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Transcription:

フレキシブル太陽電池向け微結晶シリコン薄膜の低温成長 山口大学工学部電気電子工学科技術専門職員河本直哉

背景 軽量で安価なプラスチックなどポリマー基板上の微結晶 Si 建材一体型太陽電池の実現 フレキシブル ディスプレイ プラスチック上に微結晶 Si を実現することで製品の軽量化 低価格化が実現される 現在の目標 : 軟化点 250 程度のプラスチック基板での高品質微結晶 Si 形成プロセスの開発

特徴 1 低温成長 2 非真空 3Roll to Roll 4 システム化 5 シリコン以外にも応用可能 利点 : 軽量かつ安価なエンジニアリングプラスチック基板上に微結晶シリコンを形成可能 利点 : 太陽電池内に Si トランジスタ形成可能 太陽電池のシステム化 ( 精密機器や情報端末 ) ポリカーボネート基板上に微結晶シリコン薄膜による薄膜トランジスタを作製に成功 150 nm 電子移動度 22.5 cm 2 /V S

電子移動度 < 非晶質 Si の構造の模式図 > 非晶質 ( アモルファス ) とは 構成原子の配列に結晶構造のような長距離規則性を持たない固体状態のことを指す 電子移動度 < 微結晶 Si の構造の模式図 > 微結晶 Si とは非晶質 Si と単結晶 Si の中間に位置するような存在で 異なる方位を有する単結晶 Si の粒 結晶粒 からなっている また 結晶粒と結晶粒の境界を結晶粒界と呼ぶ 微結晶 Si の電子移動度は 非晶質 Si と比べ 100 倍以上高いため 微結晶 Si を用いることで非晶質 Si と比べ電気特性の高い薄膜トランジスタを実現できる 実際の微結晶 Si の SEM 像

微結晶 Si 大粒径化の必要性 結晶粒界 電場 電子 電子の散乱は結晶粒界に堆積する結晶欠陥による 散乱 結晶粒微結晶 Si 中において電子が移動する際 電子は結晶粒界において散乱され トランジスタ特性は劣化する 電子 電子 電子が横切る結晶粒界の数は結晶粒の大きい方が少ない プラスチック上の高性能微結晶 Si 薄膜トランジスタ実現のためには 低温大粒径化技術を開発する必要がある

微結晶 Si 粒界改質の必要性 レーザ アニーリング法により形成された 微結晶シリコン薄膜の結晶欠陥による悪影響 結晶成長 後で説明 電気特性 電子移動度 V th, S, g m 逆方向電流 信頼性 ホットキャリア効果 疲労劣化 一般的には 欠陥の影響を低減するため水素アニーリングがおこなわれるが プロセス温度が高くプラスチックには適用不可能 プラスチック上の高性能微結晶 Si 薄膜トランジスタ実現のためには 低温大粒径化技術とともに 低温での結晶欠陥低減技術を開発する必要がある

微結晶 Si のアドバンテージその 1 微結晶 Si を使うことでガラス基板の外部に存在していたドライバ IC をガラス基板上に形成可能となり 配線の量を大幅に減少できる また 電子移動度が上昇するとトランジスタを小さくすることができるので ピクセルとピクセルの間を小さくすることができ 高精細な画面が可能になる 更にこれらに付随して 耐久性の向上 薄型 軽量 低消費電力といった商品的な付加価値が生じる 微結晶 Si のアドバンテージその 2 微結晶 Si によるトランジスタの電子移動度の向上により これまで単結晶上でしか形成できなかった高速 高密度の LSI( 例えば CPU メモリなど ) をガラス基板上に製作する可能となる 事実 シャープ ( 株 ) と ( 株 ) 半導体エネルギー研究所は 液晶パネル用ガラス基板上の微結晶 Si 薄膜により 8 ビット CPU Z80 の形成に成功することで 微結晶 Si によりディスプレイ上にコンピュータを実現可能であることを示した! そして 微結晶 Si をプラスチック上に実現することでディスプレイ以外の分野にも応用可能性は広がる!!

微結晶 Si 作製法従来法 : エキシマ レーザ アニーリング法 紫外パルス 微結晶 or 非晶質 Si ガラス基板 本学のレーザ アニーリング装置 非晶質 もしくは微結晶 Si にエキシマ レーザ ( 紫外レーザ ) を照射することにより溶融させ 結晶化する ガラス基板 ( 軟化点 550 ) 上の微結晶 Si 作製プロセスに用いられるが 軟化点 250 程度のプラスチックにはプロセス温度が高く適用が難しい 実際の微結晶 Si ( 右 ) オレンジの部分 非晶質 Si ( 左 ) 緑の部分 微結晶 Si

従来法 エキシマ レーザ アニーリング法 133 mj/cm 2 新技術 1 可視レーザ光誘起横方向成長法 ( crystallization (VILC: visible-laser-induced lateral 133 mj/cm 2 いずれも紫外レーザのエネルギー密度は 133 mj/cm 2 で同じ 400 mj/cm 2 可視レーザ光誘起横方向成長法により微結晶 Si の低温大粒径化に成功! 従来法では 微結晶 Si の大粒径化はレーザ エネルギー密度向上 (133 400 mj/cm 2 ) により生じる

従来法新技術 1 エキシマ レーザ アニーリング法 可視レーザ光誘起横方向成長法 ( crystallization (VILC: visible-laser-induced lateral 紫外パルス 紫外パルス + 可視パルス 微結晶 Si 基板 微結晶 Si 基板 微結晶 Si に紫外レーザであるエキシマ レーザを照射する方法 微結晶 Si に紫外レーザを照射することにより生じる微結晶 Si の大粒径化を 結晶成長に重要な役割を果たす部分のみを加熱することが可能な可視レーザを同時 もしくはあるタイミングをもって照射することで 促進する方法 可視レーザ光誘起横方向成長法とは

Spin Density (arb. unit) 新技術 2 可視レーザ光照射による結晶欠陥制御 [ 10 7 ] 2 2ω Solid Melt 可視パルス 1 1shot 11shot 33shot 99shot 200 400 600 Energy Density (mj/cm 2 ) 微結晶 Si / 石英 結晶欠陥数に関係するスピン密度は レーザ照射により微結晶 Si は溶融しない 400 mj/cm 2 まではエネルギー密度に依存し減少する しかし 400 mj/cm 2 を越え微結晶 Si が溶融することで 逆に欠陥が生成されていることがわかる 可視レーザ光照射により結晶欠陥の制御が可能! 結晶粒界部のみを加熱することで結晶欠陥の低減をおこなうことが可能なためプラスチック基板への応用が期待される

従来法新技術 2 水素アニール法 可視レーザ光照射による結晶欠陥制御 炉 微結晶 Si 基板 可視パルス 微結晶 Si 基板 微結晶 Si を水素雰囲気中で 450 程度で数時間炉アニールすることで Si の未結合手を水素原子で終端する方法 微結晶 Si 中で結晶欠陥が多く存在する部分のみを加熱することが可能な可視レーザを照射することで結晶欠陥数を低温かつ短時間に低減する方法 ( 照射条件によっては 欠陥の増加も可能 ) 可視レーザ光照射による結晶欠陥制御とは

エキシマ レーザ アニーリング法 ( 従来法 ) による微結晶 Si の結晶化 非晶質 もしくは微結晶シリコンに完全吸収される紫外レーザを照射することにより溶融結晶化する方法 レーザ光の吸収率 ( a-si ) 結晶粒内 (c-si) 結晶粒界 ( 100% : 吸収率 ( ( 100% : 吸収率 ( 結晶粒界 : 非晶質 Si 紫外パルス = 308 nm 結晶粒内 : 単結晶 微結晶 Si 薄膜中の温度 ( a-si ) 結晶粒内 (c-si) 結晶粒界 微結晶 Si 基板 結晶粒内を単結晶 Si 結晶粒界を非晶質 Si と仮定 特徴エキシマ レーザによる紫外パルスは非晶質 もしくは微結晶 Si に完全に吸収されるため レーザ光の利用効率は高い レーザ光を照射後に完全溶融し 溶融 Si より再び結晶化するため ショット数の依存は小さい 結晶化に必要なエネルギーを一度に与える方法 大粒径化に必要なエネルギーを 1 パルスで与える必要がある ( 低温化と大粒径化の両立は難しい )

低エネルギー密度のエキシマ レーザ照射による微結晶 Si の成長 非晶質 もしくは微結晶シリコンが完全溶融しない程度の低いエネルギー密度の紫外レーザを複数回照射することによっても微結晶 Si の大粒径化は生じる 225mJ/cm 2 32shot 臨界 225mJ/cm 2 200shot エネルギー密度 225 mj/cm 2, 32 ショットでは非常に小さな結晶粒しか確認できないが 200 ショットでは非常に大きな結晶粒に成長している 結晶性を示すラマン強度の結果も同様の結果を示している 結晶粒径がショット数に大きく依存する結果は レーザパルスを与える度に完全溶融し 再び結晶化する従来の例では説明できない 結晶成長は固相で生じている 特徴 レーザ光を照射後に完全溶融しないので ショット数の依存は大きい 大粒径化に必要なエネルギーを複数パルスで小分けに与えることができる ( 低温化と大粒径化の両立が可能 )

固相による微結晶 Si の大粒径化 結晶粒 結晶粒 結晶粒 結晶粒 結晶粒界の欠陥 基板 結晶粒 基板 粒界移動 結晶粒 固相による微結晶 Si の大粒径化は ある結晶粒 ( 右側 : 緑 ) の Si 原子が 結晶粒界を経て隣り合う他の結晶粒 ( 左側 : オレンジ ) へ移動することで 結晶粒界が Si 原子の移動方向と逆へ移動することで 生じる Si 原子の移動確率は結晶粒界の温度に依存する また 結晶粒界には結晶欠陥が多く堆積しており 移動する原子にとっては障害となる つまり 結晶粒界の結晶欠陥を低減させることで原子は移動しやすくなる 固相による微結晶 Si の低温大粒径化 結晶粒界部のみ加熱 結晶粒界部の欠陥低減により促進可能

可視レーザ照射による微結晶 Si の加熱様式 レーザ光の吸収率 ( a-si ) 結晶粒内 (c-si) << 結晶粒界 (% : 70 吸収率 ( ( 5% : 吸収率 ( 結晶粒界 : 非晶質 Si 可視パルス = 532 nm 結晶粒内 : 単結晶 Si 微結晶 Si 薄膜中の温度 微結晶 Si ( a-si ) 結晶粒内 (c-si) << 結晶粒界 基板 結晶粒内を単結晶 Si 結晶粒界を非晶質 Si と仮定 可視レーザ照射により結晶粒界の選択的加熱が可能 1. 結晶粒界部のみ加熱 2. 結晶粒界部のみ改質 可視レーザ照射により 微結晶 Si の大粒径プロセス 並びに微結晶 Si の結晶粒界部の改質プロセスの低温化が可能!

従来技術とその問題点 ( 従来技術 ) フレキシブル太陽電池は非晶質 Si と非晶質 SiGe のタンデム構造で実現されている 微結晶 Si はレーザ結晶化プロセスにより形成され その結晶粒界の欠陥は水素アニールによるダングリングボンドの終端化により処理されている ( 問題点 ) 非晶質 SiGe の原料ガスであるゲルマンは高価であるばかりでなく非晶質 SiGe における Ge 濃度を変化させると欠陥が誘起される 軟化点 250 以下のプラスティック基板には微結晶シリコン形成のためのレーザ結晶化プロセスや水素アニールは高温のため適用できない

新技術の特徴 従来技術との比較 プラスチック基板上微結晶 Si のレーザ結晶化プロセスにおいて問題点となる プロセスの低温化技術を開発した 微結晶 Si の大粒径化 ならびに結晶欠陥低減プロセスの低温化は 結晶成長に重要な役割を果たし かつ結晶欠陥の支配的位置である結晶粒界を可視レーザ光により選択加熱することで可能となる < 従来技術との比較 > プロセス温度基板プロセス時間コスト 固相成長法 800~1000 石英数時間 ~ 数日 x エキシマ レーザー アニーリング法 可視レーザ光誘起横方向成長法 <550 ガラス 20~50ns 程度〇 <250 プラスチック 20~50ns 程度〇

想定される用途 フレキシブル太陽電池 ( 非晶質 Si と微結晶 Si 薄膜のタンデム構造 もしくは CIGS 系 ) 太陽電池のシステム化 ( 太陽電池中に IC や LSI を組み込むことが可能 スマートグリッド等に付加装置なしで適用 ) フラットパネル ( フレキシブル ) ディスプレイ上の薄膜トランジスタ製造 RFID IC タグ 集積回路などのクレジットカード もしくはプラスティック製家電筐体等への直接作製 各種センサに 駆動回路 信号処理回路等を薄膜トランジスタで直接作製

想定されるユーザー 想定される業界 現在のところ 太陽電池製造業 並びにフラット パネル ディスプレイ製造業を主に想定している また その他半導体産業にも応用可能な技術である

実用化に向けた課題 この度開発した可視レーザ光誘起横方向成長法による微結晶 Si 大粒径化技術 ならびに可視レーザ光照射による結晶欠陥低減技術を利用することにより作製した太陽電池の動作を確認したい 当該技術を用いて形成した薄膜トランジスタの性能向上をはかりたい

企業への期待 可視レーザ光誘起横方向成長法による微結晶 Si 大粒径化 ならびに可視レーザ光をもちいた結晶欠陥低減技術開発は 実際の太陽電池や薄膜トランジスタのパフォーマンスをフィードバックすることで進めたいと考えている よって 太陽電池や薄膜トランジスタの作製可能な企業等との共同研究を希望する

本技術に関する知的財産権 発明の名称 : レーザによるシリコン結晶成長方法及び装置 出願番号 : 特願 2007-111227( 特開 2008-270510) 出願人 : 山口大学 発明者 : 河本直哉 三好正毅 発明の名称 : 多結晶シリコン粒界改質方法及び装置 出願番号 : 特願 2008-78304( 特開 2009-231746) 出願人 : 山口大学 発明者 : 河本直哉 三好正毅

お問い合わせ先 山口大学産学公連携 イノベーション推進機構 TEL(0836)85-9961 FAX(0836)85-9962 E-mail: yuic@yamaguchi-u.ac.jp 担当 : 櫻井 / 森