自転車の歩道通行の安全性等に関する文献調査 元田良孝 1 宇佐美誠史 2 1 フェロー会員岩手県立大学教授総合政策学部総合政策学科 ( 岩手県滝沢市巣子 ) 2 正会員岩手県立大学助教総合政策学部総合政策学科 (

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未満のものである 車線はいずれも上下各 1 車線である が 1 か所 ( 図 1 広い歩道 2) は上下で 3 車線である 観測項目は通行位置 ( 車道 歩道 ) 通行方向( 右 左 ) 属性 ( 性別 高校生かそれ以外か ) である 観測は 2012 年 5 月 ~11 月の自転車交通量の多い平日

1 基本的な整備内容 道路標識 専用通行帯 (327 の 4) の設置 ( 架空標識の場合の例 ) 自 転 車 ピクトグラム ( 自転車マーク等 ) の設置 始点部および中間部 道路標示 専用通行帯 (109 の 6) の設置 ( 過度な表示は行わない ) 専 用 道路標示 車両通行帯 (109)

スライド 1

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資料 -2 国道 24 号烏丸通 歩行者 自転車通行安全協議会 国道 24 号烏丸通の概要 平成 30 年 3 月 国土交通省近畿地方整備局京都国道事務所

目次 1 1. 奈良市中心部の道路交通環境 1) 広域的な自転車利用ネットワーク P2 2) 幹線道路の交通状況 ( 交通量 ) P3 3) 幹線道路の交通状況 ( 混雑状況 ) P4 2. 自転車事故の分析結果 1) 道路種別別 ( 国道 県道 市道 ) 自転車事故発生状況 P5 2) 自動車交通

堺市新金岡地区の自転車通行環境整備のアンケート 交通量調査結果について 堺市新金岡地区において 歩行者 自転車利用者が安心して通行できる安全なまちづく り を目指し 自転車通行環境の整備を行いました 自転車通行環境モデル地区において 平成 22 年 ~ 平成 23 年に自転車道 歩道の視覚 分離の整

1-1 交通死亡事故全体の推移 10 年前と比較し の死者は 40.7% 65 歳以上の死者は 24.0% それぞれ減少 死者に占める 65 歳以上の割合は 24 年以降増加 27 年中死者の半数以上 (54.6%) を 65 歳以上が占める 10 年前と比較し 人口当たり死者数は 65 歳以上のい

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目 次 1 交通事故の発生状況 1 2 死傷者の状況 (1) 齢層別の状況 3 (2) 状態別の状況 5 (3) 齢層別 状態別の状況 7 (4) 損傷部位別の状況 12 (5) 昼夜別の状況 14 3 交通事故の状況 (1) 齢層別の状況 17 (2) 法令違反別の状況 19 (3) 飲酒別の状況

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【論文】

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生活道路対策

速度規制の目的と現状 警察庁交通局 1

【論文】

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目次 Executive Summary 1 1 はじめに 1.1 自転車事故の現状 政府の取り組み 自転車専用レーン 6 2 分析のフレームワーク 2.1 分析目的 分析手法 7 3 費用の推計 3.1 自転車専用レーンの維持 管理費用 自転車取締り

の整備を推進し 自転車本来の走行性能の発揮を求める自転車利用者には歩道以外の場所を通行するよう促すとともに 車道を通行することが危険な場合等当該利用者が歩道を通行することがやむを得ない場合には 歩行者優先というルールの遵守を徹底させることが必要である また 制動装置不良自転車運転を始めとする悪質 危

目次 はじめに 1 1 全国 北海道 帯広市の交通事故発生件数 死者数 負傷者数の推移 1 2 月別交通事故発生状況 (H22-H26 合計 ) 2 3 時間別交通事故発生状況 (H22-H26 合計 ) 3 4 曜日別交通事故発生状況 (H22-H26 合計 ) 3 5 事故類型別交通事故発生状況

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側帯 93 乗用車乗車中二輪車乗車中自転車乗用中歩行中その他 日本 1, , 韓国 (2013) 1, , 米国 11,926 4, , 英国 スウェー


1 自転車関連事故の現状と指導取締りの状況 (1) 自転車関連事故の推移 自転車関連事故の全交通事故に占める割合は増加傾向にあり 平成 23 年は約 2 割を占めている状況 自転車対歩行者の交通事故件数は10 年前の約 1.5 倍 全交通事故件数 ( 件 ) ( 件 ) 1,000, ,

北海道警察本部交通企画課 平成 31 年 2 月

【資料1】高齢運転者に係る交通事故分析

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【論文】

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【セット版】本資料(H29事故分析)

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に大学に転職し 改めて自転車を研究して自分の間違いに気がついた 2) 反省を込め自転車交通の正常化が自分の生涯の課題と思っている 本文ではなぜ自転車に関して道路交通法は時代遅れの法律なのか なぜ歩道通行がいけないのかを平易に解説し 自転車交通システムの改革について世論に訴えたいと思う 2 日本の自転

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昨年9月、IOC総会において、東京が2020年のオリンピック・パラリンピック競技大会の開催都市に決定し、日本中が歓喜の渦に包まれた

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H 児童・生徒の交通事故

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問 2 自転車を乗っているときに事故を起こした場合 どのような責任を負います か? 自転車だから大丈夫 事故を起こしたとしても大事にはならない そんな軽はずみな気持ちが 死傷者を出す重大な事故につながります 道路交通法上 自転車も車両の一種( 軽車両 ) です 法律違反をして事故を起こすと 自転車利

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第 2 章横断面の構成 2-1 総則 道路の横断面の基本的な考え方 必要とされる交通機能や空間機能に応じて, 構成要素の組合せ と 総幅員 総幅員 双方の観点から検討 必要とされる道路の機能の設定 通行機能 交通機能アクセス機能 滞留機能 環境空間 防災空間 空間機能 収容空間 市街地形成 横断面構

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概要資料(平成29年死亡事故等分析)

1 みんなに優しくスマートに!! 自転車は便利で環境にも優しい車両です ところが ルールやマナーを無視した乗り方は交通事故につながります 川崎市内では 自転車が関係する交通事故が多発しています みんなへの優しさを持って自転車を利用して 交通事故を防止しましょう 信号を守ろう! 違反すると 3 月以下

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発表の流れ 新聞記事と要約 自転車専用レーンとは? 自転車の需要と背景 現状の問題と政策 政策提言 メリット デメリット 試算表 まとめ 参考文献

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2 また 保護者等の役割 として 子どもへの自転車の安全利用に関する指導について規定している 3 人乗りの自転車に関しては 保護者だけでなく 自転車利用者全体の法令遵守の中での指導となる 市長学校に関して 市立高等学校では乗車用ヘルメット着用は義務化されていないのか 教育長義務化はしていない 高校生

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久留米市セーフコミュニティ 交通安全対策委員会

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こんな事故が起きています! 交通事故データから 自転車事故の実態や原因を見てみましょう データから見る自転車事故の実態 各地で多発している自転車事故 被害事故だけでなく 加害事故も発生しています 最近の自転車事故の発生状況や事例を見ながら その実態を探ってみましょう 自転車事故の発生状況 主な要因は

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自転車の活用の推進に関する指標 ( 案 ) 目標施策将来目指すべき水準 目標 1 自転車交通の役割拡大による良好な都市環境の形成 1. 自転車通行空間の計画的な整備推進 自転車活用推進計画を策定した地 0 団体 (2017 年度 ) 200 団体 (2020 年度 ) 900 団体以上 ( 概ね10

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通行禁止道路 について 道路標識又は道路標示によるもの 対象にするもの 車両通行止め道路 根拠規定道路標識 道路標示 ( 例 ) 道路交通法第 8 条第 1 項 自転車及び歩行者用道路 標識 302 同法第 8 条第 1 項 標識 325 の 3 歩行者用道路 同法第 8 条第 1 項 標識 325

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資料 7-1 特殊車両の通行に関する指導取締要領の一部改正について 国土交通省関東地方整備局道路部交通対策課 1 (1) 特殊車両通行許可制度 2

目 次 1 はじめに 1 2 自転車利用に係る問題点 課題点 3 3 自転車ネットワーク計画の目標 6 4 整備路線の選定 7 5 自転車利用空間整備の基本的な考え方 10 6 ソフト施策について 14 7 計画の遂行に向けて 18

( 件 / 人 ) 12, 交通事故の推移 (S4~) ( 人 ) 18 1, 8, 6, 4, 2, 死者数 人身事故件数 負傷者数 S4 S45 S5 S55 S6 H2 H7 H12 H17 H 約 2 倍 6 人身事故件数及び負傷者数は 平成 14 年以降減少傾

自転車の 正しい 乗り方

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資料 1 逆走事案のデータ分析結果 1. 逆走事案の発生状況 2. 逆走事案の詳細分析

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市道三溝線の位置付け 佐賀駅周辺整備構想 (H29.3) では 佐賀駅と拠点エリア ( 総合運動場周辺 城内 中心市街地周辺 ) とを結ぶ 南北軸の強化 を課題として提示 市道三溝線は 北側の拠点エリアに向けた 街の玄関口 であり 重要な動線 であると整理 街づくりの視点 ( 佐賀駅周辺整備構想 )

73,800 円 / m2 幹線道路背後の住宅地域 については 77,600 円 / m2 という結論を得たものであり 幹線道路背後の住宅地域 の土地価格が 幹線道路沿線の商業地域 の土地価格よりも高いという内容であった 既述のとおり 土地価格の算定は 近傍類似の一般の取引事例をもとに算定しているこ

土木計画学研究・論文集審査用論文の書き方に関する研究*

自転車交通安全対策に関する行政評価・監視結果に基づく勧告

較するとやや少ないものの高レベルである. 自転車が歩道を走っていることに対し危険を感じるかという質問には 非常に感じるが 45% やや感じるが 33% の合計 78% で 全盲者よりやや少ないがそれでも約 8 割の人が危険を感じていることになる. 鹿島ら 4) は視覚障害者と健常者に様々な環境音を聞

【資料8】車両安全対策の事後効果評価rev4

子供の交通事故防止 子供が関連する交通事故の件数は年々減少傾向にあるものの 子供の行動範囲が広がる夏休みが始まる 7 月に運動の重点として掲げ 横断歩道を渡る 道路へは飛び出さない 道路を渡るときは左右をしっかり確認するなどの基本的な交通ルールとマナーを 一人ひとりに根付かせる 日常生活の中で 安全

平成 25 年度第 7 回キッズ モニターアンケート 自転車の交通ルールとマナーについて 実施報告 アンケートの実施結果は以下のとおりでした キッズ モニターのみなさん ご協力ありがとうございました アンケート概要 1 実施期間平成 25 年 12 月 13 日 ~12 月 26 日 2 回答者数

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自転車の歩道通行の安全性等に関する文献調査 元田良孝 1 宇佐美誠史 2 1 フェロー会員岩手県立大学教授総合政策学部総合政策学科 ( 020-0693 岩手県滝沢市巣子 152-52) E-mail:motoda@iwate-pu.ac.jp 2 正会員岩手県立大学助教総合政策学部総合政策学科 ( 020-0693 岩手県滝沢市巣子 152-52) E-mail:s-usami@iwate-pu.ac.jp 自転車は安全のために昭和 45 年以来歩道通行が可となったが 実は歩道の方が車道より安全であることは証明されていない 近年では政府自ら歩道通行 車道通行のどちらが安全とは一概に言えないとの見解を示している しかし道路管理者 交通管理者 自転車利用者ともに歩道が安全であると考えている者は多く自転車道の整備や車道への自転車の通行方法変更の障害となっている ここでは自転車の歩道 車道通行の安全性比較を中心に内外の論文や記事等を収集し 歩道 車道通行の安全性比較をし 歩道通行の総合的な安全性等について考察した その結果海外では歩道の方が危険との研究があった 国内では単路部では歩道が安全との文献が多いが 事故の 7 割を占める交差点部では結果が分かれ 総合的な評価では歩道が車道より安全とはいえないと考えられる Key Words : Bicycle, Side Walk, Traffic Safety, Literature Review 1. 調査の背景我が国の自転車交通の特徴は 歩道が実質的な自転車道になっていることである 海外先進国と日本の自転車専用空間の比較は表 -1 に示す例があり 日本の後進性を説明しているが もし実態に合わせ歩道を自転車専用空間とみなすならば 皮肉にも世界で最も自転車専用空間が整備された国となるであろう 自転車の歩道通行を許す海外の例はノルウェーや 橋梁部など特殊な部分等に見られるがいずれも限定的で 車道通行が原則である 我が国では昭和 45 年に交通戦争と呼ばれた交通事故の急増を受けて 緊急避難的措置として歩道に自転車通行を許して 40 年以上がたち自転車の歩道通行が定着化表 -1 自転車道整備状況 ( 国土交通省資料から作成 ) 国名年自転車道延長総道路延長に対 ( km ) する割合 (%) オランダ 1985 14,500 8.6 ドイツ 1985 23,100 4.7 日本 2006 7,301* 0.6 日本 2012 172,511** 13.6 * 日本の自転車道は自転車歩行者道 ( 自転車通行帯付 ) 自転車道 自転車専用道路 自転車歩行者専用道路 ** 歩道を自転車道とみなした場合 している しかし歩行者との事故の増加などを受けて 平成 19 年には国土交通省と警察庁の協力で自転車通行環境整備モデル地区制度ができ全国で 98 地区が指定され 自転車道の整備を進めることとなり 自転車安全利用五則が掲げられ自転車は車道が基本との立場を示している さらに平成 23 年 10 月 25 日に警察庁は通達 良好な自転車交通秩序の実現のための総合対策の推進について を発出し自転車走行専用空間の確保について方針を打ち出すとともに 国土交通省と警察庁は平成 24 年 11 月に 安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン を定め 道路管理者に自転車専用走行空間の整備を促している 一方自転車利用者や交通管理者 道路管理者への車道通行の原則は理解が進まず 多くの者が相変わらず歩道を自転車道として位置付けていることも事実である この大きな原因として歩道は車道より安全との認識がある 昭和 45 年に自転車を歩道に通行させて自動車と分離したことは 歩道の方が車道より安全との前提から成り立つ しかし現在のところそれを支持するエビデンスは見つからない さらに昭和 45 年から現在まで実質的に歩道を自転車道としてきた政策評価も殆どなされていない 1) 2) 一方疋田 小林等や古倉等からは逆に歩道通行の危険性が指摘されている このような背景から 本論文では自転車の主として歩 1

道 車道の安全性比較に関する文献調査を行い 車道通 行の正当性を明らかにすることを目的とする でも横断中や右左折時の事故は歩道上の事故と比較することは適当でないと考えられる 2. 既往文献のレビュー (2) 交差点での比較 単路部に比べ交差点は車道から進入したのか 歩道か (1) 単路部での比較単路部については歩道と車道の比較がしやすいので 警察関係機関からいくつかの文献が存在する 3) 例えば小林は警視庁管内での平成 5 年の事故分析と車道と歩道の自転車の通行割合から車道の方が歩道より事故率で 60 倍危険であるとの結論を出している ここでは観測の結果自転車の車道通行率が僅か 3.3% としている 4) また高橋は岩手県内の自転車事故分析から 歩道通行可の歩道では歩道上の衝突が多くなっていることから 実際に歩道通行自転車が多いことが考えられ 車道上での対自動車事故を防止する ( 中略 ) という観点からすると 一定の効果が出ている としている 警察庁が平成 18 年に行った自転車安全対策懇談会の提出した 自転車の安全利用の促進に関する提言 5) に平成 17 年の単路部と交差点の自転車が関係する死亡事故分析が掲載されている これによれば 単路部の歩道上で発生した事故が 30 件 車道上で発生した事故 ( 横断中を除く ) が 84 件と車道上の方が多いとしている ( 表 -2) 横関は歩道のある単路部で発生した交通事故を歩道 車道別に分析し比較した この結果 歩道上でも事故の相手は 74.3% が自動車であり 歩道上ではここ数年対歩行者事故が急増しているとしている また発生件数は歩道の方がやや多いが 死亡事故 重傷事故は逆に車道の方が多く その結果致死率は 10 倍以上歩道上より高いことを示している ただ平成 7 年から 23 年までの死亡事故の増減については 歩道上が 40% の増加に対し 車道上は 29% 減少している また車道上の事故は直進中が 54% と最も多く 次に横断中が 38% である 直進中の死亡事故で最も多いのは追突事故で全体の 61% であるが 追突事故の 78% が夜間に発生しているとしている 横関はこ ら進入したのかを区別する必要があり 複雑である 歩 7) 道通行が始まって間もない昭和 52 年に既に弁護士の森は 自転車と自動車の接触事故は未だに減少していないどころか 漸増のきらいさえある とし 歩道に上がった自転車は 交差点では必ず再び車道に下りなければならない と歩道走行時の交差点の危険性を既に指摘している 先ほど紹介した 自転車の安全利用の促進に関する提言 8) では交差点で事故を起こした自転車を進入場所 ( 歩道か 車道か ) 別に分析している これによれば 歩道がある交差点では 歩道から進入した自転車の死亡事故件数は 155 件で 車道から進入した件数は 115 件であった ( 表 -3) この結果から 全て車道に走らせることは困難としている 交差点における出会い頭事故の危険性については松本が 東京国道事務所管内の国道での細街路から幹線道路に出る自動車と幹線道路を走る自転車との出会い頭事故の分析から 車道走行より歩道走行の方が事故率が高いとしている 鈴木ら 10) は 大田区内の自転車事故を分析し 歩道を走る場合自動車からの見通しの悪さから事故を起こしやすく 歩道上ではルールを守っていても事故に遭いやすいと指摘している 米国の連邦道路省 11) は 自転車が交差点に進入するときに歩道からか車道からかで事故率を計算している 歩道車道の走行比率が 20:80 として事故率を計算すると 自動車が細街路から交差点に進入するとき幹線道路を走行する自転車との事故率は歩道が 5 倍 停止線 赤信号点滅から幹線道路に進入するときの幹線道路を走行する自転車との事故率は歩道が 1.5 倍 同様に停止線 赤信号の場合は 1.1 倍 赤信号で右折で進入する自動車と幹 れらの結果から歩道走行を推奨するわけではなく 安全 に車道を走行できる環境を創出すべきとしている ただここでは事故発生地点のみで歩道 車道を分類している 表 -3 交差点における進行経路別事故件数 ( 文献 5) より作成 ) 下段は構成率 が事故形態は直進中に限るべきで車道上で発生した事故 進入 横 断 自 転 交 差 交 差 交差 計 経路 歩道 車 横 点 左 点内 点外 表 -2 単路での進行経路別交通事故件数横断中を除く ( 文献 5) より作成 ) 歩道 102 断帯 31 側端 2 17 3 155 車道左側端 車道右側端 車道その他 計 から 65.8% 20.0% 1.3% 11.0% 2.0% 車道 52 12 20 84 車道 6 5 34 65 5 115 歩道 30 30 から 5.2% 4.3% 29.6% 56.5% 4.3% 注 : 交差点内とは交差点 左側端以外の交差点を進行中の場合 2

線道路を走行する自転車との事故率は歩道が 5.6 倍といずれも歩道を走行する自転車の事故率が車道より高いことが示されている なお米国では赤信号でも常時右折 ( 日本では左折相当 ) は可能である (3) 単路部 交差点を含めた比較自転車の歩道走行 車道走行の安全性の評価は単路 12) 部 交差点部を含めてなされなければならない 古倉は 事故分析から 歩道上の自転車の事故の相手は 4 分の 3 が自動車であること 車道走行の自転車事故で 正規の左側通行に由来する ひっかけ事故 は車道の交通量の少なさを考慮しても歩道での車との衝突事故より少なく 車道の方が安全であるとしている 13) 亀井らが道路施設と自転車の事故率を多変量解析で調べた結果 歩道の有無で自転車の事故率に有意な差が見られなかったとしている 大多数の自転車が歩道を走ることから 歩道設置区間は自転車は歩道通行していると推定されるため 歩道通行しても車道通行しても事故率に差がなかったことになる 小川 14) は自転車が車道通行する場合逆行ができないので歩道通行に比べ迂回が多くなり 交差点の通過回数が多くなるため かえって事故率が高くなる場合があると指摘している Lisa Aultman-Hall 15) らは カナダのオタワ トロントの自転車通勤者 2963 人のアンケート調査から自転車事故を分析し 走行 10 万km当たりの事故件数を歩道上と車道上などで比較した この結果 例えばオタワでは衝突事故では 1.9 倍 転倒事故では 8.1 倍 負傷事故では 5.4 倍 重傷事故では 12.5 倍歩道上の事故率が高いことを示している 平成 23 年 12 月 15 日に国土交通省 警察庁が開催した 安全で快適な自転車利用環境の創出に向けた検討委員会 第 2 回委員会資料 16) では幹線道路 2 か所の歩車道別自転車交通量と自転車事故件数から歩道と車道の事故率を計算し 2 か所で逆の結果が出たことから 一概にどちら ( 歩道か車道か ) が安全ということはいえない ( カッコ内は筆者加筆 ) と歩道の優位性を否定している わずか 2 か所の調査だけで結論を出しているのは疑問であるが 政府自身の見解として注目される 18) より図 -1 自転車の事故率国際比較短い国では高くなっている 内閣府は この図に内閣府のアンケート調査による我が国の自転車の推定平均走行距離と警察庁統計による死者数をプロットし 欧州諸国と比較して 特別に安全性が低いわけではないと考えられる と述べている 18) ( 図 -1) 内閣府の計算によれば1 億走行台キロあたりの自転車事故死者数は3.59 人としているが この元となった警察庁の自転車事故死者数は24 時間死者数であり 欧州の30 日死者とはデータの定義が異なり誤った比較をしている 24 時間死者と30 日死者の比は1.2~1.3 程度であるので 事故率は4.3~4.7 人 /1 億走行台キロとなり フィンランド イギリスとほぼ同じレベルとなってくる 従って特別に低いどころではなく 中 ~ 高い部類に入ってくる 周知のとおり欧米では車道通行がほとんどであり 歩道通行がほとんどの日本で同じかあるいはそれ以上の事故率を示していることは少なくとも歩道通行は事故率低減に大きな影響を与えていないと判断できる 久保田 19) は 1970 年以降いったん減少した交通事故の死者数全体が再び増加基調に転じた1980 年以降も 自転車乗車中の死者数が減少傾向をしばらく継続できたのは 自転車の歩道通行と無関係とは考えられない とし 歩道通行の安全効果を暗に認めている しかしこの文献では根拠を明らかにはしていない 3. 歩道通行の安全性に関する考察 (4) その他の文献自転車の事故率については オランダ政府の Cycling in the Netherlands 17) でヨーロッパ諸国における走行台キロ当たりの自転車事故死者の事故率と自転車の平均走行距離の関係を比較している これによれば デンマーク オランダなどの平均走行距離の長い国では事故率は低く イタリア オーストリアなどの平均走行距離の 海外の文献では 単路部 交差点部を含めて歩道の方が明確に事故率が高いとしている 国内の文献では 単路部については車道の危険性を指摘するものが多い 事故件数の比較をした場合 歩道の方が多くても 7~8 割程度の自転車が歩道を通行していることを考えると 事故率にした場合車道は不利になる しかし全自転車事故の 7 割を占める交差点での事故で 3

は歩道が危険 車道が危険と両論があり 単路部ほどの歩道通行の優位を示していないと考えられる 単路部 交差点部を含めた総合的な評価では 少なくとも歩道は車道より安全とは言い難いということである 政府の見解は平成 18 年の 自転車の安全利用の促進に関する提言 の中では車道走行の危険性が指摘されているが 平成 23 年の警察庁と国土交通省の 安全で快適な自転車利用環境の創出に向けた検討委員会 では先に述べたように 一概にどちらが安全とは言えない と変化している 40 年以上も歩道通行を社会が容認してきた背景には 歩道は安全 との認識があったはずである 自転車の歩道通行は歩行者を犠牲にして色々問題はあるが車道で事故を起こすよりまし との負の選択があったはずである ところがここで調べてきたように 歩道の方が安全との確証は未だに得られていない つまり歩道通行は大義を失っているといえる もう 1 つ指摘しなければならないのは これまでの歩道 車道の安全性比較は 現状のインフラ 現状の取締状況の下に発生した事故の分析が元になっていることである 道路管理者の長年の自歩道依存で 車道は自転車通行を前提に設計されているとは言い難い 自転車専用空間が整備されているところはごく限られている また自転車の交通違反は多く 筆者の個人的見解を述べれば無法状態が固定化している 近年自転車の安全利用条例を制定する自治体が多くなってきたが 条例の多くは道路交通法の遵守をうたっている 下位の法律である条例で上位の道路交通法の遵守を謳わなければならないのは 道路交通法が自転車に関しては機能していないことの証拠と考えられる 20) このような野放し状態の自転車の起こした事故を基にして 安全のためにはどちらを走行すべきかを議論することは適当とは考えられない 例えば先に示した表 -2 では単路部においては 車道右側端 は明らかな交通違反であり 車道その他 は定義は不明であるが 違反の可能性が高い これらを足し合わせると車道全体の 38% が自転車の重大な違反を含んでいる 表 -3 の交差点においては車道から進入した自転車の交差点の事故で最も多いのは 交差点内 と定義されたカテゴリーで 全体の 56% を占めるが 交差点内とは 文献 5) によれば 交差点 左側端以外の交差点を進行中の場合 を示している つまり右側通行や交差点内右折など通常は自転車が重大な違反状態で発生した事故と推定される これらは取締により減少されるべき部分であり 自転車の違反が実質的にコントロールされていない現状から生じる事故をベースに安全性を議論すべきではないと考えられる 4. 歩車道の安全比較の阻害要因自転車の歩道通行の危険性を指摘した論文は比較的多い 21) 22) 等が 歩道通行と車道通行の安全性を比較した論文は国内ではあまり多くない その原因として最も大きいと思われるのは分析に必要なデータが整備されていないことがあげられる 最も理想的なデータは 歩道を走る自転車と車道を走る自転車の走行距離当たりの事故件数 ( 事故率 ) とその程度 ( 軽傷 重症 死亡 ) である ところが事故率の計算に必要な自転車交通量は道路交通センサスには自転車の交通量と歩道の有無は記されているものの 交通量の歩車道の別は記録されていない また事故統計も基本的には事故の発生地点を記しているだけなので どのような経路で交差点に進入したかなど 歩道通行 車道通行の安全性を判断する情報が記されているとは言えない このことから科警研の萩田ら 23) は 道路地図の整備や交通事故統計の収集のあり方を検討する必要がある としている 今後道路交通センサスや交通事故原票の調査項目 記載項目の見直しが必要と考えられる その他の原因として 歩道は安全との常識があると考えられる あまりにも常識的であったので検証が遅れた可能性がある また歩道が安全でないことを証明することは 昭和 45 年以来続けてきた自転車の歩道通行政策は行政当局にとって誤った政策を続けてきたことになり 無謬性の観点から敢えて検証を避けてきた可能性も否定できない 5. おわりに自転車の歩道通行の是非は安全面のみから語られるべきものではない 歩道通行は問題の多い通行方法で 岡並木 24) は 安易な妥協 と批判している 筆者がまとめて整理すると次のようになる 理由や根拠は拙著 21) を参考していただければ幸いである (1) 歩行者の安全性を奪う (2) 自転車の利便性を失う歩道上では法律により徐行が義務付けられている 速度は歩行に対して自転車の最大のメリットであるが 歩道上では発揮できない (3) 制度的に破たん歩道上では法律により徐行 歩道中央より車道寄りを走行 歩行者優先が謳われ罰則もあるが いずれも実施困難で 取締りもほぼ不可能に近い 違反なしで歩道を通行することは困難で 制度として破綻している (4) 違反を誘発自由に歩行者 車両と立場を変えられるので 自分勝 4

手にルールを解釈し モラルハザードが起きやすい 以上のことから例え安全性に問題があっても自転車の車道通行は推進しなければならない 歩道通行を選択することなく車道上の安全性を向上させる努力をするべきである ここで収集できた文献は十分とはいえないが まだ自転車の歩車道別事故率比較の研究自体が不足していると考えられる 歩道通行から車道通行へ変えるため先に示したデータ収集の問題点を解決し より客観性の高い安全性の評価と歩道通行政策の総括が必要である 参考文献 1) 疋田智 小林成基 : 自転車はここを走る! 枻出版社 2012 年 3 月 2) 古倉宗治 : 成功する自転車まちづくり政策と計画のポイント 学芸出版社 2010 年 10 月 3) 小林靖 : 自転車事故の実態と自転車の正しい利用対策 月刊交通 pp.17-33 1995 年 2 月 4) 高橋征宏 : 岩手県内の自転車事故の特徴と対策について 月刊交通 pp.19-29 2011 年 2 月 5) 自転車安全対策検討懇談会 : 自転車の安全利用の促進に関する提言 p.18 平成 18 年 11 月 http://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/bicycle/pdf/200611_t eigen/honbun.pdf 6) 横関俊也 : 歩道のある道路における自転車関連事故の傾向について 月刊交通 pp. 88-98 2013 年 10 月 7) 森美樹 : 自転車交通のあり方歩道を走れるようになったが - 人と車 pp.4-7 昭和 52 年 6 月 8) 文献 5)p.17 9) 松本幸司 : 自転車走行環境整備の現状と課題 ~ 自転車事故発生状況と交差点対策に着目して~ 土木計画学ワンディセミナー No.53 2009 10) 岡田紫恵奈 鈴木美緒 屋井鉄雄 : 歩道を有する道路の自転車事故分析 第 45 回土木計画学研究 講演集 CD-ROM 2012 年 6 月 11)William W. Hunter, Jane C. Stutts, Wayne E. Pein and Chante L. Cox: Pedestrian and Bicycle Crash Type of the Early 1990 s, FHWA-RD-95-163,p111, June 1996 http://katana.hsrc.unc.edu/cms/downloads/pedbikecrashtyp es.pdf 12) 古倉宗治 : 自転車による交通事故と道路等の環境整備 自治体法務研究 第 35 巻冬号 pp.13-18 2013 年 12 月 13) 亀井省吾 吉田長裕 日野泰雄 : 事故の深刻度を考慮した幹線道路における自転車事故のリスク分析 第 40 回土木計画学研究 講演集 CD-ROM 2009 年 11 月 14) 小川圭一 森本一弘 : 交差点通行回数を考慮した自転車の通 行位置と進行方向による交通事故遭遇確率の比較分析 第 46 回土木計画学研究 講演集 CD-ROM 2012 年 11 月 15)Lisa Aultman-Hall and Michael F. Adams Jr.:Sidewalk Bicycleing Safety Issues, Transportation Research Board 77th Annual Meeting, January 11-15, 1998 http://www.bikexprt.com/bikepol/facil/sidepath/research/ Aultman-Hall%20sidewalk.pdf 16) 国土交通省 警察庁 : 安全で快適な自転車利用環境の創出に向けた検討委員会第 2 回委員会資料 2 平成 23 年 12 月 15 日 http://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/cyclists/pdf2/2.pdf 17)Ministerie van Verkeer en Waterstaat:Cycling in the Netherlands, p.14 2009 http://www.fietsberaad.nl/library/repository/bestanden/c yclinginthenetherlands2009.pdf 18) 内閣府政策統括官 ( 共生社会政策担当 ) 付交通安全対策担当 : 自転車交通の総合的な安全性向上策に関する調査報告書 平成 23 年 3 月 http://www8.cao.go.jp/koutu/chou-ken/h22/pdf/houkoku/5-1.pdf 19) 久保田尚 : みんなにやさしい自転車環境 交通工学 第 47 巻第 4 号 pp.1-2 2012 年 10 月 2013 年 10 月 20) 元田良孝 : 自転車を巡る問題と自治体の条例制定について 歩道通行は日本の恥 都市問題 pp.4-9 2014 年 2 月 21) 徳田克己 : 障害児に対する交通安全教育と一般市民に対する交通バリアフリー教育 国際交通安全学会誌 第 27 巻第 1 号 pp.32-44 平成 13 年 12 月 22) 村上ひとみ 月川雅洋 喜多村俊朗 : 高齢者の自転車ヒヤリ ハット調査と自転車走行空間に関する研究 山口県宇部市の事例 第 47 回土木計画学研究 講演集 CD-ROM 2013 年 6 月 23) 萩田賢司 森健二 横関俊也 矢野伸裕 牧下寛 : 走行位置に注目した自転車事故の分析 第 45 回土木計画学研究 講演集 CD-ROM 2012 年 6 月 24) 岡並木 : 安易な妥協 自転車の歩道通行可 労働衛生 第 25 巻第 3 号 pp.44-45 1984 年 3 月 (2014.4.23 受付 ) 5

LITERATURE REVIEW OF SAFETY OF BICYCLE ON SIDE WALK Yoshitaka MOTODA, Seiji USAMI In Japan, bicycle has been allowed to run on sidewalk to secure safety since 1970. However, there is no evidence to prove safety of bicycle running on sidewalk compared with on carriageway. In this paper, comparison of safety of bicycle on sidewalk and carriageway by literature review was done. As a result, foreign researches showed clear evidence that sidewalk is more dangerous than carriageway. As for domestic research, no significant difference between safety on sidewalk and carriageway had been found. Therefore, running on sidewalk by bicycle has no effect on safety. 6