土木学会論文集の完全版下投稿用

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学識経験者による評価の反映客観性を確保するために 学識経験者から学術的な観点からの評価をいただき これを反映する 評価は 中立性を確保するために日本学術会議に依頼した 詳細は別紙 -2 のとおり : 現時点の検証の進め方であり 検証作業が進む中で変更することがあり得る - 2 -

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津波警報等の留意事項津波警報等の利用にあたっては 以下の点に留意する必要があります 沿岸に近い海域で大きな地震が発生した場合 津波警報等の発表が津波の襲来に間に合わない場合があります 沿岸部で大きな揺れを感じた場合は 津波警報等の発表を待たず 直ちに避難行動を起こす必要があります 津波警報等は 最新

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タイトル

リサーチ ダイジェスト KR-051 自然斜面崩壊に及ぼす樹木根系の抑止効果と降雨時の危険度評価に関する研究 京都大学大学院工学研究科社会基盤工学専攻特定教授杉山友康 1. はじめに 鉄道や道路などの交通インフラ設備の土工施設は これまでの防災対策工事の進捗で降雨に対する耐性が向上しつつある一方で

3-3 現地調査 ( カレイ類稚魚生息状況調査 ) 既存文献とヒアリング調査の結果 漁獲の対象となる成魚期の生息環境 移動 回遊形態 食性などの生活史に関する知見については多くの情報を得ることができた しかしながら 東京湾では卵期 浮遊期 極沿岸生活期ならびに沿岸生活期の知見が不足しており これらの

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3. 調査方法及び結果 (1) 航空写真判読による久著呂川下流部の変遷について久著呂川の変遷を調べるため 経年変化が分かるように 航空写真を可能な限り入手し 植生の変遷を目視による判読で調査した a) 久著呂川下流部の変遷について図 -2 に示すように 直線化された新川 ( 現久著呂川本川 ) 右岸

ら屈斜路湖 摩周のカルデラにかけて 起伏の激しい火山地帯が広がっている また 中流部から下流部にかけては西側に白糠丘陵 ( 標高 2m~4m) 北側に鶴居丘陵 ( 標高 12m~3m) 及び東側に根室段丘 (4m~12m) が発達し これら丘陵 段丘地形に囲まれて 低地 ( 釧路湿原 ) が広がって

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東日本大震災における施設の被災 3 東北地方太平洋沖地震の浸水範囲とハザードマップの比較 4

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2. エルニーニョ / ラニーニャ現象の日本への影響前記 1. で触れたように エルニーニョ / ラニーニャ現象は周辺の海洋 大気場と密接な関わりを持つ大規模な現象です そのため エルニーニョ / ラニーニャ現象は周辺の海流や大気の流れを通じたテレコネクション ( キーワード ) を経て日本へも影響

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たり 80mm 以上の雨 ) となり, 佐賀では 14:26 までの 1 時間に観測史上第 2 位の 91mm を記録した ( 図 9.2). 白石では 14:39 までの 1 時間に 72mm と 7 月の観測史上最大を記録した. その後, 全域で雨はいったん弱まったが, 夜遅くに再び南部を中心と

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Transcription:

気候変動による釧路川の治水 環境に関する対策提案を目 指した検討 Investigation of an impact of climate change on Kushiro River 1 中山恵介 Keisuke Nakayama 1 北見工業大学 要旨 気候変動による影響が世界的に現れており, その影響は極に近くなるほど大きくなることが報告されている. そのため, 日本の中でも特に北海道地方では, 降雨形態の変化, 海水面の上昇などにより, これまでの対策では対応できない治水 環境に関する問題が発生することが予想される. 北海道道東に位置する釧路川は, 沿岸域の開発による人口集中, その背後の豊かな湿原の存在という特徴を持ち, 気候変動による治水 環境への影響が大きな流域であると言える. そこで本研究では, 気候変動の影響により釧路川が受ける治水 環境への影響を評価することを目的とする. 目的達成のため, 本研究では 2 種類の検討手法を適用した. まず, 降雨量変化を評価するための手法として有効である, 分布型流出モデルによる流出モデルの開発である. モデルには, 表面流, 浸透流, 河道流が考慮されており, 長期的な貯留の効果などを考慮することが出来る点などが大きな特徴である. また, 気候変動の影響により海水面が上昇することにより影響を受ける現象として塩水遡上が考えられる. その塩水遡上に対する影響評価を行うための手法として, 観測結果を用いて検証を行い,3 次元数値モデルの適用を行った. それらの結果, 分布型流出モデル及び塩水遡上モデルが良好に現象を再現できることが確認された. キーワード : 分布型流出モデル, 釧路湿原,3 次元数値モデル,Fantom3D, 塩水遡上

1. 釧路川近年, 世界中で気候変動が起こっているのが確認されている. 気候変動は強い台風や海面上昇を引き起こしており, 洪水や高潮等が原因となる災害が増加していると考えられる. さらに,2007 年の研究に基づき IPCC( 気候変動に関する政府間パネル ) は 21 世紀の終わりまでに, 海水面水位が59cm 程上昇する事を予測している. ラムサール条約によって登録されている北海道の釧路湿原には流域に住民が約 20 万人弱住んでおり, 高度に開発されている地域であるといえる. また, 釧路湿原は釧路川によって涵養されており, その釧路川の河川長は 154km, 河川流域面積は2510km 2 であり勾配は比較的緩やかである ( 図 -1). そのため洪水や高潮等が原因となる災害が発生すると, 被害が大きくなると予想される. さらに釧路湿原は保存されるべき重要な生態シ 図 -1 釧路川流域図. ステムを持っており, 保護されなければならない. 見解の両方の点から気候変動が引き起こす洪水や高潮等による災害 により, 釧路湿原の生態システムと開発エリアに重大なダメージを引き起こす事が考えられる. 2. 対象流域の地形データ本研究では, 気候変動が沿岸域に及ぼす影響を評価することが出来るモデルを開発することを研究の上位目標としている. そこで, 流量観測所標茶より下流の流域を解析対象流域とした ( 図 -2). 河川長は 40km, 河川流域面積は 1620km2, 湿原面積は 183 km2 である. 対象流域の土壌構成は流域の大部分が, 崩積性未熟土壌 23%, 残積性未熟土壌 66% である ( 図 -3, 表 -1). また, 流域の土地利用区分は畑地 25%, 森林 55% であり流域の大部分を占めている ( 図 -4, 表 -2). 図 -2 釧路川流域および解析対象流域図.

図 -3 対象流域土壌分布. 図 -4 対象流域土地利用区分. 表 -1 釧路川対象流域での土壌分布面積 土壌分布 面積 割合 岩屑性土壌 9.5km 2 0.6% 崩積性未熟土壌 367.5 km 2 22.7% 残積性未熟土壌 1070.75 km 2 66.1% 粗粒残積性未熟土壌 150 km 2 9.3% 砂丘未熟土壌 0.5 km 2 0.0% 粗粒火山拠出物未熟土壌 10 km 2 0.6% くろぼく土壌 (a) 10 km 2 0.6% くろぼく土壌 (b) 1.25 km 2 0.1% 表 -2 釧路川対象流域での土地利用区分面積 土地利用区分 面積 割合 畑地 398.75 km 2 24.6% 森林 896.5 km 2 55.4% 荒地 189.5 km 2 11.7% 市街地 24.5 km 2 1.5% 交通用地 3.5 km 2 0.2% その他 8.75 km 2 0.5% 河川 90 km 2 5.6% ゴルフ場 7.5 km 2 0.5%

3. 河道データ本本解析で使用する河道網は国土交通省, 国土数値情報を用いて作成した. 支川数は 13, 総メッシュ数は 520 である ( 図 -5). 各支川に与える河道断面情報は国土交通省釧路開発局計測の釧路川横断測量データを使用する ( 図 -6). River 6 River 11 River 12 River 7 River 5 River 10 River 9 River 4 River 8 River 3 River 1 River 2 River 0 図 -5 釧路川流量再現計算におけるモデル河道網. 標高 (m) 10 8 6 4 標高 (m) -2 02-4 -6-8 -10 10 8 6 4-2 02-4 -6-8 -10 River 0-100 0 100 距離 (m) 200 300 River 2-200 0 200 400 600 800 距離 (m) 10 8 6 4 標高 (m) -2 02-4 -6-8 -10 14 12 10 8 6 4 2 0 標高 (m) River 3 River 8-500 0 500 距離 (m) 15 13 11 9 7 5 標高 (m) -1 13-3 -5 River 10 River 12-200 -100 距離 0 (m) 100 200 標高 (m) 25 23 21 19 17 15 13 11 9 7 5 図 -6 釧路川流域および解析対象流域図. -400-200 距離 0 (m) 200 400-200 0 距離 (m) 200 400

4. 流量再現計算とまとめ再現対象期間は 2004 年 9 月 5 日から 9 月 11 日における降雨による流量に対して行った. 表 -3 に流量再現計算の計算条件を示す. 流量の再現計算は図 -7 に示す流量観測所広里, 五十石, 幌呂, 下久著呂において行った. 解析に使用した降雨は, 気象庁アメダス観測所塘呂観測所における 1 時間データを使用し, 流域に一様に与えている. 本研究では標茶観測所より下流の流域を解析対象としているため, 河道の上流端に国土交通省北海道釧路開発局計測の流量観測所標茶における流量データを 1 時間ごとに与えている. また今回の解析では, 浸透層厚や透水係数における詳細なデータが存在しないため, ハイドログラフから推定し, 流域に一様に Try and Error で決定した. 表 -3 釧路川流量再現計算条件. x= y=500(m) t=10(sec) k s =0.2 10-4 (m/sec) H=5.0(m) 図 -7 釧路川流量観測所地点図. 図 -8 に流量観測所広里, 五十石, 幌呂, 下久著呂における流量再現結果示す. 図における実線は釧路開発局計側の観測値, 破線は計算結果である. 流量観測所広里

流量観測所五十石 流量観測所幌呂 流量観測所下久著呂 図 -8 2004 年 9 月 5 日から 9 月 11 日の釧路川各流量観測所における流量再現結果. 流量再現結果から, 各流量観測所においておおまかな再現を示すことが出来ており, 特に下流域に位置する流量観測所広里において良好な再現性が得られたことは本モデルの流量の再現性の高さを示している. しかし, その他の流量観測所におけるピーク流量および流量の減衰部分等, 今後検討の余地が残る. 減衰部分の再現性が低い要因として, 地表面の粗度および浸透モデルのパラメータが推測される. 今回の解析では土壌分布における浸透のパラメータや土地利用区分における地表面の粗度を反映しておらず, 流域に一様に取り扱った. 今後, より多くの観測データを集め, 河道形状や粗度を再度詳細に検討することで改善が期待できると考えられる. 5. 釧路川における塩水遡上に関して近年の気候変動によって, 規模の大きい台風やそれにともなう自然災害が引き起こされており, 加えて環境への直接的 間接的な影響も問題となってきている. 気候変動は, 海面上昇もともなって発生することが報告されているため, 沿岸地域が陸地の 32% を占め, 住民の 46% が沿岸地域に住んでいる日本では, その影響が顕著化する恐れがある. その

水位 (TP m) 3.00 2.50 2.00 1.50 1.00 0.50 0.00-0.50 塩分計設置 : 平成 21 年 12 月 26 日 ( 大潮時 : 平成 21 年 12 月 7 日調査 ) ( 小潮時 : 平成 21 年 12 月 25 日調査 ) -1.00 岩保木 (KP11.0) 広里 (KP7.4) 釧路港潮位 -1.50 12/1 12/6 12/11 12/16 12/21 12/26 12/31 図 -10 縦断観測を行った大潮時 ( 平成 21 年 12 月 7 日 ) および小潮時 ( 平成 21 年 12 月 25 日 ) における水位と潮位. 中で, 環境面が大きな影響を受ける領域として, ラムサール条約によって登録され, 日本最大の湿地面積を誇る釧路湿原を挙げることが出来る 3). 釧路湿原は流域人口が約 230,000 人であり, 釧路湿原の中心を流れる釧路川は, 河川長 154 km, 河川流域面積 2,510 km 2 の一級河川である. 釧路川の平水時流量は 30 m 3 /s から 50 m 3 /s であり, 河口からの塩水遡上によって湿原域へ塩水が進入する可能性がある. 釧路湿原における植生はヨシを除き基本的に塩分に弱く, 海面上昇の影響で塩水がより遡上することにより, その豊かな湿原域が失われる可能性があると懸念されている. しかし, これまでに釧路川を遡上してくる塩水の形態に関する現地観測や解析結果は存在せず, 僅かに塩水の遡上に関して河口域付近での調査が存在するのみである. それ故, 遡上形態については不明な部分が多く, 至急, 解明されなくてはならない. 図 -9 新釧路川における過去 10 年間 (2009 年度から 2018 年度 ) の豊水流量, 平水流量, 低水流量, 渇水流量. 塩水の遡上に関しては, 過去に多くの研究例がある. 例えば, 同じ道東に位置する網走川では遡上により上流側の網走湖の水質環境が大きく影響を受けていることから, 遡上形態に関して多くの調査がなされている. それらの論文では, 潮汐による影響, 風による影響などが指摘されており, 釧路川においても同様な影響により塩水遡上が影響を受けている可能性がある. そこで本章以降では, 釧路川を遡上してくる塩水に関する現地計測を行い, その結果に基づいて 3 次元数値計算モデルによる検討を行い, 遡上形態について理解することを目的とする. 6. 釧路川下流の領域と観測結果釧路川は, カルデラ湖の屈斜路湖から流れ出し, 釧路湿原内を流れる一級河川であり, 釧路川流域は, 山地等が約 68%, 牧草地等の農地が約 21%, 釧路湿原が約 8%, 宅地等の市街地が約 3% という, 酪農と湿原という特徴を持つ. 河口には重要港湾の釧路港をもち, 上流の屈斜路湖などは阿寒国立公園であり, 下流の釧路湿原はラムサール条約登録湿地及び釧路湿原国立公園に指定されているなど経済的にも重要な領域を持ちながら, 豊かな自然環境に恵まれている. 広里流量 (m 3 /s) 120 110 100 90 80 70 60 50 40 30 1999 2001 2003 2005 2007 ( 年 ) 豊水流量平水流量

2.50 2.00 塩分計設置 : 平成 21 年 12 月 26 日 塩分計点検 : 平成 22 年 2 月 4 日 塩分計撤去 : 平成 22 年 3 月 3 日 1.50 1.00 水位 (TP m) 0.50 0.00-0.50-1.00-1.50 岩保木 (KP11.0) 広里 (KP7.4) 釧路港潮位 12/20 12/25 12/30 1/4 1/9 1/14 1/19 1/24 1/29 2/3 2/8 2/13 2/18 2/23 2/28 3/5 図 -12 2009 年 12 月 25 日から 2010 年 3 月 3 日までの間で行われた塩分 水温の KP0.0 から KP8.0 の 1km 間隔における時系列観測時の水位と潮位. (1) 釧路川下流の領域の特徴 2009 年度における観測結果を示す前に, 対象とする釧路川下流から河口における外力条件を理解するため, 水文特性, 潮位, 流量などのデータを調べた. 水文データについて, 過去 10 年間の雨量データから, 年間総雨量は約 800 mm から 1250 mm で変動していることが分かった. 観測を行った 2009 年度は他の年に比べて雨量が多く, 平年より多雨であったことも確認された. また, 釧路港における最大潮位差は 0.51 m から 0.93 m であり, 高潮時の最高潮位は 0.64 m から 0.93 m の範囲であることが確認された. 顕著な高潮は冬期の低気圧により発生する場合が多く, この時期は河川流量が渇水となる時期と重なることから, 冬期間には塩水が遡上し易い環境であることが分かった. 潮位と同じく, 塩水遡上の重要な要因である広里における河川流量について過去 10 年間にわたって調査を行った ( 図 -9). 近 10 ヶ年の流況は,2008 年に最小流量である 31.02 m3/s が発生していた. また 年総量についても 2008 年に最小値を示しており, 渇水年であったことが分かる. なお, 気象観測結果でも 2008 年に総降雨量が小さな値となっており, 気象観測結果と同様な結果が得られている. 観測対象とした 2009 年度に関しては, まだ詳細なデータが得られていないが, 総降雨量が大きく, 流量も平均よりは大きかった点を記しておく. 水深 (m) 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 塩分濃度 (psu) 0 10 20 30 ( 小潮時 ) KP-0.2 図 -11 KP-0.2 における平成 21 年 12 月 25 日の小潮時での塩分の鉛直分布. (2) 観測結果現地観測で 2 種類の観測が実施された. 一つは, 多項目水質計 (ALECAAQ1183) を用いた水深 水温 塩分 濁度 Chl-a DO の観測であり, 河口 KP-0.2 から KP8.0 までの間の縦断方向 500 m 間隔および水深方向 10 cm 間隔で実施された. もう一方は,KP0.0 から KP8.0 までの 1 km 間隔で最深部に設置された水温 塩分計 (ALEC CT 計 ) による 10

標高 (m) 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0-0.5-1.0-1.5-2.0-2.5-3.0 kp-0.2 kp0.0 kp0.4 0 50 100 150 200 250 300 350 距離 (m) 図 -13 新釧路川における KP-0.2 から KP0.4 までの横断面図. (a) (b) 図 -14 (a) 数値計算に用いられた現況断面.(b) 河口を急縮した現況断面. 分間隔の塩分遡上観測である. 塩水遡上の状態を観測するための縦断観測は, 大潮時 ( 平成 21 年 12 月 7 日,8:40~14:10) および小潮時 ( 平成 21 年 12 月 25 日,8:50~15:30) を狙って実施された ( 図 -10). 塩分縦断観測は, 作業船 (FRP 製, 長さ 2.96m, 搭乗人員 3 名,8PS 搭載 ) を用い, 最下流地点 (KP-0.2) より上流に向かって実施された.KP-0.2 地点は ほぼ海上となるため朝方の凪を利用して観測を開始し, 各横断測線上の最深河床部付近 1 地点で多項目水質計を用いて鉛直方向 10cm 間隔でデータが取得した. 大潮時の観測では, 図 -3 に示されているとおり, 雨の影響により増水しており, 流量が大きくなっていたため, 塩水の遡上は全く計測されなかった. 一方, 流量が落ち着いてきている小潮時における観測では,KP-0.2 地点においてのみ塩水の進入が確認された ( 図 -11). 底層から約 40 cm ほどであるが, 塩水が進入していた. しかし, 他の地点においては, 大潮時の観測結果と同様に, 塩水遡上の影響を確認することはできなかった. 大潮時 小潮時において塩水遡上を確認できなかったため, 時間的により詳細に計測を行う必要があると考え, 2009 年 12 月 25 日から 2010 年 3 月 3 日までの間, 水温 塩分計を 9 つ,KP0 から KP8 までの 1 km 間隔で最深部に設置し, 10 分間隔での計測を行った ( 図 -12). その結果,KP0 地点において 2 回の塩分濃度上昇を記録していたが, その他の地点では全く塩分上昇が見られなかった. この 2 回の塩分上昇は, チリ津波による津波の河川への遡上と一致しており, 通常はあり得ない変化であったことを記しておく. 観測を行った年は, 例年に比較して総雨量が大きく, 流量が普段より大きかったため, 塩水が遡上しにくかったことが考えられる. また, 釧路川河口には砂州が発達しており, 河口において急激に川幅が狭くなり, 水深が増大している ( 図 -13). そのため, 上流からの河川流量による, 急縮部における流速の増大が塩水の遡上を抑制した原因であるとも考えられる. 7. 現況における塩水遡上 2009 年度における現地観測の結果から, 釧路川における明確な塩水遡上が発生しているとは言えないことが示された. しかし,2009 年度が多雨の年度であったことから, 流量の増加による塩水遡上の抑制が考えられ, 他の年度では塩水が遡上している可能性があるかもしれない. そこで本研究では, 同じ冬期ではあるが流量が平年の流量に近い状態である 2008 年 1 月 23 日における流量を用いて塩水遡上に関する検討を行うこととした. 塩水遡上の計算には,3 次元環境流体モデル Fantom3D9) を利用することとした.Fantom3D はオブジェクト指向型環境流体モデルであり, 様々な計算スキームの切り替え, 計算領域の分割による並列計算が容易であるという特徴を持つモデルである. 詳しくは参考文献 9)( 新谷 中山,2007) をご参照いただきたい. 現状地形における検討を行うために利用する地形データは 200 m 間隔で横断面測量結果が存在しているのみであり, 今回考慮したい河口の地形急縮部のデータが存在しなかった. そこで本研究では, 存在する測量データのみ

図 -16 現状地形における塩分の最大進入の様子 ( 大潮時 ).(a) 現状地形 no1 である河口急縮なし 354 時間後. (b) 現状地形 no2 である河口急縮あり 366 時間後. 図 -15 現状地形 no1, 図 -14(a) の A-A 断面における塩分の時間変化.(a) 初期状態.(b) 48 時間後.(c) 96 時間後. 図 -17 数値計算に用いられた計画断面. で地形を再現したものを用意し, 現状地形 no1 と定義した ( 図 -14a). そして砂州の発達による河口幅の急縮と深掘れの効果を考慮するために現状地形の河口部分を急縮断面へと変化させた地形を現状地形 no2 と定義した ( 図 -14b). この 2 種類の地形を用意することにより, 現状地形において急縮地形がいかにして塩水遡上に影響を及ぼしているかを検討することが出来る. 計算領域は,8000 m 300 m 3 m( 縦断方向 横断方向 水深方向 ) とし, メッシュ数は 160 30 22 とした. それほど多くのメッシュではないが, さらに計算速度を向上させるために並列計算を行い, 領域を 8 つに分割し, 20 30 22 での計算を可能とした. 上流端の条件は,2008 年 1 月 23 日における流量である 36.25 m 3 /s を与え, 潮汐条件としては大潮を模擬した振幅 0.7 m, 小潮を模擬した 0.2 m, 潮汐振幅なしの 3 種類を用意した. 初期条件では河道を塩水 (34 psu) で満たし, 上流端と下流端の水深差 0.2 m を再現するために, 上流の水深を 6 時間かけて上昇させた. 計算時間ステップは 1 s とした. 計算は実時間で 400 時間行い, 定常状態に達することを確認した. 計算における状態の変化を示し, 実行された計算の理解を深めるために, 計算開始直後から計算開始 96 時間後までの横断面中央を取り出した塩分の縦断分布を示す ( 図 -15). 現状地形 no1 における潮汐条件なしの計算結果を示している. 上流端からの淡水の流入により, 塩水が下流端から流れ出してゆき, 定常状態に達するとほぼ塩水が河道からなくなってしまっていることが分かる. また, およそ 100 時間で定常状態に達していた. 続いて, 大潮および小潮における塩水遡上形態について検討を行った ( 図 -16a). 潮汐の大きな大潮時においても塩水遡上距離はそれほど大きくなく, 最大で河口から 1 km 程度の遡上距離となっていた. 砂州の発達による急縮効果を検討するために, 現状地形 no2 における同様な計算を行った. 本論文では遡上距離が最も大きかった大潮時における検討結果のみ示す ( 図 -16b). 現地観測の章において考察された通り, 急縮部が存在することにより河川流量によるフラッシュの効果が増大し, 僅かではあるが塩水が遡上しにくい状態になっ

図 -18 図 -17 の計画断面における塩分の最大進入の様子 ( 大潮時 ).366 時間後. ていることが確認された. これらの計算から, 冬期における塩水遡上はそれほど大きくなく, その遡上距離の抑制は主として堆砂によるものであり, 砂州の発達による河口幅の急縮効果もその効果を大きくしているのではないかと推測された. 8. 計画断面における塩水遡上前章では, 現状における塩水遡上の状態について検討が行われ, 塩水遡上距離が現状地形により抑制されていることが示された. そこで本章では, 堆砂影響を評価するため, 堆砂前の状態における塩水遡上の評価, つまり計画断面における塩水遡上の形態について検討することとした. 計画断面における計算地形を図 -17 に示す. 計算は, 現状地形と同様に 3 種類の潮汐条件を与えて行われた. ほぼどのケースも同程度の塩水遡上距離であったが, もっとも張り出していた大潮時における計算結果のみ示す ( 図 -18). 5. 塩水遡上に関するまとめ釧路川における塩水遡上形態に関する検討を行い, 以下のような結論を得た. (1) 2009 年度冬期に多項目水質計を用いた縦断観測および塩分 水温計による時系列観測を行い, 明確な塩分遡上が発生していなかったことが確認された. その塩分遡上の抑制には, 河口における砂州の発達等の地形の効果が影響を及ぼしていることが分かった. (2) 通常年における冬期の塩水遡上形態に関する検討を行うため,3 次元数値計算モデルを用いた検討を行い, 河口閉塞させない現状地形でも塩水が遡上しにくい状態であることが示された. (3) 河口における砂州の発達の影響を考慮した数値計算を行い, その影響により塩水の遡上が抑制されていることも示された. (4) 堆砂の影響による塩水遡上の抑制効果を検討するために, 堆砂前の計画断面における塩水遡上計算を行い, 堆砂が塩水遡上抑制に大きく影響していることが確認された. 今後, 冬期のみの影響だけでなく, 他の季節における影響評価も検討し, 釧路川における塩水遡上形態について解明してゆく必要がある. 参考文献 1) Solomon, S., D. Qin, M. Manning, Z. Chen, M. Marquis, K.B. Averyt, M. Tignor and H.L. Miller (eds.), Contribution of Working Group I to the Fourth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change, Cambridge University Press, Cambridge, United Kingdom and New York, NY, USA, 2007. 2) Dutta, D., M.S. Babel and A. Das Gupta (2005). An Assessment of the Socio-Economic Impacts of Floods in Large Coastal Areas, Final Report for APN CAPaBLE Project: 2004-CB01NSY-Dutta, Asian Institute of Technology, ISBN 974-93908-0-6, 205 p., 2005. 3) Kushiro Wetland Restoration Committee, Comprehensive Concept, Japan, 2005. 4) 桒島知哉, 高橋克人, 宮島滋近, 平野道夫, 山田正 : 塩淡二成層を形成している網走湖の塩水の流出入に関する研究, 水工学論文集, 第 37 巻, pp.305-312, 1993. 5) 池永均, 向山公人, 大島伸介, 山田正 : 塩淡二成層を形成する汽水湖沼の長期的な界面変動予測手法の開発, 土木学会論文集, 第 628 巻, pp.77-96, 1999. 6) 池永均 大束淳一 三沢大輔 内島邦秀 樫山和男 山田正 : 網走川における塩水遡上特性と塩水楔の形態変化に関する研究 水工学論文集第 42 巻,pp.775-780,1998. 7) 吉川泰弘, 渡邊康玄, 結氷時の塩水遡上に関する現地観測土木学会, 河川技術論文集, Vol.12, pp.157-162, 2006

8) 吉川泰弘, 安田浩保, 渡邊康玄, 網走川における透過性構造物の塩水遡上への影響土木学会, 河川技術論文集, Vol.13, pp.7-12, 2007 9) 新谷哲也, 中山恵介, 環境流体解析を目的としたオブジェクト指向型流体モデルの開発と検証, 水工学論文集, 第 53 巻, pp.1267-1272, 2009.