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Transcription:

章 RK-GPS 高速初期化処理 - 処理フロー RK-GPS 高速初期化技術の処理内容について説明する 全体処理フローを図 -- に示す GPS 観測データの取得 電波強度によるマルチパスの検出 躍度モデルの算出 検出マルチパス観測データの削除 検出せず サイクルスリップの検出検出 検出せず 仰角マスクカット パラメータの初期設定 電源 時衛星増加時 電源 時より後で衛星増加時以外 カルマンフィルタ演算 パラメータの初期設定 アンビギュイティの探索 二周波搬送波位相モデルによる電離層遅延の算出 Smonn モデルによる対流圏遅延の算出 観測式の算出 アンビギュイティの検定決定未決定位置探索手法決定移動局位置の算出 未決定 図 -- RK-GPS 処理フロー - 二周波搬送波位相モデルによる電離層遅延の算出二周波搬送波位相モデルの算出内容を以下に示す 機能電離層遅延誤差をカルマンフィルタで推定するために 二周波搬送波位相モデルを構築する アルゴリズム電離層モデルの算出値は予測値であるため 実際と異なってしまうと アンビギュイティに誤差が常に残留してしまい アンビギュイティを決定することができない そこで 観測データをもとに電離層遅延量を算出するモデルを考え 電離層遅延推定量を真値に収束させ アンビギュイティを高速に決定できるにようにする 9

電離層遅延を算出できる観測データとして擬似距離と搬送波位相がある 擬似距離は.5m 程度の受信機雑音を含んでいるとされており これを用いて計算すると 式 -- に示すように 電離層遅延量に約 m の雑音, が含まれてしまう ここで 及び は 帯及び 帯搬送波の周波数 は擬似距離の受信機雑音である,,,, 7. 7 7 5...9.5.5 -- 一方 搬送波位相の受信機雑音は.m 程度とされているため これを用いて計算しても 式 -- に示すように 電離層遅延量に.m 程度の雑音しか含まれない ここで, は擬似距離の受信機雑音である,,, 7. 7 7 5..... -- 以上の理由から 受信機雑音が小さい搬送波位相を用いて 電離層遅延を求めることにする 帯及び 帯搬送波位相は式 -- 及び式 -- で表される ここで はエポック は 帯, 搬送波の波長 は二重位相差 は衛星と受信機間の距離の二重差 δ は擬似距離方向の衛星位置誤差の二重差 は 帯搬送波の電離層遅延二重差 は 対流圏遅延二重差 は衛星番号 と の 帯搬送波二重位相差のアンビギュイティ は 帯搬送波位相の観測雑音 は衛星番号である δ -- δ -- 式 -- と式 -- を引き算することにより 式 --5 及び式 --6 を得ることができる --5

--6 一方 帯搬送波の電離層遅延 は式 --7 で表される ここで EC は総電子数である. EC --7 式 --5 及び式 --7 により 帯搬送波の電離層遅延二重差は式 --8 のように表される --8 帯搬送波の電離層遅延二重差の観測量は推定の前に求める必要があるため アンビギュイティ実数解の一段予測量を用いることにする 以上のこと及び式 --8 をもとに 帯搬 送波の電離層遅延二重差の観測量 を式 --9 のように表すことにする ここで は二重位相差のアンビギュイティ実数解の一段予測量である --9 式 --9 を用いて 電離層遅延二重差を求めるモデルを二周波搬送波位相モデルを構築する - Smonn モデルによる対流圏遅延の算出 Smonn モデルの算出内容を以下に示す 機能対流圏遅延誤差をカルマンフィルタで推定するために Smonn モデルを構築する アルゴリズム Smonnm モデルは GPS の観測点における温度 気圧 湿度を与えて対流圏遅延を計算するモデル式である そこで 対流圏遅延量は 55.77 P.5 n op -- co となる ただし : 衛星の天頂角 [] P : 気圧 [P] : 気温 K C 76. 6 [K] : 水蒸気分圧 [P] である ここで 水蒸気分圧 は 相対湿度 R [%] から

で求める 7.5 68 6.8 R / p -- 8.5 - 躍度モデルの算出カルマンフィルタで位置を推定するための状態方程式のモデル式として躍度モデルを適用する 以下に算出内容を示す 機能躍度モデルを組み込んだカルマンフィルタの状態方程式の算出を行う アルゴリズム カルマンフィルタにおける予測精度を向上させるため 躍度が一次マルコフ過程であると仮定した運動モデル 躍度モデル を考える このとき 躍度 γ は式 -- のように表される ここで は躍度の時定数の逆数である γ& γ -- 連続型状態方程式は式 --~ 式 --8 で表される ここで 雑音 は平均 分散 の 標準正規分布に従うものとし R は移動局位置 v R は移動局速度 R は 移動局加速度 R はシステム雑音の標準偏差 は γ は移動局躍度 m は衛星数 帯搬送波二重位相差のアンビギュイティの標準偏差 は電離層遅延二重差の標準偏差 は対流圏遅延二重差の標準偏差 は 帯, 搬送波二重位相差のアンビギ ュイティ は 帯搬送波の電離層遅延二重差 は対流圏遅延二重差 は衛星番号 m は衛星数である η η& Fη G -- [ v γ ] [ ξ ] F -- --

G --5 m [ ] --6 m [ ] --7 m [ ] --8 躍度 γ に関する相関関数の代表的なモデルは式 --9 で表される ここで γ は躍度の 分散である γ E[ γ γ ] --9 図 -- のように躍度の確率分布を設定する 図 -- において P γ γ は躍度の確率 Γ m は躍度の最大値である 図 -- に示す躍度の確率分布は 加速度が一次マルコフ過程である Sng モデルの加速度の確率分布を参考にして 離散分布と連続分布を取り入れたものである 躍度の分散を求めると 式 -- のように表される P m P P m P Pm Γ m mγm m m Γ γ γ γ Γm -- Γ P γ P γ P m P P m γ Γ m Γ m 図 -- 躍度の確率分布

式 --9 の相関関数 をフーリエ変換すると 式 -- のように展開できる { { { { ω ω ω ω ω ω ω ω ω γ γ γ ω ω γ ω ω γ ω γ ω γ ω γ S R -- ここで ω ω S は式 -- 及び式 -- のように表される ω ω -- γ ω S -- システム雑音の分散 を用いて 式 -- を得ることができる γ -- 式 -- の解 η に対して 関数 F η を考え 伊藤の連鎖則を適用すると 式 --5 を得ることができる ここで, Φ は状態遷移行列 はシステム雑音である F F G η η --5 F Φ, --6 F G --7 共分散関数を計算すると 式 --8 のようになる F F F F G GQ G G ] v[ η --8 ここで Q は式 --9 で表される

5 ] [ E Q δ --9 式 -- に示すように 逆ラプラス変換を用いて 状態遷移行列, Φ を求めていく {, Φ F F -- F の逆行列を計算するために 式 -- 及び式 -- に示すように F の固有値を求める 7 F --,,,,,,, { -- 固有値及び余因子行列を用いて 式 -- に示すように F の逆行列を求めていく

6 F -- 式 -- を逆ラプラス変換し 観測データのサンプリング間隔を とし 離散化すると 状態遷移行列, Φ は式 -- のようになる

7 { Φ F F, -- 式 --7 をもとにシステム雑音 は式 --5 のように展開できる 但し 離散型で表現した { { { [ ] [ ] F G { { { { { { { {, { { { { { { --5

8 式 --5 をもとにシステム雑音 の共分散行列 Q を式 --6~ 式 -- のように展開できる [ ] c b c c bc c b bc b b c b c b c b E Q --6 { { { --7 [ ] { { b --8 { c --9 { --

9 とおくと 式 --6 を式 --~ 式 -- のように展開できる c b c c bc c b bc b b c b c b c c bc c b bc b b c b c b c c bc c b bc b b c b Q o --

6 -- b -- c -- --5 b 5 --6 c --7 --8 bc --9

b -- c -- 式 -- を計算すると 式 --~ 式 --56 のようになる Q 88 77 66 55 -- 5 5 7 6 5 6 6 9 6 -- 6 8 8 8 8 8 -- 5 6 9 6 --5 --6 5 --7 --8 --9 --5

--5 --5 55 --5 66 --5 77 --55 88 --56-5 イノベーションによるサイクルスリップの検出カルマンフィルタのイノベーションを用いたサイクルスリップの検出手法を以下に示す 機能サイクルスリップの検出を行う アルゴリズム サイクルスリップ検出方法はカルマンフィルタのイノベーションを用いてχ 検定で検出を行う カルマンフィルタのイノベーション ν は共分散行列 M の正規性白色過程である したがって コレスキー因子分解により に対して式 -5- となるような正則な行列 が存在する 式 -5- に示すように になる M M -5- ν を定義すると ν Cov の共分散行列は式 -5- のように単位行列 ν ν -5- [ ν ] Cov[ ν ] E[ ν ν ] M -5- 式 -5- より ν のそれぞれの要素は互いに独立な標準正規分布に従う したがって 式

-5- で表される検定統計量 は自由度 m のχ 分布に従う ν ν ν ν M v v -5- もしサイクルスリップが起こると イノベーションの共分散行列は変化する そこで 下記に示す つの仮説を立てる 仮説 χ, : イノベーションの共分散が変化しなかった 仮説 χ, : イノベーションの共分散が変化した そこで 危険率 χ うと 以下のように仮説を採択できる を定め この仮説に対する検定を自由度 m χ m の場合 仮説 χ, を採択する χ > χ m の場合 仮説 χ, を採択する χ の χ 分布に基づいて行 -6 観測方程式の算出カルマンフィルタに適用する観測方程式の算出内容を以下に示す 機能 GPS データから観測方程式の算出を行う アルゴリズム 帯搬送波二重位相差 のベクトル 擬似距離二重差 のベクトル 帯搬送波の電離層遅延二重差 のベクトル 及び対流圏遅延二重差 のベクトル を式 --~ 式 --9 のように離散型で表す ここで c は光速,, は基準局位置,, は移動局位置,, は衛星番号 の衛星位置 は, R に従う二重位相差の観測雑音 は, R 離二重差の観測雑音, R 及びに従う擬似距 は, に従う電離層遅延二重差の観測雑音 R 及びに従う対流圏遅延二重差の観測雑音である は

-6- [ ] m -6- [ ] m -6- [ ] m -6- { { c c -6-5 [ ] m -6-6 [ ] m -6-7 [ ] m -6-8 [ ] m -6-9 式 -6- において を一段予測値 のまわりでテーラー級数展開し 次以上の項を削除すると は近似的に式 -6- のように表される -6- ここで 式 -6- 及び式 -6- に示す を定義する

5-6- -6- 式 -6-~ 式 -6- を用いて 式 -6-~ 式 -6- に示す線形化された観測方程式が得られる C η ξ -6- C -6-

6 m m m M M M -6-5 -6-6 -6-7 -6-8 -6-9 [ ] -6- -7 カルマンフィルタ アンビギュイティ実数解の算出 カルマンフィルタの演算内容を以下に示す ここで アンビギュイティの実数解の算出を行う 機能カルマンフィルタの演算を行う アルゴリズム状態方程式と観測方程式をカルマンフィルタに適用すると 以下のように表される フィルタ方程式 l ξ, l Φ l ξ -7- l l K l ξ ξ ξ -7-

b カルマンゲイン c 推定誤差共分散行列 K P - P R -7- P - Φ, P Φ, Q -7- l P P KP -7-5 l -8 アンビギュイティ整数解の探索アンビギュイティ整数解の算出内容を以下に示す 機能 AMBDA 法を適用してアンビギュイティの整数解を探索する アルゴリズムここでは AMBDA - AMBg Dcolon Amn 法について解説する AMBDA 法は 整数値バイアスの推定法として最も実用化が進んでいるアルゴリズムの一つである その名が示すように整数値バイアスの各要素の無相関化を行い 整数解を求めるものであり AMBDA 法を応用した手法も各種考案されている この計算アルゴリズムは以下のステップからなる ステップ: 最小 乗法で実数解を求める -7 節のカルマンフィルタで求める ステップ: 整数値バイアスの無相関化を行う ステップ: 整数解の探索空間を定め, 解を得る χ% の設定については 項 で述べる 前節で 観測方程式を説明したが 以下では一般性を損なわないように 新たに観測方程式を次のように定義する ξ, : 観測ベクトル ξ R: 未知局座標 n : 整数値バイアス : 観測雑音 AMBDA 法の目的は 重み付き最小 乗規範により 未知量 の推定値 ξ を n ξ, gmn ξ n ξ, R R -8- -8- として求めることである この問題を解くために AMBDA 法では まず最初は を実数値とみなして最小 乗解 ξ を求める すなわち 7

n n, -8- R ξ R R ξ, gmn ξ 具体的には前記のカルマンフィルタを適用して求めることができる この実数解 を用いて 整数解 についての規範 : g mn n Q -8- により を求めることが目的である また整数解 が求まると 次式により最小 乗解 ξ が求まる 以上の計算過程での問題点は式 -8- での の推定である 最小 乗規範の重み行列である Q が対角行列でないため すなわち の各要素が相関をもつため の各要素についての 四捨五入操作により 最近傍の整数値を推定値 ň として求められないことである このために AMBDA 法では以下のような推定誤差共分散行列ている Q の対角化 の無相関化 が提案され 無相関化と整数値の探索 式 -8- の実数解 の推定誤差共分散行列 Q 対称行列 に対して 直交行列 により対 角化を行い その対角行列を Q とする すなわち Ẑ Q -8-5 Q ここで とすると 式 -8- は ẑ -8-6 gmn Q n -8-7 と表現できる 式 -8-7 の Q が対角行列であり 整数 から変換された も整数であれば 四捨五 入操作により推定値 を求めることができる しかし が整数であるためには 変換行列 の要素がすべて整数でなければならない そこで 行列 の要素が整数となり Q がほぼ対 角行列となる変換法が D UDU 分解を用いて以下のように提案されている Ẑ ⅰ Q を対角要素がすべて である下三角行列 により Q D に分解す る ここで D は対角行列である ⅱ の要素を四捨五入した行列を % とし また Q % % Q % とする ⅲ Q % を対角要素がすべて である上三角行列 U により Q % U D U と分解す る ここに DU は対角行列である ⅳ U の要素を四捨五入した行列をU % とし Q U U% % Q % U% とする ⅴ % または U % が単位行列となるまで ⅰ ~ⅳ を繰り返す U 8

以上のアルゴリズムにより ⅰ ~ⅳ までの繰り返し回数を l とすると 変換行列 および誤差共分散行列 Q を ẑ Q l U % Q % -8-8 として求める 実際には 若干の行 列の入れ換えのための基本行列が % U % の間に挟まれ る 次に整数値バイアスの候補点を求めるため探索を行う すなわち 領域 楕円体 Q % -8-9 内に含まれる整数点を探索する χ% は探索空間の大きさを決定するパラメータである Q ẑ は完全には対角化されていないが 整数解の候補点の範囲が狭められており この範囲に含まれる候補点の中で式 -8-7 の解を選出する 以下では AMBDA 法で用いられている探索方法を示す ただし ここでは Q に対 する探索方法を示す 上で述べた無相関化を施した Q ẑ に対しても全く同様の探索が可能であり より効果的な探索が可能である Q を D に分解すると 式 -8- は n n Q l, χ -8- となる ただし は各々 の 要素 l, は の, 要素 は D の, 要素である ここで l -8-,, n, n と定義すると,, n 条件付き分散 なる関係から式 -8- は n,, n χ,, n % -8- と表現できる もし無相関なら n であり l, より が成立する -8-,, n 要素ごとの範囲の計算 ~ n が既知であり ~ が未知である場合 の探索範囲を求める方法を以下に 示す 式 -8- より 9

n l, n l, n n p p l, % χ p -8- が成立する ここで β γ β γ より 上式左辺の第 項目を消去し 第 項目を右辺に移項し両辺を で割ると式 -8-5 が得られる n l, l n m % χ p p p l, p p p g -8-5 さらに についても式 -8-5 と同様に n l, l n n % χ p p p l, p p p g -8-6 が得られ 結局 式 -8-7 の関係を得る n, l g l l g -8-7 これは n,, までl g を逐次的に計算できることを示している すなわち逐次計算は n から始まり n では式 -8- より χ n n % n l { n gn である に対して有効な整数値の候補の範囲は式 -8-7 の平方根をとって -8-8 すなわち n l g -8-9, n -8- g l g l,, n

として に対する探索範囲を定める この範囲は左から右 下限から上限 へ一直線に探索され この範囲にある有効な整数値に対して 式 -8- を用いて への補正が行われる このような探索法を p- c と呼ぶ ある整数値バイアス要素 l に対して有効な候補がない つまり範囲内にない場合 つ前の整数値バイアス要素 l に戻って次に有効な l の候補で p- c を始める まで式 -8- を満たせば完全な整数値バイアスベクトル の候補ができあがる これをすべての有効な整数値バイアス要素に対して行い 候補を絞り込む また 式 -8-9 は g g,, n と表現できる この不等式は の候補の中心が であり,, n 適切な候補であることを示している,, n -8- の四捨五入値が最も χ% の設定 この値により楕円体の大きさが変わり 楕円体内の候補点の個数も変化する したがって大きな χ% では探索範囲の候補数が増え 探索の計算処理時間が増加する このため楕円領域を徐々に狭めていく方法がとられている すなわち 式 -8- を満足する候補ベクトル が求 まると ノルム Q を計算し その値から新しい χ% を設定し 候補数が 個になるま で繰り返す χ% の初期値は on で与えられる Q -9 アンビギュイティ整数解の検定アンビギュイティ整数解の検定手法を以下に示す 機能アンビギュイティ整数解の検定を行う アルゴリズム AMBDA 法で求めたアンビギュイティの第 候補と第 候補における残差の二乗和の比を算出し その比が閾値以下である場合 第 候補がアンビギュイティ整数解であると決定する 閾値より大きい場合 第 候補がアンビギュイティ整数解でないと判断する 数回連続して 残差の二乗和の比が閾値以下である場合にアンビギュイティを決定する

- 位置探索手法アンビギュイティ決定が可能な位置の探索手法を以下に示す 機能アンビギュイティ決定が可能となる位置の探索を行う アルゴリズムアンビギュイティを高速に決定するためにはアンビギュイティにかかわる誤差を低減する必要があり それらの誤差の一つに位置誤差がある この項では位置誤差がある程度の大きさである状況においてもアンビギュイティを決定できる方法について説明する 図 -- は位置誤差とアンビギュイティ決定との関係を表す概念図である 推定位置が真値から数十 cm あるいは約 m の範囲であれば アンビギュイティを決定できる この範囲をアンビギュイティ決定範囲と呼ぶことにする しかし 推定位置の初期値は DGPS で求めるため 数 m の誤差が推定位置に含まれてしまうことがある このため 推定位置がアンビギュイティ決定範囲に入るまでに長い時間の観測データを要する そこで 推定位置の周りでアンビギュイティを決定できる位置を探索することにより 高速にアンビギュイティを決定する この手法をアンビギュイティ決定のための位置探索手法と呼ぶことにする 推定位置の初期値 実数解の推定位置 アンテナ位置の真値 位置探索範囲 決定された探索点 アンビギュイティ決定範囲 図 -- アンビギュイティ決定状況 この位置探索アルゴリズムを図 -- に示す

いいえ ステップ 衛星数が 6 以上 PDP が.78 以上であるか? ステップ はい 探索位置の設定 ステップ キネマティック測位処理 ステップ アンビギュイティの記録 ステップ5 全ての探索位置を初期位置に設定したか? いいえ ステップ 6 はい アンビギュイティ決定の判定 ステップ 7 処理の終了 図 -- アンビギュイティ決定のための位置探索アルゴリズムステップ : 衛星数が 6 以上 PDP が.78 以上である場合 ステップ に進む 5 以下である場合 ステップ 7 に進む ステップ : 推定位置に探索範囲のバイアスを加え それを初期位置とする バイアスは東西 南北 上下方向のそれぞれについて-.5m.m.5m を設定する その組み合せは.,.,. を除いた 6 通り - である ステップ : 図 -- に示す RK-GPS アルゴリズムを実施する ステップ : ステップ でアンビギュイティを決定できた場合 アンビギュイティを記録する ステップ 5: 全ての探索位置を初期位置に設定した場合 ステップ 6 に進む 設定していない場合 ステップ に進む ステップ 6: 決定されたアンビギュイティの種類が つである場合 それをアンビギュイティとする つ以上である場合 アンビギュイティが決定されないと判定する ステップ 7: アンビギュイティ決定のための位置探索処理を終了する

- 移動局位置の算出決定されたアンビギュイティを用いた移動局位置の算出方法を以下に示す 機能決定されたアンビギュイティを用いて位置の更新を行う アルゴリズム式 -- を用いて アンビギュイティ整数解 をもとに移動局位置 を計算する ここで は移動局位置の推定量 はアンビギュイティの推定誤差共分散行列 P P は移動局位置の推定量とアンビギュイティ実数解の推定量の分散共分散行列 はアンビギュイティ実数解の推定量である { P P --