第 66 回税理士試験 解答速報 法人税法 本解答は平成 28 年 8 月 12 日 12 時 30 分に学校法人大原学園が独自に作成したもので 予告なしに内容を変更する場合があります また 本解答は学校法人大原学園が独自の見解で作成 / 提供しており 試験機関による本試験の結果等について保証するものではありません 本解答の著作権は学校法人大原学園に帰属します 無断転用 転載を禁じます
本試験模範解答 法人税法 第一問 問 1 A 社の税務上の処理についての法的な理由 考え方 (20 点 ) 1 益金の額の意義 (2 点 ) 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上その事業年度の益金の額に算入すべき金額は 別段の定めがあるものを除き 資産の販売 有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供 無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係るその事業年度の収益の額とする 2 損金の額の意義 (2 点 ) 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上その事業年度の損金の額に算入すべき金額は 別段の定めがあるものを除き 次の額とする その事業年度の収益に係る売上原価 完成工事原価その他これらに準ずる原価の額のほか その事業年度の販売費 一般管理費その他の費用 ( 償却費以外の費用でその事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く ) の額その事業年度の損失の額で資本等取引以外のもの 3 税務処理 (16 点 ) カード発行時に会員から受け取る代金及び追加のチャージ代金は 換金及び払戻しは行われないことから権利が確定しているため カードを利用しなくても収益は確定していると解すべきである したがって カードの発行時及びチャージ時に収益計上すべきであり 収益との個別対応により原価の見積計上は認められる なお 手数料は利用額に応じて支払うこととされているため 未利用分の収益については確定したと解すべきではない 線部分 4 点線部分各 2 点 -1-
問 2 (30 点 ) 1 テレビ CM 費用の処理 ( 仕訳 2 点 理由 8 点 ) 借方貸方項目金額項目金額建設仮勘定 5,000,000 円現金預金 8,000,000 円前払金 3,000,000 円 ( 法的な理由 考え方 ) 当期の平成 28 年 6 月 10 日において小切手で支払ったテレビ CM 費用の合計額 8,000,000 円は 翌期の平成 28 年 7 月 20 日から 2ヶ月間放映されることから 広告効果は翌期以降に限定され 当期において費用性を有しないと考えられる 2 法人税法上 CMの制作に直接要した費用の額 5,000,000 円 ( タレントの出演料 3,000,000 円及び CM 制作費用 2,000,000 円の合計額 ) は 減価償却資産 ( 器具及び備品 : 法定耐用年数 2 年 ) に該当する 2が 事業供用日は放映時であると解されることから 当期末において事業の用に供されていないと考え 減価償却資産以外の資産として取り扱う 2こととなる なお 当該資産は 事業の用に供した翌期において少額減価償却資産 ( 使用可能期間が1 年未満 ( 放映期間 2ヶ月 )) として 損金の額に算入されることとなる 一方 テレビ局に支払われる広告料 3,000,000 円は 前払金として資産計上 2することとなる 2 見本品の製作費用の処理 ( 仕訳 1~2 行目 1 点 3 行目 1 点 理由 8 点 ) 借 方 貸 方 項 目 金額 項 目 金額 現 金 預 金 1,000,000 円 見 本 品 4,000,000 円 繰 延 資 産 3,000,000 円 繰延資産償却費 50,000 円 繰 延 資 産 50,000 円 ( 法的な理由 考え方 ) 見本品として製作した費用 4,000,000 円は 販売特約店において見本品として展示することで新製品の販売促 進に繋がる広告効果が発生 1 し 法定耐用年数が 10 年である 1 ことから その支出の効果は支出日以後 1 年以上 に及ぶと考えられる 2 したがって 当該製作費用 4,000,000 円から譲渡価額として収受した 1,000,000 円を控除 した金額 3,000,000 円は 広告宣伝用資産の贈与費用として繰延資産に該当する 2 と考えられる なお 繰延資産の償却については 償却費として損金経理した金額のうち償却限度額に達するまでの金額が当 期の損金の額に算入される 2ことから 償却限度額に相当する金額の償却処理を行う 償却限度額 償却期間 10 年 7 10 =7 年 >5 年 5 年償却限度額 3,000,000 円 1 月 =50,000 円 12 月 5 年 -2-
保険料の処理 ( 仕訳 2 点 理由 8 点 ) 借方貸方 項目金額項目金額保険料 200,000 円現金預金 200,000 円 ( 法的な理由 考え方 ) 損害保険契約に係る保険料は 当該契約を締結しただけでは 債務確定しているとはいえず 保険期間の経過 に従って債務確定する 2 ため 契約日の属する事業年度において保険料の全額を損金の額に算入することはできない したがって 当期に支払った保険料 (200,000 円 ) のうち 当期に対応する部分 (1,200,000 円 11 日 365 日 = 36,164 円 ) が保険料として損金の額に算入され 残額 (163,836 円 ) は前払費用として取扱う 2 こととなる 一方 本問の場合は保険期間が 1 年以下であり 支払日から 1 年以内に提供を受ける役務に係るものに該当する ため 支払額を継続して支払日の属する事業年度の損金の額に算入している場合 2 には 短期前払費用として 支払額 (200,000 円 ) が保険料として当期の損金の額に算入される 2-3-
第二問 ( 問 1) 区 分 総 1 額 計算欄 当期利益又は当期欠損の額 1 154,209,000 円 損金経理をした法人税及び地方法 2 8,000,000 人税 ( 附帯税を除く ) 2 損金経理をした道府県民税 ( 利子 2 2,450,000 650,000+1,800,000=2,450,000 割額を除く ) 及び市町村民税 3 損金経理をした道府県民税利子割額 加 4 損金経理をした納税充当金 5 2 28,000,000 損金経理をした附帯税 ( 利子税を 除く ) 加算金 延滞金 ( 延納分 6 を除く ) 及び過怠税 減価償却の償却超過額 39,362,501 機械装置 1 償却限度額 機械装置に関する資料が (3,000,000+2,500,000) 0.500 7 12 D5 頁及び D8 頁に重複してお =1,604,166 算 り 取得価額及び耐用年数の 2 償却超過額 ( 注 ) 相違から下記の別解などが想 (700,000+2,500,000)-1=1,595,8341 定されます ( 注 ) 3,000,000 0.400 7 12 =700,000 7 別解 1 1,916,667 建物附属設備 ( 資本的支出 ) 別解 2 2,354,167 1 償却限度額 別解 3 2,675,000 40,000,000 0.067 10 12 =2,233,333 2 償却超過額 40,000,000-1=37,766,6673 + =39,362,501-4-
役員給与の損金不算入額 3 270,000 900,000 (100%-70%)=270,000 8 交際費等の損金不算入額 9 加 貸倒引当金繰入超過額 ( 一括評価 ) 10 3 440,000 繰入限度額 (38,500,000+124,000,000 当期に申立てが行われてい +150,000,000-5,000,000) 8 1,000 る場合には次の金額となりま =2,460,000 す 別解 520,000 繰入超過額 2,900,000- =440,000 貸倒引当金繰入超過額 ( 個別評価 ) 3 4,800,000 繰入限度額 0 別解 200,000( 切捨て ) 繰入超過額 (7,700,000-2,900,000)-0 =4,800,000 算 K 社株式評価損損金不算入額 3 3,000,000 32,000,000-29,000,000=3,000,000 先物利益計上もれ 2 3,200,000 (A 社株式 ) 50,000,000 (800 株 -800 株 10%)-45,000,000 800 株 = 0 調整なし 2 小計 11 89,522,501 減価償却超過額の当期認容額 減 12 算 -5-
納税充当金から支出した事業税等 2 5,000,000 24,080,000-19,080,000=5,000,000 の金額 13 受取配当等の益金不算入額 2 1,125,326 受取配当等の額 1 完全子法人株式等 900,000 総資産の簿価について 貸 2 関連法人株式等 157,500 1 倒引当金が控除表示かの明示 3 非支配目的株式等 480,000 がないことから 貸方表示の 控除負債利子 ( 原則法 ) 14 可能性もあります したがって 総資産の簿価に加算しない解答も別解として考えられます 別解 1,125,240 1 支払利子総額 3,260,100+132,450=3,392,5501 2 株式等の簿価 12,600,000+12,600,000=25,200,000 3 総資産の簿価 減 1,504,336,000+1,520,791,000 +1,600,000+7,700,000=3,034,427,000 4 控除額 1 2 3 =28,174 益金不算入額 900,000+(157,500-28,174) +480,000 20%=1,125,326 外国子会社から受ける剰余金の配 当等の益金不算入額 15 算 受贈益の益金不算入額 16 適格現物分配に係る益金不算入額 17 法人税等の中間納付額及び過誤納 に係る還付金額 18 所得税額等及び欠損金の繰戻しに よる還付金額等 19 仮払税金認定損 3 13,450,000 8,000,000+650,000+1,800,000+3,000,000 20 =13,450,000-6-
譲渡損益調整勘定繰入額 3 250,000,000 400,000,000-150,000,000=250,000,000 時価ヘッジに伴う損金算入額 2 3,000,000 減 算 小計 21 272,575,326 仮計 22 28,843,825 関連者等に係る支払利子等の損金不算 入額 23 超過利子額の損金算入額 24 仮計 25 28,843,825 寄附金の損金不算入額 1 250,542,774 その他 2,000,0001 26 完全支配関係 250,000,0001 ( -1,457,226)+ =250,542,774 法人税額から控除される所得税額 2 313,958 183,780+32,162+98,016=313,958 29 税額控除の対象となる外国法人税の額 30 合計 33 222,012,907 参考 {(100,000,000 12 12 2.5 1,000 )+( 28,843,825+2,000,000+250,000,000) 2.5 100 } 1 4 =1,457,226-7-
契約者配当の益金算入額 34 非適格合併又は残余財産の全部分配等 による移転資産等の譲渡利益額又は譲 36 渡損失額 差引計 37 222,012,907 欠損金又は災害損失金等の当期控除額 38 総計 39 222,012,907 新鉱床探鉱費又は海外新鉱床探鉱費の 特別控除額残余財産の確定の日の属する事業年度に係る事業税の損金算入額 40 46 所得金額又は欠損金額 47 222,012,907 ( 問 2 ) C 社の当期末における土地の帳簿価額 5 400,000,000 円 -8-
合格ラインの読み 今年の本試験は 理論 計算のボリュームは共に少なく 個々の解答の判断において 比較的時間を要する問題でした 理論については 解釈問題のみの出題となり 判断が容易ではない問題が出題されました 別段規定に関する問いの出題はありませんでした 計算については 昨年と同様の出題形式となりました 個々の内容は平易な項目が多く出題されていましたが 資料の読み取りが困難な箇所も見受けられました 以下 各問の合格ラインについて簡単に触れることにします 第一問 本年度の理論は 2 問構成で実務執行上の取扱いを中心に問う難易度の高い問題になります 個々の解答量は少ないものの 題意を読み取り解答骨子を探るのに時間を要する問題でした 問 1は チャージ式プリペイドカードを発行した法人におけるチャージ代金及び加盟店から徴収する手数料に係る益金の額及び損金の額の帰属時期について それぞれの意義を示した上で 相談者の質問事項を糸口に解答させる問題になります チャージ代金 手数料ともに収益の権利確定の観点から結論を導き出すことがポイントとなります 問 2は 決算期直前に支払った各種費用についての税務上の取扱いを問う問題になります の広告宣伝のために支出した金額のうち 1 テレビ CM 費用 については 仕訳及び法的な理由 考え方を正答することは困難である一方 2 見本品の製作費用 については 繰延資産に該当するという判断 分析は解答可能であると思われます また の事業用資産の損害保険契約に係る保険料については 総額又は支出額のいずれで認識すべきか? 期間対応又は一時損金化のいずれで認識すべきか? を複合的に判断させる難易度の高い問題のため 法的な理由 考え方については 部分点をいかに獲得できたかがポイントとなります 第二問 本年度の計算は 当期分の課税所得金額 ( 別表四 ) を求める問題が中心でした また 個別問題として完全支配関係がある子会社へ土地を譲渡した場合の当該子会社における帳簿価額を求めさせる内容も含まれていました なお コメントについては 特段指示が入っていなかったため 積極的な解答をする必要はなかったものと思われます 解答してほしい項目としては 租税公課 譲渡損益調整資産 受取配当等 所得税額控除 貸倒引当金 冷暖房設備 C 社における土地の帳簿価額の計算が挙げられます 総じて基本的な項目を正確に解答できたかが合否の分かれ目になると思われますが その他の項目として 役員給与 デリバティブ取引については 解答できれば有利になると思われます なお デリバティブ取引については繰延ヘッジによる処理も考えられますが 出題の意図を鑑みて時価ヘッジによる処理を模範解答としております また 貸倒引当金 A 社株式 寄附金の処理については 計算欄のスペースを考慮し 計算過程を簡略化しております ボーダーラインは理論 20 点 計算 36 点 合計 56 点前後になると思われ 合格確実ラインは理論 25 点 計算 41 点 合計 66 点前後になると思われます -9-
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