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目 次


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₁₀) 表 1. 穀類 100 あたりの栄養成分 エネルギー kcal タンパク質 脂質 炭水化物 カリウム m 水溶性食物繊維 不溶性食物繊維 大麦押麦 ₃₄₀ ₆.₂ ₁.₃ ₇₇.₈ ₁₇₀ ₆.₀ ₃.₆ 大麦米粒麦 ₃₄₀ ₇.₀ ₂.₁ ₇₆.₂ ₁₇₀ ₆.₀ ₂.₇ 小麦 ₃₃₇ ₁

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238 古川智樹 機能を持っていると思われる そして 3のように単独で発話される場合もあ れば 5の あ なるほどね のように あ の後続に他の形式がつく場合も あり あ は様々な位置 形式で会話の中に現れることがわかる では 話し手の発話を受けて聞き手が発する あ はどのような機能を持つ のであろ

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233 第四回日露協約と英米協調路線の再考 石井菊次郎を中心に

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3. ➀ 1 1 ➁ 2 ➀ ➁ /

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スポーツ運動学研究 32:29~42,2019 原著論文 ハンドボール競技における 即興的なコンビネーションに関する研究 速攻局面におけるスカイプレーの発生分析 丸井一誠金沢星稜大学 Improvised combinations in handball: A phenomenological analysis of the sky play Kazumasa MARUI Abstract This study aimed to clarify how coaches and players generated improvisational combinations, focusing on the sky play in the fast break phase of handball. Phenomenological analysis was used to survey coaches and players about kinesthesis. The study found that combinations can make use of the movements of parts and misdirect opponent. In order to generate a combination, individual movements must be made according to the coach s game plan. Repeated practice of the play is required in order to improve performance and kinesthetic intersubjectivity according to the situation. In that case, the use of kinesthetic language can create empathy between the coach and the player. Players can then confirm the coach s message and relay it to other players. The receiving player then interprets it based on the information gathered by their visual and auditory senses. Ⅰ. はじめにハンドボールの競技特性のひとつにゴール前にはゴールエリアという特殊なエリアがある 攻撃をする選手はゴールエリア付近に敷かれている相手の防御陣形を突破して確率の高いシュートを選択して打とうとすることから, ハンドボールはゴールエリア付近の攻防に特徴が表れる そのゴールエリアにはゴールキーパーしか入ることが できず, 攻撃や防御をする選手は原則, 侵入することはできない 例外として, 攻撃側の選手同士が連係し, ゴールエリア上にパスされた高いボールを空中でキャッチし, そのまま着地せずにシュートを行うことはルール上認められ, それはスカイプレーと呼ばれる スカイプレーはパスの出し手と受け手が ドンピシャリ のタイミングで動きを合わせなければ, 得点することが難しく, 失敗すれば, 相手に 29

攻撃権が移る可能性のあるプレーであることか ら, チームのグループ戦術として選択されることは少ない そのためスカイプレーは成功させることは難しいが, ゴールエリアの空中でプレーすることから防御側にとっては守りにくい特徴がある 元来, ハンドボールのみならず, ゴール型の球技種目はルールの範囲内の行為で, 得点がしやすい相手のゴール前までボールを運び, 最終的に相手より多く得点することがゲーム理念としてあ ( 注る 組織攻撃の局面 1) では対峙する相手を抜いてかわしたり, ブロックプレーで崩したり, マークチェンジミス ( 注 2) を引き起こして数的優位を作るなどして, シュートをする機会を増やし, 得点を重ねていく 加えて速攻局面では, 相手が自陣で防御陣形を整える前に, 素早く攻め込んで優位な情況でシュートを試みることは合目的的といえる スカイプレーは組織攻撃の局面において攻撃者同士でパスをゆっくり回しながら, チーム全体で次の動きを事前に確認して意志統一をすることができる場面にて行われることは稀にある 速攻局面におけるスカイプレーは, 組織攻撃の局面におけるスカイプレーと比べ, ゲーム情況を瞬時に把握し, 的確に自らの動きを決断する早さや走りだすタイミングやその方向, さらにボールをゴールエリアに飛び込む味方に合わせたパスの速さや軌道の精確性等, 時空間の制限を踏まえて, 達成することが求められる したがって速攻局面におけるスカイプレーは, ごく一部の競技力の高いチー ( 注 3) ムにしかできない動きであり, 卓越した即興的なコンビネーションの代表といえる 即興性に基づくコンビネーションは, 複雑で可変的なゲーム情況下で瞬時に遂行され, 本人が無意識のうちにできてしまっていることは少なくないことから動感言語化したり ( 金子,₂₀₀₅,p.₁₉₄), 動感志向性の分析をすることは難しいとされてきた 速攻局面における即興的なスカイプレーはゲーム情況によっては有効な動きであるが, それらを身につけるには選手やコーチはどのような意味を持って行っているのか, そしてどのように価値づけて行っているのか, またどのような練習過程を 経て, どのように動感を作用させて発生させていくのかは明らかにされていない これまでハンドボール競技において攻撃における個人の動きの発生に関する事例研究はあるが ( 會田,₂₀₀₈,pp.₆₁-₇₄), 味方同士のコンビネーションに着目した研究は少ない またゴール型競技における攻撃側のコンビネーションに関する先行研究では, サッカー競技においてボールを味方同士でつないでいくパスの研究があり, 構造的に体感身体知を整理することを試みている ( 寺田ら,₂₀₁₅,pp.₃₁-₅₃) さらには くさびのパス に着目し, その具体的な指導事例を基に, 促発指導に関する研究もある ( 曽根,₂₀₁₇,pp.₃₃-₄₈) バスケットボール競技においてはピック & ロールの動きを事例として状況を構造化にすることを試みている ( 中瀬,₂₀₁₃,pp.₂₉-₄₅) しかしながら, ゴール型の球技種目は集団として動くことから, 全体の動きをまとめるコーチのゲーム観が反映されやすいと考えられるが, 先行研究ではコーチが考えるゲーム観やゲーム構想, そして練習過程における処方まで踏み込んでおらず, 攻撃に関する即興的なコンビネーションに関する事例はまだ少ないのが現状である そこで本研究ではハンドボール競技における速攻局面にて行われた即興的なコンビネーションの典型であるスカイプレーに着目して, どのようにスカイプレーが発生されたかをゲーム観やゲーム構想, そして練習内容を基に即興的なコンビネーションについて明らかにしていくことを目的としている Ⅱ. 即興的なコンビネーションの創発 1. ゲーム観に基づくコンビネーションの表出集団性を伴う球技種目では, ルールの範囲内で, ゲーム理念を実現させるためにできる限り高い水準での意識的, 創造的な行為がゲーム活動で要求される (Stieler. et al, ₁₉₉₃, p.₅₄) そこでコーチはチームとして こんなゲームをして勝ちたい といった ゲーム観 を基に, ゲー ( 注ム構想 4) を練り, ゲームで体現できるように練習を方向づけて選手に処方していく 選手はコー 30

チが考える ゲーム観 を拠り所とし, 練習を通じて個人, グループ, 並びにチームの動きを創発していく 例えば, 速攻で多く得点して走り勝つために練習で走り込んで速攻が多く発生するようにしたり, 失点を少なくしてロースコアのゲーム展開にして接戦を勝つために防御練習に時間をかけ, 確実にシュートで終わって安易な逆速攻で失点されないように意識づけながら, ゲーム練習を行っていく このようにコーチが考える ゲーム観 は実際のゲームで選手個人, グループ, もしくはチームとして動く時における基本的な共通の考え, つまり 共通の基盤 ( 佐藤,₂₀₀₂,p.₇₇) として練習の時から意識づけられ, 具体的な動きとして創発されていくものである その考えは味方同士が協力して動くときの前提でもあるといえる 味方同士が協力して課題を達成しようとする動きは動感共働現象 ( 金子,₂₀₀₇,p.₂₆) として表出され, 前提にはコーチや選手が考える意味や価値, 動感が潜在態として含まれる ( 金子,₂₀₀₇,p.₂₈₀) それは本研究の対象である ₂ 人のコンビネーションにおいてもコーチや選手の ゲーム観 が裏付けられて表出されるものと考えられる 2. 即興的なコンビネーションにおける間動感性の創発集団性を伴う球技種目は選手同士が意志統一をして, 協力して目標を達成しようとすることはしばしばゲームにおいて観察される そのため, 個人が好き勝手に動くだけでは, 容易に得点することができなかったり, ボールを獲得することはできない コンビネーションとは 戦術的行為目標の達成のため, 複数のプレイヤーが一つのことをめざし, 目的的に協力できるようにすることである その際, プレイヤーは敵の行為を考慮し, 自分たちの行為を時空間的に協調させる必要がある (Stieler. et al, ₁₉₉₃, pp.₆₃-₆₄) 例えば, 戦術的行為目標の達成として, 得点するということであれ ( 注ば, 個人の競技力 5) を活かして個人プレーで得点する方法もあるが, 対峙する相手の競技力が自分より上回っている場合や個人プレーに対して防 御者同士が協力して守ってくる場合, 個人プレーだけで得点することは容易でない そのため味方同士で動感共働させて突破を試み, 味方が得点しやすいように相手を引きつけてパスしてシュートする方法は有効である 実際のゲームにて発生した情況を味方同士で把握し, 協力して課題を解決するには, 日ごろの練習からゲームで発生されることが予想される標準的な情況を設定し, その中で味方同士, 動きを協調させて, 自己と味方とあいだで動感が身体的に共鳴し合える 間動感性 ( 金子,₂₀₀₅,p.₃₃₅) を高めていく必要性がある そして防御陣形を崩す即興的なコンビネーションの前提には, 個人的な技術 戦術的能力が必要であり, このような能力がなければ, コンビネーションを用いても戦術的行為目標の達成はありえない つまり味方同士で動きの形を創るだけでは防御陣形を崩すことはできず, 個人の技術 戦術的能力が相手より高くなければ, 防御を破って得点するという課題は解決されない 個人的な技術 戦術的能力は相手や味方との距離感や気配を実際のゲームにて感じることができる始原身体知や, 今流れているゲーム情況において咄嗟に勝手に身体が動いてしまう形態統覚化身体知が不可欠である ゲームで即興的なコンビネーションを用いるには, 個人の技術 戦術的能力が基本にありつつ, いかなる情況においても味方同士で動きを協調させ, 高い 協力の質 (Stieler. et al, ₁₉₉₃, p.₄) で課題を達成することが求められる 即興的なコンビネーションを分析する際, 優れた選手の即興能力の中に蔵されているものを発生の始原までさかのぼって分析する必要がある ( 佐藤,₂₀₁₅,p.₅₀₈) こと, またゴール型の球技では プレイ中の運動がほとんど自動化している ( 注 6) と考えられるので, プレイにおいては戦術的な行為が際立つこと ( 佐藤,₁₉₉₃,pp.₁₆₄), さらに球技におけるゲーム情況を把握するには, 体感領域, 時間化領域, 伸長能力, 先読み能力などの多くの運動能力と絡み合い実践される ( 佐藤,₂₀₁₅,p.₅₁₀) ことから, 本研究では選手の始原身体知や形態統覚化身体知について探求的に分析していく 31

Ⅲ. 方法 1. 対象者および対象とした動き本研究を行う前に予備調査として, 競技力が高い高校生, 大学生, 実業団チームが参加する各種全国大会を ₁ 度ずつ視察し, スカイプレーをゲームの速攻局面にて行うチームを対象として絞り, ₂₀₁₅ 年に同様の各種全国大会に ₁ 度ずつ訪れ, 会場でビデオ撮影にて速攻局面におけるスカイプレーの記録を試みた 速攻局面にてスカイプレーで得点することができた成功事例として,₂₀₁₅ 年 ₁₁ 月の全日本学生ハンドボール選手権大会にて行われた A 大学の速攻局面におけるスカイプレーの ₁ プレーを採り上げた ゲーム情況は前半残り ₁ 分を切っており,A 大学は ₉ 対 ₁₄で負けており, 人数も ₁ 人 ₂ 分退場している最中で, ₆ 人対 ₇ 人の劣勢であった スカイプレーを行った A 大学のコーチ B, パスカットをしてドリブルでボールを運び, パスをした投げ手の選手 C, ゴールエリアに飛び込み, シュートを打った受け手の選手 D にスカイプレーにおける動感に関する借問し, その内容を文字起こしした A 大学は大会開催以降から連続出場し, 優勝経験もあり, 現在も常に上位に進出することから競技力の高いチームとして選定した B コーチは長年 A 大学に勤めており, 日本代表の選手経験があり, 日本代表の監督経験もある C 選手は中学 ₁ 年生からハンドボールを始め,D 選手は小学 ₃ 年生から始めた ともに当時大学 ₄ 年生であった なお, インタビューを行った筆者とはこれまで面識がなく, 初対面の状態でインタビューを行った 2. インタビュー方法借問する前に, コーチ B と選手 C,D に本研究の目的, 研究に協力することの利益と不利益, 研究協力の任意性, 個人情報の保護, 情報公開, 研究成果の報告, 研究責任者の連絡先について説明および確認をし, 書面にて合意を取って行っ た 借問する際はゲーム観やゲーム構想, スカイプレーにおける始原身体知や形態統覚化身体知に関する質問内容を筆者自らのハンドボール経験を踏まえて筆者が作成し, その質問内容についてハンドボール経験者 ₁ 名を加えて検討し, インタビューガイドとして用いて行った 表 ₁ 質問内容は初めにスカイプレーを行う前提として練習を通じてどのようになることが良いのかを理解するため指導者または選手としての理想像を確認したのち ( 質問項目 ₁, ₂,1,2), コーチについてはゲーム観やゲーム構想 ( 質問項目 3,4) とスカイプレーの意味や価値 ( 質問項目 5), スカイプレーを行う上で必要な能力や感覚 ( 質問項目 6,7,8), また伝え方 ( 質問項目 9) やその練習方法 ( 質問項目 10) に関する内容を設定した そして選手についてはスカイプレーの意味や価値 ( 質問項目 ₃ ), そしてスカイプレーに関する始原身体知や形態統覚化身体知に該当する内容を設定した ( 質問項目 ₃ ~₁₁) 質問内容は深い語りを聞き出すためにオープンクエッションにした 本研究では, 聞きたいことを確実に質問し, その語りではコーチや選手の普段から意識していない深層にある動感言語を抽出したいため, 用意したインタビューガイドを基に対象者の語りの流れに合わせつつ, より深い語りを引き出す半構造化インタビュー ( 中嶌,₂₀₁₅,p.₄₇) を行った 借問した質問項目の順序に関しては基本的にインタビューガイドの上から順に借問し, インタビューの流れや語りに応じて, 質問項目の内容に沿いながら柔軟に軌道修正しながら変化させる態度で傾聴した また語りの流れや内容からより深く追求したり, 確認する態度で行った インタビューを行う際は選手同士が行ったスカイプレーの映像を見せながら,₂₀₁₆ 年 ₁ 月 ₂₃ 日に選手, コーチが所属する大学の研究室にて行った コーチには ₁ 対 ₁ の対面でインタビューを行い, 選手 ₂ 人に対しては ₂ 人同士の相互作用による語りが発生することを期待し, グループインタビューを行った 語りの資料の採取方法として,IC レコーダーで録音しながら, 同時に表情や身振りを記録するためにビデオカメラでも撮影した なお, 本学会誌における本件の成果公開に際して, 文中に 32

登場する人には掲載の許可を得ている 分析の際, 本質的な語りや筆者との対話の部分 を筆者が抜粋して示しながら, 考察していく なお文脈上, 理解しにくい不足分を筆者が ( ) で加筆し, 補足する 借問については ₁ 回だけの実施であり, 後日, 文字に起こしたデータを筆者とハンドボール経験者 ₁ 名とで語りの内容を確認したのち, 語りのデータを対象者にメールにて添付送信し, 確認してもらった Ⅳ. ゲーム情況で発生した 選手 C が相手のパスをカットし, はじいたボールを追っている ( 写真 ₁ ~ ₃ ) 選手 C はボールを走りながら捕り, そのままドリブルでボールを運んでいる ボールを投げてカットされた相手は選手 C のドリブルを追っている 選手 D は選手 C の追走を始める ( 写真 ₄ ) 選手 C はハーフラ インを超えたあたりから相手に接近され ( 写真 ₅ ), そのままの勢いでゴールエリアに向かい ( 写真 ₆ ),₉m ライン付近でボールを保持し ( 写真 ₇ ), ジャンプのために踏み込んだ ( 写真 ₈ ) 選手 D は外に広がるように走るが ( 写真 ₅ ), 写真 ₇ の場面で戻っている相手 E が選手 C を観察してることを見計らって, 内側にボールをもらいに走り込んでいる ( 写真 ₆ ~ ₈ ) D 選手は C 選手が踏み切ってジャンプしたときに, ボールばかり見て戻っている相手 E を追い抜くように駆け上がる ( 写真 ₇ ~ ₉ ) 選手 C からゴールエリアに向かって踏み切った選手 D にボールを投げ, そのボールを空中で捕ってシュートを打った ( 写真 ₁₀~₁₄) Ⅴ. 発生分析の結果と考察 1.A 大学 B コーチのゲーム観およびゲーム構想コーチ B の A 大のハンドボール自体が速攻 表 1 インタビューガイド 選手 1 どのような選手がいいプレイヤーであると考えますか 1 2 いいプレイヤーになるためにどのような所を心がけて取り組んでいますか 2 3 スカイプレーの意味 価値をどのように考えていますか 3 4 どのようにゲーム情況を 認知 し どの タイミング でスカイプレーを選択 判断しましたか 4 5 スカイプレーをする上で 味方や相手との 間合い をどのように感じ取りましたか 5 6 スカイプレーをする際の情況においてどのようなことを 先読み しました 6 7 どのような 感覚 でスカイプレーを行うのですか 7 8 味方とどのようなことを 共有 していたのですか 8 9 スカイプレーが発生した背景は何ですか 9 スカイプレーが発生した裏付けされた 10 10 トレーニングは何かありますか コーチどのような指導者がいい指導者と考えますか どのような選手がいいプレイヤーであると考えますか またどのような所に着目して見抜いていますか どのようなチームがいいチームと考えますか どのようなゲーム観をもっていますか チームが試合で勝つために必要なものは何ですか どのようなゲーム構想を持っていますか スカイプレーの意味 価値をどのように考えていますか スカイプレーを行うための能力 感覚は何であると考えますか 即興的に動けるために心がけていることは何ですか またそのような能力を高めるためにしている方法は何かありますか 協同的に動けるために心がけていることは何ですか またそのような能力を高めるためにしている方法は何ですか 選手にどのように伝えていますか 意識づけていますか 工夫している点 心がけていることは何ですか スカイプレーが出てしまうには どのような練習方法を行っていますか 11 スカイプレーを行うための能力 感覚は何ですか 33

のチームだから だからもう要するに練習の ₇ 割 勝負をするチーム作り 走るってことが大きな ぐらいはもう速攻練習やってますから 残り₁₅ 自信になってますから 点を取られたら ク 分 ₁₀分くらいで どれだけ走れるかなっていう イックスタート マイボールになったら速攻に C 写真 1 写真 5 E 写真 2 写真 6 写真 3 写真 7 写真 4 写真 8 D 34

もっていけと ( 言っている ) という発言から, A 大学のゲーム観としては常に速攻で得点することを目指し, ゲーム構想としては得点を取られてもそれ以上に得点し, ゲーム終盤においても自分たちの強みの走りを活かして勝つスタイルを目指している 2. スカイプレーの意味と価値コーチ B の ( 一般的にサイドプレイヤーはサイドシュートで ) ノーマークになって ( ゴールエリアに ) 飛び込んで打ってくるっていうのが ( ある ) やっぱそれが, キーパーにとっては恐らく, 当たり前だと思うんですよね だからそこで ( 普 通のジャンプシュートでなくて, サイドプレイヤーが ) ステップシュートを入っても入んなくても, 一本打つことによって, サイドプレイヤーが ( ボールを ) 持ってこう ( シュートモーションを ) やってみたら, キーパーちょっと大分構える 大分というか, そのあれ ( 警戒 ) はあると思うんですよね で, それと同じなんだよ スカイプレーも要するに という感覚なんですよ だからサイドシュートいって, キーパー当然 ( サイドシュートに対して位置を取って ) 来ますよね で, スカイ投げてあげれば, ノーマークで打てますよね で, うちは, 例えばさっきの選手 C が飛び込んで 写真 9 写真 12 写真 10 写真 13 写真 11 写真 14 35

で, あれでパスしないでシュート打つこともあるんですよ A 大は要するに, サイド跳び込んだらスカイやるぞっていうのがだんだんだんだん頭に入ってくると, こうやって ( ゴールに向かって ) 入った時点で, もうこれ ( 選手 D) が飛んでるのが見えますから で, キーパーも先に位置取りするから, その時にもうシュート打っちゃえっていう そういうあれ ( キーパーに誤った先読みをさせる ) なんですよね という発言からサイドプレイヤーの役割として 味方が作ってくれたチャンスを確実にゴールする役割 ( 酒巻,₂₀₁₆, p.₁₂₅) があげられるが,A 大学では, 個人で相手キーパーと駆け引きして個人戦術を発揮して得点するだけではなく, スカイプレーというコンビネーションをすることで, 味方の動きも活用してシュートする選択肢をもっている そのような味方の動きを選択肢として活用することで, 相手キーパーに誤った先読みをさせている またサイドプレイヤーは 速攻では先頭に立って飛び出し, ゴールキーパーと ₁ 対 ₁ で勝負 ( 酒巻, ₂₀₁₂,p.₁₂₆) することが求められているが,A 大学のゲーム構想においてもサイドプレイヤーはゲームを優位に展開するための中核的なポジションであるといえる A 大学のサイドプレイヤーが速攻局面においてコンビネーションの一つであるスカイプレーを行うことは, 相手キーパーに誤った先取りをさせ, サイドプレイヤー自身の戦術的な幅を広げ, チームが得点をするための一つの有効な戦術的行動であると考えられる てって, アッと抜いていく ハッとやっておいて, やっぱり少し力を抜いて といったように擬音語を用いながら動感言語を用いて呈示している このことから ₃ 歩ダッシュで選手個人の走りのコツを磨きつつ, ₃:₃ の速攻練習では, ハーフコートラインといった空間的な基準を走りの強弱をつける力動的な目安として設けて意識づけていた 無暗に早く走るのではなく, 速攻で得点するためにコーチのゲーム観に沿って味方や相手の情況に応じてカンを作用させて味方と協調しながら, 相手が守れないように動ける練習を設定しているといえる つまり始原身体知領域における時空間的な体感領域や走りの強弱といったところで, 時間化領域についても動感言語を用いて促発を行っている 4. 選手同士の間動感性の促発選手同士のスカイプレーにおけるパスや速攻局面でのボールをもらうような動き方の促発に関してコーチ B の まぁ当然スカイプレーの練習はずっとやります 毎日やりますよね だからうちはサイドとゴールエリアラインがあってサイドとここ ( 逆側のサイドポジション ) ね ここで何本も飛びながらパスだけの練習を₃₀ 本やっている 図 ₂ ~ 中略 ~ 最初はできない子, たくさんいますよ 毎日毎日やることによってできるようになるんですよね まさにうちはもうやっぱり, サイドから飛び込んで真ん中にっていうスカイプ 3. 選手個人の動感の促発走り方の促発についてコーチ B は ハンドボールの走りっていうのは, やっぱ一定の走りじゃないから 走りの緩急というところについては, 結構うるさく言うし, それはトレーニングでもやってますね ₃ 歩ダッシュ ( 注 7) のことで ( いろいろ工夫しろと ) 言いますね 要するに走りの強弱 緩急つけろとよく言います ₃ 人の速攻 図 ₁ の中で, 結構言いますね ハーフ ( ライン ) からスピードだせとか, 緩急つけろとかね と発言している 具体的には やっぱり瞬間的に, ~ 中略 ~ヒュッて切り返して ゆっくり走っ シュートすることもある 図 1 ₃:₃ の速攻の練習 36

レーが多いんですよね スカイの練習は毎日やってますもん 毎日やってる だから, 走るタイミングだとか, そのコースだとかっていうのも, 自然にもう体で覚えちゃってるところありますね 約束っていうか走っちゃってますもんね 走るんですよ 走っちゃうんですよ もう あ, もう走んなきゃじゃなくて, もういつの間にか走っちゃっているという だからそこのレベルまでもう達してるってことですよね で, 選手 C も, もう (D 選手が ) 走ってるっていうの分かるし, で, 選手 D ももう, あ, 俺もいつの間にか走っちゃってるっていう 走んなきゃっていって走るんじゃなくて 新しいこととか, ほとんどやんないんですよ もう同じことの繰り返しが多いんですよ ₄ 人の速攻とか, ₅ 人の速攻とか, それをやっぱりずっとやってるんですよ ~ 中略 ~ やっぱ, 色んな情況が生まれるんじゃないすか? やっぱ一回一回違いますもんね この時期 (₁₂ 月 ) はランパスとか, ₃ 人の速攻 図 ₁ とかをやるんですよね ₁ 時間, ₁ 時間半やりますもん ランパスは毎日 それはやっぱり走る競技だから と発言している また C 選手からは やっぱ ₃ 人の ( 速攻練習の ) やつ 図 ₁ が効いていると思います でそれがあって, その攻防で ₄:₄ や ₅:₅ の攻防があってその中でやっぱりスカイプレーとかが生まれてきてくると思ったんで と発言している このような発言から 一回性 (Meinel, ₁₉₈₁, p.₄₅₃) の原則を踏まえ, 標準的情況を設定し, 図サイドからのスカイパスの練習 図 2 サイドからのスカイパスの練習 繰り返し速攻練習を行っていることが分かった また ₃:₃ の速攻練習ではゲーム理念に沿ったゲーム情況を設定し, 何度も繰り返して練習することで選手は実際のゲームと練習で行う ₃:₃ の速攻練習におけるゲーム情況に有意味性を見出し, 速攻局面でのスカイプレーが発生できるように臨んでいると考えられる また, その動きは反復練習により, 自在化位相まで高めていることが分かった 吉田は繰り返し同じ動きを反復することは, 新たなる問いかけや新しい形を再創造していくと指摘しており ( 吉田,₂₀₀₂,pp.₂₃₄-₂₃₈), ₃:₃ の速攻練習において一回性であるゲーム情況下で繰り返すことで, ゲームで活用できる走り方を問わざるを得ないことは意味深い また練習の設定, ならびに組み立て方として, 実際のゲームでやりたいことを ₃ 歩ダッシュの練習やサイドからのスカイパスの練習 図 ₂ で動きを創り, ゲーム理念が含まれている ₃:₃ の速攻練習を発展的に行っている これは速攻における中核的な動きである走りやパスの精度を磨きつつ, 方法学的ゲーム系統の配列の考え ( 佐藤, ₁₉₉₂,p.₁₉) を踏まえて, カンを働かせて走ったり, パスをしなければならないゲーム練習を設定し, 最終的なゲームに向けて系統的に組み立て, ゲームにてスカイプレーが発生するように動感促発をしていることが分かった 5. パスした選手 C との借問 1 ) 始原身体知に関する借問写真 ₅ を観て C: ハーフ過ぎる前までにディフェンスより前にいたらまあ自分で行けるんですけど, ハーフ過ぎてもディフェンスと一緒くらいの距離で, 詰められていったらそのまま打つよりかは, 毎回練習してるそのスカイプレーを まあ見てはないですけど, 飛ぶまでは どうせ走ってる 著者 : へえ ドリブルしながら見えてるのかなと思ってたんだけど, そうではないのね C: 見てないです もう走ることで( 精一杯でした ) 37

筆者 : ジャンプしてから判断したってことでいいのかな? C: ジャンプしてから はい, もう多分 筆者 : キーパーも見つつ? C: 飛んでると思ったんで この筆者との会話から, 選手 C はとりわけ相手との距離感を図りつつ, どこかで味方が追走している気配を感じていることが考えられる また視覚で確認しなくても, 味方が走り込んで合わせてくれる予感を持ち合わせながら動いていると考えられる 2 ) 形態統覚化身体知に関する借問 C: A 大に来てからは, その最後の手段が ₂ 択あって, 投げるか自分で打つかで で, しっかり味方も走ってくれてるんで,( 選択の ) 幅が広がったと思います 著者 : ちょっとこう見ると, ちょっとあれはシュートが打ちやすくするために外に行ったの? それとも, そういうスカイプレーがあるからあえて, そういう選択肢があるから外に行ったの? C: まあどっちもなんですけど, 相手より早く走れてたにしても選手 D を見ながら最後に打ちやすい方向に飛んだ方がシュートが打ちやすいので 多分スカイプレーをやるとかじゃなくて, 日頃みんなで走ってきてるから, まあやるんじゃなくて自然に生まれるものだし この筆者との会話から, 味方と連係して選択肢を増やすことはシュートを決める課題を達成しやすくする方法であり, コンビネーションによって相手キーパーに誤った先読みをさせる動きをすることができると考えられる この考えはコーチとの借問においても確認できた内容であり, コーチの考えが選手同士においても共有されていると考えられる また意識的にスカイプレーを行うものでなく, 課題を達成するために出てしまう動きであると語っていることから, 自在即興的に動いたコンビネーションであると考えられる 6. シュートした選手 D との借問 1 ) 始原身体知に関する借問写真 ₆ を観て D: そうですね, ここでほんとだったら選手 C は一人で多分行けると思ったんですけど, もうなんていうんですかね, 反射的にやっぱ走っちゃうんですよね 筆者 : なるほどね D: ほんとに体がもう染みついてしまってるので まあその一応 ₁ 人, カットしたら全員走るっていう ( 約束 ) のがあるので 筆者 : なんであえて外に膨らまなかったの? D: やっぱりそうすると, 選手 C との距離が遠くなってしまい, パスがやっぱり難しくなるんですよ 筆者 : なるほどね D: やっぱそれを考えると, やっぱ中に入って距離を縮めて 筆者 : この距離感で D: 決めた方が確率は高いと 筆者 : どういうところを見て切り返したか, 判断材料が凄く知りたいんですけど D: たぶん一番見るのは,( 相手 E の ) 足と顔じゃないですかね この筆者との会話から, ただボールをもらうために走力に任せてただ走っているのではなく, 味方との距離感を感じつつ, 相手の足や顔, そして相手の目線を感じながら, そして自身のカンを働かせ, いつでも変化して動けるように走っていると考えられる 2 ) 形態統覚化身体知に関する借問 D: まあでも, やっぱりそのカットしたときにやっぱこれは多分してないと思うんですけど, アイコンタクトとかは ( することも ) ありますね そのもう見てとか, あと声出したりとかはありますけど 筆者 : アイコンタクトは (C 選手は ) さっき飛んだ瞬間 ( にすることもある ) って言ってたけど D: いや,( 今回はなかったけど ) そういう場 38

合もある 筆者 : ( 今回の場合は ) その瞬間に ( 何か ) 感じた? D: 感じるんですよね 筆者 : 感じたのはどのとき? D: このときは感じましたもう はい あ, 来るなって やっぱ ( ゴールエリアに向かう ) 入り方とかも, やっぱりあるんで この筆者との会話から C 選手がゴールエリアに向かって入り込んでいる様子だけで, ボールが来ることを予感しており, これまでの練習から, ボールがくるんじゃないかという気配を感じて動いていることが考えられる またこれらの会話から本事例においてはアイコンタクトや声を用いていないものの, それらも即興的なコンビネーションを発生させていく過程において重要であることが予想される オフトはチームづくりを行う際に, アイコンタクトをキーワードとし ( オフト,₁₉₉₃,p.₂₉), 目と目で意思疎通をしてコンビネーションができるようにしている 岡本の研究では, オフェンスのコンビネーションにおいて声で情況の確認をしたり, 伝達することが多く発生されていることを明らかにしているが ( 岡本,₁₉₈₅,pp.₃₁-₄₂), コンビネーションを発生させていく過程において選手同士が確認したり, 今ここの情況を声で伝達することはコンビネーションの協力の質を高めていくうえで, 大事な要素であると考えられる これらのことから, 味方の動きから発せられる情報に加え, 場合によっては視覚や聴覚なども用いながら, コンビネーションの協力の質を高めていくことも有効であると考える Ⅵ. まとめ本研究では速攻局面にて行われたコンビネーションの典型であるスカイプレーに着目して, コーチや選手から即興的なコンビネーションについて明らかにすることを目的とし, 方法としてスカイプレーの発生分析のためにコーチや選手に借 問していった その結果,A 大学 B コーチのゲーム観は常に速攻で得点することを目指し, ゲーム構想として, 得点を取られてもそれ以上に得点をし, ゲーム終盤でも自分たちの強みの走りを活かして勝つスタイルを目指している そしてスカイプレーの意味や価値については, シュートを決める有効な手段としてシュートかパスかの選択肢を持ち合わせることによって, 相手キーパーに誤った先読みを誘発させることができるといった意味や価値をもってコンビネーションを行っていることが分かった また A 大学では, サイドプレイヤーが個人戦術を活かして得点するだけではなく, 味方の動きを活用してシュートをしたり, スカイプレーのパスを行っていることが分かった スカイプレーの動感創発については, 最初はスカイプレーが出来なくても, ₃ 歩ダッシュの練習で走りの強弱や緩急を磨き, サイドからのスカイパスや B コーチのゲーム構想を基に設定した ₃: ₃ の速攻練習をすることで味方同士の間動感性を高め, 情況に応じて瞬時に動けるようにしていくことが分かった さらに ₃:₃ の速攻練習では, 人数を徐々に増やして系統的に行っていた また練習では 一回性 を大切にしながら続けていくと, コンビネーションの協力の質を高めることができることが分かった 即興的なコンビネーションを発生させるには, その前提となる動き, つまり本研究においては空中でのパスや走りそのものを反復させて, ₃:₃ の標準的なゲーム情況から実際のゲームにて対応できる動感身体知を創発させていくことが大切なことは言うまでもないが, ただ反復するのではなく, パスや走りそのものの動きや協力の質を高めるためにコーチと選手の間に共感的な動感言語や認識が不可欠であるといえる そして即興的なコンビネーションの発生の過程においては選手同士において動きそのものだけでなく, 場合によっては味方の声やアイコンタクトなども用いながら, 協力の質を高めていき, 次第に味方の動きや練習してきた標準的な情況を実際のゲーム場面に照ら 39

し合わせながら, 味方の気配を感じたり, 味方はそこに動いているという予感を相互的に作用させて, 瞬時に協力して動けるようにしていると考えられる またこれらを反復し練習を重ねることで 相手や味方がこう動いたら, 自分はこう動く といった環界の情況に応じて選手自身が動くことができる身体知を持ち合わせ, さらに相手や味方との距離感や気配感を感じ取りつつ, 実際のゲームにて相手と味方同士で間主観的な 対話 ( 會田, ₂₀₀₈,p.₇₁) をし, 自分がどのように動けばよいか, 咄嗟に動くことができるようになると考える これらのことから即興的なコンビネーションを発生させ, ゲーム情況における課題を達成するには, 個人の技術 戦術的な能力を高める一方, ゲーム観に基づくコンビネーションに関する練習とそのゲーム場面を想定した練習を設定し, 反復させることで, 選手同士が身体的了解をして即興的に動けてしまうくらいに間動感性を高めていくことが必要である Ⅶ. おわりに本研究は実際のゲーム場面にて発生されたスカイプレーに筆者自身が感動を覚え, この即興的なコンビネーションが誰でもゲームにて, できるようになるにはどのようにしたらよいか, その可能性を共有したいという想いが研究の出発点にある そこで A 大学 B コーチのゲーム観, そしてゲーム構想を明らかにし, そのゲーム観に基づく具体的なコンビネーションとしてスカイプレーができるようになってしまう練習やその練習配列, また練習設定における考え方, そして指導者と選手との動感を繋ぐ動感言語, 選手の身体知について探索的に発生分析を試みて行った 本研究はハンドボール競技における即興的なコンビネーションの発生としてスカイプレーだけを取り上げたが, ハンドボールのコンビネーションは多様であり, 一事例と言わざるをえない まだ球技種目における即興的なコンビネーションについてはまだまだ手付かずの状態である 多くの事例をあげ て, その共通性を横断的に構造化し, どの種目においても卓越した即興的なコンビネーションに通底する動感指導をすることができる指導体系を早急に確立させることが今後の課題であるといえる さらに味方同士の協力の質の高いコンビネーションの発生には, 指導者の存在が大きい要素であると考える それは本研究にもあるように反復させながら, 一回性を大事にしつつ, 実際のゲームにて表出された一回の動きの違いを見抜けたり, また情況を的確に解釈し, 動きの選択肢に対して指摘したり, 手立てを講じて処方できる促発指導者の視点や考え方, いわゆるゲーム観やゲーム構想を明らかにし, そして具体的な戦術方法の分析やそのような促発指導者の養成の仕方を体系化していくことも望まれる 注注 ₁ ) ゲームにおける局面とは, ゲームの空間的 時間的な経過において表出される特徴的な分節 として現れ (Döbler. et al, ₁₉₈₉, p.₂₂₀), ハンドボールにおけるゲームの局面については大まかに 速攻 と 速攻の防御, 組織攻撃 と 組織防御 の ₄ 局面として体系づけられている ( 大西,₁₉₉₇,pp.₉₅-₁₀₃) 本研究においては攻撃側における味方同士のコンビネーションを扱っていることから 速攻 局面と 組織攻撃 の局面に分けて, 卒論を進めていく 注 ₂ ) ゴール型の球技種目における防御は原則, 対峙する攻撃者に対してゴールと攻撃者の間に位置取りをして簡単に得点されないように対峙する攻撃者を観察し, 防御活動をする それは攻撃者 ₁ 人に対し, 防御者 ₁ 人が付くマンツーマンディフェンスだけでなく, ゴールエリア前に防御陣形を敷くゾーンディフェンスにおいても同様である その際, 攻撃側は防御者を引き付けたり, 防御者の注意を意図的に向ける動きでかく乱した場合, 攻撃側はノーマークの状態になり, 攻撃側が有利にゲームを展開することができる このような効果的な動きを防御者がされた場合, マーク 40

する相手を受け渡したり, その効果的な動きを妨害して容易に得点できない状態を保とうとするが, マークする相手の受け渡しがスムーズにできなかったことを防御側のマークチェンジミスと呼ばれる 注 ₃ ) 即興とは, 感じると同時に動くこと ( 金子, ₂₀₀₅,p.₃₄₆) である 選手はゲーム情況に対して 今はこうだからこの動きをしよう などと考える間もなく, 実際のゲームにて対峙している情況を感じるままに即時的にカンを作用させつつ, 選手自身が動くことができるといったコツを拠り所に, 勝手に身体が動けてしまっているときがあり, そのような自在即興 ( 金子,₂₀₀₂,p.₅₀₀) の域にある動きを指す 注 ₄ ) ゲーム構想とは ゲームを具体的に展開するための意図的な企画 であり (Stieler. et al, ₁₉₉₃, p.₈₀), 目標から出発し, 訓練の程度, チームの構成が考慮され, その内容はゲーム展開の基本方針, 戦術上の取り決め, 標準的な戦法も含まれる (Stieler. et al, ₁₉₉₃, p.₈₀) また この構想では, 役に立つ個人的戦術, グループ戦術, チーム戦術をシステムプレイとして整理, 調整し, どのようにゲーム展開するかということが中心となる (Stieler. et al, ₁₉₉₃, p.₈₀) このことからコーチがチーム作りを行う上で必要な知性ともいえ, ゲーム構想を基本として, 選手に必要な技術 戦術的動きを創り, ゲームで発揮できるようにしていく 注 ₅ ) 競技力とは, 試合を勝ちぬく能力であり, その能力は球技における諸能力の複合体のことを指す (Stieler. et al, ₁₉₉₃, pp.₂₉-₃₂) 具体的には体力や心的能力, 技術 戦術的能力, 認知など多種にわたる 金子はゴール型球技のような判定競技領域における競技力について 技術力と戦術力に分節化された意味構造をもちながらも, 動感身体知として身体化されなければいけばなりません ( 金子,₂₀₀₅, p.₂₅₈) と指摘していることから, とりわけ技術 戦術的能力はゴール型の球技の競技力において重要な要素であるといえる 注 ₆ ) 球技における戦術とは, 試合中のある一定の攻防情況での個人や集団による最適な戦い方 である ( 佐藤,₂₀₀₀,p.₄₃) そして球技の個人戦術とは ゲーム情況に適応する仕方つまり, 技術の使い方 とされ ( 佐藤, ₂₀₀₀,p.₄₃), 情況において適切な技術が使えるかどうかが戦術である 金子は戦術について <そう動ける>といった身体知に裏打ちされなければ, それは絵に描いた餅であり, ~ 中略 ~ 自我中心化作用と情況投射化作用との差異化現象を持つ運動として現れる と指摘している ( 金子,₂₀₀₅,p.₂₅₈) つまり球技における戦術は個人や集団による技術的な習熟が裏打ちされていて, それらの技術を情況によって適切に発揮できることを戦術能力が高いといえる 注 ₇ ) ゴール型の球技種目では攻撃から防御へ, 防御から攻撃へ切り替える速さを求められる ₃ 歩ダッシュは攻防の切り替えの際に, 最初の ₃ 歩でトップスピードを出して走ることであり, 相手が防御陣形を組み立てる前に速攻で得点したり, 相手が速攻をしかけられなくするために用いることによって, ゲームを優位に展開することができる また切り替え局面のみならず, 組織攻撃においても瞬間的な動きとして ₃ 歩ダッシュを用いることがあり, 一瞬にして対峙している防御を振り切る際に用いられることもある スカイプレーを行う際にも, ゴールエリア上に飛び込んでいくときやシュートに行く前の走りにおいて用いられる 謝辞本研究を行うにあたって 調査協力していただいたコーチならびに選手に心から感謝いたします 付記本研究は日本学術振興会科学研究費補助金 ( 若手研究 (B) 課題番号 ₁₅K₁₆₄₃₃) の助成を受けて 41

実施されたものである また本研究の一部は第 ₃₀ 回日本スポーツ運動学会の一般口頭発表をした内容を一部修正し 加筆したものである 文献 ₁ ) 會田宏 (₂₀₀₈) ハンドボールのシュート局面における個人戦術の実践知に関する質的研究 : 国際レベルで活躍したゴールキーパーとシューターの語りを手がかりに, 体育学研究,₅₃ ( ₁ ):₆₁-₇₄. ₂ )Döbler, H, Schnabel, G, Thiess, G (₁₉₈₉): Grundbegriffe der Sportspiele, Sportverlag. ₃ ) 金子明友 (₂₀₀₂) わざの伝承, 大修館. ₄ ) 金子明友 (₂₀₀₅) 身体知の形成 ( 上 ), 大修館. ₅ ) 金子明友 (₂₀₀₅) 身体知の形成 ( 下 ), 大修館. ₆ ) 金子明友 (₂₀₀₇) 身体知の構造, 大修館. ₇ )Meinel, K: 金子明友訳 (₁₉₈₁) スポーツ運動学, 大修館. ₈ ) 中嶌洋 (₂₀₁₅) 初学者のための質的研究 ₂₆の教え, 医学書院. ₉ ) 中瀬雄三 (₂₀₁₃) バスケットボールプレイヤーの状況の構造を読み解く身体知に関する考察, スポーツ運動学研究,₂₆:₂₉-₄₅. ₁₀) オフトハンス : 徳増浩司訳 (₁₉₉₃) 日本サッカーの挑戦, 講談社. ₁₁) 岡本研二 (₁₉₈₅) ハンドボールにおける発声に関する研究, 茨城大学教育学部研究紀要教育科学,₃₄:₃₁-₄₂. ₁₂) 大西武三 (₁₉₉₇) ハンドボールのゲームにおける局面の攻勢について, 筑波大学体育科学系紀要,₂₀:₉₅-₁₀₃. ₁₃) 酒巻清治 (₂₀₁₂) 基本が身につくハンドボール練習メニュー ₂₀₀, 池田書店. ₁₄) 酒巻清治 (₂₀₁₆) パーフェクトレッスンブックハンドボール基本と戦術, 実業之日社. ₁₅) 佐藤靖 (₁₉₉₂) 球技の教材の系統性に関する研究, スポーツ教育学研究,₁₂( ₁ ):₁₇-₂₇. ₁₆) 佐藤靖 (₁₉₉₃) ボールゲームのコーチング 球技の運動学の構想, プロテウス- 自然と形成 -, ₁:₁₆₀-₁₇₅. ₁₇) 佐藤靖 (₂₀₀₀) ハンドボールゲームの戦術の体系化について, 秋田大学教育文化学部教育実践研究紀要,₂₂:₄₁-₆₀. ₁₈) 佐藤靖 (₂₀₀₂) ハンドボールにおける意味構造の例証分析的一考察, 伝承, ₂:₇₁-₉₂. ₁₉) 佐藤靖 (₂₀₁₅) 戦術力の指導, 中村敏雄, 高橋健夫, 寒川恒夫, 友添秀則編集,₂₁ 世紀スポーツ大事典, 大修館 :₅₀₅-₅₁₀. ₂₀) 曽根純也 (₂₀₁₇) サッカーにおけるパス受け手の身体知促発指導に関する発生運動学的考察. スポーツ運動学研究,₃₀:₃₃-₄₈. ₂₁)Stieler, G. Konzag, I. Döbler, H: 唐木國彦監訳 (₁₉₉₃) ボールゲーム指導事典, 大修館. ₂₂) 寺田進志, 佐野淳 (₂₀₁₅) パス発生における出し手の体感身体知の分析, スポーツ運動学研究,₂₈:₃₁-₅₃. ₂₃) 吉田雅行 (₂₀₀₂) 武道 舞踊 スポーツにおける技術習得過程に関する研究 (V)-スポーツの技術の捉え方について-, 大阪教育大学紀要第 IV 部門 : 教育科学,₅₁( ₁ ),₂₂₉-₂₄₆. 受付 ₂₀₁₉ 年 ₁₀ 月 ₈ 日受理 ₂₀₁₉ 年 ₁₁ 月 ₃₀ 日 42