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Ⅱ章 背景知識 しかし 骨転移の体動時痛を 動いても痛くないようにすることは難しい場合が ある また神経障害性疼痛の場合 症状の完全な緩和が困難な場合もある これら のことを患者に理解してもらえるように 繰り返し丁寧に説明することが重要であ る 鎮痛薬の使用法 の治療は薬物療法と非薬物療法の組み合わ

資料

38 龍島靖明 西垣玲奈 赤木徹 他 1 オピオイド製剤処方量の年次推移.A: 注射製剤,B: 徐放性製剤.a: フェンタニル注射剤 : 術後疼痛 がん性疼痛への適応拡大 ( ),b: デュロテップパッチ 院内採用 ( ),c: オキシコンチン, 院内採用 ( )

癌性疼痛管理の指針

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【目的】

看護に役立つ知っておきたい オピオイドの知識

がん疼痛緩和に必要な知識

オピオイド

痛み目次 1. 痛み治療の基本 3 2. 第 1 段階 (WHO 3 段階ラダー ) 4 3. 第 2 段階 (WHO 3 段階ラダー ) 5 4. 第 3 段階 (WHO 3 段階ラダー ) 6 5. 各オピオイドの特徴 9 6. 経口投与可能な場合のオピオイドの初回処方 副作用対策

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SBOs- 3: がん診断期の患者の心身の特徴について述べることができる SBOs- 4: がん治療期 ; 化学療法を受けている患者の心身の特徴について述べることができる SBOs- 5: がん治療期 ; 放射線療法を受けている患者の心身の特徴について述べることができる SBOs- 6: がん治療期

Ⅰ. 改訂内容 ( 部変更 ) ペルサンチン 錠 12.5 改 訂 後 改 訂 前 (1) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本剤の作用が増強され, 副作用が発現するおそれがあるので, 併用しないこと ( 過量投与 の項参照) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本

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CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

表 Ⅲ 46 診療記録調査 対象患者背景 n % n % 性別 1) 専門的緩和ケアの診療日数 男性 % 平均 ± 標準偏差 79.5 ± 女性 % 緩和ケア病棟入院回数 年齢 1 回 % 平均 (± 標準偏差 ) 70.4 ± 12

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2. 改訂内容および改訂理由 2.1. その他の注意 [ 厚生労働省医薬食品局安全対策課事務連絡に基づく改訂 ] 改訂後 ( 下線部 : 改訂部分 ) 10. その他の注意 (1)~(3) 省略 (4) 主に 50 歳以上を対象に実施された海外の疫学調査において 選択的セロトニン再取り込み阻害剤及び

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添付文書情報 の検索方法 1. 検索条件を設定の上 検索実行 ボタンをクリックすると検索します 検索結果として 右フレームに該当する医療用医薬品の販売名の一覧が 販売名の昇順で表示されます 2. 右のフレームで参照したい販売名をクリックすると 新しいタブで該当する医療用医薬品の添付文書情報が表示され

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染症であり ついで淋菌感染症となります 病状としては外尿道口からの排膿や排尿時痛を呈する尿道炎が最も多く 病名としてはクラミジア性尿道炎 淋菌性尿道炎となります また 淋菌もクラミジアも検出されない尿道炎 ( 非クラミジア性非淋菌性尿道炎とよびます ) が その次に頻度の高い疾患ということになります

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2017 年 9 月 画像診断部 中央放射線科 造影剤投与マニュアル ver 2.0 本マニュアルは ESUR 造影剤ガイドライン version 9.0(ESUR: 欧州泌尿生殖器放射線学会 ) などを参照し 前マニュアルを改訂して作成した ( 前マニュアル作成 2014 年 3 月 今回の改訂

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10038 W36-1 ワークショップ 36 関節リウマチの病因 病態 2 4 月 27 日 ( 金 ) 15:10-16:10 1 第 5 会場ホール棟 5 階 ホール B5(2) P2-203 ポスタービューイング 2 多発性筋炎 皮膚筋炎 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:4

8 整形外科 骨肉腫 9 脳神経外科 8 0 皮膚科 皮膚腫瘍 初発中枢神経系原発悪性リンパ腫 神経膠腫 脳腫瘍 膠芽腫 頭蓋内原発胚細胞腫 膠芽腫 小児神経膠腫 /4 別紙 5( 臨床試験 治験 )

のつながりは重要であると考える 最近の研究では不眠と抑うつや倦怠感などは互いに関連し, 同時に発現する症状, つまりクラスターとして捉え, 不眠のみならず抑うつや倦怠感へ総合的に介入することで不眠を軽減することが期待されている このようなことから睡眠障害と密接に関わりをもつ患者の身体的 QOL( 痛

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STEP 1 検査値を使いこなすために 臨床検査の基礎知識 検査の目的は大きく 2 つ 基準範囲とは 95% ( 図 1) 図 1 基準範囲の考え方 2

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資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号

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緩和ケアに関する医療者の知識 困難感 実践尺度 のデータを解釈するための参考データについて 緩和ケアに関する医療者の知識 困難感 実践尺度 はいくつ以上だったら 知識がある 実践が出来ている 困難感が高いなどの基準はありますか? という質問をよく受けます 残念ながら そのような明確な基準はございませ

2012 年 1 月 25 日放送 歯性感染症における経口抗菌薬療法 東海大学外科学系口腔外科教授金子明寛 今回は歯性感染症における経口抗菌薬療法と題し歯性感染症からの分離菌および薬 剤感受性を元に歯性感染症の第一選択薬についてお話し致します 抗菌化学療法のポイント歯性感染症原因菌は嫌気性菌および好

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症例報告書の記入における注意点 1 必須ではない項目 データ 斜線を引くこと 未取得 / 未測定の項目 2 血圧平均値 小数点以下は切り捨てとする 3 治験薬服薬状況 前回来院 今回来院までの服薬状況を記載する服薬無しの場合は 1 日投与量を 0 錠 とし 0 錠となった日付を特定すること < 演習

抗精神病薬の併用数 単剤化率 主として統合失調症の治療薬である抗精神病薬について 1 処方中の併用数を見たものです 当院の定義 計算方法調査期間内の全ての入院患者さんが服用した抗精神病薬処方について 各処方中における抗精神病薬の併用数を調査しました 調査期間内にある患者さんの処方が複数あった場合 そ

改訂後 ⑴ 依存性連用により薬物依存を生じることがあるので 観察を十分に行い 用量及び使用期間に注意し慎重に投与すること また 連用中における投与量の急激な減少ないし投与の中止により 痙攣発作 せん妄 振戦 不眠 不安 幻覚 妄想等の離脱症状があらわれることがあるので 投与を中止する場合には 徐々に

目次 C O N T E N T S 1 下痢等の胃腸障害 下痢について 3 下痢の副作用発現状況 3 最高用量別の下痢の副作用発現状況 3 下痢の程度 4 下痢の発現時期 4 下痢の回復時期 5 下痢による投与中止時期 下痢以外の胃腸障害について 6 下痢以外の胃腸障害の副

付表 登録数 : 施設 部位別 総数 1 総数 口腔咽頭 食道 胃 結腸 直腸 ( 大腸 ) 肝臓 胆嚢胆管 膵臓 喉頭 肺 骨軟部 皮膚 乳房 全体

170509事務連絡(日本医学会・日本歯科医学会あて)

D961H は AstraZeneca R&D Mӧlndal( スウェーデン ) において開発された オメプラゾールの一方の光学異性体 (S- 体 ) のみを含有するプロトンポンプ阻害剤である ネキシウム (D961H の日本における販売名 ) 錠 20 mg 及び 40 mg は を対象として


Vol 夏号 最先端の腹腔鏡下手術を本格導入 東海中央病院では 平成25年1月から 胃癌 大腸癌に対する腹腔鏡下手術を本格導入しており 術後の合併症もなく 早期の退院が可能となっています 4月からは 内視鏡外科技術認定資格を有する 日比健志消化器外科部長が赴任し 通常の腹腔 鏡下手術に

愛知医科大学  緩和医療マニュアル

Transcription:

がん患者の疼痛治療 医療用麻薬をどう使う? 広島市立広島市民病院緩和ケア科 武藤純

27 年度緩和ケアチームコンサルテーション 肺癌大腸癌 ( 結腸癌 直腸癌 ) 胃癌膵癌乳癌悪性リンパ腫食道癌原発不明癌卵巣癌子宮癌肝細胞癌前立腺癌胆嚢癌腎癌膵神経内分泌腫瘍肝内胆管癌十二指腸乳頭部癌膀胱癌その他非がん 疾患別件数 全 150 件内訳 依頼内容 ( 重複あり ) 27 17 15 疼痛 13 10 6 精神症状 58 6 4 3 3 疼痛以外の身体症状 47 3 3 3 緩和医療の検討 12 3 2 2 意思決定について 1 2 2 13 鎮静 1 13 113

緩和ケアチームの活動 緩和ケアチームの介入状況 直接介入 + 提案 6 提案 51 オピオイドに関することの内容 ( 重複あり ) 投与経路の変更 増量 開始 デバイスの変更 ROO 製剤開始 継続 直接介入 (47 例 ) 4 3 3 2 2 2 1 6 9 12 17 直接介入 93 開始増量スイッチング投与経路変更追加減量 SAO 製剤追加 ROO 製剤追加レスキューの変更レスキューの減量 2 2 2 1 1 1 1 提案 (29 例 ) 7 6 9

1. がん患者の疼痛治療の原則

痛みの部位と経過を聞く どこが痛みますか? と部位を確認し 身体診察を行う 痛みの原因となる病変があることを 必要に応じ画像検査などを用いて評価する 新しく出現した症状は 新しい病変や合併症の出現の可能性を考える必要がある がん患者の痛みがすべてがんによる痛みとは限らない

がん患者に生じる痛みの原因 がん自体に起因する痛み 内臓や神経の破壊 虚血 圧迫 牽引 がん治療に伴って生じる痛み 術後痛 化学療法や放射線治療の有害事象 消耗や衰弱によって生じる痛み 筋肉や関節の萎縮 拘縮 褥創 がんとは直接関係のない痛み 変形性関節症 胃潰瘍や胆石などの偶発症

三段階除痛ラダー 癌の痛みからの解放 WHO 編 ( 日本緩和医療学会ホームページより )

鎮痛に用いられる薬剤 ロキソニンセレコックスボルタレン NSAIDs 鎮痛補 助薬 リリカサインバルタテグレトールキシロカイン ステロイドカロナール 麻薬 トラマールオキシコンチンフェントスタペンタパシーフ 最適な処方

2. 麻薬の種類について考える

がん性疼痛の治療に使用されている主なオピオイド トラマドールモルヒネオキシコドンフェンタニルタペンタドールメサドン

主なオピオイド鎮痛薬の発売年月日 薬事 2015.4(Vol.57 No.4) 19(515)

当院における医療用麻薬処方量 ( 平成 27 年度 ) 薬品名 総計 単位 MS ーコンチン錠 (10mg) 723 錠 パシーフカプセル (30mg) 1609 Cap パシーフカプセル (120mg) 146 Cap オプソ内服液 (5mg/2.5mL) 6874 包 塩酸モルヒネ錠 (10mg) 1763 錠 アンペック坐剤 (10mg) 1323 個 アンペック坐剤 (20mg) 532 個 モルヒネ塩酸塩注 (10mg) 1565 A モルヒネ塩酸塩注 (50mg) 583 A アンペック注 (200mg) 305 A オキシコンチン錠 (5mg) 49329 錠 オキシコンチン錠 (20mg) 9817 錠 オキシコンチン錠 (40mg) 8323 錠 オキノーム散 (2.5mg/ 包 ) 495 包 オキノーム散 (5mg/ 包 ) 22026 包 オキノーム散 10mg/ 包 19513 包 オキファスト注 (50mg) 1093 A デュロテップMTパッチ (2.1mg/ 枚 ) 244 枚 デュロテップMTパッチ (4.2mg/ 枚 ) 160 枚 デュロテップMTパッチ (8.4mg/ 枚 ) 406 枚 フェントステープ (1mg/ 枚 ) 5484 枚 フェントステープ (2mg/ 枚 ) 5113 枚 フェントステープ (4mg/ 枚 ) 4205 枚 アブストラル舌下錠 (100μg) 3575 錠 アブストラル舌下錠 (200μg) 265 錠 フェンタニル注 (0.1mg) 33356 A フェンタニル注 (0.5mg) 6734 A メサペイン (5mg) 579 錠 メサペイン (10mg) 2811 錠 院外処方 手術室での使用がほとんど

モルヒネ オピオイド鎮痛薬の標準薬 剤型が豊富で 様々な投与方法に対応可能 呼吸困難に対して緩和効果が認められている グルクロン酸抱合で代謝される 腎機能障害で 代謝産物であるM6Gが蓄積して傾眠や呼吸抑制を起こしやすい - Ccr<30ml/min 透析患者では使用すべきでない Jpn J Cancer Chemother 39 (8): 1295-1299, August, 2012

オキシコドン オキシコンチン 5mg/ 錠製剤が 使いやすく オピオイド開始時の事実上の標準薬となっている 便秘傾向が強いとされている 活性代謝産物は微量しか生成されず 腎機能障害による影響を受けにくい 主として肝臓のチトクローム P-450(CYP) により代謝される 薬物相互作用に関して薬剤師と相談すること

フェンタニル 注射剤 経皮吸収型貼付剤 口腔粘膜吸収剤 舌下錠がある 他のオピオイドに比して便秘 眠気などの副作用の頻度が低い 腎機能障害患者にも使用できる 貼付剤という剤形のメリットは非常に大きい

レスキューに用いるフェンタニル製剤 口腔粘膜吸収剤 ( バッカル錠 ) と舌下錠 Rapid Onset Opioid (ROO) 速放性製剤よりも鎮痛効果の発現がやや速い 定時投与されているオピオイドの量とレスキューに用いるフェンタニル製剤の 1 回量との間には相関性が乏しい 必ず最低用量 (50μg または 100μg) から開始 効果と副作用を見ながら 1 回量を漸増する 1 日あたりの使用回数に制限がある

タペンタドール タペンタ 25mg がオキシコンチン 5mg 相当で オピオイド開始時に使用できる μ オピオイド受容体への結合と ノルアドレナリンの再取り込み阻害作用により 鎮痛効果を発揮する 他の第 3 段階オピオイドと比較して便秘や悪心 嘔吐を生じにくい がん疼痛治療における位置づけは確立されていない

メサドン NMDA 受容体拮抗作用を有するオピオイド 半減期が長く その個人差も大きいため タイトレーションが難しく がん疼痛治療の専門家 ( 有資格者 ) によってのみ使用されるべきオピオイドである QT 延長による致死的な不整脈を生じるリスクがある モルヒネと比較して 腎機能低下例において安全に使用できる

オピオイドの選択の基本 軽度 中等度の痛みに対しては トラマドールを選択するメリットがあるが 強度の痛みに対しては強オピオイドを選択する方がよい 強オピオイドの間で 鎮痛効果に差があるという証拠はない フェンタニルがモルヒネと比較して 便秘が少ないことに関しては証拠がある がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2014 年版

オピオイドの選択にあたって検討する事項 1. 可能な投与経路最も簡便で患者が好む投与経路から投与できるオピオイドを選択する 一般的には経口投与を優先する 2. 合併症腎機能障害のある患者では モルヒネとコデインは避けることが望ましい 3. 共存する症状強い便秘や腸蠕動を低下させることを避ける必要がある病態では フェンタニルが望ましい また 呼吸困難がある場合にはモルヒネが望ましい 4. 痛みの強さフェンタニル貼付剤は 投与量の迅速な変更が難しいため 痛みが不安定な場合は原則として使用しない 高度の痛みでは強オピオイドを使用する がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2014 年版

一般的に推測されていること モルヒネはオキシコドンやフェンタニルに比べて せん妄が多い タペンタドールはオキシコドンやモルヒネに比べて消化器系の副作用が少ない フェンタニル貼付剤は初めてオピオイドを投与する場合に使用しても問題なく使用できる可能性がある ( 日本では不可 ) オピオイドスイッチングや投与経路の変更で鎮痛は改善する

3. 血中濃度を考える

オキシコンチン (20mg 内服 ) 添付文書

パシーフ 添付文書

血中濃度から考えられること 徐放剤といえども血中濃度の変動はかなり大きい ピークをうまく利用するように計画することができればよい ピークで副作用が発生しやすい 場合によっては 1 日 2 回内服の薬剤を 1 日 3 回内服とする 1 日 1 回内服の薬剤を 1 日 2 回内服とする等の工夫をしてもよい

フェンタニル貼付剤 フェントステープ デュロテップ MT パッチ 添付文書

血中濃度から考えられること フェントステープ では長期間にわたって少しずつ血中濃度が上昇する デュロテップ MT パッチ では 貼付 1 日目の血中濃度が最も高く 2 日目 3 日目と減少する

オキノーム 5mg 内服 オキノーム オキシコンチン 20mg 内服 添付文書

ROO(Rapid Onset Opioid) アブストラル イーフェンバッカル 添付文書

持続静注 持続皮下注 血中濃度 時間

持続注射のメリット 内服のような血中濃度の変動がなく 安定した投与が可能 内服と同力価の持続注射の場合 血中濃度のピークが低くなり副作用が軽減できる可能性がある 少量でも大量でも投与が容易 ボーラス投与を併用することで 突出痛への対応ができる (PCA)

PCA(Patient Controlled Analgesia) 持続投与量 : 点滴が閉塞しない程度の流量 (0.5 2ml/h 程度 ) となるように濃度を調節持続を 0 または少量とする時はリザーバー内にヘパリンを混入 ボーラス投与量 : 通常 1 時間量 ロックアウト時間 : 静注 PCA の場合 5 15 分程度 時間有効回数 : ロックアウト時間と組み合わせて安全性を高めることができる 時間

PCA 使用 34 症例 オキファスト 14 モルヒネ 10 フェンタニル 7 オキファスト モルヒネ 1 モルヒネ オキファスト 1 Smith medical ホームページより オキファスト フェンタニル 1

PCA の利点 1. 患者さんがボタンを押すことで 自ら疼痛をコントロールできる 2. 経口よりも効果が迅速 3. 頻回の疼痛にも対応できる 4. 消化管が利用できない場合に有用 5. オピオイドの必要量が速やかに見積もれる

おわりに 医療用麻薬の使用方法について概説した 日本でも多くの医療用麻薬が使用可能となっており 適切な医療用麻薬を適切な使用方法で用いることで より良い疼痛コントロールが得られる可能性がある 各薬剤の特性を見極めて処方することが望まれる