女子バスケットボール選手における

Similar documents
Microsoft PowerPoint - 【逸脱半月板】HP募集開始150701 1930 2108 修正反映.pptx

対象 :7 例 ( 性 6 例 女性 1 例 ) 年齢 : 平均 47.1 歳 (30~76 歳 ) 受傷機転 運転中の交通外傷 4 例 不自然な格好で転倒 2 例 車に轢かれた 1 例 全例後方脱臼 : 可及的早期に整復

スライド 1

PMDA-WESTシンポv2-2.pptx

理学療法学43_supplement 1

膝蓋大腿関節 (PFJ) と大腿脛骨関節 (FTJ) Femur Tibia Patella

10035 I-O1-6 一般 1 体外衝撃波 2 月 8 日 ( 金 ) 09:00 ~ 09:49 第 2 会場 I-M1-7 主題 1 基礎 (fresh cadaver を用いた肘関節の教育と研究 ) 2 月 8 日 ( 金 ) 9:00 ~ 10:12 第 1 会場 10037

かかわらず 軟骨組織や関節包が烏口突起と鎖骨の間に存在したものを烏口鎖骨関節と定義する それらの出現頻度は0.04~30.0% とされ 研究手法によりその頻度には相違がみられる しかしながら 我々は骨の肥厚や軟骨組織が存在しないにも関わらず 烏口突起と鎖骨の間に烏口鎖骨靭帯と筋膜で囲まれた小さな空隙

肩関節第35巻第3号

臨床的な使用確認試験 評価表

<924A814092BC8EF72E656339>

018_整形外科学系

Microsoft PowerPoint - 膝のリハビリ 3.12 配布用.pptx

であった まず 全ての膝を肉眼解剖による解析を行った さらに 全ての膝の中から 6 膝を選定し 組織学的研究を行った 肉眼解剖学的研究 膝の標本は 8% のホルマリンで固定し 30% のエタノールにて保存した まず 軟部組織を残し 大腿骨遠位 1/3 脛骨近位 1/3 で切り落とした 皮膚と皮下の軟

本文/開催および演題募集のお知らせ

5 月 22 日 2 手関節の疾患と外傷 GIO: 手関節の疾患と外傷について学ぶ SBO: 1. 手関節の診察法を説明できる 手関節の機能解剖を説明できる 前腕遠位部骨折について説明できる 4. 手根管症候群について説明できる 5 月 29 日 2 肘関節の疾患と外傷 GIO: 肘関節の構成と外側

NCDデータを用いた全国消化器外科領域内視鏡手術の現況に関する調査結果(速報)

ACL ACL と半月板は線維がつながってい るので 両者は大きく関係してきます ACL 再建術もいろいろと行われてはいる けれども 逆に術者のレベルに大きな差が 出てきているのが現状です 他院で ACL 損傷の再建術を受けた患者さんが手術を 行ったにもかかわらず膝がグラグラ

1)表紙14年v0

2 片脚での体重支持 ( 立脚中期, 立脚終期 ) 60 3 下肢の振り出し ( 前遊脚期, 遊脚初期, 遊脚中期, 遊脚終期 ) 64 第 3 章ケーススタディ ❶ 変形性股関節症ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

CPP approach Conjoint tendon Preserving Posterior Surgical Technique

屈曲制限

腰痛症のしくみと説明

グスがうまく働かず 大腿四頭筋が優位でストップしているともいわれています ACL よく起きる足関節捻挫 = 前距腓靭帯 (ATF) 損傷は ACL 損傷と同じ靭帯損傷です しかし 足関節捻挫で手術になったという話はあまり聞かないと思います それは ACLは関節包内靭帯であるのに対して ATFは関節包

東邦大学学術リポジトリ タイトル別タイトル作成者 ( 著者 ) 公開者 Epstein Barr virus infection and var 1 in synovial tissues of rheumatoid 関節リウマチ滑膜組織における Epstein Barr ウイルス感染症と Epst

佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

2012 年度リハビリテーション科勉強会 4/5 ACL 術後 症例検討 高田 5/10 肩関節前方脱臼 症例検討 梅本 5/17 右鼠径部痛症候群 右足関節不安定症 左変形性膝関節症 症例検討 北田 月田 新井 6/7 第 47 回日本理学療法学術大会 運動器シンポジウム投球動作からみ肩関節機能

保存療法に抵抗する上腕骨内側上顆炎に対し手術療法を行った 3 例 表 1 症例のまとめ 症例 No 手術時年齢 患側 ( 利き腕 ) 右 ( 右 ) 両側 ( 右 ) 右 ( 右 ) 職業雑貨販売郵便局員運送業 スポーツ活動ゴルフ野球水泳 既往歴 高血圧症高脂血症 高

untitled

上原記念生命科学財団研究報告集, 28 (2014)

33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or

Arthroscopic Treatment for Painful Bennett Lesions of the Shoulder in Baseball Players by M. Yoneda and K. Hayashida Department of Orthopaedic Surgery

「手術看護を知り術前・術後の看護につなげる」

選考会実施種目 強化指定標準記録 ( 女子 / 肢体不自由 視覚障がい ) 選考会実施種目 ( 選考会参加標準記録あり ) トラック 100m 200m 400m 800m 1500m T T T T33/34 24

358 理学療法科学第 23 巻 3 号 I. はじめに今回は, 特にスポーツ外傷 障害の多い肩関節と膝関節について, 各疾患の診断を行ううえで重要な整形外科徒手検査法と徴候を中心に述べるので, 疾患については特に説明を加えないので, 成書を参照すること 1. 非外傷性肩関節不安定症 1 sulcu

足関節

関節リウマチ関節症関節炎 ( 肘機能スコア参考 参照 ) カルテNo. I. 疼痛 (3 ) 患者名 : 男女 歳 疾患名 ( 右左 ) 3 25 合併症 : 軽度 2 術 名 : 中等度 高度 手術年月日 年 月 日 利き手 : 右左 II. 機能 (2 ) [A]+[B] 日常作に

椎間板の一部が突出した状態が椎間板ヘルニアです 腰痛やあしに痛みがあります あしのしびれやまひがある場合 要注意です 対応 : 激しい運動を控えましょう 痛みが持続するようであれば 整形外科専門医を受診して 検査を受けましょう * 終板障害 成長期では ヘルニアとともに骨の一部も突出し ヘルニア同様

本文/開催および演題募集のお知らせ

著明な膝関節水腫を呈した両膝樹枝状脂肪腫の1例

外来在宅化学療法の実際

本研究の目的は, 方形回内筋の浅頭と深頭の形態と両頭への前骨間神経の神経支配のパターンを明らかにすることである < 対象と方法 > 本研究には東京医科歯科大学解剖実習体 26 体 46 側 ( 男性 7 名, 女性 19 名, 平均年齢 76.7 歳 ) を使用した 観察には実体顕微鏡を用いた 方形

000-はじめに.indd

PowerPoint プレゼンテーション

<4D F736F F D F90D290918D64968C93E08EEEE1872E646F63>

日本皮膚科学会雑誌第117巻第14号

大腸ESD/EMRガイドライン 第56巻04号1598頁

2015 年度手術のうちわけ ( 実績 ) セキツイ脊椎 ナンブソシキ軟部組織 椎間板摘出術 35 アキレス腱断裂手術 40 内視鏡下椎間板摘出 4 腱鞘切開術 ( 関節鏡下によるものを含む ) 0 シュコンカン 脊椎固定術 椎弓切除術 椎弓形成術 ( 多椎間又は多椎弓の場合を含む )( 椎弓形成

方向の3 成分を全て合成したもので 対象の体重で除して標準化 (% 体重 ) した 表 1を見ると 体格指数 BMI では変形無しと初期では差はなく 中高等度で高かった しかし 体脂肪率では変形の度合が増加するにつれて高くなっていた この結果から身長と体重だけで評価できる体格指数 BMI では膝 O

Japanese Society for Joint Diseases

TheShoulderJoint,2005;Vol.29,No.3: はじめに a 転位骨片を伴う関節窩骨折に対しては直視下に整復, 内固定を施行した報告が多いが, 鏡視下での整復固定の報告は比較的稀である. 今回我々は転位骨片を伴う関節窩骨折に腋窩神経麻痺を合併した1 例に対し,

手術予定登録_入力マニュアル


桜町病院対応病名小分類別 診療科別 手術数 (2017/04/ /03/31) D12 D39 Ⅳ G64 女性生殖器の性状不詳又は不明の新生物 D48 その他及び部位不明の性状不詳又は不明の新生物 Ⅲ 総数 構成比 (%) 該当無し Ⅰ 感染症及び寄生虫症 Ⅱ 新生物 C54 子宮体部

日本職業・災害医学会会誌第51巻第1号

院内がん登録における発見経緯 来院経路 発見経緯がん発見のきっかけとなったもの 例 ) ; を受けた ; 職場の健康診断または人間ドックを受けた 他疾患で経過観察中 ; 別の病気で受診中に偶然 がん を発見した ; 解剖により がん が見つかった 来院経路 がん と診断された時に その受診をするきっ

P01-16

愛知県理学療法学会誌(28巻2号).indd

高齢者と慢性運動器痛 性では 70% にみられ 全体として 2500 万人程度存在すると推測されている 女性に多いことと加齢とともに有病率が増加することが明らかであり 80 歳以上の女性では実に約 80% の方が X 線学的 OAを有する ( 図 1) X 線学的 OA があっても痛み症状を有するも

足底腱膜炎 ( 足の裏 ) 踵骨疲労骨折( 踵全体 ) アキレス腱付着部炎( 踵のうしろ ) 足の裏のしびれ 痛み足根管症候群母趾 ( 足の親ゆび ) が外を向いて 付け根が痛い外反母趾母趾の付け根がはれていたい そり返せない強剛母趾 それぞれの障害について 変形性足関節症 足関節の軟骨が磨耗して腫

< AE8C608A4F89C836362D322E696E6462>

平成 28 年度診療報酬改定情報リハビリテーション ここでは全病理に直接関連する項目を記載します Ⅰ. 疾患別リハビリ料の点数改定及び 維持期リハビリテーション (13 単位 ) の見直し 脳血管疾患等リハビリテーション料 1. 脳血管疾患等リハビリテーション料 (Ⅰ)(1 単位 ) 245 点 2

Oxford Partial Knee 手技書

Persona The Personalized Knee Brochure

07_学術_荷重位X線撮影法の違いによる_山口様.indd

急性期疾患の特徴と初期診断 四肢領域

要望番号 ;Ⅱ 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 1) 1. 要望内容に関連する事項 要望 者 ( 該当するものにチェックする ) 優先順位 学会 ( 学会名 ; 日本ペインクリニック学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 2 位 ( 全 4 要望中 )

<4D F736F F D F8D9892C595CF90AB82B782D782E88FC781458D9892C595AA97A382B782D782E88FC75F8D9892C58CC592E88F705F2E646F63>

<4D F736F F D CA48B8695F18D908F918C639CE496BC9171>

整形外科後期臨床研修プログラム

札幌鉄道病院 地域医療連携室だより           (1)

(4) 最小侵襲の手術手技である関節鏡視下手術の技術を活かし 加齢に伴う変性疾患に も対応 前述したようにスポーツ整形外科のスタッフは 日頃より関節鏡手技のトレーニングを積み重ねおります その為 スポーツ外傷 障害以外でも鏡視下手術の適応になる疾患 ( 加齢変性に伴う膝の半月板損傷や肩の腱板断裂など

Transcription:

スポーツ傷害 (J.Sports Injury)Vol.11:51-56 2006-51- 円板状半月損傷に対する半月温存手術 山田裕三 1), 中田研 2), 中村憲正 2), 田中美成 2) 1) ガラシア病院整形外科 2) 大阪大学整形外科 はじめに 膝関節の半月板は, 衝撃吸収, 荷重分散, 関節の滑動性維持, 安定性など多くの機能をもつ線維軟骨組織であるが, 血行に乏しく損傷半月板の治癒力は低いと言われている. そのため, 従来, 半月損傷の手術治療は半月切除術がよく行われていたが, 半月切除後の関節軟骨障害や変形性関節症などの問題点が指摘されている. 近年, 臨床および生体力学的に半月機能の重要性が注目されるようになり半月を温存する半月縫合術が推奨されるようになった 1). 半月縫合術のよい適応は, 半月外周辺部の血行野の縦断裂であるが, 円板状半月の場合, 血行野であっても繊維配列や血行が正常型半月と異なることや半月実質の変性を伴うことが多いことから縫合は困難とされてきた. そのため, 円板状半月損傷に対しては断裂の部位および形態にかかわらず全切除術もしくは亜全切除術が一般的に行われてきたが, 長期成績の問題点が指摘されている. 近年, 円板状半月に対しても半月機能温存を目指して円板状半月を正常型半月へ形成切除する術式や 2), 外周辺部に縦断裂を認める円板状半月に対して半月形成切除した上で外周辺部を縫合する術式が報告されているが 3), その術後成績は一定せず, 術式に関しては議論が分かれるところである. 円板状半月板を半月状半月に形成することによって大腿 脛 骨関節面の適合性は低下することが危惧される. 本シリーズでは大腿 脛骨関節が円板状半月を介して適合していると考え, 体部に変性がない場合には半月形成切除は追加せず縫合術のみを施行し円板状半月温存を図った. 本研究の目的は, 我々がおこなった円板状半月損傷に対する温存手術の成績を調査し, 円板状半月損傷の手術治療の選択を検討することである. 対象と方法 1) 対象 2002 年以降に当施設および関連病院にて円板状半月損傷と診断され関節鏡視下に手術を行った91 膝中,12 膝に対して形成切除を行わずに外周辺部損傷のみを縫合する術式を行った. 治療法については術前に患者に保存療法と手術療法について説明し, また術式については切除術や切除縫合術など他の治療法とともに本治療について説明し承諾を得た上で行なった. 半月温存手術の適応は, 明らかな外傷を契機に膝関節痛もしくはsnapping が出現し,MRIで円板状半月の外周辺部に縦断裂を認めるが体部に変性所見がなく, 関節鏡視所見でも体部に損傷がない症例とした ( 図 1).

-52- 図 1 症例の内訳は,Watanabe 分類による完全型 円板状半月が 8 膝, 不完全型円板状半月が 4 膝, 手術時年齢は 10 才 -50 才 ( 平均 20 才 ), 受傷か ら手術までの期間は 3 ヶ月以内の症例が 6 膝,3 ヶ月を超える症例は 6 膝であった. 経過観察期 間は 6 ヶ月 -3.5 年 ( 平均 21 ヶ月 ) であった ( 表 1). Type of Interval from injury Follow-up period No. Age/Sex Meniscus Site of Tear to surgery (mos) after surgery (mos) 1 20 / F Incomplete Posterior 2 41 2 20 / F Complete Anterior-Middle 16 38 3 30 / M Incomplete Anterior-posterior 2 38 4 13 / M Complete Middle-posterior 6 31 5 50 / M Complete Posterior 2 23 6 18 / M Incomplete Middle-posterior 36 20 7 12 / M Complete Middle-posterior 1 19 8 15 / M Complete Middle-posterior 1 14 9 22 / M Complete Middle-posterior 24 9 10 10 / M Complete Middle-posterior 2 9 11 15 / F Incomplete Anterior 4 8 12 20 / F Complete Middle-posterior 24 6 Average 20 10 21 表 1. 半月温存手術を施行した症例 術前の自覚症状は, 膝関節痛が全例に認め られ, 引っかかり感が9 膝に認められた. 膝関節可動域制限は5 膝に, 外側関節裂隙の圧痛と Mc Murray test 陽性は11 膝に認められた. 水腫を認めた症例はなかった. 画像所見では, 単純 X 線 Rosenberg view( 立位膝屈曲 45 度での postero-anterior view) にて骨棘形成や離断性骨軟骨炎を認めた症例はなかった.MRIでは, 全例に外側半月の外周辺部に縦断裂を認めたが実質部損傷所見はなく, 十字靭帯損傷および内側半月損傷を認めた症例はなかった. 2) 手術方法麻酔は全身麻酔で体位は仰臥位とし, 患肢の大腿部をレッグホルダーで固定し, 下腿をベッドから下垂した状態で手術を行った. 関節鏡は30 度斜視鏡を用いてmedial and lateral infrapatellar portalとfar antero-medial portalの 3つのportalから関節内を鏡視し,probeを用いて円板状半月の形態, 断裂の形態および部位, 半月不安定性の有無, 体部変性の有無を詳細に調べた. 外側コンパートメントの評価は, 患肢をfigure-4 positionにし膝関節に内反ストレスを加えながら行った. 完全型円板状半月の場合, 半月が厚く脛骨外顆関節面全体を覆うため半月下面の評価が困難であるため,Far antero-medial portalから挿入したprobeで円板状半月を持ち上げながら半月下面の体部変性の有無と外周辺部の断裂状態を詳細に評価した. 縫合の手順は, まず, 半月断裂部における半月側および関節包側の断端をraspで新鮮化し, 末梢血から作成したfibrin clotを非吸収糸 (2-0 Ethibond) を用いて断裂部に挿入した. 断裂部位が中節または後節に存在する場合, まず, 非吸収糸 (2-0 Ethibond) を使用して円板状半月の上面にHenning 法に基づき inside-outでstacked sutureを行った. さらに,Far antero-medial portalからprobeを挿入し

-53- 円板状半月を上方に持ち上げながら円板状半月の下面にもinside-outでstacked sutureを行った ( 図 2). 図 2 前節の縦断裂を認めた3 膝に対しては,outside-inで縫合を行った. 縫合後,probeを用いて半月断裂部の不安定性が消失したことを確認した. なお, 半月自由縁に変性や小さな断裂を確認した7 膝では損傷部のみを最小限にtrimmingしたが, 正常型半月様までは切除を行わなかった. 合併関節軟骨損傷関節鏡視にて, 大腿骨外顆軟骨のⅠ 度損傷が2 膝に, 大腿骨滑車軟骨のⅢ 度損傷が1 膝に認められたが, 膝蓋骨, 大腿骨内顆, 脛骨内顆および外顆軟骨の損傷は認められなかった. 十字靭帯損傷や内側半月損傷を合併した症例はなかった. 3) 後療法術後 1~2 週間はニーブレースを用いて膝関節を固定し, その後,CPMを用いてROM 訓練を開始した. 部分荷重は術後 2~3 週より開始し4~5 週で全荷重を許可した. ジョギングは術後 3ヶ月より許可し,5~6ヶ月よりスポーツ復帰を許可した. 4) 評価項目 自覚症状として膝関節の疼痛と引っかかり感を, 理学所見として膝関節水腫, 可動域制限, 外側関節裂隙の圧痛,Mc Murray testを評価した. 画像評価として, 単純 X 線のRosenberg viewによる骨棘形成, 関節裂隙狭小化, 離断性骨軟骨炎の有無を評価し,MRIにおいて温存半月体部の変性の有無と縫合部の変化を評価した. 総合評価は, 池内スケールを用いて excellent, good, fair, poorに分類した.excellentは可動域制限や click,noise,painがないもの,goodは動作時に時々軽度の痛みがあるがmotion symptoms がないもの,Fairは動きに制限はないが動作時に軽度の痛みとclickまたはnoiseがあるもの,Poorは動作時だけでなく安静時にも痛みがあり動きに制限があるものである. 結果 自覚症状は,12 膝中 11 膝で膝関節の疼痛, ひっかかり感は消失した.1 膝のみ, 軽度の運動時痛と引っかかり感が残存したが, 術前よりは軽減し日常生活動作には支障をきたしていなかった. 理学所見は, 膝関節水腫は全例で認めなかった. 膝関節可動域は,12 膝中 10 膝は制限なく,2 膝で5 度以内の伸展制限が残存した. 外側関節裂隙の圧痛は,11 膝で認めず,1 膝に認めた.Mc Murray testは11 膝で陰性で,1 膝は陽性であった. 画像評価は, 単純 X 線の Rosenberg viewによる関節裂隙の狭小化は2 膝に認められたが, 骨棘形成や離断性骨軟骨炎を疑わせる透亮像は認めなかった ( 図 3).

-54- 図 3 術後 MRI 撮影が可能であった6 膝において, 全例とも縫合部の輝度変化はなく, 新たな半月実質部の変性を生じた症例はなかった. 総合評価では,excellentが11 膝, goodが1 膝であった. 考察 半月は膝関節機能の維持に重要な役割を果たしている1). 半月温存のために関節鏡視下半月縫合術が行われるようになったが, 円板状半月損傷に対しては縫合手術は困難とされ, 今だ ( 亜 ) 全切除術が一般的に行われている. 近年, 円板状半月損傷に対してもできるだけ半月を温存する手術治療が試みられるようになり, 正常型半月に近い形に形成切除する術式や形成切除に縫合を追加した術式が報告されている2),3). 本研究では, 大腿 脛骨関節が円板状半月を介して適合していると考え, 体部に変性がない場合には半月形成切除は追加せず縫合術のみを施行し本来の円板状半月構造の温存を図った. 円板状半月損傷に対する半月機能を温存する試みとして, 池内らは不完全型円板状半月損傷に対して部分切除と外周辺部の縫合を1 膝に, 縫合のみを2 膝に施行し, 観察しえた1 膝の術後 3.5 年の臨床成績はfairであったと報告している. また,RosenbergらはWrisberg type の円板状半月損傷に対して部分切除と縫合を 1 膝に施行し, 術後 1 年での2nd lookにおいて断裂部は治癒していたと報告している. さらに, 安達らは完全型円板状半月 4 膝と不完全型円板状半月 1 膝に対して部分切除と縫合を施行し, 術後 2.5 年の成績は4 膝でexcellent,1 膝で fairであったと報告している. これらの報告は, 円板状半月であっても損傷が外周辺部の縦断裂に限られる場合は, 正常型半月損傷と同様に縫合することにより半月を温存できる可能性があることを示唆している. この術式は, 従来の半月全切除のように半月機能が全廃してしまう術式に比べて, 適応は限られるものの半月機能を温存できる可能性があるという点では大きな進歩であると考えられる. しかしながら, 正常型半月様に形成切除された円板状半月がいかに機能しているかは不明である. 完全型円板状半月を有する症例では, 半月は外周辺部から内縁部までほぼ同じ厚みで脛骨外側顆関節面全体を覆い, その半月形状に適合するように大腿骨外顆が平坦化 (square off appearance) していることは, 単純 X 線やMRIによりしばしば認められる.( 図 4)

-55- 図 4 そのため, 円板状半月が正常型半月に形成切除された場合, 半月と関節面の形状との適合性が低下してしまうことが危惧される. 本研究では, 大腿 脛骨関節が円板状半月を介して適合していると考え, 体部に変性がない場合には半月形成切除は追加せず縫合術のみを施行し本来の円板状半月構造の温存を図った. 本術式を施行した12 膝の短期成績は良好であり, 円板状半月損傷の手術治療の一つの選択肢としての可能性があると考えられた. 完全型円板状半月損傷に対して縫合のみを施行した報告は極めて少なく, 我々の知る限り1994 年の松本らの報告が最初である4). 完全型円板状半月の外周辺部に縦断裂を認めた3 例に対して関節鏡視下に縫合術を行った. 術式は,Henning 法に準じてinside-outにて 2-0 非吸収糸を用いて縫合しているが, 半月下面の縫合は困難であったため上面からのみの horizontal mattress sutureを施行している. 術後,3 例すべてに縫合部の治癒不全と体部の新たな損傷を認めたため, 再手術にて全切除術が必要であったと報告している. 彼らは, 成績不良であった原因として,1) 正常半月とは異なる繊維配列や血行など解剖学的構造の違 いによる,2) 断裂以前に体部に変性が存在する可能性があること,3) 不完全な縫合となったため, と推測している. また,2000 年 Cosgareaらは, 完全型円板状半月の前節から中節にかけての半月滑膜移行部での断裂に対して観血的に縫合術を施行しているが, 残念ながら術後成績に関しては述べられていない5). 本治療の重要な点は, 手術適応を慎重に選択することと確実な手術を行うことである. まず, 適応として, 温存する半月体部に明らかな変性がないことが必要である. 関節鏡視で半月表面に変性が認められなくても内部に水平断裂や変性が存在することがあるため, 術前にMRIで変性所見がないことを確認する必要がある. 近年,MRI 精度の向上とともに半月体部の微細な変性を確認できるようになっており, 術前の評価には極めて有用であると考えている. さらに, 関節鏡視時に半月体部をprobeで触診し変性や硬化が存在しないかを慎重に観察する必要がある. また, 単純 X 線にて関節症性変化を認める症例では, 疼痛が残存する可能性があるため適応外と考えている. 次に, 手術方法の工夫は,1つ目に,medial and lateral infrapatellar portalとfar antero-medial portalの3つのportalを作成することである. 完全型円板状半月の場合, 脛骨外側顆関節面全体が厚い半月で覆われているため通常の方法では半月全体 ( 特に半月下面 ) を観察することはしばしば困難である. そこで, 我々はfar antero-medial portalからprobeを挿入し円板状半月を持ち上げながら体部の変性の有無と断裂部を詳細に評価し, 半月下面にも inside-outで縫合を行った.2つ目は, 断裂部には末梢血からのfibrin clotを使用したことである.arnoczky SPらは,fibrin clotが半月治癒反応を促進させる役割があると報告しており, ま

-56- た,Henning CEらは, 半月単独損傷に対する半月縫合術ではfibrin clotを使用したほうがより成績がいいと報告している.3つ目は, 縫合方法はより強固な固定性を得るためにstacked sutureを行ったことである. 松本らと我々の術式の違いは,fibrin clotを使用したこと, 半月下面にも縫合を行ったこと, 縫合方法をvertical stacked sutureで行ったことが, 術後成績を向上させたことが考えられる. 円板状半月の解剖学的構造の回復を目指して行った本術式は, 関節面と半月形状の適合性を維持しながら半月機能を温存する新しい治療であると考えている. 術後成績は自覚症状, 理学所見とも概ね良好であったが,MRIでの評価では治癒判定は不十分であり, 今後, さらなる長期的な経過観察が必要である. しかしながら, 円板状半月損傷の手術治療は半月切除という短絡的思考ではなく, 慎重に適応を選択すれば半月温存手術は1つの選択肢としての可能性があると考えられる. the peripheral tear. Arthroscopy. 20: 536-542. 2004 4. 松本憲尚. 史野根生ら. 外側円板状半月損傷に対する縫合術. 中部整災誌. 37:75-76. 1994 5. Cosgarea AJ. Ryan A. Repair of a bucket-handle tear of a complete discoid lateral meniscal incarcerated in the posterolateral compartment. Am J Sports Med. 28: 737-740. 2000 文献 1. Ahmed AM. Burke DL. In-vitro measurement of static pressure distribution in synovial joints-part I: Tibial surface of the knee. J Biomech Eng. 105(3): 216-225. 1983 2. Fujikawa K. Iseki F. Mikura Y. Partial resection of the discoid meniscus in the child's knee. J Bone Joint Surg Br. 63-B: 391-395. 1981 3. Adachi N. Ochi M. et al. Torn discoid lateral meniscus treated using partial central meniscectomy and suture of