別紙 2( 論文 ) ハブシステムと空港政策における地域振興策 那覇空港を事例にー 沖縄国際大学大学院地域産業研究科地域産業専攻比嘉太一 本論文ではハブ空港戦略が地域経済に与える影響について調査 分析を試みた 結論を先に言えば 沖縄のような島嶼地域が発展するためには航空ネットワークは重要であり 航空ネットワークの拡大は経済のグローバル化が進展した現在において 地域経済を活性化させるための政策のひとつとなる 沖縄経済を見ると ANA が 2009 年から 那覇空港をハブとして国際物流事業を開始したことで 国際貨物取扱量は約 1 8 万 5 千トンで 開始前の 2008 年の約 1900 トンから約 100 倍に伸びており 全国 4 位の取扱量になっている 地域ハブでグローバル化と地域経済の活性化を実現している 航空におけるハブ戦略は空港というハード戦略と路線というソフト戦略のバランスの取れた経済戦略の展開が必要不可欠である キーワードハブ空港 沖縄国際物流貨物ハブ ハブ (hub) 空港政策 はじめに 地域が発展する手段の 1 つとして 交通網の発達 が挙げられる 交通とは 空間を克服するための人間の経済活動であり 人や物 金 情報 の時間的 空間的な移動全体の総称である である 交通の発達は地域経済の発展や文化の振興となり 都市を形成する 都市は交通のハブ (hub) となり 人や物 金 情報が集まる拠点として機能するようになる ハブとは拠点のことである 詳細は後述する ハブができるまでの交通過程でネットワークの発達や発展などの変遷がある 交通ネットワークの形成過程を見ていくと ライン型からグリット型 グリット型からハブ アンド スポーク型へと変遷を辿る ライン型は搭載量の需要が少ない市場に適したネットワークである 具体的な例としては山手線などの鉄道型や 路線バスのようなバス型が挙げられる 需要が増加し市場が拡大すると双方向に直接運ぶことができるネットワークが誕生する これがグリット型である 中規模の市場では利点が大きいが 市場が発展して大規模になればグリット型では輸送コストや人件費などが膨大になり ネットワークの数も増加する コストを削減し ネットワークの効率を図ったのが ハブ アンド スポーク型 であり 現在では主流なネットワークの 1 つとなっている 本論文ではネットワークの変遷とハブ空港の定義について検証した また 那覇空港の滑走路増設に伴う発着回数の増加 物流ハブについての課題 ソフト戦略についても調査した ハブ (hub) とは ハブ (hub) とは 交通や通信の拠点となる地点のことをいう 言葉の語源は車輪の車軸にあたる部分を ハブ と呼称することから ネットワークの中心という意味で ハブ と呼んでいる = 図 1 航空用語においって 中心となるハブ空港からから四方八方に延びている支線 = スポークにあたる空港を スポーク空港 1 と呼び ハブ空港とスポーク空港による航空ネットワーク形態を ハブ & スポーク と呼んでいる 図 1 ハブ & スポーク 図 2 ネットワークの変遷図 ライン型 グリッと型 ハブ & スポーク型
ライン型ネットワークは 物流の初期の段階のネットワークで 最もシンプルなネットワークである 典型的なケースとして 明治期以前にもみられる飛脚や回船システムであり バスや鉄道の交通ネットワークなどがこれにあたる 複数の目的地を串刺しにして配送 配達 輸送する形態である ライン型ネットワークの特徴はすべての就航地点に貨物や旅客を運ぶことができることである 短所は特定の区間の搭載率もしくは搭乗率が 100%( 満量もしくは満席 ) になると 次の区間で荷物や人を降ろさない限り 昇降や貨物の積載が困難になることである また 航空産業においては 乗務員の運航 宿泊や便乗が多くなり人件費のコストや輸送コストがかかるのが欠点である かつては飛行機の航続距離が短かったことから ライン型ネットワークを活用し 到着した各地点で燃料を補給して 最終目的地まで繋いでいた 近年 飛行機技術の向上で航続距離も大幅に伸びたことからライン型ネットワークを活用した輸送は少なくなっている ライン型ネットワークが発展すると グリッド型ネットワークが形成される 複数の地点での需要が増加すると人や物を輸送する際 ライン型ではなく主要な輸送先に直接運ぶネットワークが必要となってくる これがグリット型ネットワークである グリッド型ネットワークはローカル需要に特化したネットワークである ローカルとは純粋に出発地から目的地まで乗り継ぎなしで旅程する区間である グリッド型はローカル需要にターゲットを絞っているため 収入機会に限界がある そのため地上滞在時間を極力短縮 機材効率を上げて費用を削減し利益を確保する方策がとられる 特長は接続性を意識する必要がなく 機材は主基地からの折り返し運用だけではなく地方空港間へも連続的に運用できることである しかし 機材操りが硬直化するため便によっては需要に見合わない機材を運行せざるをえないため 収益性の悪い便が一定の割合で発生してしまい 非効率となるケースが多発する また 気象や機材の不具合などから欠航が生じた場合 その他のネットワークも影響を受け 物流ネットワーク全体の復旧に時間がかかってしまうという弱点がある ハブ & スポーク型ネットワークシステムは 経済合理性を追求したネットワークである 例えばすべての地点間に直行便を運行すると その組み合わせが N 地点ある場合 数式は N!/((N-2)! 2) である N が増加するにつれて 組み合わせ数が激増していることが ( 表 1) からわかる 数式 1 ライン型ネットワークの数式 ( 出所 : 航空産業入門 p205 より引用 ) Ν!/((N - 2)! 2) 一方 ハブ & スポーク型の場合に必要な組み合わせ 数は N-1 である 地点数が増えるにつれて 路線数も増加する グリッド型など各地点間を直行便で結ぶ場合 20 地点を結ぶネットワークの場合 190 路線が必要になる これに対して ハブ & スポークの場合は ハブとなる拠点を一度通過するだけで 19 路線 つまり 20 地点を網羅することができる 数式 2 ハブ & スポークネットワークの数式 ( 出所 : 航空産業入門 p205 より引用 ) N -1 表 1 ネットワークにおける地点数の比較表 航空政策において ハブ空港という言葉が専門用語として使われるようになって久しいが ハブ空港はネットワークの効率化により誕生した概念であり 空港政策においてハブ空港になれるか否かで地域経済に与えるインパクトも大きく異なってくる アジア地域においては ハブ空港としての存在価値を高めるために 滑走路やターミナルビルの増設によるハード強化と着陸料減額などによるソフトインセンティブの充実などでハブ空港としての地位を高めている ハブ空港の定義 ハブ空港における概念は専門家によって定義が異なる そこで 主なハブ空港の定義を整理する ハブ & スポークネットワークの結節点となる ハブ空港 の定義は複数あり 専門家によって概念が分かれる 唐津雅人 (2011) はハブ空港の定義を国際空港とした上で 企業が運用上拠点としているハブ空港 ( 企業ハブ ) と 旅客が乗り継ぎする空港 ( 乗り継ぎハブ ) に分類する 企業ハブには 各航空会社が運航する際に必要不可欠な乗務員や整備士 整備基地がハブ空港に集中させ効率よく業務を行えるようにする利点がる 各航空会社はマーケティングにより利益が最大となる場所をハブ空港として活用している 一般的に自国の巨大空港をハブ空港として使用している例が少なくない 日本の航空会社である日本航空や全日空は成田空港と羽田空港の 2 カ所を企業ハブとして使用している 各航空会社の中には メインとなる企業ハブの他に
メインハブを補完する役割として準ハブ空港を置く会社もある 準ハブ空港は セカンドハブ とも呼ばれる 成田空港を準ハブ空港として活用する航空会社は米国ユナイテッド航空 ( メインハブはシカゴ オヘア空港 ) デルタ航空 ( 同ジョン F ケネディ空港 ) などが挙げられる また シンガポール航空の企業ハブとなっているチャンギ国際空港 ( シンガポール ) は ガルーダ インドネシア航空 ( 同スカルノ ハッタ国際空港 ) やオーストラリアのカンタス航空 ( 同キングスフォード スミス空港 = シドニー国際空港 ) が準ハブ空港として利用している 2 2 つ目のハブ空港の概念は さまざまな場所から路線が集結し 別の路線 ( スポーク ) に乗り継ぐための基地となる 航空網の中心に位置した空港である 前述した企業ハブと異なり ここでのハブ空港は 乗り継ぎできる空港 であることが前提となる 企業ハブの場合 各航空会社が輸送の際の費用や効率を考慮し自国の空港や他国の空港を企業のハブ空港として利用するのに対して 乗り継ぎできる空港は各航空会社の路線が自ずと多く一つの空港に集中する 航空路線が集中していることがその空港の価値となり航空路線が多く集まることが空港の価値を高める その空港に立ち寄るだけで世界中どこでも行ける この概念が乗り継ぎできる空港の最大の条件となる 上村敏之平井小百合, (2010) はハブ空港を 2 つに分類している 第 1 が ある特定の航空会社の運航拠点 第 2 が 国や地域の玄関口として機能する空港 である ある特定の航空会社の運航拠点という点では 唐津雅人 (2011) の 企業ハブ の概念と同じである 第 2 の国や地域の玄関口という分類が 広域的な航空網を持ち その国や地域の玄関となり乗り継ぎ需要にも対応する空港は 唐津雅人 (2011) の定義にある 乗り継ぎできる空港 という点では同じであるが これに加えて国や地域の玄関口として機能する空港をハブ空港と定義している点で異なる 村山元英,(2004 年 ) はハブ空港の本質的概念を整理し ハブ空港を以下のように 8 つに分類している 1 ハブ空港とは 国内便と国際便の複合的重層性があること ( ロンドン型 ) 3 その反面 成田空港と羽田空港のような国際線と国内線を分離させた空港もある その場合には分離距離と連結交通アクセスの問題がある 分離した空港の例として 成田 / 羽田 ケネディ / ラーガディア 浦東 / 虹橋 仁川 / 金浦 があげられる 村山元英,(2004 年 ) は 国際と国内の分離方式は それぞれの空港と都市の限界から生じる その分離と共生には 経済合理性では割り切れない 政治的決断と都市開発戦 2 唐津雅人, 2011. 羽田 VS 成田 3 本論文では国内便と国際便の複合的重層性のあるハブ空港を 内際ハブ と呼ぶ 略がある と 述べており 経済よりも政治的な影響が大きくかかわっていることを指摘する 2 ハブ空港とは 同一空港内に国際便の路線数の獲得競争と国内便の多方向性の乗降の利便性と快適性を追求した空港である 具体的な例としては 香港国際空港 シンガポール チャンギ国際空港がそれにあたる 利便性とは唐津雅人 (2011) が述べた 乗り継ぎできる空港 の定義と類似している 快適性に関しては チャンギ国際空港が世界の空港の中でもトップレベルである チャンギ国際空港には 4 つの庭園があり ターミナル内で快適に過ごことができる環境が整備されている テレビ ゲーム 映画 マッサージがすべて無料で楽しめる 至るところでインターネットが無料で使用できるのも充実したサービスのひとつである また 有料でプールやマッサージのサービスもあり 乗り継ぎ時間 5 時間以上ある旅客には無料の市内ツアーまで容易されている まさに 乗り継ぎ客の快適性を追求した空港であるといえる 3 ハブ空港とは 着陸後の都心への交通アクセスの利便性 時間短縮と長距離化 高速道路網の整備 鉄道の新設 買収効果 既存の交通システム機能の再生と直結している空港のことである 具体的な例としては アムステルダム空港 ロンドン アトランタ 上海 香港があげられる 4 ハブ空港とは空港周辺の交通アクセス選択的多様性 鉄道 道路 その他の交通システムが多様的で 選択幅は広く 空港周辺の地域社会を包含するもう 1 つの都心形成である 具体歴な空港の例としは 総てのヨーロッパ型 特にアムステルダムがそれにあたる 5 ハブ空港とは 空港内と空港外の交通システムの新技術と快適性の先端化 そしてスピード性と利便性である 6 ハブ空港とは 次の交通手段への連絡の便利さであり 乗り換え時間と距離の短縮競争である 連絡の便利さと待ち時間短縮は 航空機の乗り換えだけではなく バスやタクシー 駐車場 鉄道連絡 空港内移動などである 特に駐車場の立地と料金競争の優位を目指している 7 ハブ空港とは ターミナルの新市街地機能を発揮し 専門的経営を充実させ 空港客の市場満足を獲得し そして非航空収入の増収で空港経営の付加価値をつけることである 8 ハブ空港とは 空港内ビジネス パークとホテル 会議研修施設やコンベンション機能 そして 貨物ターミナル施設 特に航空貨物処理施設 ( カーゴ ハブ ) のロジスティク機能を持つ 臨空港都市開発でハブ機能を充実させる空港もある 具体的な例として 韓国 ヨーロッパ型 総ての北米型などがあげられる ハブ空港の定義は専門家によって様々である 表 2 はハブ空港の定義を基に筆者が作成した表である ハブ
空港の種類を国際ハブ 国内ハブ 国内線 国際線が集まる内際ハブ 地域の拠点となっているハブ 企業が拠点として使っている企業ハブ 旅客ではなく物流の拠点となっている物流ハブの 6 つに分類した 那覇空港においては地域ハブ 物流ハブ 企業ハブに該当する空港であると言える 表 2 ハブ空港の定義表 ハブ空港の種類 特徴 具体例 国際ハブ 国際線が集まる空港 成田空港 チャンギ国際空港 仁川国際空港 国内ハブ 国内線が集まる空港 羽田空港 内際ハブ 国際線と国内線が集まる空港 仁川国際空港 地域ハブ 地域の路線が集まる空港 那覇空港 企業ハブ企業が拠点として使う空港那覇空港 成田空港 チャンギ国際空港物流ハブ貨物の拠点として集まる空港チャンギ国際空港 メンフィス国際空港那覇空港 出所 : 筆者が唐津雅人, (2011). 羽田 VS 成田 野村宗訓 切通堅太郎 航空グローバル化と空港ビジネス (2010) より作成 那覇空港の概況 那覇空港は 国土交通大臣が管理 管轄する 拠点空港 であり 空港用地面積は 327 ヘクタールで テーマパーク東京ディズニーリゾートの面積と比較した場合 約 3 7 倍の広さを持つ空港である 滑走路の幅 長さ 45 メートル 3000 メートルで年間発着回数は 14. 8 万回 (2013 年度現在 ) と滑走路 1 本の空港としては国内 2 番目の発着回数となっている 空港は 24 時間運用可能であり 昼間は旅客機や自衛隊機が離着陸をする一方 深夜の時間帯は ANA ホールディングス株式会社が 2009 年より 貨物ハブ事業の拠点として活用している 那覇空港は県外に 21 路線 101 便 (1 日あたりの便数 ) が就航しており 主な就航先として東京 羽田 東京 成田 大阪 名古屋 福岡などがあげられる また 県内離島は 6 路線 1 日あたり 44 便が就航している 沖縄県は有人離島 41 を抱える島嶼県であり 那覇空港は離島にネットワークを張り巡らせているハブ空港である 国内外から県内各地の離島に足を運ぶ際 多くの観光客やビジネスマンは那覇空港を経由して 各離島の空港へと向かうことから 那覇空港は沖縄県の 地域ハブ ( 図 3 参照 ) として機能している空港である 滑走路増設 沖縄総合事務局開発建築部那覇空港プロジェクト室 (2009 年 ) がまとめた 那覇空港滑走路増設に関する経緯について によると 那覇空港の 1 日あたりの発着回数は 370~380 回であり 1 時間あたりの処理能力は 33 回となっている 年間の滑走路処理容量 ( スロット ) の試算は 13 5 万回となっている 現時点 (2014 年 ) ではスロットは 13 5 万回を上回っており非常に過密な運航が余儀なくされているのが現状である グラフ 1 は 2011 年 9 月 7 日の那覇空港における時間帯別の発着回数である 10~18 時までの時間帯が最も離発着回数が多い時間帯であることがわかる 特に 1 4 時と 18 時に関して 1 時間あたりの滑走路処理容量 33 回を上回り 36 回 34 回となっており 慢性的な遅延が発生している状態であることがわかる ANA が行っている航空貨物事業に関しては深夜帯の時間帯に運行しており 滑走路の容量にも余裕があることから 現時点で遅延による影響はほとんどないと言える グラフ 1 那覇空港時間帯別発着回数実績 (2011 年 9 月 7 日 ) 那覇空港における年間発着回数は年々増加している ( 参照グラフ 2) 増加する背景として 1 グローバル経済の進展に伴う オープンスカイ政策 による航空自由化 2 アジア諸国の経済成長に伴う旅客需要の増加 3 那覇空港国際線ターミナルの完成 等があげられる 図 3 那覇空港を拠点とする 地域ハブ のイメージ グラフ 2 那覇空港における発着回数の推移 空港管理状況書 ( 国土交通省航空局 ) より筆者が作成発着回数は着陸回数の概ね 2 倍した数値である
政府は 2010 年 これまで規制が厳しかった航空規制を大きく緩和した 航空会社は外的な要因 ( 景気変動 需要の変動 天候 社会情勢等 ) に影響を受けやすく 過剰な運賃価格競争により 安全な運行ができなくなる恐れもあることから 日本は国内の航空会社を保護する政策を取ってきた しかし 米国と EU 諸国などが行った規制緩和により 瞬く間に世界各国がオープンスカイ政策を推進した 運賃や参入が自由化されたことにより LCC( ローコスト キャリア ) が積極的に海外の空港を 企業ハブ として活用し 依存の航空会社もネットワークの効率化によるコスト削減などで事業を展開した 特に航空需要の高いアジア地域においては 韓国の仁川国際空港やシンガポールのチャンギ国際空港がハブ空港としての地位を高める一方 日本においては 国内線は羽田 国際線は成田 といった 内際分離方式 から抜け出せず 航空産業のグローバル化に置いていかれた 第 1 次安部内閣が 2007 年に打ち出した アジア ゲートウェイ構想 を皮切りに 日本もオープンスカイ政策を推進する計画が進められ 2010 年に米国とオープンスカイ政策を締結した 2014 年 2 月 20 日現在 日本は 27 カ国とオープンスカイ政策を結んでいる 那覇空港においては オープンスカイ政策により 海南航空 ( 中国 ) 香港ドラゴン航空 ( 香港 ) アシアナ航空 ( 韓国 ) などの航空会社が参入した 現在 那覇空港とそれぞれ北京空港や香港空港 仁川空港と路線を就航させたことにより 国際線の旅客数が年々増加している 2 つめの要因はアジア経済の成長に伴い 航空需要が増加していることがあげられる 沖縄を訪れる観光客は年々増加してる 県文化観光スポーツ部によると 6 月の入域観光客数は 61 万人で 前年同月比 5 万 270 0 人 (9 5%) 増えている 滑走路の種類 表 3 は滑走路の比較表である 滑走路が 1 本の際 先行機が滑走路から離脱するまで 後続機の発着は許可されない 具体例として現在の那覇空港が挙げられる 平行滑走路の運用は主に クロースパラレル と セミオープンパラレル オープンパラレル の計 3 種類に分類する クロースパラレルの特徴は 2 本の滑走路のうち 1 本を到着用で使用し もう 1 つを出発用として活用する これは従属運用と呼ばれ 従属運用することで 先行到着機が滑走路から離脱するまでの後続出発機の待機時間を最小限とすることができる クロースパラレルの滑走路では 2 機の飛行機を同時に離発着させることができない セミオープンパラレルの滑走路では 2 本のうち 1 本を出発用し もう 1 本を到着用として運用することができる この運用形態を 独立運用 と言う しかし 同時に滑走路を使用することが不可能であるのが特徴である オープンパラレルでは 2 本の滑走路を同時に使用して発着させることができる 滑走路 1 本の場合の出発 到着相互運用を それぞれの滑走路で同時に実施することが可能である 滑走路がオープンパラレルでは 2 本の滑走路を同時に使用できることから ハブ空港の条件の 1 つとなっている 表 3 平行滑走路の種類と運用の比較 出所 : 国土交通省の資料より引用 空港を戦略的にハブ空港にするのであれば 出発 到着が同時に行えるオープンパラレルの滑走路が処理能力が高くなるが 風向きなどの影響で滑走路が使用できなくなるといった弱点がある 現在 那覇空港の第二滑走路増設の工事が開始している 第 2 滑走路の長さは 2700 メートル 60 メートルで 既存の滑走路から第二滑走路までの距離が 1300 メートルあり オープンパラレルの滑走路として 2020 年 3 月に供用開始予定である しかし 那覇空港は風向きが変わりやすい 沖縄は 6~9 月にかけて台風が襲来し 強風などの影響で風向きが変わるまで離発着機が待機させられることがある 滑走路を増設するのであれば 平行ではなく 滑走路をクロスさせ 天候にも対応できる滑走路にするべきである 羽田空港は滑走路が 4 本あり 平行ではなく クロスさせた滑走路であるため 風向きが変われば 滑走路の運用方法も変わってくる 悪天候でも運用がスムーズに行える空港であると言える 那覇空港滑走路増設図
出所 : 国土交通省 (2013) 那覇空港滑走路事業における新規事業採択時評価について より引用 国際物流ハブ 株式会社 ANA ホールディングス ( 以後 ANA と呼ぶ ) は 2009 年より 那覇空港をハブとした国際物流ハブ事業を展開している ANA の経営戦略の中で必要不可欠な場所であり 沖縄国際ハブにとっても ANA 無くして物流政策が展開できないのが現状である ANA と県は 2007 年に那覇空港の国際貨物拠点化を合意した 県 那覇市 民間企業が出資した第三セクターを設立し 総事業費 78 億円 ( 県融資 14 億円 ) 総面積 4 4 ヘクタールの那覇空港新貨物上屋が建設を建設した 上屋は 2009 年に完成し 新貨物ターミナルとして同年 10 月に ANA が入居し国際貨物事業が本格的に始動した始動した アジアでナンバーワンの航空会社を目指す ANA は目標を達成するため 旅客事業だけではなく国際物流事業を強化してきた 2012 年度の事業規模は 1 兆 4,835 億円で 事業の 81% が航空事業輸送である 航空事業輸送の内訳を見ると 国内旅客が 50% 国際線旅客が 26% 貨物は 10% となっている 2013 年 ANA 貨物事業室と ANA ロジスティックサービスを統合した子会社 ANA Cargo が設立された 物流ネットワークの強化と事業の拡大が目的であり ANA C argo の事業を支えるのは全国や東アジアに張り巡らされている航空路線ネットワークと顧客のニーズに柔軟に対応できるサービス形態が挙げられる ANA は国内に約 50 都市 世界各地に 30 の航空ネットワークを構築している ANA Cargo がハブ空港として使っている拠点は成田 関西 羽田 那覇の 4 カ所である 成田空港から欧米諸国へと貨物専用機を飛ばしている ANA の事業が始まった 2009 年は国内外合わせて計 8 地点 ( 関西 羽田 成田 台北 バンコク 香港 上海 ソウル ) が 2014 年 5 月現在の就航地は 12 地点 ( 関西 羽田 成田 名古屋 台北 バンコク 香港 上海 ソウル シンガポール 広州 青島 ) と 4 地点増えた 路線数も当初の 53 路線から 73 路線に増加した 今後 経済成長が著しく 航空貨物の需要が高くなると予想される東南アジアにも事業規模を拡大すると計画もある ANA の事業の特徴は 1 貨物専用機 (B767 F) をアジア主要都市へ深夜運航 2 羽田経由で日本国内の主要都市への接続もスピーディ 3 国内 20 の直行旅客便路線ある 4 アジア域内間の急速ニーズにも対応可能が挙げられている ANA は全長約 55 メートル 積載量 50 トンのボーイング 767 型機の貨物専用機 ( フレーター ) を 10 機保有している 貨物専用機には 20 種類以上の一般コンテナや貨物専用機用のコンテナ 保冷コンテナ セキュリティーコンテナなど多様な貨物を搭載できるコンテナを 用意している 午後 9 時半 バンコクから那覇空港にフレーターが離陸するのを皮切りに 成田 ( 午後 10 時半 ) 台北 ( 午後 11 時 10 分 ) ソウル ( 午後 11 時 40 分 ) 羽田 ( 午前 0 時 ) 関西 ( 午前 0 時 5 分 ) 名古屋 ( 同 ) 香港 ( 午前 0 時 10 分 ) 上海 ( 午前 1 時 ) のフレーターも那覇空港に向けて出発する 午前 0 時 ~ 午前 4 時にかけてエプロンに次々とフレイターが到着すし 横並びに駐機される 貨物は約 1~3 時間で行き先ごとに積み替えられ 国外に輸送する貨物は通関作業を受けた後 再び目的地へ運ばれる 現在 那覇空港には 10 機のフレイターが駐機できるスポットが整備されているが 夜間帯は使用しない LCC の駐機場も活用しているのが現状であり 駐機場の拡大が課題である 今後 ANA だけが沖縄拠点とするとは限らない 他の航空会社も物流拠点として那覇空港を活用する可能性もあることから駐機場の拡大は早急に取り組む必要のある課題である ソフト戦略 那覇空港を発着する航空機の公租公課については 国内線 ( 旅客便 ) に係る航空機燃料税は本則の 1/2 国内線 ( 旅客便 貨物便 ) に係る着陸料及び航行援助施設利用料はそれぞれ本則の 1/6 に軽減してきた しかしながら 更に沖縄県では国際物流拠点の形成に向けて那覇空港の国際競争力を高めるため 国内線 ( 貨物便 ) の航空機燃料税を旅客便並みの本則の 1/2 国際線 ( 貨物便 ) に係る着陸料及び航行援助施設利用料をそれぞれ国内線 ( 旅客便 貨物便 ) 並みの本則の 1/6 に軽減するよう内閣府と国土交通省に求め 結果として 2010( 平成 22) 年 4 月に国内線 ( 貨物便 ) の航空機燃料税が本則の 1/2 同年 7 月には国際線 ( 貨物便 ) の着陸料及び航行援助施設利用料が それぞれ本則の 1/6 に軽減されるに至った これらは那覇空港の競争力を高めていくための措置として沖縄県のみの特例となっているソフト戦略である