圧縮記帳の仕組み 例 60の国庫補助金を得て 120の機械を取得 当該機械以外にかかる利益は毎年 1,000 機械は 残存価額 0 3 年均等償却 実効税率 30% とした場合 1 考え方 補助金取得時現金預金 60 / 受贈益 60 機械取得時機械 120 / 現金預金 120 圧縮時機械圧縮損 60 / 機械 60 受贈益を圧縮損と相殺するとともに 圧縮後簿価に減価償却することで課税を繰り延べる 圧縮記帳しなかった場合 機械 120 1 年目 2 年目 3 年目合計利益 1,000 1,000 1,000 3,000 1 年目償却費 40 減価償却費 40 40 40 120 受贈益 60 0 0 60 2 年目償却費 40 機械圧縮損 0 0 0 0 所得金額 1,020 960 960 2,940 3 年目償却費 40 税額 306 288 288 882 圧縮記帳した場合 機械 120 1 年目 2 年目 3 年目 合計 利益 1,000 1,000 1,000 3,000 圧縮損 60 減価償却費 20 20 20 60 受贈益 60 0 0 60 1 年目償却費 20 機械圧縮損 60 0 0 60 所得金額 980 980 980 2,940 2 年目償却費 20 税額 294 294 294 882 3 年目償却費 20-1 -
損金経理と積立金経理の違い ( 圧縮超過額がない場合の基本構造 ) 例 A 社は 50の国庫補助金を得て 100で機械を取得した なお A 社の経常利益は 100 である * 仕訳の違い ( 単位 : 百万円 ) 損金経理積立金経理 補助金受贈と機械取得時の仕訳 ( 両者とも同じ ) 現金預金 50 / 受贈益 50 機械 100 / 現金預金 100 機械圧縮損 50 / 機械 50 圧縮記帳時 ( 期末決算調整 ) の仕訳 なし その事業年度における別表 4 での調整 圧縮超過額がなければ調整なし圧縮積立金減算 50( 減算 留保 ) 株主資本等の変動 なし繰越利益剰余金 50 / 圧縮積立金 50 対象機械の会計上簿価と税務上簿価 税務上 会計上ともに 50 税務上 50 会計上 100 損金経理は 補助金受贈益相当額を圧縮損で損益相殺するとともに 簿価を減額するもの である 一方 積立金経理は 会計上圧縮損を計上せず 受贈益相当額を自己資本として留保する が 税務上は別表 4 で減算調整するものである - 2 -
* 損益計算書の違い ( 単位 : 百万円 ) 損金経理 積立金経理 経常利益 100 100 特別利益 ( 補助金受贈益 ) 50 50 特別損失 ( 機械圧縮損 ) 50 なし 税引前当期純利益 100 150 ( 剰余金処分で50 を圧縮積立金として資本の部に積立 ) * 別表四の違い ( 圧縮関係以外調整項目がないとした場合 ) ( 単位 : 百万円 ) 損金経理 積立金経理 当期利益 100 150 減算調整なし圧縮積立金減算 50 所得金額 100 100 損金経理は圧縮超過額がなければ別表四での調整不要 積立金経理であれば積立額を別表四で減算調整 - 3 -
問 39 国庫補助金等に対する圧縮記帳 特別勘定 1. 圧縮記帳 (1) 損金算入 ( 法 421) 内国法人 ( 清算中のものを除く ) が 次の要件を満たす場合において その固定資産につき 圧縮限度額以下の金額を一定の方法により経理したときは その経理した金額はその事業年度の損金の額に算入する 1 固定資産の取得又は改良に充てるための国庫補助金等の交付を受けること 2 その国庫補助金等により交付目的適合固定資産を取得又は改良をしたこと 3 国庫補助金等の返還不要が事業年度終了時までに確定したこと (2) 圧縮限度額 ( 法 421) 固定資産の取得又は改良に充てた国庫補助金等の額相当額 2. 特別勘定 (1) 損金算入 ( 法 431) 内国法人 ( 清算中のものを除く ) が 次の要件を満たす場合において 繰入限度額以下の金額を確定した決算において特別勘定 ( 決算確定日までに剰余金処分により積立金として積み立てる方法を含む ) として経理したときは その経理した金額は損金の額に算入する 1 固定資産の取得又は改良に充てるための国庫補助金等の交付を受けること 2 国庫補助金等の返還不要が事業年度終了時までに確定しないこと (2) 繰入限度額 ( 法 431) 交付を受けた国庫補助金等の額相当額 (3) 特別勘定設定後の圧縮記帳 ( 法 441) 1 損金算入特別勘定を有する内国法人が 次の要件を満たす場合において その固定資産につき圧縮限度額の範囲で一定の経理をしたときは その経理した金額は損金の額に算入する a 国庫補助金等をもって交付目的適合固定資産の取得又は改良したこと b その取得又は改良をした日の属する事業年度以後において国庫補助金等の返還不要が確定したこと 2 圧縮限度額返還不要確定時の特別勘定の金額のうち本来の圧縮限度額相当額 (4) 取崩し ( 法 4323) 特別勘定を有する内国法人が 国庫補助金等の返還の要不要が確定した場合その他一定の場合には 一定の金額を取崩し その事業年度の益金の額に算入する - 4 -
3. 手続規定 ( 法 4234 4345 4423) 上記 1 2 の規定は 税務署長がやむを得ない事情があると認める場合を除き 確定申告 書に損金算入に関する明細の記載がある場合に限り適用する 4. 適格組織再編成 ( 法 425 4368 444) (1) 適格分割等適格分割等の場合において 一定の要件を満たすときは その直前に特別勘定の設定又は圧縮記帳を行うことができる (2) 特別勘定の引継ぎ内国法人が適格組織再編成を行った場合には その直前の特別勘定のうち一定の金額を合併法人等に引き継ぐ 補足理論 1(3) 及び2(3)3 取得価額 ( 令 80の21) 圧縮記帳の規定により損金の額に算入された金額は 取得価額に算入しない 1(4) 及び2(3)4 経理方法 ( 法 421 令 80) 1 帳簿価額を損金経理により減額する方法 2 確定した決算において積立金として積み立てる方法 3 決算確定日までに剰余金の処分により積立金として積み立てる方法 1(5) 及び2(3)5 備忘価額 ( 令 93) 圧縮記帳の規定により帳簿価額が 1 円未満となる場合にも 帳簿価額として 1 円以上の金額を付す - 5 -
<KEY WORD> 1. 趣旨国庫補助金は受贈益として益金算入するのが原則であるが これに課税すると目的資産の取得に支障を生ずる等補助金交付目的が阻害されることから圧縮記帳による損金算入を認め 課税の繰延を行うもの 2. 対象となる国庫補助金圧縮記帳の対象となる国庫補助金等は 固定資産の取得又は改良に充てるためのものに限られる 3. 適格分割等の場合国庫補助金の圧縮記帳等は 通常事業年度末においてその適用が認められるため みなし事業年度規定が存在する合併においては当該みなし事業年度末において適用されることとなる 一方分割 現物出資 事後設立ではみなし事業年度規定が存在しないため 適格組織再編成に該当する場合に限り その直前に圧縮記帳等の適用を認めることとしている - 6 -
問 24 減価償却資産の償却費の計算及び償却方法 1. 償却費の損金算入 ( 法 3114 令 62 63) (1) 内国法人が各事業年度終了時において有する減価償却資産に係る償却費の損金算入額は 償却費として損金経理した金額のうち 償却限度額に達するまでの金額とする (2) 償却費として損金経理した金額には 繰越償却超過額を含む (3) 償却超過額がある場合には 減価償却資産の帳簿価額は償却超過額の減額がされなかったものとみなす (4) 償却費の損金経理額がある場合には 明細書を確定申告書等に添付しなければならない 2. 償却方法 ( 令 481 48 の 21 48 の 4 49,50) 償却限度額の計算上 選定できる償却方法は次に定める方法とする なお 一定の減価償却資産については 納税地の税務署長の承認を受けて特別な償却方法を選定することができる (1) 平成 19 年 3 月 31 日以前に取得された減価償却資産 1 建物 (3を除く) a 平成 10 年 3 月 31 日以前取得分 旧定額法 旧定率法 b a 以外 旧定額法 2 建物以外の有形減価償却資産 (36を除く) 旧定額法 旧定率法 3 鉱業用減価償却資産 (56を除く) 旧定額法 旧定率法 旧生産高比例法 4 無形減価償却資産 (5を除く) 及び生物 旧定額法 5 鉱業権 旧定額法 旧生産高比例法 6 国外リース資産 旧国外リース期間定額法 (2) 平成 19 年 4 月 1 日以後に取得された減価償却資産 1 建物 (36を除く) 定額法 2 建物以外の有形減価償却資産 (36を除く) a 定額法 b 定率法 a) 平成 24 年 3 月 31 日以前に取得をされた減価償却資産 250% 定率法の償却率 b) 平成 24 年 4 月 1 日以後に取得をされた減価償却資産 200% 定率法の償却率 3 鉱業用減価償却資産 (56を除く) 定額法 定率法 生産高比例法 4 無形減価償却資産 (56を除く) 及び生物 定額法 5 鉱業権 定額法 生産高比例法 6 リース資産 ( 平成 20 年 4 月 1 日以後に締結されたリース契約 ) リース期間定額法 - 7 -
3. 償却方法の選定の届出 (1) 選定単位 ( 令 511) 償却方法は一定の区分ごとに選定しなければならない なお 二以上の事業所を有する場合は 事業所ごとに選定することができる (2) 届出 ( 令 5123) 1 設立等の日の属する事業年度の確定申告書の提出期限までに そのよるべき償却方法を書面により納税地の所轄税務署長に届出なければならない 2 旧定額法 旧定率法又は旧生産高比例法を選定している旧償却方法適用資産と同一区分に属する新償却方法適用資産について 1の届出をしないときは それぞれ定額法 定率法 生産高比例法を選定したものとみなす (3) 変更 ( 令 52) 償却方法を変更する場合は 新たな償却方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日までに 一定の申請書を納税地の所轄税務署長に提出し 承認を受けなければならない 4. 法定償却方法 ( 令 53) 償却方法を選定しなかった場合は 次の方法とする (1) 上記 2(1)1a 及び2 旧定率法 (2)2 定率法 (2) 上記 2(1)3 及び5 旧生産高比例法 (2)3 及び5 生産高比例法 5. 適格組織再編成 ( 法 312) 内国法人が適格分割等により減価償却資産を移転する場合は 期中損金経理額のうち一定の 償却限度額に達するまでの金額を損金算入する 6. 意義 ( 法 2 二十三 令 13) 減価償却資産とは棚卸資産 有価証券及び繰延資産以外の資産で償却をすべきものとして一 定のもの ( 事業供用していないもの及び時の経過により価値の減少しないものを除く ) をいう - 8 -
<KEY WORD> 1. 趣旨減価償却は法人の内部計算であるため 恣意性の介入が避けがたい そこで一定の損金算入限度額を定めて課税の公平をはかるものである 2. 法人税法上償却費の損金算入は法人の任意である そのため これを損金算入するための法人の意思表示として損金経理を要求している 3. 償却費として損金経理した金額は 会計上の減価償却費よりも範囲が広い 条文上明記されている過去における繰越償却超過額のほかにも 圧縮超過額 取得価額に算入すべき付随費用で原価外処理をしたもの 損金算入されない評価損 除却損 修繕費で資本的支出の規定により損金算入されないものなども含まれることが通達で明らかにされている 4. 減価償却とは時の経過とともにその価値が減価していく固定資産等の取得価額を適切に期間配分する手続である 従って 土地 美術品等価値が減少しない資産は減価償却資産に該当しないこととなる 5. 償却費は 通常事業年度末においてその計算が認められるため みなし事業年度規定が存在する合併においては当該みなし事業年度末において計算されることとなる 一方分割 現物出資 事後設立ではみなし事業年度規定が存在しないため 適格組織再編成に該当する場合に限り その直前に損金算入を認めることとしている - 9 -
2013 年目標税理士講座 法人税法基礎答練第 1 回出題予定 理論 納税義務者 減価償却資産の償却費の計算及び償却方法 租税公課 国庫補助金等の圧縮記帳 計算 減価償却 受取配当等 所得税額控除 貸倒引当金 - 10 -