中国の国有企業改革　～国有石油企業寡占分野に進出する注目の非国有石油企業～

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えのおおかわち
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更新日 :2015/12/18 調査部 : 竹原美佳中国の国有企業改革 ~ 国有石油企業寡占分野に進出する注目の非国有石油企業 ~ 中国では 2014 年以降混合所有制経済 ( 国有企業独占分野の民間や異業種への開放 ) 政策のもと石油天然ガス分野についても上流 ( 探鉱開発 ) から中下流 (LNG 受け入れ基地建設天然ガスパイプライン輸送原油輸入 ) に至る開放をすすめている

1 更新日 :2015/12/18 調査部 : 竹原美佳中国の国有企業改革 ~ 国有石油企業寡占分野に進出する注目の非国有石油企業 ~ 中国では 2014 年以降混合所有制経済 ( 国有企業独占分野の民間や異業種への開放 ) 政策のもと石油天然ガス分野についても上流 ( 探鉱開発 ) から中下流 (LNG 受け入れ基地建設天然ガスパイプライン輸送原油輸入 ) に至る開放をすすめている国有石油企業の寡占分野に乗り出す注目株の非国有石油企業として五大発電企業のうち LNG 輸入事業に積極的な中国華電 (China Power) 国産 LNG の製造販売からカザフスタン上流 LNG 受け入れ基地建設へと事業を広げる広匯能源 (Guanghui Energy) 河北を拠点に手広く都市ガス事業を展開している新奥 (ENN) 北京市で都市ガス事業を展開する北京燃気 (Beijing Gas) を傘下にもつ北京控股 (Beijing Enterprise) などがある政府は国有石油企業 3 社の寡占状態にある天然ガス輸入事業についてパイプラインや LNG 受け入れ基地の公開を促す試行弁法を作成非国有石油企業の事業参加を奨励している前述の注目企業 4 社は 2014 年以降国有石油企業の LNG 受け入れ基地を利用しスポット LNG を輸入したまた広匯能源華電新奥は LNG 受け入れ基地の建設計画を進めているただし中国は現在天然ガスの供給過剰状態にあり国有石油企業はシェア確保の観点から第三者アクセスの拡大に難色を示しているまた政府は既存基地の稼働の低さから当面は新規基地の建設承認に及び腰の模様であるしたがって非国有石油企業の LNG 供給へのインパクトは当面限定的と思われる Shell 仏 Engie( 旧 GDF-Suez) などでこれらの非国有石油企業と提携の動きがある政府は PetroChina の寡占状態にある天然ガスパイプライン事業の分離独立を検討しており PetroChina は油価低迷で収益が落ち込む中非中核事業であるパイプライン資産の売却を進めている国有資産監督管理委員会傘下企業や国有ファンド会社がその受け皿となっている非国有石油企業による上流 ( 探鉱開発 ) 進出はシェールガス探鉱鉱区の入札が 2 度実施され年 7 月には国内企業を対象に新疆の探鉱鉱区の入札が行われ開放は段階的に進んでいると言えるしかしシェールガス探鉱鉱区の探鉱は進んでおらず新疆の探鉱鉱区は既存の油ガス生産基地から離れており探鉱実績がほとんどなく供給へのインパクトは当面限定的と思われる原油輸入分野の開放も進展した政府は 2015 年に非国有石油企業 ( 独立系精製事業者 ) に自社製油所での精製を目的に原油を輸入することを認可しており原油輸入枠は合計 100 万バレル / 日を超えた産油国は新たな供給先として独立系精製事業者の動向に注目している 1

はじめに. (1) 国有石油企業の業界寡占現在中国は国有企業改革を進めており混合所有制経済 ( 国有企業の占有が高い分野の異業種への開放 ) 政策のもと石油天然ガス分野の上流 ( 探鉱開発 ) から中流 ( 輸送 ) 下流( 貿易販売 ) に至る全ての分野で開放をすすめている中国の国有石油企業の業界寡占は電力や石炭など他のエネルギー産業に比べ著しく高い国有石油企業 3 社 (CNPC

2 はじめに. (1) 国有石油企業の業界寡占現在中国は国有企業改革を進めており混合所有制経済 ( 国有企業の占有が高い分野の異業種への開放 ) 政策のもと石油天然ガス分野の上流 ( 探鉱開発 ) から中流 ( 輸送 ) 下流( 貿易販売 ) に至る全ての分野で開放をすすめている中国の国有石油企業の業界寡占は電力や石炭など他のエネルギー産業に比べ著しく高い国有石油企業 3 社 (CNPC SINOPEC CNOOC) は原油生産の約 90% 天然ガス生産の 85% 精製処理量の 73% を占めている ( 図 1 いずれも 2014 年 ) また石油製品販売シェアの約 7 割を SINOPEC と CNPC が占めている後で述べるが原油石油製品の輸入についても 3 社の寡占率が高く独立系精製事業者は 2015 年に輸入ライセンス取得が認められるまで国有石油会社 3 社以外から輸入原油を調達することができなかった原油と天然ガスのパイプラインや LNG 受け入れ基地なども 3 社の寡占率が高い図 1: 国有石油企業 3 社の原油天然ガス生産精製処理量に占める比率電力産業について中国は 2002 年に発送電を分離した国有五大発電企業 ( 華能大唐国電華電中電投 ) の発電設備容量発電電力量に占める比率は約 45% である送電は国家電網と中国南方電網の 2 社がある石炭産業は地方の小規模炭鉱のシェアが高く大手 8 社が石炭生産に占める比率は約 40% であるまた大手 8 社のうち中央企業 ( 主要国有企業現在 112 社 ) に属するのは神華集団と中煤能源集団の 2 社のみである (2) 国有企業改革の三大方針 ~ 混合所有制経済資源配分の市場化資源価格の市場 2

化 ~ 2013 年 11 月の中国共産党第 18 期中央委員会第 3 回全体会議 (18 期三中全会 ) において混合所有経済資源配分の市場化ならびに資源価格の市場化という方針が示された ( 表 1) 混合所有経済は国有資本と集団資本非公有資本 ( 民間 ) が相互に資本参加補完し合うことを意味する資源配分の市場化は行政独占 ( 制度

3 化 ~ 2013 年 11 月の中国共産党第 18 期中央委員会第 3 回全体会議 (18 期三中全会 ) において混合所有経済資源配分の市場化ならびに資源価格の市場化という方針が示された ( 表 1) 混合所有経済は国有資本と集団資本非公有資本 ( 民間 ) が相互に資本参加補完し合うことを意味する資源配分の市場化は行政独占 ( 制度規則上の市場参入障碍によって形成される独占 ) を崩すことを意味し電力網鉄道網通信網石油天然ガスパイプライン網などの整備部門と運営部門を分離する方針が示されたこの方針を受けて 2014 年 2 月に国家発展改革委員会や国家能源局が石油天然ガスパイプラインの開放試行法を公布施行した資源価格の市場化は水石油天然ガス電力交通通信分野の価格改革ならびに競争的部門の価格について自由化 ( 市場価格化 ) を進めるという方針が示された原油価格は 1994 年に市場化しており石油価格は 2013 年 3 月に国際原油価格の変動に応じ 10 営業日毎に見直す基本原則が導入され柔軟性が高まった天然ガス価格は 2014 年 9 月から 2015 年 11 月にかけて非民生用の卸価格 ( シティゲート価格 ) について 3 度見直しが行われた 2015 年 11 月の見直しではシティゲート価格の上下 20% の変動が許容されるなど柔軟性が高まったが見直し頻度の硬直性などの面において市場化にはまだほど遠い状況にある表 1: 国有企業改革の三大方針 3

4 2015 年 10 月 26 日 ~29 日に開催された第 18 期中央委員会第 5 回全体会議 ( 五中全会 ) では第 13 次五か年計画 (2016~2020 年 ) 策定に関する共産党中央の提言が採択されたその中で国有企業改革は財政税制改革金融体制改革とならび将来の発展に向けた重要な改革と位置付けられている国家能源局によると 13 次五か年計画期間中に石油天然ガス産業については探鉱開発から輸入分野に至る開放パイプライン網の独立価格の市場化を形成する方針である本稿では国有石油企業の寡占分野に乗り出す注目株の非国有石油企業の動きとともに石油天然ガス産業における混合所有経済の進捗状況について分析を試みる 1. 国有石油企業寡占分野に進出する注目の非国有石油企業国有石油企業の寡占分野に乗り出す注目株の非国有石油企業として五大発電企業のうち LNG 輸入事業に積極的な中国華電 (China Power) 国産 LNG の製造販売からカザフスタン上流 LNG 受け入れ基地建設へと事業を広げる広匯能源 (Guanghui Energy) 河北を拠点に手広く都市ガス事業を展開している新奥 (ENN) 北京市で都市ガス事業を展開する北京燃気 (Beijing Gas) を傘下にもつ北京控股 (Beijing Enterprise) などがある (1)LNG 受け入れ基地の第三者アクセスや基地建設計画を進める非国有石油企業中国には恒常的に操業している LNG 受入基地が 11 カ所 ( 受け入れ能力計約 4,080 万トン / 年 ) ありいずれも国有石油企業 3 社が地方政府傘下企業と共同で出資操業している ( 図 2) この他上海市の公益企業申能 (Shenergy) i および民間の都市ガス事業者九豊 (Jovo) ii が小型の LNG 受入基地を保有しているが恒常的な輸入操業は行っていない 2014 年の LNG 輸入量は約 1,989 万トンである政府は 2014 年以降エネルギー市場自由化政策のもと LNG 受け入れ基地の第三者アクセスを進めている Sinopec と CNOOC はシェア確保の観点から基地を開放していなかったが PetroChina は 2014 年 8 月以降第三者アクセスを受け入れており広匯能源申能 (Shenergy) ENN Nanjing Pacific Natural Gas Trading が PetroChina の江蘇如東 (Rudong) ならびに河北唐山 (Tangshan)LNG 受け入れ基地を利用しスポット LNG を輸入したまた華電広匯能源新奥は LNG 受け入れ基地の建設計画を進めている 4

5 図 2: 中国の主な稼働建設中 LNG 受け入れ基地 1 華電の LNG 受け入れ基地建設計画と LNG 調達の状況中国華電集団公司 (China Huadian Corporation; 略称華電 ) は中国五大発電企業 ( 華電華能大唐国電国家電力投資公司 ) の 1 社で天然ガス火力発電能力の比率が 6.5% と 5 社の中で最も高くさらに 10% に拡大する計画とされる iii 華電は LNG 受け入れ基地 4 基地の建設を計画している江蘇省赣榆 (Jiangsu Ganyu 連雲港市 ) で 600 万 t/ 年の受け入れ基地建設を計画し商業性調査 (FS) に着手しているその他はまだ計画段階だが広東汕頭 (Guangdong Shantou)150 万トン / 年広東江門 (Guangdong Jiangmen) 海南澄迈 (Hainan Chenmai)300 万トン / 年などの計画がある ( 表 2) また華電は湖南省臨湘 (Hunan Linxiang) に LNG 貯蔵ターミナルの建設を計画している華電は 2015 年 4 月には Sinopec を通じカナダ Pacific NorthWest LNG(2015 年 6 月に条件付きで最終投資決定液化能力 1,200 万 t 2019 年操業開始予定 ) からLNG60 万 t/ 年を購入することで合意し 5

6 た 2015 年 10 月には BP と LNG100 万 t/ 年の売買契約を締結した ( 表 3) これらの LNG は 2019 年頃輸入開始予定とされるしかし華電が計画中の LNG 受け入れ基地建設における中央政府の承認が現時点で下りておらず建設には少なくとも 3 年程度を要するため 2016 年中に基地建設承認が下りなければ輸入開始時期がずれ込む可能性がある表 2: 華電が計画中の LNG 受け入れ基地華電華電華電華電江蘇赣榆 (Jiangsu Ganyu) 広東汕頭 (Guangdong Shantou) 広東江門 (Guangdong Jiangmen) 海南澄迈 (Hainan Chenmai) 受入能力 ( 万 t/ 年 ) 中国天然ガス産業地図冊 2015 年版にもとづき作成 600 未定 150 未定 300 未定 300 未定稼働予定表 3: 華電の調達 ( 合意 ) した LNG 華電カナダ Pacific NorthWest LNG 数量 ( 万 t/ 年 ) 合意時期年 4 月華電 BP 年 10 月 2 広匯能源の LNG 調達と LNG 受け入れ基地建設広匯能源股份 ( 株式 ) 有限公司 (Cuanghui Energy Co., Ltd. 略称広匯能源) は 1994 年に設立 2000 年 5 月に上海で上場している親会社は新疆で 1989 年に設立された民間企業広匯集団でエネルギー開発自動車サービス不動産が主要事業である広匯能源はカザフスタンの Zhaisan 鉱区他で石油天然ガスの探鉱開発を行っており Zaisan 鉱区で生産した天然ガスを自社建設のパイプライン (Zhaisan~ 6

7 新疆吉木乃 <Jimunar> 間 118.5km 輸送能力 5 億 m 3 / 年 2013 年 6 月操業 ) で輸送し新疆 Shanshan や吉木乃の自社プラントで液化 ( 液化能力計 120 万 t/ 年 15 億 m 3 / 年 ) 自社系列の LNG CNG ステーションに供給している石炭については新疆で採掘した石炭をハミの自社プラントでメタノール等化学品に製造し販売までを行っている中国では民間最大級の総合エネルギー企業といえる広匯能源は江蘇省啓東市 (Qidong) で LNG 受け入れ基地の建設を計画している初期の受け入れ能力は 60 万 t/ 年で 300 万 t/ 年への拡張計画がある ( 表 4) 表 4: 広匯能源が建設中の LNG 受け入れ基地広匯能源江蘇啓東 (Jiangsu Qidong) 受入能力 ( 万 t/ 年 ) 稼働予定年広匯能源は 2015 年 8 月に Shell と LNG の購入販売で枠組み合意した 8 月 12 日に LNG 調達 / 貯蔵 / 販売やその他下流事業など LNG バリューチェーン全体で協力することで枠組み合意書を締結したこの他 2015 年 12 月には Petronas と LNG の供給で HoA( 覚書 ) を締結江蘇省啓東 (Qidong) 基地向けとされるが数量や供給源は未公表である Shell は広匯と LNG の輸入マーケティングに係る JVを設立しているが啓東基地への出資は行っておらず今回の合意についてのコメントも行っていない 3 新奥 (ENN) の LNG 調達と LNG 受け入れ基地建設新奥能源股份 ( 株式 ) 有限公司 (ENN Energy Holdings; 略称 ENN) は 1992 年に都市ガス事業を開始した民間企業で本社は北京市から車で 1 時間程度の河北省廊坊市にあり現在 134 都市 (920 万世帯および工商業ユーザー 38,000 件 ) に都市ガスを供給している ENN は浙江省舟山で LNG 受け入れ基地を建設中である受け入れ能力は 300 万トン / 年で操業開始は 2017 年末 ~2018 年を予定している ( 表 5) 中国初の LNG バンカリング ( 船舶燃料 ) 専用のターミナルとなる見通しだ中央政府による環境規制強化の動きが ENN の追い風となりそうだ 2015 年 8 月に交通運輸部が船舶と港湾の環境汚染防止に関するアクションプラン (2015~2020 年 ) iv を公表したがその中で 2015 年末までに中国環境保護部 (NEP) と共に内航船向けの排出基準を設定することや 2020 年末までに天然ガス燃料船への改造に関する基準を発表し基準に準拠しない船舶の改造廃船条件を 7

8 まとめるとしている表 5: 新奥 (ENN) が建設中の LNG 受け入れ基地 ENN 浙江舟山 (Zhejiang Zhoushan) 受入能力稼働予定 ( 万 t/ 年 ) 年末 ~ 2018 年 4 北控 ( 北京燃気 ) の LNG 受け入れ基地第三者アクセス北京控股有限公司 (Beijing Enterprise Holdings Ltd; 略称北控または Beijing Enterprise) は 1997 年に北京市政府系企業が合併設立した香港登記企業で都市ガスや燕京ビールの製造廃棄物処理などを行っているコングロマリットである子会社の北京燃気 ( ガス ) を通じ北京天津河北省への都市ガス供給を行っている北控は LNG 受入基地の建設計画はない 2015 年初頭にカナダ Progress Energy と Pacific North West LNG プロジェクトの権益 10%(100 万トン / 年相当 ) の取得について交渉を行っていたが 6 月に価格が折り合わず参加を断念した模様である v 2015 年 11 月には PetroChina の河北省唐山 (Tangshan)LNG 受け入れ基地を通じ LNG 輸入カーゴを仏 ENGIE から受け入れた現在 PetroChina はシェア確保の観点から LNG 受け入れ基地を他社に開放しない方針だが北控は唐山 LNG 受け入れ基地に 29% 出資しているため今後も利用することが可能である (2)Shell 仏 Engie( 旧 GDF-Suez) はこれらの非国有石油企業と提携の動き 2014 年 8 月に Shell は広匯との LNG の輸入やマーケティングで枠組み合意を行った 2015 年 11 月に仏 ENGIE( 旧 GDF スエズ ) は国有発電大手華能および Beijing Enterprise と中国内外におけるエネルギーバリューチェーンにおける協力で合意エネルギーバリューチェーンの特に電力天然ガスエネルギー関連サービスについて低炭素経済への移行に向け効率的かつ革新的な課題解決に重点を置いて取り組むことで合意した vi (3) 政府は天然ガスの供給過剰を受け LNG 受け入れ基地の新設承認に及び腰第三者アクセスも縮 8

9 小傾向にあり LNG 供給へのインパクトは当面限定的ただし現在中国は天然ガスの供給過剰状態にあり政府は LNG 受け入れ基地に対する非国有石油企業の投資が拡大することは歓迎するが LNG の供給過剰と既存の LNG 受入基地の利用率が低い現状に鑑み新たな受け入れ基地建設の承認に及び腰である中国の受け入れ基地の能力は 2014 年末の 4,080 万 tから 2015 年末に 4,580 万 tに 2017 年末には 8,320 万 tに拡大するしかし 2015 年 1-9 月の LNG 輸入量は前年同期比 4% 減の 1,400 万 tにとどまっているまた国有石油企業はシェア確保の観点から第三者アクセスの拡大に難色を示しているしたがって非国有石油企業の LNG 供給へのインパクトは当面限定的と思われる 2. 天然ガスパイプライン事業の分離独立 (1) 政府は天然ガスパイプラインの開放と分離独立に向けた法整備を実施 2014 年 2 月国家能源局は石油天然ガスパイプライン網の公平な開放と監督管理弁法 ( 試行 ) に関する通知 ( 以下開放管理法 ) を発表した開放管理法は石油天然ガスパイプライン事業者が設備に余剰能力がある場合第三者 ( 中国国内登記企業 ) に対しパイプラインを公平に開放しパイプライン設備に伴うサービス ( 輸送貯蔵ガス化液化圧縮 ) を提供することを定めているまた開放管理法は国家能源局による監督価格の決定第三者アクセス (Third Party Access;TPA) の手順情報公開透明性事業分割の布石などについて定めている公布と同時に施行され試行期間は 5 年間である開放の目的はインフラ有効利用による国内供給の強化であり競争的業務の自由化政策に合致している ( 解放管理法については中国の石油産業改革 ~ 石油天然ガスパイプラインの開放試行天然ガス価格の市場価格化 ~ ( 石油天然ガス資源情報 2014 年 3 月参照 ) 政府は PetroChina の寡占状態にある天然ガスパイプライン事業の分離独立を検討しており PetroChina はパイプライン資産の売却を進めており国有資産監督管理委員会傘下企業や国有ファンド会社が受け皿となっている (2) PetroChina 中央アジアパイプラインの権益を国有資産監督管理委員会の資産整理企業に売却パイプライン事業分離の布石か PetroChina は 11 月に中央アジアパイプライン ( 表 6) の株式 50%( 現在建設中の D 線および一部のキャッシュ等資産を除く ) を中国国新控股有限責任公司の傘下企業に 150~155 億元 (2,800 億円前後 ) で 9

10 売却する計画を公表した PetroChina 子会社中油勘探 (CNODC) の全額出資子会社天津泰普と国新傘下企業の曼松控股 (Manson Holdings) の間で行われる中国国新は 2010 年に国有企業を管理する国務院の国有資産監督管理委員会により創設された主な任務は中央企業の再編にあり今回の資産売却はパイプライン事業分離の布石ではないかと思われるまた PetroChina にとりパイプライン資産売却は政府に迫られた苦渋の選択とは言えない中国では天然ガス価格タリフが統制されておりパイプライン事業は同社にとり赤字続きの不採算部門であった油価低迷で収益が落ち込む中非中核事業であるパイプライン事業を売却し中核事業に注力することが可能となった表 6: 中央アジアパイプライン中央アジアA 中央アジアB 中央アジアC 中央アジアD 企業中国国境総延長 km 輸送能力億 m3/y 稼働時期 ( 見込み ) トルクメニスタン~ウズベク ~カザフスタン CNPC 新疆コルガス 2,006 稼働中 2009 年 12 月トルクメニスタン~ウズベク ~カザフスタン CNPC 新疆コルガス 2, 稼働中 2011 年 11 月トルクメニスタン~ウズベク ~カザフスタン CNPC 新疆コルガス 1, 稼働中 2014 年 6 月トルクメニスタン ~ ウズベク ~ タジク ~ キルギス CNPC 新疆烏恰 (Wuqia) 1, 建設中 2020 年末 3. 非国有石油企業の探鉱開発 ( 上流 ) 事業への参加 (1)2015 年 7 月国内企業限定の新疆鉱区入札公示 10 月結果公開 2015 年 7 月に国土資源部は中国国内企業を対象に新疆 6 鉱区 ( 計 14,975 km2) を公開した対象鉱区は新疆布爾津 Burjin 伊犂 Yili 塔城 Tacheng タリム Tarim 敦煌 Dunhuan 堆積盆地に位置している 2015 年 10 月 27 日に政府は入札の結果を公示した 13 社が申請応札のあった 5 鉱区のうち 4 鉱区を北京燃気 ( ガス ) や中国燃気の親会社である Beijing enterprise が落札残り 1 鉱区は山東省の化学企業が落札した ( 表 7) 表 7: 新疆入札鉱区 (2015 年 7 月公示 10 月結果発表 ) 10

11 鉱区位置鉱区位置 ( 英文 ) 鉱区面積第 1 落札者第 2 落札者第 3 落札者新疆布尔津盆地 Burqin Basin 布尔津地区 Burqin area 新疆伊犁盆地巩留地区新疆塔城盆地裕民地区新疆塔里木盆地柯坪北地区新疆塔里木盆地喀什疏勒地区新疆敦煌盆地罗布泊东南国土資源部に基づき作成 Yili Basin Gongliu area Tarcheng Basin Yumin area Tarim Basin Keping North Tarim Basin Kashishule area Dunhuang Basin South East Lop Nur area 3,141 山东宝莫生物化工股份有限公司 Shandong Polymer Biochemicals Co 1,583 北京能源投资 ( 集团 ) 有限公司 Beijing Energy Group 2,613 2,118 北京能源投资 ( 集团 ) 有限公司 Beijing Energy Group 2,068 北京能源投资 ( 集团 ) 有限公司 Beijing Energy Group 3,452 林州重机集团股份有限公司 Linzhou Machinery Group Co. 海城市石油机械制造有限责任公司 Haicheng Petroleum Machinery Co 林州重机集团股份有限公司 Linzhou Machinery Group Co. 山东宝莫生物化工股份有限公司 Shandong Polymer Biochemicals Co 新疆中泰 ( 集团 ) 有限责任公司 Xinjiang Zhong Tai Group 新疆能源 ( 集团 ) 有限责任公司 Xinjiang Energy Corporation 辽宁辽河钻探工程有限公司 Liaoning Liaohe Drilling Engineering Co. 辽宁石油机械制造有限公司 Liaoning Petroleum Machinery Co (2) 上流の開放は段階的に実施供給へのインパクトは当面限定的新疆の対象鉱区はタリム盆地を除き油ガスの発見はなくタリム盆地の鉱区についても現在生産中エリアから離れたリモートエリアであり油ガス田生産インフラは近傍に存在せず開発には時間とコストがかかり短期的に供給への大きなインパクトは見込めないこの他 PetroChina は四川堆積盆地で保有する 65,000Km 2 のシェールガス鉱区の 75% を地場企業との共同開発とする計画を表明している同社はすでに四川省政府系国有資本投資公司の四川能源投資集団有限責任公司 (Sichuan Energy Industry Investment Group 2011 年 2 月設立資本金億元 <15 億ドル > 同省のエネルギーインフラおよびプロジェクトに関与 ) と四川長寧天然ガス開発有限責任公司を設立し長寧 (Chengning) 鉱区のシェールガス開発を共同で行っているしかしこれらの提携が供給におよぼす影響は当面限定的と思われる 11

12 4. 非国有独立系製油所の原油自己調達 ( 輸入 ) (1) 独立系製油所の原油輸入枠が計 100 万バレル / 日に拡大新たな供給先として注目を集める 2015 年 10 月 22 日までに非国有の独立系製油所 11 社が原油輸入ライセンスを取得した原油輸入枠は 11 社合計 4,979 万 t 100 万バレル / 日で 2014 年原油純輸入量 616 万バレル / 日の 16% に相当する ( 表 8) これまで非国有石油企業への原油輸入枠は毎年設けられていたが輸入者はそれを国有石油企業に販売しなければならなかったしかし今回原油輸入枠を付与された企業は自社製油所で処理することが可能であるなお原油輸入枠は次年度輸入枠設定のために前年の輸入枠を使い切る義務はない独立系製油所は南米から東南アジアまで様々な原油を調達している東明北方はベネズエラ Merey 原油の代替を模索したオマーン原油の中国向け輸出拡大の一因は独立系製油所による調達 ( ロシアの ESPO とSokol のプレミアムを嫌気し 1.5 ドル / バレルのタリフを上乗せしても割安なオマーン原油に向かった ) とされるサウジアラビアロシアなどの主要輸出国はこの新たな成長市場に注目している表 8: 中国の独立系製油所原油輸入枠 ( 取得時期 ) 1 山東 2 遼寧 3 山東 4 山東 5 山東 6 山東 7 寧夏 8 山東 9 山東 10 山東 11 山東企業輸入枠 ( 万トン / 年 ) 輸入枠 ( 万 b/d) 取得時期東明石化 (Dongming) 年 5 月盤錦北方 (Panjin Beifang) 年 6 月中化弘潤 (Sinochem Hongrun) 年 7 月墾利石化集団 (Kenli) 年 7 月利津石油化工廠 (Lijin) 年 7 月東営亜通石化 (Yatong) 年 7 月宝塔石化 (Baoda) 年 8 月京博石油化工 (Jinbo) 年 10 月寿光魯清石化 (Shuguang) 年 10 月天弘化学 (Tianhong) 年 10 月匯豊石化 (Huihong) 年 10 月合計 4, 中国石油化学工業連合会等に基づき作成 12

13 i 上海五号溝 LNG 受け入れ基地 ( 受入能力 50 万トン / 年 ) ii 広東省東莞市に小型の受入基地 ( 受入能力 100 万トン / 年 ) iii WGI 15/10/28 iv 交通运输部关于印发船舶与港口污染防治专项行动实施方案 ( 年 ) 的通知 2015 年 8 月 27 日付 31 日公表交水発号 v IOD 15/6/25 vi 13

中国：“新常態”（ニューノーマル）における石油消費構造の変化

中国：“新常態”（ニューノーマル）における石油消費構造の変化更新日 :216/3/28 調査部 : 竹原美佳中国 : 新常態 ( ニューノーマル ) における石油消費構造の変化エネルギー消費構造の変化経済新常態エネルギー効率向上環境政策によりエネルギー消費構造は変化 ( 石炭消費の伸びが鈍化し非化石エネルギーによる代替が進展 ) 石油消費構造の変化石油消費は 21 年頃まで軽油が牽引していたがその後はガソリンジェット燃料等の輸送燃料が牽引産業牽引から個人消費牽引型へと移行

中国の国有企業改革 ～国有石油企業寡占分野に進出する注目の非国有石油企業～

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