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を 0.1% から 0.5% 1.0% 1.5% 2.0% まで増大する正負交番繰り返し それぞれ 3 回の加力サイクルとした 加力図および加力サイクルは図に示すとおりである その荷重 - 変位曲線結果を図 4a から 4c に示す R6-1,2,3 は歪度が 1.0% までは安定した履歴を示した

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Transcription:

建築物の地震後の継続使用性 ~ 現状と課題 ~ 住宅研究部長 福山洋 1

本日の内容 建築物の地震後の継続使用性 ~ 現状と課題 ~ 1) 熊本地震の被害から見た課題 2) 建築基準法との関係 3) 関連する基準類の現状と課題 4) 具体の検討事例 (RC 壁の有効利用 ) 2

1) 熊本地震の被害から見た課題 3

2016 年熊本地震による庁舎建築物の局部崩壊 余震に対する構造安全性の喪失 コア棟 庁舎棟 ( 柱や柱はり接合部の破壊 ) 4

物に作用変形建する水平力残余耐震性能 ( エネルギー吸収能 ) 残余耐震性能 (R)= 最大応答点 (A) (B) B A+B 限界変形点 水平力 建物の重心位置における変形 5

2016 年熊本地震による吊り天井の落下 室機能の喪失 余震に対する安全性の喪失 吊り材の落下 庁舎建築物 体育館 6

特定天井の脱落対策 増幅 2 階床 吊り天井 天井 増幅 床 屋根 できるだけ増幅を抑える 壁 斜め部材 隙間 隙間 & 斜め部材 隙間なし 斜め部材なし 7

2016 年熊本地震による体育館における非構造部材の落下危険 余震に対する安全性の喪失 ( 非構造部材のディテールの改善により防止可能 ) コンクリート片の落下危険 コンクリートブロック壁の落下危険 モルタル壁の落下危険 8

2016 年熊本地震による設備機器の損傷 設備機能の喪失 ( 構造躯体の変形を抑え 支持部の検討を 建築設備耐震設計 施工指針 によることで概ね防止可能 ) 配管接合部の損傷 機器据え付け部の損傷 9

2016 年熊本地震による RC 造マンションの非構造壁や Exp.J の損傷 住環境の喪失 通行や避難の危険性 袖壁方立壁エキスパンションジョイント 10

構造躯体 非構造部材 設備の被害軽減策 構造躯体 変形 応答変形を抑え損傷をなくす ディテールを工夫 残余エネルギー吸収能を確保する 非構造部材や設備配管の損傷防止 非構造部材 変形 ( 応答変形を抑え 非構造部材の損傷をなくす ) 加速度 特定天井の脱落対策 に準拠 設備 変形 ( 応答変形を抑え 設備配管等の損傷をなくす ) 加速度 支持方法は 建築設備耐震設計 施工指針 による まずは構造躯体の変形抑制が必要 11

2) 建築基準法との関係 12

第 1 条 建築基準法第 1 条 ( 目的 ) この法律は 建築物の敷地 構造 設備及び用途に関する最低の基準を定めて 国民の生命 健康及び財産の保護を図り もって公共の福祉の増進に資することを目的とする 憲法第 29 条 ( 財産権 ) 第 29 条財産権は これを侵してはならない 2 財産権の内容は 公共の福祉に適合するやうに法律でこれを定める 3 私有財産は 正当な補償の下に これを公共のために用ひることができる 財産権は 憲法第 29 条第 1 項により不可侵性が保障されるが ( 第 29 条第 2 項 ) で公共の福祉により制限されうる 13

現行耐震基準の要求性能 希に発生する地震 * に対して損傷しない 建物の修復が不要で ほぼ継続使用が可能 (* 建物使用期間中に数回遭遇する程度の地震 ) 極希に発生する地震 ** に対して倒壊 崩壊しない 人命が守られる (** 建物供用期間中に一度遭遇するかも知れない程度の地震 ) 14

1995 年阪神 淡路大震災における RC 造新耐震建築物の損傷 取り壊し 倒壊は免れ人命を守ったが 柱 はり 柱はり接合部の損傷が極めて大きく その修復費用が莫大であったため取り壊され建て直された 15

建築構造物への性能要求レベル 松レベル竹レベル梅レベル基準の要求レベル AAA BBB CCC DDD これまでの多くの設計 16

建築構造物への性能要求レベル 松レベル竹レベル梅レベル基準の要求レベル ( 任意 ) AAA BBB CCC DDD これからの設計 17

安全性と継続使用性の応答イメージ 水平力 継続使用性 安全性 安全限界 損傷限界 変形建築物の地震時の荷重 - 変形関係 18

3) 関連する基準類の現状と課題 19

熊本地震における建築物被害の原因分析 を踏まえた 住宅局の主な取り組み方針 機能継続 ( 使用し続ける 住み続ける ) 建築基準法の遵守に加え 建築物に対するニーズに応じて より高い性能の確保を目指す 1 防災拠点の機能継続にかかるガイドラインをとりまとめ 必要な対策が講じられるよう周知 支援 2 消費者がより高い耐震性能の住宅を選択できるよう 住宅性能表示制度の普及を推進 20

H8 官庁施設の総合耐震計画基準 より高い性Ⅲ 類 : 大地震動により構造体の部分的な損傷は生じるが 建築物全体の耐力の低下は著しくないこと 建築基準法に定める大地震の力で倒壊しない Ⅱ 類 : 大地震後 構造体の大きな補修をすることなく建築物を使用できること 建築基準法に定める大地震の力 1.25 で倒壊しない 耐震要求性能 能Ⅰ 類 : 大地震後 構造体の補修をすることなく建築物を使用できること 建築基準法に定める大地震の力 1.5で倒壊しない 21 ( 保有水平耐力時の層間変形角が 1/200 以下 )

高い性 住宅性能表示制度 H11 住宅の品質確保の促進等に関する法律 ( 品確法 ) り 耐震等級 ( 構造躯体の倒壊等防止 ) が求める耐震性能 等級 1: 極めて稀に発生する地震 ( 数百年に一度程度 ) による力に ( 建築基準法施行令第 88 条第 3 項に定めるもの ) 対して倒壊 崩壊等しない程度 よ等級 2: 極めて稀に発生する地震による力の1.25 倍の力に対して倒壊 崩壊等しない程度 能等級 3: 極めて稀に発生する地震による力の1.5 倍の力に対して倒壊 崩壊等しない程度 22

長期優良住宅 H20 長期優良住宅の普及の促進に関する法律 長期使用構造等とするための措置及び維持保全の方法の基準 が求める耐震性能 大規模な地震後も使用可能であること ストック型社会への転換 品確法の 住宅性能表示制度 で下記による 1) 限界耐力計算 で層間変形角 R 1/100 2) 限界耐力計算 で耐震等級 2 又は 3 R 1/75 3) 保有水平耐力計算 で耐震等級 2 又は 3 4) 免震建築物 23

今後の課題 目的の統一 ( 検討方法 ( 地震力を 1.5 倍など ) は同じ ) 官庁施設の総合耐震計画基準 長期優良住宅 大地震後の使用可能性 性能表示制度 : より大きな地震力に対する倒壊 崩壊防止 ( 例 ) ( 建築基準法に定める ) 大地震後も使用可能で より大きな地震動でも倒壊 崩壊しない 合理的な検討方法の導入 地震力を割り増す方法は 大地震後の建築物の状態が分からず BCP 等の事前対策ができない 建築物の応答状態に基づく判定が必要 24

継続使用性 の評価フロー ( 案 ) 応答値が算定できる構造計算 ( 限界耐力計算 など ) 目標水準設定 ( 外力の大きさ と 状態 のセットで設定 ) 応答評価 ( モデル化 構造解析 ) 応答値 ( 変位 速度 加速度 ) 限界値 構造部材 非構造部材 設備 什器の 損傷状態 構造部材 非構造部材 設備 什器の 機能影響 ライフラインの情報 生活困窮度 業務困難度 機能喪失シナリオ機能回復シナリオ生活困窮度 業務困難度評価 機能回復のための修復方法 修復費用 + 修復期間 25

今後の方向性 - 設計者からの建築主目線でのわかりやすい説明 - < 期待される説明の例 > 災害により建築物のどの部分にどのような損傷が生じ 建物機能のうちどの機能がどの程度の支障をきたすか? その回復にどの程度の時間と費用がかかり それらによる生活の困窮度 ( 業務困難度 ) はどの程度であるか? 26

4) 具体の検討事例 RC 壁の有効利用 総プロ 災害拠点建築物の機能継続技術の開発 ( 平成 25 28 年度 ) 27

研究目的 要求 倒壊せず人命を守ることに加え 地震直後から使い続けられること 大手ゼネコン 設計事務所の対応 制振 免震等の先端技術を活用 わが国が誇るべき高い技術力を駆使した実施例 国総研の提案 多くの技術者に扱われ幅広い普及が期待できる一般構造技術を用いる ( 特殊技術は用いない ) 地震応答変位を低減させる安価な構造方法 従来の構造計算で対応可能な構造技術 28

RC 壁を活用した新しい架構の提案 接合部の損傷 スリット 最近の設計 (3 方スリットを設け壁なし架構とする ) 地震後の損傷補修の規模 設計の複雑さ開口部の成約開口部の制約 一般的な構造 ( フレーム ) 提案昨年度の構造 1 そで壁活用 ( 使い続けられる ) 提案 2 付帯壁活用 ( 大きな補修不要 ) 今年度の構造 ( 補修が要らない ) 29

壁活用のねらい そで壁 腰壁 たれ壁を活用することで 従来と同程度のコストで地震時の損傷 変形を低減させる 柱 はり 柱はり接合部に損傷が生じ難くなり 地震後の修復作業が軽減される 壁が損傷しても軸力を支持する柱は健全であるため 構造物としての崩壊に対する余裕度が極めて高い 接合部の損傷スリットそで壁スリット 30

提案する損傷制御架構のイメージ 荷重 降伏耐力の増加荷重 地震応答スペクトル 地震応答スペクトル C0=0.55 C0 =0.55 C0=0.40 C0 =0.40 C0=0.30 C0=0.30 1/200 (= 0.5%) 地震応答変位の低減による建物損傷度の抑制 降伏変位を抑制降伏変形の低下 地震応答変位の低減による建物損傷度の低下提案 12 1/133 (= 0.75%) 提案 21 そで壁, 腰壁, 垂壁の活用 C0=0.55 相当の強度型フレーム そで壁 腰壁 垂壁の活用 C0=0.55 相当の強度型架構 そで壁の活用 C0=0.40 相当の靱性型フレーム そで壁の活用 C0=0.40 相当の靱性架構 純ラーメン従来の方法 ( 従来の方法 ) 3 方向スリット 地震時応答変位が大 非構造部材の損傷増大 変位 31

5 階建て実大建物実験で実証 試験体全景 柱梁接合部 ( 層間変形角 1/200 で損傷なし ) 32

5 階建て実大建物実験で実証 壁を上手く活用することにより 従来の構造技術で かつ コストを掛けず 耐震性能の大幅な向上が可能 地震後の応答変形を低減して架構 非構造部材 設備の損傷を防ぎ 継続使用を可能とする 試験体全景 柱梁接合部 ( 層間変形角 1/200 で損傷なし ) 33

おわりに 神戸郵船ビル (1918 竣工 RC&SC+4) 34