日本内科学会雑誌第107巻第5号

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抗ヒスタミン薬の比較では 抗ヒスタミン薬は どれが優れているのでしょう? あるいはどの薬が良く効くのでしょうか? 我が国で市販されている主たる第二世代の抗ヒスタミン薬の臨床治験成績に基づき 慢性蕁麻疹に対する投与 2 週間後の効果を比較検討すると いずれの薬剤も高い効果を示し 中でもエピナスチンなら

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3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

のつながりは重要であると考える 最近の研究では不眠と抑うつや倦怠感などは互いに関連し, 同時に発現する症状, つまりクラスターとして捉え, 不眠のみならず抑うつや倦怠感へ総合的に介入することで不眠を軽減することが期待されている このようなことから睡眠障害と密接に関わりをもつ患者の身体的 QOL( 痛

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ータについては Table 3 に示した 両製剤とも投与後血漿中ロスバスタチン濃度が上昇し 試験製剤で 4.7±.7 時間 標準製剤で 4.6±1. 時間に Tmaxに達した また Cmaxは試験製剤で 6.3±3.13 標準製剤で 6.8±2.49 であった AUCt は試験製剤で 62.24±2

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Ⅰ. 改訂内容 ( 部変更 ) ペルサンチン 錠 12.5 改 訂 後 改 訂 前 (1) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本剤の作用が増強され, 副作用が発現するおそれがあるので, 併用しないこと ( 過量投与 の項参照) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

D961H は AstraZeneca R&D Mӧlndal( スウェーデン ) において開発された オメプラゾールの一方の光学異性体 (S- 体 ) のみを含有するプロトンポンプ阻害剤である ネキシウム (D961H の日本における販売名 ) 錠 20 mg 及び 40 mg は を対象として


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37, 9-14, 2017 : cefcapene piperacillin 3 CT Clostridium difficile CD vancomycin CD 7 Clostridium difficile CD CD associate

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シプロフロキサシン錠 100mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにシプロフロキサシン塩酸塩は グラム陽性菌 ( ブドウ球菌 レンサ球菌など ) や緑膿菌を含むグラム陰性菌 ( 大腸菌 肺炎球菌など ) に強い抗菌力を示すように広い抗菌スペクトルを

目次 C O N T E N T S 1 下痢等の胃腸障害 下痢について 3 下痢の副作用発現状況 3 最高用量別の下痢の副作用発現状況 3 下痢の程度 4 下痢の発現時期 4 下痢の回復時期 5 下痢による投与中止時期 下痢以外の胃腸障害について 6 下痢以外の胃腸障害の副

2. 改訂内容および改訂理由 2.1. その他の注意 [ 厚生労働省医薬食品局安全対策課事務連絡に基づく改訂 ] 改訂後 ( 下線部 : 改訂部分 ) 10. その他の注意 (1)~(3) 省略 (4) 主に 50 歳以上を対象に実施された海外の疫学調査において 選択的セロトニン再取り込み阻害剤及び

2 4 診断推論講座 各論 腹痛 1 腹痛の主な原因 表 1 症例 70 2 numeric rating scale NRS mmHg X 2 重篤な血管性疾患 表

機能分類や左室駆出率, 脳性ナトリウム利尿ペプチド (Brain Natriuretic peptide, BNP) などの心不全重症度とは独立した死亡や入院の予測因子であることが多くの研究で示されているものの, このような関連が示されなかったものもある. これらは, 抑うつと心不全重症度との密接な

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あった AUCtはで ± ng hr/ml で ± ng hr/ml であった 2. バイオアベイラビリティの比較およびの薬物動態パラメータにおける分散分析の結果を Table 4 に示した また 得られた AUCtおよび Cmaxについてとの対数値

第1回肝炎診療ガイドライン作成委員会議事要旨(案)

用法 用量 発作性夜間ヘモグロビン尿症における溶血抑制 mg mg mg mg kg 30kg 40kg 20kg 30kg 10kg 20kg 5kg 10kg 1900mg mg mg mg

ン (LVFX) 耐性で シタフロキサシン (STFX) 耐性は1% 以下です また セフカペン (CFPN) およびセフジニル (CFDN) 耐性は 約 6% と耐性率は低い結果でした K. pneumoniae については 全ての薬剤に耐性はほとんどありませんが 腸球菌に対して 第 3 世代セフ

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調剤ミス防止対策における調剤室環境整備とヒューマンエラーの関連性の分析

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診療のガイドライン産科編2014(A4)/fujgs2014‐114(大扉)

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 庄司仁孝 論文審査担当者 主査深山治久副査倉林亨, 鈴木哲也 論文題目 The prognosis of dysphagia patients over 100 years old ( 論文内容の要旨 ) < 要旨 > 日本人の平均寿命は世界で最も高い水準であり

わが国における糖尿病と合併症発症の病態と実態糖尿病では 高血糖状態が慢性的に継続するため 細小血管が障害され 腎臓 網膜 神経などの臓器に障害が起こります 糖尿病性の腎症 網膜症 神経障害の3つを 糖尿病の三大合併症といいます 糖尿病腎症は進行すると腎不全に至り 透析を余儀なくされますが 糖尿病腎症

Ⅲ 章推奨 4 便秘 下剤は, がん患者の便秘を改善させるか? 関連する臨床疑問 9 1 浸透圧性下剤 ( 酸化マグネシウム, ラクツロース ) は, がん患者の便秘を改善させるか? 9 2 大腸刺激性下剤 ( センナ, ピコスルファート ) は, がん患者の便秘を改善させるか? 9 3 ルビプロス

一次サンプル採取マニュアル PM 共通 0001 Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital その他の検体検査 >> 8C. 遺伝子関連検査受託終了項目 23th May EGFR 遺伝子変異検

タケキャブ錠 10 mg 他に係る医薬品リスク管理計画書 (RMP) の概要 ( 別紙様式 ) 販売名 タケキャブ錠 10 mg 同 20 mg 有効成分 ボノプラザンフマル酸塩 製造販売業者 武田薬品工業株式会社 薬効分類 提出年月 2018 年 4 月 1.1. 安全性検討事項 重要

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第 90 回 MSGR トピック : 急性冠症候群 LDL-C Ezetimibe 発表者 : 山田亮太 ( 研修医 ) コメンテーター : 高橋宗一郎 ( 循環器内科 ) 文献 :Ezetimibe Added to Statin Theraphy after Acute Coronary Syn

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第6号-2/8)最前線(大矢)

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したことによると考えられています 4. ピロリ菌の検査法ピロリ菌の検査法にはいくつかの種類があり 内視鏡を使うものとそうでないものに大きく分けられます 前者は 内視鏡を使って胃の組織を採取し それを材料にしてピロリ菌の有無を調べます 胃粘膜組織を顕微鏡で見てピロリ菌を探す方法 ( 鏡検法 ) 先に述

(2) レパーサ皮下注 140mgシリンジ及び同 140mgペン 1 本製剤については 最適使用推進ガイドラインに従い 有効性及び安全性に関する情報が十分蓄積するまでの間 本製剤の恩恵を強く受けることが期待される患者に対して使用するとともに 副作用が発現した際に必要な対応をとることが可能な一定の要件

消化性潰瘍(扉ページ)

スイッチ OTC 医薬品の候補となる成分についての要望 に対する見解 1. 要望内容に関連する事項 組織名日本消化器病学会 要望番号 H28-11 H28-12 H28-16 成分名 ( 一般名 ) オメプラゾール ランソプラゾール ラベプラゾールオメプラゾール : 胸やけ ( 胃酸の逆流 ) 胃痛

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助成研究演題 - 平成 23 年度国内共同研究 (39 歳以下 ) 重症心不全の集学的治療確立のための QOL 研究 東京大学医学系研究科重症心不全治療開発講座客員研究員 ( 助成時 : 東京大学医学部附属病院循環器内科日本学術振興会特別研究員 PD) 加藤尚子 私は 重症心不全の集学的治療確立のた

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

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トピックス Ⅱ. 各論 1 2 3 4 5 6 7 慢性腎臓病とプロトンポンプ阻害薬 要旨 プロトンポンプ阻害薬 (proton pump inhibitor:) は, さまざまな上部消化管疾患の治療成績の大幅な向上に寄与した薬剤であり, 現在, 臨床現場で広く使用されている. ただ近年, プロトンポンプ阻害薬と腎機能低下の関連が報告されており, 本稿では, それらについて概説する. プロトンポンプ阻害薬は, 稀に急性間質性腎炎を起こす可能性があることが報告されている. また, 大規模な観察研究において, 腎機能低下との関連の可能性も指摘されている. ただし, そのリスクがプロトンポンプ阻害薬の有するベネフィットを上回るものかどうかは定かではなく, 漫然と使用している場合には, 必要性を見直す必要があると考えられる. 後藤俊介 日内会誌 107:872~877,2018 Key words プロトンポンプ阻害薬, 急性間質性腎炎, 急性腎障害, 慢性腎臓病 はじめにプロトンポンプ阻害薬 (proton pump inhibitor:) は, 消化性潰瘍や胃食道逆流症 (gastroesophageal reflux disease:gerd) の治療において広く使用されている薬である. 木下らの総 1) 説によると, もともとこれらの病気に対してさまざまな酸分泌抑制薬が用いられていたが, 1980 年代に登場したH2 受容体拮抗薬により, 治療成績は大幅に向上した. しかし, 日中の酸分泌抑制力の低下, 長期服用における耐性発現 効果減弱, せん妄や認知機能低下の発現, 腎機能低下例での減量の必要性といった問題点も有していた.1991 年から本邦でも使用できるようになったは強力な酸分泌抑制作用を有 し, 肝代謝のため腎機能低下例にも用いやすく, 効果減弱といったことも克服しており, 効果発現がやや遅いことを除けばH2 受容体拮抗薬の有するいくつかの問題点を大幅に改善した薬剤であった. その優れた特性からさまざまな上部消化管疾患の治療に用いられ,GERDや低用量アスピリン及び非ステロイド性抗炎症薬 (non-steroidal anti-inflammatory drugs: NSAIDs) による潰瘍の再発予防において長期投与もされるようになった. このように,はさまざまな上部消化管疾患の治療効果を劇的に改善させた薬剤ではあるが, 長期投与例が増加するにつれ, 合併症についても指摘されるようになり, その1 つとして腎機能に対する影響も指摘されている. 神戸大学大学院医学研究科腎臓内科 / 腎 血液浄化センター Medication Control in Nephrology Field: Remarkable Points. Topics:II. Detailed exposition;6. Chronic kidney disease and proton pump inhibitor. Shunsuke Goto:Division of Nephrology and Kidney Center, Kobe University Graduate School of Medicine, Japan. 872 日本内科学会雑誌 107 巻 5 号

特集 腎疾患領域における薬剤管理今注目されるポイント 表 1 による急性間質性腎炎の症例集積研究 ( 文献 3 4 より ) Geevasinga N ら 3) Simpson IJ ら 4) 症例数 18 15 国オーストラリアニュージーランド 投与から発症までの期間平均 11 週 (3~24 週 ) 10 日 ~18 カ月 性別男 8, 女 10 男 8, 女 7 年齢中央値 74 歳 (49~89 歳 ) 中央値 75 歳 (55~86 歳 ) 腎機能の推移 症状 検査データ その他 治療前 egfr:37±10 治療前平均 Cr:0.94 mg/dl 腎機能悪化時 egfr:10±5 腎機能悪化時平均 Cr:4.43 mg/dl 中止 6 か月後の egfr の改善 中止後平均 Cr:1.57 mg/dl 治療前 80% 以上 :15 例中 9 例 (60%) ( 中止後 3~18 カ月 ) 治療前 50% 以上 :15 例中 12 例 (80%) 倦怠感や悪心 :39% 体重減少 :22% 等尿中好酸球陽性 :61% 貧血 :89% CRP 上昇 :78% 発熱 悪寒 :27% 症状なし :73% CRP 上昇 :80%( 平均 8.1 mg/dl) 血沈上昇 :73%( 平均 85 mm/h) 1 例は誤って再投与し, 再度腎機能悪化. 2 例は増量時に発症. 慢性腎臓病患者では, 腎機能の低下に伴い, 虚血性心疾患等の心血管合併症が増加するため, 低用量アスピリンを使用することが健常者に比べて多く, そのため, 潰瘍の予防のために酸分泌抑制薬をすることも多いと思われる. 前述のように,H2 受容体拮抗薬は腎機能低下例では用いにくいため, 必然的にが用いられることになる. 本稿では,と腎機能との関連を中心に解説する. 1.と間質性腎炎 が急性間質性腎炎を起こすことを述べた症例報告が1992 年に発表された 2). その後, さまざまな論文でと急性間質性腎炎との関連が報告されるようになった. そのなかで,18 例及び15 例の症例集積研究が報告されており 3,4), それぞれの特徴を表 1 にまとめた. 開始から急性間質性腎炎発症までの期間は10 日から最長 18カ月であった. ほとんどの症例で の中止により腎機能は改善したが, 完全回復には至っていないものが多かった. 症状として は, 尿毒症と思われる悪心 倦怠感や急性のアレルギー反応と思われる発熱 悪寒があるが, 症状がないものもある. 検査データとしては, CRP(C-reactive protein) 上昇を約 80% に認め, 平均 8.1 mg/dlまで上昇していた. により急性間質性腎炎が起こる頻度については, ニュージーランドからの論文では, 対象となった地域のの処方数から, 頻度は10 万人年あたり8 例 (95% 信頼区間 2.6~18.7) と 5,6) 推測している. また, 後に紹介する観察研究でも10 万人年あたり11.98 例,32 例となっており, 稀と思われる. ただし, 米国のMayo Clinic 7) からの報告では,1993~2011 年に腎生検で診断された薬剤性の急性間質性腎炎 95 例の原因の内訳では,1 位が抗生物質 (49%),2 位が (14%), 3 位がNSAIDs(11%) であり, 副作用の 1 つとして頭に入れておく必要があると思われる. 2.と腎機能低下の大規模臨床研究近年, さまざまな大規模のデータベースを用 日本内科学会雑誌 107 巻 5 号 873

トピックス Ⅱ. 各論 1 2 3 4 5 6 7 表 2 による腎機能低下について検討した症例対照研究 筆者年国症例対照要因オッズ比 Leonard 8) 2012 イギリス Klepser 9) 2013 米国 Blank 5) 1 2014 ニュージーランド Arora 10) 2016 米国 Peng 11) 2 2016 台湾 Hung 12) 2017 台湾 急性間質性腎炎 (N=68) 急性腎障害 (N=27,982) 急性腎障害 (N=854) を現在使用 (N=242) 慢性腎臓病 (N=19,311) 末期腎不全 (N=3,808) 慢性腎臓病 (N=16,704) 急性間質性腎炎なし (N=3,347) 急性腎障害なし (N=1,323,850) 急性腎障害なし (N=3,289) を過去に使用 (N=204) 慢性腎臓病なし (N=57,151) 末期腎不全なし (N=3,808) 慢性腎臓病なし (N=16,704) 3.20(0.80~12.79) 急性間質性腎炎 1.05(0.97~1.14) 1.72(1.27~2.32) 5.16(2.21~12.05) 1.10(1.05~1.16) 1.88(1.71~2.06) 1.42(1.35~1.49) 1 使用者または使用歴のあるものが対象. 急性間質性腎炎を発症した 1 例に対し生年月日, 年齢をマッチさせた 10 例を選び, この研究の対象集団としている. 2 腎臓病のある患者が対象. 症例対照研究は症例と対照での要因の差があるかを検討する研究. 例えば, 一番上の研究では, 急性間質性腎炎を発症した患者 ( 症例 ) としていない患者 ( 対照 ) において, の服用のオッズ比を調べると 3.20(0.80~12.79) で, 急性間質性腎炎を発症した患者の方が の服用が多い傾向にはあるが, 統計学的に有意とはいえないということになる. : プロトンポンプ阻害薬 い,と腎機能との関連を検討した研究が報告されている. 文献検索の結果, 大規模データベースを用いた11 論文を見つけることができた 5,6,8~16). このうち最も古い論文が2012 年で, 7 つの論文が2016 年及び2017 年に発表されたものであり,と腎機能との関連について最近注目されていることがわかる. この11の論文は全て観察研究で, 残念ながら介入研究はない. これらの論文を大きく症例対照研究とコホート研究に分けて解説する. 1) 症例対照研究 と腎機能との関連を検討したもののうち, 症例対照研究についてまとめたものを表 2 に示す. 症例対照研究は2 つの要因の関連を調べるにあたって, 症例と対照を選び, その群間で要因に差があるかどうかを調べる研究である. 今回の場合であれば, 多くの研究で腎臓病 ( 急性間質性腎炎, 急性腎障害, 慢性腎臓病, 末期腎不全等 ) を起こした症例に対し, 対照とし てそれらの腎臓病を起こしていない症例を選び,の使用の差について検討している. 結果 8) としては,Leonardらの報告では有意差はついていないが, 残りの研究では, 腎臓病のない患者に比べて, 使用のオッズ比が高いという結果になっている. この症例対照研究については, 研究にかかる費用や労力が比較的少なくて済むため, 関連を検討するために初期に行う研究としては適していると思われるが, いくつか問題点もある. 例えば, 症例対照研究は 内服の有無で2 群に分け, 腎臓病の発生割合を比較しているわけではないため, 実際にの使用によって腎臓病のリスクがどの程度高まるかは計算できない. 他にもさまざまな問題点はあるが, このような問題点のいくつかを解決するためには, コホート研究で検討する必要がある. 2) コホート研究 と腎機能との関連を検討したもののう 874 日本内科学会雑誌 107 巻 5 号

特集 腎疾患領域における薬剤管理今注目されるポイント 表 3 による腎機能低下について検討したコホート研究 筆者年国症例数 Antoniou 6) 2015 カナダ Lazarus 13) 1 2016 米国 Lazarus 13) 1 2016 米国 Xie 14) 2016 米国 Lee 15) 2 2016 米国 :290,592 非使用者 :290,592 急性腎障害 :358 H2RA:1,053 非使用者 :9,734 慢性腎臓病 :332 H2RA:956 非使用者 :9,204 :16,900 H2RA:6,640 非使用者 :225,221 :173,321 H2RA:20,270 :3,725 非使用者 :10,528 Klatte 16) 2017 スウェーデン :105,305 H2RA:9,578 コントロール群 非使用者 非使用者 非使用者 H2RA 非使用者 ハザード比 2.52(2.27~2.79) 急性間質性腎炎 : 3.00(1.47~6.14) 群での発生率 (1,000 人年あたり ) 13.49 急性間質性腎炎 :0.32 1.64(1.22~2.21) 1.50(1.14~1.96)? 14.2 1.58(1.05~2.40) 1.39(1.01~1.91) 1.31(1.22~1.42) 1.17(1.12~1.23)? 20.1 1.30(1.13~1.48) 1.29(1.19~1.40) 1.28(1.23~1.34) 末期腎不全 : 1.96(1.21~3.18) 1.02(0.91~1.13) 1.30(1.00~1.69) 末期腎不全 : 2.40(0.76~7.58) 36.8 末期腎不全 :0.41? 3.60 末期腎不全 :0.35 1 AtherosclerosisRiskinCommunitiesstudy( 上 ) と GeisingerHealthSystem( 下 ) と 2 つのコホート研究が 1 つの論文に記載されている. 2 集中治療室に入室した患者が対象. そのため,1,000 人あたりの発症率は報告されていないが, 群では 3,725 例中 747 例 (20%) で急性腎障害を発症. : プロトンポンプ阻害薬,H2RA:H2 受容体拮抗薬 ち, コホート研究についてまとめたものを表 3 に示す. コホート研究では, 疾患を発症する可能性のあるものを対象に, ある因子の有無等で群分けして疾患の発症割合を比較することで, ある因子と疾患との関連を調べることができる. 今回の場合であれば, 使用者とそうでないもの ( 非使用者やH2 受容体拮抗薬使用者 ) を比較し, さまざまな腎臓病の発症割合を比較している. 結果としては, 多くの研究において, を使用している場合の方がそうでない場合に比べ, 腎臓病を発生するハザード比が高いと いう結果となった.Leeらの集中治療室に入室し 15) た患者を対象とした研究では有意な差はでなかったが, 集中治療室に入室した患者に対象を限定しており, また急性腎障害についても入室後 7 日以内での急性腎障害の発症となっている. それに加え,とH2 受容体拮抗薬の群分けも入院前内服で群分けされており, 他の研究とは結果が異なった可能性が考えられる. コホート研究は, 症例対照研究と比べて費用や労力がかかるが,による腎臓病発症のリスクを計算することはできる. ただし,を処方 日本内科学会雑誌 107 巻 5 号 875

トピックス Ⅱ. 各論 1 2 3 4 5 6 7 するかどうかについては個々の医師に委ねられ ており, それが腎臓病発症に関連があれば交絡 因子となり得る. そのような交絡因子も測定し ていれば調整可能であり, 実際にさまざまな交 絡因子の調整後も は腎臓病発症と有意な関 連があるとされているが, 調整されていないも のの影響は否定できない. 3. と腎機能低下の機序について が腎機能低下をなぜ引き起こすかについ ては, いくつかの機序が考えられているが, 現 時点で確定的な見解はない. 例えば, 急性間質 性腎炎は完全に回復しないことがあり, また, 急性腎障害は慢性腎臓病のリスクといわれてい るため, 急性間質性腎炎を起こすことが慢性腎 臓病のリスクにもなっている可能性がある. ま た, 軽度の間質性腎炎が気づかれずに起きてい る可能性もある. それ以外に が低マグネシウ ム血症を起こす可能性や腸内細菌叢の変化を来 たす可能性,asymmetric dimethylarginine (ADMA) という血管内皮機能に関わる因子を上 昇させる可能性等が考えられ, それが腎機能低 下につながるかもしれないとも考えられてい る. また近年, により膠原線維性大腸炎 (collagenous colitis) による慢性下痢を起こすこ とが指摘されており, 下痢による脱水が腎機能 低下のリスクになる可能性もある. 4. と腎機能低下との関連についてどう考えるべきか さて, と腎機能低下との関連について述べ たが, これに対してどのように対応すべきであ ろうか. 現時点ではさまざまな意見があり, 恐 らく統一的な見解はないと思われる. そのた め, 筆者の個人的な意見となるが, まず, 頻度 は少ないものの, では急性間質性腎炎を起こ す可能性があり, また, 腎臓病は特に軽度であ れば症状がないことが多いため, 定期的な腎機 能の測定は必要と考える. ただ,GERD での長期 投与等 の使用についてはしっかりとしたエ ビデンスがあり, また, 腎臓病とのエビデンス については全て観察研究からの報告で因果関係 について確定的な見解はない. さらに, リスク もそれほど高くないため, 現時点では適切に使 用されている を中止すべきというものでは ないと考えられる. これらの観察研究を統合し たメタアナリシス 17~19) も報告され, と腎機 能低下との関連が示されているが, メタアナリ シスはさまざまな研究を統合することで統計学 的なパワーを上げることができる, 異なる結果 の出ている論文を統合し 1 つの結論を導くこと ができるといったメリットはあるが, コホート 研究の箇所で挙げた限界を克服できたわけでは ない. また, 慢性腎臓病患者への投与について も, 研究報告数は少ないものの, 腎臓病患者を 対象とした場合にリスクが大幅に上がるという わけでもないため 10), 控えるべきとまではいえ ないと思われる. ただ, は高い安全性のた め, 漫然と投与されている場合もあり, 必要性 を考慮して投与すべきと考えられる. おわりに と腎機能低下との関連について概説し た. により, さまざまな上部消化管疾患の治 療成績が向上したのは事実であるため, そのベ ネフィットを上回るほどの腎機能低下のリスク は現時点では定かではないと思われる. ただ, 漫然と が投与されていることがあるため, 現 在投与されている薬の必要性について改めて検 討することが大切であると思われる. 著者の COI(conflicts of interest) 開示 : 本論文発表内容に関連して特に申告なし 876 日本内科学会雑誌 107 巻 5 号

特集 腎疾患領域における薬剤管理今注目されるポイント 文献 1 ) 木下芳一 : 高齢化社会と - 適切な酸分泌のコントロールを求めて -.Prog Med 37 : 91 99, 2017. 2 ) Ruffenach SJ, et al : Acute interstitial nephritis due to omeprazole. Am J Med 93 : 472 473, 1992. 3 ) Geevasinga N, et al : Proton pump inhibitors and acute interstitial nephritis. Clin Gastroenterol Hepatol 4 : 597 604, 2006. 4 ) Simpson IJ, et al : Proton pump inhibitors and acute interstitial nephritis : report and analysis of 15 cases. Nephrology(Carlton)11 : 381 385, 2006. 5 ) Blank ML, et al : A nationwide nested case-control study indicates an increased risk of acute interstitial nephritis with proton pump inhibitor use. Kidney Int 86 : 837 844, 2014. 6 ) Antoniou T, et al : Proton pump inhibitors and the risk of acute kidney injury in older patients : a population-based cohort study. CMAJ Open 3 : E166 171, 2015. 7 ) Muriithi AK, et al : Biopsy-proven acute interstitial nephritis, 1993-2011 : a case series. Am J Kidney Dis 64 : 558 566, 2014. 8 ) Leonard CE, et al : Proton pump inhibitors and traditional nonsteroidal anti-inflammatory drugs and the risk of acute interstitial nephritis and acute kidney injury. Pharmacoepidemiol Drug Saf 21 : 1155 1172, 2012. 9 ) Klepser DG, et al : Proton pump inhibitors and acute kidney injury : a nested case-control study. BMC Nephrol 14 : 150, 2013. 10)Arora P, et al : Proton pump inhibitors are associated with increased risk of development of chronic kidney disease. BMC Nephrol 17 : 112, 2016. 11)Peng YC, et al : Association Between the Use of Proton Pump Inhibitors and the Risk of ESRD in Renal Diseases : A Population-Based, Case-Control Study. Medicine(Baltimore)95 : e3363, 2016. 12)Hung SC, et al : Using proton pump inhibitors correlates with an increased risk of chronic kidney disease : a nationwide database-derived case-controlled study. Fam Pract 2017(in press). 13)Lazarus B, et al : Proton Pump Inhibitor Use and the Risk of Chronic Kidney Disease. JAMA Intern Med 176 : 238 246, 2016. 14)Xie Y, et al : Proton Pump Inhibitors and Risk of Incident CKD and Progression to ESRD. J Am Soc Nephrol 27 : 3153 3163, 2016. 15)Lee J, et al : Proton Pump Inhibitors Are Not Associated With Acute Kidney Injury in Critical Illness. J Clin Pharmacol 56 : 1500 1506, 2016. 16)Klatte DCF, et al : Association Between Proton Pump Inhibitor Use and Risk of Progression of Chronic Kidney Disease. Gastroenterology 153 : 702 710, 2017. 17)Wijarnpreecha K, et al : Associations of Proton-Pump Inhibitors and H2 Receptor Antagonists with Chronic Kidney Disease : A Meta-Analysis. Dig Dis Sci 62 : 2821 2827, 2017. 18)Nochaiwong S, et al : The association between proton pump inhibitor use and the risk of adverse kidney outcomes : a systematic review and meta-analysis. Nephrol Dial Transplant(in press)33 : 331 342, 2018. 19)Yang Y, et al : Proton-pump inhibitors use, and risk of acute kidney injury : a meta-analysis of observational studies. Drug Des Devel Ther 11 : 1291 1299, 2017. 日本内科学会雑誌 107 巻 5 号 877