第4章

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主な内容 腸管出血性大腸菌とは 2 肉用牛農場における全国的な保有状況調査 3 継続的な保有状況調査 4 乳用牛農場における STEC O7 及び O26 保有状況調査 5 消化管内容物 肝臓 胆汁調査 2

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表 2 衛生研究所 保健所別菌株検出数 ( 医療機関を含む ) 内訳 衛生研究所保健所試験検査課県中支所会津支所郡山市いわき市 総計 喫食者 接触者 従事者食品 3 3 拭きとり総計 遺伝子型別解析遺伝子型別解析は, デンカ生研の病

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白金耳ご購読者各位

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規格基準食品衛生法に基づき 食品や添加物等について一定の安全レベルを確保するために定められた規格や基準で 規格基準に合わない食品等は製造 使用 販売等が禁止されています 寄生虫他の動物に寄生し栄養分をとり生活する生物であり 食中毒の原因となるものではアニサキスやクドア セプテンプンクタータなどがあり

NEWS RELEASE 東京都港区芝 年 3 月 24 日 ハイカカオチョコレート共存下におけるビフィズス菌 BB536 の増殖促進作用が示されました ~ 日本農芸化学会 2017 年度大会 (3/17~

生食用鮮魚介類等の加工時における殺菌料等の使用について 平成 25 年 3 月食品安全部 1. 経緯食品への添加物の使用については 食品衛生法第 11 条第 1 項に基づく 食品 添加物等の規格基準 ( 昭和 34 年厚生省告示第 370 号 以下 規格基準 という ) の第 2 添加物の部において

(*) ノロウイルス : 冬期に流行する人の感染性胃腸炎の原因ウィルスで 調理従事者がノロウイルスに感染していた場合に その人を介してノロウイルスに汚染された食品を食べたり または汚染されていた二枚貝を 生あるいは十分に加熱調理しないで食べることにより食中毒を起こす ( イ ) サルモネラ * 食中

豚丹毒 ( アジュバント加 ) 不活化ワクチン ( シード ) 平成 23 年 2 月 8 日 ( 告示第 358 号 ) 新規追加 1 定義シードロット規格に適合した豚丹毒菌の培養菌液を不活化し アルミニウムゲルアジュバントを添加したワクチンである 2 製法 2.1 製造用株 名称豚丹

年次別 主な病原体別の食中毒事件数の推移 * 腸管出血性大腸菌を含む

目について以下の結果を得た 各社の加熱製品の自主基準は 衛生規範 と同じ一般生菌数 /g 以下 大腸菌 黄色ブドウ球菌はともに陰性 未加熱製品等の一般生菌数は /g 以下であった また 大腸菌群は大手スーパーの加熱製品については陰性 刺身などの未加熱製品については

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1. 腸管出血性大腸菌 (EHEC) の系統解析 上村健人 1. はじめに近年 腸管出血性大腸菌 (EHEC) による食中毒事件が度々発生しており EHEC による食中毒はその症状の重篤さから大きな社会問題となっている EHEC による食中毒の主要な汚染源の一つとして指摘されているのが牛の糞便である

サルモネラ食中毒とは? 症状は? 食後 6~48 時間で おう吐 腹痛 下痢 発熱など 乳幼児や高齢者は 症状が重くなることもある 原因になりやすい食品は? 加熱不足の卵 肉などが原因になりやすい 生の肉に使った包丁で切った調理済みの食品も原因に 害虫やペットが 菌を食品に付けてしまうことも ( 農

平成 30 年東京都食中毒発生状況 ( 速報値 ) 平成 30 年 8 月 31 日現在 8 月末までの都内の食中毒の発生状況が 東京都から公表されました 昨年と比較すると 件数では 30% 増 患者数では 46% 減となっています 最近 10 年間の平均と比較すると 患者数はほぼ同じですが発生件数

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21年度表紙面付け


生活衛生営業 HACCP ガイダンス ( 食肉販売業用 ) 導入手引書 本ガイダンスでは まず メニュー調査表 と 調理工程表 によりそれぞれの施設の 危害要因分析 を行い 次にこの手引書の 衛生管理点検表 を HACCP の考え方を取り入れた 衛生管理計画 とし それを用いて モニタリング 記録の

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もあるため 調理室内へは持ち込まないようにすることを理解させることが重要である その他 調理室内の網戸の破れによる不適が 26.8% の施設で見られた これは前年度とほぼ同値であり 改善が進んでいない 網戸の破れはハエなどの衛生害虫等の侵入経路になる可能性があるため 早急な補修が望まれる 一方 調理


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!YAK Sample 教材! 問題 2 セレウス菌 27 セレウス菌は 短い潜伏期間で嘔吐を主徴とするタイプと より長い潜伏期間で下痢を主徴とするタイプの2 つの型があり それらの発症にはいずれも毒素が関与している (94 70) 黄色ブドウ球菌 28 Staphylococcus aureus

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ファクトシート 作成日 : 平成 23 年 11 月 24 日 エルシニア症 (Yersiniosis) 1 エルシニア症とは エルシニア症は Yersinia 属菌の中で一般的に食中毒菌として知られる Yersinia enterocolitica と仮性結核菌として知られる Yersinia p

背景 消費者の食品の安全性に対する関心 要求は 平成 7 年の腸管出血性大腸菌 O157による食中毒事件を機に一気に高まり 消費者は 安心して食べられる安全な食品 を強く求めています このような消費者の要望に応えるため 食品業界では食品の安全性の確保のため世界的に有効な衛生管理手法として認められてい

目 次 1. はじめに 1 2. 組成および性状 2 3. 効能 効果 2 4. 特徴 2 5. 使用方法 2 6. 即時効果 持続効果および累積効果 3 7. 抗菌スペクトル 5 サラヤ株式会社スクラビイン S4% 液製品情報 2/ PDF

豚繁殖 呼吸障害症候群生ワクチン ( シード ) 平成 24 年 3 月 13 日 ( 告示第 675 号 ) 新規追加 1 定義シードロット規格に適合した弱毒豚繁殖 呼吸障害症候群ウイルスを同規格に適合した株化細胞で増殖させて得たウイルス液を凍結乾燥したワクチンである 2 製法 2.1 製造用株

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参考資料 1 野生鳥獣肉の衛生管理に関するガイドライン 平成 26 年 5 月 鳥獣保護法の改正に伴い 今後 野生鳥獣の捕獲数が増加し 食用としての利活用が増加する見込みであり 食用に供される野生鳥獣肉の安全性の確保を推進していく必要がある 1 1 平成 26 年 5 月 22 日参議院環境委員会附

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家畜保健衛生所における検査の信頼性確保にむけて 湘南家畜保健衛生所 田村みず穂駒井圭浅川祐二太田和彦 矢島真紀子中橋徹松尾綾子稲垣靖子 はじめに 家保の検査の中には 鳥インフルエンザやヨーネ病等の 社会的 経済的影響の大きい検査が含まれている 食の安全 安心を得るためには生産から消費に至る食品供給の

1 施設設備の衛生管理 1-1 食品取扱室の清掃及び保守点検 < 認証基準 > 床 内壁 天井 窓 照明器具 換気扇 手洗い設備及び排水溝の清掃手順 保守点検方法が定められていること 床及び排水溝の清掃は1 日に1 回以上 その他の清掃はそれぞれ清掃の頻度の記載があること 保守点検頻度の記載があるこ

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名称未設定

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原因食品 事件数 (%) 患者数 (%) 食肉 鶏肉 482 うち 生食 鶏刺し,鶏たたき等 306 (16.2) 食品の77 4 鶏肉の 64 (3.1) 牛肉の 98% (0.1) 43 その他* 不明** (1.5) 696 (3.7) 7 (0.2) 281 (1.5) 2,343 (78.

食品衛生の窓

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(4) 薬剤耐性菌の特性解析に関する研究薬剤耐性菌の特性解析に関する知見を収集するため 以下の研究を実施する 1 家畜への抗菌性物質の使用と耐性菌の出現に明確な関連性がない家畜集団における薬剤耐性菌の出現又はこれが維持されるメカニズムについての研究 2 食品中における薬剤耐性菌の生残性や増殖性等の生

資料2発酵乳

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4. 加熱食肉製品 ( 乾燥食肉製品 非加熱食肉製品及び特定加熱食肉製品以外の食肉製品をいう 以下同じ ) のうち 容器包装に入れた後加熱殺菌したものは 次の規格に適合するものでなければならない a 大腸菌群陰性でなければならない b クロストリジウム属菌が 検体 1gにつき 1,000 以下でなけ

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平成 27 年 3 月 4 日農林水産省消費 安全局 平成 27 年度食品の安全性に関する有害化学物質及び有害微生物のサーベイランス モニタリング年次計画 1. 基本的な考え方食品安全行政にリスクアナリシスが導入され 科学に基づいた行政の推進が必要となっています このため 農林水産省は 食品の安全性

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27 年 ₇ 月 15 日発行広島市医師会だより ( 第 591 号付録 ) 平成27 年7 月平成 児および高齢者等に対して啓発を図ると共に ペットの衛生的管理が必要です 3. 臨床症状 糞便性状 1 臨床症状下痢 腹痛 嘔気 嘔吐などの腸炎症状 全身倦怠感など 他の感染性腸炎と酷似していますが

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項目 薬剤耐性 (AMR) 対策アクションプランについて 耐性菌の基礎知識 薬剤耐性モニタリング (JVARM) の成績 コリスチン耐性について 薬剤耐性菌のリスク分析 動物用医薬品の慎重使用について 2

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1 月号は以下の情報を掲載しています 1. 茨城県感染症発生動向調査事業に基づく試験検査 検出状況 1) 全数把握疾患 2) 病原体定点依頼検査その他の検査 3) 集団 ( 施設や学校等 ) 事例 月別検出件数 1) 三類 四類 五類 ( 全数把握 ) 2) 五類 ( 定点 ) その他の検査 3)

2 食中毒ってなんですか? 飲食物を摂取することによって起きる 急性の胃腸障害を主症状とする健康障害のこと 大部分の食中毒事例は ある種の微生物により発生 ただし 原因 ( 病因物質 ) によっては 主症状が胃腸障害以外のものもある 昔は 食あたり とも呼ばれていた

平成 26 年度微生物リスク管理基礎調査事業 ( 分離菌株の性状解析 ) 委託事業仕様書 1 事業の趣旨 ( 目的 ) 本事業は 食品媒介有害微生物を原因とする食中毒のリスク管理措置を検討するため 家畜の糞便等から分離されたカンピロバクター属菌株 サルモネラ属菌株 リステリア モノサイトジェネス菌株

Q&A(各自治体宛)

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水質

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(案の2)

H29年度高知市監視指導計画実施結果_s

Transcription:

第 4 章 研修及び調査研究

1 技術研修研修会等の名称場所派遣人数期間食の安全科学フォーラム東京 1 名平成 23 年 5 月 18 日狂犬病演習岡山市 2 名平成 23 年 5 月 25 日全国食肉衛生検査所協議会大会大阪市 1 名平成 23 年 7 月 27-28 日岡山県獣医公衆衛生学会岡山市 3 名平成 23 年 8 月 6 日 全国食肉衛生検査所協議会 理化学部会 栃木県 1 名平成 23 年 10 月 7 日 日本獣医公衆衛生学会 ( 中国 ) 広島県 3 名平成 23 年 10 月 15-16 日 全国食肉衛生検査所協議会中国 四国ブロック会議及び技術研修会高病原性鳥インフルエンザ防疫演習全国食肉衛生検査所協議会病理部会 高知県 3 名平成 23 年 10 月 28-29 日吉備中央町 1 名平成 23 年 11 月 8 日神奈川県 1 名平成 23 年 11 月 10-11 日 中国地区公衆衛生講習会岡山市 7 名平成 23 年 11 月 18 日 全国食肉衛生検査所協議会 第 31 回微生物部会総会 研修会 埼玉県 1 名平成 23 年 11 月 25 日 BSE 対策再評価説明会大阪市 1 名平成 23 年 12 月 15 日 岡山県 岡山市 倉敷市 食品衛生監視員研修会 岡山市 2 名平成 24 年 1 月 17 日 岡山県獣医師会公衆衛生講習会岡山市 7 名平成 24 年 2 月 10 日 全国食肉衛生技術研修会衛生発表会食鳥肉衛生技術研修会衛生発表会 東京都 1 名平成 24 年 2 月 13-14 日 東京都 1 名平成 24 年 2 月 15-16 日 家畜診療技術者講習会岡山市 1 名平成 24 年 3 月 6 日 - 27 -

2 講演及び研究発表 年月日学会等の名称題名発表者 平成 23 年 10 月 15-16 日 中国地区 日本獣医 公衆衛生学会 T と畜場における生後間もない子牛のカンピロバクター属菌保菌状況 牛枝肉におけるカンピロバクター属 菌の汚染実態と制御の取組み 近藤 真 間狩明美 - 28 -

T と畜場における生後間もない子牛のカンピロバクター属菌保菌状況 1. はじめに 岡山県食肉衛生検査所 近藤真 Campylobacter jejuni / coli は 毎年多くの食中毒事件を引き起こしており 依然として重要な食中毒菌である 原因食品としては 鶏肉に起因するものが主体であるが 牛の肝臓の生食による事例も報告されている 本菌を含むカンピロバクター属菌の保菌率は 成牛については全国規模の調査等で種々報告されているが 生後 1 年未満の子牛の保菌率については 報告が少ない 当検査所管内の Tと畜場では 週当たり数頭の頻度で生後 2 ヶ月以内の子牛を解体処理しており 今回その保菌状況を調査したのでその概要を報告する 2. 材料および方法調査期間は 平成 23 年 2 月 ~7 月 調査対象は 22 生産者から Tと畜場に搬入された 5~55 日齢の子牛 75 頭 ( ジャージー種 55 頭 交雑種 15 頭 ホルスタイン種 5 頭 ) とした カンピロバクター属菌の検出は 無菌的に採取した盲腸便 1gをプレストン培地 10mlに添加し 42 24 時間増菌培養後 市販のカンピロバクター用バイダスアッセイキットで判定した 3. 成績全体での保菌率は 43%(32/75) であった 生後週齢別の保菌率は 0 週齢 ( 生後 0~7 日目 ) で43%(3/7) 1 週齢 (8~14 日目 ) で44%(18/41) 2 週齢 (15~21 日目 ) で48%(10/21) 3 週齢以上 (22 日目以上 ) で17% (1/6) であった 品種別の保菌率は ジャージー種 44%(24/55) 交雑種 53%(8/15) で ホルスタイン種では であった 雌雄別の保菌率は 雌 43%(9/21) 雄 43%(23/54) であった と畜月別の保菌率は 2 月 26%(5/19) 3 月 64%(9/14) 4 月 5(6/12) 5 月 31%(5/16) 6 月 5(3/6) 7 月 5(4/8) であった 15 生産者の子牛が保菌しており 生産者別の保菌率は 20~10 であった 4. 考察子牛のカンピロバクター属菌の保菌率は 平成 18 年の当所成牛調査結果 23%(15/64) よりも高値を示した 特に生後 2 週齢までの保菌率はいずれも 4 以上と高率であった 生産者別の保菌率にはばらつきがあり 生産環境の汚染度に差があることが伺われた 以上より 子牛は成牛より高率にカンピロバクター属菌を保菌し 枝肉汚染の危険性が高いことが明らかになった 今後は作業従事者に対する衛生講習等を通じて子牛解体時のリスクを周知し より衛生的なと畜解体処理が行えるよう努めたい

はじめに Campylobacter jejuni/coli は 依然として重要な食中毒菌である T と畜場における生後間もない子牛のカンピロバクター属菌保菌状況 牛の肝臓肝臓の生食による事例も報告されている 成牛の Campylobacter 属菌保菌率は 種々報告種々報告がある 生後 1 年未満の子牛の保菌率については 報告が少ない 岡山県食肉衛生検査所近藤真 管内 T と畜場では 週に数頭数頭 生後 2 ヶ月以内の子牛を解体処理している 今回その保菌状況を調査したのでその概要を報告する 調査期間及び対象 調査期間 平成 23 年 2 月 ~7 月 方法 と殺した子牛 調査対象 T と畜場に搬入された子牛 75 頭 盲腸便 1g 無菌的に採取 品種内訳ジャージー種 55 頭 交雑種 15 頭 ホルスタイン種 5 頭 雌雄内訳メス 21 頭 オス 54 頭 生後週齢内訳 0 週齢 7 頭 1 週齢 41 頭 2 週齢 21 頭 3 週齢 ~ 6 頭 プレストン培地 10ml 42 24 時間微好気増菌培養市販カンピロバクター用バイダスアッセイキット判定 ( 保菌? 非保菌?) 子牛の保菌率 生後週齢別の保菌率 10 非保菌率 57% 保菌率 43% 8 6 4 2 保菌頭数 / 調査頭数 32 / 75 0 週齢 (0-7 日目 ) 1 週齢 (8-14 日目 ) 2 週齢 (15-21 日目 ) 3 週齢以上 (22 日目 -) 保菌頭数 / 調査頭数 3 / 7 18 / 41 10 / 21 1 / 6 1

品種別の保菌率 10 8 6 4 2 ジャージー種 交雑種 ホルスタイン種 保菌頭数 / 調査頭数 24 / 55 8 / 15 0 / 5 雌雄別の保菌率 10 8 6 4 2 オス メス 保菌頭数 / 調査頭数 23 / 54 9 / 21 と畜月別の保菌率 10 8 6 4 2 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 保菌頭数 / 調査頭数 5 / 19 9 / 14 6 / 12 5 / 16 3 / 6 4 / 8 生産者別の保菌率 22 生産者から搬入 15 生産者 (68%) の子牛が保菌 生産者 A B C D E F G H 保菌率 10 (1/ 1) 10 (2 / 2) 10 (2 / 2) 10 (2 / 2) 83% (5 / 6) 67% (2 / 3) 67% (2 / 3) 生産者 I J K L M N O 保菌率 6 (3 / 5) 5 (1 / 2) 5 (1 / 2) 38% (3 / 8) 29% (2 / 7) 2 (1 / 5) 2 (2 / 10) 生産者 P Q R S T U V 保菌率 (0 / 1) (0 / 1) (0 / 1) (0 / 2) (0 / 2) (0 / 2) 注 :() 内は保菌頭数 / 調査頭数 (0 / 3) 6 (3 / 5) まとめ 今回調査調査のカンピロバクター保菌率 (43%) 平成 18 年当所成牛調査結果 (23%) よりも高値 生後 0~2 週齢で高値 (43~48%) 3 週齢以上では低値 (17%) と畜月別保菌率の比較月別保菌率の比較では では 顕著な差はない 68% の生産者の子牛が保菌各生産者の保菌率には ばらつきがある 今後の取り組み 特に生後 2 週齢までの子牛のと畜と畜解体処理に注意を払う必要がある 作業従事者に対する衛生講習等を通じて 子牛解体時のリスクを周知し より衛生的周知し より衛生的なと畜なと畜解体処理が行えるよう努めたい 年間を通した保菌率の変動等を把握するため 継続した調査を行いたい 2

牛枝肉におけるカンピロバクター属菌の汚染実態と制御の取組み岡山県食肉衛生検査所間狩明美 1. はじめにカンピロバクター属菌 ( 以下 C. 属菌 ) は 家畜や家禽等の消化管等に広く分布する食中毒の主要な原因菌として注目されている Tと畜場でのこれまでの調査 (H19,H20 年度 ) から 内臓摘出時の腸管等破損による牛枝肉の C. 属菌汚染が危惧された そこで 十二指腸内容物 ( 以下 腸内容物 ) 等で汚染された枝肉の C. 属菌汚染状況を調査し それに基づいて指導を実施したところ 一定の成果が得られたので概要を報告する 2. 材料および方法 2011 年 4 月 ~5 月に 腸管等破損により肉眼的に汚染が認められた牛枝肉 ( 以下 汚染個体 )22 頭分について C. 属菌の検策を また うち 16 頭分については一般細菌数 ( 以下 SPC ) 及び大腸菌群数 ( 以下 CF ) 測定を実施した 各個体の汚染直後 水洗後 電解水洗浄後並びに冷蔵庫入庫後の汚染部位及び非汚染部位の拭き取り検体について C. 属菌の定性検査は バイダスアッセイキットキャンピロバクターと定法を併用 その他の検査はペトリフィルムにより実施した 6 月はじめに作業員に対する指導を行った後 6 月 ~7 月に 29 頭分で C. 属菌の検策を 18 頭分で SPC と CF 測定を同様に実施し 指導前と比較した 3. 成績作業員に対して1 腸管等の破損防止 2 汚染部位の確実なトリミング3 手指と器具の消毒徹底を指導した 汚染個体からの C. 属菌検出率は 指導前 64% 指導後 59% と差はなかったが C. 属菌陽性検体における処理工程での検出率は すべての工程で指導後の方が低く 電解水洗浄後で特に顕著に低下した SPC および CF は処理工程が進むにつれ 減少する傾向にあったが 指導前後の比較では SPC では明らかな差が見られなかったのに対して CF では すべての工程において 指導後の方が菌数が少なかった 4. 考察確実なトリミングの実施等の徹底により 処理工程中の C. 属菌検出率が低下した これは 腸内容物や胆汁による汚染が目視できるため 破損による汚染を起こさない 汚染部位は確実に除去する といった動機付けになったためと考えられた また 大腸菌群数でも改善が見られたため 今回の指導内容は 腸管出血性大腸菌など他の腸管由来細菌の制御にも有効と考えられた 腸管由来病原菌による枝肉汚染防止には腸管内容物による汚染制御が重要であり 汚染させない 確実な汚染除去 の二段構えで食肉の安全を図っていきたい

作業工程及び拭き取り場所と殺内臓摘出背割りトリミング水洗電解水洗浄冷蔵庫入庫目的 牛枝肉におけるカンピロバクター属菌の汚染実態と制御の取組み 岡山県食肉衛生検査所間狩明美 カンピロバクター属菌は食中毒の主要な原因菌として注目 内臓摘出時の腸管等の破損による牛枝肉の汚染が問題 肉眼的に汚染が認められた牛枝肉についてカンピロバクター属菌の汚染状況を調査し 指導を実施 十二指腸内容物による汚染 材料及び方法 調査期間 : 指導前 (2011 年 4~5 月 ) 指導後 (6~7 月 ) 指導実施日 :2011 年 6 月 6 日 検査項目 : カンピロバクター属菌 一般細菌数 大腸菌群数 検査頭数 : 指導前 指導後 カンピロバクター属菌 22 頭 29 頭 一般細菌数 大腸菌群数 16 頭 18 頭 1 2 3 4 拭き取り検体 : 汚染部位 1 汚染直後 2 水洗後 3 電解水洗浄後 4 冷蔵庫入庫後 非汚染部位 5 汚染部位 5 非汚染部位 カンピロバクター属菌の検査方法 プレストン培地 (42 24 時間微好気培養 ) バイダスアッセイキットキャンピロバクター CCDA 培地 (42 48 時間微好気培養 ) 性状試験 ( 運動性試験 グラム染色 オキシダーゼ試験 ) 一般細菌数 大腸菌群数の検査方法 ペトリフィルム (3M 社製 ) 一般細菌数 AC プレート (36 48±3 時間 ) 希釈倍率 :10 100 1000 倍 大腸菌群数 CC プレート (36 24±2 時間 ) 希釈倍率 : 原液 10 倍 1

出入庫後検指導内容 内臓摘出時の腸管等の破損防止 確実なトリミングの実施 十二指腸内容物と胆汁による 汚染部位を広範囲にトリミング 手指及び器具の洗浄消毒の徹底 (%) 70 60 50 40 率30 20 10 カンピロバクター属菌の検出率 0 汚染直後水洗後電解水 洗浄後 冷蔵庫 指導前 n=22 指導後 n=29 指導前指導後 Log10 (cfu/cm 2 ) 3.5 一般細菌数 ( 平均 ) 指導前 n=16 指導後 n=18 Log10 (cfu/cm 2 ) 1.5 大腸菌群数 ( 平均 ) 指導前 n=16 指導後 n=18 3.0 1.0 2.5 0.5 2.0 1.5 指導前指導後 0-0.5 指導前指導後 1.0-1.0 0.5-1.5 0 非汚染 汚染 水洗後 電解水 冷蔵庫 -2.0 非汚染 汚染 水洗後電解水 冷蔵庫 部位 直後 洗浄後 入庫後 部位 直後 洗浄後 入庫後 考 察 腸管内容物等による汚染部位の広範囲なトリミング等を指導 カンピロバクター属菌の検出率の低減大腸菌群数改善 肉眼的汚染部のトリミングがカンピロバクター属菌の制御に有効 まとめ 食肉を原因とするカンピロバクター属菌 腸管出血性大腸菌による食中毒の対策上 腸管内容物等による枝肉汚染の制御は極めて重要 さらなる腸管等の破損防止により 汚染させない トリミング等で 除染 再汚染の防止 十二指腸内容物と胆汁は目視での確認が容易なため 適切なトリミング作業が確実に出来る トリミングは 枝肉の腸管由来細菌全般にも有効な除染手段 大腸菌群数の改善 食肉の安全を確保 2