地域に根差す薬剤師 ~ 処方箋監査と最新の薬物治療に向き合う ~ 第 1 回 : 疾患別シリーズ DOAC の適正使用 2017.4.22 千葉大学医学部附属病院薬剤部山口洪樹
第 102 回薬剤師国家試験 問 324( 実務 ) 処方 2 に含まれるダビガトランエトキシラートによる重篤な副作用である出血の回避や投与量調節のために考慮すべき検査項目は何か? 1. 血清クレアチニン 2.AST 3. 白血球数 4.PT-INR 5. 脳性 Na 利尿ペプチド値
2011 年プラザキサ発売 納豆食べて OK! PT-INR モニタリング不要!
経口抗凝固薬の歴史 2011 年 2012 年 2013 年 2014 年 2015 年 プラザキサ ( 心房細動 ) リクシアナ ( 下肢整形外科術後 ) イグザレルト ( 心房細動 ) エリキュース ( 心房細動 ) リクシアナ ( 静脈血栓症 心房細動 ) イグザレルト ( 静脈血栓症 ) エリキュース ( 静脈血栓症 )
2015 年 6 月国際血栓止血学会 千葉大学病院 NOAC: ではなく DOAC: Novel Oral Anticoagulants Direct Oral Anticoagulants
市販後 消化管出血等による死亡例が報告されたため 安全性速報 ( ブルーレター ) が発出された
ブルーレター根拠症例 (5 例 ) 性別年齢 1 日投与量 発現までの日数 身長 (cm) 体重 (kg) 血清 Cre (mg/dl) egfr/ eccr *1 女性 80 歳代 220mg 12 日 154 38.9 2.21 *2 12.4 - 女性 100 歳代 220mg 150mg 不明不明不明 1.7 *3 21.3 - 抗血栓薬の併用 男性 70 歳代 220mg 5 日不明不明 1.2 *2 46.9 アスピリン 女性 80 歳代 220mg 11 日不明不明 1.15 *2 34.9 アスピリン 女性 80 歳代 220mg 12 日 160 50 1.19 *2 29.7 リマプロスト 禁忌 透析患者を含む高度の腎障害 (Ccr30mL/min 未満 ) の患者 *1: それぞれ 70,80,100 歳として計算 体重データある場合はコッククロフト式で算出 *2: 投与前の血清クレアチニン値 *3: 投与後の血清クレアチニン値
高度腎障害患者に対する DOAC 投与データ NOAC 禁忌腎排泄率 高度腎障害患者の投与データ 1 AUC t1/2 Cmax プラザキサ ( ダビガトラン ) Ccr<30 85% 6.31 倍 2.03 倍 2.11 倍 イグザレルト ( リバーロキサバン ) Ccr<15 33% 1.64 倍 1.14 倍 1.35 倍 エリキュース ( アピキサバン ) Ccr<15 27% 1.38 倍 1.11 倍 1.04 倍 リクシアナ ( エドキサバン ) Ccr<15 48.6% 1.88 倍 1.97 倍 1.08 倍 1: 正常腎機能患者データとの比較データは各薬剤のインタビューフォームおよび承認審査報告書をもとに算出
DOAC の適正使用について
DOAC の作用 強 出血 モニタリングできない 適正 作用 弱 血栓 投与設計が とても重要
添付文書上の用法用量 DOAC 通常用量減量基準低用量 プラザキサ 150mg を 1 日 2 回 Ccr50 未満 ( 考慮 ) P 糖蛋白阻害剤 ( 考慮 ) 出血リスク高い (70 歳以上 消化管出血の既往 )( 考慮 ) 110mg を 1 日 2 回 イグザレルト 15mg を 1 日 1 回 Ccr50 未満クラリスロマイシン エリスロマイシン フルコナゾール 10mg を 1 日 1 回 エリキュース 5mg を 1 日 2 回 80 歳以上 クレアチニン 1.5 以上 体重 60 kg以下のうち 2 項目以上満たすイトラコナゾール ボリコナゾール リトナビル 2.5mg を 1 日 2 回 リクシアナ 60mg を 1 日 1 回 60 kg未満は 30 mgを 1 日 1 回 Ccr50 未満 P 糖蛋白阻害剤 30mg を 1 日 1 回
症例 1 70 代女性内科 イグザレルト錠 15mg 分 1 朝 ( 食後 30 分 ) 1T 7 日分
添付文書上の用法用量 DOAC 通常用量減量基準低用量 プラザキサ 150mg を 1 日 2 回 Ccr50 未満 ( 考慮 ) P 糖蛋白阻害剤 ( 考慮 ) 出血リスク高い (70 歳以上 消化管出血の既往 )( 考慮 ) 110mg を 1 日 2 回 イグザレルト 15mg を 1 日 1 回 Ccr50 未満クラリスロマイシン エリスロマイシン フルコナゾール 10mg を 1 日 1 回 エリキュース 5mg を 1 日 2 回 80 歳以上 クレアチニン 1.5 以上 体重 60 kg以下のうち 2 項目以上満たすイトラコナゾール ボリコナゾール リトナビル 2.5mg を 1 日 2 回 リクシアナ 60mg を 1 日 1 回 60 kg未満は 30 mgを 1 日 1 回 Ccr50 未満 P 糖蛋白阻害剤 30mg を 1 日 1 回
症例 1 70 代女性内科 イグザレルト錠 15mg 分 1 朝 ( 食後 30 分 ) 1T 7 日分 相互作用特に問題なし 腎機能クレアチニン 0.86 egfrcre/1.73m2:49.5 (150cm 48kg 1.4m 2 ) egfrcre/body:40.3ml/min Ccr(CG 式 ):44.8mL/min
イグザレルト錠 腎障害時における血中濃度推移 イグザレルト錠インタビューフォームより 中等度腎障害 (Ccr30-49) で AUC1.5 倍 臨床試験も Ccr50 未満は 10mg に減量されている
症例 1 70 代女性内科 イグザレルト錠 15mg 分 1 朝 ( 食後 30 分 ) 1T 7 日分 相互作用特に問題なし 腎機能クレアチニン 0.86 egfrcre/1.73m2:49.5 (150cm 48kg 1.4m 2 ) egfrcre/body:40.3ml/min Ccr(CG 式 ):44.8mL/min イグザレルト 15mg は過量 10 mg 1 日 1 回への減量を提案 処方変更となった
症例 2 50 代男性内科 プラザキサカプセル 75mg アロプリノール錠 100 mgカルベジロール錠 2.5 mg分 2 朝 夕 ( 食後 30 分 ) ロサルタン K 錠 25mg アミオダロン塩酸塩速崩錠 100 mg分 1 朝 ( 食後 30 分 ) フロセミド錠 20mg 分 2 朝 昼 ( 食後 30 分 ) 4C 2T 4T 7 日分 1T 1T 7 日分 2T 7 日分
添付文書上の用法用量 DOAC 通常用量減量基準低用量 プラザキサ 150mg を 1 日 2 回 Ccr50 未満 ( 考慮 ) P 糖蛋白阻害剤 ( 考慮 ) 出血リスク高い (70 歳以上 消化管出血の既往 )( 考慮 ) 110mg を 1 日 2 回 イグザレルト 15mg を 1 日 1 回 Ccr50 未満クラリスロマイシン エリスロマイシン フルコナゾール 10mg を 1 日 1 回 エリキュース 5mg を 1 日 2 回 80 歳以上 クレアチニン 1.5 以上 体重 60 kg以下のうち 2 項目以上満たすイトラコナゾール ボリコナゾール リトナビル 2.5mg を 1 日 2 回 リクシアナ 60mg を 1 日 1 回 60 kg未満は 30 mgを 1 日 1 回 Ccr50 未満 P 糖蛋白阻害剤 30mg を 1 日 1 回
プラザキサ相互作用データ 併用薬 AUC Cmax 添付文書指示 ケトコナゾール 253% 249% 禁忌 イトラコナゾール - - 禁忌 ベラパミル ( 単回 ) 投与 1 時間後 243% 279% 3 日間はプラザキサの 2 時間以上あとに服用 (AUC118% Cmax112%) ベラパミル (4 日間以降 ) 投与 1 時間後 154% 163% 110mg1 日 2 回を考慮 アミオダロン 158% 150% 110mg1 日 2 回を考慮 シクロスポリン - - 110mg1 日 2 回を考慮 タクロリムス - - 110mg1 日 2 回を考慮 ネルフィナビル - - 110mg1 日 2 回を考慮 サキナビル - - 110mg1 日 2 回を考慮 リトナビル - - 110mg1 日 2 回を考慮 プラザキサインタビューフォームおよび承認審査資料から作成
症例 2 50 代男性内科 千葉大学病院 プラザキサカプセル 75mg アロプリノール錠 100 mgカルベジロール錠 2.5 mg分 2 朝 夕 ( 食後 30 分 ) ロサルタン K 錠 25mg アミオダロン塩酸塩速崩錠 100 mg分 1 朝 ( 食後 30 分 ) フロセミド錠 20mg 分 2 朝 昼 ( 食後 30 分 ) 4C 2T 4T 7 日分 1T 1T 7 日分 2T 7 日分 腎機能 問題なし相互作用 アミオダロン内服中 プラザキサ 150mg 2 回は過量 110 mg 1 日 2 回への減量を提案 処方変更となった
症例 3 50 代男性内科 プラザキサカプセル 110mg 分 2 朝 夕 ( 食後 30 分 ) ベラパミル塩酸塩錠 40mg 分 3 朝 昼 夕 ( 食後 30 分 ) 2C 7 日分 3T 7 日分
プラザキサ相互作用データ 併用薬 AUC Cmax 添付文書指示 ケトコナゾール 253% 249% 禁忌 イトラコナゾール - - 禁忌 ベラパミル ( 単回 ) 投与 1 時間後 243% 279% 3 日間はプラザキサの 2 時間以上あとに服用 (AUC118% Cmax112%) ベラパミル (4 日間以降 ) 投与 1 時間後 154% 163% 110mg1 日 2 回を考慮 アミオダロン 158% 150% 110mg1 日 2 回を考慮 シクロスポリン - - 110mg1 日 2 回を考慮 タクロリムス - - 110mg1 日 2 回を考慮 ネルフィナビル - - 110mg1 日 2 回を考慮 サキナビル - - 110mg1 日 2 回を考慮 リトナビル - - 110mg1 日 2 回を考慮 プラザキサインタビューフォームおよび承認審査資料から作成
症例 3 60 代男性内科 プラザキサカプセル 110mg 分 2 朝 夕 ( 食後 30 分 ) ベラパミル塩酸塩錠 40mg 分 3 朝 昼 夕 ( 食後 30 分 ) 2C 7 日分 3T 7 日分 腎機能 問題なし相互作用 ベラパミル開始にともなう一時的な血中濃度上昇の可能性がある 医師と協議しリクシアナ 30mg へ変更となった
DOAC の適正使用のために 1 過量投与 禁忌の回避 腎機能 相互作用 体格等 安全性確保のための減量または薬剤変更を推奨
症例 4 70 代男性内科 イグザレルト錠 10mg 分 1 朝 ( 食後 30 分 ) 1T 7 日分
添付文書上の用法用量 DOAC 通常用量減量基準低用量 プラザキサ 150mg を 1 日 2 回 Ccr50 未満 ( 考慮 ) P 糖蛋白阻害剤 ( 考慮 ) 出血リスク高い (70 歳以上 消化管出血の既往 )( 考慮 ) 110mg を 1 日 2 回 イグザレルト 15mg を 1 日 1 回 Ccr50 未満クラリスロマイシン エリスロマイシン フルコナゾール 10mg を 1 日 1 回 エリキュース 5mg を 1 日 2 回 80 歳以上 クレアチニン 1.5 以上 体重 60 kg以下のうち 2 項目以上満たすイトラコナゾール ボリコナゾール リトナビル 2.5mg を 1 日 2 回 リクシアナ 60mg を 1 日 1 回 60 kg未満は 30 mgを 1 日 1 回 Ccr50 未満 P 糖蛋白阻害剤 30mg を 1 日 1 回
症例 4 70 代男性内科 イグザレルト錠 10mg 分 1 朝 ( 食後 30 分 ) 1T 7 日分 相互作用 問題なし腎機能 クレアチニン 0.88 egfrcre/1.73m2:71.8 (170cm 63kg 1.73m 2 ) egfrcre/body:65.7ml/min Ccr(CG 式 ):68.6mL/min イグザレルト 10mg 1 回は過小 15 mg 1 日 1 回への増量を提案 処方変更となった
DOAC の適正使用のために 2 過小投与の回避 腎機能 相互作用 体格等 有効性確保のための増量を推奨
DOAC の適正使用のために 3 服薬指導 モニタリング
出血時の対応 ( 大出血 ) 激しい頭痛 マヒろれつが回らない 喀血吐血 血尿 血便 ( 黒色便 赤い鮮血便 ) ( エリキュース適正使用ガイドより引用 ) 頭蓋内出血 消化管出血の可能性があるため速やかに受診
出血時の対応 ( 小出血 ) 鼻血のとき 怪我や打撲で出血したとき ( エリキュース適正使用ガイドより引用 ) 圧迫止血を行い 出血が気になる場合は医療機関へ連絡また 自己判断で休薬しない
症例 650 代男性 ( ワルファリン服用中 ) (g/dl) 12 10 8 6 4 2 0 10.1 10.6 10.8 9.2 ヘモグロビン値の推移 3 月 15 日 3 月 27 日 3 月 24 日 4 月 7 日 4 月 28 日 4 月 29 日 4 月 30 日 5 月 1 日 5 月 3 日
症例 650 代男性 ( ワルファリン服用中 ) (g/dl) 12 10 8 6 4 2 0 10.1 9.2 10.6 10.8 消化管出血のため緊急入院 ヘモグロビン値の推移 6.6 7.7 9.3 10 10.1 3 月 15 日 3 月 27 日 3 月 24 日 4 月 7 日 4 月 28 日 4 月 29 日 4 月 30 日 5 月 1 日 5 月 3 日
貧血の Grade 分類 (CTCAE ver4.0) Grade 定義 ヘモグロビン値 (g/dl) 1 軽症 : 治療を要さない基準値下限 ~10.0 2 中等症 : 非侵襲的治療を要する <10.0~8.0 3 重症 : 入院を要する 8.0 未満 or 輸血を要する 4 生命を脅かす 生命を脅かすor 緊急処置を要する 5 死亡
まとめ DOAC はモニタリング法が確立していないた め 投与設計が非常に重要 薬剤師は患者のリスクを考慮し 医師と協議した上で DOAC の用量調節または他の DOAC への変更を提案していく 副作用の重篤化回避のために 適切な患者指導 出血のモニタリングを行う
補足 :DOAC の投与量 ( 静脈血栓塞栓症 ) DOAC 高用量通常量低用量 プラザキサ イグザレルト エリキュース リクシアナ 15 mg 2 回 21 日間 10 mg 2 回 7 日間 なし 適応なし 15 mg 1 回 10 mg 1 回 ( 相互作用の場合 ) 5 mg 2 回 2.5 mg 2 回 ( 相互作用の場合 ) 60mg 1 回 60 kg未満は 30 mg 1 回 30 mg 1 回