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73 専門講義の授業分析 : スポーツ運動学のケース 豊村伊一郎 1) Class analysis concerning the special lecture : In the case of Movement Theory of Sport Abstract Movement Theory of Sport is a difficult subject to understand, so I would like to clarify the facts of how the students feel about the difficulties of lectures, what degree they understand the lectures, what listening will they have, and whether they get useful information from the lectures or not, etc, by using questionnaires. Besides these, I put some special basic questions concerning the specific matters of this subject into this questionnaire. In this field, this kind of study is not found right now. The main findings are as follows: Concerning lecture difficulty, 55% to 60% of the students could not understand it well. Regarding the listening will, a few students listened to the lectures carefully, the ratio was around 10 to 15%. Most of them listened at moderate levels 50 to 55%. Earnest listeners were only 10 to 15%,so the comprehension rates were low. Concerning special basic questions, I could grasp the situations of what the students thought. Regarding the sport club affiliation, the regular group occupied the highest rates in all items. Ⅰ 緒論 スポーツ運動学は難解な内容をもつ学問分野である しかも他と比べて比較的新しい学問であり 現在も進化の過程にある そういった状況において この講義を受講する学生が 内容の難易度をどう捉えているのか どの程度真面目に講義を聞いているか どこまで講義を理解したのか また講義から得るものがあったのか等は 気に掛かるものである そのような観点から 自身が 別の科目で実施した授業分析 9) の手法を用いて 今回はじめて スポーツ運動学の授業分析を試みた その調査内容には基本的な専門分野の理解に関する若干の設問も加えてみた なお このような視点からの研究は本分野では見当たらない Ⅱ 講義の概要 ここで 平成 22 年度の学修ガイド 1) の内容を一部引用しながらこの科目の特徴を述べてみる 3 p27) 日本語の 運動 という言葉には多義性がある 運動生理学の運動も スポーツ運動学のそれも同じと解釈されて 受講に際して学生に誤解が生じることもある 英語 ( 独語 ) では 前者の運動は exercise(übung), 後者は 1) 福岡大学スポーツ科学部 Fukuoka University, Faculty of Sports and Health Science (1)

74 movement(bewegung) と厳密に区別されていて その意味内容も異なる すなわち exercise はある目的のために繰り返し体を動かすことであり これに対して movement は一定の時空における物体の移動を意味している 3 p254) さて 我々の住む世界には 天体の運動 自然科学が作り出した物体の運動 さらには人間をも含む生命体の運動が存在している その中で 人間の運動は 19 世紀 ウェーバー兄弟らによる人間の歩行に関する研究に代表されるように 機械の運動と同じと捉えられてきた歴史が存在する 2 p62 p63) そのため現在でも機械論的運動分析 pp62 63) が主流を成している それに対して スポーツ運動学では生身の人間の運動 つまり現前 4 化運動 p7) や動く際の感覚も取り扱われ 自然科学では非科学的とされる運動者の主観 コツやカンの問題なども研究の対象となる また この科目は人間が動く 動けるということはどういうことなのか 人間の能力とは何か 人間の感性とは何か等を含め 人間学 現象学 心理学などの理論を下敷きにした講義なので かなり難解な部分もあるが 真剣に聞き 咀嚼すれば自らスポーツを行う場合や 指導の場で活用できる知識 技術の習得に役立つものと考えている Ⅲ 研究方法 1) 講義科目 : スポーツ運動学 ( 以下 SU と略す ) 2 年次開講選択科目 ( 教職必修 ) 2) 調査期日 :2010 年 7 月 17 日 ( 最終授業時 ) 3) 対象 :F 大学 S 科学部 調査時回答者: 男子 - 126 女子 - 52 計 178 名授業時 出席者全員にアンケートを配り 終了後回収した なお無記名で成績には一切関係しないことを伝えた後 実施した アンケートはすべて単一回答方式である 主として 質問項目は 4 段階尺度で回答を求めた その際 段階 1と2は肯定的 3と4は否定的回答とみなした ただし 講義の難易度と部活動 ( 以下 部活 とする ) での努力は 5 段階尺 2 度を用いた 4) 分析の視点 性別の比較 講義の難易度 傾聴意欲 理解度 講義内容に関する理解の具体的事項:5 項目 講義で得たものの有無 項目間のクロス分析 部活動所属者の実状分析 5) 統計的処理方法 :SPSS(Version15.0J for Windows) を用いて クロス集計を行った Ⅳ 結果と考察 1. 男女別の比較 1) 講義の難易度まず SU の講義の難易度では 難しかった 男子 26.2% 女子 31.4% かなり難しかった 男子 27.8% 女子 29.4% である これに対して 丁度よい は男子 34.9% 女子 35.3% であった さらに かなり易しかった が男子 6.3% 女子 2.0% 易しかった 男子 4.8% 女子 2.0% である SU の内容を易しいと考えているものは 総じて男子 11.1% 女子 4% である ( 図 1) つまり 講義のレベルが丁度よいと考えているものが男女ともほぼ 3 割 5 分 SU の内容が難しいと捉えている学生は男子で 5 割 5 分弱 女子で 6 割強に達している 2) 傾聴意欲傾聴意欲 つまり どこまで真面目に 本気で講義を聞いたか に関しては 本気で聞いた は男子 8.8% 女子 13.5% まあ真面目に (2)

専門講義の授業分析 : スポーツ運動学のケース ( 豊村 ) 75 聞いた は男子 51.2% 女子 55.8% である 総じて聞くことに肯定的なものは男子 60.0% 女子 69.3% であった 一方 あまり真剣でなかった 男子 30.4% 女子 26.9% 全く不真面目 は男子 9.6% 女子 3.8% であった ( 図 2) すなわち 傾聴を心掛けるものが男子で 1 割に満たない 女子も 1 割 5 分に満たない状態である まあ 傾聴しないまでも一応聞いているものが男子 5 割強 女子 5 割 5 分強存在している 3) 理解度 講義内容の全般的な理解 では よく理解した 男子 1.6% 女子 1.9% 一応理解した 男子 41.3% 女子 50.0% 理解に肯定的なものを併せると男子 42.9% 女子 51.9% となっている 逆に あまり理解できず 男子 48.4% 女子 44.2% で 全く不理解 は男子 8.7% 女子 3.8% であった 理解に否定的なものは総じて 男子 6 割弱 女子 5 割弱である ( 図 3) 4) 講義の内容についてここで講義内容の理解について 具体的な問題 を提示して考察してみる 1 人間と機械の運動の違いの理解生身の人間が生み出す動きは 自然科学が生み出した機械の動きと比較することによって その動きの特徴を浮き彫りにすることができる また前述のごとく かつて人間の運動研究の歴史の中では 人の運動は機械のそれと同じであるという考え方が主流を占めていたし 現在もそういう考えが根強く残っている しかし SU 的に考えると 人間の体自体は精密機械と類似していると捉えられる点が多々あるが 人間が動く場合には機械のそれとは本質的に大きな違いが存在する 例えて 4 pp319 言えば 自己運動 320) 6 パトス的前提 p98) 4 pp342 343) 5 p345) 即興的運動動きの一回性などを例題にして論をすすめたが その違いを理解したかどうかは よく理解した 男子 19.0% 女子 25.0% まあ理解した 男子 50.8% 女子 34.6% で 理解に肯定的なものは併せて 男子 69.8% 女子 59.6% である これに対して あまり理解できず 男子 22.2% 女子 36.5% であり 不理解 は男子 7.9% 女子 3.8% であった ( 図 4) 2 運動観察力の重要性見るということは 一般的に受身の作用と考えられがちである その証拠に目は感覚受容器といわれる しかし我々は能動的 選択的にものを見ているのであって 興味関心のないものは見ても意識にのぼらない 特にスポーツにおける動きを見る場合は その現象を直観で見抜くことが求められる そのための意識的訓練が不可欠である そういった意味から スポーツ運動の実施や (3)

76 3 pp156 指導に際しての 運動観察力 160) の重要 性 を取り上げたが それに関しては よく理解した は男子 27.8% 女子 23.1% で まあ理解した は男子 38.9% 女子 42.3% 併せると男子 66.7% 女子 65.4% のものが理解に肯定的である 他方 あまり理解できず 男子 25.4% 女子 32.7% 不理解 男子 7.9% 女子 1.9% であった ( 図 5) 3 動きの可能性について人は生まれた時は ほとんど何もできないが その後の育つ過程や成人以後も 他の動物に比べると 無限に近い動きの可能性 を持っている 人間の運動は 日常生活で行うものをみても 育つ過程で数多くの運動を身につけている そこではどんな運動オンチな人でも 健常者なら何一つ不自由を感じることなく巧みに動いて生活しているし 数多くあるスポーツ運動でも できない場合は一から始めて 意欲をもって練習を繰り返せば大抵のことはできるようになる もちろんゴールデンエイジなどといって習得のためには最適とされる時期は存在するし 巧い下手もあるが 意志をもって継続すれば 年に関係なく色々な動きを習得することができる ゲーテの形態学研究の権威である高橋義人氏は子供の頃の最大のコンプレックスは運動ができないことだったそうだが 大学に入ってから 水泳をしたりテニスをしたりスキーをしたりして だんだんスポーツになじみ 少しずつ人並みにか 人並み近くにできるようになってコンプレックスを克服してきたとある 8) これらの例ではないが 好きで続けていれば大抵 のことができるようになる こういった点から 他の動物に比べると人間には 無限に近い動きの可能性 があることについて話したが そのことを理解できたか否かに関しては よく理解できた は男子 26.4% 女子 34.6% まあ理解できた 男子 40.8% 女子 46.2% で 併せての肯定的な回答は 男子 67.2% 女子 80.8% であった 他方 あまり理解できず は男子 24.8% 女子 17.3% 不理解 は男子 8.0% 女子 1.9% であった ( 図 6) 4 驚きの感性について感性とは感受性ともいわれ 普段は芸術などの分野で使用されており 感受性豊か とか 感性を磨く という表現は誰でも知っている しかし我々が生きる上では あまり注目されていない言葉である 現に 受講生に感性とは何かを質問しても答えられたためしがない そういう筆者も この言葉の真の重要性に気づいたのは SU の授業を担当するようになってからである この言葉の意味は 感じとる力 のことである 一種の能力であるといえる 人は普段の生活でも もちろん 5 p24 五感や動感 p305) で無意識的に様々なことを感じて行動しているが それは受動的レベルに留まっているのが普通である スポーツで動く場合も含めて 何事かを身につけ 習熟させようとするときには この能力を意識的に磨く必要がある 例えば 動いている自分の体がどうなっているのか 敵の動きを先取りできるか ある人の発言から何を感じとれるかなど スポーツ実施だけに留まらず 問題意識や目的意識をもって普段からこういう感覚を磨いていかねばならない 物事を感 (4)

専門講義の授業分析 : スポーツ運動学のケース ( 豊村 ) 77 じとるという観点から 当たり前 という言葉を例にして 学生が講義を聞く場合にも当てはまると思うので ここでそのことについて述べてみる ベストセラー 面接の達人 を著した 中谷彰宏氏 7) は いつも当たり前のことを大切にする という その文章をここで引用してみる 本を読んでも 講演を聞いても なんだ 当たり前のことばかりだ もっと目からウロコが落ちるようなことを教えてほしい という人がいる 当たり前のことを 当たり前だとバカにする人は成功することはできない ( 中略 ) その当たり前のことが大切なのだ 当たり前のことが一番難しく 見落としやすい ( 中略 ) 当たり前に意味を見出していくのは一人一人の問題だ たとえば 同じ話を聞いたとする ある人は なんだ 当たり前な話ばかりで退屈だったという ある人は 自分の経験と照らし合わせて 当たり前に意味を見出した なるほど奥が深かった 気がつかなかった そんなふうに目が開いた という これからすると 驚きや感動も当たり前の中にも存在するのではなかろうか 動物が育つ過程で馬は生まれて 20-30 分で立って歩くし ヒヨコは殻を破って出た瞬間から歩いて餌をついばむ 筆者自身 戦後の混乱期に育つ過程で 親がニワトリを飼っていたので ヒヨコのこういったことなど昔から知っていた しかし SU を専門に教えるようになって 人間の成長過程と動きの多様性を比べて その当たり前のことに驚きを感じた経験がある これだけ早く動ける彼らがその後 生涯にわたってどんな動きができるのか ヒヨコはニワトリに成長しても何も変わらないし 馬にしても数えるほどの動きしかできない こういった点から 人間と馬やひよこの成長の速さのちがいと動きの可能性についての話の中で それにより驚きの感性をもてたか という問いに対しては もてた もの男子 16.7% 女子 15.4% まあもてた もの男子 36.5% 女子 46.2% であり 肯定的な意見は併せて男子 53.2% 女子 61.6% であった 逆に あまりもてず は男子 34.9% 女子 36.5% 持 てず は男子 11.9% 女子 1.9% であった ( 図 7) 5あきらめなければ大抵のことはできるようになるこの言葉も人口に膾炙しているが SU の立場から改めて見直すと 他の動物に比べた場合 人はその生涯にわたって無限に近い 動きを身につけることが許されている唯一の生き物である これは人であれば誰にでも与えられている特権であるが 多くの人はこれに気づかず 自ら自己の可能性に意識的あるいは無意識的 ( 自身気づかず ) に制限を設けがちである こういった点から 人間 あきらめなければ大抵のことはできるようになる ということを理解できたか否かに関しては よく理解できた ものは男子 23.0% 女子 38.5% まあ理解した ものは男子 43.7% 女子 46.2% であった 併せて肯定的なものは男子 66.7% 女子 84.7% である 他方 あまり理解できなかった ものは男子 27.8% 女子 15.4% であり 不理解 は男子のみであった (5.6%) ( 図 8) 6 努力の継続の意思さらに前述のことから 努力の継続 すなわち 物事をあきらめずに努力をつづけてみようという気になったか否かに関しては なった もの男子 32.5% 女子 48.1% まあなった もの男子 34.9% 女子 40.4% 肯定的回答を併せると 男子 67.4% 女子 88.5% であった 片や あまりその気にならず は男子 24.6% 女子 7.7% で 全くその気にならず は男子 7.9% 女子 3.8% であ (5)

78 った ( 図 9) 7 人間の能力についてつぎに 能力とは英々辞典 ( 電子辞書 Longman 2000) には something that you are able to do と出ている すなわち あなたのできる何か のことである 前に述べたとおり 人はほぼ何もできない状態で生まれてきて その後の各自の努力ですべての能力を自力で獲得していく 一般的に あの人には能力がある とか 彼は能力が高い とか固定的に考えられがちだが 能力は日々の精進で育てることができる これは誰にとっても適合する その証拠はよく見れば世間の至るところに発見できる そのひとつが 最近の身障者スポーツの隆盛 ( 例 ; 眼の見えない人がサッカーができる等 ) である こういったことから 能力は育つ ということを学んで 自分もやってみようという気になったかという問いに対しては なった もの男子 31.2% 女子 40.4% まあなった 男子 47.2% 女子 50.0% で 総じて肯定的なものは男子 78.4% 女子 90.4% である これに対して あ まりならず 男子 14.4% 女子 9.6% 全くその気にならず 男子 7.2% 女子 0.0% であった ( 図 10) また 今その気になっていても その努力が自分で続けられるか という設問に対しては そう思う が男子 17.5% 女子 23.1% 一応思う 男子 44.4% 女子 55.8% で 肯定的意見は締めて 男子 61.9% 女子 78.9% である 逆に あまり思わない 男子 29.4% 女子 21.2% 努力がつづけられるとは 全く思わない が男子のみで 8.7% であった ( 図 11) 5) 役立つものの有無 SU の授業を通して 役立つもの があったかという問いに対しては あった 男子 26.2% 女子 28.8% まああった 男子 42.9% 女子 55.8% 肯定派を併せると男子 69.1% 女子 84.6% 他方 あまりなかった は男子 25.4% 女子 15.4% 全くなかった は男子にのみ 5.6% であった ( 図 12) つぎに 自分のスポーツを行う際の有益な情報 はあったかという問いに対しては あっ (6)

専門講義の授業分析 : スポーツ運動学のケース ( 豊村 ) 79 た 男子 30.2% 女子 21.2% まああった 男子 39.7% 女子 65.4% 両者を併せると 男子 69.9% 女子 86.6% であった 一方 あまりなかった 男子 24.6% 女子 13.5% 全くなかった は男子のみに 5.6% であった ( 図 13) さらに将来 スポーツを指導する際に役立つ知見 はあったか否かでは あった は男子 22.2% 女子 23.1% まああった 男子 51.6% 女子 57.7% これらの肯定意見を併せると 男子 73.8% 女子 80.8% である 他方 あまりない は男子 19.8% 女子 19.2% であり 全くなし は男子にのみ 6.3% であった ( 図 14) 終わりに SU の授業で学んだことで それを 実際に実践 し始めているか または 今後実践 しようと思っているかでは 実践している は男子 22.2% 女子 11.8% 実践予定 男子 50.0% 女子 62.7% である 反対に あまりその気はない もの男子 22.2% 女子 25.5% であり 全くその気なし は男子のみで 5.6% であった ( 図 15) 2. 項目間のクロス分析 1) 理解度と難易度についてまず 講義の難易度とその内容をどれぐらい理解したかの関係をみてみる よく理解した ものは僅かに 3 名で講義の難易度は 丁度よい を選択している つぎに講義を まあ理解した ものは 難しいに肯定的なもの ( 段階 1+2) が 43 名 ( 全体の 24.0%) 丁度よい 34 名 (19.0%) かなり易しい が 1 名であった 他方 あまり理解できず を選択したものの難易度感は 難しい に肯定的なものの総計は 55 名 ( 全体の 30.7%) 丁度よい が 21 名 (11.7%) 易しい を肯定しているものは締めて 9 名 (5.0%) である 不理解 のレベルをみると 難しい が 3 名 丁度よい が 4 名 易しい が 6 名であった この結果から 講義を一応理解できているレベルでは 内容が易しいと捉えているものは皆無にちかい 丁度よい と考えているものが締めて 37 名 (20.7%) 難しい と捉えているものが締めて 43 名 (24.0%) であった 通念的には 難しいから理解がしにくいということになるが 丁度よくてもあまり理解できず さらに講義内容を易しいと回答しながら理解できて (7)

80 いないものがいる 特に 講義が易しいと回答したもの 16 名中 15 名までが講義の内容の理解に否定的である ( 表 1) 2) 傾聴意欲と理解度について 本気で講義を聞いた ものは全部で 18 名で うち よく理解した ものは 1 名 まあ理解した ものが 11 名で併せて 75% のものが理解に肯定的である つぎに 一応真面目に聞いた ものは 95 名いるが うち よく理解 が 2 名 まあ理解 が 57 名であった これらを併せると 6 割のものが理解に肯定的である 他方 講義をあまり真剣に聞かなかった ものは 総計で 52 名いるが その理解率は 21.2% である なお講義に臨んで 聴講に全く 不真面目 なものは 14 名いるが全員が理解に否定的である ( 表 2) 3) 講義全般の理解度と SU 講義の有用性についてまず 役立つ を選んだものは全部で 50 名いるが うち 72% のものが講義の理解に肯定的である まあ役立つ と回答したものは 83 名 そのうち理解に肯定的なものは 47.0% である なお残りの 53% のものは講義の理解は はか ばかしくないが 一応役立つものを得ているといえる 他方 あまり役立たず は 40 名存在するが うち 85% のものが講義の理解に否定的である さらに 全く 役立たない を選んだものは 85.7% のものが講義の理解に否定的である ( 表 3) 4) 講義全般の理解と自己のスポーツ実施の有益情報について 役立つ と考えたものは 51 名いるが うち 66.7% のものが講義理解に肯定的である まあ役立つ を選んだものは 84 名いるが 50.6% のものが講義の理解に肯定的である 別言すると 全般的に よく理解 したもの 3 名 (1.7%) は 有益情報でも あった を選択している 他に 31 名 (17.2%) が あった まあ理解した を選んでいる 残り 43 名 (23.9%) が まああった まあ理解した と回答している 締めて理解と有益情報に肯定的なものは 77 名 (42.8%) である つぎに 理解度はあまりよくないが有益情報を得たものは 55 名 (30.6%) 他に 3 名 (1.7%) が 講義全般は 不理解 だが一応有益情報を得ている これらを総計すると有益情報に肯定的なもの ( 何らかのものを得て (8)

専門講義の授業分析 : スポーツ運動学のケース ( 豊村 ) 81 いる ) は 135 名 (75%) であった 他方 有益情報に否定的なグループは 全部で 45 名いるが うち 5 名のみが まあ理解 で それ以外の 40 名 (88.9%) が講義の理解に否定的であった ( 表 4) 5) 講義全般の理解と指導知見の有無について よく理解 したものは 3 名 (1.7%) で指導知見も あった と回答している 27 名 (15.0%) が あった まあ理解 46 名 (25.6%) が まああった まあ理解 であり それら肯定グループは 締めて 76 名 (42.2%) である 他方 両方に否定的なものは 締めて 37 名 (20.6%) であった ( 表 5) 3. 部活動所属者の活動状況と各項目とのクロス分析今回の調査対象者の部活動所属状況は 男子が 83.7% 女子が 75% であるが 部活に所属しているものが どの程度頑張っているのかをみてみると よく頑張っている 男子 43.3% 女子 57.4% まあ頑張っている 男子 33.3% 女子 21.3% 締めて肯定派は 男子 76.6% 女子 78.7% である 一方 あまり頑張っていない は男子 9.2% 女子 4.3% で 全く頑張っていない は男子 5.8% 女子 8.5% であった そこで よく頑張っている もの まあ頑張っている もの, 部活動で あまり頑張っていない もの ( 否定グループ ) の3グループに分けて 以下の項目で比較考察を行ってみる 1) 講義の難易度についてまず 部活動で よく頑張っている グループをみてみると 講義が 大変難しい と捉えているものは 27 名 (33.8%) かなり難しい は 23 名 (28.8%) 併せて 50 名 (62.5%) 丁度よい は 26 名 (32.5%) である それに対して 講義が 易しい と考えているものは併せて ( 段階 4+5)4 名 (5%) であった つぎに まあ頑張っている グループは 講義が難しいと捉えているもの ( 段階 1+2) は 30 名 (60%) 丁度よい は 17 名 (34.0%) である 逆に 易しい の総計 (4+5) は 3 名 (6%) であった 他方 否定グループ は 難しい (1+2) は 7 名 (30.4%) 丁度よい は 8 名 (34.8%) 易しい (4+5) は 8 名 (34.8%) これらから 部活を頑張っているものの方が 講義を難しいと捉えている 丁度よい と捉えているものの割合には三者に大きな違いはない 逆に 講義を 易しい と考えているものは 否定グループの比率が高い 総じて 部活を頑張って行っているものに講義が難しいと思っているものが多い傾向にある ( 表 6) 2) 傾聴意欲について部活で 大いに頑張っている グループで 聞くことに肯定的なものは締めて 58 名 (73.4%) まあ頑張っている グループは 聞くことに肯定的 (9)

82 なものは 28 名 (56.0%) 頑張りに否定的なグループは 11 名 (45.8%) が まあ真面目に聞いた である しかしこのグループには本気で聞いたものが 0% である ここでも部活を頑張っているものの方が 傾聴意欲が高い傾向にあるといえる ( 表 7) 3) 理解度について部活で よく頑張っている グループで講義の理解に肯定的なものを併せると 41 名 (51.3%) まあ頑張っている グループのそれは 19 名 (38.0%) 部活の頑張りに否定的なグループで 一応理解したものは 9 名 (37.5%) である つまり理解度についても部活を頑張っているものの方がそうでないグループに比べて理解の比率が高い ( 表 8) 4)SU の講義の有用性についてまず よく頑張っている グループで講義の有用性を感じとったものは 合わせて ( 段階 1+2)64 名 (80%) まあ頑張っている グループのそれは 38 名 (76%) 他方 部活の頑張りに 否定的なグループで有用性を認識したものは 12 名 (50%) であった ここでも頑張っているものの方が講義の有用性を支持する率が高い ( 表 9) 5) 競技実施のための有益情報について自分の競技に役立つ情報があったかということに関して 部活で よく頑張っている グループでは役立つものに肯定的なものを合わせると 62 名 (77.5%) まあ頑張っている グループでは 37 名 (74.0%) 頑張りに否定的なグループは 17 名 (70.9%) であった 部活の頑張りに否定的なグループも有益情報はそれなりに得ているようである ( 表 10) 6) 指導知見について部活で 頑張っている 群での知見を得たことに肯定的なものは ( 段階 1+2) 63 名 (78.8%) まあ頑張っている 群のそれは 41 名 (82%) 部活の頑張りに否定的な群では 13 名 (54.2%) であった 頑張っている群より まあ頑張っている群の方が比率は高いが 段階 1 レベルだけでみると (10)

専門講義の授業分析 : スポーツ運動学のケース ( 豊村 ) 83 前者は 30.0% で後者は 14.0% と よく頑張っている群の方の比率が高い ( 表 11) Ⅴ 総括 1. 講義難易度 : 内容が 難しい と捉えているものが男子 5 割 5 分弱 女子 6 割強で女子の方が若干高い比率を示している レベルが 丁度よい ものは 男女とも3 割 5 分程度である 他方 講義内容が 易しい と考えているものは 男子 1 割強 女子 4 分であった しかし講義内容が 難しい と捉えているものが必ずしも内容が理解できないというわけではないし 逆に 易しい と考えているものの方に内容を理解できないものが存在する 2. 傾聴意欲 : 本気で講義内容を聞き取ってやろうと意図しているものの数が男子 1 割弱 女子 1 割 5 分弱と少なく まあ真面目に聞いたものが男子 5 割強 女子 5 割 5 分強である また あまり真剣でないもの 端から聞く気のないものが 併せて男子 4 割 女子 3 割強いる 3. 理解度 : 講義をどの程度理解したかは 傾聴意欲等にも関係するが よく理解したものはごく少数で 一応理解したものが 男子 4 割強 女子 5 割である 一方 理解できないもの ( 段階 3+4) が併せて 男子 6 割弱 女子 5 割弱であった 4. 専門講義の具体的な内容 1) 人間と機械の運動の違い : よく理解 男子 19% 女子 25% まあ理解 男子 50.8% 女子 34.6% それに対して理解に否定的なものは男子 30.1% 女子 40.3% 2) 運動観察力 : よく理解 約 27.8% 女子 23.1% まあ理解 男子約 38.9% 女子 42.3% 他方 理解に否定的なものは 締めて男子約 33.3% 女子 34.6% である 3) 動きの可能性 : よく理解 約 26.4% 女子 34.6% まあ理解 が男子約 40.8% 女子 46.2% 逆に 理解に否定的なものは併せて男子約 32.8% 女子 19.2% であった 4) 驚きの感性 : もてた もの男子約 16.7% 女子 15.4% まあ理解 男子約 36.5% 女子 46.2% 否定的なものは男子約 46.8% 女子 38.4% である 5) あきらめなければ大抵のことはできるようになる : よく理解 23% 女子 38.5% まあ理解 は男子 43.7% 女子 46.2% 理解に否定的なものは男子 33.4% 女子 15.4% である この項では 女子の理解率の合計は 84.7% にのぼっている 6) 努力の継続意思 : その気に なった 男子 32.5% 女子 48.1% まあなった 男子 34.9% 女子 40.4% 理解に否定的なものは併せて男子 32.5% 女子 11.5% であった この項目でも 女子の理解肯定は締めて 88.5% に達している 7) 能力を伸ばす実践 : その気に なった 男子 31.2% 女子 40.4% まあなった 男子 47.2% 女子 50% 逆にその気にならなかったものの合計は男子 21.6% 女子 9.6% 女子は その気になった計が 90% に及んでいる 8) 努力の可能性 : 今 その気になっていてもその努力が続けられるかという点については そ (11)

84 う思う 男子 17.5% 女子 23.1% 一応そう思う 男子 44.4% 女子 55.8% 逆にできないと考えているものが男子併せて 38.1% 女子 21.2% であった 9) 講義内容の有用性 : 全般的講義内容からの役立つもの有無については 役立つものに肯定的なものは併せて男子 7 割弱 女子 8 割 5 分弱である なお 自分のスポーツを行う際の有益情報の有無は あった に肯定的なものは併せて 男子 7 割弱 女子 8 割 5 分強である また指導に関する役立つ知見については 有益性に肯定的なものは併せて男子 7 割 5 分弱 女子 8 割強であった 5. 部活動とのクロス分析 :3 グループに分けた考察 1) 講義の難易度について : 部活で よく頑張っているグループは他のそれに比べて 講義が難しいと捉えている割合が高い それに対して講義を易しいと考えている比率は否定グループの割合が高い 2) 傾聴意欲 : 部活を頑張っているグループの意欲が高い 3) 理解度 : 理解度についても三者の中で部活をよく頑張っているグループの理解率が最も高い 4)SU 講義の有用性 : ここでも部活を頑張っているものの方が有用性を認識している割合が高い 5) 競技実施のための有益情報 : やはり部活を頑張っているグループの割合が高いが 否定的なグループもそれなりに有益情報を得ている 6) 指導知見 : これは段階 1( あった ) においてはよく頑張っているグループが最も比率が高いが 段階 1と2を併せると まあ頑張っているグループが僅かに高い Ⅵ 結語 はじめに述べたように SU は難解で 奥深い学問である 予想したごとく 内容が難しいという回答が多数を占めた したがって内容の理解の点でも よく理解できたものは数人にすぎない しかし 本研究で明らかになったことは 講義の難易度と理解度は必ずしも一致しない つまり 難しいからといって必ずしも理解できないわけではないし 講義の全般的な理解はできなくても なんらかの有益情報を得ているものもいる 逆に 内容が易しいと回答したものに 講義を理解できないものが多い傾向がみられた 以上の点から さらなる講義内容と指導方法の改善が不可欠だが 受講する側も 難しいと捉えて よく理解できなくとも 意欲をもって考え 傾聴を心掛ければ講義内容に得るものがあると確信している というのも 筆者自身 学生に SU を教えていて毎年新しい気づきがあり この年をして 自身の生き方に役立っていることを実感しているからである 引用 参考文献 1) 福岡大学 学修ガイド p.283 2010 2) 金子明友 マイネルスポーツ運動学 大修館 1981 3) 金子明友 朝岡正雄 運動学講義 大修館 1990 4) 金子明友 わざの伝承 明和出版 2002 5) 金子明友 身体知の形成 ( 上 ) 明和出版 2005 6) 金子明友 身体知の形成 ( 下 ) 明和出版 2005 7) 中谷彰宏 自分塾 pp.84-85 サンマーク出版 2002 8) 高橋義人 動く形はいかに把握されるか スポーツ運動学研究 14:p.1 2001 9) 豊村伊一郎 専門講義の授業分析 : スポーツ経営管理学のケース 福岡大学スポーツ科学研究 第 41 巻第 1 号 pp.21-32 2010 (12)

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