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船尾部の便所 スパンカーマスト及び操舵室上部が脱落した 大浦丸は 左舷船首部 のハンドレールに曲損を 前部マストに折損を 船底部に破口及び擦過痕をそれぞれ 生じた < 原因 > 本事故は 洲埼北西方沖において 大浦丸が北進中 第五育丸が漂泊して釣り中 両船長が見張りを適切に行っていなかったため 両船

船舶事故調査報告書 平成 30 年 12 月 19 日運輸安全委員会 ( 海事専門部会 ) 議決委員佐藤雄二 ( 部会長 ) 委員田村兼吉委員岡本満喜子 事故種類発生日時発生場所事故の概要事故調査の経過 衝突 平成 29 年 12 月 23 日 19 時 15 分ごろ 京浜港東京第 2 区 晴海信号

MA 船舶事故調査報告書 平成 23 年 9 月 30 日 運輸安全委員会

その他の事項 という ) を乗せ ウェイクボーダーをけん.. 引して遊走する目的で 平成 30 年 8 月 13 日 14 時 00 分ごろ土庄町室埼北東方にある砂浜 ( 以下 本件砂浜 という ) を出発した 船長は 自らが操船し 操縦者 同乗者 E の順にウェイクボードに 搭乗させ 本件砂浜北東

( 東京事案 ) 1 貨物船 MAY STAR 漁船明神丸衝突及び貨物船 MAY STAR 乗揚 2 旅客船 DANS PENTA 1 乗揚 3 釣船うしお丸転覆 4 貨物船第七住力丸漁船大業丸衝突 5 油送船第八豊栄丸乗組員死亡 ( 地方事務所事案 ) 函館事務所 6 漁船西山丸転覆 7 遊漁船第

MA 船舶事故調査報告書 平成 24 年 4 月 27 日 運輸安全委員会 Japan Transport Safety Board

船舶事故調査報告書 平成 29 年 7 月 13 日運輸安全委員会 ( 海事専門部会 ) 議決委員庄司邦昭 ( 部会長 ) 委員小須田敏委員根本美奈 事故種類衝突 ( 防波堤 ) 発生日時発生場所事故の概要事故調査の経過事実情報船種船名 総トン数船舶番号 船舶所有者等 L B D 船質機関 出力 進

おお航海士 Aは 22 時 00 分ごろ福岡県宗像市大島東方沖で船長から 船橋当直を引き継ぎ レーダー 1 台を 6 海里 (M) レンジとして 電 子海図表示装置及び GPS プロッターを 12M レンジとしてそれぞれ 作動させ 操舵スタンド後方に立って単独で操船に当たった 本船は 航海士 A が

( 東京事案 ) 1 貨物船 MAY STAR 漁船明神丸衝突及び貨物船 MAY STAR 乗揚 2 旅客船 DANS PENTA 1 乗揚 3 釣船うしお丸転覆 4 貨物船第七住力丸漁船大業丸衝突 5 油送船第八豊栄丸乗組員死亡 ( 地方事務所事案 ) 函館事務所 6 漁船西山丸転覆 7 遊漁船第

船舶事故調査報告書 平成 26 年 9 月 4 日 運輸安全委員会 ( 海事専門部会 ) 議決 委 員 横山鐵男 ( 部会長 ) 委 員 庄司邦昭 委 員 根本美奈 事故種類発生日時発生場所事故調査の経過事実情報船種船名 総トン数船舶番号 船舶所有者等 L B D 船質機関 出力 進水等乗組員等に関

( 東京事案 ) 1 旅客船龍宮城乗組員死亡 2 プレジャーボートかいきょう丸プレジャーボートこくら丸衝突 3 遊漁船しぶさき10 号沈没 4 遊漁船はなぶさ釣り客負傷 5 モーターボートKaiser 衝突 ( 係船杭 ) 6 漁船若栄丸小型兼用船福寿丸衝突 7 遊漁船一福丸モーターボート可奈丸衝突

船舶事故調査報告書 平成 25 年 8 月 22 日 運輸安全委員会 ( 海事部会 ) 議決 委員長 後藤昇弘 委 員 横山鐵男 ( 部会長 ) 委 員 庄司邦昭 委 員 石川敏行 委 員 根本美奈 事故種類発生日時発生場所船舶事故の概要事故調査の経過事実情報船種船名船籍港総トン数 IMO 番号船舶

免許登録日平成 26 年 7 月 3 日免許証交付日平成 26 年 7 月 3 日 ( 平成 31 年 7 月 2 日まで有効 ) 釣り客 A 男性 54 歳釣り客 B 男性 51 歳釣り客 C 男性 74 歳死傷者等重傷 3 人 ( 釣り客 A 釣り客 B 及び釣り客 C) 損傷 なし 気象 海象

MI 船舶インシデント調査報告書 ( 地方事務所事案 ) 横浜事務所 1 引船第二十一管洋運航不能 ( 絡索 ) 2 漁船末廣丸運航不能 ( 機関損傷 ) 3 貨物船鹿児島エキスプレス運航不能 ( 機関損傷 ) 神戸事務所 4 貨物船東翔丸運航不能 ( 船体傾斜 ) 5 ヨット朝鳥運航

Japan Transport Safety Board 1 コンテナ船 ACX CRYSTAL ミサイル駆逐艦 USS FITZGERALD 衝突事故 運輸安全委員会令和元年 8 月

本船は 船長が1 人で船橋当直につき 主機を回転数毎分約 1,2 00( 出力約 20%) とし 約 5ノットの対地速力で 早岐港南東方沖を手動操舵により南南東進中 11 時 07 分ごろ主機が突然停止した 機関長は 温度計測の目的で機関室出入口の垂直はしごを降りていたところ ふだんと違う同室の音を

船舶事故等調査報告書 ( 軽微 ) 1 船舶事故計 96 件 2 船舶インシデント計 26 件 合計 122 件 平成 21 年 12 月 18 日 運輸安全委員会

船舶事故等調査報告書 ( 軽微 ) 1 船舶事故計 96 件 2 船舶インシデント計 26 件 合計 122 件 平成 21 年 12 月 18 日 運輸安全委員会

( 東京事案 ) 1 モーターボート建友爆発 2 貨物船 AQUAMARINE 漁船平新丸衝突 ( 地方事務所事案 ) 函館事務所 3 漁船第五十一萬漁丸火災 4 漁船第 18 勝丸火災 5 プレジャーボート第十八栄海丸乗揚 6 漁船第六十八廣洋丸衝突 ( 消波ブロック ) 7 漁船第五十五富丸衝突

船舶事故調査報告書 船種船名コンテナ船 WAN HAI 162 I M O 番号 総トン数 13,246 トン 船種船名漁船第七盛南丸 漁船登録番号 OS 総トン数 9.7 トン 船種船名漁船第八盛南丸 漁船登録番号 OS 総トン数 9.7 トン 事故種類衝突

目 次 はじめに 1 1 立入検査の状況 2 2 命令に係る事項 3 3 その他輸送の安全に重大な関係を有する事項 (1) 船舶事故等の発生状況 6 (2) 船種別事故等の発生状況 7 (3) 主な指導内容 9

船舶事故等調査報告書 ( 軽微 ) 1 船舶事故計 135 件 2 船舶インシデント計 30 件 合計 165 件 平成 21 年 11 月 27 日 運輸安全委員会

同船は沈没した NIKKEI TIGER に死傷者はなく また 船体に大きな損傷はなかった < 原因 > 本事故は 夜間 金華山東方沖 930km 付近において NIKKEI TIGER が北東進中 堀栄丸が南南西進中 両船の進路が交差する態勢で接近する状況となった際 NIKKEI TIGER が左

( 東京事案 ) 1 交通船フレッシュありかわ乗揚 2 モーターボート涼乗船者負傷 3 貨物船新賢和丸貨物船第八昭和丸衝突 4 貨物船大航丸乗揚 5 漁船大康丸漁船宮島丸衝突 ( 地方事務所事案 ) 函館事務所 6 漁船第六十三潮丸乗組員死亡 7 貨物船阿州山丸火災 8 漁船第 18 太平丸乗組員死

操舵室 船室 本件倉庫の通気口 本件倉庫 船尾側 写真 1 本船本船は 船長ほか甲板員 1 人が乗り組み コンベンション協会が企画する地域興し企画の目的で 参加者 11 人及び知人 1 人を乗せ 船体中央部にある船室の各窓を閉めてエアコンを運転し 18 時 40 分ごろ檮原川津賀ダム上流の北岸の係留

その他の事項 約 200 であり 船首の作業灯がついていて 船長が投錨する旨を指 示したので 機関室に移動して発電機を起動し いつでも主機を中立 運転にできるように準備した後 自室に戻った 航海士 A は 20 時 00 分ごろ本船が減速していることに気付いて 昇橋したところ 船長から船位が分からな

台風による外国船の 走錨衝突事故防止に向けて 平成 24 年 9 月 6 日 運輸安全委員会事務局横浜事務所

( 東京事案 ) 1 コンテナ船 SONG CHENG 乗揚 2 漁船第八浦郷丸火災 ( 地方事務所事案 ) 函館事務所 3 漁船日正丸転覆仙台事務所 4 モーターボート三王丸転覆 5 モーターボートムスタング乗組員行方不明横浜事務所 6 モーターボート Ever Free Ⅱ 同乗者負傷 7 漁船

船舶事故調査報告書 船種船名 LNG 船 PUTERI NILAM SATU IMO 番号 総トン数 94,446トン 船種船名 LPG 船 SAKURA HARMONY IMO 番号 総トン数 2,997トン 事故種類衝突発生日時平成 25 年 1 月 10 日 1

( 東京事案 ) 1 ダイビング船スタイル乗船者死亡 2 油送船第十七永進丸ケミカルタンカー COSMO BUSAN 衝突 3 ケミカルタンカー錦陽丸引船かいりゅう台船 千 2 衝突 ( 地方事務所事案 ) 函館事務所 4 貨物船りゅうえい乗揚 5 漁船進正丸乗組員死亡 6 漁船第十八のぞみ丸転覆


( 東京事案 ) 1 旅客フェリー万葉船体傾斜 2 旅客船第三あんえい号旅客負傷 3 旅客船第三十八あんえい号旅客負傷 ( 地方事務所事案 ) 函館事務所 4 漁船第五十五漁信丸乗揚 5 漁船善宝丸乗組員死亡 6 漁船保栄丸衝突 ( 防波堤 ) 仙台事務所 7 漁船漁栄丸プレジャーボート第五カサイ丸

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海の安全情報 1 海の安全情報 インターネットホームページ 仙崎海上保安部のホームページの中に 海の安全情報がリンクされ 気象 海象のほか 港の工事 海難などの海上交通に関 する様々な安全情報を提供しています

平成24年

安全に釣りを楽しむために 小樽海上保安部 海上保安協会小樽支部

海上安全管理 (Marine Safety Management) 海上安全 + 安全管理 海上安全 船 - 操船者 - 環境 の相互連環システムに視点をおいた安全施策 安全管理 安全性を高めるために関係者のモチベーション醸成とコンセンサス形成を図ること 井上欣三著 海上安全管理 研究 (2006

PowerPoint プレゼンテーション

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本報告書の調査は 本件航空重大インシデントに関し 運輸安全委員会設置 法及び国際民間航空条約第 13 附属書に従い 運輸安全委員会により 航空事 故等の防止に寄与することを目的として行われたものであり 本事案の責任を 問うために行われたものではない 運輸安全委員会 委員長後藤昇弘

船舶プロダクト検討について 背景 船舶の情報はユーザーの注目が高く その情報は主に AIS( 後述 ) や衛星画像 ログ情報等から得られる そして海象 気象情報との連携や統計情報等の大量データから得られる情報等から新しい価値の創出も期待できる このことからコアサービスから提供するプロダクト検討の一環

平成4年第二審第14号

本報告書の調査は 本件航空事故に関し 運輸安全委員会設置法及び国際民 間航空条約第 13 附属書に従い 運輸安全委員会により 航空事故及び事故に 伴い発生した被害の原因を究明し 事故の防止及び被害の軽減に寄与すること を目的として行われたものであり 事故の責任を問うために行われたものでは ない 運輸

本書作成の目的について湘南海上保安署では 毎年発生しているプレジャーボートやヨット等による定置網等への乗揚げ絡網海難を防止するために 当保安署管内である相模湾にどの様な定置網等が設置されているかを 画像を利用して分かりやすく理解してもらうことを目的としている 本書使用上の留意点について 1 本書は

次の内容により各組合の保険約款に規定 普通損害保険 1 通常部分危険区分 ( 漁業種類 トン数区分 船質及び塡補範囲等 ) 毎に再保険料率 ( 告示 ) を下回らない範囲で基準率が定められ これに再保険と同率の各種割増引きが適用 2 異常部分 ( 危険部分であり 台風 風浪 低気圧及び突風による危険

工事 海難防止のための五か条 一見張りは常時 適切に 目視のほか レーダーや AIS 等を使用霧などで視界不良時は 見張りを増員無理な回航は 居眠りの原因 一航法を守り 早目の避航 海上衝突予防法等に定められた航法や灯火等ルール遵守避航は 早めに かつ 大幅に 一最新の気象情報を入手 刻々と変化する

なお 本件に関してご不明な点は 以下の部署にお問い合わせください 一般財団法人日本海事協会 (ClassNK) 本部管理センター別館船体部 EEDI 部門 住所 : 東京都千代田区紀尾井町 3-3( 郵便番号 ) Tel.: Fax:

平成 27 年度 新潟県たにはま海水浴場流況調査 報告書 平成 27 年 6 月調査 第九管区海上保安本部

裁決録

目 次 Q 1 マリンレジャーはどのようなものがあるの? Q 2 水上オートバイって安全なの? Q 3 最近よく耳にするミニボートってどんなもの? Q 4 プレジャーボートを操縦するのに免許は必要? Q 5 小型船舶の免許はどのようにして取得するの? Q 6 小型船舶に乗るときは救命胴衣を着用しない

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平成12年4月 日

( 東京事案 ) 1 ケミカルタンカー青鷹沈没 2 油タンカー PACIFIC POLARIS 衝突 ( 桟橋 ) 3 旅客船第十一天竜丸転覆 ( 地方事務所事案 ) 函館事務所 4 貨物船 SAKHISLAND 引船たていわ丸衝突 5 漁船第十五漁徳丸乗組員死亡 6 漁船第三恵丸乗組員死亡仙台事務

普通損害保険 1 通常部分危険区分 ( 漁業種類 トン数区分 船質及びてん補範囲等 ) 毎に再保険料率 ( 告示 ) を下回らない範囲で基準率が定められ これに再保険と同率の各種割増引きが適用される ( 保険約款 ) 2 異常部分 ( 台風 風浪 低気圧及び突風による危険率で 危険部分 ) 再保険料

る重大事故となるところでした 本件のような船舶海難の操船者等には 衝突 乗揚げ等海難を避けるべき業務上の注意義務があるのに この注意義務を怠り 何らかの過失 ( 行為 ) によって事故に至ったものとして 業務上過失往来危険罪 が成立し 厳しい処分が下されることがあります また当該事故の結果によって

をガス専焼モードとして運転していたところ ガス燃料管のガスリークディテクタがガス濃度上昇の信号を発し LNGの蒸発ガスの燃焼が停止して主ボイラが失火したので 蒸気消費量を減少させようとして2 台のタービン発電機のうちの1 台の負荷をディーゼル発電機に移行させたが 1 台のタービン発電機の気中遮断器を

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ホームページ等のご案内 の情報提供 来島海峡航路を航行する船舶に対して 来島海峡航路に関する様々な情報 ( 巨大船の航路入航予定 潮流 気象現況 航路の航行制限 海難の状況など ) を 無線放送 インターネット ホームページ 一般電話を通じてリアルタイムに提供しています 来島海峡を安全に航行するため

1. 船舶事故の概要報告書 1 ページ 旅客フェリーさんふらわあだいせつは 船長ほか22 人が乗り組み 旅客 71 人を乗せ 車両等 160 台を積載し 北海道苫小牧市苫小牧港に向けて茨城県大洗港を出港し 苫小牧港南方沖を北進中 平成 27 年 7 月 31 日 17 時 10 分ごろ第 2 甲板で

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船舶案内 ( 株 ) 藤村海事工業所 三重県四日市市千歳町 1-3 TEL 059(351)1088 FAX 059(351)

海上自衛官の海技従事者国家試験の受験資格について(通知)

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港則法 海上交通安全法改正に伴う AIS の目的地入力について >JP FNB >JP TYO >JP CHB >JP KWS >JP ANE >JP YOK >JP KZU >JP YOS 第三管区海上保安本部

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平成20年函審第24号

P&I 保険 とは 船舶の運航に不可欠 船舶の運航に伴って生じる船主の法律上 契約上の責任を対象とする 賠償責任保険 です 例えば 船舶の運航中に港湾 漁業施設などの船舶以外の財物に与えた損害 および 費用をてん補します 非営利での運営 船舶の運航に欠かせない P&I 保険は 非営利で運営される組合

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伏木富山港における大型クルーズ船受入機能強化等 基盤整備調査 調査成果報告書 別添 3 調査主体 富山県 対象地域 富山県高岡市 対象となる基盤整備分野 港湾. 調査の背景と目的伏木富山港は 平成 3 年 月に日本海側拠点港の 外航クルーズ ( 背後観光地クルーズ ) に選定されたほか その他の機能

裁決録

表 新造船の場合の養殖作業燃料電池漁船の主要機器及び寸法 No 名 称 数量 備 考 1 電動機 ( 推進用 ) 2 台 定格出力 65kW / 寸法 ウォ-タージェット 2 基 石垣製 IWJ-A025 型 3 電動機 ( 油圧ユニット装置用 ) 1 台

別紙第 1 職員の給与 ( 海事職給料表の導入等 ) に関する報告 本委員会は 船舶に乗り組む職員 ( 以下 船舶乗組員 という ) の給与について 昨年 10 月 9 日の職員の給与に関する報告でも言及したとおり 勤務の特殊性から見直す必要があると考え 検討を重ねてきた その結果は 次のとおりであ

2007/08年第二期南極海鯨類捕獲調査(JARPAII)

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5 ii) 実燃費方式 (499GT 貨物船 749GT 貨物船 5000kl 積みタンカー以外の船舶 ) (a) 新造船 6 申請船の CO2 排出量 (EEDI 値から求めた CO2 排出量 ) と比較船 (1990~2010 年に建造され かつ 航路及び船の大きさが申請船と同等のものに限る )

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平成18年第二審第37号

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海洋汚染の現状とその防止対策 海上保安庁警備救難部刑事課環境防災課 海上保安庁では 我が国の四方を取り巻く海を美しく保つため 未来に残そう青い海 をスローガンに 巡視船や航空機により我が国周辺海域における油 有害液体物質 廃棄物等による海洋汚染の監視取締りを実施するとともに 海上保安協力員等の民間ボ

平成 30 年度 網代浜海水浴場流況調査 報告書 平成 30 年 7 月調査 第九管区海上保安本部

佐賀県の地震活動概況 (2018 年 12 月 ) ( 1 / 10) 平成 31 年 1 月 15 日佐賀地方気象台 12 月の地震活動概況 12 月に佐賀県内で震度 1 以上を観測した地震は1 回でした (11 月はなし ) 福岡県 佐賀県 長崎県 熊本県 図 1 震央分布図 (2018 年 1

国土技術政策総合研究所 研究資料

航路標識は 海上において船舶が安全かつ能率的に航行するため 常に自船の位置と目的地の位置関係を確認し 危険な障害物を避け 安全な針路を把握するための指標とする航行援助施設をいいます この航路標識については その設置する目的や規模によって 海上保安庁が設置するものと 海上保安庁以外の者が自己の行う事業

出来ない このようなことから 自動車の出力をそのままで使用することは不可能であり ここでは 耐久面を考慮して自動車用の出力の 1/2 を舶用定格出力として使用する 右図のトヨタ自動車 (FCHV-adv)90kW の燃料電池から 高さ 奥行 幅の寸法比率が 1: 1.38:2.45 であり 車体幅大

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本検討の位置づけ H27 親委員会 H27E2E H27E2E これまでの検討で不足している部分 1


資料 8 平成 28 年 7 月 25 日 海外のスマートフォンを用いた航海支援アプリについて 海上技術安全研究所 1. 概要現在 スマートフォンを用いたナビゲーション支援アプリは 自動車をはじめ 歩行者用 公共交通機関の乗り継ぎ案内等多くの交通機関を対象として様々な機能に対応している ここでは 海

< F2D93FC8E448CF68D902882B382F182DC91808BC A2E6A74>


小笠原・伊豆諸島周辺海域における外国漁船への対応について

1 踏切事故 とは国土交通省鉄道局の資料( 鉄軌道輸送の安全にかかわる情報 の 用語の説明 ) によれば 踏切障害に伴う列車衝突事故 列車脱線事故及び列車火災事故並びに踏切障害事故 をいいます 2 3 出典 : 国土交通省鉄道局 鉄軌道輸送の安全にかかわる情報

側のCO₂ルーム バラストタンク等に浸水したため 右舷傾斜が生じて上甲板の右舷側が没水した状態になったことによりハッチカバー 出入口等から船体内部への浸水量が増加するとともに 風浪を受けて復原力を喪失して横転し 更に浸水量が増加して沈没したことにより発生したものと考えられる MING GUANGが波

本報告書の調査は 本件航空事故に関し 運輸安全委員会設置法及び国際民 間航空条約第 13 附属書に従い 運輸安全委員会により 航空事故及び事故に 伴い発生した被害の原因を究明し 事故の防止及び被害の軽減に寄与すること を目的として行われたものであり 事故の責任を問うために行われたものでは ない 運輸

裁決録


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Wx Files Vol 年4月4日にさいたま市で発生した突風について

Transcription:

MA2010-6 船舶事故調査報告書 平成 22 年 6 月 25 日 運輸安全委員会

( 東京事案 ) なし ( 地方事務所事案 ) 函館事務所 1 漁船第八恵久丸衝突 ( 消波ブロック ) 仙台事務所 2 漁船稲荷丸漁船明雄丸衝突 横浜事務所 3 貨物船 YUSHO SEVEN 乗揚 4 貨物船 WAN HAI 232 衝突 ( 防波堤 ) 5 漁船第三粂丸乗揚 6 遊漁船青龍丸漁船第五正盛丸衝突 7 漁船第八十三稲荷丸乗揚 8 漁船第三十八盛勝丸乗組員負傷 神戸事務所 9 交通船第三蒲生転覆 10 貨物船第五住栄丸乗組員負傷広島事務所 11 貨物船 ORIENTAL VEGA 乗揚 12 貨物船松寿丸衝突 ( 橋脚工事用桟橋 ) 13 貨物船第八栄福丸貨物船新栄丸衝突 14 漁船第三十六槻栄丸モーターボート三弘丸衝突 15 釣船泰豊丸乗揚 16 漁船千栄丸乗組員死亡 17 川舟 ( 船名なし ) 乗船者死亡門司事務所 18 貨物船 SUNNY HEART 貨物船 CHANG XIN 102 衝突 19 ケミカルタンカー KEOYOUNG HOPE 漁船豊秀丸衝突 20 貨物船第三鶴吉丸乗揚 21 モーターボートえり丸乗揚 22 漁船第七恭神丸転覆 23 漁船金光丸乗組員死亡 24 押船第十五あおい丸ポンプしゅんせつ船第六あをい丸漁船櫻丸衝突 25 漁船神漁丸漁船正福丸衝突 26 貨物船第 47 天神丸乗組員負傷

27 モーターボート美聡号乗組員死亡長崎事務所 28 貨物船龍玉丸乗揚 29 漁船有漁丸乗揚 30 漁船千代丸乗組員死亡 31 押船第一カンキョウ台船第一カンキョウ沈没 32 漁船第八十八昭徳丸沈没 33 漁船大洋丸乗組員死亡 34 漁船耕頌丸火災 35 漁船 60 飛燕乗揚那覇事務所 36 小型兼用船 SEIBUⅡ 乗揚 37 プレジャーボート親丸転覆 38 漁船第三神徳丸乗組員死亡 39 漁船康洋丸モーターボートハルミ衝突 40 水上オートバイクリーク号乗組員等死傷 41 漁船唯丸一号乗組員死亡

本報告書の調査は 本件船舶事故に関し 運輸安全委員会設置法に基づき 運輸安全委員会により 船舶事故及び事故に伴い発生した被害の原因を究明し 事故の防止及び被害の軽減に寄与することを目的として行われたものであり 事故の責任を問うために行われたものではない 運輸安全委員会 委員長 後藤昇弘

参考 本報告書本文中に用いる分析の結果を表す用語の取扱いについて 本報告書の本文中 3 分析 に用いる分析の結果を表す用語は 次のとおりとする 1 断定できる場合 認められる 2 断定できないが ほぼ間違いない場合 推定される 3 可能性が高い場合 考えられる 4 可能性がある場合 可能性が考えられる 可能性があると考えられる

14 漁船第三十六槻栄丸モーターボート三弘丸衝突

船舶事故調査報告書 船種船名漁船第三十六槻栄丸漁船登録番号 EH3-72542 総トン数 4.0トン 船種船名モーターボート三弘丸船舶番号 281-41498 愛媛総トン数 0.76トン 事故種類衝突発生日時平成 21 年 5 月 23 日 10 時 30 分ごろ発生場所愛媛県愛南町深浦湾伊予深浦港荷碆鼻灯台から真方位 278 200m 付近 ( 概位北緯 32 56.3 東経 132 35.0 ) 平成 22 年 5 月 20 日 運輸安全委員会 ( 海事専門部会 ) 議決 委 員 横山鐵男 ( 部会長 ) 委 員 山本哲也 委 員 根本美奈 1 船舶事故調査の経過 1.1 船舶事故の概要 き えい栄 漁船第三十六槻丸は 船長が1 人で乗り組み 愛媛県深浦湾を南西進中 モーさんこうターボート三弘丸は 船長が1 人で乗り組み 釣りのため漂泊中 平成 21 年 5 月にばえはな 23 日 ( 土 )10 時 30 分ごろ 深浦湾荷碆鼻西方沖において両船が衝突した 第三十六槻栄丸は 推進器翼に曲損などを生じ 三弘丸は 船尾付近が大破して転覆したが 両船とも死傷者はいなかった -- 1 -

1.2 船舶事故調査の概要 1.2.1 調査組織運輸安全委員会は 平成 21 年 6 月 5 日 本事故の調査を担当する主管調査官 ( 広島事務所 ) ほか1 人の地方事故調査官を指名した 1.2.2 調査の実施時期平成 21 年 6 月 9 日 16 日 10 月 26 日 平成 22 年 2 月 15 日回答書受領平成 21 年 6 月 21 日 10 月 20 日口述聴取平成 21 年 6 月 22 日現場調査及び口述聴取 1.2.3 原因関係者からの意見聴取原因関係者から意見聴取を行った 2 事実情報 2.1 事故の経過本事故が発生するまでの経過は 第三十六槻栄丸 ( 以下 A 船 という ) の船長 ( 以下 船長 A という ) 及び三弘丸 ( 以下 B 船 という ) の船長 ( 以下 船長 B という ) の口述によれば 次のとおりであった (1) A 船 A 船は 船長 Aが1 人で乗り組み 平成 21 年 5 月 23 日 10 時 10 分ごろ かきうち深浦湾奥の垣内を出発し 僚船が操業する白石北方沖の漁場に向かった なかばえ船長 Aは 深浦湾の中央付近に位置する中碆の干出岩を左舷に見て通過したころ 針路を約 240 ( 真方位 以下同じ ) に定め 機関を回転数毎分約 700~800(rpm) とし 約 5~6ノット (kn)( 対地速力 以下同じ ) のあつもりかきうら速力で 操舵室右舷側の操縦席に腰を掛け 愛南町敦盛から柿の浦の北方沖にかけて設置された養殖筏の北方を手動操舵で西進した 船長 Aは 左舷側の養殖筏上で行われている作業を見ながら航行し 伊予深浦港荷碆鼻灯台 ( 以下 荷碆鼻灯台 という ) の北西沖に設置された赤色の灯浮標 ( 以下 赤色灯浮標 という ) の付近で 左転して僚船がいる白石北方沖に向く約 211 の針路とした このとき 船長 Aは 左舷前方に柿の浦の西方沖から北西進するモーター -- 2 -

ボート ( 以下 C 船 という ) を視認したので C 船の前方を通過するため 機関回転数を約 2,500rpm まで上げて増速を始めた 船長 Aは 増速しながら赤色灯浮標を左舷側に約 5~10m 隔てて通過したが その後もC 船の動きを注意深く見ていたので A 船の正船首方で漂泊していたB 船の存在に気付かなかった A 船は 機関回転数を上げて約 10~20 秒後 また 赤色灯浮標を通過して約 10 秒後の平成 21 年 5 月 23 日 10 時 30 分ごろ 荷碆鼻灯台から 278 200m 付近においてB 船と衝突した 船長 Aは 大きな音と衝撃でB 船と衝突したことを知った A 船は プロペラを損傷して航行不能となり 僚船により付近の造船所に.. えい航された (2) B 船 B 船は 船長 Bが1 人で乗り組み 膨張式の救命胴衣を着用し 平成 21 年はなまえ 5 月 23 日 10 時 00 分ごろ 深浦湾鼻前の係留地を出発し 荷碆鼻西方沖の釣り場に向かった 船長 Bは 10 時 10~15 分ごろ 赤色灯浮標の南西方約 100mのいつもの釣り場に到着し 荷碆鼻灯台から278 200m 付近で 船首を荷碆鼻の方に向け 船外機をかけたままクラッチを中立とした状態で漂泊した 船長 Bは 10 時 20 分ごろ 右舷船尾に腰を掛け 長さ約 2.7mの釣り竿 1 本を右舷船首約 30 方向に出し 右舷前方を向いた姿勢であじ釣りを始めた 船長 Bは B 船が潮流により北西方に流され 釣りのポイントの瀬から離れるので 最初に漂泊した場所に移動を繰り返しながら釣りを続けた 船長 Bは 衝突の1 分半前ごろ B 船の東北東約 400mのところに 船首を約 260 に向けて約 12~13kn の速力で航走中のA 船を初めて視認した 船長 Bは 衝突の1 分前ごろ 荷碆鼻灯台の真北付近を航行するA 船との距離が約 300mとなったとき A 船の針路及び速力に変化がなく A 船の船首がB 船の北方を向いたままであったので A 船がB 船の北方を通過するものと思い 釣りを続けた 船長 Bは 釣り竿に魚の当たりを感じ 釣り糸を巻き揚げていたとき 機関音が背後から聞こえてきたので 竿を放り出し 立ち上がって左舷側を見たところ 目前に迫ったA 船の船首部を視認した 船長 Bは A 船に対して両手を大きく振ったが A 船がそのまま接近したので 衝突すると思い 救命胴衣を膨張させずに左舷側に飛び込み A 船のプ -- 3 -

ロペラに巻き込まれないよう 海中に約 2~3m 潜った B 船は 10 時 30 分ごろ 荷碆鼻灯台から278 200m 付近において A 船と衝突した 船長 Bは 海中で衝突音を聞いて浮上したところをC 船に救助され B 船は.. 船底を上にして転覆し C 船により敦盛にえい航された 本事故の発生日時は 平成 21 年 5 月 23 日 10 時 30 分ごろで 発生場所は 荷碆鼻灯台から278 200m 付近であった ( 付図 1 推定航行経路図参照 ) 2.2 人の死亡 行方不明及び負傷に関する情報死傷者はいなかった 2.3 船舶の損傷に関する情報船長 A 及び船長 Bの口述並びに両船の損傷写真によれば 次のとおりであった (1) A 船推進器翼及びシューピースに曲損が生じた (2) B 船左舷後部から右舷中央部にかけて 船首尾線に対して船尾から概ね50 の角度で割損を生じ 大破した ( 写真 1 A 船 写真 2 A 船の損傷状況 写真 3 B 船 写真 4 B 船の損傷状況参照 ) 2.4 乗組員に関する情報 (1) 性別 年齢 操縦免許証船長 A 男性 31 歳二級小型船舶操縦士 特殊小型船舶操縦士 特定免許登録日平成 8 年 10 月 1 日免許証交付日平成 18 年 9 月 27 日 ( 平成 23 年 9 月 30 日まで有効 ) 船長 B 男性 37 歳一級小型船舶操縦士 特殊小型船舶操縦士 特定免許登録日平成 18 年 12 月 11 日免許証交付日平成 18 年 12 月 11 日 ( 平成 23 年 12 月 10 日まで有効 ) -- 4 -

(2) 主な乗船履歴等 1 船長 A 船長 Aの口述によれば 次のとおりであった 16 歳のころから2そう曳きのバッチ網漁船に乗船していた 5~6 年前に水産会社に入社し 平成 20 年の3 月か4 月にA 船の船長として乗船した これまでの乗船経験は 15 6 年になる 事故発生場所付近は 数えられないくらい通航したことがあり 水域の状況もよく知っていた 2 船長 B 船長 Bの口述によれば 次のとおりであった 平成 3 年から約 9 年間 毎日 郵便船で島回りの郵便配達をしていた 平成 12 年にB 船を購入し 釣りに出かけていた 平成 14 年にB 船の所有者を現在の名義に変更して B 船を深浦で係留するようになり 約 3 年前からは 月に2 回程度釣りに出かけ これまでに事故発生場所付近で70 回以上釣りを行った (3) 健康状態 1 船長 A 船長 Aの口述によれば 事故当時 健康状態は良好であった 視力は 裸眼で左 0.5と右 0.4であるが 両眼で見ると0.9ぐらい見えるので 眼鏡等を使用していない 聴力は正常であった 2 船長 B 船長 Bの口述によれば 事故当時 健康状態は良好であった 視力は 裸眼で左 1.2と右 1.5で 眼鏡は使用していない 聴力は正常であった 2.5 船舶等に関する情報 2.5.1 船舶の主要目 (1) A 船 漁船登録番号 EH3-72542 主たる根拠地 愛媛県南宇和郡愛南町 船舶所有者 個人所有 総トン数 4.0トン Lr B D 10.42m 2.65m 0.89m 船 質 FRP 機 関 ディーゼル機関 1 基 出 力 70( 漁船法馬力数 ) 推 進 器 3 翼固定ピッチプロペラ1 個 -- 5 -

進水年月日 平成 4 年 6 月 25 日 (2) B 船 船舶番号 281-41498 愛媛 船 籍 港 愛媛県南宇和郡愛南町 船舶所有者 個人所有 総トン数 0.76トン Lr B D 5.60m 1.38m 0.45m 船 質 FRP 機 関 ガソリン機関 1 基 出 力 14kW( 連続最大 ) 推 進 器 プロペラ1 個 進 水 年 昭和 53 年 2.5.2 積載状態 (1) A 船船長 Aの口述によれば 漁場に向かう途中だったので 何も積んでいなかった 喫水は 測ったことがないので分からない (2) B 船船長 Bの口述によれば 喫水は 船首約 0.2m 船尾約 0.4mであった 2.5.3 設備 性能等 (1) A 船操舵室右舷側に操縦席があり 操縦席の前に舵輪が 天井部に自動操舵装置が取り付けられ 舵輪の右側にはクラッチレバーと機関操縦レバーがあった 操縦席前の棚の上には レーダーと魚群探知機の画面も表示できる GPSプロッターが設置されていた また 操舵室前面には 旋回窓付きの窓が2 枚あり 両側面には三角窓及びスライド式窓があった 操縦席で座った姿勢では 自動操舵装置 2 枚の窓の中間にある窓枠 旋回窓 GPSプロッターなどによって前面窓越しの見通しが妨げられる部分があるが 顔を前面窓に近づけて左右に動かすことによって見通すことができた 船長 Aの口述によれば 事故当時 天気が良かったので GPSプロッター及び自動操舵装置の電源を切っていたが 操舵装置及び機関に不具合又は故障はなく 正常に作動していた -- 6 -

(2) B 船船長 Bの口述によれば 船外機をかけた状態でクラッチを前進に入れると 約 2 秒で走り出す 速力は 最高で約 20kn である 事故当時 船体及び船外機に不具合又は故障はなかった 音を出すものとしては笛があったが 吹く余裕がなかった 2.6 A 船の衝突時の速力に関する情報 (1) 船長 Aの口述によれば 機関回転数 2,500rpm のときの速力は 約 22~23kn であるが 機関回転数を上げてから約 10~20 秒後に衝突したので 事故発生時には まだ約 22~23kn には達していなかった (2) 本事故を目撃したC 船の船長 ( 以下 船長 C という ) の口述によれば A 船の船首の波切りからすると A 船の速力は 20kn 以上だったと思う 2.7 気象及び海象に関する情報 2.7.1 気象観測値及び潮汐みしょう (1) 本事故発生場所の北北西約 3kmに位置する御荘地域気象観測所の事故当日 10 時 30 分の観測値は 次のとおりであった 風向西 平均風速 5.1m/s 気温 22.4 降水量 0 (2) 海上保安庁発行の潮汐表によれば 本事故発生場所の東約 13km の宿毛湾における事故当時の潮汐は 下げ潮の末期であった 2.7.2 乗組員等の観測船長 A 船長 B 及び船長 Cの口述によれば 事故当時 本事故発生場所付近の気象及び海象は 次のとおりであった (1) 船長 A 天気は晴れ 風向及び風速は覚えていないが 波は全然なく 視界は良好であった (2) 船長 B 天気は晴れ 無風に近く 鏡のような海面で 視程は約 20~30km あり 潮汐は分からないが 北西方向への潮流があった (3) 船長 C 天気は晴れで 視界は良かった 2.8 事故水域等に関する情報 (1) 海図 W1237によれば 本事故発生場所の深浦湾は 愛媛県南端の愛南町 -- 7 -

にあり 湾口の幅が約 300m 及び奥行き約 2,300mで 湾口が南西に向いており 西側には久良湾が隣接している 深浦湾口南側の荷碆鼻以東の海域は 深浦港 ( 港則法の適用港 ) 及び深浦漁港の区域となっており 荷碆鼻には 荷碆鼻灯台が設置されている (2) 船長 B 及び船長 Cの口述によれば 深浦湾の南岸沖には養殖筏が多数設置されていて 漁船の出入りが多い また 荷碆鼻灯台から303 150~ 160m 付近には 愛南漁業協同組合 ( 以下 愛南漁協 という ) が赤色灯浮標を設置している (3) 養殖筏に関する情報愛媛県南予地方局長の回答書によれば 次のとおりである 深浦湾の敦盛から柿の浦沖にかけては 愛媛県知事が愛南漁協に対し 第 1 種区画漁業魚類小割式養殖業 ( 免許番号宇特区第 321 号及び宇特区第 326 号 ~ 第 328 号 ) を許可している そして 愛南漁協から委託を受けた業者が 養殖筏を設置してはまち養殖業を営んでいる 3 分析 3.1 事故発生の状況 3.1.1 事故発生に至る経過 2.1 及び2.6から 次のとおりであったものと考えられる (1) A 船 1 船長 Aは 10 時 23 分ごろ 深浦湾中央付近にある中碆の北方で針路を約 240 とし 機関回転数を約 700~800rpm として約 5~6kn の速力で 手動操舵により航行した 2 船長 Aは 赤色灯浮標付近で左転して針路を約 211 としたとき 左舷前方に柿の浦の西方沖から北西進するC 船を視認したので C 船の前方を通過することにし 機関回転数を約 2,500rpm に上げ 増速しながら赤色灯浮標を左舷側に約 5~10m 隔てて通過した 3 A 船は 機関回転数を上げてから約 10~20 秒後に また 赤色灯浮標を通過して約 10 秒後に 速力が約 20kn となったころB 船と衝突した (2) B 船 1 B 船は 10 時 10~15 分ごろ 事故発生場所付近に到着し 船外機 -- 8 -

をかけたままクラッチを中立にした状態で 船首を荷碆鼻の方に向けて漂泊した 2 船長 Bは 10 時 20 分ごろから釣りを始め B 船が潮流により北西に流されたので 事故発生場所付近に移動し 漂泊して釣りを続けた 3 船長 Bは 釣り糸を巻き上げているとき 左舷後方至近にA 船の船首部を視認したので 両手を大きく振って注意を喚起したが A 船がそのまま接近したので 海中に飛び込んだ直後にA 船と衝突した 3.1.2 事故発生日時及び場所 2.1から 事故発生日時は 平成 21 年 5 月 23 日 10 時 30 分ごろで 発生場所は 荷碆鼻灯台から278 200m 付近であったものと考えられる 3.1.3 衝突の状況 2.1 及び2.3から 針路約 211 で航行中のA 船の船首部と漂泊中のB 船の左舷後部とが B 船の船首尾線に対して船尾から概ね50 の角度で衝突したものと考えられる 3.2 事故要因の解析 3.2.1 乗組員及び船舶の状況 (1) 乗組員 2.4(1) から 船長 A 及び船長 Bは 適法で有効な小型船舶操縦免許証を有していた (2) 船舶 1 A 船 2.5.3(1) から 操舵装置及び機関に不具合又は故障はなかったものと考えられる 2 B 船 2.5.3(2) から 船体及び船外機に不具合又は故障はなかったものと考えられる 3.2.2 見張りの状況 (1) A 船 2.1(1) から 次のとおりであったものと考えられる 1 船長 Aは 約 240 の針路で航行していたとき 左舷側の養殖筏上で行われていた作業を見ながら航行し また 僚船がいる白石に向けるため -- 9 -

に左転する際 左舷前方の適切な見張りを行っていなかったので 漂泊中のB 船に気付かなかった 2 船長 Aは 赤色灯浮標付近で左転して約 211 の針路としたとき 左舷前方に柿の浦から北西進するC 船を視認し C 船の前方を通過しようとしてC 船に意識を集中し 船首方の見張りを行っていなかったので 衝突するまでB 船に気付かなかった (2) B 船 2.1(2) から 次のとおりであったものと考えられる 1 船長 Bは 10 時 28 分ごろ 左舷側 400m 付近にA 船を初めて視認し 10 時 29 分ごろ 荷碆鼻灯台の真北を西進中のA 船を再び視認したとき A 船の船首方向がB 船よりも北方を向いていたので A 船はB 船の北方を通過するものと思い込み 釣りを続けた 2 船長 Bは 衝突直前にA 船の機関音に気付き 左舷後方至近に迫った A 船の船首部を視認した 3.2.3 気象及び海象の状況 2.7から 次のとおりであったものと考えられる 事故当時 天気は晴れで 風はほとんどなく 視界は良好であった また 海上は平穏で 潮汐は下げ潮の末期にあたり 北西方向への潮流があった 3.2.4 事故発生に関する解析 2.1 2.5.3 3.1.1 及び 3.2.2 から 次のとおりであったものと考えられる (1) 船長 Aは 中碆付近で針路を約 240 とした後 左舷側の養殖筏上で行っていた作業を見ながら航行し また 赤色灯浮標付近で僚船がいる白石の北方に向けるために左転する際 左舷前方の適切な見張りを行っていなかったので 左舷前方で漂泊中のB 船に気付かなかった (2) 船長 Aは 左転して針路を約 211 としたとき 左舷前方に柿の浦から北西進するC 船を視認し C 船の前方を通過しようとして 機関回転数を約 2,500rpm に上げて増速を始めた (3) 船長 Aは 針路を約 211 としたことで 漂泊中のB 船を正船首方に見る態勢となったが C 船に意識を集中し 船首方の見張りを行っていなかったので 衝突するまでB 船に気付かずに航行した (4) A 船は 針路を約 211 としてから約 20 秒後にB 船と衝突した (5) 船長 Bは 漂泊して釣りを行っていたとき A 船を左舷側に視認し A 船の船首方向がB 船よりも北方を向いていたので A 船がB 船の北方を通過す -- 10 -

るものと思い込んで釣りを続けていた (6) 船長 Bは 機関音を聞いて至近に接近したA 船に気付き 立ち上がって両手を大きく振り A 船に対して注意を喚起したが そのまま衝突した 4 原因 本事故は 愛南町深浦湾において A 船が西進中 B 船が釣りのため漂泊中 船長 Aが 左舷前方の適切な見張りを行っていなかったため 赤色灯浮標付近で左転して B 船を正船首方に見る態勢で航行し 両船が衝突したことにより発生したものと考えられる 船長 Aが左舷前方の適切な見張りを行っていなかったのは 左舷側の養殖筏上で行っていた作業を見ながら航行していたことによるものと考えられる -- 11 -

12-荷碆鼻灯台付図 1 付図 1 推定航行経路図 A 船 鼻前 中碆 深浦港 久良湾 深浦湾 約 211 約 20kn B 船漂泊中 ++ ++ + + ++ 宇特区第 327 号 宇特区第 326 号 ++ -++ 宇特区第 321 号 衝突場所 ++ 宇特区第 328 号 [ 平成 21 年 5 月 23 日 10:30 ごろ発生 ] B 船 (0.76 トン ) A 船 (4.0 トン ) 概ね 50 約 211 -- 12 -

写真 1 A 船 擦過傷 写真 2 A 船の損傷状況 シューピース曲損 舵板 推進器翼曲損 -- 13 -