日豚会誌 49(4)65-72 202,2 月 技術ノート 大麦の配合割合が夏季の肥育豚の枝肉成績と肉質成績に及ぼす影響 脇屋裕一郎 大曲秀明 卜部大輔 河原弘文 宮崎秀雄 * 明石真幸 * 永渕成樹 松本光史 ** 佐賀県畜産試験場, 佐賀県武雄市山内町宮野 23242-2,849-2305 * 佐賀県茶業試験場, 佐賀県嬉野市嬉野町下野丙 870-5,843-0302 ** ( 独 ) 農業 食品産業技術総合研究機構九州沖縄農業研究センター, 熊本県合志市須屋 242,86-92 (202 年 6 月 28 日受付,202 年 8 月 29 日受理 ) 緒言トウモロコシを主体とした輸入穀物価格の高騰から, 地域で生産, 確保できる自給飼料を利用した飼料体系への変換が求められているが, 我が国の畜産業は, 大規模化等に伴い輸入飼料に依存した飼養体系を行ってきた結果, 穀物等の濃厚飼料の自給率は % にとどまっている ( 農林水産省, 202) また, 地域で確保できる飼料として, 食品廃棄物を地域未利用資源として利用する取り組みが盛んに行われており, 飼料価格の高騰対策と併せて, 経営安定のためには, 地域未利用資源に含まれる機能性成分を利用した付加価値の高い畜産物の生産が求められている さらに, 九州地域をはじめとした西南暖地では, 温暖化による気温の上昇により, 肥育豚の増 体が悪くなるなど生産性が低下しており, 自給飼料を主体とした暑熱対策技術を確立する必要がある 暑熱期に肥育豚の生産性が低下する一因として, 飼料摂取量の不足や消化率の低下により, 必須アミノ酸 ( リジン ) の利用性が低下することが明らかにされており ( 松本ら,2008,2009), 暑熱環境下の肥育豚では, リジンの不足分を補充することで, 生産性の改善ができる可能性がある 脇屋ら (2009,200) は, 佐賀県の特産農産物である茶の製茶工程で発生する製茶加工残さを利用して肥育豚に市販飼料に対して重量比で肥育前期 2%, 肥育後期 % 添加することで, カテキン等の効果による豚肉の背脂肪厚低減効果と併せてロース肉中の α-トコフェロール含量の増加等を確認している そこで, 佐賀県の地域性を活かした飼料とし Effects of Barley-Mixing Ratio in Diet on Carcass Characteristics and Meat Quality in Fattening Pigs under High Ambient Temperature Yuichiro WAKIYA, Hideaki OMAGARI, Daisuke URABE, Hirofumi KAWAHARA, Hideo MIYAZAKI*, Sadayuki AKAISHI*, Shigeki NAGAFUCHI and Mitsuhito MATSUMOTO** Saga Prefectural Livestock Experiment Station, Takeo, Saga 849-2305, Japan * Saga Tea Experiment Station, Ureshino, Saga 843-0302, Japan ** Kyushu Okinawa Agricultural Research Center, NARO, Koshi, Kumamoto 86-92, Japan 連絡者 : 脇屋裕一郎 (E-mail : wakiya-yuuichirou@pref.saga.lg.jp Tel. 0954-45-2030) 65
202,2 月脇屋 大曲 卜部 河原 宮崎 明石 永渕 松本日豚会誌 49 巻 4 号 て, トウモロコシよりもリジン含量が高い飼料用米や大麦を利用して, 製茶加工残さ等の茶葉残さとを組み合わせた暑熱対策技術試験を実施している 前報では,2 mm 以下に粉砕した飼料用米 0% と大麦 5% を製茶加工残さと併せて配合した飼料を夏季の肥育豚に給与することで, 慣行飼料と同等の飼養成績と肉質成績が得られ, 官能検査で高い評価が得られることが確認された ( 脇屋ら, 202) 不足するリジンの補充として, 飼料用米と比べて大麦はリジン含量が高く ( 独立行政法人農業 食品産業技術総合研究機構編,2009), 暑熱期における飼養成績などの改善効果が期待できるが, 栄養価, 消化性等を考慮した適正な配合割合を検討する必要がある そこで, 本試験では飼料用米の配合割合を 0% に固定し, 大麦の配合割合の違いが暑熱条件下における肥育豚の枝肉成績および肉質成績に及ぼす影響を調査した 材料および方法供試した飼料用米, 大麦および製茶加工残さについて, 飼料用米は ニシアオバ 玄米, 大麦は ニシノヒカリ の規格外品(5 mm 以下 ), 製茶加工残さは,JA さが嬉野茶製茶工場において, 茶葉の加工工程において回収された水分約 20% 程度の残さを飼料乾燥機で水分を約 0% まで乾燥させてから供試した ランドレース去勢豚 5 頭を用いて, コンクリート平床豚房で3 試験区を設けて, 各試験区 5 頭群飼により, 暑熱条件下 (6 月 9 月 ) で肥育試験を行った 試験期間中の豚房内の平均気温は 26.4, 最低気温は 7.7, 最高気温は 36.8 となった 供試飼料について, 肥育前期には市販飼料に製茶加工残さを 2% 配合して各区に給与した 肥育後期には, 大麦はトウモロコシとの代替で, 飼料用米 0%, 大麦 5% を配合した飼料を試験区 に, 飼料用米 0% と大麦 5% を配合した飼料を試験区 2 に, 飼料用米 0% と大麦 25% を配合した飼料を試験区 3にそれぞれ給与した なお, 各区の肥育後期飼料には製茶加工残さを % 配合した ( 表 ) 表. 肥育飼料の配合設計 (%) Table. Ingredient of Experimental diet (%) Fatting stage Materials Exp. Exp. 2 Exp. 3 The first Commercial diet ) 98 98 98 fattening diet Tea manufacturing residual 2 2 2 Corn 65 55 45 Forage rice 0 0 0 Barley 5 5 25 Wheat bran The second fattening diet Soybean cake fish meal Tea manufacturing residual 6 6 6 Vitamin et. al TDN (%) 77.2 76. 75.0 CP (%) 5. 5.3 5.5 ) Composition of commercial diet : Corn 5.%, Grain sorghum 5.0%, Soybean meal 4.6%, Rapeseed meal 0.0%, Wheat bran 2.4%, Vitamin et. al.9% 66
202,2 月大麦の配合割合による枝肉, 肉質効果日豚会誌 49 巻 4 号 肥育前期飼料から後期飼料への切り替えは, 各試験区の平均体重が 65 75 kg の範囲に達した段階で行い, 試験期間中は不断給餌とした 供試豚が 0 kg に達した時点でと畜して, 枝肉調査, 肉質の理化学特性の分析を行うとともに, ロース肉による官能評価を行った 調査項目として, 試験に供試した飼料の一般成分, アミノ酸含量について分析を行った アミノ酸含量の分析は, 塩酸加水分解の後, アミノ酸による抽出と高速アミノ酸分析計による分離により定量した その他の一般成分は常法 ( 畜産試験場加工第 2 研究室,990) に準じた 飼養成績については日増体量, 枝肉成績については枝肉重量, 背脂肪厚, ロース断面積等をそれぞれ調査した ロース断面積は体長の/2の部位を超音波測定装置のスーパーアイミート ( 富士平工業社製, 東京 ) でと畜前日に計測した 肉質成績について, と体から第 4 3 胸椎間のサンプルを採取し, 分析に供するまで 8 で保存した 肉質成績について, 胸最長筋の水分, 保水力, 伸展性などの理化学性状, 遊離アミノ酸含量について測定を行った また, 背脂肪内層の脂肪融点と脂肪酸組成を測定した 肉質に係る一般理化学性状の測定は, 常法 ( 畜産試験場加工第 2 研究室,990) に, また飼料分析に係る一般成分は飼料分析基準 ( 農林水産省,2008) に準じた 胸最長筋の遊離アミノ酸含量は, スルホサリチル酸で抽出して高速アミノ酸分析計により定量した 脂肪内層の脂肪酸組成は, ガスクロマトグラフィにより定量した 破断応力は高橋ら (2004) の方法に準じて測定した 官能評価は, 肉質成績で最も良い成績が得られた試験区と試験区 のロース肉の 2 点について, 0 代 70 代までの一般消費者 0 名を対象とした消費者型で実施した 試験は, ロース肉を 2 3 mm 程度にスライスした後, 唐沢ら (994) の方法によって検査に供した 調査項目は やわらかさ, 香り, うま味 の 3 項目で, やわらかさ について 非常に固い ( 2) 非常にやわらかい (+2), 香り および うま味 について 非常に弱い ( 2) 非常に強い (+2) の 5 段階評点法で評価した 得られたデータに関して, 官能評価以外は統計ソフト Stat View(SAS Institute Inc., Version 5.0) で一元配置分散分析を行い, 危険率 5% 以下になった場合に有意差があるものとし, さらに多重比較 (Turkey-Kramer 検定 ) を行った また, 官能評価は二項検定法により統計処理を行った 結果表 2に供試した肥育後期飼料の飼料成分を示す 飼料中のアミノ酸リジン含量は, 大麦の配合割合を高めることで多くなった また他のアミノ酸含量についても, リジンと同様な傾向が確認された 表 3に各試験区における肥育豚の飼養成績を示す 日増体量は, 数値的には試験区 2および試験区 3 が試験区 よりも高い値を示したが, 有意差は見られなかった 表 4に各試験区における肥育豚の枝肉成績の比較を示す ロース断面積は, 試験区 3 が試験区 と比較して有意に大きくなることが確認された (P<0.05) 表 2. 供試した肥育後期飼料の飼料成分 ( 現物 %) Table 2. Component of the second fattening diet (FM%) Exp. Moisture 8.4 Crude protein Crude fat Crude fiber Crude ash Nitrogen free extract Arginine Histidine Isoleucine Leucine Lysine Phenylalanine Threonine Valine 5.0 4.6 2.2 3.2 66.6 0.74 0.33 0.52.24 0.67 0.67 0.5 0.63 Exp. 2 Exp. 3 8.4 5.2 4. 2.8 3. 66.4 8.3 5.7 4.0 2.5 3. 66.4 0.76 0.78 0.34 0.34 0.50 0.53.20.20 0.68 0.7 0.68 0.70 0.5 0.53 0.63 0.64 67
202,2 月脇屋 大曲 卜部 河原 宮崎 明石 永渕 松本日豚会誌 49 巻 4 号 Table 3. 表 3. 各試験区における肥育豚の飼養成績 Feed intake and daily gain in fattening pigs Exp. Exp. 2 Exp. 3 All fattening period 2.80 3.06 2.78 Feed intake (kg/head/day) The first fattening period The second fattening period 2.94 2.79 3.25 3.02 3.34 2.59 All fattening period 0.73±0.02 0.85±0.03 0.82±0.06 Daily gain ) (kg/head/day) The first fattening period The second fattening period 0.84±0.5 0.68±0.08 0.99±0.08 0.78±0.06 0.98±0.02 0.73±0.09 ) Daily gain : Means±Standard deviation Table 4. 表 4. 各試験区における肥育豚の枝肉成績の比較 Effect of carcass measurements in fattening pigs Exp. Exp. 2 Exp. 3 Carcass weight (kg) Carcass yield (%) Carcass length (cm) Back loin length (I) (cm) Back loin length (II) (cm) Carcass width (cm) Backfat depth (shoulder) (cm) Backfat depth (back) (cm) Backfat depth (loin) (cm) Loin area (cm 2 ) 7.3±.8 72.0±.4 70.5±2.2 63.7±0.9 62.3±.4 62.4±. 00.0±2.4 00.6±3.8 99.0±2.6 82.0±2.3 84.4±4.4 83.0±.9 70.4±2.5 69.8±4.3 70.4±3.3 35.4±.8 34.9±.3 35.5±.7 3.8±0.3 3.8±0.5 3.9±0.4 2.4±0.5 2.3±0.4 2.3±0.6 3.9±0.6 3.2±0.4 4.0±0.6 33.3±.2 a 36.±3.9 ab 37.4±.8 b Means±Standard deviation Shows significant difference(p<0.05) 表 5に各試験区における肥育豚の肉質成績の比較を示す 肉質形質について, 加熱損失は試験区 3 が試験区 と比較して有意に高くなり (P< 0.05), 剪断力価も有意差はなかったが試験区 3が高い値を示した 表 6に各試験区における背脂肪内層の脂肪酸組成を示す 背脂肪内層の脂肪酸組成では有意な差は確認されなかったが, 大麦の配合割合が高くな るほどオレイン酸の割合が増加した また, 飽和脂肪酸であるパルミチン酸, ステアリン酸の割合は大麦の配合割合が少ない試験区 が高く, リノール酸は大麦の配合割合が多い試験区 3が少なくなった 表 7に各試験区におけるロース肉中の遊離アミノ酸含量を示す 遊離アミノ酸含量については, 大麦配合による傾向は確認されなかったが, うま 68
202,2 月大麦の配合割合による枝肉, 肉質効果日豚会誌 49 巻 4 号 Moisture (%) Shear value (kgf) 表 5. 各試験区における肥育豚の肉質成績の比較 Fat melting temperature ( ) Crude protein (FM%) Crude fat (FM%) Table 5. Water holding capacity (%) Pressurization filter paper method Extension rate (%) Heating loss rate (%) Meat color Fat color L* a* b* L* a* b* Means±Standard deviation Shows significant difference(p<0.05) Effect of meat quality in fattening pigs Exp. Exp. 2 Exp. 3 73.8±0.5 73.4±0.7 73.9±.3 58.6±5. 59.8±5.6 57.3±3.5 2.2±3.8 20.±3.0 2.3±3.2 20.0±4.6 a 24.4±2.2 ab 25.8±2.0 b 5.6±3.4 6.5±5.7 20.5±4.7 36.2±2.7 36.7±3. 38.5±2.4 23.7±0.5 23.6±0.7 23.3±0.4 2.4±0.6 2.9±0.5 2.9±. 46.6±.4 46.6±.7 47.9±2.4 5.9±0.9 5.9±0.3 6.0±. 0.8±0.2 0.6±0. 0.7±0.2 73.0±.0 73.2±0.4 73.3±0.8 2.±0.8 2.5±0.5 2.±0.6 2.0±0.5 2.8±0.4 2.9±0.6 Table 6. 表 6. 各試験区における背脂肪内層の脂肪酸組成 Effect on fatty acid composition of subcutaneous fat Exp. Exp. 2 Exp. 3 Myristic acid.8±0.2.9±0.9.8±.3 Palmitic acid 25.8±2.0 24.±4.2 24.3±0.8 Stearic acid 3.4±.3.4±2.7 2.±.3 Palmitoleic acid 0.5±.2 2.0±2.0.7±0.5 Oleic acid 47.±.3 48.8±.4 49.5±0.7 Linoleic acid.4±0.2.8±2.8 0.7±.9 Means±Standard deviation, (%) みの主成分であるグルタミン酸は試験区 2が多かった 図 に官能評価における回答者の性別, 年代別人数, 図 2 に試験区 に対する試験区 2 のロース肉の官能評価を示す ロース肉による官能評価は試験区 2 と試験区 のロース芯を2 点比較で実施した 官能評価の回答者は, 男女割合は女性が 6 割を占めで, 年代では 50 代が最も多かった 試 験区 と比較して試験区 2は, 有意差は確認されなかったが, 全ての項目で高い評価が得られた 考察必須アミノ酸であるリジンをトウモロコシよりも多く含む飼料用米および大麦の特性と, 国内で生産される低利用資源 ( 製茶加工残さ ) の機能性特性を有効に活用するために, 大麦の配合割合の 69
202,2 月脇屋 大曲 卜部 河原 宮崎 明石 永渕 松本日豚会誌 49 巻 4 号 表 7. 各試験区におけるロース肉中の遊離アミノ酸含量 Table 7. Free amino acid composition of loin Exp. Exp. 2 Exp. 3 Taste and acid constituent Sweet constituent Flavor and bitter constituent Glutamic acid Aspartic acid Glutamine Asparagine Alanine Glycine Threonine Serine Proline Methionine Lysine Isoleucine Leucine Phenylalanine Tyrosine Valine Histidine Arginine Cystine 6.±.8 6.4±.7 5.6±.8.3±0.5.±0.3.±0.3 28.6±6.6 22.3±3.6 29.7±7.5.3±0.5.±0.3.±0.3 6.±3.3 4.6±3.8 3.3±.8 9.0±0.7 9.7±0.9 8.9±0.9 3.8±0.6 3.9±0.6 3.7±0.3 4.5±0.8 4.4±.0 4.0±0.2 2.9±0.4 2.7±0.2 2.6±0.3 2.6±0.3 2.5±0.7 2.4±0.2 4.6±0.4 4.3±0.5 3.9±0.3 3.4±0.4 3.3±0.4 3.±0.2 5.7±0.5 5.5±0.7 5.±0.4 3.4±0.4 3.5±0.6 3.4±0.2 3.3±0.3 3.3±0.5 3.±0.3 4.3±0.5 4.5±0.3 4.2±0.3.7±0.6.9±0.9.8±0.3 3.8±0.4 3.4±0.6 3.±0.3 0.±0. 0.±0. 0.±0. The others Taurine Ornithine 23.0±6.6 0.6±0.2 20.6±4.4 0.5±0. 26.3±9.5 0.5±0.3 Means±Standard deviation, (mg/00 g) 違いが枝肉成績および肉質等に及ぼす影響を調査した 枝肉成績について, 大麦の配合割合を多くすることで, ロース断面積は大きくなった 大和ら (99) は, 高エネルギー低蛋白質飼料に L-リジンを添加して, 暑熱時に給与することにより飼料摂取量は増加し, 発育促進効果が認められたことを報告している 本研究においても有意差は認められなかったものの, 大麦の添加により日増体量の増加が確認された また, 條々ら (994) は, 大麦添加によりロース断面積は大きくなる傾向がみられ, 肉中の脂肪含量は増加したと報告しており, 本試験においてもリジン含量の高い大麦を配合することで同様のことが確認された可能性が考 えられる 肉質形質では, 大麦配合割合が最も高い試験区 3 において, 試験区 と比較して加熱損失率が有意に高くなった 中村ら (200) は, 慣行飼料に大麦の配合割合を調整して肥育試験を行った結果, 配合割合が最も多い 50% 配合区で加熱損失率が高くなったと報告している また, 設楽ら (2005) は, 慣行飼料に乾燥豆腐粕を 30% 代替給与した場合に加熱胸最長筋の多汁性が低下したと報告しており, 大麦や乾燥豆腐粕を多く給与した場合に, 給与飼料の TDN は日本仕様標準 豚 ( 独立行政法人農業 生物系特定産業技術研究機構,2005) に示された肥育豚の要求量である 75% より低くなったことから, 栄養価の問題点がある 70
202,2 月大麦の配合割合による枝肉, 肉質効果日豚会誌 49 巻 4 号 図 2. 試験区 に対する試験区 2 のロース肉の官能評価 Fig. 2. Sensory evaluation of loin in Exp. 2 to Exp. 図. 官能評価における回答者の性別, 年代別人数 Fig.. Numbers of sex and age of sensory evaluation respondent ことが推察される 今回の試験では, 加熱損失率が高かった試験区 3 においても TDN が要求量を満たす 75% であったが, 暑熱環境下で消化率が変動していることも考えられることから, 暑熱期における適切な TDN の設定も含めて原因を検討する必要がある 背脂肪内層の脂肪酸組成について, 有意差はなかったが大麦の配合割合が高くなるほどオレイン酸の割合が増加した 前報 ( 脇屋ら,202) において, 慣行飼料に飼料用米, 大麦を配合することで, オレイン酸の増加とリノール酸の減少を確認しており, 本試験においても同様な傾向が確認された 官能評価の結果において, 試験区 と比較して, 試験区 2 のロース肉が高い評価となった 香り, うま味 の項目については, 試験 と比較して試験区 2がオレイン酸およびグルタミン酸含量が高かったことが理由として考えられるが, 有意な差はなかったため, 今後さらに高評価が得られるような配合割合を検討する必要がある また, 試験区 2 は試験区 と比較してロース肉の加熱損失率, 剪断力価は高くなったが, 官能評価で やわらかさ で高い評価を得たことより, 官能評価に影響を及ぼさない程度の数値差であったことが推察された 以上の結果から, 暑熱環境下で飼料用米, 大麦, 製茶加工残さの混合給与を行う場合, 大麦の配合割合を増やすことで枝肉のロース芯面積が大きくなる効果が見られた しかし, 大麦を 25% 配合した場合に加熱損失が高くなったことより, 栄養価等も含めて適正な配合割合を検討する必要がある 今後は, 大麦の配合割合を固定して, 栄養価も含めて飼料用米との最適配合割合を検討する 謝辞本研究は, 平成 23 年度農林水産省委託プロ 7
202,2 月脇屋 大曲 卜部 河原 宮崎 明石 永渕 松本日豚会誌 49 巻 4 号 ジェクト研究 自給飼料を基盤とした国産畜産物の高付加価値化技術の開発 4 自給飼料多給による高付加価値豚肉生産技術の開発 の研究課題である 飼料用米および麦と茶葉を組み合わせた 肥育豚の暑熱対策技術の開発 ( 課題番号 :46005) により実施されました 本研究を実施するに当たり, プロジェクトリーダーとしてご助言いただいた山形大学の吉田宣夫先生と, 畜産草地研究所の勝俣昌也上席研究員に深謝いたします また, 肉質分析を指導いただいた九州沖縄農業研究センター常石英作氏およびその他関係者各位に御礼申し上げます 文 畜産試験場加工第 2 研究室 :990, 豚肉の品質改善に関する研究実施要領,4-2, 農林水産省畜産試験場, 茨城. 独立行政法人農業 食品産業技術総合研究機構編 :2009, アミノ酸含量, 日本標準飼料成分表 (2009 年版 ),63-78, 中央畜産会, 東京. 独立行政法人農業 生物系特定産業技術研究機構編 :2005, 2.2 養分要求量 風乾飼料中含量 日本飼養標準 豚 (2005 年度版 ),8-9, 中央畜産会, 東京. 唐沢恵子 高崎禎子 渋谷立人 青木圭 伊藤米人 内田哲二 北村雅彦 條々和実 :994, 豚肉の保存, 調理法が官能検査に及ぼす影響, 日豚会誌,3,2-27. 條々和実 北村雅彦 石田昌弘 安藤純孝 : 994, 優良系統豚を活用した良食味豚肉生産技術の確立 ( 第 4 報 ), 山梨県畜産試験場研究報告,4, 9-20. 松本光史 村上斉 阪谷美樹 井上寛暁 梶雄次 : 2008, 暑熱環境が肥育後期豚の深部体温と消化吸収能力に及ぼす影響, 栄養生理研究会報,52,43-48. 松本光史 村上斉 井上寛暁 梶雄次 : 2009, 暑熱環境下の肥育後期豚では飼料中アミノ酸 献 の消化吸収能力が低下する, 平成 20 年度九州沖縄農業研究成果情報 ( 研究 参考 ) 中村真弓 野沢久夫 阿部泰男 大久保彰夫 中島芳郎 : 200, 系統豚 トチギ L 交雑利用に関する試験 給与飼料による肉質への影響の検討, 栃木県畜産試験場研究報告,9-9. 農林水産省 : 2008, 飼料分析基準,5-34, 平成 20 年 4 月 日 9 消安第 4729 号農林水産省消費 安全局長通知. 農林水産省 : 202, 飼料をめぐる情勢,,http: //www.maff.go.jp/j/chikusan/sinko/lin/l_siryo/ pdf/meguru_2402.pdf,202 設楽修 岩本英治 和出敦夫 : 2005, 肥育豚への乾燥豆腐粕給与が発育と肉質に及ぼす影響, 兵庫県立農林水産技術総合センター研究報告 畜産編,4,-5. 高橋知子 中川令恵 道脇幸博 川野亜紀 鈴木美紀 和田佳子 大越ひろ : 2004, 食べ易い食肉のテクスチャー特性と咀嚼運動, 日本家政学会誌,55,3-2. 脇屋裕一郎 安田みどり 坂井隆宏 大曲秀明 河原弘文 宮崎秀雄 下平秀丸 : 2009, 二番茶製茶加工残さ給与が肥育豚の枝肉および肉質に与える効果, 日本暖地畜産学会報,52,5-56. 脇屋裕一郎 安田みどり 大曲秀明 宮崎秀雄 北島由希 西尾公志 河原弘文 下平秀丸 : 200, 二番茶製茶加工残さ給与が群飼条件下における肥育豚の枝肉および肉質に与える効果, 日本暖地畜産学会報,53,57-65. 脇屋裕一郎 大曲秀明 山口妃鶴 河原弘文 宮崎秀雄 明石真幸 永渕成樹 松本光史 : 202, 飼料用米, 大麦, 製茶加工残さの混合給与とその粉砕粒度が暑熱環境下の肥育豚の発育, 枝肉成績および肉質に及ぼす影響, 日豚会誌,49, -3. 大和碩哉 投野和彦 古賀康弘 : 99, 西南暖地の暑熱環境下での豚の飼料摂取促進技術第 報肥育豚に対する低蛋白質飼料へのリジンの添加効果, 福岡県農業総合試験場研究報告 C ( 畜産 ),,2-24. 72