夏こそ広酪発酵TMRを 乳脂肪率改善 発見があるものですね まもなく7 月を迎えます 県内のあちらこちらでは 稲の植え付けから 1か月乃至 3カ月が経過しました 植え付け時の小さな稲も 株わかれし本数が増す分けつ期に入り出穂の息吹すら感じとれます この様な時期 表紙写真は 桑の実 ( この写真はドクダミ草の花 ) とカエルの卵が寄り添い美しく光沢を放つコントラストが目にとまり スマホで撮影したものです この被写体 桑の実に手を差し伸べては 次々に口にしている際に見つけたものです 6 月は 自然の恵みとして野いちごや桑の実 お茶にもなるドクダミ草の花も可愛く咲きほこります 普段 こうした光景は余り目にすることはありませんが 自然の恵み 営みに驚かされます!! 2018.6 撮影 さすがに この桑の実を口には出来ませんでしたが ( 笑い ) こうした光景は 車での往来では気づきませんが 少し立ち止まって山間部を歩き散策してみると新鮮な発見も出来ますね ドクダミ草は健康茶にして飲めば 動脈硬化の予防 高血圧 血液浄化 腎機能向上 利尿 便秘 疲労回復 強壮 強精 慢性鼻炎 急性腎炎 むくみ アトピー性皮膚炎としての効能もあるそうです お茶にして飲まれてみては如何ですか? ある意味 身近な所には意外と気付かない新鮮な (A N) contents( 目次 ) 24表紙写真222120191714131282酪農テレックス窓シリーズ家畜改良事業団からのお知らせ公庫からのお知らせ技術情報丹戸靖の おいしい酪農経営の話 ミルクパーラートピックス会議だより特集地域コミュニティ夏場の乳成分維持広島 2018 年 ( 平成 30 年 )6 月 291 2
3 特集夏場の乳成分維持顧みて 広酪では二〇十四年三月に みわ 庄原両TMRセンター を統合し老朽化した施設を整備して新生 みわTMRセンター を操業しました この施設では 広酪において初めて飼料用稲WCSを原料に用い 良質で一円でも安いTMR飼料の供給を通じて 酪農家の利益向上への貢献を目的に 年間最大製造 供給の目標重量は一万二千トンに設定しておりました 操業から四年を経た現在では 目標を大きく越える年間約一万四千トンに達しました 操業当初からの約三年間は 嗜好性のムラや夏期の乳成分値の不安定さ等に関して利用組合員からの指摘も後を絶たず 大変なご迷惑とご心配をお掛けしました 広酪では こうした指摘にしっかりと耳を傾け 行政の研究機関や上部団体の技術者 NOSAI広島の獣医師などの支援を得つつ課題克服に努力を重ねて来ました この甲斐あって 昨年の夏場からは 発酵タイプのTMR飼料製品 広酪TMR20 WCS において 猛暑日が続く日でも食い込みがよく嗜好性が安定したことから 健康状態も良好で なおかつ 乳脂肪率 の低下も無く乳成分加算金も得られ 繁殖成績も良くなった等の喜びの声が届くようになりました この様な声が頂戴出来るようになった背景には 栄養価が安定した 広酪TMR20 WCS の嗜好性安定から生じる乾物摂取量にあると考えております つまり 搾乳牛は体重の三 五%から四%の乾物摂取量が満たされていることが重要で 例えば牛体重六百五十kgであれば 一日に二二 七五kgから二十六kgの乾物(DM)摂取量となります 今夏も大変暑くなる予報がある中で 毎年乳脂肪率問題でご苦労をされている組合員におかれましては 特に 広酪TMR20 WCS の利用を推奨します 以下では 乳脂肪率低下防止対策や乾物摂取量を向上させるための対策に触れます 広酪 TMR おいしいよ! 安心! くんくん! 大丈夫だな
4 乳脂肪率低下防止の前に牛の生理と飼養管理のポイント整理!?そもそも乳脂肪率低下は 乾物摂取量 栄養バランスに変化が生じなければ起こりにくいものです しかし 日本気候には春夏秋冬の四季があり 季節に応じて 気温や湿度等の変化が生まれ 特に夏場の ジメジメ ムシムシ の時期は 乳用牛にとって特に耐え難い時期と云えます まずは乳脂肪率低下防止を考える前に 乳用牛の生理 カウコンフォート 飼養管理 に区分けして 何が必要かを整理しておきます 一乳用牛の生理 酸化ストレス? 乳用牛は 外気温度が摂氏二十二 以上(以下の図 温度 湿度指数 参照)になるとヒートストレスを伴い 特に体感温度が二十五 を超えると直腸内温度は三十九 を超えます このことで生じる影響は 繁殖成績において受胎率(妊娠率)が三十%低下すると云われています また 呼吸回数に及んでは 摂氏二十 以下では約三十四回/分であるのに対して 五十回以上/分となり酸化ストレスを誘引します 酸化ストレス を伴えば 乳用牛の免疫力低下から乳房炎 体細胞数増加 受胎率低下 胎盤停滞等の深刻な疾病を招きやすくなります この他 横臥時間の減少 乾物摂取量の低下 産乳量が減少を生む等から酪農経営にとって 負の連鎖が生じることになります 従って 酪農家は 乳用牛の生理を熟知しておき この生理を乱す要因を排除することに取り組むことが必要となります 乳用牛のヒートストレス軽減策は?ヒートストレス軽減には 体感温度を下げる必要があります 体感温度を示す計算式は 体感温度=気温-六 風速m/s 外気温が摂氏三十 でも体感温度を二十二 以下にする為には 送風機(ファン)や換気扇が有効です 換気扇による風速が二m/Sであれば 体感温度は二十一 五 となります 寝ている乳用牛の頸部の風速を測定し確認してみることは有効です 二 カウコンフォート乾物摂取量の低下防止は!?乳用牛の乾物摂取量低下防止には 乳用牛に必要な環境面において 牛の 図 ( 風速 温度 湿度を測定 )
( 自動はきよせロボット ) 5 快適性で重要とされる水 飼槽 換気 細霧またはソーカー その他 次の1 5の事に関してポイントを把握しておき 常に牛の快適性を整えることが重要と云えます 1水 水は 体温を下げる効果があり 水量確保 水槽の掃除は重要です 気温三十 の環境に晒される体重六百五十kgの搾乳牛が 一日当たり三十五kgを泌乳している場合 飲水量は一日当たりの百二十lを必要とします この飲水回数は一日六回以上で 一回当たりの飲水量は五~十五lとなります 飲水にあたっては ウォーターカップの吐出速度は十分であること しかも 水温は摂氏十 程度が良好です 十分な飲水によって牛体温を下げる効果が得られます 水遊びで飼料が濡れると 残滓が生じ生乳生産コストに影響を及ぼします 残滓防止には ウォーターカップの吐水量 高さ 位置など調整して下さい 2飼槽 飼槽は 人間社会で例えれば 食事の際の茶碗に相当します 乳用牛が 飼槽内に凹凸があれば餌が詰まり 腐敗 臭いから摂取量を低下させる原因となります 凹凸修繕には 餌槽レジン 御影石等をもっての施工が有効です 凹凸がある場合は残滓が生じ これまた生乳生産コストに影響を及ぼします 凹凸修繕は 残滓による餌廃棄の点とのコスト面からも早期の修繕をお奨めします 3換気 風速二m/s+冷たい空気 で更に体感温度を下げる効果があります 風力の安定のためにも換気扇の掃除も適宜行って下さい 換気扇フード(今風)を設置すると 風速が約一 五倍になり換気効果が向上します (三千九百九十円(込)/枚)4細霧又はソーカー 牛体を冷やすには気化熱を利用が効果的です 細霧装置は十分連続稼働し 五~二十分後再稼働しましょう 細霧からの湿度上昇を抑える工夫が必要となります 乳用牛は時間当たり千二百kcalの発熱を続けます 気化熱は水一gで〇 五五kcal 二lでは千百kcalの冷却効果が得られます 5その他 すだれ 寒冷紗 グリーンカーテン 毛刈り 屋根への散水 遮熱断熱塗装(ドロマイト)なども暑熱対策には有効です スプリンクラー 灌水チューブを利用しての散水による蒸発熱で屋根表面温度を下げる方法も有効です ドロマイトのカウハッチ塗布も効果があります 遮熱断熱塗装として 無孔質セラミック塗料(クールサーム アドグリーンコート マサコート等)があり これらの耐用年数十年以上とされています 三暑熱時の飼養管理?暑熱時の飼養管理においては カウコンフォートに併せて 次のことに留意した対応が有効となります 1乾物摂取量向上のための飼料の給与方法 新鮮な飼料を多回給与(掃き寄せ回数を増やす)することで乾物摂取量は向上します また 夜間に給与割合を増やし 涼しい時間帯に飼料の給与量を増やす工夫も有効です 乾物摂取量の減少に伴い 栄養要求量を満たすためには 少量で濃度が高い飼料に置き換える事も一考となります 特集夏場の乳成分維持
62ミネラルの給与 発汗 排尿の増量に伴いミネラルの要求量も上がるため 塩 重曹(アシドーシス対策にも)を強化した給与も有効です 3消化の早い粗飼料給与消化の早い粗飼料としては 良質サイレージ 発酵TMRの給与は有効となります 4ビタミン等の給与酸化ストレスの防止には ビタミンE セレンの給与は細胞膜を保護する観点から有効となります 乳脂肪率低下防止の前に乳脂肪生産の基礎を整理!?乳脂肪率低下防止の対策として 牛の生理を踏まえた上での飼養管理やカウコンフォートが重要であることは理解されたものと考えます さて 乳用牛の体内で 乳脂肪の生産はどのように行われているかに触れます 乳脂肪の生産の仕組み?一乳脂肪の五十%がルーメン内の微生物によって生産乳用牛にとっての乳脂肪の生産では ルーメン(第一胃)内の発酵産物である酢酸や酪酸 給与飼料中の脂肪 蓄積体脂肪による影響を受けます 乳脂肪五十%の生産に関与する酢酸 酪酸は 主に繊維 糖の給与によって ルーメン内の微生物により繊維を分解する事で生産されます 反芻 咀嚼により 唾液の供給を受けてpH値は六 〇以上が維持されます また 乳脂肪四十%の生産に関与する飼料中の油脂が不飽和脂肪酸(粕類に多い)であれば ルーメンで繊維を分解する微生物の増殖を抑え乳脂肪率の低下に作用します 脂肪酸の中でもバイパスされる油脂で パルミチン酸が乳脂肪率を上げる結果が報告されています 昨年の農家実証では パルミチン酸を搾乳牛一頭に対して七十五gを給与したところ 乳脂肪率は〇 一五%の上昇が認められました 以下からは 乳脂肪生産のイメージ図 揮発性脂肪酸(VFA)が乳脂肪や乳糖に変化する状況を図1 図2で示しています 二アシドーシス防止には乾物摂取量が高まる飼料の給与が有効!?夏場 粗飼料を摂取しづらい状況においては 必然的に濃厚飼料の給与比率が高くなり VFAの比率が変化 ルーメン内の環境が大きく変化し 乳脂肪の低下を招くことがしばしば発生しアシドーシスを起こす要因となりますので 飼養管理において 乳用牛への乾物摂取量を考慮した飼料の給与が有効となります この飼料として 広酪TMR20 WCS は適当であると自薦し利用を推奨します 乳脂肪率低下防止対策への選択肢?一カウコンフォートを念頭に置いての飼養管理乳用牛の飼養管理において重要なことは 乾物摂取量として体重の三 五% 四%を満たすことにあります この実現には 嗜好性が良く栄養価に富む良質な飼料給与に加えて 嗜好性が向上するよう牛舎内の温度を快適に保つための換気扇の設置などカウコンフォートを念頭においた飼養管理が重要です 万一 夏場において粗飼料の摂取量が低下した場合の対策としては 消化のよい繊維への変更で乾物摂取量を高めることに加えて このケアとして 強肝剤 生菌製剤も有効となります また 重曹(Mg 入りを推奨 バッファー効果) ビート(消化性繊維) 綿実(油脂) 油脂(パルミチン酸)で補填することも手立てとして用い 配合の給与量を減らし 濃度の高いサプリ 油脂を増やす なおかつ 飼料給与順番の変更 多回給餌を行うことは乳脂肪分率の向上に有効です 表 乳脂肪の生産 50% 40% 10% ルーメン発酵産物 ( 揮発性脂肪酸 VFA) の酢酸 酪酸から飼料中の脂肪から蓄積体脂肪から
7 広酪TMR20 WCS 利用は有効!! とりわけ 夏場の乳脂肪率低下防止の飼料として広酪発酵TMRの 広酪TMR20 WCS の利用は有効です 発酵TMRの特徴は 嗜好性が大変よく 発酵品質も消化率の向上を実現し ルーメン内発酵を安定(pHの変化が少ない)させます 併せて 広酪TMR20 WCSは 消化性の高い飼料用稲WCS たちすずか たちあやか を原料に用いて飼料用稲としての乾物量を保証することを考慮した混合としています また 過剰発酵抑制に手を加えたことにより 夏場でも乾物摂取量の低下防止策を講じています この他 開封後一週間を経過しても二次発酵はほとんど発生しないことから乾物摂取量の向上に期待が出来ます 広酪では 乳用牛(搾乳牛)一日一頭当たり三十kg以上の給与量を推奨しています 給与量にもよりますが 昨年の夏場 乳脂肪対策で給与を始めて 一週間以内に 〇 一五%から〇 二〇%の上昇も確認出来ています 昨今 他県からの需要も高まるとともに県内において 今夏からの利用を始める方もあります このような状況にあって 組合員の中からは 製造キャパは大丈夫か との意見もありますが 平成三十年三月より ある程度の量産を見据えて 組合員からの利用需要に応え得るよう労務体制も変更しました 引き続き 安価で良質な安定的な飼料の供給に努めて参りますので 是非ご期待ください 給与事例は 本誌三月号(No 二八八)の十頁 十二頁をご覧下さい 特集夏場の乳成分維持この記事に関する問い合わせは 広酪経営支援課竹ノ内まで電話〇八二四 六四 二〇七七( 図 1) ( 図 2)