愛知農総試研報 41:119-125(2009) Res.Bull.Aichi Agric.Res.Ctr.41:119-125(2009) 馬鈴薯由来残渣の給与が肉豚の発育と肉質に及ぼす影響 木村藤敬 大口秀司 山本るみ子 河野建夫 摘要 : 近年 パン屑 馬鈴薯等のでんぷん質飼料を給与することにより 筋肉内脂肪含量の多い豚肉が生産され 食味性に優れた豚肉ができることが報告されている 1,2,10) 今回 馬鈴薯に由来する残渣を肥育豚に給与した場合の発育 と体成績及び肉質に及ぼす影響について検討した 試験は 系統三元肉豚 48 頭を用い 1 対照区 ( 対照飼料を給与 ) 215% 区 ( 馬鈴薯由来残渣を15% と配合した飼料を給与 ) 330% 区 ( 馬鈴薯由来残渣を30% と配合した飼料を給与 ) 430%+リジン区 ( 馬鈴薯由来残渣を30% とリジンを添加した配合飼料を給与 ) の4 試験区を設け 各区 3 反復とし 体重 50~110kg 時までの間試験を行った 1. 発育成績は 試験区間で差は見られなかった 2. 枝肉成績は 背脂肪厚が30% 区が厚くなり 15% 区では薄くなる傾向が見られた 3. 肉質成績は 筋肉内脂肪含量が30% 区で他の区より有意に多かった (P<0.05) 背脂肪外層の融点は 30% 区及び30%+リジン区で対照区より 有意に低かった (P<0.05) また 背脂肪内層の融点も30%+リジン区で対照区より 有意に低かった (P<0.05) 4. 焼肉による食味官能検査は 30% 区の豚肉は 対照区より有意に柔らかさ (P<0.05) 多汁性 うま味及び総合評価 ( 以上 P<0.01) でおいしいと評価された 以上のことから 馬鈴薯由来残渣を配合することにより 筋肉内脂肪含量が多く 食味に優れた高品質豚肉の生産が可能であることが示唆された キーワード : 肉豚 馬鈴薯由来残渣 発育成績 枝肉成績 肉質成績 筋肉内脂肪含量 背脂肪融点 Effect of Diet Including Potto By-product on Growing Performnce, Crcss Chrcteristics nd Met Qulity in Growing-finishing Pig. KIMURA Fujitk, OHGUCHI Hideshi, YAMAMOTO Rumiko nd KAWANO Tteo Astrct: In recent yers,enriched strchness of redcrums nd diet including potto yproduct(pbp) produce pork of more Intrmusculr ft content (IFC) nd pltility. To clrify the effect on growing performnce, crcss chrcteristics nd met qulity, growing-finishing pigs were fed PBP. Forty-eight LW D crossred pigs weighing pproximtely 50kg were divided into four groups nd fed one of the four diets s follows. As control diet, corn-soyen mel sed diet met ll the mcro nd micro nutritious requirements ws used. As experimentl diets, 15% or 30% of the control diet replced with PBP nd 30% of the control diet replced with PBP nd dded lysine ws rrnged. All the pigs were slughtered t 110kg of ody weight nd exmined those crcss chrcteristics nd met qulity. 1. No significnce ws oserved in growing performnce. 2. The ckft thickness of pigs fed 30% PBP diet ws higher thn tht of control. On the contrry, the ckft thickness of pigs fed 15% PBP diet ws lower thn tht of control. 3. IFC in longissimus dorsi muscle of pigs fed the diet contining 30% PBP ws significntly (P<0.05) higher thn tht of control group. Outer ckft melting point of pigs fed the diet contining 30% PBP were significntly (P<0.05) lower thn tht of control group. Furthermore, outer nd inner ckft melting point of pigs fed 30% PBP dded lysine diet ws significntly (P<0.05) lower thn tht of control group. 4. The pltility test ws conducted. Tenderness of the pork fed 30% PBP diet ws significntly (P<0.05) higher thn tht of control. Also, succulence, pltility, nd comprehensive evlution of the pork fed 30% PBP diet were significntly (P<0.01) higher thn tht of control. These results suggest tht pigs fed the diet including PBP get more intrmusculr ft content nd pltility. Key Words: Growing-finishing pig, Potto y-product, Growing performnce, Crcss chrcteristics, Intrmusculr ft content, Melting point of ckft 畜産研究部 (2009.9.24 受理 )
木村 大口 山本 河野 : 馬鈴薯由来残渣の給与が肉豚の発育と肉質に及ぼす影響 120 緒 言 食品資源の再生利用等の促進に関する法律 ( 平成 12 年法律第 116 号 : 略称 食品リサイクル法 ) の施行により 食品工場より排出される日切れ品 在庫調整品等の食品廃棄物は 食品循環資源として飼料等に有効利用することが求められている また このような資源を有効活用することは 食の大切さを認識したり 地球温暖化を防ぐ循環型社会を構築するという観点に加え 飼料自給率を向上させる大切な課題となっている 最近海外からのチルドでの豚肉の輸入が増加し 国産豚肉と競合するようになりつつある このため 豚肉生産の低コスト化を一層推進するとともに 豚肉の高品質化が重要と考えられる 近年 食品残渣の一つであるパン屑や馬鈴薯を給与することで 筋肉内脂肪含量の多い豚肉生産が可能であることが明らかとなってきた これは 必須アミノ酸の一つであるリジンの含量が 低い飼料を給与する ことで 筋肉内脂肪合成が促進されるため筋肉内脂肪含量が多くなると考えられている 1,2,10) 今回 馬鈴薯に由来する残渣を肥育豚に給与し 発育及び肉質に及ぼす影響について検討したので報告する 材料及び方法 1 供試豚供試豚は愛知県で系統造成されたアイリスL2の雌にアイリスW2の雄を交配して生産された1 母豚 F LWに アイリスナガラDを交配して2008 年 8 月から9 月に生産された系統三元交雑種 LWD48 頭 ( 雌 24 頭 去勢 24 頭 ) を用いた 腹 体重 性別を考慮し 雌 2 頭 去勢 2 頭の計 4 頭を1 群とし 4 区 3 反復設けた 2 試験区分給与した飼料の組成及び成分値を表 1 に示した 対照区に給与する対照飼料は トウモロコシ 大豆粕主体の飼料で 日本飼養標準 (2005) を満たすように設計した 試験区に給与する試験飼料は 対照飼料の重量比それぞれ 15% 及び 30% 量を馬鈴薯由来残渣で代替し 不足するアミノ酸 (30% 区で リジンは除く ) ミネラル及びビタミンを日本飼養標準 (2005) を満たすよう 表 1 給与飼料の組成及び成分値 肥育前期 (50~70kg) 対照区 15% 区 30% 区 30%+ リシ ン区 飼養標準 (2005) 二種混 80.93 対 大豆粕 16.64 照 塩酸リシ ン 0.08 飼 食塩 0.25 84.50 68.90 68.60 料 第 3リンカル 0.75 炭酸カルシウム 0.95 フ レミックス 0.40 馬鈴薯残さ 15.00 30.00 30.00 添 第 3リンカル 0.249 0.500 0.445 炭酸カルシウム 0.100 0.118 0.264 加 食塩 0.039 0.078 0.078 フ レミックス 0.062 0.124 0.126 飼 塩酸リシ ン 0.050-0.207 DL-メチオニン - 0.150 0.150 料 L-トレオニン - 0.130 0.130 合計 100.00 100.00 100.00 100.00 CP(%) 15.08(104) 13.41(92) 11.78(81) 11.94(82) TDN(%) 77.26(103) 79.17(106) 80.93(108) 80.90(10 DE(Mcl/kg) 3.41(103) 3.48(105) 3.55(108) 3.55(10 栄 EE(%) 3.38 3.98 4.57 4.56 養 C(%) 0.66(120) 0.67(122) 0.64(116) 0.67(122) 成 NPP(%) 0.28(122) 0.28(122) 0.28(122) 0.28(122) 分 Lys(%) 0.79(110) 0.74(103) 0.61(85) 0.81(112) 値 Met+Cys(%) 0.54(123) 0.47(106) 0.49(111) 0.49(11 Thr(%) 0.57(121) 0.51(106) 0.53(113) 0.53(113) Trp(%) 0.17(121) 0.16(114) 0.14(100) 0.14(100) リノール酸 (%) 1.60 1.62 1.63 1.63
121 愛知県農業総合試験場研究報告第 41 号 肥育後期 (70~110kg) 対照区 15% 区 30% 区 30%+ リシ ン区 飼養標準 (2005) 二種混 84.48 大豆粕 10.95 脱脂米ヌカ 2.42 対 コーンク ルテンフィート 1.80 照 塩酸リシ ン 0.01 84.46 69.20 69.05 飼 食塩 0.25 料 第 3リンカル 0.49 炭酸カルシウム 1.00 フ レミックス 0.40 馬鈴薯残さ 15.00 30.00 30.00 添 第 3リンカル 0.247 0.479 0.470 加 炭酸カルシウム 0.152 0.141 0.149 飼 食塩 0.039 0.057 0.057 料 フ レミックス 0.062 0.123 0.124 塩酸リシ ン 0.040-0.150 L-トレオニン - - - 合計 100.00 100.00 100.00 100.00 CP(%) 13.14(101) 11.74( 90) 10.30( 79) 10.42( 80 TDN(%) 77.30(103) 79.07(105) 81.00(108) 81.02(1 DE(Mcl/kg) 3.41(103) 3.48(105) 3.55(108) 3.55( 栄 EE(%) 3.49 4.07 4.66 4.65 養 C(%) 0.60(120) 0.63(126) 0.60(120) 0.60(120 成 NPP(%) 0.24(120) 0.25(125) 0.25(125) 0.25(125 分 Lys(%) 0.61(109) 0.58(104) 0.48(86) 0.60(107 値 Met+Cys(%) 0.49(144) 0.43(126) 0.37(109) 0.37(1 Thr(%) 0.49(136) 0.44(122) 0.39(108) 0.38(106 Trp(%) 0.14(127) 0.13(118) 0.12(109) 0.12(109 リノール酸 (%) 1.63 1.64 1.65 1.65 注 ) 二種混は トウモロコシ98%+ 魚粉 2% の混合飼料 ( ) 内は 充足率を示す に添加した なお 供試した馬鈴薯由来残渣の内容は 生馬鈴薯 7: ポテトチップス 1: コーンスターチ 2 を混合し 火力乾燥させたものを使用した 試験区は 1 対照区 ( 対照飼料を給与 ) 215% 区 ( 馬 ( 一部スノコで有効床面積 6.24 m2 ) に 4 頭を 1 群として 収容した 各区とも不断給餌とし 飲水はニップルドリンカーによる自由飲水とした 4 調査項目発育成績は体重 飼料摂取量を毎週 1 回調査し 1 日平均増体量 飼料摂取量及び飼料要求率を算出した と体成績は試験終了後 全頭と殺し 24 時間冷蔵庫内で冷蔵後 豚産肉能力検定のと体測定要領 3) に基づい 鈴薯由来残渣を15% と配合した飼料を給与 ) 330% 区 ( 馬て と体長 背腰長 Ⅱ 背脂肪厚( 肩 背 腰 ) ロー 鈴薯由来残渣を30% と配合した飼料を給与 ) 430%+リス断面積等を調査した また 枝肉の評価は 社団法 ジン区 ( 馬鈴薯由来残渣を30% とリジンを添加した配合飼料を給与 ) の4 区を設け 各区を3 反復とした 人日本食肉格付協会の豚枝肉取引規格に従い格付けを行った 試験は各区の平均体重 50kg 時点で開始し 70kgで肥肉質は第 5 胸椎及び第 6 胸椎の2 胸椎分の胸最長筋を用 育前期から肥育後期飼料に切り替え 110kgに到達するい 加圧保水力 伸展率 加熱損失 圧搾肉汁率及び まで給与した 試験期間は 2008 年 12 月上旬から2009 ドリップロスについて 豚肉の肉質改善に関する研究 年 2 月下旬であった 4) 実施要領により調査した 筋肉内脂肪含量は 牛肉の 品質評価のための理化学分析マニュアル 11) に基づき 3 飼養管理方法試験豚舎は開放式豚舎で コンクリート平床式豚房 ソックスレー法により測定した 肉色は第 4 第 5 胸椎間の胸最長筋を畜試式肉色標準模型 (PCS) 及び色差計 により L 値 ( 明度 ) 値 ( 赤色度 ) 値 ( 黄色度 ) を測定した また 脂肪融点は背脂肪測定部位の皮下外層 内層及び腎脂肪を採取し 上昇融点法により測定した 食味官能検査は対照区及び 30% 区の豚肉 ( ロース ) を用い 焼肉により かおり 柔らかさ 多汁性 うま
木村 大口 山本 河野 : 馬鈴薯由来残渣の給与が肉豚の発育と肉質に及ぼす影響 122 味及び総合評価の各項目について評点法 5) で実施した 官能調査票を表 2 に示した 5 統計処理統計処理は一元配置法による分散分析で行い 試験区間の差の検定は Tukey の多重検定により行った 表 2 食味官能調査票官能検査用紙 ( 焼肉 ) 1. 性別 年齢の欄に をつけて下さい 男 女 20 代 30 代 40 代 50 代 60 代 2. 脂こい物は好きですか?5 段階で評価し 該当するところに をつけてください 淡泊やや淡泊ふつうやや脂こい脂こい 3.A B の 2 つの試料について ご自身の食経験に基づき 5 段階で評価し 該当するところに をつけて下さい A かおり 柔らかさ 多汁性 うま味 総合評価 1 点 2 点 3 点 4 点 5 点悪いやや悪いふつうやや良い良い かたいややかたいふつうやや柔らかい柔らかい ハ サハ サややハ サハ サふつうややシ ューシーシ ューシー 少ないやや少ないふつうやや多い多い まずいややまずいふつうややおいしいおいしい B かおり柔らかさ多汁性うま味総合評価 悪い やや悪い ふつう やや良い 良い かたい ややかたい ふつう やや柔らかい 柔らかい ハ サハ サ ややハ サハ サ ふつう ややシ ューシー シ ューシー 少ない やや少ない ふつう やや多い 多い まずい ややまずい ふつう ややおいしい おいしい ご協力ありがとうございました 試験結果 た なお 格落ち理由の多くは 厚脂によるものであった 1 発育成績 3 肉質成績発育成績を表 3に示した 110kg 到達日齢 1 日平均増体重 飼料摂取量及び飼料要求率は有意な差は見られなかった 2 枝肉成績枝肉成績を表 4 に示した 枝肉重量 と体長 背腰長 Ⅱ 及びロース断面積はいずれも有意な差は見られなかった 背脂肪厚はいずれの部位も有意な差はなかったが 馬鈴薯由来残渣が 30% 配合された区が厚くなる傾向が見られた 一方 15% 区では 背脂肪は薄くなる傾向が見られ それに伴い 格付は上がる傾向が見られ 肉質成績を表 5 に示した 加熱損失 圧搾肉汁率 伸展率及びドリップロスについてはいずれも有意な差は見られなかった 筋肉内脂肪含量については 30% 区で他の区より有意に多かった (P<0.05) 背脂肪外層の融点が 30% 区及び 30%+ リジン区で対照区より 有意に低かった (P<0.05) また 背脂肪内層の融点も 30%+ リジン区で対照区より 有意に低かった (P<0.05) 腎脂肪は 有意な差は見られなかった 肉色は 有意な差は見られなかったが L 値が 30% 区で高くなる傾向が見られた
123 愛知県農業総合試験場研究報告第 41 号 表 3 発育成績 (50~110Kg) 区分対照区 15% 区 30% 区 30%+ リシ ン区差の検定 開始時体重 (Kg) 53.1±3.3 51.1±2.9 52.1±3.0 50.9±3.7 開始日齢 ( 日 ) 90.1±4.6 91.0±3.8 90.8±3.1 88.3±5.1 終了時体重 (Kg) 114.2±2.4 111.9±2.8 113.0±2.7 111.9±2.1 110Kg 到達日齢 ( 日 ) 145.4±5.4 147.5±6.1 146.8±7.0 147.4±8. 1 日平均増体重 (g) 1022.0±0.2 1063.7±0.1 1061.7±0.1 1008.4±0. 飼料摂取量 (Kg/ 日 ) 3.39±0.16 3.33±0.13 3.51±0.22 3.26±0.19 飼料要求率 3.23±0.16 3.11±0.18 3.25±0.21 3.19±0.17 表 4 枝肉成績 区分対照区 15% 区 30% 区 30%+ リシ ン区差の検定 と殺時体重 (Kg) 114.2±2.4 111.9±2.8 113.0±2.7 111.9±2.1 枝肉重量 (Kg) 75.4±2.1 74.3±1.9 75.2±2.2 75.0±2.4 と体歩留 (%) 66.0±0.8 66.4±1.1 66.3±1.4 67.0±1.3 と体長 ( cm ) 94.3±2.0 94.4±2.8 93.7±1.7 93.5±1.6 N 背腰長 Ⅱ( cm ) 69.2±2.5 69.0±3.1 68.4±2.1 68.5±1.8 N ロース断面積 (cm2) 24.4±4.0 25.3±3.0 21.5±3.8 24.7±4.7 背脂肪厚肩 ( cm ) 3.8±0.4 3.7±0.3 4.0±0.3 4.0±0.3 NS 背 ( cm ) 2.1±0.4 1.9±0.4 2.2±0.3 2.2±0.3 NS 腰 ( cm ) 3.0±0.4 2.9±0.3 3.2±0.4 3.1±0.3 NS 3 部位平均 ( cm ) 3.0±0.4 2.8±0.3 3.1±0.3 3.1±0.2 NS 格付 1.8±0.8 1.4±0.5 1.9±0.8 1.6±0.5 NS 注 ) 格付 : 上 1 中 2 並 3 等外 4 表 5 肉質成績 区分対照区 15% 区 30% 区 30%+ リシ ン区差の検定 筋肉内脂肪含量 (%) 3.9±0,8 4.3±0.75.9±0.9 4.0±0.8 加熱損失 (%) 28.4±3.5 28.6±3.2 28.4±1.6 30.2±1.2 圧搾肉汁率 (%) 34.4±4.6 36.2±6.0 36.1±5.0 37.4±8.0 伸展率 (cm/g) 33.7±3.1 32.5±4.3 33.0±2.5 33.3±1.0 ドリップロス (%) 2.6±1.2 2.9±0.5 3.1±1.0 3.0±1.1 背脂肪融点 ( ) 外層脂肪 29.8±2.2 28.2±1.2 27.9±1.6 27.7±1.2 内層脂肪 38.1±2.6 35.6±2.7 34.7±4.2 33.5±2.8 腎脂肪 41.8±1.4 41.6±1.1 40.4±1.9 40.1±1.2 肉色 PCS 4.3±0.4 4.4±0.6 4.0±0.4 4.3±0.4 L 値 47.0±1.8 48.0±2.1 50.6±4.1 50.0±4.0 値 22.9±1.7 23.1±1.1 22.1±2.3 22.2±1.3 値 6.3±1.1 6.6±1.0 6.6±0.7 7.3±1.9 異符号間に有意差あり (P<0.05)
木村 大口 山本 河野 : 馬鈴薯由来残渣の給与が肉豚の発育と肉質に及ぼす影響 124 4 食味官能検査成績パネルの年齢構成を表 6 に 官能検査成績を表 7 に の順であった また 性別では男性 37 名 女性 19 名であった 30% 区の豚肉は 対照区より有意に 柔らかさ 示した パネルは56 名で 年齢構成は40 代 25 名 (45%) (P<0.05) 多汁性 うま味及び総合評価( 以上 P<0.01) と最も多く 次いで50 代 12 名 (21%) 30 代 9 名 (16%) でおいしいと評価された 表 6 パネルの構成 20 才代 30 才代 40 才代 50 才代 60 才代計 男 1 5 17 10 4 37 女 2 4 8 2 3 19 計 3 9 25 12 7 56 表 7 焼肉による食味官能検査成績 区分かおり柔らかさ多汁性うま味総合評価 対照区 3.18±0.73 3.32±0.87 3.04±0.49 3.27±0.49 3 30% 区 3.27±0.67 3.64±1.11 3.59±0.88 3.70±0.72 差の検定 NS :P<0.05 :P<0.01 考 察 が示唆され 今後例数を重ねて検討する必要があると発育試験成績では 110kg 到達日齢 1 日平均増体重 飼料摂取量及び飼料要求率に有意な差は見られなかった 一般的に 肥育豚の増体は 飼料中のリジン含量が少なくなると増体が劣り 結果として出荷日齢が延びると報告されている 2) 一方 最近では 低リジン飼 料を用いても増体に影響しないという報告もある 6,7) 今回の結果は 後者であったが 本試験は12 月 ~2 月下旬の1 回の試験であり その他の季節や回数を重ねて総合的に検討する必要があると思われた 枝肉成績では 背脂肪厚はいずれの部位も有意な差 能性が考えられた また 15% 区で薄くなる傾向も見られたが 15% の配合では米ぬか油の影響を受けないこと 思われた 肉質成績は 筋肉内脂肪含量が 30% 区で他の区より有意に多かった 前述のように 低リジン飼料を給与することにより筋肉内脂肪が蓄積されることが証明されており 今回の結果からも明らかになった 背脂肪外層の融点が 30% 区及び 30%+ リジン区で対照区より 有意に低かったが これは ポテトチップス内の脂肪酸組成中にリノール酸やリノレン酸の多価不飽和脂肪酸が多く含まれているために融点が低くなっ たと推察された また 背脂肪内層の融点も30%+リジはなかったが 馬鈴薯由来残渣が15% 区で薄く 30% 区ン区で対照区より 有意に低かったが これも同様のが厚くなる傾向が見られた これまで 肥育豚を低リ理由により融点が低くなったと考えられた 一般的に ジン飼料で飼育すると 筋肉内脂肪含量の増加に伴う多価不飽和脂肪酸が多い飼料を給与すると脂肪の融点 背脂肪厚の増大が懸念されていた 2) 一方 Ktsumt が低くなり 軟脂になりやすいと言われている 9) 軟脂ら 8) はエネルギー及びタンパク質含量を同じにした飼料は通常 触感によって判断されるため主観的であり を用いて リジン含量のみの影響を調査し 低リジン客観的で正確なものではないが 今回は軟脂ではなかによって筋肉内脂肪は増加するが 背脂肪厚に有意なったため 多価不飽和脂肪酸が軟脂に至るほど含まれ差は認められないと報告している 今回の結果は 30% ていなかったと考えられた 区で厚くなる傾向が見られたが これは リジン含量肉色は 筋肉内脂肪含量が増加するとL 値が高くなる 10) によるものではなく 馬鈴薯由来残渣中のポテトチッという報告があるが 今回の試験でも 同様の傾向プスに使用されている 米ぬか油が影響を及ぼした可を示した
125 愛知県農業総合試験場研究報告第 41 号 食味官能検査では 30% 区の豚肉は 対照区より 柔らかく ジューシーで うま味が強く 総合しておいしいと評価された これまで 筋肉内脂肪含量が増加すると 食味官能検査における柔らかさ 風味 多汁性といった肉の食味が向上するといわれている 10) ことから 今回の 30% 区の食味も筋肉内脂肪含量の高いことが好ましい効果を及ぼしたものと考えられた 以上のことから 馬鈴薯由来残渣を利用することにより筋肉内脂肪含量が高く 背脂肪の融点は低いが軟脂ではない等の特徴を持つ 食味に優れる高品質豚肉の生産が可能であることが示唆された 221-254(2002). 2. 岩本英治, 設楽修, 入江正和. パン添加飼料給与が ブタの増体量および肉質に及ぼす影響. 日畜会報. 76, 15-22(2006) 3. 社団法人日本種豚登録協会. 登録関係諸規定.p.59-83(2001) 4. 農林水産省畜産試験場加工第 2 研究室. 豚肉の肉質 改善に関する研究実施要領.(1990) 5. 古川秀子. おいしさを測る食品官能検査の実際. 幸書房. 東京.p.29-49(1985) 6. 市川隆久, 西康裕. 飼養成績に影響させず低リジン飼料給与で豚の筋肉内脂肪含量を高める. 三重県成果情報. 41, 96-97(2006) 7. 中村嘉之, 藤野幸宏. パン残さ給与による霜降り豚肉生産技術の開発. 埼玉県成果情報. 23,60-61(200 8. Ktsumt, M., Koyshi, S., Mit E. nd Kji, Y. Reduced intke o epromotes ccumultion Longissimusdor of ft in muscle of finishing gilts. Animl 引用文献 76, 237-244(2005) 9. 全国食品残さ飼料化行動会議社団法人配合飼料供 1. 入江正和. 豚肉質の評価表. 日本養豚学会報. 39, 給安定機構. 食品残さの飼料化 ( エコフィード ) をめざして - 飼料化マニュアル ( 平成 19 年度版 )p.113(2005 10. 嶋澤光一, 本多昭幸, 竹野大志, 西川徹, 尾野喜孝. バレイショ混合サイレージ給与が肥育豚の発育および肉質に及ぼす影響. 日畜会報 78, 355-362(200 11. 畜産技術協会. 牛肉の品質評価のための理化学分析マニュアル Ver.2. 畜産技術協会. 東京.p3-12(20