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性が低下し変形が進んでしまうことになる 従ってこのような近傍をねらって設計すると 不安定な解 ( 応答値 ) を得ることが分かる 入力地震動の特性に左右されずに安定した応答が得られる範囲で設計することが必要である このためには初期モードが u/u= +γ/γ の近傍になるような場合には 階を補強し 階が先行して降伏するように設計することが必要である ) 弾性一次固有振動モードの判別式 質点系の一次固有振動モードは (3) 式 u /u = ( Ke +Ke -mω ) / Ke で表される これを u/u= + γ/γ とおいて Ke=Q/Δδ, Ke=Q/Δδ, Δδ=γ Δδ=γ m=/g m=/g 及び ω の式を考慮して Q/Q についての関係を求めたものが次式である Q /Q ={+(γ / γ )}/{+(γ / γ )+/} (4.) ここで γ=γ とすると (4.) 式となる Q /Q ={+( / )}/{+( / )+ / } (4.) また α = / ( + ) γ=γ = とすると 次式となる Q / Q = / ( /α + ) (4.3) (4.3) 式の関係を簡単な重量比になる場合について表 4. に示す 表 4. 弾性一次固有振動モードと重量比 耐力比 4 3.33 3.5.5 α 0.00 0.3 0.50 0.86 0.333 0.400 0.500 Q/Q 0.333 0.375 0.400 0.444 0.500 0.57 0.667 この判別式によると 階と 階の降伏耐力の比が 各階重量 各階降伏層間変形角及び各階高から (4.) 式で求まる値を超えていれば 階が先行して層降伏になると判定することができる 本マニュアルでは降伏層間変形角は /0rad. としているので (4.) 式でγ=γ=/0 としてγ を消去すると 各階重量と各階高によって決まることになる ((4.) 式 ) この関係を / も含めて図 4. に示す Q/Q クロスポイント 0.900 0.800 0.700 0.600 0.500 0.400 0.300 0.00 0.00 0.000 0. 0. 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 α = / (+) /=0.7 /=0.8 /=0.9 /=.0 /=. /=. /=.3 図 4. クロスポイントと重量比 耐力比 階高比 判別式の精度を確認するために 時刻歴応答解析によって 階と 階の最大層間変位を算定したものが図 4. - -

である 入力した地震波は 第 種地盤における地表面の標準加速度応答スペクトルにフィットするように作成した模擬地震波 0 波であり 図の応答値はその 0 波応答の平均値である 重量比は:,: 及び : 3の 3ケースとし 階高は等しいとしている 表 4. からそれぞれの判別値は 0.67, 0.50, 0.40 であるから 図の 階と 階の最大応答変位の値の大きさが入れ替わるポイントと良く対応していることが分かる ( 階と 階の応答層間変位がクロスする点という意味で クロスポイント と呼ぶ ) Q/Q と各階の層間変位の関係 ( 第 種地盤 ) 30 5 層間変位 (cm) 0 5 0 5 /=/ 階層間変位 /=/ 階層間変位 /=/ 階層間変位 /=/ 階層間変位 /=/3 階層間変位 /=/3 階層間変位 0 0 0. 0. 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9. Q/Q 図 4. 階と 階の最大層間変位 ( 時刻歴応答解析 ) 3) 応答値の変動について図 4. は0 波の応答値の平均耐力比 Q/Qと 階応答層間変位 /=/3 CB=0.57 値である 図 4.3 図 4.4 に重量比 5.00 :3 の場合の0 波応答を全て表示したものを示す 図 4.3 が 0.00 階の最大応答 図 4.4 が 階の最 5.00 大応答である ここで留意する必要があるのは 同じ加速度応答ス 0.00 ペクトルの地震波でも クロスポ 5.00 イントにバラツキが生じるということである クロスポイント付近 0.00 の耐力比となるモデルでは どち Q/Q らの層が先に層降伏に達するかは偶然に支配され 偶然先に層降伏した層の変形が急激に大きくなり そ図 4.3 階最大応答変位の変動の他の層の変形は小さくなる 偶然に支配されるものを確定的に判別することは不可能である このため判別には耐力比に若干の余裕を考慮して 確実に判別することが必須である 階応答変位 cm 0 0. 0.4 0.6 0.8. Q/Q.000 0.900 0.800 0.600 0.500 0.450 0.433 0.47 0.400 0.383 0.367 0.333 0.300 0.00 0.00 階層間変位平均 9.5 9.5 9.4 9.36 9.3 9.36 9.3 8. 7.00 6.49 3.7.96.7 3.73 6.4 標準偏差 0.78 0.78 0.85 0.79 0.69 0.85 0.8.76.7.35.57.9.50.5.39 変動率 (%) 4.0 4.00 4.38 4.08 3.59 4.40 4.8 9.64 5.95 4..48 9.95.8.08 8.6-3 -

耐力比 Q/Q と 階応答層間変位 /=/3 CB=0.57 35.00 30.00 階層間変位 cm 5.00 0.00 5.00 0.00 5.00 0.00 0 0. 0.4 0.6 0.8. Q/Q Q/Q.000 0.900 0.800 0.600 0.500 0.450 0.433 0.47 0.400 0.383 0.367 0.333 0.300 0.00 0.00 階層間変位平均.3.8.47.00.57 3. 4.36 6.3 8.8.66 9.4.94 3.36 5.85 4.55 標準偏差 0.08 0.0 0.4 0.9 0.36 0.59.49 5.09 5.88 5..3.37.33.6.89 変動率 (%) 6.74 8.04 9.0 9.7 3.96 8.3 57.7 8.64 66.65 4..6 6.5 5.7 8.37.77 図 4.4 階最大応答変位の変動 図 4.3 図 4.4 の下部に記載した表は 応答の平均値 標準偏差 変動率を明示したものである クロスポイント付近で標準偏差や変動率が急激に大きくなり バラツキが大きいことを示している クロスポイント近傍をねらった設計が不安定であることを指摘したが その根拠がこの図である 限界耐力計算では応答値が確定値として算定されるが 実際はクロスポイント近傍ではバラツキがあることを考慮しておくことが必須である 4) 変位増分法 の計算手順上記の考え方を変形モードの算出に取り入れる場合の計算手順を示す 判別式 (4.) によって 階の層降伏が先行するタイプであることを確認する 階の定点変位 /0rad. を第 ステップとし 初期剛性を用いて一次モードを算定する 3 一次モードと 階変位から 階の第 ステップの層間変位を算定する 4 階の定点変位を /60rad. にし 第 ステップとする 階は /60rad. に対応する剛性 階は第 ステップの 階の層間変位に対応する 階の剛性を用いて第 ステップの一次モードを算定する 5 求めた一次モードと第 ステップの 階変位から 階の第 ステップの層間変位を算定する 6 以下同様に次のステップの算定を行う このように あるステップの一次モードを算定する時に 階は定点変位に対応する剛性を 階は前ステップの変位に対応する剛性を用いることにするのである 結局このようにすると 殆どの場合 階の剛性は初期剛性になる こうすることによって 階が先行して層降伏する場合には時刻歴応答の傾向と一致することになる 表 4. 計算例の諸元 上記の計算手順を例題によって説明する 建物の諸元を表 4. とする 各階の定点層間変形角における復元力は表 4.3 に記載している (Q,Q) 準備として表 4.3 に各定点における等価剛性 (Ke,Ke) 及び 階の - 4 -

定点変位 (δ) を記載する 表には (0) と表示している の判別式を確認する (4.) 式で 階 階共 γ=/0 とすると 式の値は 0.396 であり 0% の余裕を見込んで 0.436 である Q/Q=0.50 であり 階の層降伏が先行するタイプであることが確認できる 初期剛性を用いて一次モードを算定する 表の () でω を算定し () で一次モード u /u を算定している 3 この一次モードとδ から (3)δ を計算し (4) 階の層間変位 Δδ を算定する この 階の層間変位を用いて (5) 階の等価剛性 Ke を算定する この時 階の定点変位の表 ( 下側の表 ) を用いる 階の層間変位に応じて等価剛性を線形補間で算定するが 通常は /0 に対応する変位以下 ( 弾性範囲 ) であり 初期剛性のままである 4 第 ステップに入って (5) のKe を 階の等価剛性として用いるので 層間変形角 γ= / 60 の列に転記しておく 最初のステップと同様に (6)ω を計算し (7) 一次モード u /u を算定する 5 (7) の一次モードとδ から (8)δ を計算し (9) 階の層間変位 Δδ を算定する そしてこの層間変位に対応する 階の等価剛性 (0) を算定する 以下同様にして 階の各定点層間変位の列の算定をするという手順である 表 4.3 計算例の復元力特性および計算プロセス 稀に 階の等価剛性も低下する場合が存在するので 留意することが必要である また 階の剛性低下が生じた後で 再度 階の層間変位が小さくなることがあるが この場合の 階の等価剛性は前のステップの低下した等価剛性を用いることになるので注意が必要である なお 判別式の適用にあたっては 確実に 階の先行層降伏を担保するために 5~0% 程度の余裕を持たせて判定することが望ましい この余裕が確保できない場合はそれに見合う 階補強が必要となる また 判別式の Q,Q は各階の降伏強度であり通常は層間変形角 /0rad. 時の耐力を用いるが /60rad. 時まで耐力が大きく上昇する場合もあることから /60rad. 時の Q/Q の方が大きい場合はこれを用いて判定する 時刻歴応答計算で採用したモデルについて この計算方法を用いて限界耐力計算を行った結果を図 4.5 に示す 図には 変位増分法 で算定した結果も記載している - 5 -

応答値比較 / =75kN/55kN=/3 Q =80kN = =.9m 第 種地盤 30 層間変位 cm 5 0 5 0 5 時刻歴応答 -F 時刻歴応答 -F 変位増分 -F 変位増分 -F 変位増分 -F 変位増分 -F 0 0.000 0.00 0.400 0.600 0.800.000.00 Q/Q 図 4.5 計算例の各階応答層間変位 これはクロスポイントが 0.40 となる例であるが 変位増分法 は耐力比 0.60 辺りから 階の変位が過小に 階の層間変位が過大に計算されていることが分かる つまり平屋モデルが適用できない範囲ということになる 変位増分法 の方はクロスポイントまで適切に計算されているが 上記のように判別は 5~0% 程度安全側に判定することが必要である 従って 平屋モデルの適用限界もクロスポイントの 5~0% アップのところまで広げることが可能であろう 階の層間変位は変位増分法 の場合時刻歴応答より小さくなっているが これは時刻歴応答については層間変位の最大値を表示しているのに対し 限界耐力計算は振動モードの最大値から計算されたものであるため 最大応答より小さくなるのは当然である 表 4.4 はある例について 変位増分法 変位増分法 (7) 項の平屋モデル及び時刻歴応答を比較したものである 表 4.4 計算法の違いによる各階応答値 ( 層間変形角 ) の比較 X 方向 Y 方向 変位増 変位増 平屋 時刻歴 変位増 変位増 平屋 時刻歴 分法 分法 モデル 応答 分法 分法 モデル 応答 階 /9 /04 - /8 /6 /8 - /89 階 /5 /8 /8 /6 /7 /8 /8 /6 ( 階 ) /03 /9 注 ) 時刻歴応答は第 種地盤の簡易法応答スペクトルになるように作成した模擬波 0 波による時刻歴応答の平均値 限界耐力計算は全て調整係数 p を採用した応答値である ( 平屋モデルとも ) 表 4.4 に記載の通り 0 波平均時刻歴応答を基準にすれば 変位増分法 による応答は 階が過小で 階が過大になっていることが分かる また平屋モデルは 階の応答として変位増分法 と一致した結果が得られている 変位増分法 の場合の応答は時刻歴応答に近く かなり良い計算精度になっている 階において時刻 - 6 -

歴応答の方が大きくなる理由は前述の通りであるが 比較のために限界耐力時の変形を用いてモーダルアナリシスで 階の層間変形角の最大値を算出したものが表の ( 階 ) の欄である 時刻歴応答と良く整合していることが分かる 以上のように 階の先行層降伏を判別式で確認した上で 変位増分法 を用いて限界耐力計算を行うと 時刻歴応答の計算結果と非常に良く整合した結果が得られる また平屋モデルは 階の先行層降伏と判別される範囲で用いることが可能であり クロスポイントに対して 階の強度に余裕があるほど精度の良い結果が得られる この例は判別式の値が 0.455 Q/Q=0.69 であるが 別途平屋モデルの精度を検討した結果によると 判別式の値より耐力比が 5% 以上大きければ ほとんど応答値に差が生じないことが確認されている 変位増分法 については下記の文献を参照ください: 木造軸組構法建物の耐震設計マニュアル編集委員会 伝統構法を生かす木造耐震設計マニュアル 学芸出版社 004 年 ( 平成 6 年 )3 月 ( 社 ) 日本建築構造技術者協会関西支部 伝統的な軸組構法を主体とした木造住宅 建築物の耐震性能評価 耐震補強マニュアル JSCA 関西講習会テキスト第 部および第 3 部 平成 年 9 月 平屋モデル および 平屋条件 については下記の文献を参照ください : 樫原健一 河村廣 木造住宅の耐震設計 技報堂出版 平成 9 年 3 月 ( 社 ) 日本建築構造技術者協会関西支部 伝統的な軸組構法を主体とした木造住宅 建築物の耐震性能評価 耐震補強マニュアル JSCA 関西講習会テキスト第 3 部 平成 年 9 月 注 上に引用した文献において 平屋モデルを用いた応答値を示した応答計算シートは 調整係数 p=.0 として描いたものです したがって 耐力係数 CB は /p( 平屋の場合は /0.8=.5 階建ての場合は /0.85=.76 ) の安全率を見込んでいることになります 応答計算で数値を確定する場合は p( 平屋なら 0.8 階建てなら 0.85) を見込んだ式を採用するか または応答計算シートの縦軸 (CB) を /p 倍して読み替えても差し支えありません ただしこのとき下記の判別式を満足したモデルであることを必ず確認してください 判別式 () 階と 階の損傷限界時 (/0 または /60) の耐力を用いた判別式 ( 必須 ) Qd Qd Qd および Qd : 階および 階の層間変形角が /0 または /60 時の耐力 および : 階および 階の重量 (m g) および : 階および 階の構造階高 () 階と 階の安全限界時 (/30 または /5) の耐力を用いた平屋条件式 ( 推奨 ) 0.5, 0.6 または. 0 および : 階および 階の層間変形角が /30 または /5 時の耐力 : 階の重量 (m g) 以上 - 7 -