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胆嚢粘液嚢腫の犬 5 症例でみられた臨床的特徴と予後 宇野雄博 1,4) 片桐麻紀子 中西淳 今西晶子 藤田桂一 2) 山村穂積 3,4) 酒井健夫 4) 宇野動物病院 ( 愛媛県四国中央市金生町山田井 181-3 799-0112) 2) フジタ動物病院 ( 埼玉県上尾市春日 1-2-53 362-0037) 3)PetClinicアニホス ( 東京都板橋区南常盤台 1-14-11 174-0072) 4) 日本大学生物資源科学部 ( 神奈川県藤沢市亀井野 1866 252-0813) ClinicalFeaturesandthePrognosisObservedinFiveDogswith GallbladderMucoceles TakehiroUNO 1,4), MakikoKATAGIRI, JunNAKANISHI, AkikoIMANISHI, KeiichiFUJITA 2), HozumiYAMAMURA 3,4), TakeoSAKAI 4) Uno Animal Hospital, 181-3 Yamadai,Kinsei-cho, Shikokuchuo-shi, Ehime 799-0112, Japan 2) Fujita Animal Hospital, 1-2-53, Kasuga, Ageo-shi, Saitama 362-0037, Japan 3) Pet Clinic Anihos, 1-14-11, Minamitokiwadai, Itabashiku, Tokyo 174-0072, Japan 4) Department of Preventive Veterinary Medicine and Animal Health, College of Bioresource Sciences, Nihon University, 1866, Kameino, Fujisawa-shi, Kanagawa 252-0813, Japan Received 11 September 2006 / Accepted 23 February 2007 SUMMARY:Wereportfivedogswithjaundicethatweretreatedbycholecystectomy.Fourofthem,Cases1to4,were suspectedofhavingagallbladdermucocele(gm)byultrasonographybeforethesurgery.theotherdog,case5,was foundtohavearupturedgmduringthesurgery;thepositionofthegallbladderhadnotbeenlocatedbypreoperative ultrasonography.inalldogsexceptcase3,necrosiswithorwithoutnecroticperforationwasseenatthegallbladderwall orneck.theyoungerdogs,case4andcase5survived,buttheotherthreeover12yearsdiedaftersurgery.therewas nocorrelationbetweentheirprognosesandtheabnormalvaluesofalkalinephosphatase,totalbilirubin,oricterusindex levelsmeasuredatthefirstvisit.theseresultssuggestedthatsurgicalinterventionshouldbedoneimmediatelyafter characteristicimagesofgmarerecognizedonultrasonography. KEYWORDS:dog,gallbladdermucocele,ultrasonography (J Anim Clin Med,16(15-20,2007) 要約 : 黄疸を発現して来院し, 超音波検査で胆嚢粘液嚢腫 ( 以下 GM) を疑い開腹手術を実施し, 胆嚢を摘出した犬 4 例と, 超音波検査で胆嚢が認められず開腹手術によって GM を確認し胆嚢を摘出した 1 例, 合計 5 例の各種臨床検査所見および予後について検討した 主訴では全例に元気食欲の低下または廃絶と嘔吐が, 身体検査では可視粘膜に黄疸がみられた 手術時に認めた胆嚢壁の壊死 1 例, 壊死穿孔 2 例, 破裂 1 例のうち, 壊死穿孔の 1 例と壊死 1 例は術前に腹部超音波検査で診断できなかった アルカリフォスファターゼ, 総ビリルビン, 黄疸指数の異常の程度と予後に関連はみられな

かった 5 例のうち年齢が7 歳と 10 歳 9 カ月の 2 例は術後経過良好であり, 術後死亡した 3 例は 2 頭が 12 歳,1 頭が 14 歳と高齢であった 今回の結果から, 腹部超音波検査で胆嚢内に GM に特徴的な不動性内容物の充満所見が認められた場合は, できるだけ早期に, 特に黄疸が発現する前に外科的治療をする必要があると考えられた キーワード : 犬, 胆嚢粘液嚢腫, 超音波検査 ( 動物臨床医学 16(15-20,2007) はじめに胆嚢粘液嚢腫 (Gallbladdermucocele 以下 GM) は, 従来は胆嚢炎や壊死性胆嚢炎が原因であると考えられていた [1-3] が, 最近では非炎症性の胆嚢管の閉塞が原因で, 結果として胆嚢の粘液分泌腺の過形成が生じ, そのために胆嚢内に異常な粘液の蓄積が起きるとされている [1-3] しかし, 詳細な発症のメカニズムは不明である GM の組織学的な特徴は, 胆嚢粘膜における粘液分泌腺の過形成と胆嚢内の過剰な粘液の貯留であり [2], 胆汁を含んだ粘液が胆嚢管や肝管および総胆管に広がってさまざまな程度の肝外性胆汁うっ滞を生じるとされている [2] 本症の進行例では, 胆嚢内に形成されたゼラチン様の半固形の粘液塊による胆嚢の拡張と, 内側からの圧迫により胆嚢の壊死が生じる GM で認められる胆嚢内に充満した粘液塊は, 利胆剤などの薬剤で胆嚢から排出できるとは考え難い [2,3] これまでのところ, 本症が診断された場合, 臨床症状がみられず, 超音波検査で胆嚢の壊死や破裂が認められなければ, 注意深く経過を観察する また臨床症状がみられ, 胆嚢破裂が認められる場合には緊急の手術が必要であるとされているが, 周術期の死亡率は約 20 50% と高い [2-4] 今回, 臨床症状と腹部超音波検査を含む臨床検査所見から GM を疑い, 開腹手術を実施して胆嚢を摘出した4 症例と, 超音波検査で胆嚢が認められず開腹手術によってGMを確認し胆嚢を摘出した1 例, 合計 5 例の各種検査所見や予後について比較検討したところ, 若干の知見を得たので報告する 材料および方法材料 : 腹部超音波検査により, 胆嚢内に低エコー部と細かい層状や放射状のエコー源性を示す部分のある,GM に特徴的 [4] とされる不動性内容物の充満所見と試験開腹によって肉眼的に胆嚢内の粘液塊を確認した 4 例と, 腹部超音波検査で胆嚢は認められなかったが試験開腹によって腹腔に胆嚢内の粘液塊の脱出を認めた 1 例の合計 5 例を対象とした 方法 : 症例の犬種, 年齢, 性別, 主訴, 臨床症状および身体検査所見, 腹部超音波検査所見, 血液および血液化学検査所見, 術式と手術時の肉眼所見, 胆嚢内容物の細菌学的検査所見および胆嚢の組織学的検査所見について検討した 手術は胆嚢摘出術を実施し, 同時に総胆管 の疎通性を確保する目的で胆嚢側または十二指腸切開による大十二指腸乳頭側からのカテーテルによる洗浄を行った 成績犬種はシェットランド シープドッグ 2 例, ポメラニアン 1 例, マルチーズ 1 例, 雑種犬 1 例であった 5 例の年齢は 7 14 歳で平均年齢は 11 歳 2 カ月であった 性別は雄 3 例, 雌 2 例でいずれの症例も去勢 避妊手術は行われていなかった (Table 主訴および臨床症状では, 全例で元気消失と食欲の廃絶および嘔吐がみられ, その中の 2 例 (No.4,5) では嘔吐が頻回に認められた また,2 例 (No.1,2) で浅速呼吸がみられた 身体検査では,5 例全てに可視粘膜の黄疸,4 例 (No.1, 3,4,5) に股動脈圧の低下,2 例 (No.3,4) に上腹部の圧痛,2 例 (No.2,4) に39.5 以上の発熱が認められた また,1 例 (No. で血栓による塞栓症と思われる両前肢の温度低下と硬直および爪のチアノーゼが認められた 初診時の血液一般検査では,5 例全てに 18,000/μ 以上 (19,400 60,100/μ) の総白血球数の増加がみられた 血液化学検査では, 血清アスパラギン酸転移酵素 (AST) は測定した 3 例中 2 例で 208 538U/( 基準範囲 :0 50U/) と増加, 血清アラニンアミノトランスフェラーゼ (ALT) は測定した5 例中 4 例で 141 > 1,000U/( 基準値 :10 100U/) と増加, 血清アルカリフォスファターゼ (ALP) は測定した5 例全てが284 17,850U/( 基準範囲 :23 212U/) と増加していた 血清総ビリルビン (Tbil) の増加または黄疸指数 (II) の増加は全例で認められた 血中アンモニア (NH3) は4 例で測定し,87 178 μmol/( 基準範囲 : 0 98μmol/) であった (Table2) 腹部超音波検査所見 :5 例中 3 例 (No.1,2,3) は過去の腹部超音波検査歴があった No.1は8カ月前に下痢と嘔吐を主訴に来院した時に,No.2 は 1 カ月前に No.3 は 1 年 6カ月前にそれぞれ健康診断で来院した時に, 腹部超音波検査で胆嚢内に内部が高エコーで周辺部が低エコーな内容物を認めた 今回, 胆嚢破裂を生じていたNo.5の 1 例は, 胆嚢を確認出来なかった 他の4 例は胆嚢の拡張と胆嚢内容物の充満が認められた 胆嚢内容物の超音波所見は,4 例中 3 例 (No.1,2,3) で中心部分が高エコーで周辺部分が低エコーのキウイフルーツ様または星状の

パターンを示し,1 例 (No.4) の胆嚢内容物は全体に高エコーで胆嚢粘膜に沿って低エコー部が認められた 胆嚢を確認できた4 例のうち, 胆嚢壁が正常な犬の胆嚢壁の厚さである2.5mm[3] 以上に明らかに肥厚したものはなかった 胆嚢壁の外側に液体の存在を示唆する無エコー領域が 1 例 (No.2), 腹水が 1 例 (No.5) 認められた 術前の処置と経過 : 全ての症例に対し, 受診直後から静脈内輸液と抗生物質の投与を開始した No.1,2,3 に対する抗生物質はセファゾリンナトリウム ( 注射用タイセゾリン, 大洋薬品, 名古屋 )(20mg/kg,IV,bid) とオルビフロキサシン ( ビクタスS 注射液 50%, 大日本住友製薬, 大阪 )(5mg/kg,SC,sid) を併用し,No.4,5はセファゾリンナトリウムのみ投与した 発熱または腹部の圧痛を認めたNo.2,3ではメロキシカム ( メタカム0.5% 注射液, メリアルジャパン, 東京 ) を投与した また,No.2, 3,4,5 にフィトナジオン ( カチーフ N, 日本製薬, 東京 ) (2.5mg/kg,SC,bid) を投与した No.1 は前肢の血栓塞栓症が疑われたことから, 受診後直ちにヘパリンナトリウム ( ヘパリンナトリウム注 N, 清水製薬, 静岡 )(100 mg/kg,iv) を投与し, 飼い主の希望により開腹手術を実施した No.1,2,3 は受診当日に,No.4 は受診から 2 日後,No.5 は 3 日後に開腹手術を実施した 術式および手術時所見 :5 例全てに胆嚢摘出術を実施した 4 例 (No.1-4) では先ず初めに胆嚢底部を切開し, 内容物を除去したのち胆嚢内および総胆管内を充分に生理食塩液で洗浄した No.1は胆嚢側からカテーテルにより総胆管の洗浄を繰り返し, 十二指腸への疎通を確認した 胆嚢側から総胆管へのカテーテルの挿入がスムーズでない場合や, 胆嚢や胆嚢頸部の肉眼所見からカテーテルの挿入による穿孔の危険があると判断した4 例 (No.2,3, 4,5) は十二指腸切開術により十二指腸側からも総胆管にカテーテルを挿入し, 総胆管を十分に洗浄した 手術時

に胆嚢または胆嚢頸部の壊死が 4 例 (No.1,2,4,5) に認められた No.5は開腹時すでに胆嚢は広範囲に壊死を呈し, 大きく破裂し, 鶏卵大で帯緑褐色の粘液塊が胆嚢を鋳型とした形のまま腹腔内に脱出し, 帯緑黄色の多量の腹水が貯留し, 大網膜や腹腔内臓器の表面に肉眼的な炎症が認められた 2 例 (No.1,2) は胆嚢壁の壊死による小さな穿孔部分から胆嚢内容物が腹腔内に漏出し, 少量の腹水が貯留していた No.4は胆嚢頸部が壊死していて, 手術中容易に穿孔した (Table3) 胆嚢内部の超音波所見と摘出した胆嚢内容物を,No.5 を除く 4 例で比較したところ, 中心部分の高エコーな領域は濃縮胆汁を主成分とすると思われる黒緑色を呈し, 外側の低エコーな領域は粘液を主成分としてゼラチン様を呈していた 低エコーな領域は No.3,1,2,4 の順に明瞭かつ広範囲であり, 肉眼的な粘液の蓄積量と関連性がみられた (Fig.1-3) 細菌学的検査所見 :3 例 (No.1,2,3) で胆嚢内容物の細菌学的検査を実施したが, 好気性培養と嫌気性培養のいずれも細菌は分離されなかった 病理組織検査所見 :5 例中 4 例 (No.2,3,4,5) で胆嚢の病理組織検査を実施した 2 例 (No.4,5) に胆嚢壁の壊死,3 例 (No.2,3,4) に胆嚢粘膜上皮の過形成ならびに粘液産生の亢進, そして 4 例全てに慢性胆嚢炎が認められた 術後の処置 : 各症例で術前からの輸液, 抗生物質, フィトナジオンの投与を継続した 経過良好で食欲が出現し

た2 例 (No.4,5) は, 黄疸が消失し,ALT,ALP が正常範囲内に低下するまで, ウルソデオキシコール酸 ( ウルソ, 東京田辺, 東京 )(5mg/kg,PO,bid) を投与した 術後経過 :2 例 (No.4,5) は術後経過良好で, 術後 2 年間に手術による合併症は認められなかった 3 例 (No.1,2,3) は術後短期間に死亡した No.1は肝酵素値の著増と高ビリルビン血症, および前肢の血栓塞栓症が認められ, 術後 3 時間で死亡した No.2 は術前から T- bil(18.0mg/ ) と NH3(178.0 μmol/) が著増し浅速呼吸を呈していた 術後に抗生物質とフィトナジオンに加え, 重炭酸ナトリウムと10% 濃度にブドウ糖を加えた酢酸リンゲル液の投与を行なった しかし, 手術翌日の血糖値は 56mg/ と低く, 血液ガス分析で ph7.14 とアシドーシスが認められ, 浅速呼吸が持続したまま術後約 30 時間で死亡した No.3 は術後 2 日目にはやや元気が出現し, 術後 6 日目にはALT(424.0U/) とTbil(1.77 mg/ ) および NH3(17.0 μmol/) が低下した しかし, 術前に正常範囲であった BUN(23.6mg/ ) とクレアチニン (1.67mg/ ) が, 術後は徐々に増加し,3 日目以後は塩酸ドパミン ( イノバン, 協和醗酵, 東京 )(5/ kg/min) の投与を継続したものの, 乏尿となり術後 6 日目には BUN(171.5mg/ ) とクレアチニン (11.08mg/ ) が増加し, 術後 6 日目に死亡した 死亡した 3 例は剖検できなかった 考 察 超音波診断装置の普及と性能の向上によって, 犬の胆嚢疾患を診断する機会は増加しており,GM の症例に遭遇する機会も増えている [6] 今回の5 症例の主訴と臨床症状では, 全例に共通して元気食欲の低下または廃絶と, 嘔吐および黄疸がみられた これらの個々の症状は非特異的なものであるが,GM の犬で嘔吐と嗜眠が87%, 食欲不振が79% にみられたとする Pike らの報告 [2] とほぼ一致していた 血液化学検査では, 測定した全例でALPの増加と黄疸が認められたが,ALP や Tbil および黄疸指数 (II) の異常の程度と, 予後の間に関連がみられなかったことから, これらの血液検査の項目だけでは GM の犬の病態を充分には把握できないことが推測された 腹部超音波検査で胆嚢の外側周囲に無エコー領域を認めた 1 例 (No.2) と, 腹水が認められた 1 例 (No.5) では, 手術時に胆嚢の壊死と穿孔が認められた しかし, 術前の超音波検査で胆嚢壁と胆嚢周囲に異常を認めなかった2 例 (No1,4) でも胆嚢や胆嚢頸部の壊死が術中に確認された このことは, 胆嚢破裂に対する超音波検査の感度がヒトで約 70%[3], 犬で Pike らの 85%[2] とする報告があるように, 胆嚢の穿孔によって胆嚢周囲に液体が貯留するまでは, 超音波検査で胆嚢壁の壊死を確実に評価することが困難なことを示唆している

術後経過の良好な 2 例と死亡例 3 例を比較すると, 経過良好な 2 例の年齢は 7 歳と 10 歳 9 カ月であったが, 死亡した3 例は2 頭が 12 歳,1 頭が 14 歳で死亡例は全て生存例よりも高齢であった また, 死亡例の 3 例は, 過去に超音波検査で胆嚢内に GM を示唆する不動性の内容物の充満が観察されていたが, その後も明らかな臨床症状を示さなかったことから手術を実施しないまま,3 例ともに急激な症状を発現するに到った 現在のところ, 無症状の GM は注意して経過を観察するのが適当である [1,3] とされている GMの周術期における死亡率は (20-50%)[2-4] とされるが,Pike ら [2] の犬の GM30 例では,7 例は臨床症状が無く, 手術した残りの23 例のうち黄疸が認められたものは13 例であった Worleyら [3] の報告では22 例のうち7 例が死亡しているが, 黄疸が認められたものは22 例中 9 例であった また, Besso ら [4] の報告では 14 例のうち 13 例で ALP と Tbli の異常を認め,2 例は術前に死亡し, 手術した 10 例中 5 例も死亡している これらの報告から, 黄疸のない GM の術後の死亡率は黄疸がある GM に比べて低いことが推察された 今回の 5 例の死亡率が 60% と高かった理由として, 全例で黄疸と肝酵素の異常が認められるなど, 症例の病態が重篤であったことと, 高齢であったことが推察される 死亡した 3 例の剖検は実施していないことから,No.1 とNo.2 の死因は明らかではない No.3 の主な死因は腎機能不全と推察された 今回の症例から GM により胆汁うっ帯が生じている場合は早期に外科的治療が必要であり, 無症状の GM の場合にも将来胆嚢の壊死や穿孔という緊急な事態が生じる時期を予測し難く, また GM に伴う症状を発現した動物ではしばしば慢性的な肝疾患の進行や高齢化により外科手術の危険性が高まっていることを考慮する必要があると思われた 今回の 5 例では,11 歳未満の犬 2 例の術後経過は良好であったが,12 歳以上の比較的高齢な犬は術後経過が不良であったことから, 高齢犬の GM は慎重に対処する必要があると考えられた 今回死亡した 3 例は来院時すでに一般状態が悪化して いたため,GM と仮診断後は救命のために飼い主の了解を得て直ちに手術を実施した そのため術前検査による病態の正確な把握が不十分となり, 死亡した 3 例の手術はすでに手後れであったことも推察される したがって, 黄疸が認められる GM は術前に肝機能障害の程度や DIC および腎機能障害の有無といった症例の病態の把握に努め, 慎重に治療方針を選択する必要があると考えられた 元気食欲の低下や嘔吐といった臨床症状が認められたり, 血液化学検査で ALT や ALP といった肝酵素値の異常が認められる GM に対し, 今後は黄疸が発現する前に外科的介入を考慮したい 引用文献 NewellS.M.,SelcerB.A.,MahaffeyM.B.,GrayM.L., JamesonP.H.,CorneliusL.M.,DownsM.O.:Gallbladdermucocelecausingbiliaryobstructionintwodogs. JAmAnimHospAssoc,31,467-472(1995) 2)PikeF.S.,BergJ.,KingN.W.,PenninckD.G.,Webster L.R.:Gallbladdermucoceleindogs:30cases(2000-2002).JAmVetMedAssoc,224,1615-1622(2004) 3)WorleyD.R.,HottingerH.A.,LawrenceH.J.:Surgical managementofgallbladdermucocelesindogs:22cases (1999-2003).JAmVetMedAssoc,225,1418-1422 (2004) 4)BessoJ.G.,WrigleyR.H.,GliattoJ.M.,WebsterC.R.: Ultrasonographicappearanceandclinicalfindingsin 14dogswithgallbladdermucocele.VetRadiolUltrasound,41,261-271(2000) 5)BromelC.,BarthezP.Y.,LeveilleR.,ScrivaniP.V.:Prevalenceofgallbladdersludgeindogsasassessedbyultrasonography.VetRadioUltrasound,39,206-210 (1998) 6)BillerD.S.,GogginJ.M.,KraftS.L.,HoskinJ.J.,:Diagnosticimagingofbiliaryobstruction.CompContEd VetPract,20,1225-1228(1998)