普及し始めている それに伴い, 光学部品やレーザー光源の低価格化が進んでいるため, ファイバーレーザーを光源として用いることで, ひずみ計測システムのコストを抑えることができる しかしながら, 一般的なファイバーレーザーでは, 帯域が狭いため, センサの光源として使用することができない そのため本研

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重点研究 光計測技術を応用したひずみ計測システムの開発 ( 第 1 報 ) * 清水暁 * 植竹大輔 Development of a Strain Measuring System applying Optical Method (1st Report) Akira SHIMIZU and Daisuke UETAKE FBG センサを用いたひずみ計測システムの開発に向け, レーザー光源の試作ならびに検出系の検 討を行った 中心波長 1030nm, 帯域 15nm の光源を試作し,FBG センサからの出力を確認した Key Words : FBG, ファイバーレーザー,ANDi レーザー, 動ひずみ計測 1 はじめに近年, トンネル, 橋梁, プラント等の安全性を確保するため, その構造体のひずみ ( 静 ) を監視する手法が用いられている その設置環境から電気抵抗式ひずみゲージの使用は難しいため, 静ひずみの監視用センサとして, 耐熱性, 耐久性, 耐電磁ノイズ性, 信号線の長距離性に優れる光ファイバセンサの一つである FBG(Fiber Bragg Grating) センサが利用されている FBG センサは, レーザー光のブラッグ反射を利用して, 光ファイバー中に周期的に屈折率の異なる回折格子を形成した構造であるため, 容易に構造体に埋め込むことができる この利点に着目し, 航空宇宙分野等において,CFRP 構造体の中に FBG センサを埋め込み, 航空機やロケット等のひずみ ( 動ひずみ ) をリアルタイムに計測し, その構造体に作用する振動 衝撃等を計測することが検討されている 1) 動ひずみの計測のためには, ひずみの変化を高速に検出することが必要とされるが, 従来の静ひずみ計測は, レーザー光の強度変化を光スペクトラムアナライザ等で計測する手法であり, 高速な振動現象を計測することが困難であった 本研究では,FBG センサの出力をフォトダイオード等で検出することで, 動ひずみを計測するためのシステム開発を行うことを目標とし, レーザー光源の試作ならびに検出系の検討を行ったので報告する 1.1 FBG センサ FBG とは, 図 1 に示すように, 光ファイバーのコア内に周期的なグレーティングを形成したファイバー型のデバイスであり, グレーティングの周期によるブラッグ反射条件を満たす光を * 栃木県産業技術センター機械電子技術部 反射させることができる FBG へのひずみが変化すると, ブラッグ波長が変化するため,FBG に広帯域光を入射した場合, ブラッグ波長を含む狭帯域光が反射される この性質をセンサとして利用することで,FBG に加わるひずみや振動を検出することができる レーザー光は, サーキュレータを介して,FBG センサへ入射される サーキュレータは図 2 に示すように 3 ポートを有しており, サーキュレータのポート 1 に入射した光はポート 2 へ出射し, ポート 2 に入射した光はポート 3 に出射する ポート 2 に FBG を接続することで,FBG からの反射光をポート 3 から取り出すことができる 図 1 FBG センサ図 2 サーキュレータ 1.2 ファイバーレーザーファイバーレーザーは小型軽量, 高効率, 高安定, 長距離伝送可能等の特徴があり, 加工分野を中心に -65-

普及し始めている それに伴い, 光学部品やレーザー光源の低価格化が進んでいるため, ファイバーレーザーを光源として用いることで, ひずみ計測システムのコストを抑えることができる しかしながら, 一般的なファイバーレーザーでは, 帯域が狭いため, センサの光源として使用することができない そのため本研究では,FBG センサ用の光源として, レーザーを短パルス化することで, レーザー光源の広帯域化が可能な, 正常分散モード同期レーザー (All Nomal Dispersion Laser:ANDi レーザー ) について検討した モード同期法は, 短パルスを発生させるために用いられる手法である 利得媒質を含む共振器の長さを L, 光速を C とした時, 共振器の中で多くの縦モードで発振しているとすると, 隣り合う縦モード角周波数 Δωは, Δω = πc/l (1) と表すことができる N 本の縦モードで発振している場合の電界は以下の式で表すことができる E(t)=ΣE n exp(j(ω 0 +nδω)t + φ n ) (2) 全ての位相が揃う場合 (φn = 0) を考えると, モードロック時のレーザー強度は, I(t) = I 0 sin 2 {NΔωt/2}/sin 2 {Δωt/2} (3) と表すことができる この式は, 時間 T = 2π/Δω 毎に最大値をとるパルス列を表している パルスを維持するためには, 位相を揃える必要があるが, ファイバー中をパルスが伝播する間に, 波長毎に位相がずれ, パルスの幅は広がっていく これを補償するために共振器内にチャープミラー, 回折格子, プリズム対等が用いられる 2) が, これらは, 小型化が難しい, 損失が大きい, 外乱に弱い等の問題がある ANDi レーザーは, 偏向子とスペクトルフィルタ等で構成できるため, 小型化, 安定性の面で優れている 本研究で試作した ANDi レーザーは, パルス幅を補償するために, 光ファイバーの非線形効果を利用している ファイバー中を強度の強い光が伝搬すると自己位相変調と相互位相変調によりパルス強度に依存して位相が変化し, 偏波が回転 ( 非線形偏波回転 ) する この効果により, レーザーがファイバー中を伝播する間に偏光は強度に依存して回転するため, パルス中心における偏光の回転はパルス両端に比べて大きくなる 偏向子と PBS を用い, 強度の強いパルス中心の偏光のみを通過させることで, パルス整形を行うことが可能となる 2 研究の方法 2.1 光源の開発 ANDi レーザー光源によるひずみ計測システムの概要を図 3 に示す 図 3 の PBS(Polarizing Beam Splitter) より左側が ANDi レーザー光源, 右側が FBG センサ部である 中心波長 976nm のレーザーダイオード (LD) からの光が Yb ファイバーを通過する際に,1030nm の光が生成される Yb ファイバーで生成した 1030nm の光を増幅するために WDM とアイソレータにより単方向のリングキャビティを構成した 戻り光による LD の損傷を防ぐために,LD はポンププロテクタを介して WDM に接続した Yb ファイバーを通過したレーザー光は, ファイバー型コリメーターで平行光にし, 空間に放出する 1/4 波長板, 1/2 波長板,PBS, バンドパスフィルタ, アイソレータ,1/4 波長板の順番で通過させ, 再びコリメーターによりファイバー中に結合する ここで, バンドパスフィルタは自己位相変調により広がるスペクトルをカットし, 振幅変調を起こす役割を果たしている また,1/4 波長板 (QWP) と 1/2 波長板 (HWP) により, パルスの高強度部分のみが PBS を通過できるように設定した これにより, ファイバー中で広がったパルスを PBS において再び圧縮することができる 光学系を調整するために,1/2 波長板,1/4 波長板, バンドパスフィルタを設置しない状態でリングキャビティの調整を行い, 共振を確認した後,1/2 波長板, 1/4 波長板, バンドパスフィルタを設置し, 波長板の調整を行うことで, レーザーをモード同期状態にし, 短パルスの発生を試みた 図 3 ひずみ計測システム概要図 2.2 検出回路 FBG センサからの反射光は, サーキュレータを通過後, 検出系へ入射する 振動による FBG センサのブラッグ波長の変化をとらえるために, 本研究では, 図 4 に示すように, ブラッグ波長の変化を光学フィルタにより光強度の変化に変換した後に, フォトダイオードで検出する フォトダイオードの出力を -66-

I-V 変換回路により電圧に変換し, 増幅回路により電圧増幅を行う 本年度は,FBG からの反射光を測定するため, フォトダイオードと I-V 変換回路について検討を行った QWP HWP BPF 図 4 検出系概要図 QWP ISO 3 結果および考察 3.1 レーザー光源の試作およびその特性図 5に試作したファイバーレーザー光源の外観を示す また 図 6にLD 単体の出力特性を, 図 7に試作した ANDiレーザーの出力特性を示す 出力特性は, レーザーダイオードの電流を変化させたときのレーザーの出力をパワーメータで測定した 図 6のLD 単体の出力特性は,WDMに融着する前のパワーを測定し, 図 7 のファイバーレーザーの出力特性は,QWP,HWPを調整しモード同期状態になることを確認した後, レーザーダイオードの電流値を0mAから500mAまで変化させ,PBSを透過したレーザー光のパワーを測定した LD 単体の場合の発振しきい値は, 直線近似から 37.3mA, スローブ効率は0.58W/Aであった ファイバーレーザーの場合 LD 電流が280mAまではレーザー出力は単調に増加するが300mAで不連続な変化を示す 次に高速ディテクタを用い, オシロスコープでPBS のからの透過光の波形を観測した LD 電流が300mA の時のパルス波形を図 8に示す LD 電流を0mAから 500mAまで変化させながら, 透過光の波形を観測したところ,280mAから300mAで, 不安定なパルスの生成が始まり,300mA 以上の領域でモードロックによる安定したパルスが生成され,480mA を超えるとパルス生成が不安定になることがわかった 安定したパルスが得られる最大出力は87.4mWとなった パルス周期は30.3nsであり,33MHzで動作していることがわかる ファイバーレーザーのスペクトルを図 9に示す スペクトルは,1030nm を中心に15nm 程度の帯域を持つ LD 電流が480mAの時, レーザーの出力は87.4mWであることから1パルスあたりのエネルギーは最大で2.6nJ と見積もることができる Intensity [a.u] 図 5 LD Power [mw] Power [mw] 図 6 図 7 図 8 試作したファイバーレーザー光源 LD 出力 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 0 50 100 150 200 LD Current [ma] 100 80 60 40 20 0 3.5E 02 3.0E 02 2.5E 02 2.0E 02 1.5E 02 1.0E 02 5.0E 03 レーザーダイオード出力特性 レーザー出力特性 CW Mode 0 100 200 300 400 500 LD Current [ma] ファイバーレーザー出力特性 ファイバーレーザ出力波形 0.0E+00-5.0E-08-2.5E-08 0.0E+00 2.5E-08 5.0E-08 Time [sec] ファイバーレーザー時間波形 -67-

Intensity [a.u] ファイバーレーザースペクトル 3500 3000 2500 2000 1500 1000 1020 1025 1030 1035 1040 波長 [nm] 図 9 ファイバーレーザースペクトル 3.2 FBGセンサ出力試作したレーザー光源にサーキュレータと FBGを接続し,FBG からの反射光の計測を行った 図 2のポート1からの戻り光により, レーザー光源のパルスが乱れる現象が確認されたため, サーキュレータの前段にアイソレータを挿入した 図 10にFBGセンサからの反射光のスペクトルを示す 反射光の波長は 1034.97nm, 半値幅は 0.61nmであった また, レーザー光源からのパワーを50mWに設定した場合, コリメータレンズを介して, サーキュレータに入射するレーザーのパワーは23mW であり,FBGに入射されるレーザーのパワーは 7.0mW, サーキュレータから出力されるレーザーのパワーは,2.4mWであった Intensity (a.u) FBGからの反射スペクトル 7.0E-06 6.0E-06 5.0E-06 4.0E-06 3.0E-06 2.0E-06 1.0E-06 0.0E+00 1020 1025 1030 1035 1040 波長 [nm] 図 10 FBGセンサスペクトル 回路を試作した 電圧に変換した後, 反転増幅回路により10 倍に電圧増幅した FBGセンサからの出力 (2.4mW) を検出回路に入力したところ,50mVの電圧出力が得られることがわかった ピーク部分 (0.6mW) に換算すると, 12.5mV 程度の出力が得られることになる このことから, 後段の増幅は少なくとも100 倍程度に設定する必要があることがわかった 今回使用したフォトダイオードKPDE086S( 京セミ ) は,1030nmで受光感度が 0.6A/W 程度であるため, フォトダイオードに入射するレーザーのパワーが 2.4mWの場合, およそ 1.44mAの電流が流れる 回路シミュレータにより, 出力電圧を計算したところ150mVの出力が得られるはずであるが, 実際には1/3 程度の出力しか得られなかった これは, レーザー光源の繰り返し周波数が 33MHzであるのに対し, フォトダイオードの帯域が30MHzであることが原因と考えられる 今後は, さらに広帯域のフォトダイオードを使用するとともに, 検出回路の素子定数の最適化を行う必要がある 4 おわりに FBG センサを用いたひずみ 振動計測システムを構築するため, レーザー光源ならびに検出回路を試作し,FBG センサからの出力を確認した レーザー光源は, 中心波長 1030nm, 帯域 15nm, 繰り返し周波数 33MHz, 最大出力 87.4mW の性能であった また,FBG センサからの出力は, 中心波長 1034.97nm, 半値幅 0.61nm であり,2.4mW の出力に対して IV 変換回路で検出したところ 50mV 程度の出力が得られることがわかった 今後は, 検出回路の最適化等を行うとともに, 本研究で作製したシステムを振動測定に適用し, 複数個所の振動を同時に測定するシステムを開発する 図 10からわかるように,FBG からの反射スペクトルには,1034.97nmのピーク以外に 1020nmまでの波長のスペクトルが含まれている この部分をバックグラウンドとして除去すると, ピーク部分のパワーは, およそ0.6mWとなる 次にFBGセンサからの出力を検出するための回路について検討を行った FBGセンサからの出力をInGaAsフォトダイオードで受信し, フォトダイオードからの電流を電圧に変換するための 謝辞本研究を実施するにあたって貴重なアドバイスをいただいた宇都宮大学工学研究科学際先端システム学専攻東口武史准教授に深く感謝申し上げます 参考文献 1) 中島富男, 荒川敬弘 : FBG センサによる高速動ひずみ計測技術について,IIC Review,No.38,pp.37-44(2007) -68-

2) J.R.Buckley,F.W.Wise Femtosecond fiber lasers with pulse energies above 10nJ, OPTICS LETTERS, Vol.30,No.14,pp1888-1890,(2005) -69-