12 第 1 章 益金 ( 収益 ) の対象 計上基準 第 2 益金 ( 収益 ) の計上時期 収益の計上は 収益が具体的に実現した時期に計上することが原則です 例えば 物の引渡しを要する取引においては 引渡しのあった日 役務の提供を要する取引は 役務提供の完了した日 に収益の実現があったものとして

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このため 法人税法の取扱いでは 収益の計上時期について各法人の任意の取扱いに委ねるのではなく 課税の公平の観点からこれを統一的に取扱うこととしている すなわち 法人が商品等を販売した場合には それによる収益は商品等の 引渡しがあった日 に収益に計上することとしている つまり 商品等の買主への引渡しと

3. 改正の内容 法人税における収益認識等について 収益認識時の価額及び収益の認識時期について法令上明確化される 返品調整引当金制度及び延払基準 ( 長期割賦販売等 ) が廃止となる 内容改正前改正後 収益認識時の価額をそれぞれ以下とする ( 資産の販売若しくは譲渡時の価額 ) 原則として資産の引渡

日本基準基礎講座 収益

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企業会計の利益 法人税法上の所得金額 売上原価販売費一般管理費営業外費用特別損失 売上 営業外収益特別利益 損金の額原価費用損失の額 益金の額 ( 収益の額 ) 当期純利益所得の金額 2 益金の額に算入すべき金額とは何か益金の額に算入すべき金額とは 法人税法の規定や他の法令で 益金の額に算入する 又

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平成 26 年 5 月に 顧客との契約から生じる収益 (IASB においては IFRS 第 15 号 ( 平成 30 年 1 月 1 日 以後開始事業年度から適用 ) FASB においては Topic606( 平成 29 年 12 月 15 日後開始事業年度から適 用 )) を公表しました これらの

日本基準基礎講座 有形固定資産

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目 次 問 1 法人税法における当初申告要件及び適用額の制限に関する改正の概要 1 問 2 租税特別措置法における当初申告要件及び適用額の制限に関する改正の概要 3 問 3 法人税法における当初申告要件 ( 所得税額控除の例 ) 5 問 4 法人税法における適用額の制限 ( 所得税額控除の例 ) 6

財剎諸表 (1).xlsx

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会社税務のてびき目次 平成 28 年度 法人税関係税制改正のポイント 1 1 法人税は何にかかるか? 3 2 収益は どの時点で計上するか? 8 3 配当金を受け取ったときは? 15 4 売上原価を求める方法 19 5 売却した有価証券の損益を求める 24 コラム 1 社長が会社にお金を貸していたら

投資法人の資本の払戻 し直前の税務上の資本 金等の額 投資法人の資本の払戻し 直前の発行済投資口総数 投資法人の資本の払戻し総額 * 一定割合 = 投資法人の税務上の前期末純資産価額 ( 注 3) ( 小数第 3 位未満を切上げ ) ( 注 2) 譲渡収入の金額 = 資本の払戻し額 -みなし配当金額

労働基準法が改正されます

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CONTENTS 第 1 章法人税における純資産の部の取扱い Q1-1 法人税における純資産の部の区分... 2 Q1-2 純資産の部の区分 ( 法人税と会計の違い )... 4 Q1-3 別表調整... 7 Q1-4 資本金等の額についての政令の規定 Q1-5 利益積立金額についての政

1 繰越控除適用事業年度の申告書提出の時点で判定して 連続して 提出していることが要件である その時点で提出されていない事業年度があれば事後的に提出しても要件は満たさない 2 確定申告書を提出 とは白色申告でも可 4. 欠損金の繰越控除期間に誤りはないか青色欠損金の繰越期間は 最近でも図表 1 のよ

第4期電子公告(東京)

平成23年度税制改正の主要項目

【問】適格現物分配に係る会計処理と税務処理の相違

収益認識に関する会計基準

N 譲渡所得は 売却した土地や借地権 建物などの所有期間によって 長期譲渡所得 と 短期譲渡所得 に分けられ それぞれに定められた税率を乗じて税額を計算します この長期と短期の区分は 土地や借地権 建物などの場合は 売却した資産が 譲渡した年の1 月 1 日における所有期間が5 年以下のとき 短期譲

改正 ( 事業年度の中途において中小企業者等に該当しなくなった場合等の適用 ) 42 の 6-1 法人が各事業年度の中途において措置法第 42 条の6 第 1 項に規定する中小企業者等 ( 以下 中小企業者等 という ) に該当しないこととなった場合においても その該当しないこととなった日前に取得又

試験研究費 9,, 7,, Check7 14,, 14,, Check8 7,, 2,, 14,, 6,, 6,, 税務弘報

損金経理と積立金経理の違い ( 圧縮超過額がない場合の基本構造 ) 例 A 社は 50の国庫補助金を得て 100で機械を取得した なお A 社の経常利益は 100 である * 仕訳の違い ( 単位 : 百万円 ) 損金経理積立金経理 補助金受贈と機械取得時の仕訳 ( 両者とも同じ ) 現金預金 50

平成30年公認会計士試験

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N 譲渡所得は 売却した土地や借地権 建物などの所有期間によって 長期譲渡所得 と 短期譲渡所得 に分けられ それぞれに定められた税率を乗じて税額を計算します この長期と短期の区分は 土地や借地権 建物などの場合は 売却した資産が 譲渡した年の1 月 1 日における所有期間が5 年以下のとき 短期譲

ことも認められています 施行日前 ( 平成 26 年 3 月 31 日以前 ) にリース契約を締結し リース資産の引渡しを行ったリース取引についてこの特例により賃貸借処理を行っている場合には 旧税率の 5% が適用されます 3. 資産の貸付け に関する経過措置指定日の前日 ( 平成 25 年 9 月

実務特集1. 寄附修正 Ⅰ はじめに グループ法人税制 100% グループ内の法人間での譲渡損益の繰り延べ 100% グループ内の法人間の寄附 ( 以上 2010 年 11 月号 ) 100% グループ内の法人間の寄附 ( 寄附修正 ) 支配関係 完全支配関係の判定 100% グループ内の法人のステ

下では特別償却と対比するため 特別控除については 特に断らない限り特定の機械や設備等の資産を取得した場合を前提として説明することとします 特別控除 内容 個別の制度例 特定の機械や設備等の資産を取得して事業の用に供したときや 特定の費用を支出したときなどに 取得価額や支出した費用の額等 一定割合 の

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スポンサー企業 増減資により 再生会社をスポンサー企業の子会社としたうえで 継続事業を新設分割により切り分ける 100% 新株発行 承継会社 ( 新設会社 ) 整理予定の事業 (A 事業 ) 継続事業 会社分割 移転事業 以下 分社型分割により事業再生を行う場合の具体的な仕組みを解説する の株主 整

13. 平成 29 年 4 月に中古住宅とその敷地を取得した場合 当該敷地の取得に係る不動産取得税の税額から 1/2 に相当する額が減額される 14. 家屋の改築により家屋の取得とみなされた場合 当該改築により増加した価格を課税標準として不動産 取得税が課税される 15. 不動産取得税は 相続 贈与

198 第 3 章 減価償却資産の取得価額 キーワード ソフトウエアに係る取得価額購入したソフトウエアの取得価額は 1 当該資産の購入の代価と 2 当該資産を事業の用に供するために直接要した費用との合計額とされています 引取運賃 荷役費 運送保険料 購入手数料 関税 その他の当該資産の購入のために要

平成 22 年 4 月 1 日現在の法令等に準拠 UP!Consulting Up Newsletter 無対価での会社分割 バックナンバーは 当事務所のホームページで参照できます 1

6 課税上の取扱い日本の居住者又は日本法人である投資主及び投資法人に関する課税上の一般的な取扱いは 下記のとおりです なお 税法等の改正 税務当局等による解釈 運用の変更により 以下の内容は変更されることがあります また 個々の投資主の固有の事情によっては異なる取扱いが行われることがあります (1)

法人による完全支配関係下の寄附金 1.100% グループ内の法人間の寄附 ( 法法 372) 現行税制上では 寄附金は支出法人では損金計上限度額を超える部分が損金不算入 受領法人では益金算入です 平成 22 年度税制改正により 100% グループ内での支出法人では寄附金全額を損金不算入とし 受領法人

収益事業開始届出 ( 法人税法第 150 条第 1 項 第 2 項 第 3 項 ) 1 収益事業の概要を記載した書類 2 収益事業開始の日又は国内源泉所得のうち収益事業から生ずるものを有することとなった時における収益事業についての貸借対照表 3 定款 寄附行為 規則若しくは規約又はこれらに準ずるもの

IFRS基礎講座 IAS第12号 法人所得税

第 76 期 計算書類 自平成 29 年 4 月 1 日至平成 30 年 3 月 31 日 大泉物流株式会社

に相当する金額を反映して分割対価が低くなっているはずですが 分割法人において移転する資産及び負債の譲渡損益は計上されませんので 分割法人において この退職給付債務に相当する金額を損金の額とする余地はないこととなります (2) 分割承継法人適格分割によって退職給付債務を移転する場合には 分割法人の負債

経理事務3章-修3.indd

( 資産の部 ) ( 負債の部 ) Ⅰ 特定資産の部 1. 流動負債 366,211,036 1 年内返済予定 1. 流動資産 580,621,275 特定社債 302,000,000 信託預金 580,621,275 事業未払金 2,363, 固定資産 6,029,788,716 未払

科目印収納科目一覧

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IFRS基礎講座 IAS第11号/18号 収益

税額控除の対象となる試験研究費の範囲と税務調整

改正消費税法の実施に先立ち施行日をまたぐ取引の適用税率と経過措置の再確認(その1)

第6期決算公告

この特例は居住期間が短期間でも その家屋がその人の日常の生活状況などから 生活の本拠として居住しているものであれば適用が受けられます ただし 次のような場合には 適用はありません 1 居住用財産の特例の適用を受けるためのみの目的で入居した場合 2 自己の居住用家屋の新築期間中や改築期間中だけの仮住い

[2] 財務上の影響 自己株式を 取得 した場合には 通常の有価証券の Ⅰ. 株主資本 ように資産に計上することはせず 株主との間の資本取 1. 資本金 引と考え その取得原価をもって純資産の部の株主資本 2. 資本剰余金 (1) 資本準備金 から控除します そのため 貸借対照表上の表示は金額 (2

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JV 工事における取下金の分配についての消費税取扱いは JV 工事における出資金の請求での消費税取扱いは 立替金の請求は税込みでスポンサー会社に請求するが 消費税の対象外と して税抜きで請求する場合とは 各構成員が消費税を申告する際に 仕入税額控除を個別対応方式で計算する 場合に必要な計算要素は J

貸借対照表 (2019 年 3 月 31 日現在 ) ( 単位 : 千円 ) 科目 金額 科目 金額 ( 資産の部 ) ( 負債の部 ) 流動資産 3,784,729 流動負債 244,841 現金及び預金 3,621,845 リース債務 94,106 前払費用 156,652 未払金 18,745

営業報告書

税額控除限度額の計算この制度による税額控除限度額は 次の算式により計算します ( 措法 42 の 112) 税額控除限度額 = 特定機械装置等の取得価額 税額控除割合 ( 当期の法人税額の 20% 相当額を限度 ) 上記算式の税額控除割合は 次に掲げる区分に応じ それぞれ次の割合となります 特定機械

第4期 決算報告書

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2 その他 H26 中間申告義務のない事業者が 届出 012 書を提出した場合には 自主的に中間申告 納付することができる旨を 検討したか ( 平成 26 年 4 月 1 日以 後開始課税期間より適用 ) 本則課税の場合科目等 No. 主な項目チェック摘要 1 課税事業者 H26 課税期間の基準期間

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2. 中小企業のための主な優遇制度 注 : 各項目に付記している番号は 関連する参考資料です 番号に対応する資料名などは 5~6 ページに掲載していますのでご参照ください [1] 中小法人等 に適用される主な優遇制度 紙面の都合により ここでは制度の種類と それに関連する参考資料の番号を紹介していま

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精算表 精算表とは 決算日に 総勘定元帳から各勘定の残高を集計した上で それらに修正すべき処理 ( 決算整理仕訳 ) の内 容を記入し 確定した各勘定の金額を貸借対照表と損益計算書の欄に移していく一覧表です 期末商品棚卸高 20 円 現金 繰越商品 資本金 2

貸借対照表 平成 28 年 3 月 31 日現在 ( 単位 : 千円 ) 科 目 金 額 科 目 金 額 資産の部 負債の部 流動資産 (63,628,517) 流動負債 (72,772,267) 現金及び預金 33,016,731 買掛金 379,893 売掛金 426,495 未払金 38,59

貸借対照表 ( 平成 25 年 3 月 31 日現在 ) ( 単位 : 千円 ) 科目金額科目金額 ( 資産の部 ) ( 負債の部 ) 流動資産 14,146,891 流動負債 10,030,277 現金及び預金 2,491,769 買 掛 金 7,290,606 売 掛 金 9,256,869 リ

5 配偶者控除等 配偶者控除 配偶者特別控除 扶養控除及び勤労学生控除の合計所得金額の要件 について 一律 10 万円ずつ引き上げられます 6 青色申告特別控除正規の簿記の原則により記帳している者に係る控除額が 55 万円に引き下げられ 正規の簿記の原則により記帳し かつ e5tax 等により確定申

2 災害関係費用全般 ( 被災した法人の災害による損失や被災者に対して支援を行った法人に関する法人税の取扱い ) (1) 被災した法人側における取扱い 1 災害により滅失 損壊した資産等被災に伴い次のような損失又は費用が生じたときには その損失又は費用の額は損金の額に算入 1 商品や原材料等の棚卸資

2. 適用を受けるにあたっての 1 相続発生日を起算点とした適用期間の要件 相続日から起算して 3 年を経過する日の属する年の 12 月 31 日まで かつ 特例の適用期間である平成 28 年 4 月 1 日から平成 31 年 12 月 31 日までに譲渡することが必要 例 平成 25 年 1 月

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ワコープラネット/標準テンプレート

第28期貸借対照表

適用時期 法人の平成 26 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度分の法人税について適用されます 改正措法附則案 使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例 ( 法人が支出した使途秘匿金の額に 40% の割合を乗じて計算した金額をその納付すべき法人

平成19年度 法人の減価償却制度の改正のあらまし

2. 基準差調整表 当行は 日本基準に準拠した財務諸表に加えて IFRS 財務諸表を参考情報として開示しております 日本基準と IFRS では重要な会計方針が異なることから 以下のとおり当行の資産 負債及び資本に対する調整表並びに当期利益の調整表を記載しております (1) 資産 負債及び資本に対する

租税特別措置法 ( 昭和三十二年法律第二十六号 ) 第十条の二 第四十二条の五 第六十八条の十 租税特別措置法 ( 昭和三十二年法律第二十六号 ) ( 高度省エネルギー増進設備等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除 ) 第十条の二青色申告書を提出する個人が 平成三十年四月一日 ( 第二号及

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営 業 報 告 書

2. 適用を受けるにあたっての 1 相続発生日を起算点とした適用期間の要件 相続日から起算して 3 年を経過する日の属する年の 12 月 31 日まで かつ 特例の適用期間である平成 28 年 4 月 1 日から平成 31 年 12 月 31 日までに譲渡することが必要 例 平成 25 年 1 月

作成する申告書 還付請求書等の様式名と作成の順序 ( 単体申告分 ) 申告及び還付請求を行うに当たり作成することとなる順に その様式を示しています 災害損失の繰戻しによる法人税 額の還付 ( 法人税法 805) 仮決算の中間申告による所得税 額の還付 ( 法人税法 ) 1 災害損失特別勘

内に 耐火建築物以外の建物についてはその購入の日以前 20 年以内に建築されたものであること 地震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準又はこれに準ずるものに適合する一定の中古住宅 を 平成 17 年 4 月 1 日以降に取得した場合には 築年数に関係なく適用が受けられます (56ページ 一

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. 減価償却の仕組みを理解する 60 定率法 定額法など減価償却の方法を理解しましょう. 有価証券の整理をする 68 有価証券一覧表に 購入売却のつど その取引内容を記載していくと 決算業務の際に便利です. 受取配当金を集計する 78 有価証券の整理後 受取配当金と源泉所得税を集計し 申告書作成の準

第11期決算公告

2 事業活動収支計算書 ( 旧消費収支計算書 ) 関係 (1) 従前の 消費収支計算書 の名称が 事業活動収支計算書 に変更され 収支を経常的収支及び臨時的収支に区分して それぞれの収支状況を把握できるようになりました 第 15 条関係 別添資料 p2 9 41~46 82 参照 消費収入 消費支出

税務調査      業種別・狙われるポイント

第 47 期末貸借対照表 2019 年 3 月 31 日現在 ( 単位 : 千円 ) 資 産 の 部 負 債 の 部 科 目 金 額 科 目 金 額 流 動 資 産 9,306,841 流 動 負 債 2,136,829 現 金 及 び 預 金 8,614,645 未 払 金 808,785 立 替

49 年 12 月 31 日までの間 源泉徴収される配当等の額に係るの額に対して 2.1% の税率により復興 特別が源泉徴収されます b. 出資等減少分配に係る税務個人投資主が本投資法人から受取る利益を超える金銭の分配 ( 分割型分割及び株式分配並びに組織変更による場合を除く 以下本 1において同じ

はじめに 会社の経営には 様々な判断が必要です そのなかには 税金に関連することも多いでしょう 間違った判断をしてしまった結果 受けられるはずの特例が受けられなかった 本来より多額の税金を支払うことになってしまった という事態になり 場合によっては 会社の経営に大きな影響を及ぼすこともあります また

諸費用の法人税の取扱い質疑応答

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第 29 期決算公告 平成 26 年 4 月 1 日 平成 27 年 3 月 31 日 計算書類 1 貸借対照表 2 損益計算書 3 個別注記表 中部テレコミュニケーション株式会社

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土地建物等の譲渡(マイホームの売却による譲渡損)編

iii. 源泉徴収選択口座への受入れ源泉徴収ありを選択した特定口座 ( 以下 源泉徴収選択口座 といいます ) が開設されている金融商品取引業者等 ( 証券会社等 ) に対して 源泉徴収選択口座内配当等受入開始届出書 を提出することにより 上場株式等の配当等を源泉徴収選択口座に受け入れることができま

Transcription:

12 第 1 章 益金 ( 収益 ) の対象 計上基準 第 2 益金 ( 収益 ) の計上時期 収益の計上は 収益が具体的に実現した時期に計上することが原則です 例えば 物の引渡しを要する取引においては 引渡しのあった日 役務の提供を要する取引は 役務提供の完了した日 に収益の実現があったものとしてこれを計上します ( 法法 22の21) 1 棚卸資産の販売による収益 棚卸資産の販売による収益の額は 税務上 その引渡しがあった日の属する事業年度の益金の額に算入しなければなりません 引渡しの日がいつであったかは 例えば以下の基準のうち 棚卸資産の種類 性質 販売の契約内容等に応じて合理的と認められるものを選択し 毎期継続して適用します ( 法基通 2-1-2 2-1-4) 基準引渡日の判断基準 出荷基準船積 ( 日 ) 基準着荷基準検収基準使用収益基準検針日基準 自社倉庫などから出荷した日輸出取引等において船積みを完了した日相手方に荷が到着した日相手方が検収した日相手方において使用収益が可能となった日 ( 定期的な ) 検針に基づき料金算定をした日 そのほか 例えば クーリングオフ期限を設けている販売の場合は その期限を経過した日をもって売上を計上することなども考えられま す

第1章 益金 収益 の対象 計上基準 13 ミ ス 事 例 事例 取引先相手により異なる収益の認識基準の適用 A社は 汎用機械の製造販売を行っているが 特定の得意先に対 しては個別設計による機械の製造を受注している 収益の計上基準 に関し A社は採用すべき基準は1つであるべきと判断し 全ての収 益を出荷基準で計上している 棚卸資産の販売における収益の計上についての認識基準は 棚卸資 産の種類及び性質 その販売に係る契約の内容等に応じその引渡しの 日として合理的であるものを採用すべきであることから 棚卸資産の 種類によって合理的と認められる認識基準が異なる場合は それぞれ 異なる認識基準を採用することとなります 事例の場合 汎用機械と個別受注製造の機械につき 例えば 前者 は出荷基準 後者は検収基準など異なる収益の認識基準の採用をする ことが可能です ただし 一旦採用した収益の認識基準については毎 期継続して適用する必要があります なお 契約に機械の動作確認等を完了した後に対価を支払う定めが あった場合などは 相手先の検収により売上債権が確定するといえる ことから 出荷基準の採用そのものが適切とはいえません 法基通2-1-2

14 第1章 益金 収益 の対象 計上基準 事例 長期割賦販売等による棚卸資産の販売 A社は 税務上の長期割賦販売等に該当する契約に基づいて棚卸 資産を販売しており 延払基準を採用することにより支払期日が到 来した賦払金の金額をもって収益を計上し またそれに対応する原 価を計上している 収益は実現主義に基づきその計上すべき時期を判定するのが基本的 な考え方ですが 以下の要件を満たすいわゆる長期割賦販売等につい ては損益の計上基準の特例として一定の繰延計上 延払基準 が認め られています ① 3回以上に分割して対価の支払がなされること ② 最後の支払期日が目的物の引渡し等の期日の翌日から2年以上先 であること ③ 目的物の引渡し等の期日までに受け取る対価が総額の3分の2以下 であること ところが 平成30年度の税制改正により 平成30年4月1日以降に終 了する事業年度よりその長期割賦販売等に係る繰延基準の適用が廃止 されることになりました ただし 税務上のリース取引に該当し売買 取引とみなされる取引 リース譲渡 については 引き続き延払基準 の適用が可能です 第7章第3参照 当該改正の経過措置として 平成30年3月31日以前に行った長期割 賦販売等については 平成35年3月31日までに開始する各事業年度に おいて現行の延払基準を引き続き適用することができます また 延 払基準の適用をやめた事業年度又は平成35年4月1日以降に最初に開始 する事業年度のいずれか早い方の年度においては 未計上の割賦利益 相当額を一括して収益に計上する必要がありますが 確定申告書に計

第1章 益金 収益 の対象 計上基準 15 算明細を添付することを要件に当該未計上の割賦利益相当額を10年均 等 120か月 で収益計上することができるとされています 事例の場合 平成30年3月31日以前に行った長期割賦販売等につい ては上記の経過措置により一定の損益の繰延計上が可能ですが 同日 より後に行った長期割賦販売等については延払基準を適用することは できません 旧法法63⑥ 旧法令124①一② 127 平30法7改正法附則28 事例 工事進行基準 で経理した損益の申告調整による 工 事完成基準 への修正 建設業を営むA社は 会計上は原則全ての工事につき 工事進行 基準 を適用して収益及び費用の額を計算しているが 税務上は長 期大規模工事に該当しない工事については 工事完成基準 により 収益及び費用の額を計算することとしており 申告調整により会計 上の計上額との差額を加減算している 建設業者等が工事を請け負った場合の収益及び費用の額の経理方法 は 原則的に 工事完成基準 が適用されますが 長期大規模工事に 該当する工事を請け負った場合には 工事進行基準 の方法 工事の 請負対価の額及び工事原価の額に事業年度終了時における合理的に計 算した工事進行割合を乗じて計算した金額からそれぞれ当該事業年度 前の各事業年度に計上した収益及び費用の額を控除した金額を事業年 度の収益及び費用の額とする方法 が税務上強制適用されます 長期大規模工事とは 次の要件を全て満たす工事を指します

24 第 2 章 損金 ( 費用 ) の計上基準 第 2 章 損金 ( 費用 ) の計上基準 法人の所得金額を計算する上で 損金 として認識される対象は 1 売上原価 2 販売費及び一般管理費 3その他損失で資本等取引以外のものなど 会計上の 費用 として認識されるものと基本的に同等の内容です ( 法法 223) ただし 課税の公平や一定の政策目的の実現のため 会計上 費用 として認識される支出等であっても 例えば 交際費や寄附金 役員給与 任意の引当金などのように 税務上損金算入に制限がなされるものもあれば 逆に会計上は 費用 とし 第 2 章 て認められないものの税務上は損金算入が認められる圧縮記帳 繰越欠損金の控除などがあります 損金計上のタイミングについても一般的な会計処理の基準に従い 1 売上原価については当期の収益に対応する費用が 2 販売費及び一般管理費については期間的対応により当期に発生した費用が 3その他損失については発生の時間的帰属により当期発生費用が 当事業年度の損金の額に算入されます なお 2の販売費及び一般管理費については 減価償却費を除き 期末までに債務が確定していない費用は 当期に発生した費用 とは扱われませんので注意が必要です これを債務確定基準といいます ( 法法 2234)

第 2 章損金 ( 費用 ) の計上基準 25 損金の対象となる取引 第 2 章 ( 注 ) 資本等取引 : 資本金等の額の増加又は減少を生ずる取引 利益又は 剰余金の分配及び残余財産の分配又は引渡し 第 1 売上原価 売上原価についての税務上の取扱いは 企業会計原則の 費用収益対応の原則 に従い当期の益金の額に算入すべき収益に対応する原価が当期の損金の額に算入すべき費用となります 対応する収益が当期に計上される以上 それに対応する原価はたとえ期末までに金額が確定していなくてもその現況により合理的に金額を見積り当期の費用となります ( 法基通 2-2-1)

26 第2章 損金 費用 の計上基準 ミ ス 事 例 事例 未確定の事後的費用の見積計上 A社は 機械装置の製造販売を行っており 出荷製品には納品後 の一定期間 顧客からのクレームや製品の不具合に無償で対応して いる 当期に出荷した製品に対応するクレームや補修費用を期末で 合理的に算定し当期の費用として計上している 当期に計上した収益に対応する売上原価は たとえ期末までに金額 が確定していなくてもその時点における現況により合理的に金額を見 積もり 当該金額を損金の額に算入します ただ 製品等の販売に関 連して発生する費用であっても 単なる事後的費用の性格を有するも のは売上原価には含まれず 債務確定基準により それが発生した年 度の費用として認識すべきとなります 事後的費用につき 見積計上 を認めるということは 任意引当金の計上を許すこととなり 債務確 定基準に適合しません 事例のような製品販売に係るクレーム対応 費 補修費などは事後的費用に該当しますので 期末の見積計上はで きません 法基通2-2-1 事例 工場勤務社員の社宅費用 会社負担分 機械部品の加工を行っているA社は 工場勤務する社員のために マンションの部屋をいくつか借り上げ 社宅として使わせている 会社が負担する当該賃借費用をA社は販売費及び一般管理費として 計上し 発生した年度の損金の額に算入している

第2章 損金 費用 の計上基準 27 工場勤務者の社宅に供するための家賃は 一般に売上原価に相当す ると考えられることから 費用収益対応の原則により 当期の売上に 対応する部分のみが当期の費用として損金算入されます 事例の場 合 当期の売上原価に配賦されなかった家賃については 棚卸資産と して認識する必要があります 法法22③ 事例 概算設計と詳細設計 建設業を営むA社は 営業担当社員が顧客に対し施工概要を紹介 し 引き合いを得るため いわゆる営業用の 概算設計書 を作成 している その後 受注が確実となればその時点で 詳細設計書 を作成し より具体的な仕様を顧客と決定していくこととしている A社においては これら 概算設計書 及び 詳細設計書 の作成 に係る費用を販売費及び一般管理費として処理している 費用に係る税務処理として 会計処理と同様 売上原価は収益と対 応する部分が当期の費用となります 請負収益に対応する原価として は その請負の目的となった物の完成のために要した材料費 労務費 外注費及び経費の額の合計額のほか その受注又は引渡しをするため に直接要した全ての費用の額も含まれます ここでいう受注をするた めに直接要した費用とは 受注が確実になった後において支出される 費用が該当します これは 請負の場合 たとえ正式な受注の前であ っても その受注が確実となった後においては その請負の原価とな るべき調査費や設計費 交際費などを前もって支出することが少なく ないということによります したがって事例の場合 A社が負担する 営業用の 概算設計書 の作成費用は販売費及び一般管理費に該当し

96 第 3 章 費用の税務 接待飲食費の額が1,600 万円を超す場合 上記図 1の選択が有利となります 中小法人以外の場合 上記図 1のみ適用となります 3 交際費等の範囲 1 対象となる支出 交際費等とは 交際費 接待費 機密費その他の費用で 法人がその得意先 仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待 供応 慰安 贈答その他これに類する行為のために支出するものをいいます ( 措法 61の44) 例えば 次のような支出が交際費等に該当します( 措通 61の4(1)-15) 1 会社の何周年記念 社屋新築記念 新船建造や土木建築等における進水式 起工式 落成式等における宴会費 交通費及び記念品代 2 下請工場 特約店 代理店等となるために支出する運動費等の費用 3 得意先 仕入先等社外の者の慶弔 禍福に際し支出する金品等の費用 4 得意先 仕入先その他事業に関係のある者等を旅行 観劇等に招待する費用 5 製造業者等が その製品等を扱う卸売業者等において小売業者を旅行 観劇等に招待する費用を負担した場合の負担額 6 いわゆる総会対策等のために支出する費用 7 建設業者等が高層ビル マンション等の建設に当たり 周辺の住民の同意を得るために支出する費用

第3章 費用の税務 ⑧ 97 スーパーマーケット等を営む法人が既存の商店街等に進出するた めに周辺の商店等の同意を得るために支出する運動費等の費用 ⑨ 得意先 仕入先等の従業員等に対して取引の謝礼等として支出す る金品の費用 ⑩ 建設業者等が支出するいわゆる談合金その他これに類する費用 ミ ス 事 例 事例 受注のために支出した謝礼金 工作機械を製造するA社の営業担当者は 営業先の購買部長から 発注の見返りに金品の要求があり やむなく30万円の現金を支払っ た その結果 自社製品を販売する契約を締結するに至った A社 はこの支出を交際費等に含めずその他の一般経費として処理してい る 交際費等に該当する支出として得意先などを接待するための飲食 費 手土産代 中元 歳暮の費用 贈答品代 慶弔関係の支出などが 該当することは容易に想像できるところです しかし 税務上 交際 費等に該当する支出は一般的な接待のための費用よりも範囲が広く 受注謝礼金 妨害排除費用 談合及びその類似費用 降り料など が 含まれます 事例の支出は典型的な受注謝礼金に該当し 税務上 交 際費等として扱います 措通61の4(1)-15(6) (10)

98 第3章 費用の税務 事例 社内慰労会のための費用 A社では プロジェクト案件が終了した際に 当該プロジェクト に参加した社内スタッフを集めて慰労会を行っている この慰労会 のために支出した費用を福利厚生費として処理している 法人が事業に関係のある者等に対する接待 供応 慰安 贈答等の ために支出する費用は交際費等に該当します ここでいう事業に関係 のある者等には 得意先や仕入先などのように 直接その法人の営む 事業に取引関係のある者だけでなく 間接に当該法人の利害に関係あ る者及び当該法人の役員 従業員 株主等も含みます また 創立記 念日 新社屋落成式等の社内行事に際し従業員等におおむね一律に社 内において供与される通常の飲食に要する費用は福利厚生費として扱 いますが 特定の従業員のみを対象とした飲食費は福利厚生費に該当 しません 事例の場合 プロジェクトに参加した社内スタッフは法人の従業員 であるものの 事業に関係のある者等として交際費等の支出対象者に なります また それらの者のために支出する慰労会のための費用は 特定の従業員のみを対象とした支出であるため 福利厚生費には該当 せず交際費等として扱います 措通61の4(1)-22 61の4(1)-10 事例 情報収集のために支出した費用 情報提供料 工作機械メーカーのA社は営業先のB社から大型案件の受注をす るため B社の元役員である甲から営業協力を得ており 営業上有益

第3章 費用の税務 99 な情報を収集している この度 その情報収集が奏功しB社からの 受注に成功した その対価として甲に300万円の手数料を支払い それを交際費以外の一般経費 支払手数料 として処理している なお 甲とは当該営業協力に係る契約書は作成していない 法人が取引に関する情報の提供又は取引の媒介 代理 あっせん等 の役務の提供 以下 情報提供等 といいます を行うことを本業と していない者に対して 情報提供等の対価を支払った場合 その支出 は原則 交際費等として扱われます しかし 次の要件の全てを満た している場合は その支出は交際費等に該当しません ① その金品の交付があらかじめ締結された契約に基づくものである こと ② 提供を受ける役務の内容が当該契約において具体的に明らかにさ れており かつ これに基づいて実際に役務の提供を受けているこ と ③ その交付した金品の価額がその提供を受けた役務の内容に照らし 相当と認められること 事例の場合 A社はあらかじめ甲と契約を締結していないことから 甲に対して支払った情報提供のための対価は交際費等に該当するもの として取り扱われます 措通61の4(1)-8 事例 スーパーマーケットが支出する地元商店街への営業補償 金 スーパーマーケットを経営するA社は新規スーパーマーケットを