佐臨技 新入会員研修会 データの見かた 読みかた 凝固検査

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当院の血液検査室の概要 血液検査 system 自動血球分析装置塗抹標本作製装置 La-vietal LS (Sysmex 社 ) XN-3000 (Sysmex 社 ) XN 台 ( RET WPC PLT-F の各チャンネル ) XN 台 SP-10 (Sysmex

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九州支部卒後研修会症例

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頻度 頻度 播種性血管内凝固 (DIC) での使用 前期 後期 PLT 数 大半が Plt 2.5 万 /ml 以下で使用 使用指針 血小板数が急速に 5 万 /μl 未満へと低下 出血傾向を認

前回処方薬のワーファリン錠からリクシアナ錠に切り替えることについて 処方医から患者に休薬期間の指示はなかった また 患者に PT-INR について確認したが分からないという返答であった PT-INR 等が治療域下限以下になった上での切り替えであるか不明であるため疑義照会を行った 疑義照会の会話例 患

参考 9 大量出血や急速出血に対する対処 2) 投与方法 (1) 使用血液 3) 使用上の注意 (1) 溶血の防止 参考 9 大量出血や急速出血に対する対処 参考 11 慢性貧血患者における代償反応 2) 投与方法 (1) 使用血液 3) 使用上の注意 (1) 溶血の防止 赤血球液 RBC 赤血球液

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検査項目情報 von Willebrand 因子 ( フォン ウィルレブランド因子 ) Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital 一次サンプル採取マニュアル 血液学的検査 >> 2B. 凝固 線溶関連検査

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検査項目情報 γ-gtp ( ガンマ-グルタミルトランスペプチダーゼ ) [ 血清 ] gamma glutamyl transpeptidase 連絡先 : 3487 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10) 3B090 分析物 γ-

血糖高いのは朝食後のため検査項目 下限値上限値 単位名称 9 月 3 日 9 月 6 日 9 月 15 日 9 月 18 日 9 月 21 日 9 月 24 日 9 月 28 日 10 月 1 日 10 月 3 日 10 月 5 日 10 月 9 日 10 月 12 日 10 月 15 日 10 月

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ータについては Table 3 に示した 両製剤とも投与後血漿中ロスバスタチン濃度が上昇し 試験製剤で 4.7±.7 時間 標準製剤で 4.6±1. 時間に Tmaxに達した また Cmaxは試験製剤で 6.3±3.13 標準製剤で 6.8±2.49 であった AUCt は試験製剤で 62.24±2

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C1,C2 血液凝固 (PT APTT フィブリノーゲン ) はじめに 血液凝固検査は 昨年同様 日臨技の精度管理調査に倣い PT,APTT, フィブリノーゲンの 3 項目のみの調査を実施した 同一地域内で ほぼ例年参加施設 ( 母集団 ) が一定である点を生かし 出来るだけ経年的な変化を施設毎にモ

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平成20年5月20日

貧血 

本日の内容 HbA1c 測定方法別原理と特徴 HPLC 法 免疫法 酵素法 原理差による測定値の乖離要因

平成 29 年 ₈ 月 15 日発行広島市医師会だより ( 第 616 号付録 ) 免疫血清分野 尿一般分野病理分野細胞診分野血液一般分野生化学分野先天性代謝異常分野 細菌分野 末梢血液一般検査の測定結果への影響 ~ 自動血球分析装置の誤差要因 ~ 検査科血液 尿一般係 はじめに近年 自動血球分析装

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る試薬間差を認めた ±3SD で 2 回棄却後の変動係数 (CV) は 正常域試料 C1 は 4.2 % で昨年度 (4.2 %) 同様であったが 異常域試料 C2 は 13.7 %( 同 17.9 %) と改善が認められた C1 C2 共に C 評価 (±3SDI 以上 ) の施設は 3 施設で

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オクノベル錠 150 mg オクノベル錠 300 mg オクノベル内用懸濁液 6% 2.1 第 2 部目次 ノーベルファーマ株式会社

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3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

検査項目情報 トータルHCG-β ( インタクトHCG+ フリー HCG-βサブユニット ) ( 緊急検査室 ) chorionic gonadotropin 連絡先 : 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10)

10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32

スライド 1

甲状腺機能が亢進して体内に甲状腺ホルモンが増えた状態になります TSH レセプター抗体は胎盤を通過して胎児の甲状腺にも影響します 母体の TSH レセプター抗体の量が多いと胎児に甲状腺機能亢進症を引き起こす可能性が高まります その場合 胎児の心拍数が上昇しひどい時には胎児が心不全となったり 胎児の成

1 8 ぜ 表2 入院時検査成績 2 諺齢 APTT ALP 1471U I Fib 274 LDH 2971U 1 AT3 FDP alb 4 2 BUN 16 Cr K4 O Cl g dl O DLST 許 皇磯 二 図1 入院時胸骨骨髄像 低形成で 異常細胞は認め

パナテスト ラットβ2マイクログロブリン

検査項目情報 6475 ヒト TARC 一次サンプル採取マニュアル 5. 免疫学的検査 >> 5J. サイトカイン >> 5J228. ヒトTARC Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital Ver.6 thymus a

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全自動血液凝固分析装置コアプレスタ2000の導入および24時間緊急検査対応の検討

Ⅰ. 改訂内容 ( 部変更 ) ペルサンチン 錠 12.5 改 訂 後 改 訂 前 (1) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本剤の作用が増強され, 副作用が発現するおそれがあるので, 併用しないこと ( 過量投与 の項参照) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本

シプロフロキサシン錠 100mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにシプロフロキサシン塩酸塩は グラム陽性菌 ( ブドウ球菌 レンサ球菌など ) や緑膿菌を含むグラム陰性菌 ( 大腸菌 肺炎球菌など ) に強い抗菌力を示すように広い抗菌スペクトルを

検査項目情報 P-ANCA Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital 一次サンプル採取マニュアル 免疫学的検査 >> 5G. 自己免疫関連検査 >> 5G552.P-ANCA Ver.7 perinucl

(2) 確認事項と対処 まず1~3の項目をチェックする 確認事項 対処 1 飲み忘れはなかったか 入院患者でも 服用を目視で確認してない場合は コンプライアンスの状況に注意する 2 併用薬 食事内容に変化はなかったか ビタミンK 含有量の多い食品やいわゆる健康食品などの摂取を十分にチェックする 患者

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検査項目情報 LDH アイソザイム ( 乳酸脱水素酵素アイソザイム ) Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital 一次サンプル採取マニュアル 生化学的検査 >> 3B. 酵素および関連物質 >> 3B05

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一次サンプル採取マニュアル PM 共通 0001 Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital その他の検体検査 >> 8C. 遺伝子関連検査受託終了項目 23th May EGFR 遺伝子変異検

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1 末梢血標本の着眼.ppt

変更一覧表 変更内容新現備考 Peak 50~60 Trough 4 未満 Peak 20.0~30.0 Trough 8.0 以下 アミカシン 静注投与後 1 時間 Trough 1 未満 Peak 4.0~9.0 Trough 2.0 以下 トブラマイシン 静注投与後

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実践!輸血ポケットマニュアル

を確認しました 本装置を用いて 血栓形成には血液中のどのような成分 ( 白血球 赤血球 血小板など ) が関与しているかを調べ 血液の凝固を引き起こす トリガー が何であるかをレオロジー ( 流れと変形に関わるサイエンス ) 的および生化学的に明らかにすることとしました 2. 研究手法と成果 1)

生化学検査 臨床検査基準値一覧 近畿大学病院 (1) 検査項目 基準値 単位 検査項目 基準値 単位 CRP mg/dl WBC /μl Na mmol/l M RBC K mmol/l F 3.86-

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288 自己免疫性後天性凝固因子欠乏症 概要 1. 概要血液が凝固するために必要なタンパク質である凝固因子が 先天性や遺伝性ではない理由で著しく減少するため 止血のための止血栓ができにくくなったり 弱くなって簡単に壊れやすくなり 自然にあるいは軽い打撲などでさえ重い出血を起こす疾病である ここでは

診療のガイドライン産科編2014(A4)/fujgs2014‐114(大扉)

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検査項目情報 MCV mean corpuscular volume 連絡先 : 3482 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10) 診療報酬 分析物 Department of Clinical Laboratory, Kyoto U

1) 自己免疫性後天性 F13 欠乏症では 出血を止めるために F13 濃縮製剤を注射することが必要である ただし 自己抗体によるインヒビターや免疫複合体除去亢進があるので 注射した F13 が著しく早く効かなくなるため 止血するまで投与薬の増量 追加を試みるべきである 2) 自己免疫性後天性 F8

血球数算定 ( 血算 ) NTT 東日本関東病院臨床検査部 栗原正博

(1) ) ) (2) (3) (4) (5) (1) (2) b (3)..

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検査項目情報 抗アクアポリン 4 抗体 Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital 一次サンプル採取マニュアル 免疫学的検査 >> 5G. 自己免疫関連検査 >> 5G821. 抗アクアポリン4 抗体 Ve

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岐臨技精度管理事業部平成 25 年度総括集 血液検査 横山裕子 はじめに 今年度の精度管理は, 血球計数,photo survey, 凝固検査を実施した. また, 凝固検査についてのアンケート調査を行った. 血球計数 調査項目白血球 赤血球 ヘモグロビン MCV 血小板 調査試料 ヒト新

輸液製剤

TTP 治療ガイド ( 第二版 ) 作成厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業 血液凝固異常症等に関する研究班 ( 主任研究者村田満 ) 血栓性血小板減少性紫斑病 (thrombotic thrombocytopenic purpura:ttp) は 緊急に治療を必要とする致死的疾患である

125 2 P 1st washout 2 PB P mg/dL nd washout 2 P 5.5mg/dL< mg/dL <2.5mg/dL P P 2 D D 3 Ca 10

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あった AUCtはで ± ng hr/ml で ± ng hr/ml であった 2. バイオアベイラビリティの比較およびの薬物動態パラメータにおける分散分析の結果を Table 4 に示した また 得られた AUCtおよび Cmaxについてとの対数値

くは不育症プラス特異的自己抗体をもって APS と定義するシンプルな構造になっているこ と 続発性または二次性という用語は使用せず それぞれに合併した APS と表現すること を推奨している点です APS の症状 APS の頻度の高い症状として 脳 心臓 肺などの動静脈血栓症 習慣流産 血小板減少

スライド 1

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使用上の注意 1. 慎重投与 ( 次の患者には慎重に投与すること ) 1 2X X 重要な基本的注意 1TNF 2TNF TNF 3 X - CT X 4TNFB HBsHBcHBs B B B B 5 6TNF 7 8dsDNA d

よる感染症は これまでは多くの有効な抗菌薬がありましたが ESBL 産生菌による場合はカルバペネム系薬でないと治療困難という状況になっています CLSI 標準法さて このような薬剤耐性菌を患者検体から検出するには 微生物検査という臨床検査が不可欠です 微生物検査は 患者検体から感染症の原因となる起炎

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後天性血友病アンケート(Homepage用)

はじめに この 成人 T 細胞白血病リンパ腫 (ATLL) の治療日記 は を服用される患者さんが 服用状況 体調の変化 検査結果の経過などを記録するための冊子です は 催奇形性があり サリドマイドの同類薬です は 胎児 ( お腹の赤ちゃん ) に障害を起こす可能性があります 生まれてくる赤ちゃんに

CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

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お助け!!検査ガイドブック

シンポジウム シンポジウム Ⅳ 血液 第 2 日目 ( 5 月 15 日 ) 第 1 会場 ( 和ホールA) 14:30~16:30 臨床との連携について考える ~よりよい臨床支援を目指して~ 司会 : 米本隆浩 ( りんくう総合医療センター ) 中村好伸 ( 和歌山県立医科大学附属病院 ) 58

検査項目情報 1208 Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital 一次サンプル採取マニュアル 3. 生化学的検査 >> 3B. 酵素および関連物質 >> 3B190.PSTI ( 膵分泌性トリプシンインヒビター ) PS

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目次 1. はじめに 2 2. 適用範囲 3 3. マスターレイアウト 3 4. 結果コメント一覧 5 5. 臨床検査データ交換規約 ( 暫定版 ) で規定された結果コメントとの相違 5 別添 1 結果コメント一覧 Copyright 2016 一般財団法人医療情報システム開発センター ( MEDI

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佐臨技 新入会員研修会 データの見かた 読みかた 凝固検査

凝固検査の意義 凝固線溶系の病態の把握止血機能の確認 ( 術前検査など ) DICなど 血栓症や出血の原因を調べる 血栓症治療効果 ( 抗凝固剤使用 ) のモニタリングワーファリン ヘパリンなど 先天性凝固因子欠損の診断血友病 von Willebrand 病など その他ビタミンK 欠乏症 肝機能障害 緊急性を要する場合もあり 迅速性かつ正確性が求められる重要な検査である 多くの検査が in-vitro ヒトや動物の組織を用いて体内と同様の環境を人工的に作り 薬物の反応 ( 酵素反応 ) を検出する検査である

検査値に影響を与える要因 非常に繊細な検査であるため 1 体内や試薬の状態がテ ータに影響を与えやすい 2 標準化が難しい検査分野である

採血採血管抗凝固剤の濃度採血比 注射針を1 回で血管内に刺入し 組織液の混入を防ぐ真空採血管の場合 第 1 番目の採血管には凝固検査用を用いず 第 2 番目またはできるだけ最後に凝固検査用を採取する 点滴ラインでの採血は避ける ( 点滴薬による希釈の影響を避けるため ) シリコン処理カ ラス採血管またはフ ラスチック採血管を使用 CLSI によるカ イト ラインでは血液とほぼ等張である 3.2%(0.105~0.109mmol/L) クエン酸 Na2 水塩を推奨 抗凝固剤 : 全血 =1:9 を出来るだけ正確に守る 1 分以内に3~6 回転倒混和を行う HCT55% 以上は抗凝固剤の量を調節する 遠心分離 3000rpmで15 分間 * 凝固因子は非常にテ リケートなため 採血後 1 時間以内に遠心分離を行う * 血小板血漿は第 Ⅲ 因子や第 Ⅳ 因子 それ以外の凝固因子を含んでいるため 通常の凝固検査には欠乏血小板血漿を用いる 保存室温であれば 4 時間以内 * 密閉せずに放置すると CO2 を失って ph が変化するので注意!! 凍結 -70 約 6ヶ月,-20 約 2 週間 * 血球成分を除去後凍結保存用フ ラスチック容器に移し替え 完全密封で急速冷凍 融解 37 急速融解の後 2~4 で保存して 2 時間以内で測定 * 融解は 1 回まで 検体性状 溶血 : 採血不良の可能性あり 乳び : 強乳びは検体として不適

凝固検査を理解するには まず 凝固カスケード です

陰性荷電面 内因系 外因系 Ⅻ Ⅻa 内因系 : 接触因子 Ⅺ Ⅸ Ca 2+ Ⅺa Ⅸa Ⅶa Ⅶ 外因系 : 組織因子 (TF) PL Ⅷa Ca 2+ Ⅲ(TF) Ca 2+ Ⅹ 共通系 Ⅹa PL Ⅴa Ca 2+ 凝固検査では不安定フィブリンが析出した時点を凝固点とみなす Ⅱ( プロトロンビン ) Ⅱa( トロンビン ) Ca 2+ XⅢ XⅢa Ⅰ( フィブリノゲン ) 不安定フィブリン 安定化フィブリン

内因系代表 APTT Ⅻ Ⅺ Ⅸ Ⅷ Ⅹ Ⅴ Ⅱ Ⅰ 外因系代表 PT 共通系代表 Fbg Ⅶ Ⅹ Ⅴ Ⅱ Ⅰ Ⅰ

陰性荷電面 内因系 外因系 Ⅻ Ⅻa Ⅺ Ⅺa Ⅸ Ca 2+ Ⅸa PL Ⅷ Caa 2+ Ⅶa Ⅲ(TF) Ca 2+ Ⅶ 線溶系 Ⅹ 共通系 Ⅹa PL Ⅴa Ca 2+ Ⅱ( プロトロンビン ) Ⅱa( トロンビン ) Ca 2+ プラスミノゲン プラスミノゲンアクチベーター (tpa,upa) プラスミン Ⅰ( フィブリノゲン ) XⅢ XⅢa フィブリン ( フィブリン分解産物 ) FDP

* 分解産物はどの段階でのフィフ リンを分解するかによってできるものが異なる FDP フィブリノゲン フィブリンモノマー 不安定化フィブリンがプラスミンによって分解されたもの Dダイマー安定化フィブリンは架橋構造により安定化しているため 分解されてもD 分画 2つとE 分画 1つの組み合わさった単位は残る 分解されたものがD 分画を2つ必ず有するため D-ダイマー と名付けられている *DDはFDPの一部

基準値 ( 佐賀大学病院 ) 項目 PT 秒 PT % PT-INR APTT 秒 APTT % Fib mg/dl FDP μg/dl DD μg/dl 基準範囲 10.0~13.0 70~130 0.90~1.10 25.0~40.0 70~130 200.0~400.0 0.0~5.0 0.00~1.00 ざっくり言うと PT は 12 秒くらい APTT は 33 秒くらいです 測定装置 測定法 試薬によって異なります

基本をふまえた上で 症例です

症例 1 32 歳女性循環器内科外来入院前検査 前回値初検値 PT 秒 16.3 >120 PT % 49.2 <5.0 PT INR 1.46 APTT 秒 34.1 27.3 APTT % 95.3 134.8 Fib mg/dl 281 219 5 分後再検値 15.2 56.5 1.35 27.1 135.5 198 延長? 不安定 短縮? 採血のやり直し 再提出を依頼 凝固塊

症例 1 前回値初検値 PT 秒 16.3 >120 PT % 49.2 <5.0 PT INR 1.46 APTT 秒 34.1 27.3 APTT % 95.3 134.8 Fib mg/dl 281 219 DD μg/ml FDP μg/ml 5 分後再検値 15.2 56.5 1.35 27.1 135.5 198 30 分後再検値とりなおし >120 16.0 <5.0 51.6 1.42 >200 32.0 <10.0 104.7 未検出 325 16.25 29.0

症例 2 67 歳男性 ICU 入院中 前回値 今回値 PT 秒 13.4 15.5 PT % 71.3 54.5 PT INR 1.18 1.37 APTT 秒 45.3 >200 APTT % 64.2 <10.0 CBC を確認 Hb 8.3 6.8 ヘパリン使用の有無を確認 輸液の混入が疑われる 採血のやり直し 再提出を依頼 延長特に APTT とりなおし 13.5 70.2 1.19 42.5 69.9 8.0

症例 3 24 歳男性救急外来受診 今回値 PT 秒 10.3 PT % 137.3 PT INR 0.88 APTT 秒 28.2 APTT % 127.7 Fib mg/dl 191 WBC 7800 RBC( 百万 ) 485 Hb 15.1 PLT 2.3 全体的に短縮 やや低下 組織因子の混入などにより採血管内で凝固反応が活性化 過凝固状態が考えられる とりなおし 12.1 88.9 1.04 39.8 73.8 264 7600 478 14.8 15.7

症例 1~3 のポイント 採血手技に起因するデータ異常の例 とりなおしにより改善 遠心前 後の検体の観察が大事 検体が固まっていないかよく見ること 見る癖をつけること 前回値 再検値との比較 他の検査項目にも注目 凝固塊 遠心すると

症例 4 80 歳男性循環器内科外来定期受診時 8/22 8/23 9/12 PT 秒 15.6 21.7 89.7 PT % 53.2 31.3 5.6 PT INR 1.39 2.00 9.89 9/12 9/13 24.7 17.7 26.1 42.9 2.33 1.61 延長! 慢性心不全 非閉塞性肥大型心筋症の既往あり ICD( 植込み型除細動器 ) 植え込み後 ワーファリン使用中 採血後の血がとまらない ワーファリンのコントロール不良例 ワーファリンを一旦中止し ViK 投与目的で緊急入院

ワーファリン ビタミンKに類似した物質で 肝臓におけるビタミンK 代謝に関与する酵素を競合的に阻害する ビタミンK 依存凝固因子 ( 第 Ⅱ Ⅶ Ⅸ Ⅹ 因子 ) の生合成を抑制 十分な効果は服用後 36~48 時間後に得られる 服用中止後も作用は48~72 時間持続する PT(INR) によってモニタリングされる 通常の服用量ではAPTTの延長度合いは軽度 胎盤通過性がある ( 胎児への影響あり ) 薬剤や食品との相互作用が非常に多い 納豆 青汁 クロレラなどなど ビタミンKを多く含み ワーファリンの作用を減弱させる 抗生剤 抗真菌剤などなど ワーファリン代謝酵素阻害 腸内細菌減少などで作用を増強

新しい経口抗凝固薬 定期モニタリングの不要な経口トロンビン阻害薬 プラザキサ ダビガトランエテキシラート 気軽に処方された結果 発売後5ヶ月の間に出血性 副作用での死亡例が5例発生

ヘパリン類 一般的に未分画ヘパリンが用いられている ATの作用を触媒する ATの作用 : 抗トロンビン 抗 Ⅹa 抗 Ⅸa 抗 Ⅺa 即時的に作用する 作用は投与中止後 2~4 時間持続する 硫酸プロタミンにより急速にヘパリンの作用を抑制することができる コントロールが比較的容易である APTTでモニタリングされる ( 通常 1.5~2 倍 ) ベッドサイドでは ACTでモニタリングすることが多い ATが低下すると目標とする効果が得られない HIT( ヘパリン起因性血小板減少症 ) が発症する場合がある

APTT 試薬のヘパリン感受性の違い 山崎哲ら :APTT の現状と標準化に向けた課題. 生物試料分析 Vol. 32, No 5 (2009)

症例 5 73 歳女性交通外傷にて救急搬送 9/15 9/16 9/16 PT 秒 12.6 16.2 15.3 PT % 81.4 50.5 55.8 PT INR 1.09 1.44 1.35 APTT 秒 32.2 83.3 156.5 APTT % 101.5 29.4 14.6 Fib mg/dl 178 90 117 FDPμg/mL 151.5 106.4 PT APTT 延長 凝固塊の有無 なし 輸液等の混入 なし 薬剤 ( ワーファリン ヘパリン等) なし PLT 低下 FDP DD 増加 DIC DD μg/ml 86.83 55.36 PLT 18.5 7.5 5.4

DIC( 播種性血管内凝固症候群 ) 敗血症 白血病 固形癌外傷 熱傷 肝炎 ショック PT APTT 延長 Fib 低下 AT 低下 FDP DD 増加

症例 6 70 歳男性呼吸器内科入院中間質性肺炎慢性腎不全肺水腫 10/31 11/1 PT 秒 11.2 12.1 11/19 55.6 11/20 61.0 PT APTT が共に延長 PT % 132.1 109.7 PT INR 0.89 0.96 APTT 秒 32.8 35.9 APTT % 110.3 97.0 10.1 5.20 126.6 35.2 9.5 5.79 140.9 18.4 凝固塊の有無 なし 輸液等の混入 なし 薬剤 ( ワーファリン ヘパリン等) なし DIC(Fib PLT DD FDP ) なし Fib mg/dl 534 671 DD μg/ml 1.85 1.77 605 1.73 567 1.52 肝臓での蛋白合成能の低下 CBC 生化学データ PLT 万 /μl 16.8 17.3 22.7 23.5 共通系の異常??

症例 6 追加検査 ATⅢ TAT SFMC A2PI PIC DIC の検査マーカー 凝固亢進を反映 線溶亢進を反映 PIVKA-Ⅱ ビタミン K 依存性凝固因子 (Ⅱ,Ⅶ,Ⅸ,Ⅹ,PS,PC) クロスミキシングテスト 患者血漿と正常血漿を混合 (0:10 2:8 5:5 8:2 10:0 の割合 ) し各凝固時間を測定 治療等によるもの以外で 凝固時間が延長する理由 凝固因子の欠乏 ループスアンチコアグラントや凝固因子に対する抗体 ( 循環抗凝血素 インヒビター ) の存在

症例 6 追加検査の結果 ATⅢ(%) 67.0 A2PI 94 PIVKA-Ⅱ 2.0 PIC 1.74 TAT 1.1 SFMC 8.6 APTT(sec) 250 200 150 100 クロスミキシングテスト (APTT) 混和直後 2H 後 50 0 因子欠乏パターン? 100 75 50 25 0 患者血漿 % Vi K 欠乏 Vi K を投与するも改善はみられず

症例 6 追加検査 2 各凝固因子活性 F-2(%) 44 F-5(%) 1.5 F-7(%) 111.3 クロスミキシングテスト (PT) 80 70 60 混和直後 2H 後 F-8(%) >200.0 F-9(%) 20.1 F-10(%) 56.3 PT(sec) 50 40 30 20 10 インヒビターパターン 100 75 50 25 0 患者血漿 (%) 後天性第 5 因子インヒビター

症例 7 6 歳男性頭痛と前額部腫脹で救急外来受診 WBC /μl 10700 RBC 百万 /μl 4.68 Hb g/dl 14.0 Ht % 36.4 MCV 77.8 MCH 29.9 MCHC 38.5 PLT 万 /μl 24.8 Neut % 56.1 Lympho % 32.5 Mono % 5.4 Eosino % 5.4 Baso % 0.6 PT 秒 >120 PT % <5.0 PT INR --- APTT 秒 >200 APTT % <10.0 Fib mg/dl --- FDP μg/ml --- DD μg/ml --- 本当に延長??? 強いにゅうび

症例 7 凝固反応曲線を確認してみると 実際には凝固反応は起こっているが にゅうびによる干渉を受け凝固点を検出できていない 延長しているのではなく 強いにゅうびによる測定不能であることを臨床に伝える!

症例 7 WBC /μl 10700 RBC 百万 /μl 4.68 Hb g/dl 14.0 Ht % 36.4 MCV 77.8 MCH 29.9 MCHC 38.5 PLT 万 /μl 24.8 Neut % 56.1 Lympho % 32.5 Mono % 5.4 Eosino % 5.4 Baso % 0.6 10700 4.68 11.4 36.4 77.8 24.4 31.4 24.8 56.1 32.5 5.4 5.4 0.6 PT 秒 >120 PT % <5.0 PT INR --- APTT 秒 >200 APTT % <10.0 Fib mg/dl --- FDP μg/ml --- DD μg/ml --- 1 時間後にとりなおし 11.2 108.2 0.96 34.5 93.6 250 2.8 0.82 Fib FDP DD は希釈をして測定可能

パニック値 PT-INR:3.0 以上 APTT:50 秒以上 Fib:100 mg/dl 以下 FDP:40 μg/ml 以上

まとめ 遠心前後の検体をよく観察すること 前回値 再検値との比較をすること 異常データの時には患者の状態を把握すること ( 臨床への問い合わせ カルテの確認 ) ( 主に凝固検査を担当される方 ) 凝固反応曲線を見ること 自施設での検査法 試薬の特徴を把握すること

以上です おつかれさまでした