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2) 飼養管理放牧は 5 月から 11 月の期間中に実施した 超音波検査において受胎が確認された供試牛は 適宜退牧させた 放牧開始時および放牧中 3 週間毎に マダニ駆除剤 ( フルメトリン 1 mg/kg) を塗布した 放牧には 混播永年草地 2 区画 ( 約 2 ha 約 1 ha) を使用し

BUN(mg/dl) 分娩後日数 生産性の良い牛群の血液データを回収 ( 上図は血中尿素窒素の例 ) 各プロットが個々の牛のデータ BUN(mg/dl) BUN(mg/dl)

Microsoft Word - 02肉牛研究室

25 岡山農総セ畜研報 4: 25 ~ 29 (2014) イネ WCS を主体とした乾乳期飼料の給与が分娩前後の乳牛に与える影響 水上智秋 長尾伸一郎 Effects of feeding rice whole crop silage during the dry period which exp

焼酎粕飼料を製造できることを過去の研究で明らかにしている ( 日本醸造協会誌 106 巻 (2011)11 号 p785 ~ 790) 一方 近年の研究で 食品開発センターが県内焼酎もろみから分離した乳酸菌は 肝機能改善効果があるとされる機能性成分オルニチンを生成することが分かった 本研究では 従来

( 図 7-A-1) ( 図 7-A-2) 116

徳島県畜試研報 No.14(2015) 乾乳後期における硫酸マグネシウム添加による飼料 DCAD 調整が血液性状と乳生産に及ぼす影響 田渕雅彦 竹縄徹也 西村公寿 北田寛治 森川繁樹 笠井裕明 要 約 乳牛の分娩前後の管理は産後の生産性に影響を及ぼすとされるが, 疾病が多発しやすい時期である この時

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H25.18

れた。

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乳牛の繁殖技術と生産性向上

( 図 2-A-2-1) ( 図 2-A-2-2) 18

Microsoft Word - 宮崎FMDマニュアル⑦ 指針別紙(評価)

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たまみつしげ 2 黒毛和種 琴照重 及び褐毛和種 球光重 ETI が優秀な成績を収めて 種雄牛として選抜される 鳥取牧場で作出した黒毛和種の種雄牛 琴照重 が 産子の肥育成績を調べる現場後代検定により選抜され 精液の供給が始まりました 琴照重 は 同時期に検定を実施した種雄牛 23 頭中 脂肪交雑

農業高校における繁殖指導とミニ講座による畜産教育支援 大津奈央 中島純子 長田宣夫 飯田家畜保健衛生所 1 はじめに 管内の農業高校では 教育の一環とし て 繁殖雌牛4頭を飼育し 生徒が飼養 いた また 授業外に班活動として8名が畜 産部に所属していた 管理を担うとともに 生まれた子牛を県 飼養管理

Taro-④H24成績書『(イ)肉用牛への給与技術の確立 ①繁殖雌牛・子牛への給与技術の確立』【校正済み】

現在 本事業で分析ができるものは 1 妊娠期間 2 未経産初回授精日齢 3 初産分娩時日齢 / 未経産妊娠時日齢 4 分娩後初回授精日 5 空胎日数 6 初回授精受胎率 7 受胎に要した授精回数 8 分娩間隔 9 供用年数 / 生涯産次 10 各分娩時月齢といった肉用牛繁殖農家にとっては 極めて重要

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渡邉 熊谷 野口 前田 小西 材料および方法 1. 供試牛, 給与飼料および飼料成分供試した牛群は家畜改良センター鳥取牧場で繋養されている臨床的に健康な黒毛和種繁殖経産乾乳牛であり, 飼養管理方法 ( 給与飼料や飼料給与方法 ) が異なる 2 群 (1 群 15 頭 ) とした.1 群は自場産のイタ

ふくしまからはじめよう 農業技術情報 ( 第 39 号 ) 平成 25 年 4 月 22 日 カリウム濃度の高い牧草の利用技術 1 牧草のカリウム含量の変化について 2 乳用牛の飼養管理について 3 肉用牛の飼養管理について 福島県農林水産部 牧草の放射性セシウムの吸収抑制対策として 早春および刈取

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通常 繁殖成績はなかなか乳量という生産性と結びつけて考えることが困難なのですが この平均搾乳日数という概念は このように素直に生産性 ( 儲け ) と結びつけて考えることができます 牛群検定だけでなく色々な場面で非常に良く使われている数値になりますので覚えておくと便利です 注 1: 平均搾乳日数平均

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ロペラミド塩酸塩カプセル 1mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにロペラミド塩酸塩は 腸管に選択的に作用して 腸管蠕動運動を抑制し また腸管内の水分 電解質の分泌を抑制して吸収を促進することにより下痢症に効果を示す止瀉剤である ロペミン カプセル

材料及び方法 1. 方法発情および発情直後を避けて プロジェステロンとエストロジェン徐放剤 (PRID TEIZO: あすか製薬株式会社 ) を挿入した (0 日目とする ) 4 日目に生理食塩水 ( 大塚生食注 : 大塚製薬株式会社 )50ml を溶媒とした FSH( アントリン R10: 共立製


(2) 牛群として利活用 MUNを利用することで 牛群全体の飼料設計を検討することができます ( 図 2) 上述したようにMUN は 乳蛋白質率と大きな関係があるため 一般に乳蛋白質率とあわせて利用します ただし MUNは地域の粗飼料基盤によって大きく変化します 例えば グラスサイレージとトウモコシ

農研機構畜産草地研究所シンポジウム|世界的なルーメンバイパスアミノ酸の利用

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14栄養・食事アセスメント(2)

平成 30 年度アグリ技術シーズセミナー in 沖縄 沖縄産資源を活用したヤギ用飼料の開発と 沖縄肉用ヤギのブランド化へ向けた研究 取組 琉球大学農学部長嶺樹

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分析にあたり 血統情報については 導入市場が 北海道 東北および九州と離れ 繁殖牛の母集団の血統情報に大きな差異が予測されるため 種雄牛のみを取り入れることとした ただし 遺伝的要因として取り上げた種雄牛に関して 後代産子牛が 2 頭以下の種雄牛については 本分析からは除外した すなわち 血液成分お

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スライド タイトルなし

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The Journal of Farm Animal in Infectious Disease Vol.2 No DELAYED PARTURITON AND INFLUENCE OF INDUCED PARTURITION ON CALVES 総 説 黒毛和種繁殖雌牛の分娩遅延の要

参考1中酪(H23.11)

黒毛和種の受動免疫による呼吸器病ワクチネーション効果と飼養管理 現場では時間的 労力的な制約から十分実施されることは少なく断続的に発生する呼吸器病の対応に苦慮する事例が多い また 黒毛和種は乳用種に比べ幼齢期の免疫能が劣る [5] のに加え ロボットでは運動量増に伴う栄養要求量の増加 闘争によるスト

薬株式会社 ) を挿入した (0 日目とする ) 4 日目に生理食塩水 ( 大塚生食注 : 大塚製薬株式会社 )50ml を溶媒とした FSH( アントリン R10: 共立製薬株式会社 ) 20AU を皮下 1 回投与し プロスタグランジン F2α 製剤を同時投与した 前報より ecg( 動物用セロ


11 ウシガラス化保存時のストロー内希釈液の種類と胚の生存性

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和歌山県農林水産試験研究機関研究報告第 1 号 20AU を皮下に 1 回投与するワンショット区と生理食塩水に溶解した合計 20AU の FSH を 3 日間にわたり減量投与する減量投与区の 2 区を設定し, 当場で飼養している分娩後 日後の黒毛和種経産牛 3 頭を用いて, 各処理を 3

部屋に収容した (40 羽 /3.3 平方メートル ) 表 1 試験区分 区 ( 性別 ) 羽数 飼 料 対照区 ( ) 52 通常 ( 市販飼料 ) 対照区 ( ) 52 通常 ( 市販飼料 ) 試験区 ( ) 52 高 CP(4~6w 魚粉 4% 添加 ) 試験区 ( ) 52 高 CP(4~6

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B 農場は乳用牛 45 頭 ( 成牛 34 頭 育成牛 7 頭 子牛 4 頭 ) を飼養する酪農家で 飼養形態は対頭 対尻式ストール 例年 BCoV 病ワクチンを接種していたが 発生前年度から接種を中止していた 自家産牛の一部で育成預託を実施しており 農場全体の半数以上の牛で移動歴があった B 農場

(3) 摂取する上での注意事項 ( 該当するものがあれば記載 ) 機能性関与成分と医薬品との相互作用に関する情報を国立健康 栄養研究所 健康食品 有効性 安全性データベース 城西大学食品 医薬品相互作用データベース CiNii Articles で検索しました その結果 検索した範囲内では 相互作用


和牛開始マニュアル

2015 年度 SFC 研究所プロジェクト補助 和食に特徴的な植物性 動物性蛋白質の健康予防効果 研究成果報告書 平成 28 年 2 月 29 日 研究代表者 : 渡辺光博 ( 政策 メディア研究科教授 ) 1

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「牛歩(R)SaaS」ご紹介

ータについては Table 3 に示した 両製剤とも投与後血漿中ロスバスタチン濃度が上昇し 試験製剤で 4.7±.7 時間 標準製剤で 4.6±1. 時間に Tmaxに達した また Cmaxは試験製剤で 6.3±3.13 標準製剤で 6.8±2.49 であった AUCt は試験製剤で 62.24±2

黒毛和種の一卵性双子の話 はじめに鳥取牧場を含め ( 独 ) 家畜改良センタ-の肉用牛牧場では肉用牛の育種改良や調査試験を行っています 特に一卵性双子を人為的に作り これを利用しての業務を進めています そこで 主に黒毛和種の一卵性双子に関連して 鳥取牧場や他の家畜改良センタ-の牧場が行った調査研究結

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学生による授業評価のCS分析

(1) 乳脂肪と乳糖の生成反芻動物である乳牛にとって最も重要なのはしっかりしたルーメンマットを形成することです そのためには 粗飼料 ( 繊維 ) を充分に与えることが重要です また 充分なルーメンマットが形成され微生物が活発に活躍するには 充分な濃厚飼料 ( でんぷん 糖 ) によりエネルギーを微

乳牛用の飼料給与診断ソフトウエア「DAIRY ver4.1」は乳牛の飼料給与診断・設計に

たかということになります 従って これからは妊娠率という考え方が必要になってくると考えています もちろん 受胎率という考え方を否定しているのではありません さて 畜産経営の中の繁殖を考える上で重要なことは 繰り返しになりますが受胎率ではなく妊娠率であると考えられます しかし 人工授精や受精卵移植を行

血糖値 (mg/dl) 血中インスリン濃度 (μu/ml) パラチノースガイドブック Ver.4. また 2 型糖尿病のボランティア 1 名を対象として 健康なボランティアの場合と同様の試験が行われています その結果 図 5 に示すように 摂取後 6 分までの血糖値および摂取後 9 分までのインスリ

津村漢方雑誌表紙_ol.ai

の獲得と実用化のための研究に乗り出すこととなった まず 1988 年に Johnson の指導のもとに日本で初めて本技術の導入を行い メーカーのエンジニアと綿密な打ち合わせを繰り返し 当団にとって初代のフローサイトメーターとなる EPICS-753 を導入した ( 図 3の1) この機種の精子選別速

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試験中 試験中 試験中 12 月下旬 試験中 試験中 試験中 12 月下旬 試験中 試験中 試験中 1 月中旬 試験中 試験中 試験終了 12 月中旬 試験中 試験中 試験中 1 月上旬 試験中 試験中 試験中 1

シプロフロキサシン錠 100mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにシプロフロキサシン塩酸塩は グラム陽性菌 ( ブドウ球菌 レンサ球菌など ) や緑膿菌を含むグラム陰性菌 ( 大腸菌 肺炎球菌など ) に強い抗菌力を示すように広い抗菌スペクトルを

検査項目情報 トータルHCG-β ( インタクトHCG+ フリー HCG-βサブユニット ) ( 緊急検査室 ) chorionic gonadotropin 連絡先 : 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10)

ハビリセンター 受精卵センター バイオマスセンター等の諸施設があり 人的組織としては和牛ヘルパー組合 和牛婦人部などがある 設立以来の主要な活動を挙げると 次のようになる 特長として 1 当初から行政が深く関わり 市役所のリーダーシップで行われてきた 2 農協を含め 全畜種を網羅し 地域全体をまとめ

あった AUCtはで ± ng hr/ml で ± ng hr/ml であった 2. バイオアベイラビリティの比較およびの薬物動態パラメータにおける分散分析の結果を Table 4 に示した また 得られた AUCtおよび Cmaxについてとの対数値

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検査項目情報 6475 ヒト TARC 一次サンプル採取マニュアル 5. 免疫学的検査 >> 5J. サイトカイン >> 5J228. ヒトTARC Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital Ver.6 thymus a


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負荷試験 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 検体ラベル ( 単項目オーダー時 )

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解 説 一方 乳成分にも違いが見られた 分娩後30日以内 産牛100頭規模の農場としている 損失額の計算は で乳脂肪率が5 を超える場合は栄養不足で体脂肪の ①雄子牛の出生頭数減少 雄子牛の売却減 ②雌子 過剰な動員が起こっていると判断できる この時期に 牛の出生頭数減少 更新牛購入コスト ③出荷乳

検査項目情報 1171 一次サンプル採取マニュアル 4. 内分泌学的検査 >> 4F. 性腺 胎盤ホルモンおよび結合蛋白 >> 4F090. トータル HCG-β ( インタクト HCG+ フリー HCG-β サブユニット ) トータル HCG-β ( インタクト HCG+ フリー HCG-β サブ

別影響の体外診断用医薬品製販業者名体外診断用医薬品販売名測定機器名測定機器 製販業者名表有無 1 アークレイファクトリー スホ ットケムⅡ スポットケム EZ SP-4430 アークレイファクトリー なし 2 アボットジャパン G3 血糖測定電極 プレシジョンPCx アボットジャパン なし 3 G3

1. はじめに肉用牛の飼養管理は, 頭数増加や飼育技術の進歩により変化する. たとえば, 農家当たりの飼養頭数増加は, 作業者数や 1 人当たりの作業時間に変化がなければ,1 頭当たりの作業時間を短縮させる. こうした状況は, 作業者数の増加や, 機械化による省力化を進めることで, 補うことが行われ

地域における継続した総合的酪農支援 中島博美 小松浩 太田俊明 ( 伊那家畜保健衛生所 ) はじめに管内は 大きく諏訪地域と上伊那地域に分けられる 畜産は 両地域とも乳用牛のウエイトが最も大きく県下有数の酪農地帯である ( 表 1) 近年の酪農経営は 急激な円安や安全 安心ニーズの高まりや猛暑などの

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報告書

32 金谷 脇本 滝本 : 育雛期からの飼料用籾米給与 するよう配合した 飼料の成分値は表 2 のとおり 2 供試鶏 35 日齢の採卵鶏雌ジュリア及びボリスブラウンをそれぞれ 100 羽導入し 1 週間飼育環境に馴致した後 43 日齢において 2 試験区各 50 羽に区分けし 278 日齢まで給与試

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

高齢者におけるサルコペニアの実態について みやぐち医院 宮口信吾 我が国では 高齢化社会が進行し 脳血管疾患 悪性腫瘍の増加ばかりでなく 骨 筋肉を中心とした運動器疾患と加齢との関係が注目されている 要介護になる疾患の原因として 第 1 位は脳卒中 第 2 位は認知症 第 3 位が老衰 第 4 位に

検査項目情報 1174 一次サンプル採取マニュアル 4. 内分泌学的検査 >> 4F. 性腺 胎盤ホルモンおよび結合蛋白 >> 4F090.HCGβ サブユニット (β-hcg) ( 遊離 ) HCGβ サブユニット (β-hcg) ( 遊離 ) Department of Clinical Lab

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岡山農総セ畜研報 6: 55 ~ 59 (2016) < 研究ノート > 黒毛和種における繁殖性向上を目指した飼料給与体系の検討 福島成紀 木曽田繁 滝本英二 Examination of the Feeding Method Aiming at Improving reproductive Performance in Japanese Black Cattle Naruki FUKUSHIMA, Shigeru KISODA and Eiji TAKIMOTO 要 約 畜産農家の生産性向上のためには 繁殖成績の向上が重要な要素である そのための飼養管理技術として 早期母子分離やホルモン処置による定時受精などが定着しつつあるが 繁殖性の改善に必ずしも繋がっていない 一方で飼料給与方式の改善により受胎成績の向上ができれば 容易にとりくめる技術となり得る そこで 人工授精時の受胎成績と関連のある飼料成分や血液成分等を調査し 繁殖成績の向上が期待できる簡易で効率的な飼料給与方法を検討した 1 受胎成績向上のための人工授精時の血液成分の適正値は NH3 < 70μg/dl BUN < 11mg/dl Glu 50mg/dl B/G < 0.2 であった 2 粗蛋白質充足率を変えた飼料を給与することで BUN をコントロールができることが確認できた 3 繁殖率向上のため 粗蛋白質充足率を 95 ~ 109% に調整した飼料を給与した区において 人工授精における高受胎率を得る可能性が示唆された 4 現地試験として 受胎率の低い農場において 簡易な給与飼料の見直し ( 高蛋白質飼料から圧片トウモロコシへの切換 ) による血液性状の適正化を図ることで 受胎成績の改善が図れた キーワード : 黒毛和種 血糖値 血液尿素態窒素 CP 充足率 緒 畜産農家の生産性向上のためには 繁殖成績の向上が重要な要素であるが 早期母子分離やホルモン処置による定時授精などの技術が繁殖性の改善に必ずしも繋がっていない 一年一産を実現するため 飼料給与による受胎率向上ができれば 容易に取り組める技術となり得る 近年 受精卵の採卵 移植において受胎率改善の報告が出されている 細川 1) は 黒毛和種受卵牛において移植前発情日から 28 日後まで非繊維性炭水化物 ( NFC) / 分解性摂取タンパク (DIP) が 5~ 6.5 なる飼料を給与することで高い受胎率が期待でき また 給与した NFC/DIP 比の指標として血液尿素態窒素 ( 以下 BUN) および BUN/ 血糖値 ( 以下 Glu) 比 ( 以下 B/G 比 ) が有用であると報告している また 渡邉ら 2) は 黒毛和種受胚牛の受胎率は可消化粗蛋白質 言 (DCP) の過剰摂取や DCP と NFC のアンバランスな場合に低下し 代謝プロファイルテストを基にした飼料設計で改善すると報告している しかし 黒毛和種人工授精時 ( 以下 AI 時 ) について給与飼料と血液成分 受胎率についての報告は少ない そこで 黒毛和種における AI 時の受胎成績に係る繁殖成績と関連のある飼料成分や血液成分等の検査項目を調査するとともに 繁殖成績の向上が期待できる簡易で効率的な飼料給与方法を検討したので報告する 試験 1 受胎成績に影響を及ぼす血液成分調査 平成 25 年 4 月 ~ 平成 26 年 9 月に当所で飼養する黒毛和種経産雌牛 73 頭について AI 時の血液

福島 木曽田 滝本 : 黒毛和種における繁殖性向上を目指した飼料給与体系の検討 成分が受胎成績に及ぼす影響を調査した (1) 給与飼料給与飼料は場内産低水分ロールサイレージおよび 繁殖牛用配合飼料 ( 子宝きらきら繁殖 : 西日本くみあい飼料製 ) を給与した (2) 調査項目血液成分 ( 血中アンモニア (NH3) Glu BUN 総コレステロール(T-cho) B/G 比 ) 及び繁殖成績 ( 受胎の有無 ) (3) 検査方法採血を給餌 4 時間後とし 血液成分の NH3 及び Glu は採血直後に全血を測定 (NH3: 測定器 ( 株 ) アークレイファクトリー製ポケットケム BA PA-4140 試薬血液検査用アンモニアキットアミチュック Glu: 測定器ニプロ ( 株 ) 製フリースタイルフリーダムライト試薬ニプロ FS 血糖センサーライト ) BUN 及び Tcho は採血後 1~2 時間 37 で加温し 遠心分離で得られた血清を測定 ( 富士フィルム ( 株 ) 富士ドライケム 4000V) した (4) 統計処理統計処理は血液検査値はF 検定による分散分析後にt 検定により有意差検定を行い 人工授精受胎率については χ 二乗検定をおこなった 3) Glu は 50mg/dl BUN/Glu 比は 0.2 のとき その値以上の牛群とその値未満の牛群の受胎率に有意な差がみられた ( 表 2) ことから AI 時の血液成分の適正値の目安になると思われた 表 1 受胎牛及び不受胎牛の血液成分比較 検査項目 受胎牛 (n=56) 不受胎牛 (n=84) NH3 μg/dl 71.14± 52.22 a 94.05± 63.88b Glu mg/dl 50.61± 5.75 a 47.51± 5.66c BUN mg/dl 9.75± 3.46 a 11.25± 3.39b T-cho mg/dl 107.66 ± 30.68 107.98 ± 25.24 BUN/Glu 比 0.19 ± 0.07 a 0.24 ± 0.08 c 検査項目 平均値 ± 標準偏差 a,b<0.05 a,c<0.01 表 2 血液検査項目値毎の受胎率受精頭数 受胎頭数 受胎率 NH 3 70> 68 33 48.5% a (μg/dl) 70 72 23 31.9% b BUN 11> 76 38 50.0% a 11 64 18 28.1% c Glu 50> 87 26 29.9% a 50 53 30 56.6% c BUN/Glu 0.2> 58 31 53.4% a 0.2 82 25 30.5% c a,b<0.05 a,c<0.01 試験 2 飼料成分の変更による血液成分への影響 受胎牛と不受胎牛の AI 時における血液成分を比較した なお 試験期間中 4 回の AI においても不受胎であった牛は除き 延べ 140 回の成績を用いた うち 受胎は 56 回 不受胎は 84 回であった NH3 の平均値は 受胎牛 71.14±52.22μg/dl 不受胎牛 94.05±63.88μg/dl で 危険率 5 % 水準で受胎牛が有意に低かった Glu の平均値は 受胎牛 50.61±5.75mg/dl 不受胎牛 47.51±5.66mg/dl で 危険率 1 % 水準で受胎牛が有意に高くなった BUN の平均値は 受胎牛 9.75±3.46mg/dl 不受胎牛 11.25±3.39mg/dl で 危険率 5 % 水準で受胎牛が有意に低くなった T-cho の平均値は 受胎牛 107.66±30.68mg/dl 不受胎牛 107.98±25.24mg/dl で 有意な差はなかった BUN/Glu 比の平均値は 受胎牛 0.19±0.07 不受胎牛 0.24±0.08 で 危険率 1% 水準で受胎牛が有意に低かった ( 表 1) AI 時における 受胎の目安となる各血液成分値毎の検査数値から受胎のための適正値を検討したところ NH3 は 70μg/dl BUN は 11mg/dl 高蛋白飼料多給など 飼養条件が悪く 血液成分が良好でない牛に対し 受胎率の向上を目指した飼料給与方法を検討するため 所内で飼養する黒毛和種経産雌牛 18 頭を用い 飼料の給与内容が受胎率へ与える影響を調査した (1) 試験方法基準発情時から高蛋白質飼料 ( 高 CP:199%) を給与し 雌牛の BUN を高値にした 次回発情 (21 日後 ) から 異なる蛋白水準の飼料 ( 高 CP :199 % 中 CP:140 % 低 CP:128 %) を給与し 3 回目の発情時に人工授精を実施した 飼料は人工授精後 1 週間まで継続し その後通常飼料に戻した 人工授精後 30 日の妊娠鑑定により受胎の有無を確認した (2) 給与飼料試験に用いた給与飼料は 全て購入飼料とし スーダングラス ヘイキューブ 大豆粕 圧片トウモロコシ及び繁殖牛用配合飼料 ( 子宝きらきら繁殖 ) を用い 供試牛の体重から 日本飼養標準 ( 肉用牛 ) 4) を用いて算出し 表 3 の通りとした また 試験区のスケジュールは表 4 のとおり実施した (3) 調査項目試験 1 と同様 (4) 検査方法試験 1 と同様 (5) 人工授精

岡山県農林水産総合センター畜産研究所研究報告 第 6 号 AI は AM/PM 法により行い 精液は義勝成 ( 岡山県基幹種雄牛 ) の凍結精液を用いた 表 3 給与飼料の充足率 (%) 飼料内容 CP TDN DM 高 CP 199 130 111 中 CP 140 127 110 低 CP 128 131 110 表 4 試験区と飼料給与スケジュール 試験区 開始 発情 AI 1 高 CP 2 高 CP 中 CP 3 低 CP 3 週間 3 週間 1 週間 各試験区の血液成分の推移を図 1~3 に示した Glu は CP 充足率変更による差は認められなかった ( 図 1) BUN は 高 CP 充足飼料の給与開始後増加し 15mg/dl 前後となった 発情後に試験区分により 20.0 15.0 10.0 5.0 0.0 60.0 55.0 50.0 45.0 40.0 35.0 30.0 25.0 20.0 試験区 1 試験区 2 試験区 3 0 日 1 週間 2 週間発情後 2 週間前 1 週間前 AI 1 週間後 図 1 飼料給与内容の変更による GLU の推移 25.0 図 2 0.45 0.40 0.35 0.30 0.25 0.20 0.15 0.10 0.05 0.00 図 3 0 日 1 週間 2 週間発情後 2 週間前 1 週間前 AI 1 週間後 飼料給与内容の変更による BUN の推移 試験区 1 試験区 2 試験区 3 試験区 1 試験区 2 試験区 3 0 日 1 週間 2 週間発情後 2 週間前 1 週間前 AI 1 週間後 飼料給与内容の変更による B/G の推移 給与飼料を変更することで CP 充足率が低いほど BUN が低値となり 飼料中 CP 充足率により BUN のコントロールが可能と考えられた ( 図 2) B/G は 高 CP 充足飼料の給与開始後増加し 3 週間後には 0.3 前後となった その後の飼料の変更により BUN と同様の傾向を示した ( 図 3) 本試験による受胎率は 試験区 1 で 50 %(3/6 頭 ) 試験区 2 で 50 %(3/6 頭 ) 試験区 3 で 16.7 %(1/6 頭 ) となった 試験 3 飼料成分の調整による受胎率調査 試験 2 の試験区 3 で高 CP 充足率飼料から低 CP 充足率飼料に変更し 急激に血液成分を変動させたことにより受胎率が低下したと考えられたため 通常飼料から 蛋白充足率調整し 血液成分と受胎率の影響を調査した (1) 試験方法所内で飼養する黒毛和種経産雌牛 12 頭を用い 調査は牛の発情時から開始し 次の発情時で AI し 1 週間後まで調整飼料を給与 AI 後 30 日で妊娠鑑定を実施した (2) 試験区試験は給与飼料を場内産 3 番草ロール ( 試験中は同一ロット ) 及び繁殖牛用配合飼料で構成した区 ( 試験区 4:CP 充足率 109%) と場内産 3 番草ロール 繁殖牛用配合飼料及び圧片トウモロコシで構成した区 ( 試験区 5:CP 充足率 95%) で実施した (3) 給与飼料給与飼料は 試験 2 と同様に供試牛の体重から 日本飼養標準 ( 肉用牛 ) 4) を用いて算出した ( 表 5) (4) 飼料成分分析飼料成分分析は 一般成分分析を所内で行った (5) 調査項目試験 1 と同様 (6) 検査方法試験 1 と同様 (7) 人工授精 AI は試験 2 と同様に AM/PM 法により行い 精液は義勝成 ( 岡山県基幹種雄牛 ) の凍結精液を用いた 表 5 試験区分と飼料成分 試験区 CP TDN DM 4 109 97 83.7 5 95 104 84.3

福島 木曽田 滝本 : 黒毛和種における繁殖性向上を目指した飼料給与体系の検討 各試験区の血液成分の推移を図 4~7に示した NH3 は 試験区 4では AI1 週間前以降試験 1の適正値よりも高い 70μg/dl 以上 ( 75.7 ~ 78.3μg/dl) で推移し 試験区 5でははぼ適正値の 70μg/dl 以下で推移したが AI 1 週間後に 98μg/dl となった ( 図 4) Glu は 両区とも試験 1の適正値 50mg/dl より低めに推移し AI 時ほぼ同値であったが AI3 週間前から1 週間前までは試験区 4が高値で推移した ( 図 5) BUN は両区とも試験 1の適正値 11mg/dl 以下となったが 試験区 5で開始後から減少して推移し 試験区 4はほとんど変化がみられなかったが (μg/dl) 120.0 100.0 80.0 60.0 40.0 20.0 0.0 55.0 50.0 45.0 40.0 35.0 30.0 図 4 NH3 の推移 図 5 GLU の推移 12.0 10.0 8.0 6.0 4.0 2.0 図 6 BUN の推移 AI 時は 10mg/dl 以下に減少し 試験区 5 と近い値となった ( 図 6) B/G は試験区 5 が比較的早く減少し 減少値も大きいが AI 時には両区で試験 1 の適正値である 0.2 以下となった ( 図 7) 受胎率は試験区 4 で 100 %(6/6 頭 ) 試験区 5 で約 66.7 %(4/6 頭 ) と両区とも高くなった 0.25 0.20 0.15 0.10 0.05 図 7 B/G の推移 試験 4 現地実証試験 受胎率が低く BUN が高い牛群を飼養する農場 ( 繁殖牛 30 頭規模 ) において 飼料の変更による受胎率の向上を試みた 供試牛は分娩後放牧され 約 1 ヶ月後に下牧し 次の飼料を給与されていた 試験前 : 濃厚飼料 大豆皮 ふすま サイレージ ( イタリアン / 稲ワラ ) 試験中 : 高 CP 飼料 ( 大豆皮 ふすま ) を低 CP 飼料の圧片トウモロコシに置き換え 試験用飼料とした 試験飼料 : 濃厚飼料 圧片トウモロコシ サイレージ ( イタリアン / 稲ワラ ) また全期間を通じサプリメント ( とまるちゃん :( 株 ) 化学飼料研究所製 ) を給与されていた 調査項目と検査方法は試験 1 と同様に行った 表 6 及び 7 に対象の試験農場における調査牛の血液性状と人工授精による受胎状況を示した 調査牛群の飼料変更は 7 月の採血後におこない その後試験飼料を継続給与した 試験牛の血中 NH3 Glu 及び Tcho は試験飼料給与による変化はみられなかったが BUN は変更前の 12.2mg/dl から変更後に 6.9mg/dl と減少し その後も 10mg/dl 以下で推移した また B/G は変更前の 0.25 から変更後に 0.16 と減少し 同様

岡山県農林水産総合センター畜産研究所研究報告 第 6 号 に推移した 人工授精による受胎率は 飼料変更前の 42.9 % から 飼料変更後は 66.7 % と約 24 % 上昇した 表 6 7 月 8 月 9 月 10 月上旬 10 月下旬 NH3(μg/dl) 50.2 45 48.6 25.3 26.2 Glu 48 43.6 45 47.6 49.6 BUN 12.2 6.9 9.7 6.4 8.3 Tcho 107.2 114.4 109.4 114.3 113.6 B/G 0.25 0.16 0.22 0.14 0.17 表 7 試験牛群の血液性状 飼料変更による受胎率 まとめ 6~7 月 8 月以降 人工授精 (AI) 数 7 12 受胎数 3 8 受胎率 42.9 66.7 本試験では黒毛和種繁殖雌牛の繁殖成績と血液成分の関連 また給与飼料の簡易な変更で血液成分を適正化し 繁殖成績の向上に繋がる飼料給与方法を検討した 試験 1により AI の受胎 不受胎の成績と AI 時の血液成分のうち NH3 BUN 及び Glu において有意な差があり AI 時の受胎に影響する指標値として NH3 < 70μg/dl Glu 50mg/dl BUN < 11mg/dl B/G < 0.2 の値となったが これは黒毛和種受胚牛の血液適正値は NH3 < 50μg/dl BUN < 13mg/dl B/G < 0.2 とする細川 5) の報告とほぼ同様の結果であった 試験 2で高 CP 充足率の飼料を給与することで BUN の値が上昇し 低 CP 充足率の飼料を給与することで低下したことから 給与飼料中の CP 充足率により BUN のコントロールが可能であった しかし 高 CP 充足率飼料から低 CP 充足率飼料給与に切り換えた試験区 3で 血液成分は適正値であったが 受胎率が低くなった 急激な飼料給与内容の変更が影響したと考えられた 試験 3では 通常の飼料給与から CP 充足率をを調整した飼料の給与では 両試験区とも BUN は適正値で推移し B/G は AI 時に適正値となり 高い受胎率が得られた Glu は試験期間を通し 50mg/dl 以下であったが AI 時に 49mg/dl 以上と適正値に近い値であった このことから AI 前からの給与飼料内容により 受胎率を改善できる可能性が示唆された 試験 4では 現地試験として 受胎率がやや低い農場において AI 実施時期前から高 CP 飼料 を低 CP 飼料の圧片トウモロコシに置き換えることで 簡単な給与飼料の見直しによる受胎率の改善に取り組み 受胎成績の向上を図ることができた 以上のことから 人工授精前から飼料管理方法の簡易な変更により CP 充足率を調整することで 牛の血液性状を改善し 受胎率を向上できる可能性が示唆された 引用文献 1) 細川泰子.2008. 受胎率向上のための黒毛和種受胚牛の飼料給与プログラムと血液検査指標値. 平成 21 年度岩手県農業研究センター研究成果. 2) 渡邉貴之, 小西一之, 野口浩正, 大福浩輝, 岡田啓司.2012. 黒毛和種受胚牛への高蛋白質飼料給与が栄養状態と受胎率に及ぼす影響. 産業動物臨床医学雑誌.3(1):7-12 3) 吉田実.1975. 畜産を中心とする実験計画法. 4) 日本飼養標準 ( 肉用牛 ).2008. 5) 細川泰子.2007. 受精卵移植時の血液検査値と受胎率 糞便 ph との関係. 平成 20 年度岩手県農業研究センター研究成果.

福島 木曽田 滝本 : 黒毛和種における繁殖性向上を目指した飼料給与体系の検討