Microsoft Word - ADLホームページ トピックス(4月15日final).doc

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Chemical Glycosylation of Peptides (Japanese Version)

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p _04本文

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フォルハルト法 NH SCN の標準液または KSCN の標準液を用い,Ag または Hg を直接沈殿滴定する方法 および Cl, Br, I, CN, 試料溶液に Fe SCN, S 2 を指示薬として加える 例 : Cl の逆滴定による定量 などを逆滴定する方法をいう Fe を加えた試料液に硝酸

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300927_課_薬生薬審発0927第3号_核酸医薬品の品質の担保と評価において考慮すべき事項について

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記載データ一覧 品目名 製造販売業者 BE 品質再評価 1 マグミット錠 250mg 協和化学工業 2 酸化マグネシウム錠 250mg TX みらいファーマ 3 酸化マグネシウム錠 250mg モチダ 持田製薬販売 # 4 酸化マグネシウム錠 250mg マイラン マイラン製薬 # 5 酸化マグネシ

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島津ジーエルシー総合カタログ2017【HPLCカラム】

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検査項目情報 1171 一次サンプル採取マニュアル 4. 内分泌学的検査 >> 4F. 性腺 胎盤ホルモンおよび結合蛋白 >> 4F090. トータル HCG-β ( インタクト HCG+ フリー HCG-β サブユニット ) トータル HCG-β ( インタクト HCG+ フリー HCG-β サブ

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2017 年 11 月 No.18 検査内容変更のお知らせ 拝啓時下益々ご清栄のこととお慶び申し上げます 平素は格別のお引き立てを賜り厚く御礼申し上げます このたび下記検査項目におきまして 検査内容を変更させていただきたくご案内いたします 何卒ご了承のほど宜しくお願い申し上げます 敬具 記 日時 :

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理 化学現象として現れます このような3つ以上の力が互いに相関する事象のことを多体問題といい 多体問題は理論的に予測することが非常に難しいとされています 液体中の物質の振る舞いは まさにこの多体問題です このような多体問題を解析するために 高性能コンピューターを用いた分子動力学シュミレーションなどを

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検査のタイミング ご自分の生理 ( 月経 ) 周期から換算して 次の生理 ( 月経 ) 開始予定日の 17 日前から検査を 開始してください 検査開始日から 1 日 1 回 毎日ほぼ同じ時間帯に検査してください ( 過去に検査してLHサージがうまく確認できなかった場合や 今回検査をしたところ陽性か陰

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スチック その他の化学物質を生産する化学工業ではなく 生命最強のツールである酵素を使って化学反応を触媒し さらには 新しい酵素を設計して作り出すことによって 物質生産を根本的に変えることができると考えていました 当時 世界的なバイオテクノロジーブームが盛り上がる中で アーノルド博士と同様のことを多く

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すとき, モサプリドのピーク面積の相対標準偏差は 2.0% 以下である. * 表示量 溶出規格 規定時間 溶出率 10mg/g 45 分 70% 以上 * モサプリドクエン酸塩無水物として モサプリドクエン酸塩標準品 C 21 H 25 ClFN 3 O 3 C 6 H 8 O 7 :

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号添加物 ( キャップ色等 ) 採取容器採取材料採取量測定材料ノ他材料 DNA 検体ラベル ( 単項目オーダー時 ) ホンハ ンテスト 注 JAK2/CALR. 外 N60 氷 採取容器について その他造血器 **-**

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60 秒でわかるプレスリリース 2007 年 1 月 18 日 独立行政法人理化学研究所 植物の形を自由に小さくする新しい酵素を発見 - 植物生長ホルモンの作用を止め ミニ植物を作る - 種無しブドウ と聞いて植物成長ホルモンの ジベレリン を思い浮かべるあなたは知識人といって良いでしょう このジベ

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野菜工場へのマルチオミックス解析の展開 胎児脳発達や抗酸化機能を持つ野菜の開発に成功 概要 京都大学大学院農学研究科応用生命科学専攻の植田充美 教授 青木航 同助教 渡辺祥 同修士課程学生 研 究当時 現 アサヒビール株式会社勤務 ならびに大谷優太 同博士課程学生は 三菱ケミカル株式会社との 共同研

i ( 23 ) ) SPP Science Partnership Project ( (1) (2) 2010 SSH

表 1. HPLC/MS/MS MRM パラメータ 表 2. GC/MS/MS MRM パラメータ 表 1 に HPLC/MS/MS 法による MRM パラメータを示します 1 化合物に対し 定量用のトランジション 確認用のトランジションとコーン電圧を設定しています 表 2 には GC/MS/MS

先端生物工学演習Ⅱ 「タンパク質の電気泳動」

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多様なモノクロナル抗体分子を 迅速に作製するペプチドバーコード手法を確立 動物を使わずに試験管内で多様な抗体を調製することが可能に 概要 京都大学大学院農学研究科応用生命科学専攻 植田充美 教授 青木航 同助教 宮本佳奈 同修士課程学生 現 小野薬品工業株式会社 らの研究グループは ペプチドバーコー

日産婦誌58巻9号研修コーナー

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ドーピング検査におけるダルベポエチンアルファ (dhepo) の検出法を開発 ~ 第二世代遺伝子組み換え EPO 製剤の質量分析による高感度 迅速分析法 ~ 三菱化学メディエンス株式会社アンチドーピングラボラトリー 三菱化学メディエンス株式会社アンチドーピングラボラトリーの研究グループ岡野雅人らは ドーピング検査における検体分析法のひとつとして液体クロマトグラフィータンデム質量分析法 (LC-MS/MS 法 ) によるヒト尿中 dhepo の高感度分離分析法を開発しました 本法は ヒトに生来存在する内因性 EPO と第二世代遺伝子組み換え EPO 製剤であるダルベポエチンアルファ ( 以下 dhepo) のアミノ酸配列の違いに着目し dhepo に特異的なペプチド (V 11 :TLQLHVDKAVSGLRSLTTLLRALGAQKE) を質量情報に基づいて極めて高精度に検出するものです 今般開発した本法は dhepo を用いたドーピング検出の標準法たる等電点電気泳動法に比べ 感度 精度 検査日数の短縮 必要検体量の少量化の点で優れた面があるほか 等電点電気泳動法の確認分析の検査法としても有用と言えます なお 本法は 第 37 回日本医用マススペクトル学会年会 (212 年 1 月 25 日 ) 及びドーピング分析に関する国際学術会議 31st Cologne Workshop on Dope analysis(213 年 2 月 28 日 ) にて報告しました また この研究成果は ドイツ科学誌 Analytical and Bioanalytical Chemistry に原著論文としてオンライン版に公開されました (213 年 2 月 27 日 ) 研究の背景 199 年代初頭に開発された遺伝子組み換え EPO 製剤は 酸素運搬能力を向上させる効用から腎性貧血の治療に大きな進歩をもたらす一方 スポーツの世界では 持久力系競技を中心にドーピングとして用いられ 深刻な問題となっています ドーピング検査における EPO 製剤による陽性例は 現在の標準検査法たる等電点電気泳動法によって検出されています ( 表 -1) しかし 等電点電気泳動法は 内因性 EPO と EPO 製剤を糖鎖構造の違いを基に識別する ( 図 -1) ことから 糖鎖構造の異なるバイオシミラー ( 後発品 ) や第二世代となる dhepo の検出には困難な場合があるほか その手技に熟練度が求められること 検出工程に 3 日間を要すること 検体量を要する低感度であること などの課題がありました こうしたことから 簡便で 高精度 高感度な EPO 製剤の検出法の開発が期待されていました 研究の成果 1) 糖鎖構造の相違に影響を受けないヒト尿中 dhepo の検出法の開発ヒトに生来存在する内因性 EPO と dhepo のアミノ酸配列の違いに着目し 分子を構成する糖鎖の違いに分析が影響されず dhepo に特異的なペプチド (V 11 :TLQLHVDKAVSGLRSLTTLLRALGAQKE)

を 質量情報に基づき 液体クロマトグラフィータンデム質量分析法 (LC-MS/MS 法 ) を用いて極めて高精度に検出する手法を開発しました 2) 高感度分析尿中に存在する極微量 ( 検出下限値 :1.2 pg/ml) の dhepo を等電点電気泳動法に比べて 1/5 という少量の検体で検出します さらに 等電点電気泳動法では判別が困難な低濃度域におけるケースでさえも明瞭な識別が可能となります 3) 同定の信頼性質量分析を適用することで ドーピング検査において最も重要な同定の信頼性を飛躍的に向上しています 4) 検査日数の短縮化半日で検査工程が完了することができ 競技者立会い時の検査 (B 検体分析 ) においても迅速な検査が可能になります 5) 同様の検査への応用分子を構成する糖鎖の違いに分析が影響されないため バイオシミラーの検出にも有用な手法と考えられます また今後 他の EPO 製剤に対する質量分析法の開発をするための道筋を示しました 論文名 掲載誌 著者 所属 論文名ジャーナル名著者 (* 責任著者 ) 所属 Identification of the long-acting erythropoiesis-stimulating agent darbepoetin alfa in human urine by liquid chromatography tandem mass spectrometry Digital Object Identifier (DOI): 1.7/s216-13-6836-y Analytical and Bioanalytical Chemistry (Springer) Masato Okano*, Mitsuhiko Sato, Shinji Kageyama 三菱化学メディエンス株式会社アンチドーピングラボラトリー

関連図表 表 -1 ドーピング検査における EPO の検出数 (WADA 統計 ) Adverse Analytical Findings of EPOs (WADA statistics) Year Epoetins Darbepoetin alfa CERA 22* na 3-23 51 7-24 38-25 15 1-26 17 1-27 22 2-28 51 2 5 29 56 4 8 21 36 8 1 211 43 5 - * Olympic Games in Salt Lake Ref.) http://www.olympic.org/documents/reports/en/en_report_441.pdf http://www.wada-ama.org/en/science-medicine/anti-doping- Laboratories/Laboratory- Statistics/ 第一世代遺伝子組み換えエリ スロポエチン (Epoetin) 内因性エリスロポエチン ダルベポエチンアルファ (dhepo) + 図 -1 従来の等電点電気泳動による EPO の検出例 ( 等電点の違いにより識別 )

27-24 pre study12118a51.6.8 1. 1.2 1.4 1.6 1.8 2. 2.2 2.4 2.6 2.8 3. 3.2 3.4.6.8 1. 1.2 1.4 1.6 1.8 2. 2.2 2.4 2.6 2.8 3. 3.2 3.4 study12118a51 MRM of 1 Channels ES+ study12118a72 MRM of 1 Channels ES+ 2.32 64.9 > 187.2 (V11( b2-co)+) 2.32 64.9 > 187.2 (V11( b2-co)+) 2.2e5 2.54e5 1.63 2.24 2.42 2.24 2.42 1.87 2.1 2.5 2.732.86 3.11 1.62 2.2 2.63 2.74 1.87 2.85 3.1.6.8 1. 1.2 1.4 1.6 1.8 2. 2.2 2.4 2.6 2.8 3. 3.2 3.4.6.8 1. 1.2 1.4 1.6 1.8 2. 2.2 2.4 2.6 2.8 3. 3.2 3.4 study12118a51 MRM of 1 Channels ES+ study12118a72 MRM of 1 Channels ES+ 2.14 558.3 > 584.3 (V9 (b5)+) 2.9 558.3 > 584.3 (V9 (b5)+) 2.82e3 5.57e3 2.4 2.9 27-7 post 46hr55min MRM of 1 Channels ES+ study12118a72 64.9 > 72.5 (V11 (y26)4+ ) 3.48e4 2.63 MRM of 1 Channels ES+ 64.9 > 72.5 (V11 (y26)4+ ) 4.52e4 3.7 1.92 2. 2.8 1.68 1.68 2.28 1.85 1.87 2.8 2.28 2.38.6.8 1. 1.2 1.4 1.6 1.8 2. 2.2 2.4 2.6 2.8 3. 3.2 3.4.6.8 1. 1.2 1.4 1.6 1.8 2. 2.2 2.4 2.6 2.8 3. 3.2 3.4 study12118a51 MRM of 1 Channels ES+ study12118a72 MRM of 1 Channels ES+ 64.9 > 698.1 (V11 (y26-h2o)4+ ) 2.63 64.9 > 698.1 (V11 (y26-h2o)4+ ) 9.81e3 3.7 3.1 1.9e4 1.63 1.87 2.5 3.45 1.62 1.86 1.88 3.31.6.8 1. 1.2 1.4 1.6 1.8 2. 2.2 2.4 2.6 2.8 3. 3.2 3.4.6.8 1. 1.2 1.4 1.6 1.8 2. 2.2 2.4 2.6 2.8 3. 3.2 3.4 study12118a51 MRM of 1 Channels ES+ study12118a72 MRM of 1 Channels ES+ 64.9 > 67.4 (V11 (y25)4+ ) 2.63 64.9 > 67.4 (V11 (y25)4+ ) 1.73 1.92 3.9 6.47e3 1.65 5.7e3 1.66 1.89 1.93 1.82 1.96 3.5 2.58 1.15 1.98 2.7 3.6 3.15 V 11.6.8 1. 1.2 1.4 1.6 1.8 2. 2.2 2.4 2.6 2.8 3. 3.2 3.4.6.8 1. 1.2 1.4 1.6 1.8 2. 2.2 2.4 2.6 2.8 3. 3.2 3.4 study12118a51 MRM of 1 Channels ES+ study12118a72 MRM of 1 Channels ES+ 1.8 444.4 > 129.1 (IS (Hexarelin)) 1.8 444.4 > 129.1 (IS (Hexarelin)) 9.54e5 9.63e5 1.1 IS 1.6 2.15 2.7 1.68 1.97 2.23 2.5 2.63 2.87.6.8 1. 1.2 1.4 1.6 1.8 2. 2.2 2.4 2.6 2.8 3. 3.2 3.4 Time 1.1 IS 1.6 2.15 2.7 1.67 1.97 2.23 2.5 2.63 2.87.6.8 1. 1.2 1.4 1.6 1.8 2. 2.2 2.4 2.6 2.8 3. 3.2 3.4 Time dhepo 投与前の尿 ( 陰性 ) dhepo 投与後の尿 ( 陽性 ) 図 -2 今回開発した LC-MS/MS による尿中の dhepo の検出例

用語解説 エリスロポエチン (EPO) EPO は主に腎臓で産生される造血ホルモンです 165 個のアミノ酸 3 個の N 結合型糖鎖 1 個の O 結合型糖鎖 2 つのジスルフィッド結合からなる分子量約 3kDa の糖タンパクです 遺伝子組み換えエリスロポエチン repo(recombinant erythropoietin) 1989 年に米国アムジェン社が世界初の遺伝子組み換え EPO 製剤を開発しました 第一世代 EPO とも称され 腎性貧血治療薬としてエポエチンアルファ エポエチンベータ そのバイオシミラー (24 年の特許切れ以降の後発品 ) などがあります 日本国内でもエスポー エポジンなどが販売されています ダルベポエチンアルファ (dhepo) ヒトの EPO のアミノ酸配列を 5 箇所改変して 新たに 2 個の N 結合型糖鎖を付与することで作用の持続化を図った第二世代遺伝子組み換え EPO 製剤です 2 年に米国アムジェン社が開発した製剤であり 日本国内でもネスプと呼ばれる製品が販売されています 数年後に特許切れとなりバイオシミラー後続品の流通が予想されます ドーピング検査においては 22 年のソルトレイクシティーオリンピックではじめて陽性例が報告されました 等電点電気泳動法タンパク質を等電点の違いを利用して分離する手法です EPO のようなタンパク質は ph によって+もしくは-に帯電しますが ± ゼロになる時の ph が等電点です 分析の対象であるタンパク質をあらかじめ ph の勾配をつけたゲルの上にのせ 電場をかけるとタンパク質は電気的に中和される方向 すなわち等電点へと移動します 内因性 EPO と遺伝子組み換えで合成された EPO 製剤は糖鎖構造の違いから等電点が異なり 識別が可能となります 液体クロマトグラフィー質量分析法 (Liquid Chromatography/mass spectrometry) タンパク質などの物質を適当な溶媒 ( 水や油 ) に溶解し シリカゲルのような表面積の大きい物質 ( 固定相 ) へと流すと タンパク質は固定相と表面張力などで結合します そこに水と油の混合比を変化させた液体を流すと 表面張力が弱められ 結合力の弱い物質から順に外れてきます これが液体クロマトグラフィーという分離手法です 次に分離された物質を質量分析計という検出器で測定します タンパク質などの物質はそれぞれ固有の重さ ( 分子量 ) を有しています イオン化した物質を測定することで物質の分子構造に基づく質量情報を得ることができるため ドーピング検査や法医鑑定では最も信頼性の高い分析法のひとつです バイオシミラー遺伝子組み換え技術などのバイオテクノロジーを活用して製造されたバイオ医薬品の特許切れ後に 別の製造業者が開発した同等の薬理作用を有する後続のバイオ医薬品 製造過程における種々の違い ( 精製法や反応容器など ) により糖鎖構造などが完全に一致しないケースが多く EPO 製剤においてもさまざまな糖鎖構造を有するバイオシミラーがあります