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わが国における糖尿病と合併症発症の病態と実態糖尿病では 高血糖状態が慢性的に継続するため 細小血管が障害され 腎臓 網膜 神経などの臓器に障害が起こります 糖尿病性の腎症 網膜症 神経障害の3つを 糖尿病の三大合併症といいます 糖尿病腎症は進行すると腎不全に至り 透析を余儀なくされますが 糖尿病腎症

日本の糖尿病患者数は増え続けています (%) 糖 尿 25 病 倍 890 万人 患者数増加率 万人 690 万人 1620 万人 880 万人 2050 万人 1100 万人 糖尿病の 可能性が 否定できない人 680 万人 740 万人

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グルコースは膵 β 細胞内に糖輸送担体を介して取り込まれて代謝され A T P が産生される その結果 A T P 感受性 K チャンネルの閉鎖 細胞膜の脱分極 電位依存性 Caチャンネルの開口 細胞内 Ca 2+ 濃度の上昇が起こり インスリンが分泌される これをインスリン分泌の惹起経路と呼ぶ イ

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ただ太っているだけではメタボリックシンドロームとは呼びません 脂肪細胞はアディポネクチンなどの善玉因子と TNF-αや IL-6 などという悪玉因子を分泌します 内臓肥満になる と 内臓の脂肪細胞から悪玉因子がたくさんでてきてしまい インスリン抵抗性につながり高血糖をもたらします さらに脂質異常症

肥満者の多くが複数の危険因子を持っている 肥満のみ約 20% いずれか 1 疾患有病約 47% 肥満のみ 糖尿病 いずれか 2 疾患有病約 28% 3 疾患すべて有病約 5% 高脂血症 高血圧症 厚生労働省保健指導における学習教材集 (H14 糖尿病実態調査の再集計 ) より

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血糖値 (mg/dl) 血中インスリン濃度 (μu/ml) パラチノースガイドブック Ver.4. また 2 型糖尿病のボランティア 1 名を対象として 健康なボランティアの場合と同様の試験が行われています その結果 図 5 に示すように 摂取後 6 分までの血糖値および摂取後 9 分までのインスリ

脂質異常症を診断できる 高尿酸血症を診断できる C. 症状 病態の経験 1. 頻度の高い症状 a 全身倦怠感 b 体重減少 体重増加 c 尿量異常 2. 緊急を要する病態 a 低血糖 b 糖尿性ケトアシドーシス 高浸透圧高血糖症候群 c 甲状腺クリーゼ d 副腎クリーゼ 副腎不全 e 粘液水腫性昏睡

食欲不振 全身倦怠感 皮膚や白目が黄色くなる [ 肝機能障害 黄疸 ] 尿量減少 全身のむくみ 倦怠感 [ 急性腎不全 ] 激しい上腹部の痛み 腰背部の痛み 吐き気 [ 急性膵炎 ] 発熱 から咳 呼吸困難 [ 間質性肺炎 ] 排便の停止 腹痛 腹部膨満感 [ 腸閉塞 ] 手足の筋肉の痛み こわばり

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生理学 1章 生理学の基礎 1-1. 細胞の主要な構成成分はどれか 1 タンパク質 2 ビタミン 3 無機塩類 4 ATP 第5回 按マ指 (1279) 1-2. 細胞膜の構成成分はどれか 1 無機りん酸 2 リボ核酸 3 りん脂質 4 乳酸 第6回 鍼灸 (1734) E L 1-3. 細胞膜につ

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糖尿病 2017.9.28 鳥取市立病院内科久代昌彦

1. 糖尿病の診断 2. 糖尿病の病態評価 3. 糖尿病の治療 4. 糖尿病合併症

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糖尿病を疑う症状 高血糖由来の症状口渇 多飲 多尿 体重減少 易疲労感 合併症由来の症状視力低下 両足痺れ感 歩行時下肢痛 勃起障害 (ED) 無月経 発汗異常 足潰瘍 自覚症状がなく受診検診で異常を指摘されて受診 TV 番組や健康講演などをきっかけに受診 ( 家族歴 肥満 )

糖代謝異常の判定区分と判定基準 1 早朝空腹時血糖値 126mg/dl 275gOGTT2 時間値 200mg/dl 3 随時血糖値 200mg/dl 4HbA1c(NGSP) 6.5% 1~4 のいずれかが確認された場合は 糖尿病型 と判定別の日に 糖尿病型 と再確認できれば 糖尿病 と診断 ( ただし 4 のみの反復検査だけでは診断してはいけない ) 1~3 のいずれかと 4 が確認された場合には 糖尿病 と診断 1~3 のいずれかと典型的糖尿病症状 or 網膜症があれば 糖尿病 と診断 5 早朝空腹時血糖値 <110mg/dl 675gOGTT2 時間値 <140mg/dl 56 ともに確認された場合は 正常型 と判定 糖尿病型 にも 正常型 にも属さない場合は 境界型 と判定 日本糖尿病学会 糖尿病治療ガイド 2016-2017 より

1. 糖尿病の診断 2. 糖尿病の病態評価 3. 糖尿病の治療 4. 糖尿病合併症

糖尿病の成因分類 Ⅰ. 1 型 膵 β 細胞の破壊 通常は絶対的インスリン欠乏に至る A. 自己免疫性 B. 特発性 Ⅱ. 2 型インスリン分泌低下を主体とするものと インスリン抵抗性が主体でそれにインスリンの相対的不足を伴うものがある Ⅲ. その他の特定機序や疾患によるもの A. 遺伝因子として遺伝子異常が同定されたもの 1 膵 β 細胞機能にかかわる遺伝子異常 2 インスリン作用の伝達機構にかかわる遺伝子異常 B. 他の疾患 条件に伴うもの 1 膵外分泌疾患 2 内分泌疾患 3 肝疾患 4 薬剤や化学物質によるもの 5 感染症 6 免疫機序によるまれな病態 7 その他の遺伝的症候群で糖尿病を伴うことの多いもの Ⅳ. 妊娠糖尿病 日本糖尿病学会 糖尿病治療ガイド 2016-2017 より

1 型糖尿病の自己抗体 抗 GAD 抗体 GAD=glutamic acid decarboxylase= グルタミン酸脱炭酸酵素 1 型糖尿病発症時の陽性率は 40~70% 罹病期間の短い (5 年以内 ) 患者の陽性率は 40~60% 罹病期間の長い (5 年以上 ) 患者の陽性率は 30~50% 年齢を問わない ( 小児 成人とも陽性率は同等 ) 抗 IA-2 抗体 IA-2=insulinoma-associated antigen-2= インスリノーマ関連蛋白 1 型糖尿病発症時や罹病期間の短い患者の陽性率は 50~60% 発症年齢が高くなると陽性率が低下 ( 成人では発症時でも約 20%) 罹病期間が 5 年以上になると 成人でも小児でも陽性率は 20~30% IAA IAA=insulin autoantibody= インスリン自己抗体 1 型糖尿病発症時の陽性率は約 20% ICA ICA=islet cell antibody= 膵島細胞抗体 1 型糖尿病発症時の陽性率はほぼ 100% 経過とともに陽性率は低下し 10 年後には陽性率約 10% ZnT8 抗体 ZnT8=zinc transporter 8= 亜鉛輸送担体 8 2007 年に新たに同定上記 4 抗体陰性者の 26% で陽性

1 型糖尿病の自己抗体 発症初期の陽性率が最も高いのは ICA だが 保険適用になっておらず 日常診療で検査することは困難 抗 GAD 抗体と抗 IA-2 抗体には相関がないため 両方測定することにより 1 型糖尿病の診断率は高まるただし両者を同時に測定することは保険では認められておらず まず抗 GAD 抗体を測定し 陰性なら IA-2 抗体を測定することになっている 2 型糖尿病でも抗 GAD 抗体が陽性のことはしばしば経験する 2 型糖尿病患者での抗 GAD 抗体陽性率は 3~14% という報告がある抗 GAD 抗体の抗体価 ( 正常 :<1.4U/ml) が 10U/ml 以上の場合には 経過中に緩徐進行 1 型糖尿病を発症する可能性が高い 1 型糖尿病を疑っている場合には 抗 GAD 抗体 +IAA をまず測定し 陰性なら抗 IA-2 抗体も測定する全部陰性の場合 患者の了解が得られれば ICA や ZnT8 を自費測定する 1 型糖尿病を疑っていない場合にでも 一度は抗 GAD 抗体を測定しておくことが勧められる

インスリン分泌能の指標 インスリン分泌指数 (insulinogenic index) 75gOGTT において負荷前と負荷 30 分後の IRI 値と血糖値を測定 IRI/ PG( 負荷 30 分の IRI 増加量を血糖値の増加量で除した値 ) インスリン追加分泌のうち初期分泌能の指標 0.4 以下だとインスリン分泌遅延があると判定 HOMA-β 360 空腹時 IRI ( 空腹時血糖値 -63) 通常 40~60 (10 以下だとインスリン依存状態と判定 ) インスリン治療中の患者には適用できない C ペプチド指数 (C-peptide index) 空腹時 C ペプチド / 空腹時血糖値 100 1.2 以上であれば内因性インスリン分泌能残存と評価 0.8 未満であれば内因性インスリン枯渇と評価 空腹時血中 C ペプチド 0.5ng/ml 以下であればインスリン依存状態と判定 24 時間尿中 C ペプチド排泄量 20μg/ 日以下であればインスリン依存状態と判定

インスリン抵抗性の指標 HOMA-R 空腹時 IRI 空腹時血糖値 /405 1.6 以下であれば正常 2.5 以上であればインスリン抵抗性の存在が明らかインスリン治療中の患者には適用できない 空腹時 IRI 値 15μU/ml 以上であればインスリン抵抗性の存在が明らかインスリン治療中の患者には適用できない 体重無投薬下であれば 肥満はインスリン抵抗性の存在を示唆する

1. 糖尿病の診断 2. 糖尿病の病態評価 3. 糖尿病の治療 4. 糖尿病合併症

糖尿病治療の目標 健康な人と変わらない日常生活の質 (QOL) の維持健康な人と変わらない寿命の確保 糖尿病細小血管合併症 ( 神経障害 網膜症 腎症 ) および動脈硬化性疾患 ( 冠動脈疾患 脳血管障害 末梢動脈性疾患 ) の発症 進展の阻止 血糖 体重 血圧 血清脂質の良好なコントロール状態の維持 日本糖尿病学会 糖尿病治療ガイド 2016-2017 より

目標 血糖コントロール目標 血糖正常化を目指す際の目標 合併症予防のための目標 治療強化が困難な際の目標 HbA1c(%) 6.0% 未満 7.0% 未満 8.0% 未満 細小血管合併症悪化率 ( 百人年あたり ) 16 14 12 10 8 6 4 2 0 4 5 6 7 8 9 10 11 HbA1c(%) Kumamoto study より

糖尿病治療の三本柱 食事療法 運動療法 薬物療法

食事療法 食品交換表をもとに管理栄養士に個別で栄養指導を受けるのが基本 簡単アドバイス 1 単純蔗糖や油脂を避ける 2 食物繊維の多い食品を摂取して食後の血糖上昇を抑える 3バランスのとれた栄養素を摂取するため多品種の食品を食べる 4 腹八分目にする 5 朝食 昼食 夕食を規則正しく摂取する 6ゆっくりよく噛んで食べる

適正なエネルギー摂取量 適正な一日の摂取エネルギー量 (kcal/ 日 ) = 標準体重 (kg) 身体活動量 (kcal/kg) 25~30 標準体重 (kg)= 身長 (m) 身長 (m) 22 身体活動量の目安軽労作 ( デスクワークが多い職業など ) 25~30kcal/kg 標準体重普通の労作 ( 立ち仕事が多い職業など ) 30~35kcal/kg 標準体重重い労作 ( 力仕事が多い職業など ) 35~kcal/kg 標準体重 例 ) 1 身長 150cm 教員 2 身長 170cm 事務員 1.5 1.5 22 30~35 1400~1700kcal/ 日 1.7 1.7 22 25~30 1500~1900kcal/ 日

運動療法 有酸素運動 酸素供給に見合った強度の運動歩行 ジョギング 水泳など レジスタンス運動 おもりや抵抗負荷に対抗して行う運動鉄アレイ 腕立て伏せ スクワットなど インスリン感受性が増す 筋肉量を増加して筋力を増す 水中歩行は有酸素運動とレジスタンス運動がミックスされた運動であり 膝にかかる負担が少なく 肥満糖尿病患者に安全かつ有効 運動強度は 楽だ ややきつい くらいの体感を目安にする運動量は1 日 200kcal 前後が適当歩行なら1 万歩くらいできれば毎日行うのが基本だが 少なくとも週 3 日以上が望ましい

日本糖尿病学会 糖尿病治療ガイド 2016-2017 より 薬物療法 2 型糖尿病の病態 インスリン抵抗性増大 + インスリン分泌低下 高血糖 インスリン作用不足 食後高血糖 空腹時高血糖 インスリン抵改抗善性系 インスリン促分進泌系 糖吸収排 泄調節系 経口血糖降下薬 ビグアナイド薬 チアゾリジン薬 SU 薬 速効型インスリン分泌促進薬 ( グリニド薬 ) DPP-4 阻害薬 α グルコシダーゼ阻害薬 SGLT2 阻害薬 肝臓での糖新生の抑制 骨格筋 肝臓でのインスリン感受性の改善 インスリン分泌の促進 より速やかなインスリン分泌の促進 食後高血糖の改善 血糖依存性のインスリン分泌促進とグルカゴン分泌抑制 炭水化物の吸収遅延 食後高血糖の改善 腎での再吸収阻害による尿中ブドウ糖排泄促進

ビグアナイド薬 一般名商品名血中半減期作用時間グリコラン 3.6 時間 6~14 時間メトホルミンメトグルコ 2.9 時間 6~14 時間 詳細は不明だが AMPPK(AMP 依存性プロテインキナーゼ ) を活性化して作用 肝での糖新生 ( 乳酸 ブドウ糖 ) を抑制消化管からの糖吸収を抑制末梢組織でのインスリン感受性を改善 体重増加しにくく 肥満糖尿病患者では第一選択だが 非肥満例にも有効インスリン抵抗性の強い患者に良い適応単独使用では低血糖をきたす可能性はごく低い 頻度は低いが 重篤な副作用として乳酸アシドーシスがある肝 腎 心 肺機能障害のある患者や脱水 大量飲酒者などには使用しない手術前後や造影検査前後には一時休薬する

チアゾリジン薬 一般名商品名血中半減期作用時間 ピオグリタゾンアクトス 5 時間 24 時間 PPARγ を活性化大型脂肪細胞のアポトーシスを促進し 大型脂肪細胞を減少小型脂肪細胞の生成を促進し アディポネクチンやレプチン産生を亢進 インスリン抵抗性を改善させることにより血糖降下作用を発揮インスリン抵抗性の強い患者に有効 体重増加しやすいので食事療法を厳守する必要があるインスリン抵抗性の強い患者に良い適応単独使用では低血糖をきたす可能性はごく低い 副作用として浮腫 貧血 LDH 上昇 CPK 上昇がある ( 特に女性 ) 水分貯留を来しやすいので心不全患者には使用しない膀胱癌との関連 女性の骨折との関連がとりざたされている

一般名商品名血中半減期作用時間 グリベンクラミド 主なスルホニル尿素 (SU) 薬 オイグルコンダオニール 2.7 時間 12~24 時間 グリクラジドグリミクロン 12.3 時間 12~24 時間 グリメピリドアマリール 1.5 時間 12~24 時間 膵 β 細胞膜上の SU 受容体に結合し インスリン分泌を促進 インスリン抵抗性の強い患者には良い適応ではない 血糖値に関係なくインスリン分泌を促進する体重増加を来たし易い低血糖のリスク ( 低血糖が遷延しやすい ) 長い

一般名商品名血中半減期作用時間 ナテグリニド 速効型インスリン分泌促進薬 スターシスファスティック 1.1~1.3 時間 3 時間 ミチグリニドグルファスト 1.2 時間 3 時間 レパグリニドシュアポスト 0.8 時間 4 時間 短い SU 受容体を介してインスリン分泌を促進するが結合時間が短い食後血糖のみ改善させる SU 薬との併用は無意味空腹時血糖値の高い症例に単独で用いるのでは不十分

一般名商品名血中半減期作用時間 シタグリプチン DPP-4 阻害薬 グラクティブジャヌビア 12 時間 24 時間 ビルダグリプチンエクア 2.4 時間 12~24 時間 アログリプチンネシーナ 17 時間 24 時間 リナグリプチントラゼンタ 105 時間 24 時間 テネリグリプチンテネリア 24.2 時間 24 時間 アナグリプチンスイニー 2 時間 12~24 時間 サキサグリプチンオングリザ 7 時間 24 時間 DPP-4 の選択的阻害により活性型 GLP-1 濃度および活性型 GIP 濃度を高める 血糖依存性にインスリン分泌を促進し グルカゴン分泌を抑制単独投与では低血糖のリスクは低い 血糖コントロール改善に際して体重を増加させにくい

インスリン分泌促進薬の作用機序 血糖上昇グルコース GLUT2 代謝 K ATP チャネル ATP 増加 細胞膜脱分極 流入 カルシウムイオン 電位依存性カルシウムチャネル インクレチン インクレチン受容体 camp 上昇 増幅 Ca2+ 上昇 インスリン分泌促進薬の標的は膵 β 細胞いかに β 細胞の機能をながく維持できるかが重要 インスリン分泌

α- グルコシダーゼ阻害薬 一般名商品名血中半減期作用時間 アカルボースグルコバイ非吸収 2~3 時間 ボグリボースベイスン非吸収 2~3 時間 ミグリトールセイブル 2 時間 1~3 時間 二糖類を単糖類 ( ブドウ糖 ) に分解する酵素を阻害し 糖の吸収を遅らせる食直前に服用することにより食後高血糖を抑制する アカルボース ミグリトールはアミラーゼ阻害作用もあるため薬効がやや強いミグリトールは血中に吸収されるがボグリボースは吸収されないアカルボースは腸内細菌によって代謝されて吸収されることがある 体重増加させにくい単独投与では低血糖を来す可能性はごく低い 副作用として腹部膨満 放屁増加 下痢などがある高齢者や開腹手術後では腸閉塞を起こすリスクあり胃切除後症例では食後高血糖抑制が期待される反面 イレウスのリスクも

一般名商品名血中半減期作用時間 イプラグリフロジンスーグラ 15 時間 24 時間 ダパグリフロジンフォシーガ 8~12 時間 24 時間 ルセオグリフロジンルセフィ 11 時間 24 時間 トホグリフロジン SGLT2 阻害薬 アプルウェイデベルザ 5.4 時間 24 時間 カナグリフロジンカナグル 10.2 時間 24 時間 エンパグリフロジンジャディアンス 14~18 時間 24 時間 近位尿細管でのブドウ糖再吸収を抑制し 尿糖排泄を促進 体重低下効果が期待される 単独投与では低血糖のリスクは低い 尿路 性器感染症 頻尿 多尿 皮疹の副作用あり

腎機能低下患者では効果減弱 膵への負担はない 浸透圧利尿作用 SGLT2 阻害薬 尿糖排泄促進 血糖改善 尿糖や 1,5AG は血糖コントロールの参考にならない ブドウ糖を利用するのではなく体外へ排泄 尿糖増加 体液量減少 脱水 多尿夜尿 栄養不良 おまけ血圧 尿酸 GFR 尿路感染症性器感染症 栄養不良状態 るい痩の患者では衰弱を助長する危険あり尿路感染症や性器感染症を生じる可能性あり水分摂取が十分できる患者でないと脱水の危険あり高齢者は渇中枢機能が低下しやすいので要注意

超速効型 速効型 中間型 持効型 混合型 配合溶解 インスリン注射薬 ヒューマログ ノボラピッド アピドラヒューマリンR ノボリンR ヒューマログN ノボリンN トレシーバ ランタスXR ランタス グラルギン レベミルヒューマログミックス25 ノボラピッド30ミックスなどライゾデグ BOT: 経口薬治療に basal insulin のみを追加 Basal-pulse:basal insulin+bolus insulin 1 回 / 日 Basal-two pulse:basal insulin+bolus insulin 2 回 / 日 Basal-bolus:basal insulin+bolus insulin 3 回 / 日

GLP-1 受容体作動薬 一般名 リラグルチド ( 遺伝子組換え ) 商品名 ビクトーザ皮下注 18mg 血中半減期 ( 時間 ) 作用時間 ( 時間 ) 1 筒中の含有量 1 日の使用量 13~15 >24 18mg 0.9mg エキセナチド バイエッタ皮下注 5μg ペン 300 バイエッタ皮下注 10μg ペン 300 1.4(5μg) 1.3(10μg) 8 300μg 10~20μg エキセナチド ( 持続性注射剤 ) リキシセナチド デュラグルチド ビデュリオン皮下注用 2mg リキスミア皮下注 300μg トルリシティ皮下注 0.75mg アテオス ー ー 2.6mg 2mgを 週 1 回 2.12(10μg) 2.45(20μg) 15 300μg 10~20μg 108 ー 0.75mg 0.75mgを 週 1 回

GLP-1 の多彩な薬理作用 食欲抑制 心筋保護 肝糖放出抑制 GLP-1 グルカゴン分泌抑制インスリン分泌促進 小腸 L 細胞 胃内容排出遅延胃酸分泌抑制 糖取り込み亢進グリコーゲン合成亢進

GLP-1 受容体作動薬 1 膵 β 細胞膜上の GLP-1 受容体に結合 血糖依存的にインスリン分泌促進作用を発揮 2 グルカゴン分泌抑制作用 3 胃内容物排出抑制作用 4 食欲抑制作用 体重減少作用 5 単独使用では低血糖をきたす可能性は低い 6 副作用として 下痢 便秘 嘔気などの胃腸障害が投与初期に認められる 7 急性膵炎の既往があり 膵炎の既往のある患者への投与は慎重を要する (8 注射薬であり 高価でもある )

薬剤選択 インスリン抵抗性が主体の症例に使うべき薬剤禁忌条件がなければまず BG 薬 インスリン分泌低下が主体の症例に使うべき薬剤程度に応じて DPP-4 阻害薬 グリニド SU 剤 肥満になりにくい薬剤体重減量効果が期待できるのは GLP-1 作働薬 BG 薬 SGLT2 阻害薬肥満を誘発しにくいのは DPP-4 阻害薬 αgi 低血糖を生じにくい薬剤 BG 薬 αgi チアゾリジン薬 DPP-4 阻害薬 SGLT2 阻害薬 GLP-1 作働薬 コストの安い薬剤 SU 薬 ビグアナイド薬は突出して安い 以上のような点を考慮して薬剤を選択する

低血糖 交感神経刺激症状 ( 血糖値 <70mg/dl) 発汗 動悸 頻脈 手指振戦 顔面蒼白中枢神経症状 ( 血糖値 <50mg/dl) 眠気 意識レベル低下 異常行動 痙攣 自律神経障害の合併があると交感神経刺激症状が欠落し 低血糖の前兆が無いまま昏睡に至ることもある 経口摂取可能な状況ならブドウ糖を 10g 程度摂取させる経口摂取不能な状況なら 50%Tz20~40cc を静注する改善するまで繰り返す SU 剤内服中に生じた低血糖昏睡では 薬剤の作用時間が長く いったん覚醒した後に昏睡を繰り返す場合があるので注意

1. 糖尿病の診断 2. 糖尿病の病態評価 3. 糖尿病の治療 4. 糖尿病合併症

糖尿病網膜症の病期と病態 治療 病期病態眼科的治療 網膜症なし 経過観察 単純網膜症 血管透過性亢進 内科治療 増殖前網膜症 血管閉塞 網膜光凝固 増殖網膜症 新生血管 硝子体手術 9.8 年 3.2 年 1.7 年 糖尿病発症 網膜症発症 増殖前網膜症 増殖網膜症

糖尿病腎症の病期と病態 病期 尿アルブミン値 (mg/gcr) GFR (egfr) or 尿蛋白値 (g/gcr) (ml/min/1.73m 2 ) 第 1 期 ( 腎症前期 ) 正常アルブミン尿 (30 未満 ) 30 以上 第 2 期 ( 早期腎症期 ) 微量アルブミン尿 (30~299) 30 以上 第 3 期 ( 顕性腎症期 ) 顕性アルブミン尿 (300 以上 ) 30 以上 or 持続性蛋白尿 (0.5 以上 ) 第 4 期 ( 腎不全期 ) 問わない 30 未満 第 5 期 ( 透析療法期 ) 透析療法中 2.0%/ 年 2.8%/ 年 2.3%/ 年 第 1 期第 2 期第 3 期第 4 期 18.9 年 10.9 年 9.7 年 方法 :UKPDS に参加した 5,097 例を 10.4 年間 ( 中央値 ) 追跡 2.5 年で末期腎不全に Adler AI, et al : Kidney Int 63, 225-232(2003) 一部改変

積極的治療による合併症抑制率 The earlier, the better! 早期の積極的な血糖コントロールが合併症抑制につながる (Legacy 効果 ) リスク低下率 ( % ) 20 10 0-10 -20-30 全死亡 -6% 心筋梗塞 -13% -16% -15% +11% 脳卒中 -9% 細小血管合併症の進展 -25% -24% 1997 2007 1997 2007 1997 2007 1997 2007 強化療法群における合併症抑制率 (vs 従来療法群 ) UKPDS33 試験終了後 10 年間での追跡評価 UKPDS80

糖尿病患者の血圧および血清脂質コントロール目標 血圧コントロール目標値 収縮期血圧拡張期血圧 130mmHg 未満 80mmHg 未満 尿蛋白 1g/ 日以上 収縮期血圧 125mmHg 未満 拡張期血圧 75mmHg 未満 血清脂質コントロール目標値 冠動脈疾患の有無 無 有 LDLコレステロール <120mg/dl <100mg/dl トリグリセリド <150mg/dl HDLコレステロール >40mg/dl 日本糖尿病学会ガイドラインより

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