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水防法改正の概要 (H 公布 H 一部施行 ) 国土交通省 HP 1

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学識経験者による評価の反映客観性を確保するために 学識経験者から学術的な観点からの評価をいただき これを反映する 評価は 中立性を確保するために日本学術会議に依頼した 詳細は別紙 -2 のとおり : 現時点の検証の進め方であり 検証作業が進む中で変更することがあり得る - 2 -

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目 次 桂川本川 桂川 ( 上 ) 雑水川 七谷川 犬飼川 法貴谷川 千々川 東所川 園部川 天神川 陣田川

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東日本大震災における施設の被災 3 東北地方太平洋沖地震の浸水範囲とハザードマップの比較 4

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相模川直轄河川改修事業 目次 1. 流域の概要 1 2. 事業の必要性 2 3. 事業の概要 5 4. 費用対効果の分析 コスト縮減の取り組み 再評価の視点 再評価における県への意見聴取 今後の対応方針 ( 原案 ) 15

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資料4 検討対象水域の水質予測結果について

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M&A研究会報告2009

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部分供給については 例えば 以下の3パターンが考えられる ( 別紙 1 参照 ) パターン1: 区域において一般電気事業者であった小売電気事業者 ( 又は他の小売電気事業者 ) が一定量のベース供給を行い 他の小売電気事業者 ( 又は区域において一般電気事業者であった小売電気事業者 ) がを行う供給

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5-2 居住誘導区域の設定 居住誘導の基本方針を踏まえ 以下の居住誘導区域の設定の考え方に基づき 居住誘導区域を設 定します 居住誘導区域の設定の考え方 (1) 居住誘導区域に含めるエリア 居住誘導区域に含めないエリア 居住誘導区域に含めるエリア 1 都市機能誘導区域 居住誘導区域に含めないエリア

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Ⅱ. 法第 3 条の 2 等の適用についての考え方 1. 法第 3 条の2 第 1 項の考え方について本条は 購入者等が訪問販売に係る売買契約等についての勧誘を受けるか否かという意思の自由を担保することを目的とするものであり まず法第 3 条の 2 第 1 項においては 訪問販売における事業者の強引

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荒川高規格堤防整備事業 ( 小松川地区 ) 再評価資料 目 次 1. 事業の概要 1 2. 事業の見直し 4 3. 対象地区について 6 4. 荒川 ( 下流域 ) の概要 7 5. 小松川地区の概要 事業の進捗状況 平成 23 年度事業内容 ( 予定 ) 費用対

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Q3 現在の川幅で 源泉に影響を与えないように河床を掘削し さらに堤防を幅の小さいパラペット ( 胸壁 ) で嵩上げするなどの河道改修を行えないのですか? A3 河床掘削やパラペット ( 胸壁 ) による堤防嵩上げは技術的 制度的に困難です [ 河床掘削について ] 県では 温泉旅館の廃業補償を行っ

Transcription:

費用対効果 6.26 のからくりを解く ~ 水増しされた八ッ場ダムの治水便益 ~ 八ッ場ダムをストップさせる東京の会文責 : 梶原健嗣 (212.12.14) 一部追記 214.6.9 1 月 6 日 関東地方整備局から八ッ場ダム計画の再検証作業につき 報告書 素案が示されました ( 八ッ場ダム建設事業の検証に係る報告書 素案 以下 報告書 ) 報告書 は全部で 317 ページにも及ぶ膨大なものですが 費用対効果に関わる部分はたった 7 ページに過ぎません 費用対効果は 事業の投資効率を意味しますから 事業評価においては 本来最も重要な評価項目のはずです この検証の出発点であり 検証の指針となるはずの 今後の治水のあり方中間取りまとめ (H22.9) でも 財政的制約の下では 事業のコスト低減とともに できる限り高い投資効果 (p4) が求められるという認識を掲げ その認識の下 できるだけダムによらない治水への政策転換を志向しています だからこそ 検証においては コストと事業効果を重視 (p15) すると述べているのです また 検証に当たっては 科学的合理性 地域間の利害の衡平性 透明性が確保され 結果について十分な説明がされることが重要 (p14) と述べています とすれば この 中間取りまとめ に基づく 報告書 は 1 科学的合理性を有する 2 費用対効果分析を中心に記述するだけでなく 検証結果の過程を明らかにして 検証の 3 透明性を確保することが必要なのです ところが 肝心の費用対効果分析はわずか 7 ページの記述に過ぎません では その 7 ページに何が書かれているのでしょうか 書かれているのは 1 洪水調節便益について (3 ページ ) 2 流水の正常な機能の維持に係る便益について (2 ページ ) 3 結論 (2 ページ ) です このうち 結論については 下記の数値が示され 費用対効果は 6.3 と算 出されました ちなみに 八ッ場ダムの費用対効果分析は今回はじめて算出されたものではなく 過去に 2 回算定がされています 最初は H19 (27) 年に行われ 算定値は 2.9 でした (H19.2.24) 次は H21(29) 年で算定値は 3.4(H21.2.24) でした 費用対効果は算定のたびにあがって 3 回目の今回の数値は最初の数値の 2 倍以上になりました 八ッ場ダムの費用対効果 ( 費用便益比 ) (211) 便益 洪水調節便益 ( 治水便益 ) 流水の正常な機能の維持 残存価値 費用 建設費 維持管理費 21,925 億円 139 億円 1 億円 22,163 億円 3,417 億円 86 億円 3,54 億円 注 四捨五入の関係で端数が一致しない 追記 214.6.9 その後 213 年 11 月にダム工期を 4 年延長し 完成年度を 219 年度とする基本計画が改定されるに及び 事業者 国土交通省関東地方整備局は事業評価をやり直し 費用便益比 6.5 とする事業評価を示しています (213.12.9 http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/cont ent/89325.pdf) もっとも 数字が変わっただけで 便益計算の問題点は同じ ( マニュアルに起因 ) ですので 新数値は参考にとどめる程度の修正にしておきます 1

八ッ場ダムの費用対効果 ( 費用便益比 ) (213) 便益 洪水調節便益 ( 治水便益 ) 流水の正常な機能の維持 残存価値 費用 建設費 維持管理費 23,926 億円 139 億円 11 億円 24,166 億円 3,63 億円 91 億円 3,694 億円 注 四捨五入の関係で端数が一致しない 今回の 報告書 においては 便益計算の考え方 計算の流れが簡単に示されているだけで 計算過程を検討するための資料は一切ありません だからわずか 7 ページなのです これでは 便益 22,163 億円に対し 費用 3,54 億円です みなさんも電卓たたいて 割り算が 6.3 になることを確かめて下さい と言っているに等しい代物です 繰り返しますが 費用対効果は事業の投資効率を示す評価項目であり 検証の出発点 指針 中間取りまとめ からすれば 最も詳細に記されなければならない項目なのです そこで 私たちは費用対効果の算定過程につき 情報公開請求を行いましたが 費用対効果という最重要資料が こうした手間と時間をかけないと入手できないということ自体が本当はおかしいと思います 入手した資料はたくさんの図表が掲載された総計 14 4 ページの資料であり 到底私たちの情報公開請求に応じて 2 週間で作ったものとは思えません つまり 報告書 を取りまとめる時点から存在していたことは明らかと思います だとすれば 費用対効果という事業検討の最重要項目を わずか 7 ページで済ませることなく この公開資料を適宜抜粋 要約し どういう計算を経て 6.3 という費用対効果が算出されたのか 最初から明らかにすべきでした それが行政の透明性 説明責任であり 中間とリまとめ の要請でしょう 以下 入手した情報公開請求資料に基づきわかった費用対効果計算のからくりを解き明かしていきますが 分析対象は洪水調節に係る便益の分析に限定します それは 前頁に示した費用 便益を見ればわかるよう に 八ッ場ダムの便益の圧倒的中心はこの洪水調節便益に関する部分だからです 冒頭に示したように 洪水調節便益は 21, 925 億円と算出されました この便益は 八ッ場ダム建設後 ( 報告書 では 平成 3(2 18) 年としています ) から 5 年間における便益の総計値です この 21,925 億円という便益は 年平均被害軽減期待額を算定し それを現在価値化して積み上げた数値です 現在価値化の基準年は 報告書 作成時の H23(211) 年です つまり 年平均被害軽減期待額というのは 洪水調節便益の原単位に相当し あとは現在価値化 累積という単純計算で 5 年間の総便益 21,925 億円が算出されるという訳です 年平均被害軽減期待額 という言葉は 意味がわかりにくいと思います これは 言葉の意味を解析してみるとわかりやすいと思います 年平均被害軽減期待額 ( 洪水調節便益の原単位 ) 年 原単位平均 サンプル8 洪水のシミュレーションにおける平均値 ( 算定の精度を上げる ) 被害軽減 ダムなし時の洪水被害額とダム建設後の洪水被害額の差を 洪水調節便益とする 期待額 計算上の理論値 1 年あたりの洪水被害軽減額が 理論上 平均していくらになるか 言葉の意味は 上に解説した通りで 1 年当たりの洪水被害軽減額は 理論上 平均していくらになるか ということで 報告書 ではこの数値を 1,343 億円と算出しています ちなみに 1,343 億円を単純に 5 倍しても 21,925 億円にはなりません それは計算過程に現在価値化が入っているからです この点は 割引計算といって経済学のテクニカルな話になりますので省略します 以上のように 八ッ場ダムの費用対効果 6. 3 という算定値の妥当性は 結局のところ 中心便益となる洪水調節便益の原単位 ( 年平均被害軽減期待額 )1,343 億円がどれ 2

程妥当なのかを検討すればいいといえます 結論から言って この 1,343 億円という年平均被害軽期待額は いくつものからくり 詐術が生み出した数値といえます 論より証拠 まず 報告書 の算定数値がどれほど実際の水害被害額とかけ離れているかをみれば 計算のインチキは一目瞭然です 前述のように 洪水便益はダムなし時の洪水被害額とダム建設後の洪水被害額の差をもって求めています 両者は同じサンプル洪水を用いて同様の計算で求めていますから ダムなし時の洪水被害額に信頼性がおけなければ 洪水便益 21,925 億円も 6. 3 という費用対効果も信頼できないということになります そして ダムなし時の洪水被害額という便益計算の出発点は 統計的に実績値が確認できる数値です そこで この統計値と 報告書 の算定値を比較してみることから 検討を始めてみたいと思います 水害被害については 国交省が編纂している 水害統計 という重要資料があります この水害統計に基づいて 利根川流域の水害被害を見てみます すると 統計初年度の 1961 年から 統計最新値の 29 年までの 49 年間で 利根川の水害被害は合計で 8, 68 億円になります この合計値は貨幣価値を考えない単純合計ですので 現在価値化 ( 治水経済調査マニュアル H23.5 改正の水害被害デフレーターを用いて換算 ) すると 25 年価格で 8,753 億円になり 平均すると 単年度では 186 億という被害額になります 億円 1,2 1, 8 6 4 2 1961 1964 1961~29 年累計被害額 8,68 億円 25 年度価格修正値 8,753 億円 ( 年平均被害額 186 億円 ) 出典 : 水害統計 ( 国交省 ) 1967 197 1973 1976 1979 1982 1985 1988 1991 1994 1997 2 23 26 29 では 費用対効果分析で算出された数値はどうでしょうか 報告書 では ダムなし時の洪水被害額を求めるにあたり 8 つの規模の洪水を想定し この 8 つの規模の洪水流量をサンプル 8 洪水 (16 ページ ) で再現し 洪水被害額を算出しています 八ッ場ダムは治水安全度 1/2 を確保するための洪水調節施設ですから 想定した最大洪水は 1/2 洪水で 以下 1/1 1/5 1 /3 1/1 1/5 1/3 1/1 の合計 8 つの規模の洪水流量を算定しています 想定 8 洪水 3 日 雨量 八ッ場ダム の調節効果 mm 1 S22.9 39 21,96 1 2 S23.9 27 7,711 73 3 S24.8 21 9,683 1,76 4 S33.9 172 1,24 1,45 5 S34.8 28 8,781 1,46 6 S57.7 222 9,6 79 7 S57.9 214 8,55 1,3 8 H1.9 186 1,59 1,82 注 調節効果は 17,m 3 /s 洪水での換算値 このように 1,343 億円という年平均洪水被害軽減期待額は 1/2 洪水まで想定した数値ですので 統計値と同じ土俵で比べるには相応しくありません 統計は 49 年間なので 想定最大洪水を 1/5 洪水に設定するのが適当でしょう ダムなし時 八ッ場ダム建設前というのは現況河道に対応しますから この ダムなし被害額 が統計値と比較すべき数値です そして それぞれの流量規模に対応する被害額 ( 例えば 1/5 流量の 115,177 億円 ) というのは 1/5 確率という 点の被害 であって 1/1 洪水から 1/5 洪水まで想定した時の平均はどれくらいの被害額になるのかという算定値ではありません 区間 3

確率という計算は 点の被害額を頼りに平均額を算出するための計算ですが これもテクニカルな計算の問題なので詳細は省きます 注目して欲しいのは 1 番右端の数値で 1/ 5 規模洪水まで想定した場合の平均被害額は 4,82 億円ということになります これが統計値 事実と比較すべき数値です この表が意味するのは 1 毎年 2 堤防が破提し 3 その被害額は 1/5 洪水までで区切ってみても 4,82 億円にのぼるということです これが費用対効果計算の算定値です では この算定は妥当でしょうか まず 1 毎年 2 破堤するというのは 完全に事実に反しています 1949(S24) のキティ台風の後は利根川本川 江戸川 ( 今回の費用対効果計算の対象流域です p11 参照 ) では 破提はなく 1981(S61) 年に支流の小貝川が氾濫したくらいです 防が破提し 3 その被害額は 4,82 億円にのぼるという算定は 明らかに事実に反するものといえましょう もう 1 つ 水害統計で 4,28 億円という推定値のおかしさを見てみます 最新の水害統計 (H21 29 年度版 ) によると 過去 2 年 (199~29) 間の全国水害被害額は累計 11 兆 4,6 億円で 平均すると単年度で 5,7 億円の被害となります グラフを見ると 24 年が突出しているように年度によりばらつきはありますが 2 年中 1 年で 全国の水害被害額が費用対効果計算で求めた利根川流域被害額を下回っています 1 年当たり 4,28 億円という被害算定が いかに現実の水害被害額と乖離した数値であることがわかると思います 25, 億円 2, 15, 1, 5, 青 : 全国の水害被害額 ( 現在価値化基準年 :25) 赤 : 費用対効果計算による 利根川流域の平均被害額 (4,28 億円 ) 9 91 92 93 94 95 96 97 98 99 1 2 3 4 5 6 7 8 9 水害統計 (H21) PDF 版 p12 より作成 http://www.e-stat.go.jp/sg1/estat/gl 2114.do?gaid=GL2112&tocd= 659 こうした大きな乖離については いま私たちが初めて指摘したものではありません 既に国交省は会計検査院から次のように勧告を受けています (21) 利根川下流河川事務所ホームページ http://www.ktr.mlit.go.jp/tonege/reki si/kakokiroku.html この小貝川決壊があった 1981 年ですら 利根川の水害被害額は 985 億円 (25 年度価格に換算 ) ですから 4,82 億円という被害想定は この 4~5 倍の被害想定にあたります 費用対効果計算の 1 毎年 2 堤 年平均被害軽減期待額の算定の基礎となる生起確率が高い降雨に伴う想定被害額については 過去における実際の水害の被害額を上回っているものが多く見受けられた ( 中略 ) 上記の状況を踏まえ 年平均被害軽減期待額の便益の算定方法をより合理的なものとするよう検討する必要があると認められる この勧告を真摯に受け止めるならば まず 4

は私たちがしてみたように 水害統計との実績値との比較 検討をしてみるはずです そうすれば 計算結果が実績値と大きく乖離していることを発見できたはずです しかも その検討作業はほんの僅かな時間でできるものです このことは 国交省はダム事業の検討のために できるだけ正確な費用対効果計算をしてみようという意思が全く欠如している 中間取りまとめ で示された指針をないがしろにする姿勢を如実に示していると思います 計算結果が いかに現実離れしているか 実績値を見て確認しました では なぜこんな現実離れした数値になるのでしょうか 国交省の費用対効果計算においては 破堤 氾濫において 5 つの条件を想定しています ( 条件 2 を除き 治水経済調査マニュアル ( 案 ) 以下 マニュアル に記載 条件 2 は今回の情報公開資料 p8) 即ち 1 堤防高は十分であっても 十分な幅がないと破堤する ( スライドダウン計算 ) 2 河道水位が無害流量に達した時点で破堤する 3 想定破堤箇所は 流域ブロック内 最も大きな被害がでる場所 4 堤防は基部まで破堤する 5 1 つの洪水で何箇所も破堤する という 5 条件です 水増しの仕組み 1 氾濫を生じやすくする 条件 1: 堤防高は十分であっても 十分な幅がないと破堤する ( 河道計算では スライドダウンさせる ) 条件 2: 河道水位が無害流量に達した時点で破堤する 2 氾濫被害を大きくする a) 個別箇所の氾濫を大きくする 条件 3: 想定破提箇所は 流域ブロック内で最も大きな被害がでる場所とする 条件 4: 堤防は基部まで破提する b) 氾濫箇所を増やす 条件 5: 1つの洪水で何箇所も破堤する 以下 順に 5 条件のおかしさを検討していきますが 話の見取り図としてあらかじめ結論を述べておきます 条件 1 2 で氾濫がしやすい河道条件 氾濫条件を設定し その 上で条件 3~5 で氾濫被害が大きくなるように条件設定しています 条件 3 4 は 個別の氾濫被害が大きくなるような条件設定であり 条件 5 は氾濫箇所が増えるような条件設定です 以上の見取り図を確認したうえで 個別具体的に条件 1~5 のおかしさを見ていきます 対象洪水で破堤 氾濫が生じるか その具体的な基準となるのは 条件 2 にある 無害流量 の数値となります 無害流量とは 河道計画上安全に流下できると評価できる流量 ( マニュアル p1) と定義されており 流域ブロック内で最も流下能力の低い地点の流下能力が無害流量となります ただし この無害流量を設定するに当たり 条件 1 が前提条件になっていますので 条件 1 から検討することにします なお流域ブロックと想定破堤箇所については条件 3 において説明します 条件 1 は 具体的にはスライドダウンという計算をするものです スライドダウンとは 対象とする河道の堤防に従来の計画堤防断面が内包されるように計画堤防を下方に最小限平行移動すること と定義されています ( マニュアル p1) 十分な幅を確保するために堤防高を低く設定 高さは足りているが 幅が足りない 何を言っているか理解できない日本語ですが 要は 十分な堤防幅がない場合には破堤 決壊する恐れがあるから そうした区間では現在の堤防高を額面通りに評価できないとして その分堤防高を下方修正するというのがスライドダウンの考え方です つまり 現況の利根川堤防高 ( およびそこから水位 流量計算して求める流下能力 ) は 見かけ 5

の数値に過ぎず 真の流下能力はそれを下方修正しなければならないというのが国交省の考え方なのです はじめに 基準として実際の利根川堤防高を見てみます 以降登場するグラフは情報公開請求資料 様式 2 流下能力表 にあった表を 当方で利根川 本川分だけグラフ化したものです 利根川左岸 4, 35, 3, 25, 2, 15, 1, 5, 1 河口からの距離 ) 利根川右岸 7, 6, 5, 4, 3, 2, 1, 1 23 河口からの距離 ) 最大流下能力 ( 堤防天端高相当流量 ) 4 56 2 3 4 5 6 7 8 9 1 11 7 89 1 1112 13 1415 12 13 14 15 16 17 18 19 16 1718 2 km 最大流下能力 ( 堤防天端高相当流量 ) 19 2 km グラフでは 実際の堤防高を棒グラフで ( 右目盛 ) これに対応する流下能力を折れ線グラフ ( 左目盛 ) で示しました 単位 目盛りが違うことに注意して下さい ここで示されているのは 堤防天端高の水位を単純に流量換算した最大流下能力であり 余裕高 (2 m) を考慮した流下能力ではありません それは 堤防天端高から余裕高を引いた水位に相当する流下能力が示されていない上 水位 流量変換式も示されていないので 私たちにはそれを知る術がないからです 実は この流量 流下能力こそが氾濫計算上では最も重要な数値のはずですが 費用対 効果計算にあたって 国交省はこの数値を求めていないのです ここでは小さなグラフになっていますが 無害流量との比較グラフにおいて大きなグラフを示しているので 詳しくはそちらをご覧ください (7 ページ ) これが現在の利根川の堤防高とそれに対応する洪水流量です この堤防高 流量が スライドダウンという計算をすることで変化する訳ですが まずスライドダウン高から見ていきます 図に利根川左岸 右岸のスライドダウン高 ( 堤防下げ幅 ) を示しました スライドダウンされている区間は 河口 86~186.5km 地点で ( 右岸は途中スライドダウンなし区間が存在 ) で 平均スライドダウン幅は左岸 1.57m 右岸 1.8m です 利根川左岸 4. 3.5 3. 2.5 2. 平均 1.5 1..5. 86 96 16 116 126 136 146 156 166 176 186 -.5 河口からの距離) -1. 利根川右岸 1. 9. 8. 7. 6. 5. 4. 3. 平均 2. 1. m スライド区間河口 86~186.5km ( 平均 1.57m) m スライド区間河口 86~121.5 145.5~186.5km ( 平均 1.8). 86 96 16 116 126 136 146 156 166 176 186 河口からの距離) 6

利根川左岸 7, 6, 5, 赤 : 最大流下能力 ( 堤防天端高に相当 ) 青 : 最小流下能力 4, 3, 2, 1, 河口からの距離 2 4 6 8 1 12 14 16 18 2 利根川右岸 7, 注 無害流量が最大流下能力を上回る箇所 (86~86.5km) がありますが 当方の打ち込みミスではありません おそらく 国交省の誤記と思います この誤記はこのようにグラフを作ってみたら簡単に気がついたはずです なお 86~86.5km というのは取手 (85km) 付近です 6, 5, 赤 : 最大流下能力 ( 堤防天端高に相当 ) 青 : 最小流下能力 4, 3, 2, 1, 河口からの距離 2 4 6 8 1 12 14 16 18 2 7

なお スライドダウン評価をした区域は 内閣府に設けられた 大規模水害に関する専門調査会 が首都圏水没水害を想定してシミュレーション計算を行った区間とほぼ合致します つまり 首都圏に大きな被害をもたらしうる区域を中心にスライドダウンが施されているのです 下流から堤防整備 河川改修を施していくのが治水事業の基本なので 河口から 86k m まではスライドダウンが不要な堤防が整備されているという把握は 堤防整備の基本を踏まえています とはいえ 首都圏に大きな被害をもたらしうる - 被害額を算出すれば高額な被害が出る地域でスライドダウンされていることは注意すべきです ライドダウン断面の流下能力が無害流量に相当する訳ではありません それは スライドダウン計算することでその堤防高 ( スライドダウン堤防高 ) が高水敷高や堤内地地盤高を下回ってしまっている場合があるからです そのこと 1 つとってみても スライドダウン計算がいかに現実離れした河道断面の把握なのかわかると思います 余裕高 河川増水時の河川敷の水位 高水敷高 堤防天端高 2m 堤防 提内地 堤内地地盤高 堤内地地盤高流量 高水敷地盤高流量のいずれか高い方を破堤敷高流量とする 大規模水害に対する専門調査会第 5 回配布資料資料 6 (H19.5.31) 話を戻します スライドダウン計算は 流域ブロック内の無害流量を求めるためでした 見かけ ( 現況 ) の堤防高にかわり 真の流下能力に対応する修正河道断面を求めるというのがスライドダウンの理屈でしたが このス そこで スライドダウン堤防高水位を流量換算した数値が この高水敷水位 流量または破堤敷高水位 流量を下回る時には いずれかの流量をもって無害流量とすると修正を加えました なお 破堤敷高という概念は 破堤時は基部まで破壊される という条件 3 を反映したものと思われます 前頁 (7 ページ ) に無害流量のグラフを示しました 比較のために前述の最大流下能力 ( 堤防天端高に相当する流量 ) も同じグラフに組み込んでいます スライドダウン計算をすることで どれだけ大きく流下能力が過小評価されているかわかると思います 確認のため スライドダウン計算によって流下能力がどれ程過小評価されるのかグラフにしてみます グラフは 前頁で示した最大流下能力 ( 堤防天端高に相当する流量 ) と無害流量との差を示したものです スライドダウンという計算の威力をまざまざと見せ付けるグラフといえます 破堤 氾濫計算の基準となる無害流量は スライドダウン計算をはじめとする河道断面の修正計算により これ程まで下方修正された流量なのです 8

利根川左岸 25, m3/ 秒 2, 15, 1, 5, -5, -1, -15, -2, 15 3 45 利根川右岸 25 m3/ 秒 2 15 6 75 9 15 12 135 15 165 18 195 河口からの距離 注 前述の誤記のため マイナスとなる場所 (86~86.5km) がある でしょう もしそんなに氾濫しやすい河川であれば 私たちは利根川流域には住めませんし 首都圏がこれほど発展することはありません 洪水被害との連年の戦いで 経済発展の基礎は全く失われてしまいます もちろん現実はそんなことはありません 支流 小貝川が 1981 年に破堤したのは前述の通りですが 利根川本川では 1949 年のキティ台風以来 6 年間 氾濫らしい氾濫が起きたことはありません このことは 確率論的には奇跡です 1/5 洪水に耐えられない程度の脆弱な河川が 戦後 6 年間 全く破堤 氾濫しないですむなんてことはまず考えられません いかに 1/5 洪水でも氾濫が起きるということが現実にそぐわない把握か ( 算定がインチキか ) よくわかると思います 1 5 15 3 45 6 75 9 15 12 135 15 165 18 195 死者 135 名行方不明 25 名住宅被害 16 万棟 河口からの距離 無害流量を超えた洪水であれば破堤 氾濫する ( 条件 1 2=p4) 訳ですから この修正計算によりかなり小さな洪水でも破堤しやすくなりました この結果 利根川では 5 年に 1 回の洪水でも 2~3 カ所破堤し 1 年に 1 回の洪水では 3~4 カ所破堤することになっています 3 ページで見た表でも 1/5 洪水では 7,516 億円の被害が 1/1 洪水では 1 兆 6,199 億円の被害が想定されています 世界に稀に見る有数の水害大国です 1/3 洪水では被害が計上されず 1/5 洪水では 7,516 億円の被害が想定される訳ですから それを以って現状の治水安全度を把握すれば まずは治水安全度 1/5 を確保することが当面の目標となるはずです しかし 現在の利根川の治水目標は 1/2 洪水 (319mm 22, m3 / 秒 ) ですから 物凄い背伸びということになります この想定で現在の治水安全度を評価すると 現在の利根川は 1/5 洪水を防御できないわけですから 1/5 以下ということになる 大規模水害対策に対する専門調査会第 1 回配布資料資料 2 P19 (H18.8.29) 仮に 氾濫計算が想定するように 未だ治水安全度 1/5 が確保されていないとすれば これまでの利根川の治水事業は一体何だったんでしょう 利根川は明治の初めから国家直轄の治水事業が行われてきた最重要河川であり その事業費も 1 河川の中で最大でした 最初の利根川治水計画 明治改修計画 (19 明治 43) では 3 年かけて利根川の浚渫事業を行いましたが その土砂浚渫量はパナマ運河の土砂浚渫量を上回っ 9

ています 明治 1 大河川の総工費 5 年価格 単純推計 4,22 億円 ) をもって 未だに 1/5 洪水に耐えられないというのは 一体どういうことでしょう それこそ これら 7 ダムの費用対効果 戦後 いや近代利根川治水計画の費用対効果は一体いくつになるのでしょう もし これだけの治水事業を展開してきてもなお 1/5 洪水を防げないとすれば 1 世紀をかけて 治水安全度は 1/3~ 1/4( 明治 43 年 最初の利根川治水計画の治水目標 ) から 1/5 にさえ到達していないのですから その費用対効果は 1 を大きく割り込むことは確実と思われます 追記 (211.11.27) 後日示された政府答弁書では 利根川の治水安全度は超過確率流量で判断すると 1/3~1/4 の治水安全度にあると 旨を回答しています なお 1/3 洪水については 国交省が日本学術会議に提出した資料には 12,923 m 3 /s と記されています 因みに この時の計画高水流量は 3,75 m 3 /s であり 3,75m 3 /s は洪水レベルとしては 3~4 年に 1 回の洪水と評価できます つまり 国交省が行った今回の費用対効果計算 氾濫計算では この近代利根川治水計画の最初の目標 (19) が未だ達成されていないということになるのです 戦前は河川改修に特化した利根川治水事業でしたが それでも多大な費用を投じています 戦後 利根川の治水計画にはダム治水 ( ダムによる洪水調節 ) が採り入れられ (1949) 現在まで 1 藤原 (1951~57 4 1 億円 ) 2 相俣 (1953~59 18 億円 ) 3 薗原 (1958~65 51 億円 ) 4 矢木沢 (19 59~67 119 億円 ) 5 下久保 (1959~6 8 22 億円 ) 6 草木 (1965~76 496 億円 ) 7 奈良俣 (1971~9 1352 億円 ) の 7 ダム利根川上流に建設されています これら 7 ダムの建設 ( 単純合計 2,274 億円 2 以上 条件 1 2 を前提とした氾濫計算がいかにおかしな結果を招くか 見てきました 次に いかに氾濫被害が水増しされる条件設定になっているかを a) 個別被害が水増しされる仕組み b) 被害箇所が水増しされる仕組みにわけて考えてみます まず a) については 条件 3: 流域ブロック内 最も大きな被害となる場所で被害が生じる から検討を始めます 最初に氾濫想定箇所を大きな図で確認します ( 次頁 ) 費用対効果計算で想定した氾濫箇所は 流域ブロック内 最も大きな被害となる場所で被害が生じる場所 であって 氾濫箇所は流域ブロック内で最も堤防が脆弱な 流下能力の低い箇所ではありません これには 2 つ大きな問題点があります まず第 1 は 想定被害額が最大になる地点を想定することの問題点です そもそも費用対効果計算とは 公共財ゆえに市場が存在せず それ故事業の投資効率が判明しがたい公共事業について その投資効率 採算性を検討するために行うものです そのため 費用対効果計算は不確かな推定にならざるを得ません そこで 当初の前提 ( 市場が存在しないため 事業の採算性がわかり 1

にくい ) に戻るならば 採算性の見積もりは慎重に行うべきということになるはずです つまり 費用対効果計算では事業効果 ( 便益 ) の最小値を見積もることが重要なのであって 最大値のみを見積もってこと足れり とするのは論外なのです ここに 1 つの矛盾 問題点があると考えます ついで問題点 2 は 流域ブロック内 最も大きな被害がでる場所 を想定氾濫箇所に据えることの問題点です 氾濫計算については 条件 1 2 により現況の河道能力が過小評価され 更に後述の条件 4 により 実際の洪水現象以上に洪水被害が見積もられています そして その過大見積もりはこの条件 3 により更に膨れ上がります 破堤 氾濫は当該ブロック内で最も脆弱な地点 = 流下能力の低い地点で生じると考えるのが普通です つまり 流域内最小流下 能力地点 = 破堤地点とする方が常識です しかし 国交省の費用対効果計算はそうした常識を踏まえず 流域内最大被害地点を破堤箇所として固定するのです この無害流量地点と想定被害地点とのずれを見てみると 下記図の通りです 作業は利根川左岸 ( ブロック A B C D1 D2) についてのみ行いました (12 ページ ) なお A から順に河口に近づくから D2 ブロックには河口が含まれています なお 河口 86km~11km 区間は調整池であり 氾濫計算の必要がない区間となっています またブロック D1 B A では 区間内最小流量地点 ( 河口 18.5km 5,884 m3 / 秒 ) を無害流量として設定していない 現時点では 表記ミスか何か理由は不明です 氾濫想定箇所 ( 報告書 p5-1) 注 なお D2 無害流量地点 18km は 誤記で 15.5km 地点が正しいはずです 11

想定決壊地点無害流量設定地点距離流量距離流量 差異流量 151.5 21,5 m3 / 秒 2,418 m3 / 秒 11,376 m3 / 秒 152. km 1,732 m3 / 秒 9,674 m3 / 秒 1,58 m3 / 秒 132. km 2,25 m3 / 秒 12,488 m3 / 秒 14,33 m3 / 秒 16.5 km 1,428 m3 / 秒 5,92 m3 / 秒 4,58 m3 / 秒 82.5 km 12,676 m3 / 秒 13,232 m3 / 秒 4,318 m3 / 秒 81.5 km 8,632 m3 / 秒 8,358 m3 / 秒 274 m3 / 秒 78. km 12,472 m3 / 秒 13,4 m3 / 秒 6,588 m3 / 秒 18.5 km 8,623 m3 / 秒 5,884 m3 / 秒 2,739 m3 / 秒 6. km 1,451 m3 / 秒 9,14 m3 / 秒 5,364 m3 / 秒 15.5 km 6,65 m3 / 秒 5,87 m3 / 秒 1,518 m3 / 秒 136. km 2,43 m3 / 秒 2,43 m3 / 秒 5,57 m3 / 秒 136. km 14,536 m3 / 秒 14,536 m3 / 秒 m3 / 秒 148.5 km 21,57 m3 / 秒 21,275 m3 / 秒 9,844 m3 / 秒 157. km 13,297 m3 / 秒 11,213 m3 / 秒 2,84 m3 / 秒 12.5 km 12,72 m3 / 秒 7,914 m3 / 秒 7,884 m3 / 秒 14. km 5,746 m3 / 秒 4,188 m3 / 秒 1,558 m3 / 秒 26. km 9,4 m3 / 秒 9,415 m3 / 秒 5,616 m3 / 秒 33.5 km 4,78 m3 / 秒 3,784 m3 / 秒 996 m3 / 秒 58.5 km 8,478 m3 / 秒 8,785 m3 / 秒 4,351 m3 / 秒 37. km 4,593 m3 / 秒 4,127 m3 / 秒 466 m3 / 秒 76. km 12,988 m3 / 秒 16,529 m3 / 秒 7,194 m3 / 秒 18. km 9,57 m3 / 秒 5,794 m3 / 秒 3,263 m3 / 秒 19. km 7,257 m3 / 秒 7,257 m3 / 秒 1,19 m3 / 秒 19. km 6,148 m3 / 秒 6,148 m3 / 秒 m3 / 秒 19. km 9,364 m3 / 秒 9,364 m3 / 秒 3,213 m3 / 秒 19. km 6,151 m3 / 秒 6,151 m3 / 秒 m3 / 秒 2つの流量は 上段が最大流下能力 ( 堤防天端高相当流量 ) 下段が最小流下能力( スライドダウン流下能力 ) 流量である 差異流量は 上段が 最大流下能力 - 最小流下能力 下段が想定決壊地点と無害流量設定地点の最小流下能力どうしの比較である 12

1 D2 ブロック河口 km~18.km 14, 12, 1, 8, 6, 4, 2, 1 2 3 4 5 想定被害地点河口 6.km (6,65 m3 / 秒 ) 6 7 8 9 1 最小流下能力地点河口 15.5km ( 5,87 m3 / 秒 ) 11 12 13 14 15 16 17 18 河口からの距離 破堤地点流下能力 6,65 m3 / 秒 差額 978 m3 / 秒 2 D1 ブロック河口 18.5km~78.5km 9,5 9, 8,5 8, 7,5 7, 6,5 6, 5,5 最小流下能力地点河口 18.5km (5,884 m3 / 秒 ) 想定被害地点河口 78.km (8,623 m3 / 秒 ) 無害流量 6,54 m3 / 秒 河口からの距離 5, 19 29 39 49 59 69 79 破堤地点流下能力 8,623 m3 / 秒 差額 2,119 m3 / 秒 3 C ブロック河口 79.km~85.5km 18, 16, 14, 12, 1, 8, 6, 4, 2, 最小流下能力地点河口 16.5km (3,552 m3 / 秒 ) 無害流量 5,92 m3 / 秒 想定被害地点河口 132km (1,428 m3 / 秒 ) 12 17 112 117 122 127 132 河口からの距離 破堤地点流下能力 8,632 m3 / 秒 差額 274 m3 / 秒 4 B ブロック河口 11.5km~132.km 18, 16, 14, 12, 1, 8, 6, 4, 2, 最小流下能力地点河口 16.5km (3,552 m3 / 秒 ) 無害流量 5,92 m3 / 秒 想定被害地点河口 132km (1,428 m3 / 秒 ) 12 17 112 117 122 127 132 河口からの距離 破堤地点流下能力 1,428 m3 / 秒 差額 4,58 m3 / 秒 5 A ブロック河口 132.5km~176.5km 25, 2, 15, 1, 想定被害地点河口 151.5km (1,732 m3 / 秒 ) 無害流量 9,674 m3 / 秒 (152km 地点 ) 最小流下能力地点河口 176km (6,287 m3 / 秒 ) 5, 132.5 142.5 152.5 162.5 172.5 河口からの距離 破堤地点流下能力 1,732 m3 / 秒 差額 1,58 m3 / 秒 このように 最小の C ブロックでも 274 m3 / 秒 最大となる B ブロックでは 4,58 m3 / 秒もの大きな差異があります いかに ブロック内の被害最大地点でおいて無害流量を超えると破堤するという条件 ( 条件 2 および 3) が不自然かわかると思います そして氾濫被害においては 条件 4: 破堤時は 堤防基部まで破壊される ( マニュアル p32) 訳ですから 溢れ出る氾濫流量は極めて大きなものとなります 条件 4 は 堤内地氾濫が最大になるように条件設定す 13

る訳ですから 常に理論上の最大値が氾濫量となります これでは 洪水被害額は大きく水増し計算されてしまいます このように 条件 3 4 により氾濫被害は個別に水増しされるわけですが 更に条件 5 により被害箇所が増やされる仕組みが作られています 通常 上流部で大きな破堤があれば洪水流量はその分だけ減少するので 上流部で破堤すれば下流部は洪水被害を免れるのが普通です しかも今回は 条件 4: 破堤時には堤防基部まで破壊される ですから 相当量の洪水が堤内地 ( 居住区 ) に注ぎ込まれ 大きく洪水流量は減少するはずです A この氾濫流量分だけ 洪水流量が減少する 氾濫 B A 地点で破提しても B 地点に流れてくる洪水流量は A 地点と全く同じという想定 ところが 費用対効果計算ではそうした想定をとらないのです それゆえに せいぜい 1 ブロックの洪水被害ですむはずの氾濫が何ブロックでも生じてしまうのです 1/5 洪水のような流量規模の小さな洪水で 複数ブロックの氾濫被害となってきます だから 3 ページでみたように 1/5 洪水でも 7,51 6 億円の被害が想定されるのです このように 条件 4 と 5 は内部矛盾を犯していると思います 条件 5 もまた マニュアル で定められている計算条件ですが 条件 5 においては マニュアル 作成時点から問題点が意識されていました 同 p77 に 各氾濫ブロックでは氾濫が同時生起することはなく 各氾濫ブロック毎の便益の単純な総和ではなく 重み付け等を行うべきとの意見があるが 自然現象を相手にしていることから破堤の確率を特 定することは困難であること ( なお この点については 今後さらに検討する必要がある ) という記述があるからです この記述を見ると 1 つの洪水で遠く離れた幾つもの箇所が同時破堤することは全く不自然な把握であると認識していたようです しかし その指摘を 自然現象だから 破堤確率の特定は難しい と一蹴しています これはすごい開き直りです 自然現象だから という言い訳が通用するなら 物理学をはじめ自然科学の存在そのものが否定されてしまいます そういう理屈を持ち出せば 費用対効果計算も 公共財は市場が存在しないから その経済性 採算性を把握することは困難である といって 計算を回避することが可能です また 破堤確率の特定が困難 だからといって 単純総和という自然現象に背いた便益計算をしていいことにはなりません 最低限 上流ブロックで破堤した場合には 洪水流量が 2 割減少すると仮定するとか 何らかの仮定を置いて 単純総和の誤謬を修正しなければならないはずです 自然現象だから ということも 破堤確率の特定が困難 なことも 単純総和という誤謬を容認する言い訳には決してならないのです 話をまとめてみます 洪水被害が非現実的な規模に大きく水増しされ ひいては治水便益が水増しされている理由は 1. 小さな洪水でも被害が生じるように条件設定されている a) スライドダウン計算をして 河道断面を過小評価する (p21) b) 無害流量を超えたら 破堤が生じると仮定する ( 情報公開資料 p8) その上で 2. 破堤が生じた場合には 洪水氾濫被害が大きくなるように条件設定されている a) 個別被害が大きくなる条件設定 1 ブロック内で最も流下能力の 14

乏しい地点ではなく 最大被害地点で破堤する (p7) 2 破堤時は堤防基部まで破壊されると仮定するから (p32) 堤内地には大きな氾濫流量が注ぎ込む b)1 つの洪水で 何箇所も破堤する すなわち 上流部で氾濫しても下流部は破堤を免れない (p77) と想定し 計算することにより生じているのです なお条件設定は条件 2( 上述 1b 河道水位を無害流量が超えたら破堤する ) を除き マニュアル 設定条件なので ( ) 内に マニュアル のページ数を示しました 以上を確認したうえで 最後にこうした費用対効果計算がいかに政策的思考としては おかしなことかを最後にお話します 洪水被害が大きい ひいては洪水便益が大きくなる理由は 条件 1 を前提とする河道計算 評価が出発点でした 実は このシミュレーション計算には 国交省の行政姿勢が如実に示されています スライドダウンという計算をするということは 国交省は現在の利根川堤防は 見掛け倒し と判断していることになります それならば まず採るべき対策は河川改修でしょう それが合理的 論理的な思考と思います しかし 国交省にはそうした論理的思考回路が存在しないようです シミュレーション計算の河道断面は ( 資料 様式 2 流下能力評価表 ) は 平成 3 年河道断面と示されています 1 平成 3 年という意味は 今から八ッ場ダム建設にゴーサインが出れば 平成 3 (218) 年に八ッ場ダムが完成すると想定している ( 建設着工から完成まで 87 ヶ月 ) ことによります つまり その意味は八ッ場ダム完成予定時ということになります 1 ちなみに 前回 (H21) の計算では 八ッ場ダム 湯西川ダム 南摩ダムに加え 首都圏氾濫区域堤防強化 1 期事業 ( 利根川右岸 五霞町から羽生市までの 23.5km) が完成 稲戸井調節池の浚渫が完了という河道整備状況を想定し 氾濫計算をしていましたが 今回はそうした想定は全く消えています この時の河道断面で スライドダウン計算をしないといけないということは 国交省は 5 年に 1 回の洪水でも 2~3 カ所破堤し 1 年に 1 回の洪水では 3~4 カ所破堤する ほど 利根川の流下能力は乏しいと認識しながら これからの 7 年間 利根川の河川改修を放置し ひたすら八ッ場ダム建設に向けて邁進するということを示しています これはありえない話です 国交省は小さな洪水でも頻繁に破堤 氾濫が起こりうる利根川河道と認識していながら ( だから スライドダウンして河道断面を評価したのです ) 河川改修にいそしむことなく その対策は遥か遠くに建設される八ッ場ダムなのですから 現状 ( 問題 ) 対策という論理的思考回路が完全に破綻しているとしか思えません 前回 (H21.3.24) の費用対効果計算でも 今回と全く同じ破堤地点が想定されていますから 少なくとも 2 年間の間 国交省は破堤により大きな被害が出る地点の河川改修を放置しているのです そして この合理的思考回路の喪失は 八ッ場ダムの建設を求める 1 都 5 県の知事たちも同じです 政権交代後 1 都 5 県の知事たちは事業中止撤回を求め 共同声明を発表しましたが (29(H21).1.16) そこでは カスリーン台風ほどの大規模な洪水ではない近年の洪水においても 利根川の堤防や堤防下の地盤からの漏水が至る所で発生している 幸いにも水防団による懸命の水防活動により事なきを得ているが これらの漏水はそのまま放置すれば堤防決壊につながる可能性がある非常に危険な現象である と述べており 堤防決壊を防止するために 堤防強化ではなく 八ッ場ダムの建設を求めているのです もし国交省が 小さな洪水でも頻繁に破堤 氾濫が起こりうる利根川河道 と本当に認識しているのなら その対策は堤防の強化 ( 河川改修 ) のはずです つまり 費用対効果計算でも まずはスライドダウン堤防などという修正計算をしなくてもすむように 即ち 現在の堤防高通りに河道を評価できる 15

状況にするにはどれだけの費用がかかり その河川改修によりどれだけの流下能力の増強がもたらされるか ( 洪水被害がどれだけ減少するか ) を算出するのが合理的な思考回路です その費用対効果計算をすることが第 1 のはずです その費用対効果計算と八ッ場ダム建設との比較をしてみるというのは 合理的 論理的な思考回路のはずなのです それが政策検討において 費用対効果を算定する本質的な意味です 目標とする治水 利水の安全度を確保するためのより低コストで早急に効果が発現できる治水対策を見出す努力が必要 ( 中間とリまとめ p13) というならば この計算 比較は必要不可欠のはずです しかし 国交省はそうした計算をしません ダムに拘り 河川改修をないがしろにするという点については もう 1 つお見せしたいデータがあります それは河川改修事業費とダム事業費との関係です もし スライドダウン堤防という修正計算をしなければいけないほど 利根川河道の安全性が低いと認識しいているのなら 河川改修費の予算獲得にいそしんでいるのが本当です ところが 現実は真逆です この 1 年間 河川改修事業費は低下し続け 予算額は 1 年間でおよそ半減となりました 1,4 億円 1,2 1, 河川改修費 八ッ場ダムの費用対効果は 6.3 と算出されています 国交省が今回の破堤 5 条件を妥当と考え その計算に自信をもっていたとしても 条件 3 があるのですから 費用対効果は最大 6.3 と算出される と公表すべきでした それが説明責任として最低限守るべき姿勢でした しかし そう公表すれば 最大で というのはどういうことですか では 最小 平均だとどうなるのですか と次々に質問が飛んでくるのが予想できたのでしょう 費用対効果 6.3 という数値が一人歩きするのを期待した確信犯的な数値公表の仕方と思ってしまいます 少なくとも 算出数値の意味を正確に理解できるような 十分な説明 ( 中間とりまとめ p14) ではありません 費用対効果 6.3 および洪水便益 21,92 5 億円はこうした 5 条件の下で計算 算出されたものであり とても信用できるものではありません 国交省の姿勢は 河川改修費を削ってでも ダム建設 整備 ですから 洪水便益が水増しされるような条件設定は確信犯の水増しと思われます つまり 6.3 という費用対効果計算は何重にも詐術が施された計算値なのです 以上述べてきたように 今回の検証 費用対効果の算出は 1 科学的合理性を有する 2 費用対効果分析を 3 透明性を確保して記述する という 中間取りまとめ が示した指針を全く踏まえていない検証なのです 8 6 4 2 ダム事業費 八ッ場ダム工事費 1998 1999 2 21 22 23 24 25 26 27 利根川の河川改修 ダム事業費 この予算経緯は とにかくダム事業を 河川改修費を削ってでもダム事業をという国交省の意思を明確に示しています 先ほどお話した河道断面計算の前提 ( ダム完成年度 = 平成 3 年まで河川改修が行われない ) と見事に一致しています 16

参考資料 サンプル 8 洪水 21,96 m3 / 秒 (1 位 ) 3 日間雨量 39mm 洪水 1 7,711 m3 / 秒 (9 位 ) 3 日間雨量 27mm 洪水 2 9,683 m3 / 秒 (4 位 ) 3 日間雨量 21mm 洪水 3 1,24 m3 / 秒 (3 位 ) 3 日間雨量 172mm 洪水 4 8,781 m3 / 秒 (6 位 ) 3 日間雨量 28mm 洪水 5 9,6 m3 / 秒 (5 位 ) 3 日間雨量 222mm 洪水 6 8,55 m3 / 秒 (7 位 ) 3 日間雨量 214mm 洪水 7 1,59 m3 / 秒 (2 位 ) 3 日間雨量 186mm 洪水 8 17