33 原著論文敏捷性測定法 505 test の評価視点の検討 An agility evaluation method of the 505 test 岡本直輝 1) Naoki OKAMOTO 1) Abstract In this study, subjects were 90 ball-g

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1 33 原著論文敏捷性測定法 505 test の評価視点の検討 An agility evaluation method of the 505 test 岡本直輝 1) Naoki OKAMOTO 1) Abstract In this study, subjects were 90 ball-game players (basketball, rugby, and soccer). The 505 test was conducted to evaluate their agility. The aim of this study was to clarify what the test specifically evaluated, and investigate methods to utilize this test effectively. The time measured to run a course divided into 10 sections, the results of image analysis of running motions, and evaluation of the players by their coach were used as the study methods. Reproducibility was verified in the time to complete the 505 test. A significant correlation was noted in the time for the 505 test and each time for the deceleration, turning, and deceleration sections (P<0.01). In the 505 test, subjects gradually lowered their center of gravity and reduced their running speed in the deceleration section before turning, and, in the acceleration section after turning, they showed a tendency to accelerate by gradually raising their center of gravity. In the basketball and rugby groups, a significant correlation was noted between the time of the 505 test and evaluation by their coach (P<0.01); however, in the soccer group, no correlation was noted. From the above, the 505 test used in this study is considered to be appropriate to evaluate the turning ability and adjustability of the running speed before and after turning in basketball and rugby players. Keywords : 505test, agility, change-of-direction movement [Received July 26, 2013 ; Accepted September 19, 2014] 1. 緒言ゴール型の球技選手は, フィールド内でボールを敵選手と奪い合い, また敵選手をかわし敵陣に攻め込むなど敏捷性の要素を含んだ動作を頻繁に行っているこれら敏捷性を必要とする動作の多くはランニング中に行われており, 前方への直線的な動きのみならず, 後方や左右方向など様々な方向への動きが複合的に行われる場合が多い (Sayers 2000; Green et al., 2011) また敵選手から逃げる時や敵選手を追う時などは, ランニング中の急激な減速や加速, ストップなどのランニング速度を調整する能力が必要とされる近年のサッカー等のゲーム分析研究についてみると, Bloomfield et al., (2007) はイギリスのプレミアリーグのサッカー選手は 1 試合に 600 回 ~ 700 回の方向転換を行っていることから, 直線を速く走る能力ばかりでなく, 走る方向を素早く転換する能力も必要であると報告しているこのような動きを必要とする球技のランニングトレ-ニング法として, プライオメトリックスを用いた様々な方向へのダッシュや方向転換動作を組み込んだトレーニングなどが紹介され利用されている (Miller et al., 2006; William et al., 2007; Jovanovic et al., 2011) そこで球技選手のランニングトレ-ニングを評価する体力測定法についてみると,12 分間走, シャトルラン, および YOYO テスト (Bangsbo et al., 2008) など持久的要素を評価するものや,50m スプリント走,20m スプリント走,10m スプリント走など走速度を評価する測定法がある ( 日本体育協会,1989; 河野一郎, 1997) 特にランニングを伴う敏捷性の評価法についてみると Illinois, L-Run,T-test(Semenick, 1990) などをはじめアメリカの National Football League が行う,5 yard ダッシュし, 180 度方向転換後に 10 yard ダッシュし, また 180 度方向転換後に 5 yard をダッシュするという Pro agility などがある (Carling et al., 2009) オーストラリアでは, 主にラグビーをはじめ, サッカー, バスケットボールといった球技選手を対象に 505 test が用いられているこの 505 test は,15m の往復走におけるランニングタイムで選手を評価する方法であり,Australian Sports 1) 立命館大学スポ - ツ健康科学部 College of Sport and Health Science, Ritsumeikan University

2 34 岡本 Commission(2000) は, 簡易に用いることができる敏捷性評価法として推奨している Pro-agility や 505 test は, ランニング動作中に 180 度の方向転換を行うもので, ランニング速度を調整しながら方向転換する能力の評価に焦点をあてた測定方法であるこの 505 test は, 特にゴ-ル型競技の方向転換を含む移動能力を評価する方法として用いられており Illinois をはじめとする多くの敏捷性テストと高い相関関係を示すと報告されている (Stewart et al., 2012) しかし測定結果は走行や方向転換を含んだ試行全体の時間を示しており, 助走, 加速, 減速, 方向転換, 加速といったどの区間を反映しているのかは不明であるさらに, 505 test は 3 秒以内で動作が終了する測定法であることから,180 度の方向転換動作時のステップが重要な動作になると考えるが, この動作の特徴については不明であるまた, 指導者らは指導現場で敏捷性がある素早いといった視点で選手評価を行っているが, 実際に 505 test 結果と選手の敏捷性に対する指導者の主観的な評価との関連性が不明確であるすなわち上記に示したような 505 test の評価視点はどのように成り立っているのかを明らかにすることによって,505 test がより有効に利用できるものと考えるそこで, 本研究では, バスケットボ-ル, サッカ-, ラグビ-の各競技選手を対象に, test の結果とテスト中の各区間および 20 mダッシュとの関係を検討し,505 test がどのようなランニング能力を反映しているかを検討する 2 次に,505 test の動作を解析することによって, 評価の優劣にどのような要因が影響を及ぼしている可能性があるかを明らかにする 3さらに, 指導現場における選手の敏捷性能力の指導者らの主観的評価と 505 test との関係を検討する本研究は, 以上 3 つの研究課題の評価視点を明らかにし, 本テストの利用法および有効性を明らかにすることを目的とした 2. 方法 2.1. 対象者 Australian Sports Commission(2000) で測定が行われている種目から 3 種目を選び, その競技の男子選手を対象者とした具体的には, 健常な某大学の体育会男子バスケットボール選手 32 名 ( 身長 :180.7±7.9 cm, 体重 : 71.8±7.6 kg, 年齢 :19.8 ± 1.3 歳 ), ラグビー選手 28 名 ( 身長 :175.5±6.9 cm, 体重 :84.8±16.9 kg, 年齢 :19.8±1.4 歳 ), サッカー選手 30 名 ( 身長 :175.2±6.4 cm, 体重 : 67.8±4.8 kg, 年齢 :19.7±1.3 歳 ) としたバスケットボール, ラグビー, サッカーチームは関西 1 部リーグに所属するチームであった対象者にあらかじめ測定内容および測定により起こりうる危険性について十分に説明し, 文書にて参加の同意を得たまた本研究は報告者が所属する研究機関の倫理委員会の承認を得て実施した 2.2. 測定方法 test 図 1 の概略図に示すように, 対象者はマットスイッチの位置からスタ-トし, 前方に 15m 全力疾走後, ライン後方の方向転換地点に設置したマットスイッチを両足で踏み選手自身が得意とする方向へ 180 転換し, スタ -トした地点( ゴール地点 ) に向け戻るまでの往復走を 3 回行った各試行間に 3 分以上の間隔をあけて測定を行ったその 3 回の試行の中で, 最も高い値を代表値として扱ったまたサッカ- 選手については, 再現性を検討するために,1 時間以上の休息後に再度 3 回の測定を行った 505 test としては,d ~ h 区間の往路 5m と復路 5m を合わせた 10m 間のランニングタイムを評価結果として扱うが, 本研究では 505 test 中の対象者のランニングタイムの特徴を調べるために, 往路を 5 区間, 復路を 5 区間に区分しランニングタイムの測定を行った図 1 に示す a のスタート地点, および f の方向転換地点にマットスイッチ (DKH 社製 ) を設置し,b,c,d,e,g, h,i,j にそれぞれ有線光電管 (E3G-R13,OMRON 社製 ) を高さ 1 mに設置したスタート a ~ b,j ~ゴール k を 5m とし,b ~ c,c ~ d, d ~ e,e ~ f,f ~ g,g ~ h,h ~ i,i ~ j を 2.5m に区分した e ~ f を方向転換に向けた準備段階としての減速区間,f ~ g を 180 度の方向転換後にダッシュ姿勢を整える段階としての方向転換区間,g ~ h をゴールに向かって走り抜ける段階としての加速区間と定義した対象者に, 十分なウォーミングアップを実施させた後, 各競技用シューズを着用させ, 事前に 5 ~ 6 回の練習を行わせた後に測定を行ったバスケットボ-ル選手は体育館での動きには慣れているが, グランドでの動きには不慣れのため, 測定を体育館で行ったまたラグビー選手およびサッカー選手は, 体育館での動きに慣れていないことから, それぞれ種目専用の人工芝グラウンド上にて行った

3 Study of 505 test for agility assessment m 直線走の測定対象者の短距離走のランニングタイムと 505 test との関係について検討するために, 対象者全員に対し 20 m 直線走の測定を行った図 1 で示すように,505 test は 5m 往復する合計 10m 間のランニングタイムを評価結果として扱ったしかしスタ-ト位置に到達するまでに 10m をランニングしていることから, 合計した 20m 走を採用して測定を行ったスタート地点にマットスイッチ ( 竹井機器工業社製 ) を, ゴール地点に有線光電管 (E3S-3L E1,OMRON 社製 ) を設置し, それぞれの機器をデジタルタイマー ( 竹井機器工業社製 ) に接続し測定したすべての対象者は,505 test 測定後,20m 直線走の測定を行った test におけるランニング動作の観察バスケットボ-ル選手の中で 505 test のタイムの速かった選手 5 名を選出し, 別途の日程を設定して 505 test を実施し撮影を行った高さ 1.2 mに設定した 2 台の DV カメラ (HDR-HC9,Sony 社製 ) をシャッター速度 1/1000s に設定し 60fields/s で撮影した 505 test の e ~ f,f ~ g 区間のランニングコースに対して 90 の位置に 1 台のカメラを 10m 離して設置し, 方向転換位置から往路の進行方向に 5m 離した位置にもう 1 台のカメラを設置した対象者には事前に本動作の練習を行わせ, 体育館シューズを着用させて体育館フロアで動作の撮影を実施した黒色の収縮性スーツを着用させ, 計 25 ポイントにマーカーをつけ,505 test の試技を撮影した撮影された VTR 画像から対象者の身体分析点 (25 点 ) を動作解析システム (Frame-DIAS Ⅳ,DKH 社製 ) を用いてデジタイズし, 左右方向を X 方向, 前後方向を Y 方向, 鉛直方向を Z 方向とし,3 次元 DLT 法を用いて身体分析点の 3 次元座標を算出した測定結果については身体分析点の座標成分ごとに最適遮断周波数を決定し,Butterworth digital filter を用いて平滑化した (2.4 ~ 8.4Hz) 平滑化したデータから, 阿江 (1996) の身体部分慣性係数を用いて部分および全身の重心の座標を算出し, これらの数値を微分することで重心速度等を算出したコーチの敏捷性評価指導者が選手の敏捷性をどのように評価しているかを 505 test の測定結果と照らし合わせるために, 対象者が所属する各チ-ムの 2 名のコ-チにアンケ-ト用紙を配布し, 表 1 に示すアンケ-ト項目への回答を依頼した評価は 5 段階としたまた設問 Aのこの選手は敏捷性に優れていますか? の質問に対して, 各チ-ムの最も敏捷性があると判断する選手を 5 段階中 5 の評価とし, 最も劣るレベルである選手を 1 として評価することを共通認識とした 2 名のコーチによるアンケ-トは, お互いが意見交換をしないよう異なる環境で実施した各 2 名のコーチによる評価の平均値を本研究の値として用いたコーチは, 元日本代表コーチ, 関西学生連盟理事および元学生選抜チームのコーチといった高いレベルの指導力を持っていた統計処理測定値は, 平均値 ± 標準偏差で示したサッカ- 選手の再現性については,505 test 測定における 1 回目と 2 回目の対応のある T テストで検討した 1 回目と 2 回目の計測値間の再現性を明らかにするために, ピアソンの積率相関係数を求めた次に 2 名のコ-チにおける敏捷性評価の信頼性を級内相関関係 (ICC) より検討した統計処理の結果は, 危険率 5% を有意とした 3. 結果 test 測定結果図 test の概略図 505 test は,d~h 区間の通過タイムで評価するが, 本研究では, スタートからゴールまでを 10 区間に区分し, それぞれの通過タイムを測定した表 2 に 505 test の評価タイムおよび区間別通過タイムの結果を示した測定場所がそれぞれの種目において異なることから, 群間比較を行わなかった 3 群間とも

4 36 岡本表 1. 質問紙調査票質問項目劣る ( 評価点 ) 優れている (1) この選手は敏捷性に優れていますか? (2) この選手は実戦中において相手選手をかわす能力に優れていますか? (3) この選手は急な減速やストップ能力に優れていますか? (4) この選手は前方への 1 歩の踏み出しは速いですか? (5) この選手の 20m スプリントは速いですか? 表 test 測定における区間別通過タイムの結果 (sec) バスケットボ-ル群ラグビ- 群サッカ- 群全体 505 test 評価タイム 2.27± ± ± ±0.22 a~b 区間通過タイム 0.93± ± ± ±0.11 b~c 区間通過タイム 0.40± ± ± ±0.03 c~d 区間通過タイム 0.38± ± ± ±0.03 d~e 区間通過タイム 0.40± ± ± ±0.05 e~f 区間通過タイム 0.46± ± ± ±0.12 f~g 区間通過タイム 0.89± ± ± ±0.16 g~h 区間通過タイム 0.52± ± ± ±0.07 h~i 区間通過タイム 0.45± ± ± ±0.04 i~j 区間通過タイム 0.39± ± ± ±0.04 j~k 区間通過タイム 0.79± ± ± ± m 走のタイム 3.03± ± ± ±0.14 c ~ d 区間および d ~ e 区間の通過タイムが速く, 方向転換前の e ~ f 区間のタイムが遅くなる傾向を示した test における再現性サッカ- 選手 30 名について,505 test の評価で用いられる d ~ h 区間の通過タイム,e ~ f 区間の通過タイム, f ~ g 区間の通過タイム,g ~ h 区間の通過タイムの再現性を表 3 に示したそれぞれの区間において, 高い相関関係 (d ~ h 区間 :r = 0.871,e ~ f 区間 :r = 0.937, f ~ g 区間 :r = 0.897,g ~ h 区間 :r = 0.813) が認められた (P < 0.001) test のランニング動作の特徴 505 test のタイムの速いバスケットボ-ル選手の動作において,f の方向転換前後 (e ~ g 区間内の結果 ) のランニング中の身体重心速度の変化を図 2 に示した対象者は方向転換地点に向けて速度を急激に低下させ, 方向転換地点で足が着地し速度を低下させるが 0m/s にはならず, その後速度を一気に上昇させている図 3 に示した重心高についてみてみると, 対象者は方向転換地点に足が着地した時点で最も重心高が低く, その後重心高を徐々に上昇させながらランニングする傾向を示した

5 Study of 505 test for agility assessment 37 表 3. サッカ - 群の 505 test の 1 回目テスト結果と 2 回目テスト結果の関係 t-test 相関係数 1st test 2nd test t P r 505 評価タイム (d-h) 2.49± ± * e-f 区間通過タイム 1.00± ± * f-g 区間通過タイム 0.56± ± * g-h 区間通過タイム 0.52± ± * *:P<0.001 走速度 (m/sec) 重心高 (m) 経過時間 (sec) 図 test の方向転換地点前後の重心速度の変化経過時間 (sec) 図 test の方向転換地点前後の重心高の変位 test 結果とランニング通過タイムの関係表 4 は 505 test の評価タイムに対する助走区間, 減速区間, 方向転換区間, 加速区間の通過タイム間の相関係数を示した助走区間としての b ~ c,c ~ d,d ~ e の値と 505 test 評価タイムとの間には有意な相関は認められなかった対象者全員についてみると, 減速区間 (e ~ f), 方向転換区間 (f ~ g), 加速区間 (g ~ h) において高い相関関係が認められた (P<0.001) 続いて競技種目別にみると, バスケットボール群およびサッカ- 群においては,505 test 評価タイムと方向転換区間 (f ~ g) に r = 0.847(P<0.001),r = 0.573(P<0.001) と高い相関関係が認められたラグビ- 群においては, 減速区間, 方向転換区間, 加速区間のそれぞれに有意な相関関係が認められた表 4 には 505 test 評価タイムと 20m 走の相関係数を示した対象者全体でみると有意な相関関係が認められたが (P<0.001), 競技種目群毎にみると両者の間には, 相関関係が認められなかった test 評価タイムとコーチによる敏捷性評価の関係対象者が所属するチ-ムのコ-チに, 選手の敏捷性に関する評価を依頼した各競技種目における 2 名のコ- チの評価の信頼性を級内相関係数で示した ( 表 5) ラグビ-についてみると, すべての質問項目で 2 名のコーチの評価には差はなく, バスケットボール群は,(5) のスプリント能力においてのみ差が示されたサッカ - 群についてみると (1) の総合的な敏捷性のみの質問について, コ-チ間の差は認められなかったが, 他の 4 つの質問項目については差が認められた表 6 に示した 505 test 評価タイムとコーチの敏捷性評価の相関関係についてみると, バスケットボール群およびラグビー群において,505 test の評価タイムと (1) の総合的な敏捷性に優れている,(2) のかわす能力がある,(3) の減速能力に優れている,(4) の加速能力に優れているの質問項目の間には有意な相関関係が認められた (P<0.05) サッカー群についてみると, 505 test の評価タイムと 5 ヶの質問項目との間に相関関係は認められなかったまた (2) のかわす能力の評価と方向転換区間の

6 38 岡本表 test 評価タイムと各通過区間毎の相関関係バスケットボ - ル群 (n=32) ラグビ - 群 (n=28) サッカ - 群 (n=30) 全体 (n=90) 助走区間 (b~c) 助走区間 (c~d) 助走区間 (d~e) 減速区間 (e~f) * *** 方向変換区間 (f~g) *** ** *** *** 加速区間 (g~h) * *** 20m 走 *** *: P<0.05, **: P<0.01, ***: P<0.001 表 5.2 名のコーチにおける評価の信頼性についてバスケットボール群ラグビ- 群サッカ- 群検者 A 検者 B 検者 A 検者 B 検者 A 検者 B M SD M SD ICC F M SD M SD ICC F M SD M SD ICC F (1) 総合的な敏捷性 (2) かわす能力 * (3) 減速能力 * (4) 加速能力 * (5) スプリント能力 * * * : P<0.05 表 6. コーチの敏捷性評価と通過タイムの相関係数バスケット群ラグビ - 群サッカ - 群 505 評価減速区間方向転換区間加速区間 505 評価減速区間方向転換区間加速区間 505 評価減速区間方向転換区間加速区間 (1) 総合的な敏捷性 * * * * * * (2) かわす能力 * * * * * * (3) 減速能力 * * * * * * (4) 加速能力 * * * * * * * (5) スプリント能力 * * *: P<0.05 通過タイムとの間には, 全ての競技種目において有意な相関関係が示された (p<0.05) 減速区間における通過タイムとコーチの評価 (3) の減速能力にはサッカ- 群についてのみ有意な相関関係が認められた (p<0.05) 加速区間の通過タイムとコーチの(4) の加速能力の評価の関係についてみるとラグビ- 群のみ有意な相関関係を示した (p<0.05) スプリント能力について, バスケットボール群とサッカ- 群では相関関係を示さなかったこのことは表 5 で示す結果においても 2 名のコ-チの評価の信頼性が認められなかったことと一致していた 4. 考察本研究は, 球技選手の敏捷性を評価する 505 test をランニング通過タイムの結果, 動作分析の結果, コ-チから見た選手の敏捷性評価の 3 つの視点から検討を行った 505 test の再現性を検討したところ,505 test 評価タイムにおいて,1 回目の評価タイムに対する 2 回目の評

7 Study of 505 test for agility assessment 39 価タイムの間には高い再現性が認められた (r=0.871) 同じように, 減速区間 (e ~ f 区間 ), 方向転換区間 (f ~ g 区間 ) および加速区間 (g ~ h 区間 ) において,1 回目の通過タイムに対する 2 回目の通過タイムの間に高い再現性が認められた Bradshaw et al.(2011) は, ラグビーリーグ選手 (n=11) を対象に 10m スプリント走,30m スプリント走,Change of direction(cod), Reactive agility test (RAT) を行い 1 回目のランニングタイムに対する 2 回目のタイムの再現性を検討した 10m スプリント走では r=0.88,30m スプリント走では r=0.97,cod では r=0.87,rat では r=0.88 と各測定項目に高い再現性を示しているさらに Sheppard et al. (2006) は,RAT の開発において,1 回目のランニングタイムに対する 2 回目のタイムに再現性があると報告している本研究で用いた 505 test はダッシュ後すぐに減速し, 方向転換した後加速するといった単純な動作であることから,COD や RAT と同様, 再現性が認められたものと考える次に 505 test の評価タイムと減速区間 (e ~ f), 方向転換区間 (f ~ g), 加速区間 (g ~ h) 区間の通過タイムとの関係を検討したところ,505 test 評価タイムとの間に, 対象者全員を対象とした場合において有意に高い相関関係を示した (P<0.001) しかしバスケットボール, ラグビー, サッカーの種目群毎に検討してみてみると, バスケットボ-ル群とサッカ- 群には方向転換区間しか相関関係が認められなかったすなわち 505 test の結果は, 方向転換能力を最も評価する敏捷性テストであると考えられる次いで方向転換に向けて減速するためのランニング動作や方向転換後に加速するランニング動作の技術, すなわちランニング中の速度調整能力を評価すると考えられるが, 特にラグビ- 群のランニング調整能力を評価する測定法であると言えるであろう 505 test 中のランニングの速度調整能力を具体的に検討するために, 評価タイムの優れた選手を対象に動作を撮影し, その動作の特徴を身体重心点および重心高の視点から観察した動作解析による動作速度変化から, 対象者は方向転換地点に向けて速度を低下し, 方向転換後に速度を上昇させていることが明らかとなったこのように方向転換時点前の速度調整に影響及ぼすのは, ランニング動作中の重心高を徐々に変化させるランニング技術であると考える具体的には, 一気に重心高を低下させるのではなく方向転換地点に向けてランニング中に徐々に重心を低くし, そして方向転換後に徐々に重心を高くしていくランニング技術であるこのように重心点を徐々に低くして走ることはランニング速度の減速に効果的であり, 素早く方向転換動作を行うためのランニング技能であると考える陸上競技スプリンターは高い重心を保ちながらランニング動作を行っているが (Francis et al.,1997), 球技選手はフェイントやカット動作の際に重心を低くした動作を行っており, スプリンターと球技選手を比較した場合, 球技選手は低い重心を保つことにより安定性は増し, 速い方向転換動作ができると Sheppard et al.(2006) は報告している本研究では, 測定タイムの速いバスケットボ-ル選手を対象とした動作解析結果から,505 test は選手らが速く方向転換するために重心をできるだけ低くしながら走る能力を評価できるのではないかと考えるまたランニング中の速度調整能力や重心点を低くしながら走る能力を検討するために Young et al.(2002) は, zigzag run と下肢筋力の関係を検討し, 下肢筋力の強さが方向転換走に影響を与えていると報告しているまた鈴木ほか (2010) は, 方向転換動作をキネマティクス的に検討し, サイドステップおよびクロスステップによる方向転換走の動作の重要性を報告しているしかし 505 test が, 球技選手らの方向転換のためのステップワ -クの評価法として利用できるかは, 今後の研究課題であると考える一方球技のランニング技術において,Bradshaw et al.(2011) は 10 m 走と Change of direction(cod) および Reactive agility test(rat) との間に有意な相関関係が認められたことから, ランニングタイムの向上は敏捷性の向上につながると報告している Sheppard et al.(2006) も, 方向転換走のタイムと直線走タイムに有意な相関関係が認められたと報告しているまた Gabbett et al. (2008) は, ラグビーリーグプレーヤーを対象としてスプリント能力と敏捷性能力の関係性 (505 test,modified 505 test,l run,reactive agility test, Sprint run のテスト ) を対象として検討し, 特に 505 test,modified 505 test,l run とランニングタイムとの間には有意な相関関係が認められたが,Reactive agility test とランニングタイムとの間には有意な相関関係が認められなかったと報告しているしかし本研究では, 競技群毎にみると 505 test の評価タイムと 20m 直線走のランニングタイムに有意な相関関係は認められなかったことから,Gabbett et al. (2008) の先行研究とは異なり 180 度方向を転換する 505 test には短距離走のランニングタイムは影響しないのではないかと考える球技選手の動作は, 陸上競技のような単一方向への直線的な動きのみならず, 様々な方向への動作が混在しているそのため緩急のあるランニング動作の中で, 曲線走, バック

8 40 岡本走, 急激なストップや方向転換および敵選手の動きに対抗したに対応したフェイントなど様々な動きが求められる (Oslin et al., 1998) そのことから球技選手の日々のランニングトレ-ニングは直線走の能力を向上させるというより, ランニングの速度調整能力や方向転換能力の向上に影響を及ぼしているのではないかと考えるこのように球技選手の減速, 方向転換, 加速といった能力を指導現場の指導者らは, ランニングのセンスがあるといった表現をする場合があるそこで敏捷性の客観的評価と指導者の主観的評価の関係についてみるために,505 test 評価タイムとコーチからみた選手の敏捷性主観的評価の相関関係の検討を行った分析の結果, バスケットボール群およびラグビー群において, 選手の 505 test 評価タイムとコーチの敏捷性評価項目に相関関係が認められた (P<0.05) しかしサッカー群においては有意な相関関係は認めらず, コ-チ間の評価にも差が生じた特に屋外で行われる競技についてみると, ラグビ-はスクラムで敵を押し, 素早く次の攻撃や守備の体系に移動したり, さらにボ-ルを持って敵陣へ突進し, その動作を阻止しタックルするという動作が行われる (Wheeler et al. 2011) しかしサッカ-についてみると, ボールを操りながらのフェイントやカットといった技能の敏捷性とボ-ルを操ることがない状態で敵選手と競い合うといった動作が行われている (Benvenuti et al. 2010; Sporits et al., 2011) このようにそれぞれの競技特性による敏捷性などの違いが, 指導者の評価視点に影響したのではないかと考える例えば Bloomfield et al. (2007) は, イギリスのプレミアリーグのサッカープレーヤーが試合で行う方向転換動作の約 90% は側方への方向転換動作であったと報告しているこのようにサッカ - 競技においては 505 test で評価する 180 度の方向転換動作よりもボールコントロ-ルの技術や側方への敏捷性をより重視した評価を現場の指導者らは行っているのではないかと考えられるまたサッカ- 群を含むすべての競技種目群の指導者のかわす能力評価と方向転換動作の結果に相関関係が認められたことから, 各競技種目における敵選手と競い合う敏捷性を評価できるのではないかと考えられる以上のことから,505 test は方向転換能力をはじめとする減速や加速といったランニングの速度調整能力を評価できると考えるが, 球技種目毎の特性に合致した敏捷性テストとしては尚再検討の余地があり, サッカ- 選手特有のボールコントロ-ル技能を重視する動作を評価することは難しいと考える 5. まとめ本研究は, 球技選手 90 名 ( バスケットボ-ル, ラグビ-, サッカ-) を被験者とし, 敏捷性を評価するための 505 test を実施し, これまで, 報告されてこなかった 1 本テスト結果が助走, 減速, 方向転換, 加速といったどの区間に反映されるのか 2 方向転換時点の動作の特徴 3 指導者の敏捷性評価と本テスト結果の関係という 3 つ課題を明らかにし, このテストの利用法について検討することを目的としたその結果,505 test の測定タイムには, 再現性が認められ, さらに減速区間, 方向転換区間, 減速区間の各通過タイムとの間に有意な相関関係が認められた (P<0.01) バスケットボ-ル群およびラグビ- 群においては,505 test 測定タイムとコ-チの評価との間に有意な相関関係が認められたが (P<0.01), サッカ- 群においては相関関係が認められなかったバスケットボ- ル群の 505 test の測定タイムの速い選手は, 方向転換動作前の減速区間において, 被験者は身体重心高を徐々に低くさせながらランニング速度を減速させており, 方向転換動作後の加速区間では重心高を徐々に上昇させながら加速する傾向を示した以上のことから, 本研究で用いた 505 test は, バスケットボ-ル選手およびラグビー選手の方向転換能力および方向転換前後のランニングの速度調整能力を評価できると考えるしかしサッカー選手の敏捷性を評価するテストしては相応しいものとは言えないと考えられる謝辞本研究の実施にあたり, データ収集において多大な協力を賜りました田中潤氏 ( 当時立命館大学 ) に深く感謝いたしますまた被験者として参加頂きました立命館大学体育会の選手の方々に心から感謝いたします文献阿江通良 (1996) 日本人幼少年およびアスリートの身体部分慣性係数.Japanese Journal of Sports Sciences 15: Australian sports commission(2000)physiological tests for elite athletes. Human Kinetics: Champaign, IL., pp Bangsbo, J., Iaia F.M., Krustrup, P.(2008)The Yo-Yo Intermittent Recovery Test -A Useful Tool for Evaluation of Physical Performance inintermittent

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八戸学院大学紀要第 55 号図 1 : 50 m 走の実験配置図陸上競技連盟公認審判資格 B を有する 1 名がらったスタート後は図 2 の ① ② ③ の順で行いフライングスタート合図前に身体が動走ってもらいフィニッシュライン上に設置しき出すことと判断された場合には試技を中高校男子野球選手における方向転換能力とスプリント能力との関係綿 I. 谷貴志力との関係性を検討する必要もあるだろうまはじめにた野球選手とサッカー選手とでは体力特性が野球選手にとって走能力が重要なことは言うまでもないがスピードが乗った状態から素早異なる可能性があることからもあらためて検討する余地はあると考えられるく別方向へと切り返す能力方向転換能力もそこで本研究は

33 原著論文 敏捷性測定法 505 test の評価視点の検討 An agility evaluation method of the 505 test 岡本直輝 1) Naoki OKAMOTO 1) Abstract In this study, subjects were 90 ball-g

33 原著論文敏捷性測定法 505 test の評価視点の検討 An agility evaluation method of the 505 test 岡本直輝 1) Naoki OKAMOTO 1) Abstract In this study, subjects were 90 ball-g