電磁波工学 第 5 回平面波の媒質への垂直および射入射と透過 柴田幸司
Bounda Plan Rgon ε μ Rgon Mdum ( ガラスなど ε μ z 平面波の反射と透過 垂直入射の場合 左図に示す様に 平面波が境界面に対して垂直に入射する場合を考える この時の入射波を とすると 入射波は境界において 透過波 と とに分解される この時の透過量を 反射量を Γ とおくと 領域 における媒質の誘電率に対して透過量 および反射量 Γ は決定される よって その量を先の電磁波の境界条件から求めてみる そのためまず透過係数は 入射波と透過波の比として 次に反射係数は 入射波と反射波の比として と定義する と定義する そして これら透過係数や反射係数を計算する為の と x 成分を持つ平面波の各電磁界成分は マクスウェルの方程式より変形される次式の波動方程式の解として のみを用いて次の様に置くことが出来る z 屈折率と誘電率 c n との関係 v c 媒質中の光速度 v 真空中の光速度
現時点では未知数であり 境界条件を考慮することにより定数として決定される j z j z 理由 j z j 波動として振舞う ( ( (3 j sn であり j z x Y j z x Y x Y スカラ表現されたマクスウェル方程式の解より電界と磁界には j z (4 (5 (6 ここで および は自由空間および媒質中の波数であり 周波数と誘電率によって決定される波長と関連する定数としてマクスウェルの方程式から波動方程式を導出すれば その一般解の構成要素として と直交している を得る x なる関係があるので x となる ここで 自由空間インピーダンスは o Y o
よって与式は また x Y Y である となり (4 および (6 式は直ちに求まる Γ を求める方針. (~(6 式に接線成分の連続条件を適用して. 各領域の電磁界の和が等しい性質より つの方程式を組み立てる 3. そして Γ を求める時には透過電界である を消去し を求める時には反射電界である を消去して関係式を導出する なお 磁界の反射波は境界で更に向きが反転して (5 式のごとく ( - が無くなる ここで 誘電体境界面において 電磁界には n (7 n n (8 K n (9 なる関係が存在する
境界条件について異なる媒質の境界 ( 不連続部 では マクスウェルの方程式はそのまま適用出来ない 境界面に境界条件を適用 Rgon Bounda Plan Rgon Mdum ( ガラスなど 媒質内における電磁波の伝搬 線積分 C ds Rgon Rgon 変位電流 S ε μ σ C S ε μ σ dd J nds d n τ (.4 小さな面 Sとこれを囲む閉路 C( C= につ いて拡張されたマクスウェルアンペア (.4 式を適用 電流 Jにより 有限の値 (.6 K n K 境界面を面電流が流れている時の電流密度 [A/m] (.6 式 境界面に面電流が流れている場合 その分の不連続が生ずる
同様に小さな面 S とこれを囲む閉路 C( C= についてファラデー (.7 式を適用 d d ds B nds (.7 d d S C n (.7 電界の接線成分は連続 領域 および 共に完全導体でなければ 面電流 = となる n n (. 不連続部における一般的な境界条件 (. 式を変形すれば (. 式の意味 n n n x となる これは 領域 および の単位法線ベクトル n に垂直な磁界の 成分 ( x および が 境界面では等しいということを意味している z x
境界面 領域 領域 媒質 ( 空気 誘電体の境界条件 媒質 ( ガラスなど アンペアマクスウェルの積分形より K n K 境界面を面電流が流れている時の密度 [A/m] 境界において 磁界は K の不連続が生じる 但し 完全金属以外では K= となり z 入射波透過波媒質の誘電率に関連して透過 n n n n が成り立つ また 電界は ファラデーの積分形より n となる すなわち 電界の接線成分は連続 ( 境界での電界の接線成分は等しい
n とは 領域 領域 n n n x について n 単位法線ベクトル ( 境界面と垂直なベクトル x z n とは n に垂直な および x 成分の電界のこと 領域名 つまり 境界において x x が成り立つ
すなわち (8 式は境界において電界の接線成分が等しいことを表しており x x となる 次に (9 式の K は境界が完全導体では無い時には零であり n より n n となるから 結局 磁界の接線成分も等しくなり x x を得る 接線成分の連続条件の導入 よって 領域 の電磁界の和と領域 の電磁界の和が等しいことより この条件より に関して j z j z j z また x に関しては Y Y ( ( x x x より z j z j z Y Y も成り立つ ( が成り立つ j を変形して j z j z j z Y (3 となる
( と (3 式について z= = の場合には = となるので の項を省略すれば改めて (4 と書き直せる 反射係数の導出 Y ( Y (5 これらの式より まず反射係数 Γ は と との比であるから透過電界である を消去することを考える すなわち (4 式を (5 式に代入すれば Y Y ( Y ( となるので これを整理すれば Y Y Y ( Y Y ( Y Y と変形される これより 反射係数は Y Y Y Y (6 (7 を得る
透過係数の導出 透過係数 は入射と透過の比であるから (4 および (5 式から を消去することを考える まず (5 式を Y Y Y Y Y Y (8 と変形する 一方 (4 式は となるので Y Y Y これを (8 式に代入すれば を得る これを展開すれば Y Y Y Y となり さらに展開して Y Y Y Y より Y Y Y となる ここで 透過係数は と定義されているので 方向の電界について
(9 であり この式に Y および Y を代入して与式はを得る また たとえばガラスなどの誘電体を仮定して μ=μ とすると となり これが 媒質による平面波の反射係数及び透過係数の公式である Y Y Y
Γ の計算例 Bounda Plan Rgon Rgon Mdum ( ガラスなど そこで 具体的に領域 の媒質の比誘電率が与えられた時の反射係数について考える もし 媒質 の比誘電率がε =の場合には となるから次式を得る ε ε z また 媒質 の比誘電率が ε = の場合には.44.44.44.44.7.44.44.89 となる
Rgon ε 電源抵抗 交流電圧源 Bounda Plan 等価回路との関係 Rgon Mdum ( ガラスなど ε z 領域 領域 z= なお この様なモデルは等価回路に置き換えることが出来て Γ および はそれぞれ Y Y Y Y Y Y Y となる つまり インピーダンス不連続問題に帰着する
同様の手法により 厚みを持った媒質による透過波も計算が可能である z= z=d Rgon Rgon3 Rgon z=d での境界条件から領域 と 3 との電磁界の関係式を組み立て 領域 と に関する関係式も含めて 4 元連立方程式から および を導出 ガラス窓などによる光の透過係数の計算が可能
Bounda Rgon Plan Rgon ε z θ θ x ˆz 電磁波の媒質への斜め入射 Mdum ( ガラスなど ε θ z 左図に示す様に 自由空間 ε 中の電界および磁界が ε なる誘電媒質に対して入射面と水平に平面波が θ なる角度で入射する場合を考える この時の入射波は z 面に対して時間項は省略して 方向および z 方向成分の合成として 電界が入射断面である z 面に平行して振動 水平偏波の場合 o j sn ˆ ˆ sn z z o j Η x ˆ 方向成分 sn z と表現出来る ここで は電界強度の初期値である z 方向成分 (a (a ˆ sn つまり 水平偏波の場合には入射面である z 面に対して電界 は平行であり および z が存在する 一方 磁界はフレミングの左手の法則より x のみが存在する さらに 境界面からの反射波を
とおく この式は反射量の表現式であるから z の符号のみを逆にすることを留意する ここで および は領域 における波数および特性インピーダンスであり 空気 ( 真空 中において j sn ˆ ˆ sn z z o o xˆ c j ( sn z (a4 角周波数を真空中の光の速度で割った値 となる また θ は反射角であり Γ は境界における反射係数である さらに 領域 への透過波を o ( ˆ o xˆ j zˆ sn ( sn z 方向のみ向きが変化する. ( sn z (a3 (a5 とおけば は透過係数である ここで および は領域 における波数および特性インピーダンスとして j (a6
で与えられる なお 現時点においては Γ および さらに θ θ は未知数である 以上の様に定義した電磁界について z= 点における接線成分の連続性より ( ( x z z ( ( x z z (a7 (a8 を適用する その際に入射 反射および透過波の関係を考慮すれば 垂直入射の時と同様 x z z z z x z x z および なる関係を得る さらに z= における境界面に平行な成分について上記の式に (a~(a6 式を代入すれば z に関する関数はすべて消え以下の 式を得る j sn j sn jsn j sn j sn j sn. (a (a9
(a9 および (a 式の両辺は 座標の関数であり この時点では未知数である Γ および は定まらない ( つまり Γ は一定とならない ここで 先程の境界条件が成り立つということは 図に示す様に z= における境界面に沿って = 3 n において同じ状態にあることである つまり この つの式がすべての 座標について成り立つ為には指数関数の変数同士が相等しい必要があり その為に次式を満足する必要がある sn sn sn (a この に関する式の解は 一般にスネルの反射および屈折に関する法則として 次式で表されることが知られている (a sn sn. (a3 より. sn sn 周波数は関係無い ( 光でも電波でも同じ 上記の式は (.9 および (. 式の位相項がいかなる に対しても境界の両面にて同じ比で変化することを表しており しばしばこれを位相の整合条件と呼ぶ ここで θ に着目すると
sn sn より 透過波の角度は sn sn となる 式 (a9 および (a に (a および (a3 の条件を適用し 両式から Γ または だけについて整理すれば 以下の 媒質における反射および透過係数を得る まず (a9 式に j j sn sn となるので これを整理すれば を代入して j sn j sn j sn j j sn sn (aa (= の場合について =の場合には となる 一方 (a 式に = を代入して両辺に - を掛けると となるから (ab となるので これをについて整理すれば (ac となる また Γ にて整理すれば
(ad となる そこで これらの関係よりまず反射係数 Γ を求めることを考える すなわち を消去するために (ac 式を (aa 式に代入して となる
次に 透過係数 は Γ を消去するために (ad 式を (aa 式に代入して を得る から
以上をまとめれば (a4 (a5 となる ここで 電磁界が垂直入射する場合には θ =θ = θ = であるから となり 先の垂直入射における結果と一致する この偏波ではブリュスター角 ( θ b という特別な角度が存在し 反射係数は Γ= なることが知られており この条件について考えてみる (a4 式にて Γ= となる為には分子が零になる必要があるので
b b を得る さらに入射角をブリュスター角としてあらたに θ =θ b と置き換えれば * なる関係を得る よって * 式を θ について整理すると 一方 三角関数の公式である sn *4 sn となる ここで (a3 式のスネルの法則は となる よって この式を θ b のみの関係式に変形することを考える そのために以下の手順を実行する. 三角関数の公式より θ を snθ で表現し. スネルの法則よりこれを snθ で表現し 3.θ =θ b として θ b で表現し 4. この θ を *4 式に代入する * なる関係を θ について整理すると
sn sn であるから これをsnθ について整理すれば を得るので θ =θ b なる関係より 式にこの式を代入すれば sn sn sn b *3 を得る これより *3 に *4 式を代入して θ を消去すれば b sn b Γ. となる よって b sn b. を満たす様な b がブリュスター角となる b 9 θ
垂直偏波の場合 垂直偏波の場合には電界のベクトルは入射面の z 断面に対して垂直となる まず 入射する電磁界は o xˆ j ( sn z (b o ( ˆ zˆ sn j ( sn z (b とおくことが出来る ここで および は領域 における波数 特性インピーダンスであり となる これより 反射および透過係数は
o x j( sn z ˆ (b3 o ( ˆ zˆ sn j ( sn z (b4 o xˆ j ( sn z (b5 o ( ˆ zˆ sn j ( sn z (b6 とおく ここで Γ および は反射および透過係数であり 領域 について となる
なお 現時点においては Γ および さらには θ θ は未知数である 以上の様に定義した電磁界について = 点における電磁界の接線成分の連続性 ( 境界条件 より ( ( z x z x (b7 ( ( z z (b8 を適用すれば 先ほどと同様に以下の 式を得る sn sn sn j j j j j sn sn (b9 (b. sn j
水平偏波の時と同様に x および が = 点においてすべての に対して連続である為には 位相の整合条件より 以下のスネルの法則が成立する sn sn sn (b 式 (b9 および (b に (a 式の条件を適用することにより それぞれ Γ および について整理すれば以下の 媒質における反射および透過係数を得る (a (a3
ブリュスター角について考えると Γ= であるためには (a 式の分子が零である必要があるので となる また スネルの法則より sn sn sn だから これら 3 式を θ のみで整理すれば sn sn sn sn まず sn について ( ( を ( 式に代入すると であるから sn ( 更に ( 式を代入して
. sn ( ( となる しかし これは矛盾を導く 右辺の括弧内は 誘電体内では あらゆる点においてゼロとなる ( sn となる これを展開してここで sn sn (3 を得る を (3 式に代入すれば sn sn となるので まず両辺に を掛けて sn sn となるので これを整理すれば
なぜなら であるから に値を代入すれば となるからである よって 垂直偏波では誘電体への入射によるブリュスター角は存在しない
一例として ε=.55 の時 入射角度に対する反射係数は以下の様になる Γ. 垂直偏波. 水平偏波 θ 9 反射 屈折のアニメーション hp://www-annna.p.ch.ac.jp/~ha/hobb/du/m/fsnl/ndx-j.hml