共同研究等により仙台市を含めた県全体を対象とした調査とすること 県内の医療機関等において検出された薬剤耐性菌の種類及び検出率の変動等についての情報を入手し, 本調査結果と比較し考察すること 調査結果がもたらす緊要性によっては, 詳細調査に移行することも念頭に入れ, 個人 情報取扱とその手続きに係る調整 検討を本研究と併行して進めること 県民に対し, 正しい理解につながる分かりやすい説明をすること 13