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スピンオフに関する組織再編税制の改正 PwC 税理士法人 国際税務 /M&A タックスグループディレクター原嵩 はじめに 2017( 平成 29) 年度税制改正では事業再編の環境整備のために 経営戦略に基づく先を見据えたスピード感のある事業再編等を加速するため 特定事業を切り出して独立会社とするスピンオフ等の円滑な実施を可能とする税制の整備を行う 1 いわゆるスピンオフ税制が 2017( 平成 29) 年 4 月 1 日以降に行われる組織再編について適用されることが予定されています 2 本稿では 特定事業を切り出して独立した会社とするスピンオフ 3 のスキームについて 現行制度上での選択肢 税務上の課題を示した上で 2017( 平成 29) 年度税制改正で見直されたポイントとそれにより期待される効果の概要を解説します 当該スピンオフ税制の導入により 一定の税制適格要件を満たす場合 事業部門や完全子会社のスピンオフについて スピンオフを行う会社の譲渡損益課税の繰り延べや株主配当非課税が適用されます ( 以下 税制適格スピンオフ ) このような税制優遇措置を適用することでスピンオフを促進し 中核事業への専念等による経営の独立 スピンオフされた会社の独自の資金調達等による資本の独立 コングロマリットディスカウントの克服等による上場の独立による企業価値の向上が期待されています 4 5 1 スピンオフ税制による税制適格スピンオフの類型 スピンオフの類型としては スピンオフを行う法人の特定 の事業部門を新設法人として事業分離する場合 ( 以下 事 業スピンオフ ) と スピンオフの対象となる事業部門がす でに子会社として存在しており 当該子会社の株式を当該 親会社が現物配当 ( 法人税法上は 現物分配 ) を行う場合 ( 以下 子会社スピンオフ ) があります 2017( 平成 29) 年度税制改正において 子会社スピンオ フである現物分配のうち 100% 子会社株式を分配する等 の一定の現物分配 6 を株式分配として定義し そのうち一 定の条件を満たすものについて 適格株式分配として税制適格スピンオフの一つの類型となっています ( 図表 1 参照 ) 事業スピンオフに関する税制適格スピンオフは以下の 3 つの類型が設定されます 1 単独新設分割型分割 : 一の法人のみが分割法人となる分割型分割で 当該分割法人が分割前に行っている事業の一部を 分割型分割により 新たに設立する分割承継法人において独立して行うための分割として 一定の要件を満たすものです ( 図表 2 参照 ) 1 2016 28 12 8 29 7 2 2016 28 12 22 2017 29 2 3 193 3 4 2016 28 12 8 29 44-45 5 2 単独新設分社型分割後の当該新会社株式の現物分配 : 単独新設分社型分割を実施後に 分割法人が当該分割承継法人株式を適格株式分配により子会社スピンオフを行うものです ( 図表 3 参照 ) 3 単独新設現物出資後の当該新会社株式の現物分配 : 単独新設現物出資を実施後に 現物出資法人が当該被現物出資法人株式を適格株式分配により子会社スピンオフを行うものです ( 図表 3 参照 ) 6 100 6 PwC s View Vol. 08. May 2017

図表 1: 子会社スピンオフ ( イメージ図 ) 図表 2: 事業スピンオフ ( イメージ図 )- 単独新設分割型分割 株式発行 新設分割 現物分配 図表 3: 事業スピンオフ ( イメージ図 )- 単独新設分社型分割 / 現物出資及び現物分配 図表 4 図表 5 ( 分社型分割 ) ( 現物出資 ) 親会社 現物分配 Step 2 現物分配 現物分配ノンコア子会社 ノンコア子会社 Step 2 事業統合 ノンコア子会社 2 適格株式分配による子会社スピンオフ 2017( 平成 29) 年度税制改正前において 100% 子会社株式を現物分配法人の各株主 ( 株主は複数存在 ) に対して剰余金の配当として現物分配を行った場合 100% 親会社である内国法人に対する適格現物分配に該当しないことから 非適格現物分配として取り扱われます 7 2017( 平成 29) 年度税制改正後において 100% 子会社株式を現物分配法人の各株主に対して剰余金の配当として現物分配を行った場合 一定の条件を満たす場合には 適格株式分配として取り扱われることとなります 8 9 当該一定の条件には 子会社株式の全てが移転され 当該株式のみが移転する現物分配であること 現物分配の前後において支配株主が存在しないこと 10 按分型の現物分配であること 従業者の継続従事要件 事業継続要件および特定役員要件等が含まれます 適格株式分配の導入により 親会社は 100% 子会社株式の子会社スピンオフを 親会社レベルでの譲渡益課税および株主レベルでの配当課税を受けることなく実施できます 従って 例えば 親会社が保有する特定のノンコア子会社を株主に対して切り出し コングロマリットディスカウントの解消を図る組織再編の実施が見込まれるものと思われます ( 図表 4 参照 ) あるいは 複数の上場企業が保有する特定の事業の子会社株式を株主に対して適格株式分配により分配後に 当該子会社スピンオフの対象となった旧子会社群が共同事業要件を満たす適格組織再編等を利用して国際的に競争力の高い会社を設立することも考えられます ( 図表 5 参照 ) 適格株式分配に該当するためには 当該適格株式分配の前後において支配株主が存在しないことが求められます 当該要件は 子会社スピンオフを行う親会社が株式分配前に他の者により支配されていないこと および 子会社スピンオフの対象となった当該子会社に継続して他の者により支配されないことが見込まれることです 従って 例えば親法人がノンコアの 100% 子会社の株式について株式分配を 7 8 9 10 100 PwC s View Vol. 08. May 2017 7

行い 当該ノンコア事業を主力事業として事業拡大を意図する第三者が実施するTOBにより当該 100% 子会社の支配権を取得することが当初より見込まれている場合は適格株式分配に該当しない可能性が高いものと考えます また 完全子会社株式の全部を現物分配する取引のみが適格株式分配の対象となるため 他の株主と共同で保有する子会社株式の現物分配や 保有する完全子会社株式の一部を現物分配する取引は 適格株式分配とはならないと考えます 3 単独新設分割型分割による事業スピンオフ 2017( 平成 29) 年度税制改正前において 単独新設分割型分割により分離元企業より分離先企業に事業のスピンオフを行う場合 分離元企業にその 50% 超を保有する株主が存在しなければ グループ内組織再編による適格分割として取り扱うことはできませんでした また 単独新設分割であるため 事業統合を行う相手先が存在しておらず共同事業要件を満たす組織再編による適格分割として取り扱うこともできませんでした 従って グループ内組織再編成でない限り 単独新設分割型分割による事業スピンオフは 非適格分割として税務上取り扱われてきました 11 非適格分割としての単独新設分割型分割を行った場合には 分離元企業 および分離元企業の株主において課税が生じることとなります 2017( 平成 29) 年度税制改正後において 単独新設分割型分割により事業のスピンオフを行う場合 一定の条件を満たす時には適格分割として取り扱われます 12 当該一定の条件には 分割の前後において支配株主が存在しないこと 13 按分型であること 14 主要な資産 負債の移転要件 従業者の継続従事要件 事業継続要件および特定役員要 15 件が含まれます 適格分割として取り扱われる場合 分離元企業である分割法人の株主においては 分離先企業の株式のみを受け取るため 株式の譲渡損益課税を受けることはなく みなし配当課税も生じません 一定の要件を満たす単独新設分割型分割が適格分割として取り扱われることにより 分離元企業である分割法人に含まれる特定の事業部門を 分離先企業である分割承継法人に対して事業分離することが 分離元企業での譲渡益課税および分離元企業の株主レベルでの配当課税を受けることなく実施できます 従って 例えば 親会社が保有する特定のノンコア事業を株主に対して切り出し コングロマリットディスカウントの解消を図る組織再編の実施が見込まれるものと思われます ( 図表 6 参照 ) あるいは 複数の上場企業が保有する特定の事業を統合する場合に ある 1 社が適格分割に該当する単独新設分割 型分割により事業を切り出し その後残余の上場企業が共同事業要件を満たす適格組織再編等を利用して国際的に競争力の高い会社を設立することも考えられます ( 図表 7 参照 ) 単独新設分割型分割が適格分割に該当するためには 当該適格分割の前後において支配株主が存在しないことが求められます つまり 当該適格分割の後においても50% 超を保有する株主が存在していないことが必要です 従って 例えば 50% 超を保有する株主が存在していない JV 会社について 当該 JVを解消するために 単独新設分割型分割を行い JV 会社の事業分離を実施し その後株式の売買を通じて 分離先企業あるいは分離元企業において50% 超を保有する株主の存在が見込まれる場合には 当該単独新設分割型分割は適格分割には該当しないと考えます 4 単独新設分社型分割 / 単独新設現物出資および当該新会社株式の現物分配による事業スピンオフ 2017( 平成 29) 年度税制改正前において 分離元企業である分割法人が 新設分社型分割により 特定の事業部門を 分離先企業である分割承継法人に対して事業分離を行 16 い 当該分割承継法人の株式の全部を分離元企業である分割法人の株主に現物分配した場合には 当該新設分社型分割は非適格分割として 17 当該現物分配は非適格現 11 5 12 13 14 15 16 2017 29 50 2017 29 17 1 2017 29 100 50 5 8 PwC s View Vol. 08. May 2017

図表 6 図表 7 株式発行 株式発行 新設分割 新設分割 Z 社 ノンコア事業 ノンコア事業 Step 2 事業統合 物分配として 18 取り扱われるため 課税が生じます また 分離元企業である現物出資法人が 現物出資により 特定の事業部門を 分離先企業である被現物出資法人に対して事業分離を行い 当該被現物出資法人の株式の全部を分離元企業である現物出資法人の株主に現物分配した場合には 当該新設単独現物出資は非適格現物出資として 当該現物分配は非適格現物分配として取り扱われてきました 2017( 平成 29) 年度税制改正後において 分離元企業からの単独新設分社型分割による事業分離に続き 分離先企業である分割承継法人の株式を 適格株式分配により 分離元企業である分割法人の株主に現物分配することが見込まれている場合には 一定の条件を満たすならば 単独新設分社型分割は適格分割として取り扱うことが可能となり 課税関係を繰り延べること 19 が可能となります また 分離元企業からの単独新設現物出資による事業分離に続き 分離先企業である被現物出資法人の株式を 適格株式分配により 分離元企業である現物出資法人の株主に現物分配することが見込まれている場合には 一定の条件を満たすならば 単独新設現物出資は適格現物出資として 現物分配は適格株式分配として取り扱うことが可能となります 一定の要件を満たす単独新設分社型分割 / 単独新設現物出資および当該分割 / 現物出資に続く株式分配が 適格分割 / 適格現物出資および適格株式分配として取り扱われることにより 分離元企業である分割法人 / 現物出資法人に含まれる特定の事業部門を 分離先企業である分割承継法人 / 被現物出資法人に対して事業分離することが 分離元企業での譲渡益課税および分離元企業の株主レベルでの配当課税を受けることなく実施できます 従って 例えば 親会社が保有する特定のノンコア事業を株主に対して切り出し コングロマリットディスカウントの解消を図る組織再編の実施が見込まれるものと思われます ( 図表 3 参照 ) 5 まとめ 以上 スピンオフに関する組織再編税制の改正のポイントを解説してきました 今後の政省令の公表を踏まえて スピンオフ税制がどのように日本のステークホルダー型のコーポレートガバナンスに適合し 会社と株主の対話を経て 実務的に発展していくのかを注視し 日本の税制適格スピンオフと海外税制の双方を考慮しながらクライアントの 選択と集中 の判断への税務実務面からの支援を組織再編実施時に提供していきたいと考えます 18 2 2017 29 100 100 1 2 100 19 1 2017 29 2 2 / 原嵩 ( はらたかし ) PwC 税理士法人国際税務 /M&Aタックスグループディレクター 2006 年公認会計士登録 2011 年英国勅許税理士登録 2006 年から 2008 年まで欧州系投資銀行にて資本財セクターの M&A 直接金融の立案 執行に関与 日系企業のアウトバウンド M&Aの税務業務を提供中 グローバルなカーブアウト案件 ( セルサイド含む ) JV 組成案件に関する税務業務に豊富な知見を有する メールアドレス :takashi.h.hara@pwc.com PwC s View Vol. 08. May 2017 9

PwCあらた有限責任監査法人 104-0061 東京都中央区銀座 8-21-1 住友不動産汐留浜離宮ビル Tel:03-3546-8450 Fax:03-3546-8451 PwC Japanグループは 日本におけるPwCグローバルネットワークのメンバーファームおよびそれらの関連会社 (PwCあらた有限責任監査法人 PwC 京都監査法人 PwCコンサルティング合同会社 PwCアドバイザリー合同会社 PwC 税理士法人 PwC 弁護士法人を含む ) の総称です 各法人は独立して事業を行い 相互に連携をとりながら 監査およびアシュアランス コンサルティング ディールアドバイザリー 税務 法務のサービスをクライアントに提供しています 2017 PricewaterhouseCoopers Aarata LLC. All rights reserved. PwC Japan Group represents the member firms of the PwC global network in Japan and their subsidiaries (including PricewaterhouseCoopers Aarata LLC, PricewaterhouseCoopers Kyoto, PwC Consulting LLC, PwC Advisory LLC, PwC Tax Japan, PwC Legal Japan). Each firm of PwC Japan Group operates as an independent corporate entity and collaborates with each other in providing its clients with auditing and assurance, consulting, deal advisory, tax and legal services.