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要望番号 ;Ⅱ-183 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者学会 ( 該当する ( 学会名 ; 日本感染症学会 ) ものにチェックする ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 1 位 ( 全 8 要望中 ) 要望する医薬品

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抗菌薬の殺菌作用抗菌薬の殺菌作用には濃度依存性と時間依存性の 2 種類があり 抗菌薬の効果および用法 用量の設定に大きな影響を与えます 濃度依存性タイプでは 濃度を高めると濃度依存的に殺菌作用を示します 濃度依存性タイプの抗菌薬としては キノロン系薬やアミノ配糖体系薬が挙げられます 一方 時間依存性

2.7.3(5 群 ) 呼吸器感染症臨床的有効性グレースビット 錠 細粒 表 (5 群 )-3 疾患別陰性化率 疾患名 陰性化被験者数 / 陰性化率 (%) (95%CI)(%) a) 肺炎 全体 91/ (89.0, 98.6) 細菌性肺炎 73/ (86

機能分類や左室駆出率, 脳性ナトリウム利尿ペプチド (Brain Natriuretic peptide, BNP) などの心不全重症度とは独立した死亡や入院の予測因子であることが多くの研究で示されているものの, このような関連が示されなかったものもある. これらは, 抑うつと心不全重症度との密接な

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資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号


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づけられますが 最大の特徴は 緒言の中の 基本姿勢 でも述べられていますように 欧米のガイドラインを踏襲したものでなく 日本の臨床現場に則して 活用しやすい実際的な勧告が行われていることにあります 特に予防抗菌薬の投与期間に関しては 細かい術式に分類し さらに宿主側の感染リスクも考慮した上で きめ細

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感染とプロカルシトニン

プロカルシトニン (PCT) とは アミノ酸 116 個からなる分子量約 130kDa のペプチドで正常ではカルシトニンの前駆体として甲状腺 C 細胞で合成される J Clin Endocriol Metab 2004;89:1512-25 細菌感染症では TNFα 等の炎症性サイトカインの増加により 肺 肝臓 腎臓 筋肉といった全身の臓器で産生され 値が上昇する 一方ウイルス感染症では INF-γ が増加するため産生が抑制される Endocrinology 2003;144:55788-84 細菌感染症で特異的に値が上昇するものではなく 熱傷 外傷 外科手術 膵炎といった非感染症においても上昇する Crit Care Med 2008;36:941-52

PCT 値と病態 PCT (ng/ml) <0.05 健常成人 <0.5 sepsis は否定的だが局所感染の可能性がある sepsis の発症 6 時間以内ではこのレベルにとどまることもある 0.5~2.0 sepsis の可能性がある ただし外傷 手術 熱傷 真菌症等の病態の可能性がある 2.0~10 sepsis の可能性が高い severe sepsis のハイリスクである >10 severe sepsis または septic shock の以外である可能性が低い またはこれらの病態になるリスクが非常に高い http:www.procalcitonin.com

日本における PCT 2006 年 2 月から保険適用され 敗血症 ( 細菌性 ) を疑う患者を対象として測定した場合に実施料 320 点が算定できるようになった 日本国内で保険収載されている PCT 検査キットには半定量キットと定量キットがある 半定量キットでは約 30 分で結果が出るため迅速診断が可能だが 測定範囲が 0.5 ng/ml 以上であり 偽陰性の問題がある 定量キットは外注検査となることが多いため 結果確認までに時間がかかり 迅速性が失われる ( 測定時間は 2.5 時間 )

診断としての有用性 ウイルス感染 あるいは真菌感染のみで PCT が高値を呈する可能性は非常に低い Crit Care Med 2000;28:1828-32 PCT 測定によって 92% と高い感度で細菌感染症とウイルス感染症の鑑別が可能であった Clin Infect Dis 2004;39:206-217 細菌感染症の鑑別診断において 少なくとも既存マーカー (CRP など ) よりも優れている Crit Care Med 2006;34:1996-2003 PCT は細菌感染症診断の新しいマーカーとして期待された

診断としての有用性 しかし ICU 患者における sepsis の診断に関しての PCT の感度は 71% 特異度は 71% であった また 陽性尤度比は 3.03 陰性尤度比は 0.43 であった Lancet Infect Dis 2007;7:210-7 ICU 患者は PCT が上昇しうる非感染性疾患を基礎に持っている可能性が高く PCT を sepsis の診断に用いる際に特異度が低くなる可能性もある Crit Care Med 2008;36:941-52 sepsis の診断において PCT は 100% 理想的であるとはいえず その値のみ を唯一の指標として使用するのではなく 患者の全身状態や他のパラメー ターとともに診断にあたるべきである ことが強調されている

予後予測 治療効果判定における有用性 PCT の経時的変化 (1 日での値の上昇量 ( 1.0ng/ml) ) ならびに最大値 ( 5.0ng/ml) は ICU 入室後 90 日死亡率の予後予測因子である Crit Care Med 2006;34:2596-2602 PCT は septic shock 患者では有意に高値であったが 生存者と非生存者間では値に 差がなかった PCT が 72 時間までに 50% 以上低下した患者がより死亡率が低かった Critical Care 2010,14;R205 COPD 急性増悪において PCT>0.1ng/ml の患者では抗菌薬の効果がみられた CHEST 2010; 138:1108 1115 PCT を絶対値として捉えるではなく トレンドで追うことで予後予測ができることを示 唆 また PCT 値は治療効果マーカーとしての有用性がありそうである

PCT 値を絶対値として捉えても 細菌感染の診断をそれのみで行うまでの完璧な有用性はなさそうであるが 相対値として捉えることは予後や経過の予測に利用できそうである また PCT 値は治療効果判定にも利用できるかもしれない PCT を sepsis の診断のみに用いるのでなく その経時的変化 治療効果予測を抗菌薬の治療アルゴリズムに使用してみるといった研究へと方向転換してきている Crit Care Med 2010;38:2229-41

PCT 値を指標としたアルゴリズムによる抗菌薬投与とは 細菌感染症に対して抗菌薬を処方する際に PCT 値に基づいて 抗菌薬 の開始判断や中止判断を下す方法 深刻化する薬剤耐性を減らすべく試みとして行われている 実際にPCTを指標としたアルゴリズムにより抗菌薬消費量の削減に寄与できた というRCTがいくつか発表されている ( 主に市中呼吸器感染症患者とICU 患者の二つの患者群において検証されてた ) 現在までに数編

アルゴリズムの一例 Schuetz P, et al. Effect of Procalcitonin-based Guidelines Compared to Standard Guidelines on Antibiotic Use in Lower Respiratory Tract Infections: The Randomized-Controlled Multicenter ProHOSP Trial. JAMA 2009; 302:1059-1066

市中呼吸器感染症についての RCT 市中呼吸器感染症において PCTを抗菌薬投与中止 継続の指標とすることで ER 受診後の死亡 ICU 入室 疾患特異的合併症 30 日以内の抗菌薬投与を必要とする再発感染からなる複合的有害事象発生に関して 対照群と比して非劣性であった また 有意に抗菌薬使用期間の短縮を認めた JAMA 2009;302:1059-66 その他 市中呼吸器感染症において PCT を指標としたアルゴリズムを検討した複数の RCT より 患者に害を与えることなく抗菌薬消費量が削減できる可能性が示唆された Lancet 2004;363:600-7 Am J Respir Crit Care Med 2006;174:84-93 Chest 2007;131:9-19 Arch Intern Med 2008;168:2000-7 など

ICU においての RCT ICU における VAP 患者において PCT を抗菌薬投与中止 継続の指標とすることで 抗菌薬不使用日数が有意に長くなり 有害事象に関しては差がなかった Eur Respir J 2009;34:1364-75 ICU において PCT を抗菌薬投与開始 中止 継続の指標とすることで 予後を悪化させることなく 有意に抗菌薬投与期間を短くすることができた Lancet 2010;375:463-74 その他 ICU における RCT もいくつか行われている それらを含むメタアナリシスを紹介する Am J Respir Crit Care Med 2008;177:498-505 Langenbecks Arch Surg 2009;394:221-6 Crit Care 2009:13 R83 など

Procalcitonin-guided algorithms of antibiotic therapy in the intensive care unit : A systematic review and meta-analysis of Randomized controlled trials Crit Care Med 2010;38:2229-41 A systematic review and meta-analysis 7 Studies(PCT アルゴリズム vs コントロール ) primary outcomes: 最初の感染エピソードにおける抗菌薬治療期間 ( 日 ) フォロー期間 (28 日間 ) における抗菌薬不使用日数 抗菌薬の総曝露期間 ( 日 ) secondary outcomes : 28 日死亡率 ICU 滞在期間 入院日数 人工呼吸器の不使用日数 感染の再発 持続率 混合感染率 抗菌薬治療期間は短縮 secondary outcomes に関しては差はなし

最初の感染エピソードにおける抗菌薬治療期間 PCT 群で短縮 : -2.14 日 (95% CI,-2.48 to -1.80) 抗菌薬の総曝露期間 PCT 群で短縮 : -4.19 日 (95% CI,,-4.98 to -3.39) 28 日死亡率 二群間で有意差なし : OR 0.93 (95% CI, 0.69 to 1.26) PCT アルゴリズムにより有害事象を増やすことなく抗菌薬投与期間を減少することができた

Procalcitonin to Guide Duration of Antimicrobial Therapy in Intensive Care Units : A systematic Review Clin Infect Dis 2011; 53: 379-387 ICU において PCT 値を抗菌薬の開始 継続 中止判断に使用することの有効性を検討した RCT の systematic review A systematic review and meta-analysis 6 Studies primary outcome: 抗菌薬の投与期間 / 頻度 secondary outcome: ICU 滞在期間 入院日数 死亡率 人工呼吸器不使用日数 感染の再発率 primary outcome 唯一 PCT を抗菌薬開始のみの判断に使用した RCT この RCT のみ抗菌薬の曝露を減らせなかった

secondary outcomes ICU 滞在期間は二編の RCT で PCT 群で有意に短縮した ( 赤線 ) 死亡率 感染の再発率は全ての RCT で二群間で有意差なし この systematic review では ICU において PCT を指標としたアルゴリズムにより抗菌薬使用を ( 安全に ) 削減でき ICU 滞在期間を短くできることを示唆した

PCT は抗菌薬の開始判断に使えない? 唯一 PCT を抗菌薬開始のみの判断に使用した RCT また唯一 抗菌薬の曝露を減じられなかった RCT 79 episodes of suspected infection with PCT level < 0.25 µg/ml were recorded. Clinicians decided not to treat 38% of these episodes (n=30). The remaining 49 episodes were treated, of which 65 % were eventually considered as probable or confirmed infections by ID specialist (n=32). PCT が低値であっても 臨床医が細菌感染症を疑っている場合 抗菌薬の投与を開始するのは臨床医として当然なことなのでは!? PCT を開始基準にしたプロトコルは無理があるのでは

Procalcitonin Algorithms for Antibiotic Therapy Decisions A Systematic Review of Randomized Controlled Trials and Recommendations for Clinical Algorithms Arch Intern Med 2011;171(15):1322-1331 A systematic review 14 studies (N=4467) 呼吸器感染症と sepsis において PCT を指標としたアルゴリズムと通常治療を比較し た RCT が対象 ( 各々の RCT は primary care ED ICU のいずれかの部門で行われている ) 抗菌薬処方率 抗菌薬投与期間 死亡率 有害事象を検討

各 RCT と PCT を指標としたアルゴリズムの詳細 アルゴリズムは RCT により異なるものを使用していた

primary and secondary outcomes 抗菌薬の処方率 投与期間は PCT 群で有意に減少 軽症患者 (primary care) では抗菌薬の処方率が低い傾向 ( 赤丸 ) 重症患者 (ICU) では抗菌薬投与期間が短い傾向 ( 青丸 )

mortality PCT 指標群と通常治療群で死亡率は変わらず primary care/ ED/ ICU OR 0.13 (0-6.64)/ 0.95 (0.67-1.36)/ 0.89 (0.66-1.20) total OR 0.91 (0.73-1.14) 呼吸器感染症患者と sepsis 患者では PCT を指標としたアルゴリズムによって死亡率に影響を与えず抗菌薬への曝露を減少させることができる ここではさらに 患者の重症度をもとにしたアルゴリズムを提案している

アルゴリズム ( 案 ) A:low risk primary care ないし ED で治療されている上下気道感染症 ( 非肺炎 ) 患者 B:moderate risk ED ないし入院して治療されているものの 症状は安定している肺炎患者 C:high risk ICU で治療されている sepsis が疑われる重症肺炎患者

Procalcitonin for reduced antibiotic exposure in the critical care setting : A systematic review and an economic evaluation Crit Care Med 2011;39:1792-99 systematic review of 5 studies (in ICU) primary outcomes: 28 日死亡率 感染再発率 secondary outcomes: ICU 滞在期間 入院日数 多剤耐性菌の発生率 抗菌薬投与期間 上記に加えて経済的な評価をしている(PCTの検査費用 抗菌薬の費用 入院費 総治療費などを含めて検討している ) primary outcomes secondary outcomes

28 日死亡率 PCT を指標としたアルゴリズムよる影響はなし risk ratio 1.06 (95% CI 0.86-1.3, P=0.59) 抗菌薬投与期間 PCT 指標群で有意に短かった weighted mean difference -2.14 days (95% CI -2.15 to -1.78, p<0.00001)

費用に関して シナリオ PCT 検査価格 / 日 PCT 測定頻度抗菌薬投与期間 Base case Can $ 49.42 6 日間 ( 毎日 ) 6 日間 Best case Can $ 25.88 1 日おき 3 回 6 日間 Worst case Can $ 69.29 13 日間 ( 毎日 ) 13 日間 base case において PCT を指標としたアルゴリズムでは通常群と比べ Can$1134.86 の費用削減となる PCT を指標としたアルゴリズムでは通常治療よりも費用を削減できることを示唆

ICU における RCT メタアナリシスからわかったこと これまでの RCT 及びメタアナリシスから ICU においても PCT を指標としたアルゴリズムにより 有害事象なく抗菌薬を削減できることが示唆された ただし ICU 患者において 抗菌薬使用期間の短縮が得られた複数の RCT はいずれも小規模であり 安全性を検証するために有害事象発生率を一次エンドポイントとした より規模の大きな RCT が必要であった PRORATA 試験が行われた ( 以前の勉強会を参照 ) フランスの 8 つの ICU で細菌感染症が疑われた 630 人を対象に行われた RCT 28 日死亡率 60 日死亡率 28 日までの抗菌薬不使用日数が一次エンドポイント PCT を指標としたアルゴリズムを従来のマネージメントと比較した場合の死亡率における非劣性ならびに抗菌薬不使用日数における優越性が示された Lancet 2010;375:463-74 その後 同様のエンドポイントを設定した RCT が行われた

Procalcitonin-guided interventions against infections to increase early appropriate antibiotics and improve survival in the intensive care unit : A randomized trial (PASS) Crit Care Med 2011;39:2048-58 Objective: PCT ガイドによる抗菌薬の escalation によって治療期間を短縮かつ生存率を改善できるかを検討 Design:randomized controlled open-label trial Setting: multi centers (9 ICU in Denmark) Patients: 24 時間以上の ICU 滞在が見込まれた患者 1200 人 Methods: 通常治療群 : 感染症の診断 (#) のもとに既存のガイドラインに基づいた抗菌薬治療 (##) PCT 群 : 毎日 PCT 値を測定し その値に基づいた抗菌薬治療 (#) Crit Care Med 2003;31:1250-56 (##) Crit Care Med 2008;36:296-327 primary endpoint は ICU 入室後 28 日 そして 28 日死亡率を検討 secondary outcome は follow up 中での適切な抗菌薬投与がされるまでの期間 臓器障害等

alert / non-alert PCT PCT 群では毎日の PCT の値に基づいて alert /non-alert PCT day に区分し 治療介入を変更 [alert-pct] 初回 PCT 1.0ng/ml 二回目以降 PCT 1.0ng/ml で前日値から 10% 以内の低下 コンセプトとしては 1 積極的に広域抗菌薬の投与 2 感染源の積極的な検索を行う

PCT 群での詳細な介入方法 CATEGORY1 First PCT > 1.0 ng/ml, patient has not received antibiotics CATEGORY2 A) First PCT 1.0 ng/ml, patient has received antibiotics or B) PCT Alert for 1 day after CAT 1,CAT 4 or CAT 5 has been started or C) PCT Alert from start sample till next morning CATEGORY3 A) First PCT 1.0 ng/ml, patient has received antibiotics and clinical suspicion of fungal infection or catheter related infection. or B) PCT Alert for 1 day after CAT 2 has been started CATEGORY4 A) Start PCT<1.0 ng/ml or B) Non Alert PCT, but 1.0 ng/ml or C) PCT<1.0ng/ml for 1-2days CATEGORY5 PCT < 1.0 ng/ml for 3 or more days Action Category CATEGORY 1 CATEGORY 2 CATEGORY 3 CATEGORY 4 CATEGORY 5 Diagnostics Surgery Antimicrobials c Blood culture Tracheal secretion Urine culture Culture from susp. source Diagnostic imaging of susp. source Blood culture Tracheal secretion Urine culture Culture from susp. source Diagnostic imaging of susp. source Blood culture Tracheal secretion Urine culture Culture from susp. source Diagnostic imaging of susp. source Renewing oldest diagnostic imaging of susp. source Nothing further Nothing further According to diagnostic imaging and clinical judgment According to diagnostic imaging and clinical judgment According to diagnostic imaging and clinical judgment Stand ard-of-care approach Standard-ofcare approach 1. Cefuroxim 1500 mg x 3 i.v. or Ampicillin 1g x 4 / 2 g x 3 i.v. 2. Ciprofloxacin 400 mg x 2 i.v. 3. Consider: Metronidazol 500 mg x 2 i.v. 1. Pip/Tazo d 4gx3 iv or Meropenem 1gx3 iv 2. Ciprofloxacin 400 mg x 2 i.v. 3. Metronidazol 500 mg x 2 i.v. 4. Consider fungal infection: Fluconazole i.v. and cath. inf: Vancomycin, dosage acc.to. Se-Vanco e 1. Pip/Tazo d 4gx3 iv or Meropenem 1gx3 iv 2. Ciprofloxacin 400 mg x 2 i.v. 3. Metronidazol 500 mg x 2 i.v. 4. Fluconazol 400 mg x 2 i.v. 5. Vancomycin, dosage acc.to. Se-Vanco e Continue present treatment Re-consider the indication for antibiotics (standard-of-care principle)

患者選定 割り付け (ICU 入室 ) 時点での両群の患者背景 割り付け時における PCT の感染に対する感度は 59.3% であった

primary endpoint 28 日死亡率 PCT 群 / 通常治療群 31.5% / 32.0% the absolute risk reduction 0.6% ( -4.7 to 5.9 ) the relative risk 0.98 ( 0.83 to 1.16 ) 2 群間で有意差はみられなかった 28 日死亡率の subgroup analysis 2 群間で有意差のみられた項目はなかった

secondary outcomes 人工呼吸の割合は PCT 群で有意に多かった 3569(65.5%)vs.2861(60.7%) 日 p<0.01 ICU 滞在日数は PCT 群で有意に長かった 6(3-12)vs. 5 (3-11) 日 p=.004 PCT 群では egfr<60ml/min/1.73m 2 となる日数の relative risk が 1.21(95%CI 1.15 to 1.27) であった ICU 入室 5 日目までの alert PCT の回数が増すと 5 日目時点まで sever sepsis/septic shock が持続する risk が上昇した OR no alert / 0ne / two or more 1.0 / 2.2 (95% CI 1.2-4.1) / 3.0 (95% CI 1.9-4.8)

抗菌薬消費量 secondary outcomes PCT 群では PIPC/TAZ Ciprofloxacin の処方頻度が有意に高かった 抗菌薬の使用期間は PCT 群 / 通常治療群 6 / 4 日であった 適切な抗菌薬投与までの時間 bacteremia では PCT 群で有意に短かった (p=0.02) bacteremia 以外の感染では 2 群間で有意差なし PCT 群 / 通常治療群 0.2 / 0.4 日 (p=0.61) 耐性の強い GNR は通常治療群で有意に多く検出された PCT 群 / 通常治療群 2.4 / 3.1% (p=0.01)

Discussion PCT の daily change が mortality の予測因子と考えられた PCT 群で人工呼吸が必要になったこと 腎機能が悪化したのは広域抗菌薬への大量曝露による副作用が理由として考えられた 広域抗菌薬の使用は耐性菌の発生に結びつくかもしれない ただし 本研究では耐性菌の発生頻度は PCT 群で低かった ICU 入室時の PCT の感染に対する感度は 59.3% と低値であり PCT は感染症の診断に対しては頼りにならないと思われた 本研究では PCT を指標としたアルゴリズムでは費用が増加した (ICU 滞在期間 人工呼吸 抗菌薬などで )

limitation 本研究はデンマークという非常に耐性菌が少なく 抗菌薬使用に厳しい国で行われた (MRSA 約 1% PRSP<3% ESBL 産生 E coli 約 5% VRE<1%) デンマークでは耐性菌の頻度が低く 広域抗菌薬の使用を制限しているという現状があるため耐性菌が稀ではない国や地域においては PASS の結果はあてはまらないかもしれない 両群において 非感染症患者が完全に除外されていていなかった可能性がある PCT 群において PCT の治療介入のカットオフ値 1.0ng/ml( 感度 59%) は感染初期の患者を見逃していた可能性もあるかもしれない 今回 カットオフ値は ICU における PCT での sepsis の診断を提案した以前の研究が根拠となっている PCT 群では base line での alert PCT 患者のアドヒアランスが完全ではなく 94% にみ広域抗菌薬の投与が行われていた

ICU における RCT メタアナリシスからわかったこと 再考 これまでに発表された RCT では PCT を指標としたアルゴリズムは有害事象なく抗菌薬の削減ができる といったポジティブな結果を示していた (PASS 以外 ) これらの RCT が行われた国や地域では感染症専門医がどの程度 抗菌薬の投与等に関与して治療に携わっているのかは不明である ( ちなみに欧州での RCT が大半を占めている ) PCT を指標としたアルゴリズムは呼吸器感染症患者でよく研究されているが 外科系患者などを含めたそれ以外の疾患ではあまり研究がない 治療介入に関わってくる PCT のカットオフ値のスタンダードな取り決めがない PASS をはじめ PRORATA 試験など いくつかの RCT において PCT が連日測定されているが PCT の経時的な変化をみるのならば連日でなくてもよいと思われる

まとめ PCT は sepsis の診断のみならず 抗菌薬治療のアルゴリズムへのツールとして応用されてきた PCT を指標としたアルゴリズムによる抗菌薬投与は ICU を含めて呼吸器感染症患者に対しては安全に抗菌薬使用期間を短縮し 抗菌薬投与量を削減できるかもしれない ただし 抗菌薬開始の基準として PCT のみを用いるのは非現実的と思われる PCT を指標とする 標準的な抗菌薬投与アルゴリズムの作成が望まれる (PCT を指標とした 抗菌薬投与の RCT は現在も進行中である ) 治療コストの削減効果については 今後新たな検索が必要である 抗菌薬削減に貢献したとして そのことで耐性菌を減らせるかは不明である 安全に抗菌薬を削減でき 耐性菌の出現を抑えることができ 費用もかからずに済む といったことが明らかになれば PCT を指標としたアルゴリズムは有用かもしれない