日本人の食事摂取基準と運動指針 日本人の食事摂取基準 (2010 年版 ) とは? (Dietary reference intakes; DRIs) 平成 22 年度 ~ 平成 26 年度の 5 年間 国民の健康の維持 増進 生活習慣病の予防を目的とし エネルギー及び各栄養素の摂取量の基準を示すもの 対象者 : 健康な個人または集団 ただし 何らかの軽度な疾患 ( 例えば 高血圧 高脂血症 高血糖 ) を有していても自由な日常生活を営み 当該疾患に特有の食事指導 食事療法 食事制限が適用されたり 推奨されたりしていないものも含む 摂取源 : 食事として経口摂取されるものに含まれるエネルギーと栄養素 摂取期間 : 習慣的 1 日当たりを単位として示した 2010 年版は 2005 年版の考え方を踏襲し 科学的根拠 (evidence) に基づいて策定された 総数 1244( 学術論文 ガイドライン 報告書等 ) 科学的根拠に基づいた栄養学 =EBN(Evidence-Based Nutrition) そして 現在は 2015 年版!!
日本人の食事摂取基準 (2015 年版 ) について 策定の目的 日本人の食事摂取基準は 健康増進法 ( 平成 14 年法律第 103 号 ) 第 30 条の 2 に基づき厚生労働大臣が定めるものとされ 国民の健康の保持 増進を図る上で摂取することが望ましいエネルギーと栄養素の量の基準を示すものである エネルギーならびに栄養素摂取の多少に起因する健康障害の回避欠乏症または不足 過剰症 適切な栄養素摂取量による生活習慣病の発症予防と重症化予防 使用期間 平成 27(2015) 年度から平成 31(2019) 年度の 5 年間 改定作業 平成 25 年 2 月に 日本人の食事摂取基準 (2015 年版 ) 策定検討会を立ち上げ 改定に向けた検討を重ね 3 月 28 日に検討会報告書をとりまとめた 平成 26 年度中に 検討会報告書をもとに 平成 27 年度から使用する食事摂取基準について大臣告示を行う予定
食事摂取基準策定の考え方 1. 健康の維持 増進のための基準を作る エネルギーならびに栄養素摂取量の多少に起因する健康障害の回避 欠乏症または不足過剰 適切な栄養素摂取量による生活習慣病の予防 2. 真の 望ましい摂取量は不明なので確率論で考える 真の 適切な摂取量は個人によって異なっており算定することもできない という基盤に立って 確率論的な考え方を取り入れる 個人または集団が適切な摂取をしているかどうかの可能性を図るための指標 不足 過剰の問題がないか どのくらいの値( 範囲 ) が一番健康を維持するか の値 = 基準
ポイント 1 1. 目的は健康でいる 健康になる ことである食事の栄養価を計算して 食事摂取基準にあった献立を作ることや 食事摂取基準にあった食事を食べてもらうことは 目標への道のりであって 最終目的地ではない!! 2. 毎日その量を食べるではなく 平均すれば食べている習慣的な摂取量の基準であるので 多い日や少ない日があっても構わない 3. 自分にちょうどいい量は ひとりひとり違う食事摂取基準は 栄養素が足りているかどうかの可能性や 日本人の平均的な値を 推定して計算して出したものなので 表の値があなたにちょうど合っているかどうかはわからない ( 食べてみないとわからない )
食事摂取基準は 複数の基準の総称 栄養素 (34 種類 ) EAR(estimated average requirement) (5つ) 推定平均必要量 RDA(recommended dietary allowance) 推奨量 AI(adequate intake) 目安量 UL(tolerable upper intake level) 耐容上限量 DG(tentative dietary goal for preventing) 目標量 エネルギーは BMI を指標とする 参考値として EER( 推定エネルギー必要量 ) を使用する
推定平均必要量 (EAR) と推奨量 (RDA) EAR と RDA を決められるのは 不足 ( 充足 ) の状態を客観的に測定することが可能な生体指標が存在し 人為的に不足 ( 充足 ) を作りえる栄養素だけ よく研究されている
基準改定の採択方針 基準改定の採択方針を明確に記述した 推定平均必要量 (estimated average requirement:ear) 従来 推定平均必要量が設定できなかった栄養素において 十分な科学的根拠が得られた場合には 新たに推定平均必要量を設定する 推定平均必要量の算定において 身体的エンドポイントを変更した場合には その根拠に基づき推定平均必要量の値を変更する 参照体位の変更に伴い 必要に応じて推定平均必要量の値を変更する 推奨量 (recommended dietary allowance:rda) 推定平均必要量を新たに設定した場合又は推定平均必要量を変更した場合は 推奨量を新たに設定又は推奨量の値を変更する 変動係数を変更した場合には 推奨量を変更する 変動係数の変更に必要な条件 変動係数の変更が必要と判断される明確な根拠が得られる場合 推奨量 = 推定平均必要量 (1+2 変動係数 ) = 推定平均必要量 推奨量換算係数
目安量 (AI) EAR が求められない栄養素については AI として基準を示す 研究 ( 科学的根拠 ) が不十分
基準改定の採択方針 目安量 (adequate intake:ai) 栄養素の不足状態を示す人がほとんど存在しない集団で 日本人の 代表的な栄養素摂取量の分布が得られる場合は その中央値とする この場合 複数の報告において 最も摂取量が少ない集団の中央値を用いることが望ましい また 目安量の策定に当たっては 栄養素の不足状態を示さない 十分な量 の程度に留意する必要があることから その取扱いは以下のとおりとする 1 他国の食事摂取基準や国際的なガイドライン 調査データ等を参考に判断できる場合には 中央値にこだわらず 適切な値を選択する 2 得られる日本人の代表的な栄養素摂取量のデータが限定的かつ参考となる情報が限定的で 十分な量 の程度の判断が困難な場合には そのことを記述の上 得られるデータの中央値を選択しても差し支えない
耐容上限量 (UL)
基準改定の採択方針 耐容上限量 (tolerable upper intake level:ul) 十分な科学的根拠が得られた場合には 新たに耐容上限量を設定する 新たな知見により 健康障害発現量を見直す必要が生じた場合には 耐容上限量を変更する 不確実性要因の決定において変更が必要な知見が新たに得られた場合には 不確実性因子 (UF) を変更する ヒトを対象として通常の食品を摂取した報告に基づく場合 UL = NOAEL UF(UF には 1 から 5 の範囲で適当な値を用いた ) ヒトを対象としてサプリメントを摂取した報告に基づく場合 又は 動物実験や in viro の実験に基づく場合 UL = LOAEL UF(UF には 10 を用いた )
まとめ 1. お勧めできる摂取量には幅があるため 一つの値に囚われなくてもよい個人の必要量がわかれば その量を食べてもらえばよい わからない場合には推奨量 目安量を目指す 必要量より多く食べていても耐容上限量まで幅があれば通常は問題ない ただし 多ければ多いほど良いことがあるわけではない 2. 通常の食事では耐容上限量はほとんど気にしなくてよい耐容上限量は超えないように必ず注意すべき指標ではあるが 一般の食事ではそれを上回る量を習慣的に摂取することは困難 サプリメントの摂取や特殊な食生活の時には要注意 たまに 超える日があっても問題にはならない 3. 目標量は無理せず 食習慣としてなじむことを目指す数年から数十年の摂取量が生活習慣病予防に影響する 注意して食べるよう努力する ではなく からだになじんだ食習慣にする ことが大切
策定した食事摂取基準 (1 歳以上 ) 1 ビタミン 脂質 炭水化物 栄養素 推定平均必要量 (EAR) 推奨量 (RDA) 目安量 (AI) 耐容上限量 (UL) 目標量 (DG) たんぱく質 2 脂質 2 飽和脂肪酸 n-6 系脂肪酸 n-3 系脂肪酸 炭水化物 2 食物繊維 エネルギー産生栄養素バランス 2 脂溶性 水溶性 ビタミン A ビタミン D ビタミン E ビタミン K ビタミン B 1 ビタミン B 2 ナイアシン ビタミン B 6 ビタミン B 12 葉酸 3 パントテン酸 ビオチン ビタミン C 1 一部の年齢階級についてだけ設定した場合も含む 2 たんぱく質 脂質 炭水化物 ( アルコール含む ) が 総エネルギー摂取量に占めるべき割合 (% エネルギー ) 3 通常の食品以外からの摂取について定めた
ミネラル 栄養素 多量 微量 推定平均必要量 (EAR) 推奨量 (RDA) 目安量 (AI) 耐容上限量 (UL) 目標量 (DG) ナトリウム カリウム カルシウム マグネシウム 3 リン 鉄 亜鉛 銅 マンガン ヨウ素 セレン クロム モリブデン 3 通常の食品以外からの摂取について定めた