輸入天然ガスに頼っているのが実情である ( 図 1) トルコはパイプラインによってブルガリアイランそしてロシアから天然ガスの供給を受けている 2003 年に黒海を横断するBlue Streamパイプラインが完成する以前はトルコのほとんどのガスは主にブルガリア ( トルコの西 ) 経由でロシアから

Size: px

Start display at page:

Download "輸入天然ガスに頼っているのが実情である ( 図 1) トルコはパイプラインによってブルガリアイランそしてロシアから天然ガスの供給を受けている 2003 年に黒海を横断するBlue Streamパイプラインが完成する以前はトルコのほとんどのガスは主にブルガリア ( トルコの西 ) 経由でロシアから"

ひでかかやぬま
7 years ago
Views:

1 トルコ : 最近の LNG 動向と今後の展望 2007 年 12 月下旬のトルクメニスタンからイランへの天然ガス供給 (2,000 万 ~2,300 万 m 3 / 日 ) の途絶に端を発したイランからトルコへのパイプラインガスの削減等によりトルコは近年にないガス不足となりスポット LNG4 カーゴを受け入れた今回トルコのスポット LNG 受け入れのニュースに関連し同国の天然ガス事情と LNG に関する動向を以下にリポートする 1. LNG をめぐる最近のニュース 2008 年 1 月トルコの事実上のガス独占企業である国営石油パイプライン会社 Botas Petroleum Pipeline Corporation ( 以下 Botas) は 2007 年 12 月下旬のトルクメニスタンからイランへの通常 2,000 万 ~2,300 万 m 3 / 日である天然ガス供給の途絶に端を発したイランから同国へのパイプラインガスの削減等により近年にないガス不足となり Botasはロシア (Gazprom) からの天然ガス供給を1,000 万 ~4,000 万 m 3 / 日 ( 気温による ) 増量して対応するとともにマルマラ海の枯渇ガス田を活用したシリブリ天然ガス地下貯蔵施設から1,400 万 m 3 / 日の天然ガスを供給したさらにスポット LNG4カーゴ (1 月 3カーゴ 2 月 1カーゴ ) をイスタンブール南方イズミール近郊のAliaga LNG 基地で受け入れた 1 船めのスポットLNGは2008 年 1 月 13 日にアルジェリアからおよそ17~18ドル /MMBtu の価格で調達したと伝えられる 2 船め以降のスポットカーゴの情報は公表されていない (LNG in World Markets, 2008 年 2 月他 ) 関連情報として JOGMECホームページの石油天然ガス資源情報の古幡哲也トルクメニスタンの天然ガスパイプラインを取り巻く最近の情勢 2008 年 1 月 22 日を参照されたい 1990 年代初頭トルコはロシアからパイプラインガスを購入する計画 (Blue Stream West-2) を進めていたため当時大規模 LNG 液化プラントの投資を決定するために買い主を必要としていたカタールのLNG 売買に関する提案を断った経緯があったしかし今冬のイランからのパイプラインガス減少停止による天然ガスの安定供給の観点から 2008 年 2 月トルコの Abdullah Gül 大統領はカタールを訪問し 2010 年から LNGを購入したいとの意向を伝えた今回トルコのこのようなLNG 売買に関するニュースに基づき同国の天然ガス (LNG) について最近の動向とその背景を以下に整理した 2. 天然ガス事情トルコは天然ガスの主要生産者ではなくまた十分な埋蔵量を持たない国であるトルコの工業一般需要家は Distribution of Sales by Sectors (2006) INDUSTRY 19% RESIDENTIAL 22% FERTILIZER INDUSTRY 2% POWER GENERATION 57% 図 1 ガス供給のソース別比率図 2 天然ガスの需要家割合 71 石油天然ガスレビュー

2 輸入天然ガスに頼っているのが実情である ( 図 1) トルコはパイプラインによってブルガリアイランそしてロシアから天然ガスの供給を受けている 2003 年に黒海を横断するBlue Streamパイプラインが完成する以前はトルコのほとんどのガスは主にブルガリア ( トルコの西 ) 経由でロシアからの天然ガス供給に頼っていたが現在はロシアから直接パイプラインがトルコにつながっている 2001 年にはイランからトルコへのパイプラインが完成しトルコの東からの天然ガス供給量が増加したことによって天然ガスの供給源が多様化している 2007 年にはカスピ海のアゼルバイジャン (Shah Denizプロジェクト ) のガスを South Caucasianパイプラインを通じて輸入開始したまた後述のとおりトルコにはLNG 輸入基地が2カ所存在するトルコは現在ロシアアゼルバイジャントルクメニスタンイラクイランエジプトアルジェリア (LNG) およびナイジェリア (LNG) と天然ガ表 1 天然ガスの需要予測年億 m 3 / 年スの長期売買契約を締結している 2006 年にはおよそ550 万件の顧客に約 300 億 m 3 の天然ガスを供給し年間 15% の需要増が見込まれるなか 2020 年には天然ガス消費量が約 600 億 m 3 にまで増加すると予想されている ( 表 1) そのガス供給ソース ( 図 1) は約 80% がロシアとイランからのパイプラインガスであり残りの20% 弱がアルジェリアとナイジェリアからの長期契約による LNGであるトルコはさらなる天然ガス供給ソースの多様化を目指し LNG 受け入れ量の増量を図っていくと考えられるトルコの主な天然ガス契約 (LNG 含む ) を表 2に示す現状のロシアイラン等からの天然ガス供給契約にはテイクオアペイ条項が付けられており契約量どおりのガスを引き取らなければ論理的には最大 10 億ドルのペナルティーが科せられることになっているそこでトルコ当局はマルマラ海底下や中央 Anatolia ( アナトリア ) の塩湖であるTuz Golu ( トゥズ湖 ) の下に岩塩ドーム (Salt Cavern) を利用した天然ガスの地下貯蔵を検討中である ( 図 3) この天然ガス貯蔵施設は Tuz Goluの地下約 1,150mに位置し完成すれば9 億 6,000 万 m 3 のワーキングガス ( クッションガスの圧力を利用して出し入れするガス ) と4 億 6,000 万 m 3 のクッションガス ( 地下貯蔵ガスの取り出し圧力を維持するために残されるガス ) から成る施設となる貯蔵ガス量はトルコが必要とする量より少ないがトルコの天然ガス需要にとっては大事な一歩となると思われるトルコでは他にも天然ガス貯蔵プロジェクトが進行中である国営石油会社 TPAOはマルマラ海北部のSilivri( シリブリ ) にある枯渇ガス田を利用した天然ガス地下貯蔵施設を保有している BotasはTarsus( タルスス ) にも岩塩ドームを利用した天然ガス地下貯蔵施設を計画中である 3. LNG の概要トルコはイスタンブール近郊の同国西部マルマラ海西岸に1994 年に操業を開始したBotas 所有のMarmara LNG 基地で LNGをアルジェリアとナイジェリアから輸入しているまた Botasはエーゲ海に面したところに位置する民間会社 (Egegaz) 所有のAliaga LNG 基地の利用を2006 年から開始した ( 図 3) Botasはこの受入基地で60 億 m 3 / 年相当のLNGをスポットマーケットから調達する予定である以下に二つのLNG 受入基地の概要を示す (1) Marmara LNG 基地正式名 Marmara Ereglisi Liquefied Natural Gas (LNG)Import Terminal 表 2 主な天然ガス契約契約契約量 (10 億 m 3 / 年 ) 契約年月契約年数操業開始 Russian Fed.(West-1) 年 2 月 25 年 1987 年 Algeria(LNG) 年 4 月 20 年 1994 年 N i g e r i a( L N G ) 年 11 月 22 年 1999 年 Iran 年 8 月 25 年 2001 年 Russian Fed.(Black Sea) 年 12 月 25 年 2003 年 Russian Fed.(West-2) 年 2 月 23 年 1998 年 Turkmenistan 年 5 月 30 年 Azerbaijan 年 3 月 15 年 2007 年 Vol.42 No.3 72

3 Marmara LNG 基地 Silivri( シリブリ ) ガス地 Aliaga LNG 基地稼働中計画中 Tuz Golu ト ) ガス CEYHAN LNG 基地 ( 計画 ) 他を参考に JOGMEC 作成写 1 Marmara LNG 基地図 3 主な天然ガスインフラ表 3 Marmara LNG 基地の概要完成年所有者 / オペレーター最大着桟可能船舶 40,000~135,000m 3 LNG タンク容量ガス送出能力操業開始年基地使用権受入能力 LNG 供給元プロジェクトコスト Botas(Botas Petroleum Pipeline Corporation) 1994 年 3 85,000m 3 tanks(full-containment 9% ニッケル鋼高さ 39m) 建設 :PDM International 64 億 m 3 / 年 LNG 換算 460 万トン / 年 ( オープンラック式べーパラーザー : 能力 163 トン /h 3 基サブマージ式べーパライザー : 能力 89 トン /h 4 基 ) 1994 年 Botas が 100% 使用権 Primarily from Algeria and Nigeria but other sources include Qatar and Yemen 約 3 億 6,400 万ドル表 4 Aliaga LNG 基地の概要完成年 2002 年所有者 / オペレーター Egegaz LNG 最大着桟可能船舶 135,000m 3 LNGタンク容量 2 140,000m 3 ガス送出能力 62 億 m 3 / 年 LNG 換算 500 万トン / 年 ( 約 500 万トン / 年相当 ) 操業開始年 2006 年基地使用権所有者に同じ (2006 年 8 月にBotasが 1 年間の100% 使用権を保有 ) 受入能力プロジェクトコスト約 6 億ドル出所 : 各種資料を基にJOGMEC 作成 73 石油天然ガスレビュー

4 Marmara Ereglisi El Ferrol Sines Huelva Madeira Tangier Montoir Bordeaux Gijon Bilbao Barcelona Le Havre Sagunto Cartagena Dunkerque Fos Cavaou Fos sur Mer Rogivo Panigaglia Porto Empedocle Livorno Krk Island Fieri Gioia Tauro Revythoussa Crete Aliaga Aliaga Marmara Ereglisi Vasiliko(onshore) Vasiliko(off shore) Tenerife Gran Canaria 図 4 南ヨーロッパの LNG 受入基地 ( 表 3) は Marmara Ereglisi 社が天然ガス供給ソースの多様化と供給の安定と弾力性を目的に建設した Botasはオペレーションとベースロードの役割を担うとともに要望があればピークシェービング用としても利用する 1994 年から Botasにより操業を開始しており LNG 調達は1995 年 10 月から368 万トン / 年 20 年間の長期契約をSonatrachとの間で締結しているまた Nigerian LNGとも89 万トン / 年の長期契約を締結している現在のガス送出量はおよそ40 億 m 3 / 年である天然ガス消費量が少ない夏場で 20 万トン / 月程度のLNGを受け入れ天然ガス消費量が多くなる冬場は約 40 万トン / 月程度のLNGを受け入れている写 1 の中央に三つ並んでいるのは各容量 8 万 5,000m 3 のLNGタンク手前はLNG 船用の桟橋写真向かって右側の岸壁から白濁状のものが流れ出ているのは海水の熱でLNGを気化させるオープンラック式べーパラーザーの排水と思われる (2)Aliaga LNG 基地このLNG 基地 ( 表 4) の詳細情報はあまりない 2002 年にColagogluファミリーが所有するEgegazにより建設され 2002 年に完成したが基地オペレーターであるEgegazは事実上独占企業である Botasとの関係上基地オペレーションのためのライセンスを得ることができなかった結局 2006 年にBotasが1 年間の基地利用権を得るまでこの基地は稼働開始できなかった (3)LNG 液化も検討さらにトルコはBlue Streamパイプラインによってロシアから輸入した天然ガスの一部をCeyhan( ジェイハン ) で LNGに液化し輸出することも検討している同国はこれを自国の天然ガス輸送センターとしての機能の一つのオプションであり将来の天然ガス余剰輸入時に備えた可能性の一つと位置づけている 4. 参考 : 南ヨーロッパの LNG 受入基地図 4に南ヨーロッパのLNG 受入基地 ( 計画構想含む ) を示す現在南ヨーロッパには12カ所のLNG 受入基地があり総ガス送出能力は800 億 m 3 / 年弱になる 2014 年ごろまでに31カ所にまで増加し総ガス送出能力は約 2,000 億 m 3 / 年に達すると予想される ( 表 5) Vol.42 No.3 74

5 表 5 南ヨーロッパの LNG 受入基地一覧国 / 地域基地名ステータス現ガス送出能力将来拡張完成年スペイン Huelva エンジニアリング遅れ年以降 Sagunto 拡張工事中年 Barcelona 拡張計画中年 Bilbao 拡張計画中年 Cartagena 稼働中 El Ferrol(Reganosa) 稼働中年 Gijon 提案中年以降ポルトガル Sines 稼働中フランスイタリア Montoir 拡張予備エンジニアリング中 &2014 年 Fos sur Mer 稼働中 Fos Cavaou 完成間近年 Dunkerque エンジニアリング入札間近年 Bordeaux(Le Verdon) 計画中 62 Le Havre(Abtifer) FID に先立ち需要家募集中年 Panigaglia 稼働中 Livorno 建設中年 Rovigo 建設中年 Gioia Tauro FID 待ち年 Porto Empedocle(Sicily) FID 待ち年クロアチア Krk Island FID 待ち年アルバニア Fieri 計画中年以降ギリシャキプロストルコ Revythoussa スタートアップ中年までに本稼働開始 Crete FS 開始年以降 Vasiliko(on shore) コンサルタント入札進行中 2012 年 Vasiliko(off shore) コンサルタント入札進行中年 Marmara Ereglisi 稼働中 Aliaga 完成モロッコ Tangier/Jorf Lasfar FS 完了 2017 年カナリア諸島 Gran Canaria エンジニアリング入札進行中年 Tenerife エンジニアリング入札進行中年マディラ諸島 Madeira 計画中 2011 年合計 766 1,927 ( 単位 : 億 m 3 / 年 ) ( 三神直人 ) 75 石油天然ガスレビュー

Microsoft Word _out_h_tr_ru_ir_kz_lmg_gas.doc

Microsoft Word _out_h_tr_ru_ir_kz_lmg_gas.doc 更新日 :2008/3/24 調査部 : 三神直人タイトル : トルコの LNG 動向他 (Botas ホームページ LNGWM 他各種情報紙 ) 2007 年 12 月下旬のトルクメニスタンからイランへの天然ガス供給 (2,000 万 ~2,300 万 m 3 / 日 ) の途絶に端を発したイランからトルコへのパイプラインガスの削減等によりトルコは近年にないガス不足となりスポット LNG4