全国学力 学習状況調査の調査結果の活用による指導改善に向けた説明会資料 [ 小学校算数 ]
全国学力 学習状況調査の調査結果の活用による指導改善に向けた説明会 小学校算数 中学校数学部会 全国学力 学習状況調査結果を活用した指導改善 小学校算数 1 平成 19~22 年の 4 年間の調査結果から明らかになった小学校算数の課題について (1) 4 年間の調査結果から課題として考えられる内容 について 数と計算 における課題 乗法や除法の意味を理解すること 量と測定 における課題 求積に必要な情報 ( 図形の長さ及び図形の性質 ) を取り出して面積を求めること 図形 における課題 図形の性質を基に事象を判断すること 数量関係 における課題 計算の順序についてのきまりなどを理解すること 割合の意味を理解すること (2) 記述式の問題における学習指導のポイント について 2 全国学力 学習状況調査結果を活用した小学校算数の指導改善に向けて (1) 調査問題の設定状況 内容から, 何が指導に問われているのかを再度検証すること ~ 学習指導要領の趣旨を生かして問題を作成しているからこそ ~ (2) 問題の趣旨, 正答の条件から, 日々の授業の評価規準を明確にすること ~ 目標を具体化した児童の姿を明確にすることから指導と評価の一体化がなされるからこそ ~ (3) 解答類型から, 児童の実態とウィークポイントを把握すること ~ 誤答の状況の理解があって初めて, 正答へと導く指導の工夫が生み出されるからこそ ~ (4) 児童質問紙から, これまでの授業を検証すること ~1 単位時間の中での問題量, 言語活動の場面を検証することから日常の授業改善へ ~ 3 平成 24 年度調査問題及び調査結果から課題として考えられる内容についての取組を検証する 4 年間の調査結果から課題として考えられる内容 平成 24 年度問題 数と計算 における課題 乗法や除法の意味を理解する A3(1)(2) 量と測定 における課題 A5(2) 求積に必要な情報( 図形の長さ及び図形の性質 ) を取り出して面積を求める B3(1) 図形 における課題 B3(2) 図形の性質を基に事象を判断する B5(1) 数量関係 における課題 A1(5) 計算の順序についてのきまりなどを理解する B2(1) 数量関係 における課題 A8 割合の意味を理解する B5(3) 4 平成 24 年度調査問題及び調査結果から, 新学習指導要領に対応した教育課程を検証する 平成 20 年告示学習指導要領の移行措置の内容 平成 24 年度問題 第 4 学年 A(5) イ小数の加法及び減法の計算の仕方を考え, それらの計算がで A1(3) きること 小数第 2 位までの計算 第 5 学年 A(4) オ異分母の分数の加法及び減法の計算の仕方を考えそれらの計算ができること A1(6) 第 5 学年 A(4) カ乗数や除数が整数である場合の分数の乗法及び除法の意味に A1(7) ついて理解し, 計算の仕方を考え, それらの計算ができること 第 5 学年 B(3) ア 測定値の平均について知ること A4 第 4 学年 C(2) ア 立方体, 直方体について知ること イ 直方体に関連して, 直線や平面の並行や垂直の関係について A6(2) 理解すること 第 5 学年 D(1) ア 簡単な場合について, 比例の関係があることを知ること A9,B5(2) 第 5 学年 A(1) イ 約数, 倍数について知ること B2(3) 第 5 学年 B(1) ア三角形, 平行四辺形, ひし形及び台形の面積の求め方を考え B3(1)(2) ること -1-
第 2 章小学校算数 Ⅲ 4 年間の調査結果から課題として考えられる内容と学習指導のポイント 過去 4 年間の調査において, 同じような趣旨の下に複数年度にわたって出題し, 正答率がおおむね 70% を下回る内容を課題として捉え, 領域に分けて整理するとともに, それらの課題の解決に向けた学習指導のポイントについて, 小学校学習指導要領解説算数編 ( 平成 20 年 8 月 ) の内容を基に述べる 領域ごとに課題を整理すると次の 5 つになる 1 数と計算 における課題 乗法や除法の意味を理解すること 2 量と測定 における課題 求積に必要な情報 ( 図形の長さ及び図形の性質 ) を取り出して面積を求めること 3 図形 における課題 図形の性質を基に事象を判断すること 4 1 数量関係 における課題 計算の順序についてのきまりなどを理解すること 4 2 数量関係 における課題 割合の意味を理解すること -2-
4 年間の調査結果から今後の取組が期待される内容のまとめ 1 数と計算 (1) 数と計算 における課題 乗法や除法の意味を理解すること 該当する調査問題 調査結果等 調査問題 : 平成 19 年度 A 4 演算決定正答率 54.3% 調査問題 調査結果等 (P 2 P 3 参照 ) 調査問題 : 平成 20 年度 A 3 乗数と積の大きさ, 除数と商の大きさの関係正答率 45.3% 調査問題 調査結果等 (P 4 P 5 参照 ) 調査問題 : 平成 20 年度 A 4(2) 除法の意味 ( 割合を求める場合 ) 正答率 55.7% 調査問題 調査結果等 (P 6 P 8 参照 ) 調査問題 : 平成 22 年度 A 2(1) 除法の意味正答率 54.1% 調査問題 調査結果等 (P 9 P10 参照 ) ( ) 内は, 資料編の掲載ページを示す 以下同じ ここでは, 次の設問を取り上げて説明する 左の図 1 は平成 19 年度算数 A 4 演算決定 4 答えが 210 * 0.6 の式で求められる問題を, 下の 1 から 4 までの中から 1 つ選んで, その番号を書きましょう さとう 1 砂糖を 0.6 kg 買って,210 円はらいました この砂糖 1 kg のねだんはいくらでしょう 2 210 kg の大豆を 0.6 kg ずつふくろにつめます 大豆を全部つめるには, ふくろはいくついるでしょう 3 1 m のねだんが 210 円のリボンを 0.6 m 買いました リボンの代金はいくらでしょう 4 赤いテープの長さは 210 cm です 赤いテープの長さは白いテープの長さの 0.6 倍です 白いテープの長さは何 cm でしょう 図 1 平成 19 年度調査問題算数 A 4 の問題である 本問題の正答率は 54.3% であり, 小数の乗法の意味について理解し, 問題の場面から式を考えることに課題があることがうかがえる また, 本問題の誤答についてみると,4 を選択した児童が 30.1% いた これは, 文章に 倍 という表現が含まれることから乗法と判断していると考えられる 具体的な問題を基に考察したが, 過去 4 年間の乗法や除法の意味についての課題を整理すると次のようになる 小数の乗法の意味について理解し, 問題の場面から式を考えることに課題がある 小数の計算における乗数と積の大きさ, 除数と商の大きさの関係についての理解に課題がある 基準量 ( 基準にする大きさ ) よりも比較量 ( 割合に当たる大きさ ) の方が小さい場面で, 何倍かを求めるために除法が用いられることの理解に課題がある 商が 1 より小さくなる等分除 ( 整数 ) ( 整数 ) の場面で, 除法が用いられることの理解に課題がある -3-
第 2 章小学校算数 (2) これからの 数と計算 における学習指導のポイント 計算の指導に当たっては, 計算の意味について理解すること, 計算の仕方を考えること, また計算に習熟し活用できるようにすることが大切な狙いである その中でも特に, 計算の意味について理解すること に関して, 乗法の学習は第 2 学年から, 一方, 除法の学習は第 3 学年から指導される そして, それぞれの学年の内容に 計算の意味について理解すること が明記されている 乗法や除法の意味について理解することは, 第 2, 第 3 学年から系統的に指導することが求められるのである また, 過去 4 年間の調査結果から, 学習指導に当たって工夫改善を要する重点事項は次のようになる 倍 という表現を含む文章から, 何が基準量になっているのかを確認して数量関係を捉えられるようにすること 数直線や図などを用いたり, 具体的な場面に当てはめたりして数量の関係を捉えるようにして, 乗数と積の大きさ, 除数と商の大きさの関係を調べる活動を取り入れること 簡単な数に置き換えて数量関係を考える活動を取り入れ, 児童が自ら問題を解決する手がかりを作っていけるようにすること 基準量よりも比較量の方が小さい場面で, 割合 ( 倍 ) が1より小さくなることを理解できるようにすること 商が1より小さくなる等分除 ( 整数 ) ( 整数 ) の場面では, 何が被除数で, 何が除数かを捉えて立式できるようにすること 課題の解決に向けた 授業アイディア例 授業アイディア例 1 [ 対象 : 第 5 学年以上 ] 除法の結果を表す分数について理解する (P78 参照 ) 授業アイディア例 2 [ 対象 : 第 5 学年以上 ] 付点音符と付点 2 分音符の長さの関係 (1.5 倍 ) を正しく図に表し, 図が正しいわけを説明する (P79 参照 ) ( ) 内は, 資料編の掲載ページを示す 以下同じ -4-
4 年間の調査結果から今後の取組が期待される内容のまとめ 2 量と測定 (1) 量と測定 における課題 求積に必要な情報 ( 図形の長さ及び図形の性質 ) を取り出して面積を求めること 該当する調査問題 調査結果等 調査問題 : 平成 19 年度 B 5(3) 事象の観察と判断 ( 道路 ) 正答率 18.2% 調査問題 調査結果等 (P12 P14 参照 ) 調査問題 : 平成 20 年度 B 3(1) 発展的に考えること ( 図形の性質と面積 ) 正答率 58.0% 調査問題 調査結果等 (P15 P19 参照 ) 調査問題 : 平成 20 年度 B 3(2) 発展的に考えること ( 図形の性質と面積 ) 正答率 69.3% 調査問題 調査結果等 (P15 P19 参照 ) 調査問題 : 平成 20 年度 B 3(3) 発展的に考えること ( 図形の性質と面積 ) 正答率 33.4% 調査問題 調査結果等 (P15 P19 参照 ) 調査問題 : 平成 21 年度 A 6 三角形の面積正答率 67.1% 調査問題 調査結果等 (P20 P21 参照 ) ここでは, 次の設問を取り上げて説明する 5 次の平行四辺形の面積を求める式と答えを書きましょう 図 2 平成 20 年度調査問題算数 A 5 左の図 2は平成 20 年度算数 A 5の問題である 本問題では, 求積に必要のない情報として, 斜辺の長さ (7cm) が示されている 本問題の正答率は 85.3% であり, 情報がある程度限定された場面では, 相当数の児童が面積を求めるために必要な情報を選択することができ, それを基に公式を適用して面積を求めることができていると考えられる -5-
第 2 章小学校算数 ⑶ ひろしさんの家の近くに東公園があります 東公園の面積と中央公園の面積では, どちらのほうが広いですか 答えを書きましょう また, そのわけを, 言葉や式などを使って書きましょう 図 3 平成 19 年度調査問題算数 B 5(3) 左の図 3は平成 19 年度算数 B 5(3) の問題である 先ほどの問題とは異なり, 地図の中には多くの情報が示されている 本問題の正答率は 18.2% であり, 地図上に複数の図形を見いだし, 必要な情報を取り出して面積を比較し, 説明することに課題があることがうかがえる また, 本問題の誤答についてみると, 平行四辺形 ( 中央公園 ) の面積を ( 底辺 ) ( 斜辺 ) で求めている児童が 34.4% いた これは, 平行四辺形の高さが図形の外に示されているために, 斜辺を高さと捉えていると考えられる 具体的な問題を基に考察したが, 過去 4 年間の求積に必要な情報を取り出して面積を求めることについての課題を整理すると次のようになる 地図上に複数の図形を見いだし, 必要な情報を取り出して面積を比較し, 説明することに課題がある 円の求め方を基に, 半円の面積の求め方を表す式を読み取ることに課題がある 三角形から長方形に図形を変えて考える発展的な場面で, 図形の性質を基に面積の関係を捉えることに課題がある 長方形から四角形に図形を変えて考える発展的な場面で, 図形の性質を基に面積の関係を捉え, 判断の理由を言葉や式を用いて記述することに課題がある 方眼上の高さが外にある三角形の面積を求めることに課題がある -6-
4 年間の調査結果から今後の取組が期待される内容のまとめ (2) これからの 量と測定 における学習指導のポイント 授業で用いられる求積の問題には, 一般的に解決に必要な情報のみが与えられていて, それ以外の情報は含まれていないことが多い 過去 4 年間の調査結果から, 問題解決に必要な情報を選択したり, 見いだしたりする力が弱いことが明らかになっている また, 図形の性質を基に, 統合的 発展的に考える力も弱いことが明らかになっている そこで, 過去 4 年間の調査結果から, 学習指導に当たって工夫改善を要する事項は次のようになる 情報過多の場面を提示し, 面積を求めるために必要な情報を取り出す活動を取り入れるようにすること 図形の性質を基に面積の関係を捉える活動を取り入れるようにすること 既に分かっていることと新しい事柄との関係を把握する活動を取り入れるようにすること 課題の解決に向けた 授業アイディア例 授業アイディア例 3 [ 対象 : 第 5 学年以上 ] 方眼上の三角形の底辺と高さを測定し, 面積を求める (P82 参照 ) 授業アイディア例 4 [ 対象 : 第 6 学年 ] 円を分割して並べ替えた図形と元の円を対応させて, 円の面積の求め方を考える (P83 参照 ) 授業アイディア例 5 [ 対象 : 第 5 学年以上 ] 等しい面積になることを説明した考えを解釈する (P84 P85 参照 ) -7-
4 年間の調査結果から今後の取組が期待される内容のまとめ 3 図形 (1) 図形 における課題 図形の性質を基に事象を判断すること 該当する調査問題 調査結果等 調査問題 : 平成 19 年度 B 5(1) 事象の観察と判断 ( 道路 ) 正答率 71.4% 調査問題 調査結果等 (P24 P25 参照 ) 調査問題 : 平成 21 年度 B 1(2) 事象の観察と論理的な考察 ( 階段 ) 正答率 65.3% 調査問題 調査結果等 (P26 P27 参照 ) 調査問題 : 平成 22 年度 B 6(1) 事象の観察と論理的な考察 ( バス ) 正答率 65.1% 調査問題 調査結果等 (P28 P29 参照 ) ここでは, 次の設問を取り上げて説明する ⑵ 下の図の点オから点クまでのところに, かざりをつけようと思います 点オから点クまでのの部分の長さを知りたいのですが, 高い場所なので, 長さを直接はかることができません 上の四角形オカキクは, 平行四辺形とみることができます そこで, ゆうじさんは, 点オから点クまでの長さを知るためには, 点カから点キまでの長さをはかればよいと考えました このように考えたわけとして正しいものを, 下の 1 から 5 までの中から 1 つ選んで, その番号を書きましょう 1 平行四辺形は,2 つの対角線の長さが等しいから 2 平行四辺形は,4 つの辺の長さが等しいから 3 平行四辺形は, 向かい合っている辺の長さが等しいから 4 平行四辺形は, 向かい合っている角の大きさが等しいから 5 平行四辺形は, 向かい合っている辺が平行だから 図 4 平成 20 年度調査問題算数 B 1(2) 左の図 4 は平成 21 年度算数 B 1(2) の問題である 本問題では, 示された部分の長さを直接測らなくても調べられる理由を, 図形の性質を基に考えることが求められた 本問題の正答率は 65.3% であり, 問題解決の根拠となる図形の性質を判断することに課題があることがうかがえる また, 本問題の誤答についてみると,5 を選択した児童が 19.9% いた これは, 平行四辺形の定義を選択しているものであり, 問題解決の根拠として適切な図形の性質を選択できていないものである 具体的な問題を基に考察したが, 過去 4 年間の図形の性質を基に事象を判断することについての課題を整理すると次のようになる -8-
第 2 章小学校算数 問題解決の根拠となる図形の性質を判断することに課題がある 与えられた条件や図形の定義, 性質を基に, 事象から見いだした図形を判断し, その理由を選択することに課題がある (2) これからの 図形 における学習指導のポイント 小学校学習指導要領解説算数編において, 第 5 学年 C(1) ウでは, 図形の性質を見いだし, それを用いて図形を調べたり構成したりすること が明記されている 図形の性質を基に事象を判断することは, 第 5 学年において指導することはもちろんのこと, 調査問題から分かるように第 3 学年及び第 4 学年から系統的に指導を充実することが大切である 過去 4 年間の調査結果から, 学習指導に当たって工夫改善を要する事項は, 次のようになる 直感的に図形を見いだしたり, 図形の定義や性質を根拠に筋道を立てて考えて図形を 見いだしたりするなど, 目的に応じて図形を見いだす活動を取り入れること 課題の解決に向けた 授業アイディア例 授業アイディア例 6 [ 対象 : 第 5 学年以上 ] 与えられた条件を基に, 図と文章を対応させて筋道を立てて考える 授業アイディア例 7 [ 対象 : 第 5 学年以上 ] 具体物を用いた操作を振り返り, 操作の数学的な意味を理解する (P88 参照 ) (P89 参照 ) -9-
4 年間の調査結果から今後の取組が期待される内容のまとめ 4 1 数量関係 (1) 数量関係 における課題 計算の順序についてのきまりなどを理解すること 該当する調査問題 調査結果等 調査問題 : 平成 19 年度 A 1(7) 6 + 0.5 2 正答率 69.1% 調査問題 調査結果等 (P32 参照 ) 調査問題 : 平成 19 年度 B 1(1) 事象の数学的な解釈と表現 ( 花壇 ) 正答率 67.5% 調査問題 調査結果等 (P33 P34 参照 ) 調査問題 : 平成 19 年度 B 1(2) 事象の数学的な解釈と表現 ( 花壇 ) 正答率 88.2% 調査問題 調査結果等 (P33 P34 参照 ) 調査問題 : 平成 19 年度 B 6(1) 数学的表現の解釈と判断 ( 走り高跳び ) 正答率 65.1% 調査問題 調査結果等 (P35 P37 参照 ) 調査問題 : 平成 19 年度 B 6(2) 数学的表現の解釈と判断 ( 走り高跳び ) 正答率 51.4% 調査問題 調査結果等 (P35 P37 参照 ) 調査問題 : 平成 20 年度 A 1(5) 3 + 2 4 正答率 71.1% 調査問題 調査結果等 (P38 参照 ) 調査問題 : 平成 20 年度 B 4(2) 解決方法の解釈と適用 ( 掃除当番表 ) 正答率 38.5% 調査問題 調査結果等 (P39 P41 参照 ) 調査問題 : 平成 21 年度 A 1(6) 80 30 5 正答率 67.0% 調査問題 調査結果等 (P42 参照 ) 調査問題 : 平成 22 年度 A 1(6) 50 + 150 2 正答率 66.3% 調査問題 調査結果等 (P43 P44 参照 ) 調査問題 : 平成 22 年度 B 1(2) 問題や式の解釈 修正 ( おつり ) 正答率 42.7% 調査問題 調査結果等 (P45 P46 参照 ) -10-
第 2 章小学校算数 ここでは, 次の設問を取り上げて説明する 左の図 5は平成 19 年度算数 ⑺ 6 + 0.5 * 2 図 5 平成 19 年度調査問題算数 A 1(7) A 1(7) の問題である 本問題では, 加法と乗法の混合した整数と小数の計算をすることが求められた 本問題の正答率は 69.1% であり, 計算の順序についてのきまり を理解して計算することに課題があることがうかがえる また, 本問題の誤答についてみると, 式の左 (6+ 0.5) から順に計算していると考えられる解答が 13.3% いた これは, 加法と乗法の混合した計算であるにもかかわらず, きまりを意識せずに, 左から順に計算していると考えられる ⑵ みさきさんは, 花だんの白い の部分にチューリップを植えます の部分の面積は, どのような式で求められますか 下の 1 から 4 までの中から 1 つ選んで, その番号を書きましょう 1 5*3+3*9 2 3*6-5*3 3 6*9-3*5 4 3*9-3*5 図 6 平成 19 年度調査問題算数 B 1(2) 一方, 左の図 6は平成 19 年度算数 B 1(2) の問題である 本問題では L 字型の図形の面積の求め方を表す式を読み取ることが求められた 本問題の正答率は 88.2% であり, 具体的な場面に結びつけることができる場合には, 相当数の児童ができることがうかがえる 具体的な問題を基に考察したが, 過去 4 年間の計算の順序についてのきまりなどの理解に関する課題を整理すると次のようになる 計算の順序についてのきまりなどの理解の課題 計算の順序についてのきまりを理解して計算することに課題がある 言葉の式に数値を当てはめて値を求め, 実際の記録と比較し, 判断することに課題がある 言葉の式を読み取り, 式の形に着目して計算結果の大小を判断し, 根拠を明確にして説明することに課題がある 示された解決方法を理解し, その解決方法を用いて別の問題の解決方法を考え, それを数や式, 言葉を用いて記述することに課題がある 計算の順序についてのきまりを理解し, 最初に考えた式に ( ) を書き加えて正しい式に修正することに課題がある -11-
4 年間の調査結果から今後の取組が期待される内容のまとめ (2) これからの 計算の順序についてのきまりなどの理解 における学習指導のポイント 小学校学習指導要領解説算数編 2 算数科の内容数量関係 において, 式の表現と読 み は第 1 学年から系統的に指導がなされるようになっている また式の指導において大切になることとして, 次のことが示されている 式の指導においては, 具体的な場面に対応させながら, 事柄や関係を式に表すことができるようにする さらに, 式を通して場面などの意味を読み取り言葉や図を用いて表したり, 式で処理したり考えを進めたりすることが大切である さらに, 式を, 言葉, 図, 表, グラフなどと関連付けて用いて自分の考えを説明したり, 分かりやすく伝え合ったりできるようにすることが大切である 計算の順序などのきまりなどについての学習は第 4 学年で行われるが, 第 1 学年から式の表現と読みについて系統的に指導を充実することが大切である また, 過去 4 年間の調査結果から, 学習指導に当たって工夫改善を要する事項として示された内容は, 次のようになる 四則の混合した様々な計算をする機会を設けて継続して指導すること 計算の順序についてのきまりに従って計算することの重要性を理解できるようにすること ( ) を用いると, 数量の関係をひとまとまりとして表すことができるというよさを理解できるようにすること 四則が混合したり,( ) が用いられたりした計算が確実にできるようにすること 課題の解決に向けた 授業アイディア例 授業アイディア例 8 [ 対象 : 第 4 学年以上 ] 問題作りの場面で, 作った問題を吟味して修正する (P92 参照 ) -12-
4 年間の調査結果から今後の取組が期待される内容のまとめ 4 2 数量関係 (1) 数量関係 における課題 割合の意味を理解すること 該当する調査問題 調査結果等 調査問題 : 平成 19 年度 B 3(3) 情報の選択と解釈 ( 漁業 ) 正答率 54.1% 調査問題 調査結果等 (P47 P48 参照 ) 調査問題 : 平成 19 年度 B 4(1) 情報の分類整理と問題解決 ( ケーキ ) 正答率 29.5% 調査問題 調査結果等 (P49 P51 参照 ) 調査問題 : 平成 20 年度 A 9(2) 円グラフと百分率正答率 55.1% 調査問題 調査結果等 (P52 P53 参照 ) 調査問題 : 平成 20 年度 B 2(2) 情報の選択と考え方の評価 ( 農業 ) 正答率 58.5% 調査問題 調査結果等 (P54 P58 参照 ) 調査問題 : 平成 20 年度 B 2(3) 情報の選択と考え方の評価 ( 農業 ) 正答率 17.6% 調査問題 調査結果等 (P54 P58 参照 ) 調査問題 : 平成 21 年度 A 7 百分率正答率 57.1% 調査問題 調査結果等 (P59 P60 参照 ) 調査問題 : 平成 21 年度 B 5(3) 資料の数学的な解釈と判断の根拠の説明 ( リサイクル ) 正答率 17.9% 調査問題 調査結果等 (P61 P64 参照 ) 調査問題 : 平成 22 年度 A 9(1) 割合, 折れ線グラフ正答率 57.8% 調査問題 調査結果等 (P65 P68 参照 ) 調査問題 : 平成 22 年度 B 3(3) 情報の選択と資料の関連付け ( 学校でのけが ) 正答率 40.2% 調査問題 調査結果等 (P69 P71 参照 ) 調査問題 : 平成 22 年度 B 5(1) 事象の数学的な解釈と判断の根拠の説明 ( 買い物 ) 正答率 69.2% 調査問題 調査結果等 (P72 P76 参照 ) 調査問題 : 平成 22 年度 B 5(2) 事象の数学的な解釈と判断の根拠の説明 ( 買い物 ) 正答率 17.4% 調査問題 調査結果等 (P72 P76 参照 ) -13-
第 2 章小学校算数 ここでは, 次の設問を取り上 7 げて説明する ある会場に小学生が集まりました 集まった小学生 200 人のうち 80 人が女子でした わりあい女子の人数の割合は, 集まった小学生の人数の何 % ですか 下の 1 から 左の図 7は, 平成 21 年度算数 A 7の問題である 200 人のうち 4 までの中から 1 つ選んで, その番号を書きましょう 80 人が女子のとき, 女子の人数 の割合は全体の何 % か選ぶ問題で 1 0.4 % 2 3 2.5 % 40 % ある ここでは, 割合が ( 比較量 ) ( 基準量 ) で求められること, 及 4 80 % 図 7 平成 21 年度調査問題算数 A 7 び基準量を 100 として, それに対する割合で表す方法が百分率であ ることを理解していることが求められる さらに, 集まった小学生の人数 200 人が基準量で あり, 女子の人数 80 人が比較量と捉えることが求められる 正答率は 57.1% であり, 百分率を求めることに課題があることがうかがえる 一方, 本問題 の誤答について見ると,2 と選択した児童が 22.6% いた これは 200 80 = 2.5 として選 択したと考えられる また,1 と選択した児童が 11.2% いた これは, 80 200 = 0.4 とし て小数を百分率に変換することな ⑵ ひろしさんは, 下のような定価で売られているシャツ, ズボン, くつを 1 品ずつ買います く選択したものと考えられる 一方, 左の図 8は, 平成 22 年 ア イ ウ シャツ ズボン くつ 度算数 B 5(2) の問題である 割合が使われている場面を理解し, 割合の考えを基に, 数の大小を判断し, その判断の理由を数学的に表現する問題である ここで 定価 1900 円定価 3900 円定価 5800 円 は, 割引券を使うと割引される金 額が最も大きくなる商品を選び, わりびきけん ひろしさんは, 右の図のような割引券まいを 1 枚持っています その割引券には, 割 引 券 その理由を書くために, 基準量, 1 品に限り, 定価の 20 % 引き と書かれています 1 品に限り, 定価の 20 % 引き 比較量, 割合の関係を基に比較量の大小を判断することが求められた 本問題の正答率は 17.4% で ねびシャツ, ズボン, くつのうち, どれに割引券を使うと, 値引きされる金額がいちばん大きくなりますか 上のアからウまでの中から 1 つ選んで, その記号を書きましょう また, その記号の商品に割引券を使うと, 値引きされる金額がいちばん大きくなるわけを, 言葉や式を使って書きましょう 図 8 平成 22 年度調査問題算数 B 5(2) あり, 割合が一定の場面で, 比較量が最も大きくなるときの基準量を判断し, その理由を言葉や式を用いて記述することに課題があることがうかがえる 具体的な問題を基に考察したが, 過去 4 年間の調査から割合の意味の理解についての課題 を整理すると次のようになる 百分率の意味についての理解に課題がある 百分率を用いて問題を解決することに課題がある 示された考え方が正しいかどうかを割合の考えを用いて評価し, その理由を数学的に表現することに課題がある -14-
4 年間の調査結果から今後の取組が期待される内容のまとめ (2) これからの 割合の意味の理解 における学習指導のポイント 過去 4 年間の調査結果から, 割合 ( 百分率 ) に関しては, 割合の意味の理解が弱いことが 明らかになっている そこで, 過去 4 年間の調査結果から, 学習指導に当たって工夫改善を要する事項を挙げると次のようになる 百分率の意味を理解し, 数量の関係を捉えて立式できるようにすること 日常生活の場面で百分率を用いて問題を解決する活動を通して, 百分率の意味の理解を深めること 割合の学習では, 比較量が, 基準量と割合の積で決まることを理解できるようにすること 比較量の大小は, 割合だけで決まるのではなく, 基準量と割合の二つによって決まるという見方ができるようにすること 課題の解決に向けた 授業アイディア例 授業アイディア例 9 [ 対象 : 第 5 学年以上 ] 基準量と比較量の両方に着目して, 割合の大小を判断する (P93 参照 ) 授業アイディア例 10 [ 対象 : 第 5 学年以上 ] 割引券を使うと値引きされる金額が最も大きくなる商品を選んだ理由を説明するために, 説明に必要な事柄を考える (P94 参照 ) 授業アイディア例 11 [ 対象 : 第 5 学年以上 ] 2 つのものの大小を 50% を基準にして考え, 説明する (P95 参照 ) -15-
第 2 章小学校算数 記述式の問題における学習指導のポイント 1 記述式問題から明らかになった課題算数科においては, 言葉や数, 式, 図, 表, グラフなどを用いて, 筋道を立てて説明したり論理的に考えたりして, 自ら納得したり, 他者を説得したりできることが大切である そこで, 算数科の主として 活用 に関する問題において, 以下の3 種類の記述内容にかかわる問題を出題している 事実 を記述する問題 事実 を記述する問題では, 計算の性質, 図形の性質や定義, 数量の関係の記述を求めること, 表やグラフなどから見いだせる傾向や特徴の記述を求めることが考えられる また, 事実 を記述する際には, 説明する対象を明らかにして記述することが求められる 方法 を記述する問題 方法 を記述する問題では, 問題を解決するための自分の考え方や解決方法の記述を求めること, 他者の考え方や解決方法を理解して, その記述を求めることが考えられる また, ある場面の解決方法を基に別の場面の解決方法を考え, その記述を求めることが考えられる 理由 を記述する問題 理由 を記述する問題では, ある事柄が成り立つことの理由や判断の理由の記述を求めることが考えられる また, 理由 を記述する際には, A だから B となる のように,A という理由及び B という結論を明確にして考え, それを記述することが求められる さらに, 理由として取り上げるべき事柄が複数ある場合には, それらを全て取り上げて記述することが求められる 過去 4 年間の記述式問題の平均正答率は 35.5%(P48 表 4 参照 ) であり, 課題が大きいことがうかがえる 例えば, 平成 19 年度全国学力 学習状況調査 小学校 報告書では, 次のように, 記述式問題についての課題を報告している 必要な事柄を示して, 面積が等しいことの理由を説明することに課題がある 計算の工夫を理解し, その計算方法を説明することに課題がある 地図上に複数の図形を見いだし, 必要な情報を取り出して, 面積を比較し, 説明することに課題がある 言葉の式を読み取り, 式の形に着目して計算結果の大小を判断し, 根拠を明確にして説明することに課題がある 上記の課題を見ると, 記述に関する形式的な面のみならず,P27 から論考してきた課題として考えられる内容の両面から指導の改善が求められることが分かる ここでは, 次の設問を取り上げて説明する 理由の説明として不十分な反応が多かった問題の例 次ページの図 9 は, 平成 20 年度算数 B 1(2) の問題及び解答類型と反応率である この問題は, 与えられた情報を整理したり選択したりして, 筋道を立てて考え, 示された判断が正しい理由を式と言葉を用いて記述できるかどうかを見るものである 本問題の誤答について見ると, 戸棚を置くことのできる幅 (120cm) のみを書いている解答, 幅が最小になる二つの戸棚を置く場合について調べる説明のみを書いている解答など, 理由の説明が不十分な解答類型 6 の反応が 25.3% と最も高かった このことから, 判断の正しさを説明する場合には, 理由として必要な事柄をもれなく示した上で, 理由と結論を明確にして述べることが, 学習指導に当たって大切なことになる -16-
4 年間の調査結果から今後の取組が期待される内容のまとめ たか子さんは,3 つの戸だなの中から 2 つを選び, 下の図のように, ドアが 当たらない場所に置きたいと考えています 2 つの戸だなは, 後ろ側を北側 ならのかべにつけて, 机の横に並べて置きます たか子 すると, たか子さんのお姉さんが, 次のように言いました 姉 3 つの戸だなの中から, どれとどれを選んで置いても, ドアを開け閉めすると, 戸だなに当たってしまうね お姉さんが, 3 つの戸だなの中から, どれとどれを選んで置いても, ドア を開け閉めすると, 戸だなに当たってしまう と言ったことが正しいわけを, 式と言葉を使って書きましょう 図 9 平成 20 年度調査問題算数 B 1(2) の設問及び解答類型と反応率 (2) 活用の観点に基づいた指導の工夫算数科の主として 活用 に関する問題においては, 次の観点から調査問題を作成している 物事を数 量 図形などに着目して観察し的確に捉えること 与えられた情報を分類整理したり必要なものを適切に選択したりすること 筋道を立てて考えたり振り返って考えたりすること 事象を数学的に解釈したり自分の考えを数学的に表現したりすることなど記述式問題から明らかになった指導の改善に当たっては, 知識 技能等が活用される状況として, 上述の観点を基に, 学習活動を構想し, 日々の授業に取り入れることが大切である 2 指導改善のポイント記述式問題は, 数量や図形, 数量関係を考察して見いだした事実を確認したり説明したりすること, 問題を解決するために見通しをもち, 筋道を立てて考え, その考え方や解決方法を説明すること, 論理的に考えを進めてそれを説明したり, 判断や考えの正しさを説明したりすること といった大切にしたい算数科の学習活動に基づいて設定している そこで, 記述式問題から明らかになった課題に対する指導改善のポイントとして 2 点述べる (1) 解答類型に基づいた実態把握本調査においては, 児童の解答状況を分析するために, 正答, 予想される誤答 無解答を分類して, 最大で 10 の類型を設定している 指導改善に当たっては, 解答類型に基づいて, 児童の解答の状況を詳細に把握し, きめ細かな指導の方策を考える必要がある その際には, 正答 誤答の解答状況を基に, 児童の問題や内容に対する理解の程度を把握したり, 正答例の記述を参考にしたりして, 日々の授業に計画的 継続的に言語活動を位置付けることが大切である 上述の 2 つのポイントは, 全国学力 学習状況調査 小学校 報告書の 学習指導に当たって 及び全国学力 学習状況調査小学校の結果を踏まえた授業アイディア例に掲載しているので, 参照いただきたい また, 算数科においては, 中学校の学習を見据えた指導も大切になる 過去 4 年間の全国学力 学習状況調査の中学校数学の課題も併せて参照いただき, 指導改善に生かしていただきたい -17-
平成 24 年度調査 出題の趣旨及び調査結果を検証するポイントについて 1. 出題の趣旨 : 主として 知識 に関する問題について 数と計算 領域 整数, 小数, 分数の計算をすること 数の相対的な大きさについて理解していること 十進位取り記数法について理解していること 除数が小数である場合の除法の意味について理解していること 量と測定 領域 測定値の平均を求めること 量の大きさについての感覚を豊かにしていること 三角形の底辺と高さについて理解していること 図形 領域 四角形の四つの角の大きさの和について理解していること 直方体に関連して直線, 平面の平行や垂直の関係を理解していること 円の中心, 半径, 直径について理解していること 数量関係 領域 四則の混合した式について理解し, 正しく計算すること 簡単な場合の比例の関係を理解していること 百分率について理解していること 2. 出題の趣旨 2: 主として 活用 に関する問題について表 1. 主として 活用 に関する問題と4つの観点との対応 物事を数 与えられた 筋道を立てて考えたり振 事象を数学的に解釈した 量 図形な 情報を分類 り返って考えたりするこ り自分の考えを数学的に どに着目し 整理したり と 表現したりすること て観察し的 必要なもの 確に捉える を適切に選 筋道を立て 振り返って 事象を数学 自分の考え こと 択したりす て考えるこ 考えること 的に解釈す を数学的に ること と ること 表現すること B 1 おつり B 2 跳び箱 B 3 四角形の面積 B 4 調理 B 5 一輪車 表 2. 記述式の設問及び記述内容 問題番号と設問 B1 おつりお姉さんの出し方のほうが少なくなると考えられるわけを,2 人のおつりの理 (2) 硬貨の種類と枚数を比べて, 言葉と数を使って書きましょう 由 B2 跳び箱中型のとび箱を 70cm の高さにすることはできますか 理 (2) 下の 1 と 2 から正しいほうを選んで, その番号を書きましょう また, その由番号を選んだわけを, 言葉や数を使って書きましょう B3 四角形の面積上の表のア, イ, ウに入る言葉や印をかきましょう 事 (2) 実 B4 調理ひろしさんの班がごはんを作るのに必要な水の重さは, 何 gになりますか 方 (3) 求め方を式や言葉で書きましょう また, 答えも書きましょう 法 B5 一輪車男子と女子それぞれで, 合計の人数をもとにした乗れる人数の割合を比べま理 (3) す 男子と女子ではどちらのほうの割合が大きいですか 由下の1から3までの中から1つ選んで, その番号を書きましょう また, その番号を選んだわけを, 言葉や式を使って書きましょう 記述内容 -18-
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