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C 型慢性肝炎に対するテラプレビルを含む 3 剤併用療法の 有効性 安全性等について 1. 有効性及び対象について セログループ 1 のC 型慢性肝炎に対する ペグインターフェロン リバビリン及びテラプレビル3 剤併用療法 ( 以下単に 3 剤併用療法 という ) の治療効果 (SVR 率 ) は 初回治療例 再治療例ともに既存治療と比べて高いと報告されている 初回治療例 再治療例ともに3 剤併用療法の治療効果 (SVR 率 ) は 24 週治療群と 48 週治療群の間で有意差を認めなかったと報告されている 注 )SVR 率 (sustained virological response): 治療終了後 6ヶ月の時点まで HCV-RNA 陰性が持続している割合 科学的根拠 ( 代表的論文 ) 1 Telaprevir for previously untreated chronic hepatitis C virus Ira M.Jacobson et al. N Engl J Med 2011;364:2405-2416 ⅰ Genotype1 の肝生検で証明されているC 型慢性肝炎の初回治療例 1088 例を対象にしたランダム化比較試験 (phase 3) T12PR 群 ; Peg-IFN alfa-2a+ribavirin+ Telaprevir を 12 週投与 その後 Peg-IFN alfa-2a+ribavirin を 12 週 ( 最初の 12 週でウイルスが陰性化しなければ計 36 週 ) 投与する群 :363 例 T8PR 群 ; Peg-IFN alfa-2a+ribavirin+telaprevir を 8 週投与 その後 Placebo+Peg-IFN alfa-2a+ Ribavirin を 4 週 続けて Peg-IFN alfa-2a+ribavirin を 12 週 ( 最初の 12 週でウイルスが陰性化しなければ計 36 週 ) 投与する群 :364 例 PR 群 ; Placebo+Peg-IFN alfa-2a+ribavirin を 12 週 続けて Peg-IFN alfa-2a+ribavirin を 36 週投与する群 :361 例 ⅱ プライマリエンドポイントの SVR は それぞれ T12PR 群 :75% T8PR 群 :69% PR 群 :44% であり Telaprevir を含む3 剤併用群がペグリバ併用群より有意に高かった (P<0.001) 2 Telaprevir for retreatment of HCV Stefan Zeuzem et al. N Engl J Med 2011;364:2417-2428

ⅰ Genotype1 の肝生検で証明されているC 型慢性肝炎で 前治療の Peg-Interferon +Ribavirin に対する Relapse 例または PR NR 例の 663 例を対象にしたランダム化比較試験 (phase 3) T12PR48 群 ; Peg-IFN alfa-2a+ribavirin+telaprevir を 12 週投与 その後 Peg-IFN alfa-2a+ribavirin を 36 週投与する群 :266 例 lead-in T12PR48 群 ; まず Peg-IFN alfa-2a+ribavirin を 4 週 その後 Peg-IFN alfa-2a+ribavirin+ Telaprevir を 12 週投与 続いて Peg-IFN alfa-2a+ribavirin を 32 週投与する群 : 264 例 PR48 群 ; Peg-IFN alfa-2a+ribavirin を 48 週投与する群 :133 例 ⅱ 全体の SVR は それぞれ T12PR48 群 :64% lead-in T12PR48 群 :66% PR48 群 : 17% であり ペグリバ併用群に比して Telaprevir を含む3 剤併用群で有意に高率であった (P<0.001) また 前治療への反応別では Relapse 例での SVR はそれぞれ 83% 88% 24% PR+NR 例の SVR はそれぞれ 41% 41% 9% であった 3 Telaprevir with peginterferon and ribavirin for chronic HCV Genotype 1 John G McHutchinson et al. N Engl J Med 2009;360:1827-1838 ⅰ Genotype1の肝生検で証明されているC 型慢性肝炎の初回治療例 250 例を対象にしたランダム化比較試験 (phase 2) T12PR24 群 ; Peg-IFN alfa-2a+ribavirin+ Telaprevir を 12 週投与 その後 Peg-IFN alfa-2a+ribavirin を 12 週投与する群 : 79 例 T12PR48 群 ; Peg-IFN alfa-2a+ribavirin+telaprevir を 12 週投与 その後 Peg-IFN alfa-2a+ribavirin を 36 週投与する群 :79 例 T12PR12 群 ; Peg-IFN alfa-2a +Ribavirin+Telaprevir を 12 週投与する群 :17 例 PR48 群 ; Peg-IFN alfa-2a+ Ribavirin を 48 週投与する群 :75 例 ⅱ SVR は それぞれ T12PR24 群 :61% T12PR48 群 :67% T12PR12 群 :35% PR48 群 : 41% であり ペグリバ併用群に比して Telaprevir を含む3 剤併用群 (T12PR12 群を除く ) で有意に高率であった (P=0.02 P=0.002) 4 Telaprevir and peginterferon with or without ribavirin for chronic HCV Christophe Hezode et al. N Engl J Med 2009;360:1839-1850 ⅰ Genotype1の肝生検で証明されているC 型慢性肝炎の初回治療例 334 例を対象にしたランダム化比較試験 (phase 2) T12PR12 群 ; Peg-IFN alfa-2a+ribavirin+ Telaprevir を 12 週投与する群 :84 例 T12PR24 群 ; Peg-IFN alfa-2a+ribavirin+ Telaprevir を 12 週投与 その後 Peg-IFN alfa-2a+ribavirin を 12 週投与する群 : 83 例 T12P12 群 ; Peg-IFN alfa-2a+telaprevir を 12 週投与する群 :82 例 PR48 群 ; Peg-IFN alfa-2a+ribavirin を 48 週投与する群 :85 例 ⅱ SVR は それぞれ T12PR12 群 :60% T12PR24 群 :69% T12P12 群 :36% PR48 群 : 46% であり PR48 群と比較して SVR が有意に高率であったのは T12PR24 群 :69% のみ

であった (P=0.004) 5 Telaprevir for previously treated chronic HCV John G. McHutchinson et al. N Engl J Med 2010;362:1292-1303 ⅰ Genotype1の肝生検で証明されているC 型慢性肝炎で 前治療の Peg-Interferon +Ribavirin に対する Relapse 例 Breakthrough 例 及び NR 例の 453 例を対象にしたランダム化比較試験 (phase 2) T12PR24 群 ; Peg-IFN alfa-2a+ribavirin+ Telaprevir を 12 週投与 その後 Peg-IFN alfa-2a+ribavirin を 12 週投与する群 : 115 例 T24PR48 群 ; Peg-IFN alfa-2a+ribavirin+telaprevir を 24 週投与 その後 Peg-IFN alfa-2a+ribavirin を 24 週投与する群 :113 例 T24P24 群 ; Peg-IFN alfa-2a+ Telaprevir を 24 週投与する群 :111 例 PR48 群 ; Peg-IFN alfa-2a+ribavirin を 48 週投与する群 :114 例 ⅱ SVR は それぞれ T12PR24 群 :51% T24PR48 群 :53% T24P24 群 :24% PR48 群 : 14% であり Telaprevir を含む3 剤併用療法の2 群で既存治療の PR 群より有意に高率であった (P<0.001) また 前治療への反応別では Relapse 例での SVR はそれぞれ 69% 76% 42% 20% Breakthrough 例での SVR はそれぞれ 57% 62% 36% 40% 及び NR 例での SVR はそれぞれ 39% 38% 11% 9% であった 6 Telaprevir is effective given every 8 or 12 hours with ribavirin and peginterferon alfa-2a or -2b to patients with chronic hepatitis C. Patrick Marcellin et al. Gastroenterology 2011;140:459-468 ⅰ Genotype1の肝生検で証明されているC 型慢性肝炎の初回治療例 161 例を対象にしたランダム化比較試験 (phase 2) で投与期間はいずれも 3 剤併用 12 週のあとに Peg-IFN alfa-2a+ribavirin を 12 または 36 週投与する q8h alfa-2a 群 ;Peg-IFN alfa-2a+ribavirin+ Telaprevir 750mg を 8 時間毎 :40 例 q8h alfa-2b 群 ; Peg-IFN alfa-2b+ribavirin+ Telaprevir 750mg を 8 時間毎 :42 例 q12h alfa-2a 群 ; Peg-IFN alfa-2a+ribavirin+ Telaprevir 1125mg を 12 時間毎 :40 例 q12h alfa-2b 群 ; Peg-IFN alfa-2b+ribavirin+telaprevir 1125mg を 12 時間毎 :39 例 ⅱ SVR はそれぞれ q8h alfa-2a 群 :85% q8h alfa-2b 群 :81% q12h alfa-2a 群 : 82.5% q12h alfa-2b 群 :82.1% であり 治療群間に差は認めなかった また Telaprevir の投与法別 (q8h 又は q12h) Peg-IFN の種類別 (alfa-2a 又は alfa2b) でみても SVR に有意差はみられなかった 7 Telaprevir with peginterferon and ribavirin for treatment-naïve patients chronically infected with HCV of genotype 1 in Japan. Hiromitsu Kumada et al. Journal of Hepatology 2011; in press ⅰ Genotype1のC 型慢性肝炎の初回治療例 161 例を対象にしたランダム化比較試験

T12PR24 群 ;Peg-IFN alfa-2a+ribavirin+ Telaprevir を 12 週投与 その後 Peg-IFN alfa-2a+ribavirin を 12 週投与する群 :126 例 PR48 群 ;Peg-IFN alfa-2a+ribavirin を 48 週投与する群 :63 例 ⅱ SVR は それぞれ T12PR24 群 :73% PR48 群 :49.2% であり Telaprevir を含む3 剤併用療法群で既存治療の PR 群より有意に高率であった (P=0.002) 2. 安全性について 副作用による治療中止例や重篤な副作用の報告は 3 剤併用療法の方が 既存治療と比較して多いと報告されている 3 剤併用療法の副作用としては 皮疹や高度の貧血が多いと報告されており 少数ではあるが Stevens-Johnson 症候群等の重篤な皮膚障害も報告されている 科学的根拠 ( 代表的論文 ) 1 Telaprevir for previously untreated chronic hepatitis C virus Ira M.Jacobson et al. N Engl J Med 2011;364:2405-2416 ⅰ Genotype1 の肝生検で証明されているC 型慢性肝炎の初回治療例 1088 例を対象にしたランダム化比較試験 (phase 3) ⅱ 副作用のために治療を中止した症例は それぞれ T12PR 群 :10% T8PR 群 :10% PR 群 :7% であった また重篤な有害事象は それぞれ 9% 9% 7% であった 2 Telaprevir for retreatment of HCV Stefan Zeuzem et al. N Engl J Med 2011;364:2417-2428 ⅰ Genotype1 の肝生検で証明されているC 型慢性肝炎で 前治療の Peg-Interferon+Ribavirin に対する Relapse 例または PR NR 例の 663 例を対象にしたランダム化比較試験 (phase 3) ⅱ 副作用のために治療を中止した症例は Telaprevir 群で 13% PR 群で 3% 重篤な有害事象は Telaprevir 群で 12% PR 群で 3% と Telaprevir 群で多かった 3 Telaprevir with peginterferon and ribavirin for chronic HCV Genotype 1 John G McHutchinson et al. N Engl J Med 2009;360:1827-1838 ⅰ Genotype1 の肝生検で証明されているC 型慢性肝炎の初回治療例 250 例を対象にし

たランダム化比較試験 (phase 2) ⅱ 副作用のために治療を中止した症例は Telaprevir 群で 21% PR 群で 11% 重篤な有害事象は Telaprevir 群で 10% PR 群で 5% と Telaprevir 群で多かった 重篤な有害事象のうち皮疹と貧血は Telaprevir 群のみで認めた 4 Telaprevir and peginterferon with or without ribavirin for chronic HCV Christophe Hezode et al. N Engl J Med 2009;360:1839-1850 ⅰ Genotype1 の肝生検で証明されているC 型慢性肝炎の初回治療例 334 例を対象にしたランダム化比較試験 (phase 2) ⅱ 副作用のために治療を中止した症例は Telaprevir 群で 12% PR 群で 7% であった 皮疹と皮膚掻痒症の副作用は Telaprevir 群で多く報告され 3 剤併用群の 7% が皮疹のために治療を中止したが 重篤な皮疹の発症例はみられなかった 5 Telaprevir for previously treated chronic HCV John G. McHutchinson et al. N Engl J Med 2010;362:1292-1303 ⅰ Genotype1 の肝生検で証明されているC 型慢性肝炎で 前治療の Peg-Interferon +Ribavirin に対する Relapse 例 Breakthrough 例 及び NR 例の 453 例を対象にしたランダム化比較試験 (phase 2) ⅱ 副作用のために治療を中止した症例は Telaprevir 群で 15% PR 群で 4% であり Telaprevir 群の中止理由では皮膚障害が最多であった Grade3 の副作用は それぞれ T12PR24 群 :17% T24PR48 群 :24% T24P24 群 :18% PR48 群 :11% であった 6 Telaprevir is effective given every 8 or 12 hours with ribavirin and peginterferon alfa-2a or -2b to patients with chronic hepatitis C. Patrick Marcellin et al. Gastroenterology 2011;140:459-468 ⅰ Genotype1 の肝生検で証明されているC 型慢性肝炎の初回治療例 161 例を対象にしたランダム化比較試験 (phase 2) ⅱ 全体で副作用のために治療を中止した例は 8.1% で 4.3% が皮疹 2.5% が貧血のために中止した また重篤な有害事象は 12.4% で報告され 貧血が 3.1% で最も多く 皮疹が 2.5% で続いた 7 Telaprevir with peginterferon and ribavirin for treatment-naïve patients chronically infected with HCV of genotype 1 in Japan. Hiromitsu Kumada et al. Journal of Hepatology 2011; ⅰ Genotype1のC 型慢性肝炎の初回治療例 161 例を対象にしたランダム化比較試験 ⅱ 副作用のために治療を中止した症例は Telaprevir 群で 16.7% PR 群で 22.2% であっ

た Grade3の貧血は Telaprevir 群のみで報告され 11.1% であった Grade2 以上の皮膚障害の副作用は T12PR24 群 :46.8% PR48 群 :23.8% と Telaprevir 群で多く報告され Telaprevir 群では Stevens-Johnson 症候群を含む重篤な皮膚障害が3 例報告された *Peg-IFN: ペグインターフェロン 3. 対応方針 C 型慢性肝炎に対する3 剤併用療法を医療費助成の対象とする 対象患者は HCV-RNA 陽性のC 型慢性肝炎で 肝がんの合併のない者とする 助成回数は1 回とする ただし 過去に3 剤併用療法以外のインターフェロン治療歴がある者も助成の対象とする 臨床試験において副作用による重篤な皮膚障害の発現が報告されていることから 3 剤併用療法の実施は 日本皮膚科学会皮膚科専門医 ( 日本皮膚科学会が認定する専門医主研修施設又は研修施設に勤務する者に限る ) と連携し 日本肝臓学会肝臓専門医が常勤する医療機関に限定することとする