豪州のガス開発を巡る最近の話題

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さみらみやのじょう
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1 平成 29 年度第 7 回海外石油天然ガス動向ブリーフィング豪州のガス開発を巡る最近の話題平成 29 年 11 月 24 日シドニー事務所所長山下宜範 1

2 豪州のガス開発を巡る最近の話題 1.LNGプロジェクトの今後の動向 2. 東海岸のガス不足とLNG 輸出制限 3. 非在来型ガスの開発規制 4. 政治動向 2

3 豪州のガス開発を巡る最近の話題 1.LNGプロジェクトの今後の動向 2. 東海岸のガス不足とLNG 輸出制限 3. 非在来型ガスの開発規制 4. 政治動向 3

LNG 輸出量と今後の予測豪州の LNG 輸出量は引き続き増加する見込み今後イクシス等の新規プロジェクトも生産を開始予定世界の LNG 生産能力 80 70 LNG 輸出量の推移と今後の予測 40,000 35,000 百万 t/ 年輸出量 ( 百万 t) 60 50 40 30 20 30,000 25,000 20,000 15,000 10,000

4 LNG 輸出量と今後の予測豪州の LNG 輸出量は引き続き増加する見込み今後イクシス等の新規プロジェクトも生産を開始予定世界の LNG 生産能力 LNG 輸出量の推移と今後の予測 40,000 35,000 百万 t/ 年輸出量 ( 百万 t) ,000 25,000 20,000 15,000 10,000 輸出額 ( 百万 A$) 豪州北米中東アフリカ東南アシアその他既設の能力 (2016 年 ) 追加の能力 (2019 年まで ) ,000 0 輸出量輸出額出典 : Resources and Energy Quarterly September 2017 Department of Industry, Innovation and Science 4

5 LNG の輸出先 LNG の最大の輸出相手国は日本中国韓国等が続く LNG 輸出額 223 億豪ドル (2016/17 年 ) 鉱業関連の輸出額 : 2,041 億 A$ (2016/17 年 ) インド, 3% タイ, シンガポール, 1% 6% 韓国, 11% 中国, 26% その他, 2% 日本, 51% 主な輸出相手国うち 1 鉄鉱石 629 億 A$(31%) 中国 82% 日本 9% 韓国 6% 2 原料炭 350 億 A$(17%) インド 25% 中国 23% 日本 21% 3LNG 223 億 A$(11%) 日本 51% 中国 26% 韓国 11% 4 一般炭 189 億 A$( 9%) 日本 45% 韓国 19% 中国 14% 5 金 180 億 A$( 9%) 香港 54% 英国 21% 中国 13% 1,571 億 A$(77%) 2018/19 年度には LNG が原料炭を上回る見込み出典 : Resources and Energy Quarterly September 2017 Department of Industry, Innovation and Science Australian Petroleum Statistics LNG exportsby country, Department of the Environment and Energy 5

6 LNG 生産能力の推移 2018 年にカタールを抜き世界最大の LNG 輸出国になる見込み百万 t/ 年プロジェクト名 Prelude Wheatstone Ichthys APLNG (CSG) GLNG (CSG) QCLNG (CSG) Gorgon Pluto Darwin LNG NWS 出典 : 各社公表資料をもとに作成 6

7 LNG プラントの稼働率ただし 2017/18 年度 2018/19 年度は LNG プラントの設備稼働率は低下するとの予測がされている豪州の LNG 輸出量と LNG プラントの設備稼働率百万 t % LNG 輸出量 LNG プラントの設備稼働率 (RHS) 出典 : Resources and Energy Quarterly September 2017 Department of Industry, Innovation and Science 7

8 豪州の LNG プロジェクト生産中のプロジェクト :8 件 (North West Shelf Darwin LNG Pluto QCLNG GLNG APLNG Gorgon Wheatstone ) 建設中のプロジェクト :2 件 (Prelude(FLNG) Ichthys) 計画中のプロジェクト :3 件 (Browse Sunrise Scarborough いずれもFLNGを検討 ) 8

9 豪州の LNG プロジェクト ( 生産中 ) 生産能力生産開始年オペレーター 1.North West Shelf (5 系列 ) 1,690 万 t/ 年 (1989 年 ) 2.Darwin LNG(1 系列 ) 370 万 t/ 年 (2006 年 ) 3.Pluto(1 系列 ) 470 万 t/ 年 (2012 年 ) 4.Queensland Curtis LNG(2 系列 ) 東海岸 850 万 t/ 年 (2014 年 ) 5.Gladstone LNG(2 系列 ) 東海岸 780 万 t/ 年 (2015 年 ) 6.Australia Pacific LNG(2 系列 ) 東海岸 900 万 t/ 年 (2015 年 ) 7.Gorgon LNG(3 系列 ) 1,560 万 t/ 年 (2016 年 ) JV 参加の日本企業 MIMI( 三菱商事三井物産 ) INPEX JERA 東京ガス東京ガス関西電力東京ガス - - 大阪ガス東京ガス JERA 8.Wheatstone LNG(2 系列 ) 890 万 t/ 年 (2017 年 ) ( 2017 年に第 1 系列生産開始今後第 2 系列が生産開始すれば生産能力は 890 万 t/ 年になる見込み ) PEW(JOGMEC 三菱商事日本郵船 JERA) 九州電力 9

10 豪州の LNG プロジェクト ( 建設中 ) 生産能力生産開始予定オペレーター JV 参加の日本企業 1.Ichthys 890 万 t/ 年 (2018 年 ) (2 系列 ) INPEX( オペレーター ) 東京ガス大阪ガス関西電力 JERA 東邦ガス 2.Prelude 360 万 t/ 年 (2018 年 ) (1 系列 ) (FLNG ( 浮体式 LNG) プラントを採用 ) INPEX 稼働中建設中の LNG プロジェクト計 10 件を合わせると生産能力は 8,760 万 t/ 年 10

11 LNG プロジェクトの今後の動向 1. 稼働中及び建設中の 10 件に続く新たな LNG プロジェクトの計画は FID 未了 2. Browse LNG は 2016 年 3 月に FID 見送り現在事業を見直し中 3. 既設 LNG プロジェクトではバックフィルやプラント手直し等の計画あり (1) North West Shelf LNG: ガス田の生産減退により 2020 年代の初めにバックフィルを予定 Scarborough Browse 等のガス田が候補 (2) Darwin LNG Bayu-Undan ガス田の生産減退で 2022 年からバックフィル予定 Caldita-Barossa ガス田等が候補 NT 準州政府の補助により第 2 系列建設に係る FS 実施中 (~2017 年末 ) (3)Pluto LNG プラント拡張 ( プラント手直し (debottlenecking) 等 ) を計画 Scarborough ガス田からのバックフィルも計画 11

Development Offshore Project Proposal (Barossa OPP)

12 既設 LNG のバックフィルの計画 Darwin LNG の例 North West Shelf LNG の例 Bayu-Undan Caldita-Barossa Scarborough Browse 出典 :Barossa Area Development Offshore Project Proposal (Barossa OPP) ConocoPhillips Australia 社ウェブサイト Darwin LNG 出典 :woodside 社のウェブサイト North West Shelf LNG 12

13 豪州のガス開発を巡る最近の話題 1.LNGプロジェクトの今後の動向 2. 東海岸のガス不足とLNG 輸出制限 3. 非在来型ガスの開発規制 4. 政治動向 13

14 ガス資源の分布在来型のガスは主に北西沖合で生産 LNG 用国内市場向け等在来型のガスは南東部等でも生産これらは国内市場向け炭層ガスは主に東海岸国内市場に加え近年は LNG 用が増加炭層ガス田在来型のガス田在来型のガス田出典 : 豪州地質調査所 14

15 3 か所の国内ガス市場西豪州のガス市場西豪州の LNG プラントにガスを供給する事業は州政府によってガスの 15% 分を国内市場に供給する義務あり ( 北部及び東海岸の市場では同様の義務は ( 各州政府から ) 課されていない ) 東海岸のガス市場出典 : 豪州地質調査所 15

豪州のガス生産量の推移近年炭層ガスの生産量が増加炭層ガスを原料とする東海岸の LNG プラントの操業開始による 80,000 ガス生産量の推移 70,000 60,000 50,000 Mcm 40,000 30,000 20,000 10,000 0 2009/10 2010-11 2011-12

16 豪州のガス生産量の推移近年炭層ガスの生産量が増加炭層ガスを原料とする東海岸の LNG プラントの操業開始による 80,000 ガス生産量の推移 70,000 60,000 50,000 Mcm 40,000 30,000 20,000 10, / 炭層ガスその他出典 : Resources and Energy Quarterly December Quarter 2017 Department of Industry, Innovation and Science 16

17 東海岸のガス需要の増加東海岸のガス需要は LNG プラントの生産開始により増加東海岸の陸上で生産される炭層ガス等の多くが輸出用に百万 t/ 年東海岸の LNG 生産能力の推移 QCLNG (CSG) GLNG (CSG) APLNG (CSG) 東海岸のガス需要の推移上部の水色部分が LNG 需要東海岸の LNG プラント左から APLNG(2 系列 ) QCLNG( 同 ) GLNG( 同 ) 出典 :Google map 出典 :Gas Market Report

ガス開発への投資の減少近年のガス価格の低迷によりガス開発への投資が減少 US$/MMBTU 25 20 15 10 5 0 LNG 価格の推移 (

10,000 2009M7 2010M1 2010M7 2011M1 2011M7 2012M1 2012M7 2013M1 2013M7 2014M1

2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 石油ガス部門探鉱支出の推移 0 オンショアオフショア出典 : Resources and

18 ガス開発への投資の減少近年のガス価格の低迷によりガス開発への投資が減少 US$/MMBTU LNG 価格の推移 ( インドネシア産日本着 ) 百万 A$ 石油ガス部門資本支出の推移 70,000 60,000 50,000 40,000 30,000 20,000 10, M7 2010M1 2010M7 2011M1 2011M7 2012M1 2012M7 2013M1 2013M7 2014M1 2014M7 2015M1 2015M7 2016M1 2016M7 2017M1 出典 :IMF 百万 A$ 4,000 3,500 3,000 2,500 2,000 1,500 1, 石油ガス部門探鉱支出の推移 0 オンショアオフショア出典 : Resources and Energy Quarterly September 2017 Department of Industry, Innovation and Science 18

豪国内ガス安定制度 (ADGSM) 豪国内ガス安定制度 (The Australian Domestic Gas Security Mechanism : ADGSM) 2017 年 7 月導入連邦政府による LNG 輸出制限の発動を可能とする制度連邦政府は関係機関と協議を行い 2017 年 11 月までに 2018 年の輸出制限発動の是非を判断輸出制限が発動された場合は LNG

19 豪国内ガス安定制度 (ADGSM) 豪国内ガス安定制度 (The Australian Domestic Gas Security Mechanism : ADGSM) 2017 年 7 月導入連邦政府による LNG 輸出制限の発動を可能とする制度連邦政府は関係機関と協議を行い 2017 年 11 月までに 2018 年の輸出制限発動の是非を判断輸出制限が発動された場合は LNG 事業者は輸出許可が必要ただしガス不足が発生しない地域の LNG 事業は無制限の輸出許可を取得ガス生産量が輸出向けガス量よりも多い事業者は当該事業者の輸出計画量相当が輸出許可逆の場合は輸出計画量から不足分を差し引き 2020 年までに見直し 2023 年 1 月までの時限的措置 2017 年 10 月 3 日連邦政府と東海岸の LNG 事業者が国内市場に必要なガスを供給することに合意する文書 (HOA) に署名して 2018 年の ADGSM の発動は回避 ( しかし実質上は HOA に基づく輸出制限 ) 19

20 東海岸のガス不足を巡る動き (1/2) 年月東海岸のガス市場に係る動き 2016 年 3 月 AEMO 2019 年までに更なるガス開発がされなければ東海岸は今後 10 年に亘ってガス不足に直面すると報告 2016 年 4 月 ACCC 東海岸のガス市場におけるパイプラインの規制実施市場透明性の向上陸上ガス開発のモラトリアム解除等を提言 2016 年 8 月 AEMO 今後も東海岸で石炭火力発電所の廃止が進めば今後 10 年に亘って電力不足に直面すると報告豪州連邦州首相評議会 (COAG) エネルギー委員会国内ガス供給を拡大させるためのパイプラインへの規制の導入で一致 VIC 州政府陸上の非在来型ガス開発の永久禁止また陸上の在来型のガス開発の一時凍結を2020 年まで継続する旨発表 2016 年 9 月 NT 準州政府フラッキングのモラトリアムを実施 SA 州で暴風雨により大停電発生 BHPのOlympic Dam 銅ウラン鉱山 (BHP) が約 2 週間操業停止に追い込まれる等の被害 2016 年 11 月 Engie 社 VIC 州のHazelwood 石炭 ( 褐炭 ) 火力発電所を2018 年 3 月に閉鎖すると正式発表 ( 閉鎖 5カ月前の正式発表 ) 2016 年 12 月 SA 州で再度停電 Olympic Dam 鉱山等が一時操業停止報道等を基に作成 AEMO: 豪州エネルギー市場オペレーター電力ガス市場及び系統の運用機関 ACCC: 豪州競争消費者委員会 = 豪州版の公正取引委員会 20

21 東海岸のガス不足を巡る動き (2/2) 年東海岸のガス市場に係る動き 2017 年 1 月 Rio TintoのBoyne Islandアルミニウム製錬所 (QLD 州 ) 電力価格の高騰を受けて生産量を8% 削減すると発表 2017 年 2 月夏場の高温で電力需要が急増電力会社からの要請によりRio TintoのTomagoアルミニウム製錬所 (NSW 州 ) が一時操業停止 2017 年 3 月 AEMO ガス生産の減少によりガス火力発電所の発電も減少して東海岸では2018/19 年度の夏季に電力不足に陥る旨の報告ターンブル首相東海岸の3 箇所のLNG 向けのガス生産企業 (Shell Santos 及びOrigin) 代表を集めて緊急会議を招集 2017 年 4 月連邦政府 ADGSMを同年 7 月から導入すると発表 2017 年 7 月連邦政府 ADGSM 導入 2017 年 9 月 AEMOとACCCが今後のガス需給見通し発表予想されるガス不足量は半年前よりも拡大していると指摘 2017 年 10 月ターンブル首相と東海岸の3 箇所のLNG 向けガス生産企業が国内市場へのガス供給に係る基本合意書 (HOA) に署名上記の他ターンブル首相は 2017 年 2 月に新規の石炭火力の新設の構想同年 3 月には既設の揚水発電所の増強のための資金拠出同年 4 月には東西パイプライン構想等を打ち出している報道等を基に作成 AEMO: 豪州エネルギー市場オペレーター電力ガス市場及び系統の運用機関 ACCC: 豪州競争消費者委員会 = 豪州版の公正取引委員会 21

東海岸のガス不足量の予測 2018 年 Expected Uncertainty 2019 年 Expected Uncertainty PJ 700 600 500 400 300 200 100 0

:March 2017 Gas Statement of Opportunities,AEMO (2017 年 9 月 25 日発表 ) PJ 700 600 500 400 300 200 100 0

22 東海岸のガス不足量の予測 2018 年 Expected Uncertainty 2019 年 Expected Uncertainty PJ 需要 (Expected) 54PJ 不足供給 (Expected) 発電 (LNG 除く ) 107PJ 不足需要供給 (Uncertainty) (Uncertainty) 住居商工業出典 :March 2017 Gas Statement of Opportunities,AEMO (2017 年 9 月 25 日発表 ) PJ 需要 (Expected) 48PJ 不足供給 (Expected) (LNG 除く ) 発電 102PJ 不足需要供給 (Uncertainty) (Uncertainty) 住居商工業 22

東海岸の LNG 各社との HOA 署名 2017 年 10 月 3 日東海岸の 3 箇所の

AEMO と ACCC によれば東海岸の 2018 年のガス不足量は 54PJ~107PJ

90~190 万 t) このため東海岸の LNG 事業者は 2018 及び 2019

未契約のガスはまずは競争的な条件で国内市場に提供 - 不足量の状況は AEMO と議論を継続し

が上記のモニター実施政府は AEMO ACCC 等の機関と共に市場の透明性向上等の改革推進

23 東海岸の LNG 各社との HOA 署名 2017 年 10 月 3 日東海岸の 3 箇所の LNG 向けガス生産企業が連邦政府との間で国内市場へのガス供給に係る基本合意書 (HOA) に署名 AEMO と ACCC によれば東海岸の 2018 年のガス不足量は 54PJ~107PJ (LNG 換算約 100~200 万 t) 2019 年 48PJ~102PJ(LNG 換算約 90~190 万 t) このため東海岸の LNG 事業者は 2018 及び 2019 年において以下に合意 - 不足に対応するためリーゾナブルな条件で国内市場に十分なガス提供 - 未契約のガスはまずは競争的な条件で国内市場に提供 - 不足量の状況は AEMO と議論を継続し取るべき措置について議論 - これらの遵守状況を ACCC に定期的に報告 ACCC が上記のモニター実施政府は AEMO ACCC 等の機関と共に市場の透明性向上等の改革推進また州政府のガス探査開発規制の解除を含む新たなガス開発をコミット LNG 各社との HOA の署名式出典 : ターンブル首相の Facebook 23

24 豪州のガス開発を巡る最近の話題 1.LNGプロジェクトの今後の動向 2. 東海岸のガス不足とLNG 輸出制限 3. 非在来型ガスの開発規制 4. 政治動向 24

25 各州の陸上ガス開発規制州状況説明 VIC 州陸上のガス 2016 年 8 月 VIC 州政府は陸上の非在来型ガスの探査開発禁止や開発を永久的に禁止 ( フラッキングは2012 年以降禁止されていたが永久的に禁止に ) 在来型の陸上のガス開発のモラトリアムは2020 年まで継続 NT 準州 WA 州フラッキング禁止フラッキング禁止 2017 年 3 月与野党の賛成を得て関連法案成立 2016 年 8 月労働党に政権交代同年 9 月同党は公約どおりフラッキングのモラトリアム実施フラッキングの是非は独立諮問委員会の報告に基づき判断予定しかし当初 2017 年 12 月の最終報告を予定するも同年 11 月 2018 年 3 月に遅延する旨発表 2017 年 3 月労働党に政権交代同年 9 月公約どおりフラッキングのモラトリアム実施フラッキングの是非は独立諮問委員会の報告に基づき判断予定 NSW 州開発困難周辺住民や環境保護団体等の反対で新規の炭層ガス開発の認可を得ることが困難州政府が一部の鉱区を買い戻す例も 25

26 炭層ガス田の坑井出典 :Google Map 26

27 ガス田の坑井の比較タイトガスシェールガス炭層ガス在来型ガス出典 : Inquiry into onshore unconventional gas in Victoria, Final Report, December

28 豪州の各州の位置 WA 州 ( 西オーストラリア州 ) NT 準州 ( 北部準州 ) QLD 州 ( クイーンスラント州 ) SA 州 ( 南オーストラリア州 ) VIC 州 ( ヒクトリア州 ) NSW 州 ( ニューサウスウェールス州 ) ACT ( 首都特別地域 ) TAS 州 ( タスマニア州 ) 28

VIC 州 ( ビクトリア州 ) 海底の在来型ガスは 1969 年から生産しかし 2018 年以降減産の予測

掘削やフラッキング等を実施 2012 年フラッキングの認可を一時禁止 ( モラトリアム )

州政府は陸上の非在来型ガスの探査や開発を永久的に禁止在来型の陸上ガス開発のモラトリアムは 2020 年まで継続

29 VIC 州 ( ビクトリア州 ) 海底の在来型ガスは 1969 年から生産しかし 2018 年以降減産の予測陸上の非在来型ガス資源は 2000~2010 年代初め VIC 州政府が企業に探鉱ライセンスを付与掘削やフラッキング等を実施 2012 年フラッキングの認可を一時禁止 ( モラトリアム ) また新たな炭層ガスの探鉱ライセンスの付与フラッキングの際の BTEX の使用も禁止 2016 年 8 月 VIC 州政府は陸上の非在来型ガスの探査や開発を永久的に禁止在来型の陸上ガス開発のモラトリアムは 2020 年まで継続農業の保護等が理由 2017 年 3 月与野党の賛成を得て関連法案成立陸上部でガスが埋蔵されているとみられる場所 ( 緑の部分 ) 出典 :VIC 州資料 29

NSW 州 ( ニューサウスウェールズ州 ) 2015 年 12 月 NSW 州政府は Mtgasco 社が保有していた炭層ガスの探鉱ライセンスを

社は Camden 炭層ガスプロジェクトからのガス生産終了を 12 年前倒しして 2023 年までに終了させることも発表 2017 年 2 月

炭層ガス開発プロジェクト Santos 社は NSW 州政府に対して 425 カ所以上 850 本の坑井の掘削の認可を求めている 58PJ/

30 NSW 州 ( ニューサウスウェールズ州 ) 2015 年 12 月 NSW 州政府は Mtgasco 社が保有していた炭層ガスの探鉱ライセンスを 2,500 万 A$ で買い戻すことに合意 2016 年 2 月 AGL 社が Gloucester 炭層ガスプロジェクトの中止を発表また AGL 社は Camden 炭層ガスプロジェクトからのガス生産終了を 12 年前倒しして 2023 年までに終了させることも発表 2017 年 2 月 Santos 社が Narrabri 炭層ガス開発プロジェクトの環境認可の申請をしたがまだ認可はされていない Narrabri 炭層ガス開発プロジェクト Santos 社は NSW 州政府に対して 425 カ所以上 850 本の坑井の掘削の認可を求めている 58PJ/ 年のガス生産を計画 NSW 州のガス需要の約 50 % を満たす量 2018 年中盤の建設開始を予定し 2019/20 年度の生産開始を予定 Santos 社ホームページより 30

31 環境保護団体によるデモ活動シドニー市街中心部に展開する炭層ガスの開発に反対するグループ 31

NT 準州 ( 北部準州 ) 陸上に非在来型ガスの資源がある北部開発及び東海岸へのガス供給増のために NT

しかし同州政府が 2016 年 9 月にフラッキングを一時禁止して開発が困難にフラッキングの是非は独立諮問委の報告に基づき判断予定

北部ガスパイプライン (NGP) 北部ガスパイプラインのルート ( 青線 ) 出典 :JEMENA 社資料出典 :Scientific

32 NT 準州 ( 北部準州 ) 陸上に非在来型ガスの資源がある北部開発及び東海岸へのガス供給増のために NT 準州のガスを東海岸に輸送する北部ガスパイプラインを建設中全長 622km ガス流量は 90TJ/ 日 2018 年運転開始予定しかし同州政府が 2016 年 9 月にフラッキングを一時禁止して開発が困難にフラッキングの是非は独立諮問委の報告に基づき判断予定当初 2017 年 12 月の最終報告を予定するも同年 11 月 2018 年 3 月に遅延とする旨発表されたガス埋蔵地域北部ガスパイプライン (NGP) 北部ガスパイプラインのルート ( 青線 ) 出典 :JEMENA 社資料出典 :Scientific Inquiry into Hydraulic Fracturing in the Northern Territory, Interim Report, July

石炭火力閉鎖とガス火力への負担増東部では過去 5 年間で 10 箇所 (5,000MW 以上 ) の石炭火力発電所が閉鎖同時期に 2,000MW が追加 ( 主に再生可能エネ ) ネットで約 3,000MW 減 2017 年 3 月に 1760MW の大規模火力 (Hazelwood 発電所 ) が閉鎖これらにより休止中のガス火力の再稼働などガス火力による発電増加 (2015/16

8 NSW Wallerawang C 2014 年 11 月 1000 VIC Morwell 2014 年 8 月 189 VIC Anglesea 2015 年 8 月 160 VIC Hazelwood 2017 年 3 月 1760 QLD Collinsville 2012 年 12 月 180 QLD Swanbank B 2012 年 5 月 500 SA Northern

33 石炭火力閉鎖とガス火力への負担増東部では過去 5 年間で 10 箇所 (5,000MW 以上 ) の石炭火力発電所が閉鎖同時期に 2,000MW が追加 ( 主に再生可能エネ ) ネットで約 3,000MW 減 2017 年 3 月に 1760MW の大規模火力 (Hazelwood 発電所 ) が閉鎖これらにより休止中のガス火力の再稼働などガス火力による発電増加 (2015/16 年度の東海岸の電力供給の約 9% がガス火力 ) 2012 年以降廃止された石炭火力発電所州石炭火力発電所廃止時期 MW NSW Munmorah 2012 年 7 月 600 NSW Redbank 2014 年 8 月 NSW Wallerawang C 2014 年 11 月 1000 VIC Morwell 2014 年 8 月 189 VIC Anglesea 2015 年 8 月 160 VIC Hazelwood 2017 年 3 月 1760 QLD Collinsville 2012 年 12 月 180 QLD Swanbank B 2012 年 5 月 500 SA Northern 2016 年 5 月 546 SA Playford 2016 年 5 月 240 計今後も石炭火力は廃止の動き電力ガス大手の AGL 社は 2050 年までに石炭火力を全廃予定産炭州の QLD 州では 2050 年までに CO2 純排出量をゼロとする計画あり新設の石炭火力は現段階では具体的な計画はなく電力企業も後ろ向き今後廃止予定の石炭火力発電所の例州石炭火力発電所廃止時期 MW NSW Liddell 2022 年 2000 NSW Bayswater 2035 年 2640 VIC Loy Yang A 2048 年 2210 出典 :Submission by Australian Energy Council (the Energy Council) The retirement of coal-fired power stations 10 November

ガス不足の解決に向けた取り組み QLD 州政府は Cooper 及び Eromanga Basins

連邦政府は豪州の東西を結ぶガスパイラインの建設の可能性を調査中民間エネルギー大手の AGL 社が VIC

ビクトリア州 ) LNG 受入施設の設置予定場所百万 A$ 200.0 180.0 160.0 140.0 120.

34 ガス不足の解決に向けた取り組み QLD 州政府は Cooper 及び Eromanga Basins の新規の石油ガス探鉱鉱区の入札 NSW 州政府も在来型石油ガス鉱区の入札を計画現在建設中の北部パイプラインに加えて連邦政府は豪州の東西を結ぶガスパイラインの建設の可能性を調査中民間エネルギー大手の AGL 社が VIC 州に浮体式の LNG 受入施設を導入予定 2019 年に建設開始 2020/21 年に操業開始予定 VIC 州 ( ビクトリア州 ) LNG 受入施設の設置予定場所百万 A$ 豪州の東部州における石油ガス探鉱支出の推移 NSW 州 QLD 州 34

35 豪州のガス開発を巡る最近の話題 1.LNGプロジェクトの今後の動向 2. 東海岸のガス不足とLNG 輸出制限 3. 非在来型ガスの開発規制 4. 政治動向 35

ガス開発に係る連邦と州の担当施策豪州は 6 州と 2 特別地域で構成される連邦各州政府の長は首相 ( 特別地域では首席大臣 ) 州毎に異なる制度 ( ロイヤルティ

西オーストラリア州 ) NT 準州 ( 北部準州 ) 州政府土地管理陸上における鉱業権び付与 ( 沿岸から 3 海里以内含む ) 陸上ロイヤルティの徴収鉱山保安

36 ガス開発に係る連邦と州の担当施策豪州は 6 州と 2 特別地域で構成される連邦各州政府の長は首相 ( 特別地域では首席大臣 ) 州毎に異なる制度 ( ロイヤルティ鉱業権環境規制等 ) 連邦と州共に政権交代に伴う政策変更の可能性あり連邦政府通商課税防衛外交等 ( ) 関税消費税外国投資審査海洋の鉱業権の付与 ( 沿岸から3 海里 (5.5km) 以遠 ) 労働法 (Fair Work Act) 連邦環境法に基づく環境規制地質調査 ( 通商課税防衛外交等は州政府との共管的な権限 ) WA 州 ( 西オーストラリア州 ) NT 準州 ( 北部準州 ) 州政府土地管理陸上における鉱業権び付与 ( 沿岸から 3 海里以内含む ) 陸上ロイヤルティの徴収鉱山保安労働安全衛生州環境法に基づく環境規制各州内の地質調査 QLD 州 ( クイーンスラント州 ) SA 州 ( 南オーストラリア州 ) NSW 州 ( ニューサウスウェールス州 ) VIC 州 ( ヒクトリア州 ) TAS 州 ( タスマニア州 ) ACT ( 首都特別地域 ) 豪州の資源の分布 ( イメージ ) 石油 / ガス鉄鉱石非鉄金属石炭 36

各州の政権の変遷労働党緑の党自由党国民党保守連合豪州の政党保守連合と労働党の二大政党緑の党などの少数政党も存在その他少数政党グループ NT 準州 ( 北部準州 ) QLD 州 WA 州 ( クイーンスラント州 ) ( 西オーストラリア州 ) SA 州 ( 南オーストラリア州 ) NSW 州 ( ニューサウスウェールス州 ) VIC 州 ( ヒ

37 各州の政権の変遷労働党緑の党自由党国民党保守連合豪州の政党保守連合と労働党の二大政党緑の党などの少数政党も存在その他少数政党グループ NT 準州 ( 北部準州 ) QLD 州 WA 州 ( クイーンスラント州 ) ( 西オーストラリア州 ) SA 州 ( 南オーストラリア州 ) NSW 州 ( ニューサウスウェールス州 ) VIC 州 ( ヒクトリア州 ) TAS 州 ( タスマニア州 ) NT 準州 ( 北部準州 ) QLD 州 WA 州 ( クイーンスラント州 ) ( 西オーストラリア州 ) SA 州 ( 南オーストラリア州 ) NSW 州 ( ニューサウスウェールス州 ) VIC 州 ( ヒクトリア州 ) TAS 州 ( タスマニア州 ) 2015 年 1 月 2017 年 10 月現在 37

38 政権交代による政策変更連邦議会では保守連合はかろうじて政権を維持各州では労働党への政権交代が続いている今後の資源エネルギー政策環境政策の行方は不透明連邦及び州の政権と政策の動向 2016 年 7 月 : 連邦議会選挙 : 一議席差で与党保守連合が労働党に勝利 2016 年 8 月 :NT 準州で議会選挙労働党に政権交代新政権はフラッキングを一時禁止 ( モラトリアム ) 2017 年 3 月 :WA 州で議会選挙労働党に政権交代新政権はフラッキングを一時禁止 ( モラトリアム ) この他ウランの新規開発なども禁止した 38

39 まとめ 1. 計画中の LNG の新規プロジェクトは FID 未了今後は既設プロジェクトのバックフィルプラントの手直しによる増強計画が主体 2. 東海岸のガス不足の問題輸出制限の発動は回避されたが関係各社が自主的に輸出を制限する形に 3. フラッキングの一時禁止は NT 準州では独立の諮問委員会のお墨付きを得てから解除か? しかし地域住民の理解が必要 ( 社会的ライセンスの問題 ) 環境保護団体の活動は依然活発 NSW 州の新規ガスプロジェクトの行方は要注目 4. 東海岸のガス不足対策のため北部ガスパイプライン建設東西パイプライン構想などがある民間では LNG を輸入する計画も 5. 今後の連邦及び州の政策の動向は要注目 39

40 ご清聴ありがとうございました JOGMEC シドニー事務所山下宜範 40

シドニー事務所からの報告

シドニー事務所からの報告平成 24 年度第 8 回金属資源関連成果発表会豪州の鉱業の状況について平成 24 年 11 月 22 日 JOGMEC シドニー事務所伊藤浩 1 豪州の資源ブームは終わったのか? 2012 年 8 月連邦政府ファーガソン資源エネルギー大臣の発言資源ブームは終わった (Resources boom is over) ギラード首相豪州の鉱業は今後も成長し世界でもっとも重要な経済の一部であり続ける